複合ロープ構造体と、複合ロープ構造体を作製するシステムおよび方法
【解決手段】 複数の形成済み複合ストランドを有するロープ構造体。前記複数の形成済み複合ストランドは、それぞれファイバー材料(繊維材料)およびマトリックス材料(充填材料)を有する。前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は、加撚されている(有撚状態である)。前記複数の形成済み複合ストランドの形状は、当該複数の形成済み複合ストランドが組み合わされて前記ロープ構造体になるのを促進するよう事前に決定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年5月18日付け出願済み米国仮特許出願第60/930,853号の優先権を主張するものである。また本願は、2007年5月19日付け出願済み米国仮特許出願第60/931,088号の優先権を主張するものである。上記に記載した関連出願の内容は、すべて参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、複合ロープ構造体と、複合ロープ構造体を作製するシステムおよび方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
2つの物体の間には、引張を伴ったロープ構造体の構成が必要になることが多い。所与のタイプのロープ構造体の特性がわかると、そのタイプのロープ構造体が特定の使用目的に適しているかどうかが決定する。ロープ構造体の特性としては、破壊強度、伸長度、柔軟性、重量、および耐摩耗性や摩擦係数などの表面特性などがある。また、加熱、冷却、水分、紫外線へのばく露(露光)、摩耗、曲がりなどの環境要因も、ロープ構造体の特性に影響を及ぼす。
【0004】
そのため、ロープの使用目的により、一般にロープの各特性の許容範囲が決定される。本明細書でロープに適用される用語「破壊(failure)」は、少なくとも1つのロープ特性に伴う許容範囲を超えた条件下に置かれるロープに言及して使用される。
【0005】
このように、特定の環境に対して改善されたロープ特性を有するロープ構造体が必要であり、またそのようなロープを製造するシステムおよび方法も必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の形成済み複合ストランドを有するロープ構造体として具体化(具現化)することができる。前記複数の形成済み複合ストランドは、それぞれファイバー材料(繊維材料)およびマトリックス材料(充填材料)を有する。前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は、加撚されている(有撚状態である)。前記複数の形成済み複合ストランドの形状は、当該複数の複合ストランドが組み合わせされて前記ロープ構造体になるのを促進するよう事前に決定されている。
【0007】
本発明は、ロープ構造体を形成する方法としても具体化(具現化)でき、この方法は以下の工程を有する。ブランク材料(ブランク材)を得るため、マトリックス材料内にファイバー材料を配置構成する。未形成の複合ストランドを得るため、前記ブランク材料の前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料を加撚する。所定の形状をそれぞれ有する形成済み複合ストランドを得るため、前記複数の未形成の複合ストランドを加工する。前記形成済み複合ストランドを組み合わせて前記ロープ構造体にする。
【0008】
また、本発明は、複数の形成済み複合ストランドを有するロープ構造体としても具体化(具現化)することができる。前記形成済み複合ストランドは、ファイバー材料およびマトリックス材料を有する。前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は、加撚されている(有撚状態である)。前記形成済み複合ストランドのうち少なくとも1つは、実質的に円柱形である。複数の前記形成済み複合ストランドは、実質的にらせん状である。前記ロープ構造体を得るため、前記実質的にらせん状の形成済み複合ストランドは、前記少なくとも1つの実質的に円柱形の形成済み複合ストランドの周囲に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、複数の形成済み複合ストランドがコアストランドの周囲に組み合わされて、複合ロープ構造体を形成している状態を示した図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した前記複合ロープ構造体の断面である。
【図2】図2は、本発明のシステムおよび方法の一部として使用される複合ブランク(素材)を形成する工程を実施するブランク形成システムのやや概略的な図である。
【図3】図3は、図2に示した前記システムで生成された前記複合ブランクを示した断面図である。
【図4】図4は、本発明のシステムおよび方法の一部として使用される工程であって、図2に示したシステムで生成された複合ブランクを未形成の複合ストランドに変換する工程、を実施するブランク加撚システムのやや概略的な図である。
【図5】図5および図6は、図4の前記システムで生成された前記未形成の複合ストランドを形成済み複合ストランドに変換する工程を実施するシステムのやや概略的な図である。
【図6】図5および図6は、図4の前記システムで生成された前記未形成の複合ストランドを形成済み複合ストランドに変換する工程を実施するシステムのやや概略的な図である。
【図7】図7は、図5および図6の前記システムで生成された形成済み複合ストランドの例を示した図である。
【図8】図8は、本発明のシステムおよび方法の一部として使用される工程であって、複合ブランクを形成する工程と、当該複合ブランクを線形の複合ストランドに変換する工程と、を実施する別の空白形成システムの例のやや概略的な図である。
【図9】図9は、図8に示した前記ブランク形成システムで形成されたストランドを使って製造された複合ロープ構造体の例の断面である。
【図10】図10は、本発明の原理に基づいて複合ロープ構造体を製作する工程の第2の例に使用できる加撚システムの非常に概略的な図である。
【図11】図11は、前記製作工程の第2の例に使用できる第1の撚合(組み合わせ)システムの非常に概略的な図である。
【図12】図12は、前記製作工程の第2の例に使用できる第2の撚合(組み合わせ)システムの非常に概略的な図である。
【図13】図13は、本発明の複合ロープ構造体に使用できるヤーン例の断面である。
【図14】図14は、本発明の複合ロープ構造体に使用できるストランド例の断面である。
【図15】図15は、本発明の複合ロープ構造体に使用できる別のストランド例の断面である。
【0010】
【図16】図16は、本発明の複合ロープ構造体例の断面である。
【0011】
【図17】図17は、本発明の別の複合ロープ構造体例の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず図1Aおよび図1Bを参照すると、本発明の原理に基づき構成され、またこれを具体化した複合ロープ構造体20が示されている。この複合ロープ構造体20は、複数の形成済み複合ストランド(子縄)22と、コアストランド24とを有する。可能性として図7で最適に示しているように、前記形成済み複合ストランド22は、これら複数の(2若しくはそれ以上の)形成済み複合ストランド22が前記コアストランド24と組み合わされて当該複合ロープ構造体20を形成するよう、実質的にらせん状の構成で予備成形されている。この例示した複合ロープ構造体20は6本の複合ストランド22を有し、これらが1本のコアストランド24を囲んでいる。
【0013】
以下、例示した前記形成済み複合ストランド22の組成および製造についてさらに詳しく説明する。図2に示しているのは、ブランク(素材)形成システム30の例である。このブランク形成システム30は、複数の送りローラー32を有し、その各送りローラー32は一定の長さのファイバー(繊維)34を含んでいる。明瞭性のため、例示したこのブランク形成システム30では、5つの送りローラー32および5本のファイバー34を例示している。5本またはそれ以下のファイバーを図示したように使用することも可能だが、通常は、5本を超えるファイバーが使用される。
【0014】
これらのファイバー34は柔軟性があるため、前記送りローラー32から引き出し、組み合わせて、束36にすることができる。この例示したファイバー34の束36は、単に平行なファイバー群を有する。以下さらに詳しく説明するように、この束は、前記ファイバーを加撚し、編み、あるいは機械的に絡み合わせることにより、形成できる。
【0015】
前記ファイバー34の前記束36に、マトリックス槽(充填材槽)40および成形ダイ(成形金型)42を通過させると、未硬化の(キュアリングしていない)複合ブランク材44が得られる。図3に示すように、前記マトリックス槽40には、前記ファイバー46の周囲および当該ファイバー46間でマトリックス46を形成するマトリックス材料(充填材料)が含まれている。この時点で、このマトリックス材料は、前記ファイバー34間およびそれらの周囲を流れる十分な流動性がある一方、前記成形ダイ42通過後も自らの形状を保つ十分な塑性がある。前記マトリックス槽40を加圧すると、前記ファイバー34間およびそれらの周囲の前記マトリックス材料の流れを促進できる。
【0016】
図3は、さらに、例示した前記成形ダイ42が、前記未硬化の複合ブランク材44を実質的に円柱形状に形成することを示している。ただし、このダイ42は、前記マトリックスを他の形状に形成するように構成することもできる。例えば前記ダイ42は、以下さらに詳しく説明するように、完成した前記複合ロープ構造体20に望ましい特性がもたらされるよう設計された形状に前記マトリックス46を形成するよう構成できる。
【0017】
再び図2を参照すると、前記未硬化の複合ブランク材44を乾燥機50で処理して、処理済みの複合ブランク材52を得ている。この処理済みの複合ブランク材は、硬化(キュアリング)済み、一部硬化済み、または未硬化の状態であってよい。この時点で、処理済みの前記マトリックス材料は、塑性形態または柔軟な形態であってよく、あるいは塑性形態から剛性(硬質)形態に変換された状態であってよい。このように、例示した前記マトリックス46は、前記処理済みの複合ブランク材52が実質的に円柱形で実質的に直線状の形態を保つよう、前記ファイバー34の周囲で固化される。
【0018】
次に、例示した前記処理済みの複合ブランク材52は、カッター60内へ送られ、前記マトリックス46および前記ファイバー34を有する複合ブランク(素材)62へと切断される。例示したこれらの複合ブランク62は、本体が剛性で細長く、実質的に円柱形で、実質的に直線状または線形であり、前記カッター60のパラメータにより事前に決定される長さを有する。ただし前記複合ブランク材52は、一部硬化済み、または未硬化の場合、柔軟性または半剛性を保っていることもあり、その場合は、前記カッター60を使って当該処理済みの複合ブランク材をブランク62へと切断する必要はない。その代わり、以下説明するように、前記複合ブランク材52をボビンなどに巻きつけて格納および/または追加処理することができる。
【0019】
別の複合ロープ構造体例は、コミングルド(混繊)ヤーンにより形成された複合ストランド22を有することができる。コミングルドヤーンは、カーボンヤーンなど少なくとも2つのタイプの高性能ヤーンと、ポリエチレンヤーンなどマトリックスを形成する熱可塑性ヤーンとの組み合わせから成る。加熱状態では、前記マトリックスを形成している比較的溶融温度の低いヤーンが溶融し、前記高性能ヤーンのマトリックスを形成する。前記コミングルドヤーンは、上述の含浸ヤーンと同様な工程を経て、加熱チャンバーおよび成形ダイを通過する。これを冷却すると、前記複合ストランド22が形成される。
【0020】
ここで図4を参照すると、例示した前記複合ブランク62を未形成の複合ストランド72に変換するブランク加撚システム70が示されている。このブランク加撚システム70は、アンカー(固定)アセンブリ74と、加撚アセンブリ76と、加熱アセンブリ78とを有する。特に、前記複合ブランク62は、前記アンカーアセンブリ74と前記加撚アセンブリ76との間に連結されており、前記加熱アセンブリ78を使って実質的に当該複合ブランク62の長さ全体に沿って加熱される。
【0021】
前記加熱アセンブリ78が加える熱により、前記複合ブランク62のマトリックス材料は塑性形態に戻る。前記アンカーアセンブリ74が前記複合ブランク62の一端を保持する一方、前記加撚アセンブリ76は、当該複合ブランク62の長手方向の軸に関してこれを加撚する。前記マトリックス材料は塑性であることから、前記複合ブランク62が加熱されるに伴い前記マトリックス46が変形して、当該複合ブランク62内の前記ファイバー34の加撚を可能にする。望ましい程度の撚りが前記複合ブランク62に与えられた時点で、前記マトリックス材料を冷却すると、加撚された(有撚の)前記ファイバー34の周囲において、前記マトリックス46が新たな形態で固化し、未形成の複合ストランド72が得られる(図5)。前記複合ブランク材52を、例示した前記複合ブランク62へと切断せずにボビンなどで回収する場合は、前記ボビン自体を回転させて前記複合ブランク材52をその軸に関し加撚することができる。
【0022】
外側からは前記マトリックス46だけが見える。前記未形成の複合ストランド72の本体は剛性で細長く、実質的に円柱形で、実質的に直線状または線形であり、前記カッター60のパラメータにより事前に決定される長さを有する。そのため、この未形成の複合ストランド72の外観は、前記複合ブランク62と非常によく似ている。ただし、前記ファイバー34は、前記複合ブランク62内では実質的に平行な態様で構成されているのに対し、前記未形成の複合ストランド72内では内部で加撚されている(有撚状態である)。
【0023】
ここで図5および図6を参照すると、前記未形成の複合ストランド72を前記形成済み複合ストランド22に変換する形成システム80が示されている。この形成システム80は、ガイド(誘導)アセンブリ82と、送りアセンブリ84と、加撚アセンブリ86とを有する。前記ガイドアセンブリ82は、ガイド(誘導)部材90と、ガイドベアリング92と、ガイドクランプ94とを有する。前記送りアセンブリ84は、ヒーターアセンブリ96および送りスリーブ98を有する。
【0024】
前記ガイド部材90は、細長い剛性の部材で、前記コア部材24と同様な形状および長さを有する。当該ガイド部材90の一端は前記ガイドベアリング92により回転可能に支持され、当該ガイド部材90の他端は前記加撚アセンブリ86により支持される。前記送りアセンブリ84は、前記ガイドベアリング92と所定の関係で保持される。
【0025】
図5に示すように、前記未形成の複合ストランド72は、ガイドクランプ94により前記ガイド部材90に固定される。次に、当該未形成の複合ストランド72は、前記マトリックス材料が再び塑性になるよう、前記ヒーターアセンブリ96により加熱される。次いで前記加撚アセンブリ86が、矢印Aで示すように、前記ガイド部材90の長手方向の軸により画成されるガイド(誘導)軸に関して回転し、矢印Bで示すように、前記ガイド軸に沿ってガイドベアリング92から遠ざかるよう移動する。
【0026】
この加撚アセンブリ86が前記ガイド軸に関して回転し、これに沿って移動するに伴い、前記未形成の複合ストランド72は、前記ヒーターアセンブリ96および前記送りスリーブ98を通過して引っ張られ、前記ガイド部材90に巻き付けられる。また、前記ガイド部材90に巻き付いた当該未形成の複合ストランド72の一部は、前記送りアセンブリ84の前記ヒーターアセンブリから遠ざかるよう移動するため、前記マトリックス材料が冷却されて実質的に剛性に戻る。
【0027】
前記未形成の複合ストランド72の加撚および引張りは、このストランド72が全部前記送りアセンブリ84から引き出され、前記ガイド部材90に巻き付けられるまで続く。前記未形成の複合ストランド72がすべて前記ガイド部材90に巻き付けられ、前記マトリックス材料が冷却された時点で、前記未形成の複合ストランド72は、前記形成済み複合ストランド22に変換されたことになる。次に、この形成済み複合ストランド22は、前記ガイド部材90から取り外される。
【0028】
例示した前記形成済み複合ストランド22は、その長手方向に沿ったすべての点で断面が略円形であるが、実質的にらせん状の形態になり、この携帯は、前記ガイド部材90の直径と、前記加撚アセンブリ86が前記ガイド軸に関して回転する回転速度(と、前記加撚アセンブリ86が前記ガイド軸に沿って移動する変位速度とにより決定される。そのため、当該形成済み複合ストランド22のこのらせん状の構成は、前記ガイド部材90の直径により決定される内径Dと、前記加撚アセンブリ86の回転速度および変位速度により決定されるピッチPとのパラメータを使って定量化することができる。
【0029】
当該形成済み複合ストランド22のこのらせん状構成は、図1Aおよび図1Bに示したように複数の前記複合ストランド22を前記コア24と組み合わせて前記複合ロープ構造体20を得ることができるよう、事前に決定される。特に、6本の形成済み複合ストランド22を前記コア24に巻き付ける場合は、前記内径Dを前記コア24の直径と実質的に等しくし、また前記6本のストランド22を実質的に隙間なく前記コア24に巻き付けることができるよう、前記ピッチPを十分な大きさにする。そのため、当該形成済み複合ストランド22の幾何学的形状は、コアおよびストランド数に応じて異なる。
【0030】
例示した前記形成済み複合ストランド22を形成するため使用される前記マトリックス材料は、熱可塑性のポリウレタン系で、前記ファイバー34はガラス繊維(グラスファイバー)である。ただし、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PVC(ポリ塩化ビニル)、およびそれらの混合物など、他の熱可塑性の樹脂系材料を使っても、前記マトリックスを形成することができる。また、炭素繊維(カーボンファイバー)、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、PBI(ポリベンゾイミダゾール)繊維、玄武岩繊維、ベクトラン(登録商標)繊維、HMPE(超高分子量ポリエチレン)繊維、およびセラミック繊維などの高性能繊維(ファイバー)も使用できる。
【0031】
ここで図8を参照すると、上述した前記ブランク形成システム30および前記ブランク加撚システム70に置き換えて使用できる別のブランク(素材)形成システム120の例が示されている。
【0032】
このブランク形成システム120の例では、前記ブランク形成システム30および前記ブランク加撚システム70の双方の機能を組み合わせて、図9に表した複合ロープ構造体122を生成している。
【0033】
特に、このブランク形成システム120では、上述した未形成の複合ストランド72と組成的に同様な未形成の複合ストランド124を作製する。当該未形成の複合ストランド124は、前記未形成の複合ストランド72の幾何学的形状と同じ幾何学的形状を有してもよいが、以下さらに詳しく説明するように、例示した前記未形成の複合ストランド72とは異なる幾何学的形状を有する。
【0034】
当該未形成の複合ストランド124は、形成済み複合ストランド126へと変換され、それら形成済み複合ストランド126は、コア128と組み合わされて前記複合ロープ構造体122を形成する。
【0035】
ここで再び図8を参照すると、前記ブランク形成システム120は、複数の送りローラー130を有し、その各送りローラー130は一定の長さのファイバー132を含んでいる。明瞭性のため、この例示したブランク形成システム120では、5つの送りローラー130および5本のファイバー132を例示している。ここでも5本またはそれ以下のファイバーを図示したように使用することが可能だが、前記形成済み複合ストランド126を作製する場合は、通常、5本を超えるファイバーが使用される。
【0036】
これらのファイバー132は柔軟性があるため、前記送りローラー130から引き出し、撚合(組み合わせ)アセンブリ136を使って組み合せて、有撚束134にすることができる。前記撚合アセンブリ136は、前記有撚束134内で前記ファイバー132が有撚状態になるよう、前記ファイバー132同士を絡み合わせる。また、前記有撚束134は、それらファイバーを編み、または機械的に絡み合わせても形成できる。
【0037】
前記ファイバー132の前記有撚束134に、マトリックス槽140および成形ダイ(成形金型)142を通過させると、未硬化の(キュアリングしていない)複合ブランク材144が得られる。前記マトリックス槽140には、前記ファイバー132の周囲および当該ファイバー46間でマトリックスを形成するマトリックス材料(充填材料)が含まれている。この時点で、このマトリックス材料は、前記ファイバー132間およびそれらの周囲を流れて前記有撚束134を形成する十分な流動性がある一方、前記成形ダイ142通過後も自らの形状を保つ十分な塑性がある。
【0038】
例示した前記成形ダイ142は、前記未硬化の複合ブランク材144を、その断面が実質的に台形の形状になるよう形成する。そのため、以下の説明から明確に理解されるように、例示した前記ダイ142は、完成した前記複合ロープ構造体122に望ましい特性がもたらされるよう設計された形状にマトリックスを形成するよう構成されている。
【0039】
再び図8を参照すると、前記未硬化の複合ブランク材144を乾燥機150で硬化させ(キュアリングし)て、予備成形した複合ブランク材152を得ている。この時点で、前記マトリックス材料は硬化済みで、塑性形態から剛性形態に変換された状態であってよい。あるいは、当該マトリックス材料は、未硬化または一部のみ硬化済みで、前記複合ブランク材144にまだ塑性または柔軟性が残っている状態であってもよい。この例示したマトリックスは、前記予備成形した複合ブランク材152が実質的に台形で(台形の断面を保ち)、実質的に直線状の形態を保つよう、前記ファイバー132の周囲で十分固化される。
【0040】
次に、硬化済みの前記複合ブランク材152は、カッター160内へ送られ、切断されて、前記未形成の複合ストランド124になる。そのため、この例示した複合ストランド124は、本体が剛性で細長く、実質的に直線状または線形であり、前記カッター160のパラメータにより事前に決定される長さを有する。
【0041】
ここでも外観的には前記マトリックス146だけが見えている。前記未形成の複合ストランド124の本体は剛性で細長く、実質的に直線状または線形であり、前記カッター160のパラメータにより事前に決定される長さを有する。また、前記ファイバー132は前記加撚アセンブリ136により加撚されている(有撚状態である)ため、前記未形成の複合ストランド124内で有撚状態になっている。次いで、上述した形成システム80例などの形成システムを使って前記未形成の複合ストランド124を処理すると、前記形成済み複合ファイバー126が得られる。
【0042】
次に当該形成済み複合ファイバー126は、前記コア128に巻き付けられて、前記複合ロープ構造体122を形成する。上述のとおり、前記未形成の複合ストランド124は、略台形の断面を有する。この幾何学的形状により、当該形成済み複合ストランド126は、互いにほとんど、またはまったく隙間がない状態で、前記コア128に巻き付くことができる。これら形成済み複合ストランドの内面は、互いにほとんど、またはまったく隙間がない状態で、前記コア128に係合する。また、これら形成済み複合ストランド126の外面は、当該ロープ構造体が実質的に円柱形の外面を有するよう構成される。
【0043】
ここで図10、11、および12を参照すると、本発明の原理に基づき、これを具体化した別の複合ロープ例を形成するシステムおよび方法が示されている。
【0044】
まず図10を参照すると、含浸ヤーン222を加撚するための加撚システム220が示されている。当該含浸ヤーン222は、加撚されていない(無撚)状態では参照符号222aで、加撚された(有撚)状態では参照符号222bで、それぞれ識別される。
【0045】
これら含浸ヤーン222は、ファイバー(繊維)および樹脂を有した複合構造である。それらのファイバーは、主に引張荷重下における前記ヤーン222の強度特性をもたらす。前記樹脂は、前記ファイバーを取り囲むマトリックス材料(充填材料)を形成し、前記ファイバー間で負荷を伝達する。さらに、この樹脂マトリックスは、周囲環境から前記ファイバーを保護する。その例として、この樹脂マトリックスは、熱、紫外線、摩耗、および他の外的環境要因から前記ファイバーを保護するよう配合することができる。
【0046】
例示した前記含浸ヤーン222の前記樹脂部分は、未硬化の(キュアリングしていない)状態および硬化済みの状態で存在する。前記未硬化の状態において、前記樹脂材料は柔軟であるため、前記マトリックスは、前記含浸ヤーン222の曲げや加撚などを可能にする。一般に、前記樹脂マトリックスは、加熱すると硬化温度になるまでは塑性または可鍛性を増す。硬化温度を超えると、前記樹脂マトリックスは硬化し(キュアリングされ)、実質的により剛性になる。この樹脂マトリックスの特性は、最終的な複合ロープ構造体の製造上の利便性および/または意図された特定の作用(動作)環境に応じて調整できる。
【0047】
例示した前記含浸ヤーン222は、約90重量%のファイバーと、約10重量%の樹脂とを有する。前記ファイバーの割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に85%〜95%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に70%〜98%の第2の範囲内にしなければならない。前記樹脂の割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に5%〜15%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に2%〜30%の第2の範囲内にしなければならない。
【0048】
前記含浸ヤーン222の代替例は、約80重量%のファイバーと、約20重量%の樹脂とを有する場合がある。前記ファイバーの割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に75%〜90%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に50%〜95%の第2の範囲内にしなければならない。前記樹脂の割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に10%〜25%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に5%〜50%の第2の範囲内にしなければならない。
【0049】
例示した前記ファイバーはガラス繊維であるが、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維のうちの1つ、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記樹脂は熱可塑性ポリウレタンであるが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PVC、プラスチゾル、およびそれらの混合物など、他の熱可塑性材料を使ってもよい。
【0050】
例示した前記加撚システム220は、前記無撚含浸ヤーン222aを格納する第1のボビン224aと、前記有撚含浸ヤーン222bを格納する第2のボビン224bとを有する。前記無撚含浸ヤーン222aは、前記第1のボビン224aから引き出され、加撚されて、前記有撚含浸ヤーン222bとして前記第2のボビン224bに巻き取られる。
【0051】
この例示した加撚システム220では、前記第2のボビン224bが主回転軸Aに関し回転し、また前記含浸ヤーン222により画成される撚りの回転軸Bに関しても回転する。この第2のボビン224bの前記主軸Aおよび前記加撚軸Bに関する回転により、前記無撚含浸ヤーン222aは、前記有撚含浸ヤーン222bに変換されて、前記第2のボビン224bに巻き取られる。前記無撚含浸ヤーン222aを形成するファイバーは、実質的に直線状で平行である一方、前記有撚含浸ヤーン222bを形成するファイバーは、全体としてらせん状の構成になる。
【0052】
前記無撚含浸ヤーン222aは、室温で加撚することができる。ただし、この加撚工程を容易にするため、当該加撚システム220は、さらに任意選択で、前記無撚含浸ヤーン222aの加撚前および/または加撚後に、当該無撚含浸ヤーン222aを加熱する加熱ステージ226を有する。前記加熱ステージ226は、前記無撚含浸ヤーン222aの樹脂マトリックスを、当該樹脂マトリックスの硬化温度未満の高温に加熱する。
【0053】
前記無撚含浸ヤーン222aのマトリックス部分を形成している樹脂を軟化させることにより、前記ファイバーは、より容易に前記実質的にらせん状の構成へと加撚することができる。また、加撚前、加撚中、および/または加撚後に加熱したのち、冷却することにより、前記有撚含浸ヤーン222bの樹脂マトリックス部分が、前記ファイバーを実質的にらせん状の構成に保つ可能性は高まる。
【0054】
例示した前記加撚システム220は、さらに任意選択で、前記有撚含浸ヤーン222bが前記第2のボビン224bに巻き取られる際、当該有撚含浸ヤーン222bに剥離剤を適用する剥離剤ステージ228を有する。前記剥離剤またはそれと同様な化学物質は、前記有撚含浸ヤーンが高温で結合しあうのを防ぎ、またはその後、後述するように前記有撚含浸ヤーン222bと他のロープ構成要素とを組み合わせる際の硬化時に前記有撚含浸ヤーンが結合しあうのを防ぐ上で役立つ。
【0055】
図11は、複数の未硬化の有撚含浸ヤーン222bを1本のストランド232へと組み合わせる第1の撚合(組み合わせ)システム230を例示したものである。この例示したストランド232は、1×7構成と呼ぶ態様で、7本の有撚含浸ヤーン222bを有する。ただし、これら有撚含浸ヤーン222bは、これより少数または多数のヤーンを使って、また1×7構成以外の組み合わせ構成で組み合わせることもできる。
【0056】
例示した前記ストランド232を形成するには、第1の回転部アセンブリ234で、前記第2のボビン224bを7つ支持する。前記第1の回転部アセンブリ234は、従来のものであり、または従来のものであってよく、本明細書では、単に本発明の完全な理解を助けるため必要に応じて説明する。例示した前記第1の回転部アセンブリ234は、中央ボビン取り付け部236と、6つの外周ボビン取り付け部238とを有する。前記中央ボビン取り付け部236上には、前記第2のボビン224bを取り付けて支持し、当該第2のボビン224bをその主軸Aに関し回転させることができる。前記外周ボビン取り付け部238は、前記第2のボビン224bを支持し、これらを各々の主軸Aに関し回転させる。
【0057】
さらに、当該外周ボビン取り付け部238は、前記第2のボビン224bを支持し、それら第2のボビン224bを、前記第1の回転部アセンブリ234により画成されるシステム軸Cに関し一体的に回転させる。前記中央ボビン取り付け部236は、当該中央ボビン取り付け部236の支持する前記第2のボビン224bが、前記外周ボビン取り付け部238の支持する前記第2のボビン224bとともに、前記システム軸Cに関し回転するよう、前記外周ボビン取り付け部238を使って支持することができる。あるいは、前記中央ボビン取り付け部236は、当該中央ボビン取り付け部236の支持する前記第2のボビン224bが、その主軸Aだけに関し回転し、前記システム軸Cに関しては回転しないよう、前記外周ボビン取り付け部238とは無関係に支持することができる。
【0058】
前記有撚含浸ヤーン222bが前記第1の回転部アセンブリ234から引き出されるに伴い、前記外周ボビン取り付け部238の前記第2のボビン224bから引き出された前記有撚含浸ヤーン222bは、前記中央ボビン取り付け部236の前記第2のボビン取り付け部224bから引き出された前記有撚含浸ヤーン222bと組み合わされて、前記ストランド232を形成する。この例示したシステム230では、前記ストランド232がストランドボビン240に巻き取られる。
【0059】
前記中央ボビン取り付け部236の前記第2のボビン取り付け部224bから引き出された前記有撚含浸ヤーン222bは、前記ストランド232のコア含浸ヤーンを形成する。このコア含浸ヤーン中のファイバーは、前記加撚システム220で生成された実質的にらせん状の構成を保つ。コアヤーンの周囲の前記有撚含浸ヤーン222bは、外周ヤーンと呼ばれる。これら外周ヤーン中のファイバーは、前記加撚システム220で生成された前記実質的にらせん状の構成を保つが、前記コアヤーンを中心とした二次的ならせん状の構成も有する。これにより、当該外周ヤーン中のファイバーは、実質的に二重らせん状の構成を有する。
【0060】
前記有撚含浸ヤーン222bは、室温で組み合わせて前記ストランド232を形成することができる。ただし、この組み合わせ工程を容易にするため、当該第1の撚合システム230は、さらに任意選択で、前記無撚含浸ヤーン222aの加撚前および/または加撚後に、当該無撚含浸ヤーン222aを加熱する加熱ステージ242を有する。この加熱ステージ242は、前記有撚含浸ヤーン222bの樹脂マトリックスを、当該樹脂マトリックスの硬化温度未満の高温に加熱する。
【0061】
前記有撚含浸ヤーン222bのマトリックス部分を形成している樹脂を軟化させることにより、前記有撚含浸ヤーン222bは、前記コアヤーンのファイバーが実質的にらせん状構成で、かつ前記外周ヤーンのファイバーが実質的に二重らせん状構成に維持された状態で、前記ストランド232に組み入れることがより容易になる。また、加撚前、加撚中、および/または加撚後に加熱したのち、冷却することにより、前記有撚含浸ヤーン222bの樹脂マトリックス部分が、前記コア含浸ヤーンのファイバーをらせん状の構成に保ち、前記外周含浸ヤーンのファイバーを実質的に二重らせん状の構成に保つ可能性は高まる。
【0062】
例示した前記撚合システム230は、さらに任意選択で、前記ストランド232が前記ストランドボビン240に巻き取られる際、各前記ストランド232に剥離剤を適用する剥離剤ステージ244を有する。前記剥離剤またはそれと同様な化学物質は、前記ストランド232が高温で結合しあうのを防ぎ、またはその後、後述するように前記ストランド232と他のロープ構成要素とを組み合わせる際の硬化時に前記ストランド232が結合しあうのを防ぐ上で役立つ。
【0063】
例示した前記第2の撚合システム230は、さらに、任意選択の成形ダイ(成形金型)246を有する。この成形ダイ246は、端部が加撚および結合(接合)される箇所に配置される。
【0064】
例示した前記ストランド232は、その硬化温度を超えて加熱し、硬化させると、第1の複合ロープ構造体の例を形成することができる。特に、当該ストランド232は、硬化させると、意図された作用(動作)環境の要件を満たす特性が得られる。他の作用環境では、複数の前記ストランド232を組み合わせて最終的な複合ロープ構造体を形成することが必要になる場合もある。この場合、当該ストランド232の樹脂マトリックスは、未硬化のままにされ、または一部のみ硬化される。
【0065】
図12は、複数のストランド232を1本のロープ構造体252へと組み合わせる第2の撚合(組み合わせ)システム250を例示したものである。この例示したロープ構造体252は、7×7構成と呼ぶ態様で、7本のストランド232を有する。ただし、これらのストランド232は、これより少数または多数のヤーンおよび/またはストランドを使って、また7×7構成以外の組み合わせ構成で組み合わせることもできる。
【0066】
例示した前記ロープ構造体252を形成するには、第2の回転部アセンブリ254で、前記ストランドボビン240を7つ支持する。前記第2の回転部アセンブリ254は、従来のものであり、または従来のものであってよく、本明細書では、単に本発明の完全な理解を助けるため必要に応じて説明する。例示した前記第2の回転部アセンブリ254は、中央ボビン取り付け部256と、6つの外周ボビン取り付け部258とを有する。前記中央ボビン取り付け部256上には、前記ストランドボビン240を取り付けて支持し、当該ストランドボビン240をその主軸に関し回転させることができる。前記外周ボビン取り付け部258は、前記ストランドボビン240を支持し、これらを各々の主軸に関し回転させる。
【0067】
さらに、当該外周ボビン取り付け部258は、前記ストランドボビン240を支持し、それら前記ストランドボビン240を、前記第2の回転部アセンブリ254により画成されるシステム軸Dに関し一体的に回転させる。前記中央ボビン取り付け部256は、当該中央ボビン取り付け部256の支持する前記ストランドボビン240が、前記外周ボビン取り付け部258の支持する前記ストランドボビン240とともに、前記システム軸Dに関し回転するよう、前記外周ボビン取り付け部258を使って支持することができる。あるいは、前記中央ボビン取り付け部256は、当該中央ボビン取り付け部256の支持する前記ストランドボビン240が、その主軸Aだけに関し回転し、前記システム軸Dに関しては回転しないよう、前記外周ボビン取り付け部258とは無関係に支持することができる。
【0068】
前記ストランド232が前記第2の回転部アセンブリ254から引き出されるに伴い、前記外周ボビン取り付け部258の前記ストランドボビン240から引き出された前記ストランド232は、前記中央ボビン取り付け部256の前記ストランドボビン240から引き出された前記ストランド232と組み合わされて、前記ロープ構造体252を形成する。この例示したシステム250では、前記ロープ構造体252がロープボビン260に巻き取られる。
【0069】
前記中央ボビン取り付け部256の前記ストランドボビン240から引き出された前記ストランド232は、前記ロープ構造体252のコアストランドを形成する。前記コアストランド内のファイバーは、前記第1の撚合システム230により生成された形状を保つ。前記コアストランドの周囲の前記ストランド232は、外周ストランドと呼ばれる。これら外周ストランドの外周ヤーン中のファイバーは、前記第1の撚合システム230で生成された形状を保つが、前記コアストランドを中心とした三次的ならせん状の構成も有する。これにより、当該外周ヤーン中のファイバーは、実質的に三重らせん状の構成を有する。
【0070】
前記ストランド232は、室温で組み合わせて前記ロープ構造体252を形成することができる。ただし、この組み合わせ工程を容易にするため、当該第2の撚合システム250は、さらに任意選択で、前記ストランド232が組み合わされる前および/または後で、当該ストランド232を加熱する加熱ステージ262を有する。この加熱ステージ262は、前記ストランド232の樹脂マトリックスを、当該樹脂系の硬化温度または溶融温度より低い高温に加熱する。
【0071】
前記ストランド232のマトリックス部分を形成している樹脂を軟化させることにより、当該ストランド232は、そのファイバーが適切ならせん状の構成を維持した状態で、より容易に組み合わせることができる。また、加撚前、加撚中、および/または加撚後に加熱したのち、冷却することにより、前記ストランド232の樹脂マトリックス部分が、前記ファイバーを前記適切ならせん状の構成に保つ可能性は高まる。
【0072】
例示した前記第2の撚合システム250は、さらに、任意選択の成形ダイ(成形金型)264を有する。この成形ダイ264は、端部が加撚および結合(接合)される箇所に配置される。
【0073】
ここで図13〜17を参照すると、本発明の原理を使って作製できる含浸ヤーン、ストランド、およびロープ構造体の断面をやや図式的に表現した図が示されている。図13は、前記有撚含浸ヤーン222bの1つの断面を表している。図14は、前記有撚含浸ヤーン222bを7本有する上記で例示したストランド232の断面を表している(1×7構成)。図15は、前記有撚含浸ヤーン222bを19本組み合わせて形成できる別のストランド270の例の断面を表している(1×19構成)。図16は、例示した前記ストランド232を7本有する上記ロープ構造体252の断面を表している(7×7構成)。図17は、上記で例示した前記ストランド270を7本組み合わせて得られる別のロープ構造体例の断面を表している(7×19構成)。
【0074】
以上を考慮すると、本発明は、上記以外の形態で具体化(具現化)できることが明確に理解されるべきである。本発明の範囲は、本発明の例に関する前述の詳細な説明ではなく、本明細書に添付された請求項を参照して決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年5月18日付け出願済み米国仮特許出願第60/930,853号の優先権を主張するものである。また本願は、2007年5月19日付け出願済み米国仮特許出願第60/931,088号の優先権を主張するものである。上記に記載した関連出願の内容は、すべて参照により本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、複合ロープ構造体と、複合ロープ構造体を作製するシステムおよび方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
2つの物体の間には、引張を伴ったロープ構造体の構成が必要になることが多い。所与のタイプのロープ構造体の特性がわかると、そのタイプのロープ構造体が特定の使用目的に適しているかどうかが決定する。ロープ構造体の特性としては、破壊強度、伸長度、柔軟性、重量、および耐摩耗性や摩擦係数などの表面特性などがある。また、加熱、冷却、水分、紫外線へのばく露(露光)、摩耗、曲がりなどの環境要因も、ロープ構造体の特性に影響を及ぼす。
【0004】
そのため、ロープの使用目的により、一般にロープの各特性の許容範囲が決定される。本明細書でロープに適用される用語「破壊(failure)」は、少なくとも1つのロープ特性に伴う許容範囲を超えた条件下に置かれるロープに言及して使用される。
【0005】
このように、特定の環境に対して改善されたロープ特性を有するロープ構造体が必要であり、またそのようなロープを製造するシステムおよび方法も必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の形成済み複合ストランドを有するロープ構造体として具体化(具現化)することができる。前記複数の形成済み複合ストランドは、それぞれファイバー材料(繊維材料)およびマトリックス材料(充填材料)を有する。前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は、加撚されている(有撚状態である)。前記複数の形成済み複合ストランドの形状は、当該複数の複合ストランドが組み合わせされて前記ロープ構造体になるのを促進するよう事前に決定されている。
【0007】
本発明は、ロープ構造体を形成する方法としても具体化(具現化)でき、この方法は以下の工程を有する。ブランク材料(ブランク材)を得るため、マトリックス材料内にファイバー材料を配置構成する。未形成の複合ストランドを得るため、前記ブランク材料の前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料を加撚する。所定の形状をそれぞれ有する形成済み複合ストランドを得るため、前記複数の未形成の複合ストランドを加工する。前記形成済み複合ストランドを組み合わせて前記ロープ構造体にする。
【0008】
また、本発明は、複数の形成済み複合ストランドを有するロープ構造体としても具体化(具現化)することができる。前記形成済み複合ストランドは、ファイバー材料およびマトリックス材料を有する。前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は、加撚されている(有撚状態である)。前記形成済み複合ストランドのうち少なくとも1つは、実質的に円柱形である。複数の前記形成済み複合ストランドは、実質的にらせん状である。前記ロープ構造体を得るため、前記実質的にらせん状の形成済み複合ストランドは、前記少なくとも1つの実質的に円柱形の形成済み複合ストランドの周囲に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】図1Aは、複数の形成済み複合ストランドがコアストランドの周囲に組み合わされて、複合ロープ構造体を形成している状態を示した図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した前記複合ロープ構造体の断面である。
【図2】図2は、本発明のシステムおよび方法の一部として使用される複合ブランク(素材)を形成する工程を実施するブランク形成システムのやや概略的な図である。
【図3】図3は、図2に示した前記システムで生成された前記複合ブランクを示した断面図である。
【図4】図4は、本発明のシステムおよび方法の一部として使用される工程であって、図2に示したシステムで生成された複合ブランクを未形成の複合ストランドに変換する工程、を実施するブランク加撚システムのやや概略的な図である。
【図5】図5および図6は、図4の前記システムで生成された前記未形成の複合ストランドを形成済み複合ストランドに変換する工程を実施するシステムのやや概略的な図である。
【図6】図5および図6は、図4の前記システムで生成された前記未形成の複合ストランドを形成済み複合ストランドに変換する工程を実施するシステムのやや概略的な図である。
【図7】図7は、図5および図6の前記システムで生成された形成済み複合ストランドの例を示した図である。
【図8】図8は、本発明のシステムおよび方法の一部として使用される工程であって、複合ブランクを形成する工程と、当該複合ブランクを線形の複合ストランドに変換する工程と、を実施する別の空白形成システムの例のやや概略的な図である。
【図9】図9は、図8に示した前記ブランク形成システムで形成されたストランドを使って製造された複合ロープ構造体の例の断面である。
【図10】図10は、本発明の原理に基づいて複合ロープ構造体を製作する工程の第2の例に使用できる加撚システムの非常に概略的な図である。
【図11】図11は、前記製作工程の第2の例に使用できる第1の撚合(組み合わせ)システムの非常に概略的な図である。
【図12】図12は、前記製作工程の第2の例に使用できる第2の撚合(組み合わせ)システムの非常に概略的な図である。
【図13】図13は、本発明の複合ロープ構造体に使用できるヤーン例の断面である。
【図14】図14は、本発明の複合ロープ構造体に使用できるストランド例の断面である。
【図15】図15は、本発明の複合ロープ構造体に使用できる別のストランド例の断面である。
【0010】
【図16】図16は、本発明の複合ロープ構造体例の断面である。
【0011】
【図17】図17は、本発明の別の複合ロープ構造体例の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず図1Aおよび図1Bを参照すると、本発明の原理に基づき構成され、またこれを具体化した複合ロープ構造体20が示されている。この複合ロープ構造体20は、複数の形成済み複合ストランド(子縄)22と、コアストランド24とを有する。可能性として図7で最適に示しているように、前記形成済み複合ストランド22は、これら複数の(2若しくはそれ以上の)形成済み複合ストランド22が前記コアストランド24と組み合わされて当該複合ロープ構造体20を形成するよう、実質的にらせん状の構成で予備成形されている。この例示した複合ロープ構造体20は6本の複合ストランド22を有し、これらが1本のコアストランド24を囲んでいる。
【0013】
以下、例示した前記形成済み複合ストランド22の組成および製造についてさらに詳しく説明する。図2に示しているのは、ブランク(素材)形成システム30の例である。このブランク形成システム30は、複数の送りローラー32を有し、その各送りローラー32は一定の長さのファイバー(繊維)34を含んでいる。明瞭性のため、例示したこのブランク形成システム30では、5つの送りローラー32および5本のファイバー34を例示している。5本またはそれ以下のファイバーを図示したように使用することも可能だが、通常は、5本を超えるファイバーが使用される。
【0014】
これらのファイバー34は柔軟性があるため、前記送りローラー32から引き出し、組み合わせて、束36にすることができる。この例示したファイバー34の束36は、単に平行なファイバー群を有する。以下さらに詳しく説明するように、この束は、前記ファイバーを加撚し、編み、あるいは機械的に絡み合わせることにより、形成できる。
【0015】
前記ファイバー34の前記束36に、マトリックス槽(充填材槽)40および成形ダイ(成形金型)42を通過させると、未硬化の(キュアリングしていない)複合ブランク材44が得られる。図3に示すように、前記マトリックス槽40には、前記ファイバー46の周囲および当該ファイバー46間でマトリックス46を形成するマトリックス材料(充填材料)が含まれている。この時点で、このマトリックス材料は、前記ファイバー34間およびそれらの周囲を流れる十分な流動性がある一方、前記成形ダイ42通過後も自らの形状を保つ十分な塑性がある。前記マトリックス槽40を加圧すると、前記ファイバー34間およびそれらの周囲の前記マトリックス材料の流れを促進できる。
【0016】
図3は、さらに、例示した前記成形ダイ42が、前記未硬化の複合ブランク材44を実質的に円柱形状に形成することを示している。ただし、このダイ42は、前記マトリックスを他の形状に形成するように構成することもできる。例えば前記ダイ42は、以下さらに詳しく説明するように、完成した前記複合ロープ構造体20に望ましい特性がもたらされるよう設計された形状に前記マトリックス46を形成するよう構成できる。
【0017】
再び図2を参照すると、前記未硬化の複合ブランク材44を乾燥機50で処理して、処理済みの複合ブランク材52を得ている。この処理済みの複合ブランク材は、硬化(キュアリング)済み、一部硬化済み、または未硬化の状態であってよい。この時点で、処理済みの前記マトリックス材料は、塑性形態または柔軟な形態であってよく、あるいは塑性形態から剛性(硬質)形態に変換された状態であってよい。このように、例示した前記マトリックス46は、前記処理済みの複合ブランク材52が実質的に円柱形で実質的に直線状の形態を保つよう、前記ファイバー34の周囲で固化される。
【0018】
次に、例示した前記処理済みの複合ブランク材52は、カッター60内へ送られ、前記マトリックス46および前記ファイバー34を有する複合ブランク(素材)62へと切断される。例示したこれらの複合ブランク62は、本体が剛性で細長く、実質的に円柱形で、実質的に直線状または線形であり、前記カッター60のパラメータにより事前に決定される長さを有する。ただし前記複合ブランク材52は、一部硬化済み、または未硬化の場合、柔軟性または半剛性を保っていることもあり、その場合は、前記カッター60を使って当該処理済みの複合ブランク材をブランク62へと切断する必要はない。その代わり、以下説明するように、前記複合ブランク材52をボビンなどに巻きつけて格納および/または追加処理することができる。
【0019】
別の複合ロープ構造体例は、コミングルド(混繊)ヤーンにより形成された複合ストランド22を有することができる。コミングルドヤーンは、カーボンヤーンなど少なくとも2つのタイプの高性能ヤーンと、ポリエチレンヤーンなどマトリックスを形成する熱可塑性ヤーンとの組み合わせから成る。加熱状態では、前記マトリックスを形成している比較的溶融温度の低いヤーンが溶融し、前記高性能ヤーンのマトリックスを形成する。前記コミングルドヤーンは、上述の含浸ヤーンと同様な工程を経て、加熱チャンバーおよび成形ダイを通過する。これを冷却すると、前記複合ストランド22が形成される。
【0020】
ここで図4を参照すると、例示した前記複合ブランク62を未形成の複合ストランド72に変換するブランク加撚システム70が示されている。このブランク加撚システム70は、アンカー(固定)アセンブリ74と、加撚アセンブリ76と、加熱アセンブリ78とを有する。特に、前記複合ブランク62は、前記アンカーアセンブリ74と前記加撚アセンブリ76との間に連結されており、前記加熱アセンブリ78を使って実質的に当該複合ブランク62の長さ全体に沿って加熱される。
【0021】
前記加熱アセンブリ78が加える熱により、前記複合ブランク62のマトリックス材料は塑性形態に戻る。前記アンカーアセンブリ74が前記複合ブランク62の一端を保持する一方、前記加撚アセンブリ76は、当該複合ブランク62の長手方向の軸に関してこれを加撚する。前記マトリックス材料は塑性であることから、前記複合ブランク62が加熱されるに伴い前記マトリックス46が変形して、当該複合ブランク62内の前記ファイバー34の加撚を可能にする。望ましい程度の撚りが前記複合ブランク62に与えられた時点で、前記マトリックス材料を冷却すると、加撚された(有撚の)前記ファイバー34の周囲において、前記マトリックス46が新たな形態で固化し、未形成の複合ストランド72が得られる(図5)。前記複合ブランク材52を、例示した前記複合ブランク62へと切断せずにボビンなどで回収する場合は、前記ボビン自体を回転させて前記複合ブランク材52をその軸に関し加撚することができる。
【0022】
外側からは前記マトリックス46だけが見える。前記未形成の複合ストランド72の本体は剛性で細長く、実質的に円柱形で、実質的に直線状または線形であり、前記カッター60のパラメータにより事前に決定される長さを有する。そのため、この未形成の複合ストランド72の外観は、前記複合ブランク62と非常によく似ている。ただし、前記ファイバー34は、前記複合ブランク62内では実質的に平行な態様で構成されているのに対し、前記未形成の複合ストランド72内では内部で加撚されている(有撚状態である)。
【0023】
ここで図5および図6を参照すると、前記未形成の複合ストランド72を前記形成済み複合ストランド22に変換する形成システム80が示されている。この形成システム80は、ガイド(誘導)アセンブリ82と、送りアセンブリ84と、加撚アセンブリ86とを有する。前記ガイドアセンブリ82は、ガイド(誘導)部材90と、ガイドベアリング92と、ガイドクランプ94とを有する。前記送りアセンブリ84は、ヒーターアセンブリ96および送りスリーブ98を有する。
【0024】
前記ガイド部材90は、細長い剛性の部材で、前記コア部材24と同様な形状および長さを有する。当該ガイド部材90の一端は前記ガイドベアリング92により回転可能に支持され、当該ガイド部材90の他端は前記加撚アセンブリ86により支持される。前記送りアセンブリ84は、前記ガイドベアリング92と所定の関係で保持される。
【0025】
図5に示すように、前記未形成の複合ストランド72は、ガイドクランプ94により前記ガイド部材90に固定される。次に、当該未形成の複合ストランド72は、前記マトリックス材料が再び塑性になるよう、前記ヒーターアセンブリ96により加熱される。次いで前記加撚アセンブリ86が、矢印Aで示すように、前記ガイド部材90の長手方向の軸により画成されるガイド(誘導)軸に関して回転し、矢印Bで示すように、前記ガイド軸に沿ってガイドベアリング92から遠ざかるよう移動する。
【0026】
この加撚アセンブリ86が前記ガイド軸に関して回転し、これに沿って移動するに伴い、前記未形成の複合ストランド72は、前記ヒーターアセンブリ96および前記送りスリーブ98を通過して引っ張られ、前記ガイド部材90に巻き付けられる。また、前記ガイド部材90に巻き付いた当該未形成の複合ストランド72の一部は、前記送りアセンブリ84の前記ヒーターアセンブリから遠ざかるよう移動するため、前記マトリックス材料が冷却されて実質的に剛性に戻る。
【0027】
前記未形成の複合ストランド72の加撚および引張りは、このストランド72が全部前記送りアセンブリ84から引き出され、前記ガイド部材90に巻き付けられるまで続く。前記未形成の複合ストランド72がすべて前記ガイド部材90に巻き付けられ、前記マトリックス材料が冷却された時点で、前記未形成の複合ストランド72は、前記形成済み複合ストランド22に変換されたことになる。次に、この形成済み複合ストランド22は、前記ガイド部材90から取り外される。
【0028】
例示した前記形成済み複合ストランド22は、その長手方向に沿ったすべての点で断面が略円形であるが、実質的にらせん状の形態になり、この携帯は、前記ガイド部材90の直径と、前記加撚アセンブリ86が前記ガイド軸に関して回転する回転速度(と、前記加撚アセンブリ86が前記ガイド軸に沿って移動する変位速度とにより決定される。そのため、当該形成済み複合ストランド22のこのらせん状の構成は、前記ガイド部材90の直径により決定される内径Dと、前記加撚アセンブリ86の回転速度および変位速度により決定されるピッチPとのパラメータを使って定量化することができる。
【0029】
当該形成済み複合ストランド22のこのらせん状構成は、図1Aおよび図1Bに示したように複数の前記複合ストランド22を前記コア24と組み合わせて前記複合ロープ構造体20を得ることができるよう、事前に決定される。特に、6本の形成済み複合ストランド22を前記コア24に巻き付ける場合は、前記内径Dを前記コア24の直径と実質的に等しくし、また前記6本のストランド22を実質的に隙間なく前記コア24に巻き付けることができるよう、前記ピッチPを十分な大きさにする。そのため、当該形成済み複合ストランド22の幾何学的形状は、コアおよびストランド数に応じて異なる。
【0030】
例示した前記形成済み複合ストランド22を形成するため使用される前記マトリックス材料は、熱可塑性のポリウレタン系で、前記ファイバー34はガラス繊維(グラスファイバー)である。ただし、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PVC(ポリ塩化ビニル)、およびそれらの混合物など、他の熱可塑性の樹脂系材料を使っても、前記マトリックスを形成することができる。また、炭素繊維(カーボンファイバー)、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、PBI(ポリベンゾイミダゾール)繊維、玄武岩繊維、ベクトラン(登録商標)繊維、HMPE(超高分子量ポリエチレン)繊維、およびセラミック繊維などの高性能繊維(ファイバー)も使用できる。
【0031】
ここで図8を参照すると、上述した前記ブランク形成システム30および前記ブランク加撚システム70に置き換えて使用できる別のブランク(素材)形成システム120の例が示されている。
【0032】
このブランク形成システム120の例では、前記ブランク形成システム30および前記ブランク加撚システム70の双方の機能を組み合わせて、図9に表した複合ロープ構造体122を生成している。
【0033】
特に、このブランク形成システム120では、上述した未形成の複合ストランド72と組成的に同様な未形成の複合ストランド124を作製する。当該未形成の複合ストランド124は、前記未形成の複合ストランド72の幾何学的形状と同じ幾何学的形状を有してもよいが、以下さらに詳しく説明するように、例示した前記未形成の複合ストランド72とは異なる幾何学的形状を有する。
【0034】
当該未形成の複合ストランド124は、形成済み複合ストランド126へと変換され、それら形成済み複合ストランド126は、コア128と組み合わされて前記複合ロープ構造体122を形成する。
【0035】
ここで再び図8を参照すると、前記ブランク形成システム120は、複数の送りローラー130を有し、その各送りローラー130は一定の長さのファイバー132を含んでいる。明瞭性のため、この例示したブランク形成システム120では、5つの送りローラー130および5本のファイバー132を例示している。ここでも5本またはそれ以下のファイバーを図示したように使用することが可能だが、前記形成済み複合ストランド126を作製する場合は、通常、5本を超えるファイバーが使用される。
【0036】
これらのファイバー132は柔軟性があるため、前記送りローラー130から引き出し、撚合(組み合わせ)アセンブリ136を使って組み合せて、有撚束134にすることができる。前記撚合アセンブリ136は、前記有撚束134内で前記ファイバー132が有撚状態になるよう、前記ファイバー132同士を絡み合わせる。また、前記有撚束134は、それらファイバーを編み、または機械的に絡み合わせても形成できる。
【0037】
前記ファイバー132の前記有撚束134に、マトリックス槽140および成形ダイ(成形金型)142を通過させると、未硬化の(キュアリングしていない)複合ブランク材144が得られる。前記マトリックス槽140には、前記ファイバー132の周囲および当該ファイバー46間でマトリックスを形成するマトリックス材料(充填材料)が含まれている。この時点で、このマトリックス材料は、前記ファイバー132間およびそれらの周囲を流れて前記有撚束134を形成する十分な流動性がある一方、前記成形ダイ142通過後も自らの形状を保つ十分な塑性がある。
【0038】
例示した前記成形ダイ142は、前記未硬化の複合ブランク材144を、その断面が実質的に台形の形状になるよう形成する。そのため、以下の説明から明確に理解されるように、例示した前記ダイ142は、完成した前記複合ロープ構造体122に望ましい特性がもたらされるよう設計された形状にマトリックスを形成するよう構成されている。
【0039】
再び図8を参照すると、前記未硬化の複合ブランク材144を乾燥機150で硬化させ(キュアリングし)て、予備成形した複合ブランク材152を得ている。この時点で、前記マトリックス材料は硬化済みで、塑性形態から剛性形態に変換された状態であってよい。あるいは、当該マトリックス材料は、未硬化または一部のみ硬化済みで、前記複合ブランク材144にまだ塑性または柔軟性が残っている状態であってもよい。この例示したマトリックスは、前記予備成形した複合ブランク材152が実質的に台形で(台形の断面を保ち)、実質的に直線状の形態を保つよう、前記ファイバー132の周囲で十分固化される。
【0040】
次に、硬化済みの前記複合ブランク材152は、カッター160内へ送られ、切断されて、前記未形成の複合ストランド124になる。そのため、この例示した複合ストランド124は、本体が剛性で細長く、実質的に直線状または線形であり、前記カッター160のパラメータにより事前に決定される長さを有する。
【0041】
ここでも外観的には前記マトリックス146だけが見えている。前記未形成の複合ストランド124の本体は剛性で細長く、実質的に直線状または線形であり、前記カッター160のパラメータにより事前に決定される長さを有する。また、前記ファイバー132は前記加撚アセンブリ136により加撚されている(有撚状態である)ため、前記未形成の複合ストランド124内で有撚状態になっている。次いで、上述した形成システム80例などの形成システムを使って前記未形成の複合ストランド124を処理すると、前記形成済み複合ファイバー126が得られる。
【0042】
次に当該形成済み複合ファイバー126は、前記コア128に巻き付けられて、前記複合ロープ構造体122を形成する。上述のとおり、前記未形成の複合ストランド124は、略台形の断面を有する。この幾何学的形状により、当該形成済み複合ストランド126は、互いにほとんど、またはまったく隙間がない状態で、前記コア128に巻き付くことができる。これら形成済み複合ストランドの内面は、互いにほとんど、またはまったく隙間がない状態で、前記コア128に係合する。また、これら形成済み複合ストランド126の外面は、当該ロープ構造体が実質的に円柱形の外面を有するよう構成される。
【0043】
ここで図10、11、および12を参照すると、本発明の原理に基づき、これを具体化した別の複合ロープ例を形成するシステムおよび方法が示されている。
【0044】
まず図10を参照すると、含浸ヤーン222を加撚するための加撚システム220が示されている。当該含浸ヤーン222は、加撚されていない(無撚)状態では参照符号222aで、加撚された(有撚)状態では参照符号222bで、それぞれ識別される。
【0045】
これら含浸ヤーン222は、ファイバー(繊維)および樹脂を有した複合構造である。それらのファイバーは、主に引張荷重下における前記ヤーン222の強度特性をもたらす。前記樹脂は、前記ファイバーを取り囲むマトリックス材料(充填材料)を形成し、前記ファイバー間で負荷を伝達する。さらに、この樹脂マトリックスは、周囲環境から前記ファイバーを保護する。その例として、この樹脂マトリックスは、熱、紫外線、摩耗、および他の外的環境要因から前記ファイバーを保護するよう配合することができる。
【0046】
例示した前記含浸ヤーン222の前記樹脂部分は、未硬化の(キュアリングしていない)状態および硬化済みの状態で存在する。前記未硬化の状態において、前記樹脂材料は柔軟であるため、前記マトリックスは、前記含浸ヤーン222の曲げや加撚などを可能にする。一般に、前記樹脂マトリックスは、加熱すると硬化温度になるまでは塑性または可鍛性を増す。硬化温度を超えると、前記樹脂マトリックスは硬化し(キュアリングされ)、実質的により剛性になる。この樹脂マトリックスの特性は、最終的な複合ロープ構造体の製造上の利便性および/または意図された特定の作用(動作)環境に応じて調整できる。
【0047】
例示した前記含浸ヤーン222は、約90重量%のファイバーと、約10重量%の樹脂とを有する。前記ファイバーの割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に85%〜95%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に70%〜98%の第2の範囲内にしなければならない。前記樹脂の割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に5%〜15%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に2%〜30%の第2の範囲内にしなければならない。
【0048】
前記含浸ヤーン222の代替例は、約80重量%のファイバーと、約20重量%の樹脂とを有する場合がある。前記ファイバーの割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に75%〜90%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に50%〜95%の第2の範囲内にしなければならない。前記樹脂の割合は、当該ヤーンの重量に対し実質的に10%〜25%の第1の範囲であってよいが、いかなる場合も当該ヤーンの重量に対し実質的に5%〜50%の第2の範囲内にしなければならない。
【0049】
例示した前記ファイバーはガラス繊維であるが、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維のうちの1つ、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記樹脂は熱可塑性ポリウレタンであるが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、PVC、プラスチゾル、およびそれらの混合物など、他の熱可塑性材料を使ってもよい。
【0050】
例示した前記加撚システム220は、前記無撚含浸ヤーン222aを格納する第1のボビン224aと、前記有撚含浸ヤーン222bを格納する第2のボビン224bとを有する。前記無撚含浸ヤーン222aは、前記第1のボビン224aから引き出され、加撚されて、前記有撚含浸ヤーン222bとして前記第2のボビン224bに巻き取られる。
【0051】
この例示した加撚システム220では、前記第2のボビン224bが主回転軸Aに関し回転し、また前記含浸ヤーン222により画成される撚りの回転軸Bに関しても回転する。この第2のボビン224bの前記主軸Aおよび前記加撚軸Bに関する回転により、前記無撚含浸ヤーン222aは、前記有撚含浸ヤーン222bに変換されて、前記第2のボビン224bに巻き取られる。前記無撚含浸ヤーン222aを形成するファイバーは、実質的に直線状で平行である一方、前記有撚含浸ヤーン222bを形成するファイバーは、全体としてらせん状の構成になる。
【0052】
前記無撚含浸ヤーン222aは、室温で加撚することができる。ただし、この加撚工程を容易にするため、当該加撚システム220は、さらに任意選択で、前記無撚含浸ヤーン222aの加撚前および/または加撚後に、当該無撚含浸ヤーン222aを加熱する加熱ステージ226を有する。前記加熱ステージ226は、前記無撚含浸ヤーン222aの樹脂マトリックスを、当該樹脂マトリックスの硬化温度未満の高温に加熱する。
【0053】
前記無撚含浸ヤーン222aのマトリックス部分を形成している樹脂を軟化させることにより、前記ファイバーは、より容易に前記実質的にらせん状の構成へと加撚することができる。また、加撚前、加撚中、および/または加撚後に加熱したのち、冷却することにより、前記有撚含浸ヤーン222bの樹脂マトリックス部分が、前記ファイバーを実質的にらせん状の構成に保つ可能性は高まる。
【0054】
例示した前記加撚システム220は、さらに任意選択で、前記有撚含浸ヤーン222bが前記第2のボビン224bに巻き取られる際、当該有撚含浸ヤーン222bに剥離剤を適用する剥離剤ステージ228を有する。前記剥離剤またはそれと同様な化学物質は、前記有撚含浸ヤーンが高温で結合しあうのを防ぎ、またはその後、後述するように前記有撚含浸ヤーン222bと他のロープ構成要素とを組み合わせる際の硬化時に前記有撚含浸ヤーンが結合しあうのを防ぐ上で役立つ。
【0055】
図11は、複数の未硬化の有撚含浸ヤーン222bを1本のストランド232へと組み合わせる第1の撚合(組み合わせ)システム230を例示したものである。この例示したストランド232は、1×7構成と呼ぶ態様で、7本の有撚含浸ヤーン222bを有する。ただし、これら有撚含浸ヤーン222bは、これより少数または多数のヤーンを使って、また1×7構成以外の組み合わせ構成で組み合わせることもできる。
【0056】
例示した前記ストランド232を形成するには、第1の回転部アセンブリ234で、前記第2のボビン224bを7つ支持する。前記第1の回転部アセンブリ234は、従来のものであり、または従来のものであってよく、本明細書では、単に本発明の完全な理解を助けるため必要に応じて説明する。例示した前記第1の回転部アセンブリ234は、中央ボビン取り付け部236と、6つの外周ボビン取り付け部238とを有する。前記中央ボビン取り付け部236上には、前記第2のボビン224bを取り付けて支持し、当該第2のボビン224bをその主軸Aに関し回転させることができる。前記外周ボビン取り付け部238は、前記第2のボビン224bを支持し、これらを各々の主軸Aに関し回転させる。
【0057】
さらに、当該外周ボビン取り付け部238は、前記第2のボビン224bを支持し、それら第2のボビン224bを、前記第1の回転部アセンブリ234により画成されるシステム軸Cに関し一体的に回転させる。前記中央ボビン取り付け部236は、当該中央ボビン取り付け部236の支持する前記第2のボビン224bが、前記外周ボビン取り付け部238の支持する前記第2のボビン224bとともに、前記システム軸Cに関し回転するよう、前記外周ボビン取り付け部238を使って支持することができる。あるいは、前記中央ボビン取り付け部236は、当該中央ボビン取り付け部236の支持する前記第2のボビン224bが、その主軸Aだけに関し回転し、前記システム軸Cに関しては回転しないよう、前記外周ボビン取り付け部238とは無関係に支持することができる。
【0058】
前記有撚含浸ヤーン222bが前記第1の回転部アセンブリ234から引き出されるに伴い、前記外周ボビン取り付け部238の前記第2のボビン224bから引き出された前記有撚含浸ヤーン222bは、前記中央ボビン取り付け部236の前記第2のボビン取り付け部224bから引き出された前記有撚含浸ヤーン222bと組み合わされて、前記ストランド232を形成する。この例示したシステム230では、前記ストランド232がストランドボビン240に巻き取られる。
【0059】
前記中央ボビン取り付け部236の前記第2のボビン取り付け部224bから引き出された前記有撚含浸ヤーン222bは、前記ストランド232のコア含浸ヤーンを形成する。このコア含浸ヤーン中のファイバーは、前記加撚システム220で生成された実質的にらせん状の構成を保つ。コアヤーンの周囲の前記有撚含浸ヤーン222bは、外周ヤーンと呼ばれる。これら外周ヤーン中のファイバーは、前記加撚システム220で生成された前記実質的にらせん状の構成を保つが、前記コアヤーンを中心とした二次的ならせん状の構成も有する。これにより、当該外周ヤーン中のファイバーは、実質的に二重らせん状の構成を有する。
【0060】
前記有撚含浸ヤーン222bは、室温で組み合わせて前記ストランド232を形成することができる。ただし、この組み合わせ工程を容易にするため、当該第1の撚合システム230は、さらに任意選択で、前記無撚含浸ヤーン222aの加撚前および/または加撚後に、当該無撚含浸ヤーン222aを加熱する加熱ステージ242を有する。この加熱ステージ242は、前記有撚含浸ヤーン222bの樹脂マトリックスを、当該樹脂マトリックスの硬化温度未満の高温に加熱する。
【0061】
前記有撚含浸ヤーン222bのマトリックス部分を形成している樹脂を軟化させることにより、前記有撚含浸ヤーン222bは、前記コアヤーンのファイバーが実質的にらせん状構成で、かつ前記外周ヤーンのファイバーが実質的に二重らせん状構成に維持された状態で、前記ストランド232に組み入れることがより容易になる。また、加撚前、加撚中、および/または加撚後に加熱したのち、冷却することにより、前記有撚含浸ヤーン222bの樹脂マトリックス部分が、前記コア含浸ヤーンのファイバーをらせん状の構成に保ち、前記外周含浸ヤーンのファイバーを実質的に二重らせん状の構成に保つ可能性は高まる。
【0062】
例示した前記撚合システム230は、さらに任意選択で、前記ストランド232が前記ストランドボビン240に巻き取られる際、各前記ストランド232に剥離剤を適用する剥離剤ステージ244を有する。前記剥離剤またはそれと同様な化学物質は、前記ストランド232が高温で結合しあうのを防ぎ、またはその後、後述するように前記ストランド232と他のロープ構成要素とを組み合わせる際の硬化時に前記ストランド232が結合しあうのを防ぐ上で役立つ。
【0063】
例示した前記第2の撚合システム230は、さらに、任意選択の成形ダイ(成形金型)246を有する。この成形ダイ246は、端部が加撚および結合(接合)される箇所に配置される。
【0064】
例示した前記ストランド232は、その硬化温度を超えて加熱し、硬化させると、第1の複合ロープ構造体の例を形成することができる。特に、当該ストランド232は、硬化させると、意図された作用(動作)環境の要件を満たす特性が得られる。他の作用環境では、複数の前記ストランド232を組み合わせて最終的な複合ロープ構造体を形成することが必要になる場合もある。この場合、当該ストランド232の樹脂マトリックスは、未硬化のままにされ、または一部のみ硬化される。
【0065】
図12は、複数のストランド232を1本のロープ構造体252へと組み合わせる第2の撚合(組み合わせ)システム250を例示したものである。この例示したロープ構造体252は、7×7構成と呼ぶ態様で、7本のストランド232を有する。ただし、これらのストランド232は、これより少数または多数のヤーンおよび/またはストランドを使って、また7×7構成以外の組み合わせ構成で組み合わせることもできる。
【0066】
例示した前記ロープ構造体252を形成するには、第2の回転部アセンブリ254で、前記ストランドボビン240を7つ支持する。前記第2の回転部アセンブリ254は、従来のものであり、または従来のものであってよく、本明細書では、単に本発明の完全な理解を助けるため必要に応じて説明する。例示した前記第2の回転部アセンブリ254は、中央ボビン取り付け部256と、6つの外周ボビン取り付け部258とを有する。前記中央ボビン取り付け部256上には、前記ストランドボビン240を取り付けて支持し、当該ストランドボビン240をその主軸に関し回転させることができる。前記外周ボビン取り付け部258は、前記ストランドボビン240を支持し、これらを各々の主軸に関し回転させる。
【0067】
さらに、当該外周ボビン取り付け部258は、前記ストランドボビン240を支持し、それら前記ストランドボビン240を、前記第2の回転部アセンブリ254により画成されるシステム軸Dに関し一体的に回転させる。前記中央ボビン取り付け部256は、当該中央ボビン取り付け部256の支持する前記ストランドボビン240が、前記外周ボビン取り付け部258の支持する前記ストランドボビン240とともに、前記システム軸Dに関し回転するよう、前記外周ボビン取り付け部258を使って支持することができる。あるいは、前記中央ボビン取り付け部256は、当該中央ボビン取り付け部256の支持する前記ストランドボビン240が、その主軸Aだけに関し回転し、前記システム軸Dに関しては回転しないよう、前記外周ボビン取り付け部258とは無関係に支持することができる。
【0068】
前記ストランド232が前記第2の回転部アセンブリ254から引き出されるに伴い、前記外周ボビン取り付け部258の前記ストランドボビン240から引き出された前記ストランド232は、前記中央ボビン取り付け部256の前記ストランドボビン240から引き出された前記ストランド232と組み合わされて、前記ロープ構造体252を形成する。この例示したシステム250では、前記ロープ構造体252がロープボビン260に巻き取られる。
【0069】
前記中央ボビン取り付け部256の前記ストランドボビン240から引き出された前記ストランド232は、前記ロープ構造体252のコアストランドを形成する。前記コアストランド内のファイバーは、前記第1の撚合システム230により生成された形状を保つ。前記コアストランドの周囲の前記ストランド232は、外周ストランドと呼ばれる。これら外周ストランドの外周ヤーン中のファイバーは、前記第1の撚合システム230で生成された形状を保つが、前記コアストランドを中心とした三次的ならせん状の構成も有する。これにより、当該外周ヤーン中のファイバーは、実質的に三重らせん状の構成を有する。
【0070】
前記ストランド232は、室温で組み合わせて前記ロープ構造体252を形成することができる。ただし、この組み合わせ工程を容易にするため、当該第2の撚合システム250は、さらに任意選択で、前記ストランド232が組み合わされる前および/または後で、当該ストランド232を加熱する加熱ステージ262を有する。この加熱ステージ262は、前記ストランド232の樹脂マトリックスを、当該樹脂系の硬化温度または溶融温度より低い高温に加熱する。
【0071】
前記ストランド232のマトリックス部分を形成している樹脂を軟化させることにより、当該ストランド232は、そのファイバーが適切ならせん状の構成を維持した状態で、より容易に組み合わせることができる。また、加撚前、加撚中、および/または加撚後に加熱したのち、冷却することにより、前記ストランド232の樹脂マトリックス部分が、前記ファイバーを前記適切ならせん状の構成に保つ可能性は高まる。
【0072】
例示した前記第2の撚合システム250は、さらに、任意選択の成形ダイ(成形金型)264を有する。この成形ダイ264は、端部が加撚および結合(接合)される箇所に配置される。
【0073】
ここで図13〜17を参照すると、本発明の原理を使って作製できる含浸ヤーン、ストランド、およびロープ構造体の断面をやや図式的に表現した図が示されている。図13は、前記有撚含浸ヤーン222bの1つの断面を表している。図14は、前記有撚含浸ヤーン222bを7本有する上記で例示したストランド232の断面を表している(1×7構成)。図15は、前記有撚含浸ヤーン222bを19本組み合わせて形成できる別のストランド270の例の断面を表している(1×19構成)。図16は、例示した前記ストランド232を7本有する上記ロープ構造体252の断面を表している(7×7構成)。図17は、上記で例示した前記ストランド270を7本組み合わせて得られる別のロープ構造体例の断面を表している(7×19構成)。
【0074】
以上を考慮すると、本発明は、上記以外の形態で具体化(具現化)できることが明確に理解されるべきである。本発明の範囲は、本発明の例に関する前述の詳細な説明ではなく、本明細書に添付された請求項を参照して決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ構造体であって、
ファイバー材料(繊維材料)とマトリックス材料(充填材料)とを有する複数の形成済み複合ストランド
を有し、
前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は加撚されており(有撚状態であり)、
前記複数の形成済み複合ストランドの形状は、当該複数の複合ストランドが組み合わされて前記ロープ構造体になるのを促進するよう事前に決定されたものである
ロープ構造体。
【請求項2】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的にらせん状である。
【請求項3】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドの形状は、当該ロープ構造体の幾何学的形状に基づき事前に決定さたものである。
【請求項4】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドの前記マトリックス材料は、硬化(キュアリング)されているものである。
【請求項5】
請求項1記載のロープ構造体において、前記ファイバー材料は、炭素繊維(カーボンファイバー)、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE(超高分子量ポリエチレン)繊維、およびセラミック繊維からなる群から選択される少なくとも1つのファイバーで作製されるものである。
【請求項6】
請求項1記載のロープ構造体において、前記マトリックス材料は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から選択される少なくとも1つの材料である。
【請求項7】
請求項1記載のロープ構造体において、
前記ファイバー材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維からなるファイバー群から選択される少なくとも1つのファイバーであり、
前記マトリックス材料は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から選択される少なくとも1つの材料である。
【請求項8】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは複数のヤーンを有するものである。
【請求項9】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に70重量%〜98重量%の前記ファイバー材料を有するものである。
【請求項10】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に2重量%〜30重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項11】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、
実質的に70重量%〜98重量%の前記ファイバー材料と、
実質的に2重量%〜30重量%の前記マトリックス材料と
を有するものである。
【請求項12】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に50重量%〜95重量%の前記ファイバー材料を有するものである。
【請求項13】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に5重量%〜50重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項14】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、
実質的に50重量%〜95重量%の前記ファイバー材料と、
実質的に5重量%〜50重量%の前記マトリックス材料と
を有するものである。
【請求項15】
ロープ構造体を形成する方法であって、
ファイバー材料(繊維材料)を提供する工程と、
マトリックス材料(充填材料)を提供する工程と、
前記マトリックス材料内に前記ファイバー材料を配置して、ブランク材料(ブランク材)を生成するものである配置する工程と、
前記ブランク材料のマトリックス材料内の前記ファイバー材料を加撚して、未形成の複合ストランドを生成するものである加撚する工程と、
前記複数の未形成の複合ストランドを加工して、それぞれが所定の形状を有する形成済み複合ストランドを生成するものである加工する工程と、
前記形成済み複合ストランドを組み合わせて前記ロープ構造体にする工程と
を有する方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記複数の形成済み複合ストランドを加工する工程は、当該未形成の複合ストランドを加熱する工程を有するものである。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
前記ロープ構造体の幾何学的形状に基づき、前記形成済み複合ストランドの形状を事前に決定する工程を有するものである。
【請求項18】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
前記形成済み複合ストランドの前記マトリックス材料を硬化させる(キュアリングする)工程を有するものである。
【請求項19】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維からなる群から前記ファイバー材料を選択する工程と、
ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から前記マトリックス材料を選択する工程と
を有するものである。
【請求項20】
ロープ構造体であって、
ファイバー材料とマトリックス材料とを有する複数の形成済み複合ストランド
を有し、
前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は加撚されており(有撚状態であり)、
前記形成済み複合ストランドのうち少なくとも1つは、実質的に円柱形であり、
前記複数の形成済み複合ストランドは、実質的にらせん状であり、
前記実質的にらせん状の形成済み複合ストランドは、前記少なくとも1つの実質的に円柱形の形成済み複合ストランドの周囲に形成されて前記ロープ構造体を構成するものである
ロープ構造体。
【請求項21】
請求項20記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドの前記マトリックス材料は、硬化(キュアリング)されているものである。
【請求項22】
請求項20記載のロープ構造体において、
前記ファイバー材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維からなるファイバー群から選択される少なくとも1つのファイバーであり、
前記マトリックス材料は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から選択される少なくとも1つの材料である。
【請求項23】
請求項20記載のロープ構造体において、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に70重量%〜98重量%の前記ファイバー材料を有し、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に2重量%〜30重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項24】
請求項20記載のロープ構造体において、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に50重量%〜95重量%の前記ファイバー材料を有し、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に5重量%〜50重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項1】
ロープ構造体であって、
ファイバー材料(繊維材料)とマトリックス材料(充填材料)とを有する複数の形成済み複合ストランド
を有し、
前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は加撚されており(有撚状態であり)、
前記複数の形成済み複合ストランドの形状は、当該複数の複合ストランドが組み合わされて前記ロープ構造体になるのを促進するよう事前に決定されたものである
ロープ構造体。
【請求項2】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的にらせん状である。
【請求項3】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドの形状は、当該ロープ構造体の幾何学的形状に基づき事前に決定さたものである。
【請求項4】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドの前記マトリックス材料は、硬化(キュアリング)されているものである。
【請求項5】
請求項1記載のロープ構造体において、前記ファイバー材料は、炭素繊維(カーボンファイバー)、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE(超高分子量ポリエチレン)繊維、およびセラミック繊維からなる群から選択される少なくとも1つのファイバーで作製されるものである。
【請求項6】
請求項1記載のロープ構造体において、前記マトリックス材料は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から選択される少なくとも1つの材料である。
【請求項7】
請求項1記載のロープ構造体において、
前記ファイバー材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維からなるファイバー群から選択される少なくとも1つのファイバーであり、
前記マトリックス材料は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から選択される少なくとも1つの材料である。
【請求項8】
請求項1記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは複数のヤーンを有するものである。
【請求項9】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に70重量%〜98重量%の前記ファイバー材料を有するものである。
【請求項10】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に2重量%〜30重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項11】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、
実質的に70重量%〜98重量%の前記ファイバー材料と、
実質的に2重量%〜30重量%の前記マトリックス材料と
を有するものである。
【請求項12】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に50重量%〜95重量%の前記ファイバー材料を有するものである。
【請求項13】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、実質的に5重量%〜50重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項14】
請求項8記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドは、
実質的に50重量%〜95重量%の前記ファイバー材料と、
実質的に5重量%〜50重量%の前記マトリックス材料と
を有するものである。
【請求項15】
ロープ構造体を形成する方法であって、
ファイバー材料(繊維材料)を提供する工程と、
マトリックス材料(充填材料)を提供する工程と、
前記マトリックス材料内に前記ファイバー材料を配置して、ブランク材料(ブランク材)を生成するものである配置する工程と、
前記ブランク材料のマトリックス材料内の前記ファイバー材料を加撚して、未形成の複合ストランドを生成するものである加撚する工程と、
前記複数の未形成の複合ストランドを加工して、それぞれが所定の形状を有する形成済み複合ストランドを生成するものである加工する工程と、
前記形成済み複合ストランドを組み合わせて前記ロープ構造体にする工程と
を有する方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記複数の形成済み複合ストランドを加工する工程は、当該未形成の複合ストランドを加熱する工程を有するものである。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
前記ロープ構造体の幾何学的形状に基づき、前記形成済み複合ストランドの形状を事前に決定する工程を有するものである。
【請求項18】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
前記形成済み複合ストランドの前記マトリックス材料を硬化させる(キュアリングする)工程を有するものである。
【請求項19】
請求項15記載の方法において、この方法は、さらに、
炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維からなる群から前記ファイバー材料を選択する工程と、
ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から前記マトリックス材料を選択する工程と
を有するものである。
【請求項20】
ロープ構造体であって、
ファイバー材料とマトリックス材料とを有する複数の形成済み複合ストランド
を有し、
前記マトリックス材料内の前記ファイバー材料は加撚されており(有撚状態であり)、
前記形成済み複合ストランドのうち少なくとも1つは、実質的に円柱形であり、
前記複数の形成済み複合ストランドは、実質的にらせん状であり、
前記実質的にらせん状の形成済み複合ストランドは、前記少なくとも1つの実質的に円柱形の形成済み複合ストランドの周囲に形成されて前記ロープ構造体を構成するものである
ロープ構造体。
【請求項21】
請求項20記載のロープ構造体において、前記形成済み複合ストランドの前記マトリックス材料は、硬化(キュアリング)されているものである。
【請求項22】
請求項20記載のロープ構造体において、
前記ファイバー材料は、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維、PBI繊維、玄武岩繊維、HMPE繊維、およびセラミック繊維からなるファイバー群から選択される少なくとも1つのファイバーであり、
前記マトリックス材料は、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、およびナイロンからなる材料群から選択される少なくとも1つの材料である。
【請求項23】
請求項20記載のロープ構造体において、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に70重量%〜98重量%の前記ファイバー材料を有し、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に2重量%〜30重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【請求項24】
請求項20記載のロープ構造体において、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に50重量%〜95重量%の前記ファイバー材料を有し、
前記形成済み複合ストランドは、実質的に5重量%〜50重量%の前記マトリックス材料を有するものである。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−532430(P2010−532430A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509360(P2010−509360)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/006423
【国際公開番号】WO2008/144048
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509179696)サムソン ロープ テクノロジーズ (4)
【出願人】(310018560)
【出願人】(310018571)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/006423
【国際公開番号】WO2008/144048
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509179696)サムソン ロープ テクノロジーズ (4)
【出願人】(310018560)
【出願人】(310018571)
【Fターム(参考)】
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