説明

複合分子ポンプの断熱構造

【課題】 排気ガスが凝着するのを防止するための加熱装置をねじ溝真空ポンプ部に設けた複合分子ポンプにおいて、該加熱装置の熱がターボ分子ポンプ部を有する上部ケーシング及びベアリングハウジング部を有する下部ケーシングに熱伝導により伝達されるのを防止する。
【解決手段】 ターボ分子ポンプ部2の外周を覆う上部ケーシング4と、ねじ溝真空ポンプ部のステータ3a、3bを具備すると共にヒータ10aを具備した中間ケーシング7と、該中間ケーシング7に連設され当該複合分子ポンプ1のベース部を成している下部ケーシング8とからなる3段構造のケーシングを有する複合分子ポンプ1を形成し、前記上部ケーシング4と中間ケーシング7との接続部Aには断熱材製ワッシャ11b、11c及び柱状断熱部材12を周方向に断続的に介在させ、又、中間ケーシング7と下部ケーシング8との接続部Bには断熱材製ワッシャ14bを周方向に断続的に介在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に凝縮し易い気体の真空排気に最適な複合分子ポンプの断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複合分子ポンプは、動翼段と静翼段とを交互に多段に配置したターボ分子ポンプ部と、該ターボ分子ポンプの後段に連設したねじ溝真空ポンプ部とからなり、分子流領域から粘性流領域において気体の排出を行なう真空排気装置である。
【0003】
然して、前記複合分子ポンプにより特に凝着し易い気体の排気を行なう場合は、複合分子ポンプ内部において排気ガスが凝着するのを防止するため、加熱装置を用いて特にねじ溝真空ポンプ部のステータ等を加熱するようにしている。
【0004】
出願人は先に、円筒状のロータの内側にステータを配置した構造のねじ溝真空ポンプ部を有する分子ポンプにおいて、該ねじ溝真空ポンプ部の内方に前記ロータの回転軸を支承するベアリングハウジング部を形成すると共に該ベアリングハウジング部の外周部を覆うように該外周部と少許の間隙を存して熱遮蔽板を設けて、該熱遮蔽板と前記ねじ溝真空ポンプ部との間を前記ねじ溝真空ポンプ部からの排気ガスの通路に形成した分子ポンプの断熱構造の出願を行なった(特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2004−270692号公報
【0005】
これは、ねじ溝真空ポンプ部のステータにおいて加熱された排気ガスが、下部ケーシングに立設されているベアリングハウジング部において冷却されるのを防止するようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記出願の断熱構造だけでは、加熱されているねじ溝真空ポンプ部(特にステータ)の熱が分子ポンプの中間ケーシングを介して隣接するターボ分子ポンプ部を有する上部ケーシングやベアリングハウジング部を有する下部ケーシングへも伝達されるので、排気ガスを加熱するためのエネルギーに無駄が多いという問題があった。
【0007】
本発明は前記の問題点を解消し、ねじ溝真空ポンプ部のステータから上部ケーシングや下部ケーシングに熱が伝わるのを防止すると共にステータを加熱するエネルギーの節約を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の目的を達成すべく、ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部の後段に連設されたねじ溝真空ポンプ部とを有する複合分子ポンプにおいて、該複合分子ポンプは、前記ターボ分子ポンプ部の外周を覆う上部ケーシングと、前記ねじ溝真空ポンプ部のステータを具備して前記上部ケーシングに連設された中間ケーシングと、前記中間ケーシングに連設された下部ケーシングとからなる3段構造のケーシングを有しており、更に前記上部ケーシングと前記中間ケーシングとの接続部、及び前記中間ケーシングと前記下部ケーシングとの接続部にそれぞれ複数個の断熱部材を周方向に断続的に配置して介在させて、これら各ケーシング間の熱伝導による熱伝達が抑制されるように形成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複合分子ポンプにおいてねじ溝真空ポンプ部のステータからターボ分子ポンプ部やベース部に熱が伝わるのを防止できると共にステータを加熱するエネルギーの節約が図れる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の断熱構造を有する複合分子ポンプの最良の形態の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1を図1乃至図4により説明する。
【0012】
図1は本実施例の複合分子ポンプ1の縦断面図である。
【0013】
複合分子ポンプ1は、動翼段2aと静翼段2bとを交互に多段に配置したターボ分子ポンプ部2と、該ターボ分子ポンプ部2に連設されたねじ溝真空ポンプ部3とからなる。
【0014】
前記ターボ分子ポンプ部2の外周部を覆う上部ケーシング4は一般にステンレス鋼製又はアルミ合金製で、円筒状に形成され、上部に吸入口4aを有している。
【0015】
前記上部ケーシング4の内周部には、環状のディスタンスピース5が複数個、連続して嵌入されており、これら隣り合うディスタンスピース5の間に前記静翼段2bの外周部を挟着して固定している。
【0016】
6はロータで、上方部に前記動翼段2aを多段に具備している。
【0017】
前記ねじ溝真空ポンプ部3は前記ロータ6の下方部の円筒状ロータ部6aと、該円筒状ロータ部6aの外周部を覆う中間ケーシング7と、前記円筒状ロータ部6aの外周部及び内周部にそれぞれ近接して設けられた外側ステータ3a及び内側ステータ3bからなる。
【0018】
前記外側ステータ3aは内周部にねじ溝が刻設されている。
【0019】
前記中間ケーシング7はアルミ合金製で、円筒状に形成され、前記上部ケーシング4の下段に連設されている。
【0020】
又、前記内側ステータ3bもアルミ合金製で、外周部に刻設されたねじ溝を有しており、該内側ステータ3bは一端部にあるフランジ3b1を前記中間ケーシング7の下部に密着させて、前記中間ケーシング7に固定されている。
【0021】
8は下部ケーシングで、前記中間ケーシング7の下段に連設されている。
【0022】
該下部ケーシング8は前記ロータ6の回転軸6bを軸支するベアリングハウジング部8aを有すると共に、該ベアリングハウジング部8aを冷却するための冷却水配管8bを有している。
【0023】
尚、9は排気管であり、又、10a及び10bはそれぞれ加熱用のヒータである。
【0024】
ヒータ10aは前記中間ケーシング7の外周部に装着されており、又、ヒータ10bは前記排気管9の外周部に装着されていて、排気される気体が内部で凝着を起こすのを防止する役目を有している。
【0025】
前記上部ケーシング4と前記中間ケーシング7との接続部Aは、上部ケーシング側フランジ4cと中間ケーシング側フランジ7aとを締結するボルト11a及び断熱部材等よりなる。
【0026】
前記接続部Aの詳細を図2に示した。
【0027】
即ち、上部ケーシング側フランジ4cと中間ケーシング側フランジ7aとの間に断熱材製ワッシャ11bを介在させると共に、前記ボルト11aが該断熱材製ワッシャ11bを挿通して前記両フランジ4c、7aを締結している。
【0028】
又、前記ボルト11aの頭部と前記中間ケーシング側フランジ7aの座との間にも断熱材製ワッシャ11cを介在させている。
【0029】
又、前記上部ケーシング側フランジ4cと中間ケーシング側フランジ7aとの接続部には同心嵌合部Cを設けており、該同心嵌合部Cにおいて、中間ケーシング側フランジ7aの外周部を上部ケーシング側フランジ4c側へ突出させて該上部ケーシング側と同心嵌合(静合)を行なうように形成している。
【0030】
更に又、前記上部ケーシング4の内周部に前記中間ケーシング7の上部突出部7bを遊嵌させて挿入すると共に、該上部突出部7bと前記上部ケーシング4の内周部との間にOリング7cを介在させて、これら上部突出部7bの外周部と上部ケーシング4の内周部の隙間7dを通って気体が漏洩するのを防止するようにした。
【0031】
ここで前記隙間7d(前記上部突出部7bの外周部の半径方向隙間)は、ヒータ10aにより中間ケーシング7を加熱した場合の前記上部ケーシング4と前記中間ケーシング7のそれぞれの温度変化に伴う半径方向の熱膨張を考慮して、ヒータ10aの加熱時にも該隙間7dが決してゼロにならないように適切に設定してある。
【0032】
12は断熱性を有する材料からなる柱状断熱部材で、該柱状断熱部材12は根部の太い円柱部と上部の細い円柱部とからなる2段円柱構造に形成している。
【0033】
尚、該柱状断熱部材12は表面に耐食性を有する材料によるコーティングを施して、耐久性の増大を図っている。
【0034】
又、13は発条で、該発条13は複数の皿ばねからなり、前記柱状断熱部材12の細い円柱部が該発条13を摺動自在に挿通している。
【0035】
前記柱状断熱部材12は、前記発条13と共に前記中間ケーシング7の上面部と前記ディスタンスピース5の下部との間に介在していて、前記発条13の弾発力により、前記ディスタンスピース5を前記上部ケーシング4の吸入口4aに向かって押圧している。
【0036】
これら柱状断熱部材12と発条13の組合せの複数組が、図3に示す如く、前記中間ケーシング7の上面の同一円周上に等ピッチに配置されている。
【0037】
図1において、前記中間ケーシング7と前記下部ケーシング8との接続部Bは、中間ケーシング側第2フランジ7eと下部ケーシング側フランジ8cとを締結するボルト14a及び断熱部材等よりなる。
【0038】
図1における接続部Bの詳細を図4に示した。
【0039】
即ち、中間ケーシング側第2フランジ7eと下部ケーシング側フランジ8cとの間に断熱材製ワッシャ14bを介在させると共に、前記ボルト14aが該断熱材製ワッシャ14bを挿通して前記両フランジ7e、8cを締結している。
【0040】
又、前記ボルト14aの頭部と前記中間ケーシング側第2フランジ7eの座との間にも断熱材製ワッシャ14cを介在させている。
【0041】
又、前記中間ケーシング側第2フランジ7eと下部ケーシング側フランジ8cとの接続部には同心嵌合部Dを設けており、該同心嵌合部Dにおいて中間ケーシング側第2フランジ7eの外周部を下部ケーシング側フランジ8c側へ突出させて該下部ケーシング側と同心嵌合(静合)を行なうように形成している。
【0042】
更に又、前記下部ケーシング8の内周部に前記中間ケーシング7の下部突出部7fを遊嵌させて挿入すると共に、該下部突出部7fと前記下部ケーシング8の内周部との間にOリング7gを介在させて、これら下部突出部7fの外周部と下部ケーシング8の内周部との隙間7hを通って気体が漏洩するのを防止するようにした。
【0043】
ここで前記隙間7h(前記下部突出部7fの外周部の半径方向隙間)は、ヒータ10aにより中間ケーシング7を加熱した場合の該中間ケーシング7と前記下部ケーシング8のそれぞれの温度変化に伴う半径方向の熱膨張を考慮して、ヒータ10aの加熱時にも該隙間7hが決してゼロにならないように適切に設定してある。
【0044】
次に本実施例の複合分子ポンプ1の作動及びその効果について説明する。
【0045】
複合分子ポンプ1はロータ6を高速回転させて、吸気口4a側より吸入した排気ガスを、排気管9より排出する。
【0046】
排気ガスが凝縮し易い性質のガスの場合には、加熱用ヒータ10aを作動させて中間ケーシング7を暖め、特にねじ溝真空ポンプ部3のねじ溝部にガスが凝着するのを防止するようにしている。
【0047】
加熱された中間ケーシング7の熱が上部ケーシング4及び又は下部ケーシング8へ伝達されるのを防止するために、該中間ケーシング7の上下にある各接続部A及びBにおいて、相結合するフランジ間に断熱材製ワッシャ11b又は14bを断続的に介在させて直接の熱伝導を減らすと共に、各締結ボルト11a又は14aの頭部の座にもそれぞれ断熱材製ワッシャ11c又は14cを介在させて、これらボルト11a、14aを介しての熱伝導も減らすようにしている。
【0048】
更に又、発条13を備えた柱状断熱部材12が前記中間ケーシング7と前記ディスタンスピース5との間に介在していて、発条13の弾発力によって前記ディスタンスピース5を前記上部ケーシング4の吸入口4a側へ押圧すると共に、前記中間ケーシング7の熱が前記ディスタンスピース5及び前記上部ケーシング4に伝導するのを防止している。
【0049】
尚、前記発条13は、前記上部ケーシング4と、該上部ケーシング4に嵌入している前記ディスタンスピース5とが熱膨張の差により軸方向に長さの差を生じた場合に、これを補完または吸収する役目を果たしている。
【0050】
又、前記発条13は複数枚の皿ばねからなるものとしたが、これは複数枚の皿ばねの代りに各1個のコイルばねからなるものとしてもよい。
【0051】
このように前記各ケーシングの接続部A又はBにおいて、断熱材製ワッシャ11b又は14bを断続的に介在させて、これら断熱材製ワッシャ11b又は14bの相互間に空間部を設けたので、周方向に連続した切れ目のないリング状の断熱部材を介在させた場合と比較すると、前記各ケーシングと断熱部材との接触面積は大幅に減少し、その結果、これら断熱部材を介した熱伝導による熱伝達量を大幅に減少させることができた。
【0052】
又、ディスタンスピース5と中間ケーシング7との間に柱状断熱部材12を断続的に介在させて、これら柱状断熱部材12の相互間に空間部を設けたので、周方向に連続した切れ目のないリング状の断熱部材を介在させた場合と比較すると、前記中間ケーシング7と断熱部材との接触面積、及び前記上部ケーシング4と断熱部材との接触面積は共に大幅に減少し、その結果、これら断熱部材を介した熱伝達量を大幅に減少させることができた。
【0053】
ここで、2平面間の温度差がΔT[K]である平行平板間に、厚さL[m]、断面積S[m]、熱伝導率λ[W/(K・m)]を有する断熱部材を介在させた場合を考えると、前記2平面の高温面側から低温面側へと流れる熱流量Q[W]は式(1)で表わすことができる。
Q=λ・S・ΔT/L…(1)
【0054】
この式より、次のようなことが解る。即ち、λ(断熱部材の材質)とΔT(断熱部材の2面間の温度差)とL(断熱部材の軸方向寸法)が一定で良い場合には、S(周方向に断続的に介在させる断熱部材の総断面積)を例えば1/5にするだけで断熱部材を介在させた2面間を流れる熱流量(Q)を1/5にすることができ、その結果、ヒータ10aへの投入電力を低減することが可能となる。
【0055】
また、QとλとLが一定で良い場合には、Sを例えば1/5にするだけで断熱部材の2面間の温度差(ΔT)は5倍となって中間ケーシング7を高温に維持することができ、その結果、ねじ溝真空ポンプ部の外側ステータ3aと内側ステータ3bもまた高温に維持され、排気ガスの凝着をさらに防止することが可能となる。
【0056】
また、QとλとΔTが一定で良い場合には、Sを例えば1/5にするだけで断熱部材の軸方向寸法(L)もまた1/5にすることができ、その結果、断熱部材の軸方向の設置スペースを1/5にすることが可能となり、しかも、断熱部材の総体積(L×S)は1/25となって断熱部材のコスト低減も同時に実現できる。
【0057】
さらにまた、QとΔTとLが一定で良い場合には、Sを例えば1/5にするだけで断熱部材の材質としてはその熱伝導率(λ)が5倍のものまで選択範囲を広げることができ、その結果、圧縮強度・加工性・コスト・入手性等も勘案した総合的な断熱部材の選定が可能となる。
【0058】
このように、本発明を適応することによって、様々な目的・条件に応じた最適断熱構造設計が実現できる。
【0059】
尚、本発明で採用した断熱部材の熱伝導率はおおよそ2[W/(K・m)]未満である。素材選定に際しては、上述の通り、構造材料としての機械的性質(硬度や圧縮強度等)・加工性・コスト等を勘案した。その結果、本発明では、ガラス質やセラミックスなどの無機物質を主成分とし結合材としての有機物質をわずかに含有する断熱素材を採用した。
【0060】
この種の素材は、複合分子ポンプ1の外部(大気中)に配置される断熱部材11b、11c、14b、14c用として、加工後そのまま使用することができる。
【0061】
一方、複合分子ポンプ1の内部(真空中)に配置される柱状断熱部材12、16用としては、加工後そのままの状態で使用することは不適切である。それは、ある種の気体(例えばフッ素化合物等)が活性化された状態で複合分子ポンプ1の内部に流入すると、結合材としての前記有機物質が分解されて腐食が徐々に進行する場合があるためである。そこで、前記素材からなる柱状断熱部材12、16には耐腐食性表面処理を施工することとした。表面処理の種類としては、例えば、複合分子ポンプ1のアルミ合金製のロータ6への施工で実績のあるニッケル系の表面処理などが適切であるが、活性状態にあるフッ素化合物等に対する耐腐食性を有する表面処理であれば何でも良い。
【0062】
又、前記各ケーシングの接続部A及びBの同心嵌合部において、アルミ合金製の中間ケーシング7側が該同心嵌合の外側となるように形成したが、これは材料の熱膨張率及び各ケーシングの温度上昇を勘案して、同心嵌合部に固着が発生するのを防止すると共に、ヒータ10aによる加熱により中間ケーシング7の温度上昇に伴って前記各同心嵌合部が半径方向にスキマ勝手となるようにし、中間ケーシング7から他のケーシングへの半径方向接触による熱伝導を抑制するようにしたものである。このような半径方向の断熱構造により、中間ケーシング7を高温に維持することができ、その結果、ねじ溝真空ポンプ部3の外側ステータ3aと内側ステータ3bもまた高温に維持され、排気ガスの凝着をさらに防止することが可能となった。
【0063】
さらに又、中間ケーシング7の外周部と上部ケーシング4の内周部の隙間7d(Oリング7cの上側と下側の両方の半径方向隙間、図2参照)、及び、中間ケーシング7の外周部と下部ケーシング8の内周部の隙間7h(Oリング7gの上側と下側の両方の半径方向隙間、図3参照)は、ヒータ10aによる加熱により中間ケーシング7が温度上昇しても決してゼロにならないように適切に設定したが、これも中間ケーシング7から他のケーシングへの半径方向接触による熱伝導を抑制するようにしたものである。このような第2の半径方向の断熱構造により、中間ケーシング7を高温に維持することができ、その結果、ねじ溝真空ポンプ部3の外側ステータ3aと内側ステータ3bもまた高温に維持され、排気ガスの凝着をさらに防止することが可能となった。
【0064】
このように、加熱されている中間ケーシング7から上部ケーシング4及び又は下部ケーシング8あるいはディスタンスピース5への半径方向接触及び又は軸方向接触による熱伝導を防止したので、高温に維持された中間ケーシング7によりねじ溝真空ポンプ部3の外側ステータ3aと内側ステータ3bもまた高温に維持され、排気ガスの凝着を防止することが可能となり、又、ヒータ10aの加熱に必要なエネルギーが少なくてすみ、又、下部ケーシング8の冷却水配管8bを通る冷却水も節約されることになって、経済的である。
【実施例2】
【0065】
本発明の実施例2を図5及び図6により説明する。
【0066】
図5は本実施例の複合分子ポンプ15の縦断面図である。
【0067】
本実施例の複合分子ポンプ15は、前記実施例1の複合分子ポンプ1と同様の構造を有しており、前記実施例1の複合分子ポンプ1では中間ケーシング7の上面部とディスタンスピース5との間に発条13を具備した柱状断熱部材12を介在させたのに対して、本実施例2では、発条を具備していない柱状断熱部材16を中間ケーシング7の上面部とディスタンスピース5との間に介入させ、更に前記ディスタンスピース5と上部ケーシング4の吸入口4aとの間に前記ディスタンスピース5と略同径の発条17を介在させた点が、前記実施例1とは異なっている。
【0068】
図5における上部ケーシング4と中間ケーシング7との接続部Eの詳細を図6に示した。
【0069】
即ち、前記中間ケーシング7と前記ディスタンスピース5との間に介在する柱状断熱部材16は、前記実施例1における柱状断熱部材12と同様に断熱性を有する材料からなり、根部の大径の円柱部と上部の小径の円柱部とからなる2段円柱構造に形成され、中間ケーシング7の上面の同一円周上に複数個の柱状断熱部材16が等ピッチで断続的に配置されている。
【0070】
図6に示すように、柱状断熱部材16と断熱材製ワッシャ11bの介在により前記中間ケーシング7の熱が前記ディスタンスピース5及び前記上部ケーシング4に伝導するのを防止することができる。
【0071】
又、前記発条17(図5)は、前記ディスタンスピース5を中間ケーシング7側へ押圧すると共に、該ディスタンスピース5と該ディスタンスピース5が嵌入している上部ケーシング4との熱膨張の差により軸方向の長さに差が生ずるのを補完又は吸収する役目を果たしている。
【0072】
又、発条17が1枚の皿ばねからなる場合、そのばね剛性が非常に高いので、ディスタンスピース5と中間ケーシング7との間に設けた前記柱状断熱部材16と前記中間ケーシング7側の座との間にリング状の座金16aを介在させて、前記柱状断熱部材16の高さを調整するようにしている。
【0073】
尚、本実施例では断熱部材の形状を2段円柱構造としたが、これはその小径部をディスタンスピース5に設けた円柱状の凹部に挿入して位置決めをするためであり、断熱部材の適切な配置・位置決めが可能であれば、断熱部材の形状は単純な円柱又は矩形板としても良い。
【0074】
本実施例2の複合分子ポンプ15の作動及び効果は、前記実施例1の複合分子ポンプ1におけるのと略同様である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の断熱構造を有する分子ポンプは、特に凝縮し易い気体の真空排気に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1の複合分子ポンプの縦断面図である。
【図2】前記図1におけるA部の詳細図である。
【図3】実施例1の一部説明図である。
【図4】前記図1におけるB部の詳細図である。
【図5】実施例2の複合分子ポンプの縦断面図である。
【図6】前記図5におけるE部の詳細図である。
【符号の説明】
【0077】
1、15 複合分子ポンプ
2 ターボ分子ポンプ部
3 ねじ溝真空ポンプ部
4 上部ケーシング
5 ディスタンスピース
7 中間ケーシング
8 下部ケーシング
11a、14a 締結ボルト
11b、11c、14b、14c 断熱部材(断熱材製ワッシャ)
12、16 柱状断熱部材
13、17 発条
A、B、E 接続部






























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部の後段に連設されたねじ溝真空ポンプ部とを有する複合分子ポンプにおいて、該複合分子ポンプは、前記ターボ分子ポンプ部の外周を覆う上部ケーシングと、前記ねじ溝真空ポンプ部のステータを具備して前記上部ケーシングに連設された中間ケーシングと、前記中間ケーシングに連設された下部ケーシングとからなる3段構造のケーシングを有しており、更に前記上部ケーシングと前記中間ケーシングとの接続部、及び前記中間ケーシングと前記下部ケーシングとの接続部にそれぞれ複数個の断熱部材を周方向に断続的に配置して介在させたことを特徴とする複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項2】
前記断熱部材は、前記上部ケーシングと前記中間ケーシング、及び前記中間ケーシングと前記下部ケーシングをそれぞれ締結する締結ボルトに挿通されて前記接続部間に挟着された断熱材製ワッシャであることを特徴とする請求項1に記載の複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項3】
前記締結ボルトの頭部の締め付け座面にも前記断熱材製ワッシャを介在させたことを特徴とする請求項2に記載の複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項4】
ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部の後段に連設されたねじ溝真空ポンプ部とを有する複合分子ポンプにおいて、該複合分子ポンプは、前記ターボ分子ポンプ部の外周を覆う上部ケーシングと、前記ねじ溝真空ポンプ部のステータを具備して前記上部ケーシングに連設された中間ケーシングと、前記中間ケーシングに連設された下部ケーシングとからなる3段構造のケーシングを有しており、更にターボ分子ポンプの静翼段を係止するための環状のディスタンスピースを前記上部ケーシングの内周部に設置すると共に、該ディスタンスピースと前記中間ケーシングとの間に複数個の断熱部材を周方向に断続的に配置して介在させたことを特徴とする複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項5】
前記断熱部材の表面にニッケルめっき又は耐食性を有する材料によるコーティングを施したことを特徴とする請求項4に記載の複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項6】
前記ディスタンスピースと前記上部ケーシングの吸入口部との間に、前記ディスタンスピースと略同径の皿ばねからなる発条を介在させたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項7】
前記ディスタンスピースと前記下部ケーシングとの間に、コイルばね又は複数個の皿ばねからなる発条を周方向の複数個所に断続的に配置して介在させたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項8】
ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部の後段に連設されたねじ溝真空ポンプ部とを有する複合分子ポンプにおいて、該複合分子ポンプは、前記ターボ分子ポンプ部の外周を覆う上部ケーシングと、前記ねじ溝真空ポンプ部のステータを具備して前記上部ケーシングに連設された中間ケーシングと、前記中間ケーシングに連設された下部ケーシングとからなる3段構造のケーシングを有しており、更に前記上部ケーシングと前記中間ケーシングとの接続部、及び前記中間ケーシングと前記下部ケーシングとの接続部にはそれぞれ同心嵌合部を設けて、一方を外側とし他方を内側とする同心状に嵌合接続させると共に、各同心嵌合部において前記中間ケーシング側が該同心嵌合の外側となるように形成したことを特徴とする複合分子ポンプの断熱構造。
【請求項9】
前記ケーシングの各同心嵌合部の内側には前記ケーシングを密封接続するための真空シール部をそれぞれ配設すると共に、該真空シールは、中間ケーシングの上部突設部外周面及び下部突設部外周面にそれぞれ刻設したOリング溝の各底部面と、該Oリング溝に配置される各Oリングと、上部ケーシングの内周面及び下部ケーシングの内周面とでそれぞれ形成される接触シール構造とし、さらに、前記中間ケーシングの上部突設部外周面と前記上部ケーシングの内周面、及び、前記中間ケーシングの下部突設部外周面と前記下部ケーシングの内周面との間にそれぞれ半径方向の隙間を設け、該外周面と該内周面とが常に当接しない構造としたことを特徴とする請求項8に記載の複合分子ポンプの断熱構造。







































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−37951(P2006−37951A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173522(P2005−173522)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000149170)株式会社大阪真空機器製作所 (38)
【Fターム(参考)】