説明

複合加工機によるワーク加工方法

【課題】自動工具交換装置を備え、種々の加工ツールにより複数の加工法でワークの加工を可能とする複合加工機を複数台並べ、生産数量の増減に効果的に対応できる生産方法を提供。
【解決手段】ワークを加工する種々のツールから所定の順序で1つの加工ツールを選択し、複数種類の加工をワークに対して選択的に行う複数の複合加工機を複合加工機の稼動期間、ワーク生産数量、単位数量あたりの加工時間に応じてワークの加工ラインに配置する配置ステップと、複数種類の加工の中から複数の複合加工機がそれぞれ分担する分担加工を複合加工機の稼動期間、及び、ワークの生産数量、単位数量あたりの加工時間に応じて決定する分担加工決定ステップと、ワークを分担加工の加工順序に基づいて複数の複合加工機の間で受け渡すことによって複数の複合加工機に前記分担加工を実行させる分担加工ステップにより、生産数量の増減に効果的に対応できる生産方法を提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動工具交換装置を備え、種々の加工ツールにより複数の加工法でワークの加工を可能とする複合加工機によるワークの加工方法に関し、特に、ワーク加工開始から終了までを、効率的にプロセス一貫して加工可能にする複数の複合加工機によるワーク加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、その加工内容に応じて、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、平削り盤、ブローチ盤、研削盤等があり、NC制御により単一の加工だけではなく種々の複合加工ができるものがある。また、例えば、旋削と研削を可能とするいわゆる複合加工機も種々提案されている(例えば、特許文献1)。また、FMSと称されるフレキシブル生産システムは、複数のNC工作機械と、これら工作機械間で移動でき、これらの工作機械に対しワークを搬入、搬出する、例えば、自動ワーク搬送装置と、各ワークに対応した加工プログラムに従ってシステム内の全ての工作機械或いは必要な工作機械を制御する制御装置とで構成されるもので、このようなFMS実現のための種々の生産方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
特許文献1には、複数個貯蔵されている工具タレットを交換して、主軸頭にセットされた工具タレット内の工具により、旋削、ミーリング、穴あけ、研削加工を、XYZ軸に移動制御しながら行う複合加工機が開示されている。
【0004】
特許文献2には、入力されるオーダ情報に基づいて熱処理設備で熱処理を行う熱処理スケジュールを作成し、この熱処理スケジュールに基づいて前工程設備で加工を行う前工程スケジュールを作成し、作成された前工程スケジュールに従って前工程設備で加工を行い、前工程設備で加工されたワークに対して熱処理スケジュールに従って熱処理設備で熱処理を行う、FMSによる生産方法が開示されている。
また、マシニングセンタを複数台並べ生産量の増減に対応できるようにした生産方法は、FTL(フレキシブル・トランスファ・ライン)と呼ばれ、例えば特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特公平7−61585号公報
【特許文献2】特開2000−280149号公報
【特許文献3】特開平7−148636公報
【0005】
しかし、例えば、特許文献1のような複合加工機や種々の加工が可能なNCターニングセンタやマシニングセンタ等を組み合せて、例えば、特許文献2に示されるような種々の生産方法を基に、ワーク加工開始から終了までをプロセス一貫して加工可能にする効果的な生産方法は、十分な提案がなされてない状況である。特に、既存のFTLは切削加工のみが可能なマシニングセンタを複数台並べたものであり、焼入れ加工、及び研削加工をも含んだFTLは開示されてない。また、既存のFTLはいわゆる角物ワーク(エンジンのシリンダブロックなどの固定された状態のワークに対して加工を行うもの)用で、いわゆる軸物(エンジンのクランクシャフトなどのワークが回転された状態で加工が行われるもの)用のFTLは開示されてない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、自動工具交換装置を備え、種々の加工ツールにより複数の加工法でワークの加工を可能とする複合加工機を複数台並べ、生産数量の増減に効果的に対応できる加工方法あるいは生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ワークを加工する形状加工ツール、熱処理加工ツール、及び、仕上げ加工ツールから所定の順序で1つの加工ツールを選択し、複数種類の加工を前記ワークに対して選択的に行う複数の複合加工機を前記ワークの生産数量、前記複合加工機の稼動期間、及び、前記ワークの単位数量あたりの加工時間に応じて前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、
前記複数種類の加工の中から前記複数の複合加工機がそれぞれ分担する分担加工を前記ワークの生産数量、前記複合加工機の稼動期間、及び、前記ワークの単位数量あたりの加工時間に応じて決定する分担加工決定ステップと、
前記ワークを前記分担加工の加工順序に基づいて前記複数の複合加工機の間で受け渡すことによって前記複数の複合加工機に前記分担加工を実行させる分担加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法を提供する。
【0008】
第2の発明は、ワークに加工を施す加工ツールの交換によって複数種類の加工を前記ワークに対して選択的に行う複数の複合加工機を前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、前記複数種類の加工の中から前記複数の複合加工機がそれぞれ分担する分担加工を前記ワークの単位時間当りの生産数量に応じて決定する分担加工決定ステップと、前記ワークを前記分担加工の加工順序に基づいて前記複数の複合加工機の間で受け渡すことによって前記複数の複合加工機に前記分担加工を実行させる分担加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法を提供する。
【0009】
上記発明において、前記配置ステップは、前記複数の複合加工機として第1より第3の複合加工機を前記加工ラインに配置し、前記分担加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工を分担させ、前記第3の複合加工機に研削加工を分担させるものであってもよい。
【0010】
また、上記発明において、前記配置ステップは、前記複数の複合加工機として第1及び第2の複合加工機を前記加工ラインに配置し、前記分担加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、前記第2の複合加工機に研削加工を分担させる第1の分担加工モードと、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工と研削加工を分担させる第2の分担加工モードを設定し、前記旋削加工、前記焼入れ加工、及び前記研削加工の各加工時間に基づいて前記第1あるいは第2の分担加工モードを実行するものであってもよい。
【0011】
第3の発明は、加工ツールの交換によって複数種類の加工をn個(nは2以上の整数)のワークに行うN台(Nは2以上の整数)の複合加工機を前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、N台の前記複合加工機のそれぞれが前記複数種類の加工の全加工を(n/N)個の前記ワークに行う第1の加工時間と、N台の前記複合加工機が前記複数種類の加工の中から選択した分担加工をn個の前記ワークに行う第2の加工時間を演算する演算ステップと、N台の前記複合加工機中の前記第2の加工時間の最大値が、前記第1の加工時間より小なるとき、n個の前記ワークをN台の前記複合加工機の間で受け渡すことによりN台の前記複合加工機がn個の前記ワークに施す前記分担加工に基づいてn個の前記ワークに前記複数種類の加工を所定の順序で行い、前記第2の加工時間の最大値が、前記第1の加工時間より大なるとき、N台の前記複合加工機のそれぞれが前記複数種類の加工の全加工をn/N個の前記ワークに所定の順序で同時に行う加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法を提供する。
【0012】
また、上記発明において、前記加工ステップは、N台の前記複合加工機に前記複数種類の加工としての旋削加工、焼入れ加工、及び研削加工を所定の順序で分担して実行させるものであってもよい。
【0013】
また、上記発明において、前記配置ステップは、N台の前記複合加工機として第1より第3の複合加工機を前記加工ラインに配置し、前記加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工を分担させ、前記第3の複合加工機に研削加工を分担させるものであってもよい。
【0014】
また、上記発明において、前記配置ステップは、N台の前記複合加工機として第1及び第2の複合加工機を前記加工ラインに配置し、前記加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、前記第2の複合加工機に研削加工を分担させる第1の分担加工モードと、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工と研削加工を分担させる第2の分担加工モードを設定し、前記旋削加工、前記焼入れ加工、及び前記研削加工の各加工時間に基づいて前記第1あるいは第2の分担加工モードを実行するものであってもよい。
【0015】
第4の発明は、加工ツールの交換によって複数種類の加工をn個(nは2以上の整数)のワークに行うN台(Nは2以上の整数)の複合加工機を前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、N台の前記複合加工機のそれぞれが前記複数種類の加工の全加工を(n/N)個の前記ワークに所定の順序で同時に行う第1の加工モードと、n個の前記ワークをN台の前記複合加工機の間で受け渡すことによりN台の前記複合加工機がn個の前記ワークに施す前記複数種類の加工の中から選択した分担加工に基づいてn個の前記ワークに前記複数種類の加工を所定の順序で行う第2の加工モードを設定する加工モード設定ステップと、
前記ワークの種類及び前記複数種類の加工の内容に応じた前記第1及び第2の加工モードの加工時間を演算する演算ステップと、前記第1及び第2の加工モードの中から前記加工時間の短い加工モードを選択して前記ワークを加工する加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動工具交換装置を備え、種々の加工ツールにより複数の加工法でワークの加工を可能とする複合加工機を複数台並べ、生産数量の増減に効果的に対応できる加工方法あるいは生産方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の実施の形態)
(複合加工機の構成)
以下、本発明の実施の形態を構成する複合加工機について図面を参照して説明する。尚、説明の便宜上、複合加工機の全体構成に係る位置関係を、複合加工機に向かって立つ使用者(図1において紙面下側に立つ)から見た状態として説明する。すなわち、使用者から見て、手前側を「前」、奥側を「後」、右側を「右」、左側を「左」、上側を「上」、下側を「下」として説明する。また、前方向をX軸方向、左方向をZ軸方向、上方向をY軸方向とする。また、以下の実施の形態において、図1乃至図5では、不特定の加工ツールである第1の加工ツール501aを不特定の加工ツールである第2の加工ツール501bに交換してワークを加工する場合を説明し、図6乃至図10では、旋削工具502、切削工具503、熱処理工具504、研削工具505、及び、表面仕上げ工具506の順序で各加工ツールを交換してワークを加工する場合を説明する。
【0018】
図1は、実施の形態に係る複合加工機の平面図であり、図2は、図1に示す複合加工機の主軸台より後側を前から見た正面図である。
【0019】
この複合加工機1は、図示しないコンピュータ数値制御装置(CNC)により全体の駆動が制御されるものであり、複合加工機本体と図示しない付属装置からなる。主な付属装置は、レーザ発振器、オイル供給装置、冷却装置、エア供給機器、クーラント供給装置、切屑収集装置及びこれらの装置を複合加工機本体と接続するダクト装置等からなっている。
【0020】
複合加工機1は、ベッド10上に載置され、軸物あるいは長尺状のワークWを回転駆動可能に支持するワーク支持駆動ユニット100と、加工ツールが着脱可能に装着されるホイール回転主軸ユニット200と、ホイール回転主軸ユニット200を搭載し、ベッド10上に装架された多自由度リンク機構300によりワークWに対して位置決め可能なリンクヘッド301と、加工ツールをホイール回転主軸ユニット200の所定位置に着脱する自動工具交換ユニット400とを有する。
【0021】
ワーク支持駆動ユニット100は、ベッド10上に載置された主軸台ベース101に、左右の主軸台スライドガイド102を介してスライド可能に移動可能な左右の主軸台103を有し、各々左右の主軸台103には、主軸105を所定の回転数で回転駆動する主軸駆動モータ104が搭載されている。各々左右の主軸台103は、左右独立にZ方向にスライドして、ワークWを所定の心間で挟持して、その位置を固定できる構成となっている。
【0022】
ホイール回転主軸ユニット200は、第1の加工ツール501aを装着したホイール回転主軸201を、リンクヘッド301に搭載されたホイール回転主軸駆動モータ306の回転駆動力をトラクションドライブユニット202により回転力を伝達して第1の加工ツール501aを所定回転数で回転駆動する構成となっている。尚、上記のトラクションドライブユニット202は、転動体により振動が小さく回転伝動可能で研削加工にも好適であるが、他の伝達方法、例えば、ギアやベルトによる回転駆動方式、あるいは、ホイール回転主軸駆動モータ306との直結方式等により構成してもかまわない。
【0023】
ホイール回転主軸201は、第1の加工ツール501aのテーパ部510をクランプして、第1の加工ツール501aとホイール回転主軸201を強固に締結するクランプ部203を有している。具体的には、クランプ部203は、複合加工機用のHSKインターフェース規格等の互換性を有する規格により構成されている。
【0024】
多自由度リンク機構300は、閉リンク機構を並列に配置した、いわゆるパラレルメカニズムといわれるものであり、ヘッド10上に載置された左右一対のリニアガイドベース302に設けられた左右合計で4つの送り機構と、ホイール回転主軸ユニット200を搭載したリンクヘッド301と送り機構とを連結する4本のリンク303とからなる。送り機構は、左右一対のリニアガイド304と、各リニアガイド304に対してX軸方向に移動可能に案内された2つのスライダ307と、このスライダ307の各々を独立して移動させるためのボールねじ308およびリンク駆動サーボモータ305とから構成されている。リンク303の一端が送り機構のスライダ307に各々旋回自在に結合支持され、他端がリンクヘッド301の所定の位置に旋回自在に連結支持される。このように構成されることにより、各リンク駆動モータ305を制御して各スライダの位置を独立して制御することにより、リンクヘッド301はX軸方向への移動、Z軸方向への移動、およびY軸回りの回転の3自由度の位置、姿勢制御が可能となっている。なお、この多自由度リンク機構300を構成する送り機構としては、ボールねじ308およびリンク駆動サーボモータ305に代えてリニアモータで各スライダを駆動する構成としてもよい。
【0025】
リンクヘッド301のX軸方向位置、Z軸方向位置、及びY軸回りの回転角は、リニアガイド304に取付けられた図示しない位置センサ(光学式リニアスケール又は磁気式リニアスケール等)により4本の各リンク303の位置を各々検出し、これに基づいてリンクヘッド301の位置及び姿勢を制御するように構成される。尚、上記の位置検出は、リンクヘッド301またはホイール回転主軸ユニット200の特定箇所を、光学的方法、磁気的方法、又は、電気的方法によって検出する構成としてもよい。この場合は、リンクヘッド301またはホイール回転主軸ユニット200の異なる2点の少なくともX軸位置及びZ軸位置を検出することで、リンクヘッド301の位置及び姿勢が制御される。また、リンクヘッド301に搭載されたホイール回転主軸ユニット200上の第1の加工ツール501aは、各々所定の形状で構成され、所定の位置関係で結合固定されるので、上記リンクヘッド301の位置及び姿勢を制御することで、第1の加工ツール501aの加工点の位置も制御できる構成となっている。従って、加工中の前記ワークWの外形、加工位置、及び、加工角度等に応じた加工姿勢を第1の加工ツール501aに採らせることができる。
【0026】
自動工具交換ユニット400は、ベッド10上の所定の位置に載置され、種々の第2の加工ツール501bを保持可能な複数のツールポッド402を有したツールタレット403と、X軸回りに割出し制御をするサーボモータ404により構成されている。ツールポッド402の内部には、第2の加工ツール501bの先端部に形成された溝部407が所定の力以上で着脱可能となるよう、ボールブッシュ405による結合部406が形成されている。尚、ツールポッド402の数は、ツールタレット403の径を大きく設定することで、多数の本数をセット可能に構成できる。
【0027】
第1の加工ツール501a及び第2の加工ツール501bには、旋削加工に使用される旋削用電着ホイール等の旋削工具502、穴あけ、溝加工等に使用されるドリル、エンドミル等の切削工具503、レーザ焼入れヘッド等の熱処理工具504、研削加工に使用される砥石車(例えば、CBNホイール)等の研削工具505、超仕上げ、ELID研削等に使用される表面仕上げ工具506がある。尚、旋削用電着ホイール等の旋削工具502、穴あけ、溝加工等に使用されるドリル、エンドミル等の切削工具503は、主にワークWの形状を形成するのに使用されるので、形状加工ツールと総称することができる。また、砥石車等の研削工具505、超仕上げ、ELID研削等に使用される表面仕上げ工具506等は、主にワークWの精度、表面粗さ等を出すのに使用されるので、仕上げ加工ツールと総称することができる。そして、ホイール回転主軸ユニット200、多自由度リンク機構300、及び、自動工具交換ユニット400によって、形状加工ツール、熱処理加工ツール、及び、仕上げ加工ツールから所定の順序で1つの加工ツールが選択される。
【0028】
旋削工具502としては、バイト、へ一ルバイト等の工具を回転させない状態で使用するものの他、旋削用電着ホイール等の回転状態で使用する工具を装着可能である。ここで旋削用電着ホイールとは、ホイール母材の外周にバイトチップやダイヤモンド、CBN等の超砥粒を例えばニッケル等のメッキにより埋め込んだもので、ツールコストに優れる。
【0029】
穴あけ、溝加工等に使用される切削工具503としては、ドリル、タップ、エンドミル、フライス工具等が装着可能で、これらの工具は工具の軸線回り、すなわちX軸と平行な軸線回りの回転駆動が必要であるので、Z軸と平行な軸回りの回転であるホイール回転主軸201の回転動カの方向を変換する必要がある。この回転方向変換機構はべベルギヤで構成することができ、工具内に組み込むことが可能である。また、ホイール回転主軸201の回転動カを用いることなく、工具内にモータ等の回転駆動手段を有する構成としてもよい。
【0030】
レーザ焼入れヘッド等の熱処理工具504は、高エネルギ密度のレーザビームをワークWの表面に集束して照射する構成となっている。レーザビームは、炭酸ガスレーザ、高出力の半導体レーザ、レーザアレイ等により供給され、レーザビーム光源は、熱処理工具504に内蔵してもよく、また、熱処理工具504外の例えばベッド10上に載置して、レーザビーム光源から発するコリメートしたレーザビームを熱処理工具504上に搭載した集光手段により当該集光手段を位置制御して加工点へレーザビームを集束照射して構成するものであってもよい。尚、熱処理工具504を使用する場合には、ホイール回転主軸201の回転動力は使用しない。
【0031】
ホイール回転主軸ユニット200は、ホイール回転主軸201を停止状態に保持するブレーキ等の静止手段、ホイール回転主軸201の静止トルクが大きく設定できるホイール回転主軸駆動モータ301、又は、ホイール回転主軸201を停止状態に保持する回転停止サーボ剛性の大きな制御手段を有して構成することが好ましい。また、熱処理工具504等のように、回転状態で加工しないツールを使用する場合のための、第1の加工ツール501aをホイール回転主軸ユニット200に固定するツール装着部を有する構成とすることもできる。
【0032】
研削加工に使用される砥石車(例えば、CBNホイール)である研削工具505は、CBN(Cubic Boron Nitride:立方晶窒化ホウ素)の砥粒を使用したCBNホイールで、高精度の研削加工が可能な構成となっている。
【0033】
表面仕上げ工具506による超仕上げ加工は、滑らかな表面を得るために砥石に振動を与える超音波発生装置等の加振手段を表面仕上げ工具506に内蔵していることが好ましい。また、表面仕上げ工具506によるELID研削加工は、ダイヤモンド砥粒を鋳鉄ボンド剤で固定した砥石車で構成し、また、電解液供給手段および電解電源を具備する構成とするのが望ましい。
【0034】
(自動工具交換)
図3(a)、(b)は、自動工具交換ユニット400において、第1の加工ツール501a及び第2の加工ツール501bの着脱動作の状態における、各ユニットの位置関係を示す図である。図4(a)、(b)は、第1の加工ツール501aのツールタレット403への回収動作を示す図である。図5(a)、(b)、(c)、(d)は、第2の加工ツール501bのホイール回転主軸ユニット200への装着工程を示す図である。
【0035】
ベッド10上の所定の位置に載置された自動工具交換ユニット400に対して、ホイール回転主軸ユニット200が多自由度リンク機構300により、所定の位置まで駆動され、第1の加工ツール501aの着脱動作が可能な状態になる。所定の位置は、第1の加工ツール501aの先端部に形成された溝部407とツールポッド402内部のボールブッシュ405による結合部406との位置により決定される。第1の加工ツール501aの種類により上記の所定の位置が異なる場合には、第1の加工ツール501aの種類で特定される所定の位置が、加工データとして入力され、NC制御による自動工具交換工程に反映される。
【0036】
図4(a)、(b)は、第1の加工ツール501aのツールタレット403への回収動作を説明する図である。ホイール回転主軸ユニット200に装着されている第1の加工ツール501aは、次の加工工程に移行するステップとして、第1の加工ツール501aのツールタレット403への回収を行う。まず、ホイール回転主軸ユニット200が多自由度リンク機構300により、所定の位置まで駆動され(図4(a))、次に、第1の加工ツール501aの先端部に形成された溝部407が所定の力以上で結合部406へ挿入される(図4(b))。溝部407は、ボールブッシュ405に所定の力で保持される。ホイール回転主軸ユニット200のクランプ部203でホイール回転主軸201に締結していた第1の加工ツール501aのテーパ部510はクランプ解除される。これらの動作が完了した後、ホイール回転主軸ユニット200は多自由度リンク機構300により自動工具交換ユニット400から離間して、回収動作が終了する。
【0037】
図5(a)、(b)、(c)、(d)は、第2の加工ツール501bのホイール回転主軸ユニット200への装着動作を説明する図である。まず、ホイール回転主軸ユニット200が自動工具交換ユニット400から離間した状態において、第2の加工ツール501bがセットされたツールタレット403が割出し動作を行う。サーボモータ404により次工程で使用する第2の加工ツール501bがセットされたツールポッド402の部分が所定位置になるよう回転動作し、ツールタレット403の割出し動作が完了する(図5(a))。
【0038】
装着可能状態となった第2の加工ツール501bに対してホイール回転主軸ユニット200が接近し、ホイール回転主軸ユニット200のクランプ部203にテーパ部510が結合し、ホイール回転主軸201へ締結される。複合加工機用のHSKインターフェース規格によりクランプ部203が構成されている場合、第1の加工ツール501aのテーパ部510と端面は2面拘束により、ホイール回転主軸201に強固に締結される(図5(b))。
【0039】
上記の加工ツール装着動作が完了した後、ホイール回転主軸ユニット200は多自由度リンク機構300により自動工具交換ユニット400から離間して、次工程のイニシャライズ位置に第1の加工ツール501aがセットされる(図5(c))。その後、ツールタレット403が回転し、イニシャライズ位置に戻り、第1の加工ツール501aのホイール回転主軸ユニット200への装着動作が終了する(図5(d))。
【0040】
以下の説明においては、実際に加工を行う加工ツールとして、旋削工具502、切削工具503、熱処理工具504、研削工具505、及び、表面仕上げ工具506により説明し、ホイール回転主軸ユニット200、又は、自動工具交換ユニット400のいずれの側に装着されている場合でも、第1の加工ツール501a及び第2の加工ツール501bのようには区別しないものとする。
【0041】
(旋削加工)
図6(a)、(b)は、ホイール回転主軸ユニット200に、旋削加工に使用される旋削工具502として旋削用電着ホイールを装着して、ワークWを旋削加工している状態を示す図である。旋削用電着ホイールをホイール回転主軸201で高速回転しながらワークWを旋削する場合は、通常のバイトによる旋削加工に比べて、ツール磨耗が1/10以下になり、また、ツールコストは1/2程度に低減できる。旋削工具502は、ワークWの端面を加工する場合は、多自由度リンク機構300により旋削工具502をY軸回りに旋回させる。図6(a)、(b)に示すように、ワークWの左右いずれの端面でも旋削工具502を旋回して加工でき、また、多自由度リンク機構300により、最適な旋削工具502の姿勢で切込み及び送り動作が可能である。
【0042】
(熱処理)
図7は、ホイール回転主軸ユニット200に、レーザ焼入れヘッド等の熱処理工具504を装着して、ワークWを熱処理加工している状態を示す図である。熱処理工具504がレーザ焼入れ用の加工ツールである場合は、高エネルギ密度のレーザビームをワークWの表面に集束して照射する。ワークWの加工面に形成されるレーザスポットは小径サイズなので、高エネルギ密度のレーザビームにより加熱される範囲はこの小径サイズ近傍であって、この範囲周辺が焼入れされる。ワークWの回転によりレーザスポットの位置は移動するので、加熱される範囲は急冷され、焼き戻し工程を設けることなく焼入れ工程が完了する。ワークWの長手方向に熱処理工具504を送り動作させながら焼入れ加工を施すと、ワークWの広範囲に焼入れ加工が可能となる。また、レーザビームによる加熱条件を変化させることで、焼き戻し加工等の種々の熱処理加工が可能となる。さらに、例えば、ワークWが樹脂材料の場合、短波長のレーザビームを集束して照射することで、ワークWの表面の改質等、種々の熱処理加工が可能となる。尚、熱処理工具504を使用する場合には、ホイール回転主軸ユニット200のホイール回転主軸201を停止状態に保持して加工を行う。
【0043】
(穴あけ、溝加工)
図8は、ホイール回転主軸ユニット200に、穴あけ、溝加工等に使用される切削工具503を装着して、ワークWの穴あけ、溝加工等を行っている状態を示す図である。切削工具503としてドリルをホイール回転主軸ユニット200へ装着し、ホイール回転主軸201の回転動力あるいは内蔵された回転手段によりドリルを回転させ、ワークWは回転させずに穴あけ加工を行う。溝加工の場合は、切削工具503として、エンドミルを装着し、ワークWへ切込んだ後、溝加工方向へ移動させることで所望の溝加工が可能となる。
【0044】
(研削加工)
図9は、ホイール回転主軸ユニット200に、研削工具505として砥石車(例えば、CBNホイール)を装着して、ワークWを研削加工している状態を示す図である。研削加工においては、図に示すように、砥石車をワークWに直角に当接させて加工するだけでなく、図6で旋削加工の説明をしたのと同様に、砥石車を傾斜させてのアングル研削が容易に可能となる。ワークWの外周面及び左右いずれの端面でも研削工具505を旋回させて加工でき、また、多自由度リンク機構300により、最適な研削工具505の姿勢で切込み及び送り動作が可能である。これにより、従来の砥石はもとより、砥石内の領域ごとに組成が異なっている傾斜組成砥石、あるいは、異なる砥石を組合せて形成した異種組成砥石等による新しい研削理論による研削加工を、最適な加工条件で行うこともできる。
【0045】
(表面仕上げ加工)
ホイール回転主軸ユニット200に、種々の表面仕上げ工具506を装着して、ワークWの表面仕上げ加工が可能である。砥石に振動を与えながら表面仕上げ加工を行う超仕上げ加工、電解液の中でドレッシングを行いながら研削加工を行うELID研削等の表面仕上げ加工が可能である。その他、ラッピング、ポリッシング、バフ仕上げ等の表面仕上げも可能である。
【0046】
図10は、自動車の代表的な部品の一つである等速ジョイントの従来の加工ライン構成の一例を示す図である。加工をスタートすると、まず、ワークのセンタ穴加工(CEN)を行う。ワークのブランク素材を製造する段階でセンタ穴加工がされる場合は、この工程が省略される。次に、旋削加工(LA)により、ワークの外形加工を行う。仕上げ代を残してほぼ製品形状に外形加工を施す。加工時間を要するので、加工ラインにおいて旋盤を並列に稼動させる場合もある。旋削加工の一工程として、面取り加工(CHA)工程があるが、ワークのブランク素材を製造する段階で面取り部が形成される場合は、この工程が省略される。次に、穴あけ加工(DR)、スプライン加工(SPL)により必要な穴、溝加工が行われる。外形が仕上がった後に、焼入れ(HT1)焼き戻し(HT2)等の焼入れ加工(HT)が行われ、研削加工(GR)により表面仕上げと寸法精度を出す。研削加工は、加工時間を要するので、加工ラインにおいて研削盤を並列に稼動させる場合もある。最後に、内面加工を旋削によりハードターニング加工し、一連の加工が終了する。
【0047】
(第1の実施の形態)
図10に示した等速ジョイントの加工ラインが、ワークのセンタ穴加工であるL1工程P101、旋削加工であるL2工程P102、面取り加工であるL3工程P103、穴あけ加工であるL4工程P104、スプライン加工であるL5工程P105、焼入れ加工であるY1工程P106、焼き戻し加工であるY2工程P107、研削加工であるG1工程P108、仕上げ加工であるG2工程P109の各工程により構成され、数量n個のワークWを各複合加工機が稼動時間Sで生産する場合について説明する。図11は、複合加工機1台、2台及び3台で加工する場合を示すものである。
【0048】
形状加工工程であるL1工程、L2工程、L3工程、L4工程、及び、L5工程のそれぞれにおけるワークWの加工時間を、TL1、TL2、TL3、TL4、TL5とする。同様に、熱処理工程であるY1工程、Y2工程、研削仕上げ工程であるG1工程、G2工程のそれぞれにおけるワークWの加工時間を、TY1、TY2、TG1、TG2とする。ワークWの1個当たりに要する加工時間すなわち加工ラインのタクトタイムは、S/nであり、S/n時間毎に加工完成品が生産されることになる。この生産量を実現するために必要な複合加工機の台数N(Nは整数)を、N≧(TL1+TL2+TL3+TL4+TL5+TY1+TY2+TG1+TG2)÷(S/n)により決定する。
【0049】
次に、第1の複合加工機M1が分担加工すべき工程は、L1工程P101の加工時間TL1から順次積算して、TL1+TL2+・・・・がS/nとなるまでの工程であり、第2の複合加工機M2が分担加工すべき工程は、第1の複合加工機M1が分担加工する次の加工工程から同様に各加工工程の時間を積算してS/nとなるまでの工程である。以下、同様にして、第Nの複合加工機MNが分担加工すべき工程は、第(N−1)の複合加工機M(N−1)が分担加工すべき工程の次の加工工程から最後のG2工程P109までである。尚、各加工工程の積算時間は、タクトタイムに最も近い値になるように選択すればよい。また、後述する具体的な例では、説明を省略しているが、各加工工程における加工ツールの交換時間あるいはワークWの複合加工機への着脱時間等を含めて積算計算する必要がある。
【0050】
具体的な例として、1日の稼動時間を8時間(28800秒)とし、TL1=10秒、TL2=20秒、TL3=20秒、TL4=10秒、TL5=30秒、TY1=30秒、TY2=10秒、TG1=20秒、TG2=30秒であるとする。
【0051】
1日の生産数量が、n=150個の場合
タクトタイムは28800÷150=192秒となり、必要な複合加工機の台数NはN≧(10+20+20+10+30+30+10+20+30)÷192=0.94を満たす最小の整数として、N=1台となる。この場合は、工程分割は不要であり、1台の複合加工機ですべての加工工程を行う(図11(a))。
【0052】
1日の生産数量が、n=300個の場合
タクトタイムは28800÷300=96秒となり、必要な複合加工機の台数NはN≧(10+20+20+10+30+30+10+20+30)÷96=1.875を満たす最小の整数として、N=2台となる。第1の複合加工機M1は、L1工程P101からL5工程P105までを分担加工し、加工時間は、10+20+20+10+30=90秒であり、第2の複合加工機M2は、Y1工程P106からG2工程P109までを分担加工し、加工時間は、30+10+20+30=90秒である(図11(b))。
【0053】
1日の生産数量が、n=450個の場合
タクトタイムは28800÷450=64秒となり、必要な複合加工機の台数NはN≧(10+20+20+10+30+30+10+20+30)÷64=2.81を満たす最小の整数として、N=3台となる。第1の複合加工機M1は、L1工程P101からL4工程P104までを分担加工し、加工時間は、10+20+20+10=60秒であり、第2の複合加工機M2は、L5工程P105からY1工程P106までを分担加工し、加工時間は、30+30=60秒であり、第3の複合加工機M3は、Y2工程P107からG2工程P109までを分担加工し、加工時間は、10+20+30=60秒である(図11(c))。
【0054】
上記の実施の形態により、ワークの生産数量、前記複合加工機の稼動期間、及び、前記ワークの単位数量あたりの加工時間に応じて必要な複合加工機の台数が求められ、これを加工ラインに配置して、各複合加工機が複数の加工工程を分担加工することができ、各複合加工機に遊びが生じることなく効率のよいワークWの加工が可能となる。
【0055】
(第2の実施の形態)
上記等速ジョイントの加工に代表される主要な加工工程のうち、旋削、焼入れ、及び研削加工を、上記説明した複合加工機により工程集約して加工する場合について説明する。図12は、本発明の実施の形態に係る加工方法の各ステップのフローを示す図である。また、図13は、本発明の実施の形態に係る加工ラインにおける工程のフローを示すもので、(a)は、加工種別による工程のフローを示す図であり、(b)は、複合加工機が分担加工するワークWの加工数量と加工種別による工程のフローを示す図である。尚、複合加工機により工程集約して加工する場合において、ワークWの各複合加工機間での受渡し時間よりも各複合加工機内での加工ツールの交換時間の方が一般的に時間を要するので、以下に示す種々の実施の形態では、ワークWの受け渡し時間を省略して検討する。
【0056】
(配置ステップ)
ワークWを加工して所定数量の生産をする場合において、上記した複合加工機を複数台配置して加工ラインを構成する場合について説明する。製品を生産するのに要する加工の種類を、旋削加工、焼入れ加工、及び、研削加工とし、その生産数量を考慮して、使用する複合加工機の台数を決定し、その複数台の同一機種の複合加工機を加工ラインに配置する(配置ステップS101)。この配置ステップでは、ワークWを各加工工程間で加工順序に基づいて受け渡すよう、複合加工機が配置される。ここで、複数台の複合加工機は、複合加工機から次の加工を分担する複合加工機へのワークWの搬送経路に基づいて配置されるのが望ましい。なお、配置される複数の複合加工機は、2台以上で、上限は、この加工ラインを構成する工場スペースにより制限を受ける。
【0057】
(分担加工決定ステップ)
配置ステップで決定した複合加工機の台数を基に、以下のように、各複合加工機の分担加工が決定される。この加工ラインで生産する生産数量をn個とし、旋削加工、焼入れ加工、及び、研削加工の各々の加工工程における単位時間当たりの生産数量を、各々、V、V、Vとする(図13(a))。各加工工程におけるn個の加工に要する時間は、旋削加工においてn/V、焼入れ加工においてn/V、研削加工においてn/Vである。これらの加工時間は、加工ラインを構成する各複合加工機に各々分担され、各複合加工機の各々の加工時間が求まる。ここで、各複合加工機の加工時間は、加工ライン上のすべての複合加工機において同じであるのが望ましい。ある複合加工機の加工時間が長いと、その他の複合加工機では加工できない遊びの時間が発生し、いわゆるクリティカルパスがその加工時間が長い複合加工機の工程にでき、これが加工ライン全体のクリティカルパスとなるからである。従って、この加工ラインの生産時間は、その加工時間が長い複合加工機の加工時間に律速され、生産効率が低下する。
【0058】
上記のことから、各複合加工機の加工時間を同じにするように、各複合加工機が分担加工する加工の種類及び加工数量を決定する。この加工ラインに、同一機種の3台の複合加工機を配置した場合で、n/V<n/V<n/Vの場合について説明する。すなわち、旋削加工における加工時間よりも、焼入れ加工における加工時間の方が長く、さらに、焼入れ加工における加工時間よりも研削加工における加工時間の方が長い場合である。このとき、第1の加工工程に配置される第1の複合加工機M1は、旋削加工全部と次工程の焼入れ加工の一部を分担加工する。また、第2の加工工程に配置される第2の複合加工機M2は、焼入れ加工の一部と次工程の研削加工の一部を分担加工する。また、第3の加工工程に配置される第3の複合加工機M3は、研削加工の一部を分担加工する。
【0059】
ここで、第1の複合加工機M1が分担加工する焼入れ加工の加工数量をnとする。すなわち、第1の複合加工機M1は、n個のワークWを旋削加工し、n個のワークWを焼入れ加工することになる。また、第2の複合加工機M2が分担加工する研削加工の加工数量をnとする。よって、第2の複合加工機M2は、(n―n)個のワークWを焼入れ加工し、n個のワークWを研削加工することになる。また、第3の複合加工機M3は、(n―n)個のワークWを研削加工することになる。
【0060】
よって、第1の複合加工機M1の加工時間は、n/V+n/V、第2の複合加工機M2の加工時間は、(n―n)/V+n/V、第3の複合加工機M3の加工時間は、(n―n)/Vである。
これらの加工時間が等しくなるには、次の2式を満たす必要がある。
n/V+n/V=(n―n)/V+n/V
n/V+n/V=(n―n)/V
これより、n=n×V(1/V+1/V−2/V)/3
=n×V(2/V−1/V−1/V)/3
となる。従って、第1の複合加工機M1は、上記算出されたn個のワークWについて第2の複合加工機M2の焼入れ加工を分担加工するよう決定され、また、第2の複合加工機M2は、上記算出されたn個のワークWについて第3の複合加工機M3の研削加工を分担加工するよう決定される(分担加工決定ステップS102)。
【0061】
(分担加工ステップ)
分担加工決定ステップで決定した結果に基づいて、第1の複合加工機M1では、n個のワークWの旋削加工及びn個のワークWの焼入れ加工、また、第2の複合加工機M2では、(n―n)個のワークWの焼入れ加工及びn個のワークWの研削加工、また、第3の複合加工機M3では、(n―n)個のワークWを研削加工する(図13(b))。
【0062】
第1の複合加工機M1は、旋削加工ツール502の装着工程により、旋削加工ツール502をホイール回転主軸ユニット200へ装着し、旋削加工ツール502をワークWの材質に適合した回転数で回転させ、供給されたn個のワークWを連続して旋削加工する。これが終了すると、機上焼入れを行うため、旋削加工ツール502をツールタレット403へ回収した後、熱処理加工ツール504をホイール回転主軸ユニット200へ装着する。熱処理加工ツール504により、n個のワークWの焼入れ加工を行う。第1の複合加工機M1で旋削加工のみ施され焼入れ加工されてない(n―n)個のワークWは第2の複合加工機M2へ搬送され供給される。また、第1の複合加工機M1で旋削加工及び焼入れ加工されたn個のワークWは第3の複合加工機M3へ搬送され供給される。搬送は、第1の複合加工機M1での個々のワークWの加工が終わり次第、順次複合加工機M2及びM3へ搬送され、次工程での待ち時間が発生しないように、各複合加工機間でのワークWの受け渡しが行われる。
【0063】
次に、第2の複合加工機M2では、まず、機上焼入れを行うため、熱処理加工ツール504をホイール回転主軸ユニット200へ装着する。熱処理加工ツール504により、第1の複合加工機M1から搬送されて来た(n―n)個のワークWの焼入れ加工を行う。機上焼入れ終了後、熱処理加工ツール504をツールタレット403へ回収し、研削加工ツール505をホイール回転主軸ユニット200へ装着する。ワークWを研削加工ツール505とワークWの材質に適合した回転数で回転させ、また、研削加工ツール505の材質に適合した回転数で回転させて研削加工を行う。研削加工は、機上焼入れした(n―n)個のワークWのうち、n個について研削加工を行う。第2の複合加工機M2で焼入れ加工のみされた(n―n―n)個のワークWは第3の複合加工機M3へ搬送され供給される。搬送は、第2の複合加工機M2での個々のワークWの加工が終わり次第、順次第3の複合加工機M3へ搬送され、次工程での待ち時間が発生しないように、複合加工機間での受け渡しが行われる。第2の複合加工機M2で焼入れ加工及び研削加工されたn個は加工終了となる。
【0064】
次に、第3の複合加工機M3では、研削加工ツール505の装着工程により、研削加工ツール505をホイール回転主軸ユニット200へ装着する。ワークWを研削加工ツール505とワークWの材質に適合した回転数で回転させ、また、研削加工ツール505の材質に適合した回転数で回転させて研削加工を行う。第1の複合加工機M1から搬送されたn個のワークWと第2の複合加工機M2から搬送された(n―n―n)個のワークWの合計(n―n)個について順次研削加工を行う。
【0065】
第2の複合加工機M2で焼入れ加工及び研削加工されるn個のワークWと、第3の複合加工機M3で研削加工される(n―n)個のワークWは、ほぼ同時に加工が終了し、すべての加工が終了する(分担加工ステップS103)。
【0066】
上記示した本発明の実施の形態は、複合加工機3台で加工ラインを構成する例であったが、それ以外の台数であっても、上記同様の分担加工決定ステップにより、各複合加工機が加工するワークWの個数と加工種別を決定できるので、各複合加工機に遊びが生じることなく、効率のよい加工が可能である。また、配置する複合加工機の台数が増え、あるいは、各加工の単位時間当たりの生産数量が大きく異なる場合には、各々の複合加工機は、1及び2以上前の複合加工機に加工を分担してもらい、また、1及び2以上後の複合加工機の加工を分担して加工するよう、分担加工決定ステップを構成することもできる。さらに、それぞれの複合加工機へのワークWの搬入、チャックへの着脱、ワークWの搬出に要するワーク交換時間を考慮して、分担加工決定ステップを構成することもできる。
【0067】
このような実施の形態により、最適な複合加工機の配置により、各複合加工機で加工終了したワークWを順次次の工程へ搬送する受け渡しを行うことができるので、各複合加工機に遊びが生じることなく効率のよいワークWの加工が可能となる。
【0068】
(第3の実施の形態)
図14は、複合加工機3台で各々旋削、焼入れ、研削加工を分担加工する場合を示す図である。第2の実施の形態で説明したように、旋削、焼入れ、研削加工の各々の加工時間が等しい場合には、3台の各複合加工機に各工程を分担させて加工することができる。すなわち、第1の複合加工機M1に旋削加工を分担させ、第2の複合加工機M2に焼入れ加工を分担させ、第3の複合加工機M3に研削加工を分担させる。
【0069】
(第4の実施の形態)
複合加工機2台で各々旋削、焼入れ、研削加工を分担加工する場合について説明する。図15は、複合加工機2台で分担加工する場合の第1の分担加工モード(a)と第2の分担加工モード(b)を示す図である。第1の分担加工モードは、第1の複合加工機M1に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、第2の複合加工機M2に研削加工を分担させるモードであり、第2の分担加工モードは、第1の複合加工機M1に旋削加工を分担させ、第2の複合加工機M2に焼入れ加工と研削加工を分担させるモードである。
【0070】
第2の実施の形態と同様に、生産数量をn個とし、旋削加工、焼入れ加工、及び、研削加工の各々の加工工程における単位時間当たりの生産数量を、各々、V、V、Vとする。各加工工程におけるn個の加工に要する時間は、旋削加工においてn/V、焼入れ加工においてn/V、研削加工においてn/Vである。ここで、旋削加工時間n/Vと焼入れ加工時間n/Vの和が、焼入れ加工時間n/Vと研削加工時間n/Vの和よりも小さいとき、すなわち、旋削加工時間n/Vが研削加工時間n/Vよりも小さいときは、第1の複合加工機M1に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、第2の複合加工機M2に研削加工を分担させて加工を行う第1の分担加工モードを設定する。また、旋削加工時間n/Vと焼入れ加工時間n/Vの和が、焼入れ加工時間n/Vと研削加工時間n/Vの和よりも大きいとき、すなわち、旋削加工時間n/Vが研削加工時間n/Vよりも大きいときは、第1の複合加工機M1に旋削加工を分担させ、第2の複合加工機M2に焼入れ加工と研削加工を分担させて加工を行う第2の分担加工モードを設定する。
【0071】
このような実施の形態により、研削加工、焼入れ加工、及び研削加工の各加工時間に基づいて第1あるいは第2の分担加工モードを実行するので、第1の複合加工機M1と第2の複合加工機M2との加工時間の差がより小さい状態でワークを加工することが可能となる。
【0072】
(第5の実施の形態)
図16は、N台(Nは2以上の整数)の複合加工機を配置し、各複合加工機が分担加工する加工時間が所定の時間より大なるとき、(a)で示すように各複合加工機を並列に配置する加工分担の仕方とし、所定の時間より小なるとき(b)で示すように各複合加工機を直列に配置する加工分担の仕方とすることを示す図である。複数の複合加工機を使用してワークの加工を行う場合において、ワークの加工に要する加工時間は、各々の複合加工機が加工分担した各工程での加工時間と各々の複合加工機において加工ツールの交換に要する時間と、各々の複合加工機間でワークを受け渡すのに要する時間の合計である。但し、複合加工機間でワークを受け渡すのに要する時間は、複合加工機内での加工ツールの交換に要する時間に比べて小さいので、ワークの加工に要する時間は、各々の複合加工機が加工分担した各工程での加工時間と各々の複合加工機において加工ツールの交換に要する時間で主に決定される。
【0073】
生産数量をn個とし、旋削加工、焼入れ加工、及び、研削加工の各々の加工工程における単位時間当たりの生産数量を、各々、V、V、Vとする。各加工工程におけるn個の加工に要する時間は、旋削加工においてn/V、焼入れ加工においてn/V、研削加工においてn/Vである。第1の複合加工機M1が分担加工する場合に要する加工ツールの交換時間をtk1とし、第2の複合加工機M2の加工ツールの交換時間をtk2とし、順次同様に定義して、第i番目の複合加工機Miの加工ツールの交換時間をtkiとし、第N番目の複合加工機MNの加工ツールの交換時間をtkNとする。また、1台の複合加工機で全工程を加工する場合の加工ツールの交換時間をtとする。
【0074】
N台の複合加工機を並列配置して、各複合加工機が全工程を(n/N)個ずつ加工する場合、各複合加工機が要する加工時間は次のようになり、これをTとおく。
n/(NV)+n/(NV)+n/(NV)+t=T
並列配置されたN台の複合加工機は、同時に各々加工するので、n個のワークWを加工する時間は、上記に示した値である。
【0075】
次に、N台の複合加工機を直列配置して、各複合加工機が順次ワークWの受け渡しを行いながら、n個のワークWを加工する場合を考える。ここで、第1の複合加工機M1が旋削加工するワークWの個数をNL1とし、焼入れ加工するワークWの個数をNY1とし、研削加工するワークWの個数をNG1とする。同様にして、第i番目の複合加工機Miについて、旋削加工、焼入れ加工、研削加工するワークWの個数を各々、NLi、NYi、NGiとする。このとき、第1の複合加工機M1の加工時間は次のようになり、これをTとおく。
L1/V+NY1/V+NG1/V+tk1=T
同様に、第i番目の複合加工機Miの複合加工機Miの加工時間も次のようになり、Tとおく。
Li/V+NYi/V+NGi/V+tki=T
【0076】
ここで、図17は、N台の複合加工機を並列配置したときの加工時間Tと、直列配置したときの各複合加工機の加工時間T、・・、Ti、・・、Tの関係を線図で表したものである。N台の複合加工機を直列配置して、各複合加工機が順次ワークWの受け渡しを行いながら、n個のワークWを加工する場合には、トータルの加工時間は、各複合加工機の中で最も加工に時間を要する複合加工機に律速されるので、n個のワークWを加工する加工時間は、次のように表せる。
Max{T、・・、T、・・、T
すなわち、n個のワークWを加工する加工時間は、T、・・、T、・・、Tの中で最も大きい値となる。
【0077】
以上から、Max{T、・・、T、・・、T}>Tのとき、すなわち、N台の複合加工機を直列配置して加工する加工時間の方がN台の複合加工機を並列配置して加工する加工時間よりも大きいときは、N台の複合加工機を並列配置して加工する。逆に、Max{T、・・、T、・・、T}<Tのとき、すなわち、N台の複合加工機を直列配置して加工する加工時間の方がN台の複合加工機を並列配置して加工する加工時間よりも小さいときは、N台の複合加工機を直列配置して加工する。
【0078】
このような実施の形態により、各複合加工機の直列配置と並列配置でのそれぞれの加工時間を演算し、最適な配置を判断して決定し、それに基づいて最適な複合加工機の配置により加工できるので、加工工程の集約が可能となり、加工時間の短縮が可能となる。
【0079】
(第6の実施の形態)
上記の第5の実施の形態において、第2の加工時間の最大値が、第1の加工時間より小なるときで、N=3の場合のときの演算ステップ、及び、加工ステップについて説明する。すなわち、3台の複合加工機を直列配置して加工する加工時間の方が3台の複合加工機を並列配置して加工する加工時間よりも小さいとき、複合加工機3台で旋削、焼入れ、及び、研削加工を分担加工する場合について説明する。これは、第5の実施の形態において、Max{T、T、T}<Tのときである。
【0080】
第2の実施の形態で説明したのと同様に、同一機種の3台の複合加工機を配置した場合で、n/V<n/V<n/Vの場合について説明する。このとき、第1の加工工程に配置される第1の複合加工機M1は、旋削加工全部と次工程の焼入れ加工の一部を分担加工する。また、第2の加工工程に配置される第2の複合加工機M2は、焼入れ加工の一部と次工程の研削加工の一部を分担加工する。また、第3の加工工程に配置される第3の複合加工機M3は、研削加工の一部を分担加工する。
【0081】
ここで、第1の複合加工機M1が分担加工する焼入れ加工の加工数量をnとする。すなわち、第1の複合加工機M1は、n個のワークWを旋削加工し、n個のワークWを焼入れ加工することになる。また、第2の複合加工機M2が分担加工する研削加工の加工数量をnとする。よって、第2の複合加工機M2は、(n―n)個のワークWを焼入れ加工し、n個のワークWを研削加工することになる。また、第3の複合加工機M3は、(n―n)個のワークWを研削加工することになる。
【0082】
よって、第1の複合加工機M1の加工時間は、n/V+n/V+tk1、第2の複合加工機M2の加工時間は、(n―n)/V+n/V+tk2、第3の複合加工機M3の加工時間は、(n―n)/V+tk3である。
これらの加工時間が等しくなるには、次の2式を満たす必要がある。
n/V+n/V+tk1=(n―n)/V+n/V+tk2
n/V+n/V+tk1=(n―n)/V+tk3
これより、
=V(n/V+n/V−2n/V+tk2―2tk1―2tk3)/3
=V(2n/V−n/V−n/V+2tk3―tk1―tk2)/3
となる。
【0083】
従って、第1の複合加工機M1は、上記算出されたn個のワークWについて第2の複合加工機M2の焼入れ加工を分担加工するよう決定され、また、第2の複合加工機M2は、上記算出されたn個のワークWについて第3の複合加工機M3の研削加工を分担加工するよう決定される。この結果に基づいて、第1の複合加工機M1では、n個のワークWの旋削加工及びn個のワークWの焼入れ加工、また、第2の複合加工機M2では、(n―n)個のワークWの焼入れ加工及びn個のワークWの研削加工、また、第3の複合加工機M3では、(n―n)個のワークWを研削加工する。
【0084】
このような実施の形態により、各複合加工機で旋削、焼入れ、及び、研削加工を分担して加工できるので、加工時間の短縮が可能となる。
【0085】
(第7の実施の形態)
上記の第6の実施の形態において、第2の加工時間の最大値が、第1の加工時間より小なるとき、すなわち、3台の複合加工機を直列配置して加工する加工時間の方が3台の複合加工機を並列配置して加工する加工時間よりも小さいとき、複合加工機3台で旋削、焼入れ、及び、研削加工を分担加工する場合について説明する。第6の実施の形態において、旋削、焼入れ、研削加工の各々の加工時間が等しい場合には、3台の各複合加工機に各工程を分担させて加工することができる。この場合、加工ツールの交換は不要であり、加工ツールの交換時間を考慮する必要はない。すなわち、第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、第2の複合加工機に焼入れ加工を分担させ、第3の複合加工機に研削加工を分担させることができる。
【0086】
このような実施の形態により、各複合加工機で各々、旋削、焼入れ、及び、研削加工を分担して加工できるので、加工時間の短縮が可能となる。
【0087】
(第8の実施の形態)
上記の第6の実施の形態において、2台の複合加工機を直列配置して加工する加工時間の方が2台の複合加工機を並列配置して加工する加工時間よりも小さいとき、複合加工機2台で旋削、焼入れ、及び、研削加工を分担加工する場合について説明する。
【0088】
第5の実施の形態と同様に、生産数量をn個とし、旋削加工、焼入れ加工、及び、研削加工の各々の加工工程における単位時間当たりの生産数量を、各々、V、V、Vとする。また、第1の複合加工機M1が分担加工する場合に要する加工ツールの交換時間をtk1とし、第2の複合加工機M2が分担加工する場合に要する加工ツールの交換時間をtk2とする。各加工工程におけるn個の加工に要する時間は、旋削加工においてn/V、焼入れ加工においてn/V、研削加工においてn/Vである。従って、旋削加工時間n/Vと焼入れ加工時間n/V及び加工ツールの交換時間tk1の和が、焼入れ加工時間n/Vと研削加工時間n/V及び加工ツールの交換時間tk2の和よりも小さいときは、第1の複合加工機M1に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、第2の複合加工機M2に研削加工を分担させて加工を行う第1の分担加工モードを設定する。また、旋削加工時間n/Vと焼入れ加工時間n/V及び加工ツールの交換時間tk1の和が、焼入れ加工時間n/Vと研削加工時間n/V及び加工ツールの交換時間tk2の和よりも大きいときは、第1の複合加工機M1に旋削加工を分担させ、第2の複合加工機M2に焼入れ加工と研削加工を分担させて加工を行う第2の分担加工モードを設定する。
【0089】
このように、研削加工、焼入れ加工、及び研削加工の各加工時間に基づいて第1あるいは第2の分担加工モードを実行することで、第1の複合加工機M1と第2の複合加工機M2との加工時間の差がより小さい状態でワークWを加工することが可能となり、生産効率が向上する。
【0090】
(第9の実施の形態)
生産数量をn個とし、旋削加工、焼入れ加工、及び、研削加工の各々の加工工程における単位時間当たりの生産数量を、各々、V、V、Vとする。各加工工程におけるn個の加工に要する時間は、旋削加工においてn/V、焼入れ加工においてn/V、研削加工においてn/Vである。第1の複合加工機M1が分担加工する場合に要する加工ツールの交換時間をtk1とし、第2の複合加工機M2の加工ツールの交換時間をtk2とし、順次同様に定義して、第i番目の複合加工機Miの加工ツールの交換時間をtkiとし、第N番目の複合加工機MNの加工ツールの交換時間をtkNとする。また、第1の複合加工機M1へのワークWの搬入、チャックへの着脱、ワークWの搬出に要するワーク交換時間をtw1とし、第2の複合加工機M2のワーク交換時間をtw2とし、順次同様に定義して、第i番目の複合加工機Miのワーク交換時間をtwiとし、第N番目の複合加工機MNのワーク交換時間をtwNとする。また、1台の複合加工機で全工程を加工する場合の加工ツールの交換時間をtとする。
【0091】
N台の複合加工機を並列配置して、各複合加工機が全工程を(n/N)個ずつ加工する場合、各複合加工機が要する加工時間は次のようになり、これをTとおく。
n/(NV)+n/(NV)+n/(NV)+t=T
並列配置されたN台の複合加工機は、同時に各々加工するので、n個のワークWを加工する時間は、上記に示した値となる。
【0092】
一方、N台の複合加工機を直列配置して、各複合加工機が順次ワークWの受け渡しを行いながら、n個のワークWを加工する場合を考える。ここで、第1の複合加工機M1が旋削加工するワークWの個数をnL1とし、焼入れ加工するワークWの個数をnY1とし、研削加工するワークWの個数をnG1とする。同様にして、第i番目の複合加工機Miについて、旋削加工、焼入れ加工、研削加工するワークWの個数を各々、nLi、nYi、nGiとする。このとき、第1の複合加工機M1の加工時間は次のようになり、これをTとおく。
L1/V+nY1/V+nG1/V+tk1+tw1=T
同様に、第i番目の複合加工機Miの複合加工機Miの加工時間も次のようになり、Tとおく。
Li/V+nYi/V+nGi/V+tki+twi=T
N台の複合加工機を直列配置して、各複合加工機が順次ワークWの受け渡しを行いながら、n個のワークWを加工する場合には、トータルの加工時間は、各複合加工機の中で最も加工及びワークWの受け渡しに時間を要する複合加工機に律速されるので、n個のワークWを加工する加工時間は、次のように表せる。
Max{T、・・、T、・・、T
すなわち、n個のワークWを加工する加工時間は、T、・・、T、・・、Tの中で最も大きい値となる。
【0093】
第1の加工モードをN台の前記複合加工機のそれぞれが複数種類の加工の全加工を(n/N)個のワークWに所定の順序で同時に加工を行うモードとし、第2の加工モードをn個の前記ワークをN台の複合加工機の間で受け渡すことによりN台の複合加工機がn個のワークWに施す複数種類の加工の中から選択した分担加工に基づいてn個のワークWに複数種類の加工を所定の順序で加工を行うモードとし、これらのモードを設定する加工モード設定ステップとする。
【0094】
第1及び第2の加工モードの加工時間を演算する演算ステップでは、第1の加工モードの加工時間Tを演算し、また、第2の加工モードの加工時間、すなわち、Max{T、・・、T、・・、T}を演算する。そして、上記のTとMax{T、・・、T、・・、T}を比較して、その中から加工時間の短い加工モードを選択してワークWを加工する。すなわち、第1の加工モードの加工時間Tの方が加工時間が短い場合は、配置ステップにより、N台の複合加工機を並列に配置して、N台の複合加工機のそれぞれが複数種類の加工の全加工を(n/N)個のワークWに行う。一方、第2の加工モードの加工時間Max{T、・・、T、・・、T}の方が短い場合は、配置ステップにより、N台の複合加工機をワークWの受け渡しを考慮して直列に配置され、N台の複合加工機がn個のワークWに施す分担加工に基づいてn個のワークWに複数種類の加工を所定の順序で行う加工ステップにより加工する。
【0095】
このように、複数種類の加工時間、加工ツールの交換時間、及びワーク交換時間を考慮して、第1及び第2の加工モードの中から加工時間の短い加工モードで加工することが可能になり、生産効率が向上する。
【0096】
(本発明の実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、以下の効果を有する。
(1)生産数量に応じて複合加工機を増減して配置し、この配置された台数に応じた最適な加工方法が本発明の実施の形態の方法により可能となるので、少量生産から大量生産まで対応可能な、ワーク加工開始から終了までプロセス一貫した効率のよい加工方法を実現することができる。
(2)複数の複合加工機を並置してワークを並行して加工する方法では、生産に必要な加工ツールをすべての複合加工機に備えることが必要であるが、本発明の実施の形態の加工方法によれば、各複合加工機が分担加工するのに必要な加工ツールのみを備えればよいので、加工ツールのコスト、維持メンテナンス等の点で大きな効果がある。
(3)工場スペースに制約があり、かつ、最適な生産システムを構築する場合に、本発明の実施の形態の加工方法を適用することで、工場スペースに適合した台数の複合加工機を配置し、この配置に適した加工方法を実施できるので、最も効率のよい生産システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態を構成する複合加工機の平面図である。
【図2】図1に示す複合加工機の主軸台より後側を前から見た正面図である。
【図3】自動工具交換ユニット400において、第1の加工ツール501a及び第2の加工ツール501bの着脱動作の状態における、各ユニットの位置関係を示す図である。
【図4】第1の加工ツール501aのツールタレット403への回収動作を示す図である。
【図5】第2の加工ツール501bのホイール回転主軸ユニット200への装着工程を示す図である。
【図6】ホイール回転主軸ユニット200に、旋削加工に使用される旋削工具502として旋削用電着ホイールを装着して、ワークWを旋削加工している状態を示す図である。
【図7】ホイール回転主軸ユニット200に、レーザ焼入れヘッド等の熱処理工具504を装着して、ワークWを熱処理加工している状態を示す図である。
【図8】ホイール回転主軸ユニット200に、穴あけ、溝加工等に使用される切削工具503を装着して、ワークWの穴あけ、溝加工等を行っている状態を示す図である。
【図9】ホイール回転主軸ユニット200に、研削工具505として砥石車(例えば、CBNホイール)を装着して、ワークWを研削加工している状態を示す図である。
【図10】自動車の代表的な部品の一つである等速ジョイントの従来の加工ライン構成の一例を示す図である。
【図11】複合加工機1台、2台及び3台で加工する場合を示すものである。
【図12】本発明の実施の形態に係る加工方法の各ステップのフローを示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る加工ラインにおける工程のフローを示すもので、(a)は、加工種別による工程のフローを示す図であり、(b)は、複合加工機が分担加工するワークWの加工数量と加工種別による工程のフローを示す図である。
【図14】複合加工機3台で各々旋削、焼入れ、研削加工を分担加工する場合を示す図である。
【図15】複合加工機2台で分担加工する場合の第1の分担加工モード(a)と第2の分担加工モード(b)を示す図である。
【図16】3台の複合加工機を配置し、各複合加工機が分担加工する加工時間が所定の時間より大なるとき、(a)で示す各複合加工機を並列に配置する加工分担の仕方とし、所定の時間より小なるとき(b)で示す各複合加工機を直列に配置する加工分担の仕方とすることを示す図である。
【図17】N台の複合加工機を並列配置したときの加工時間Tと、直列配置したときの各複合加工機の加工時間T、・・、Ti、・・、Tの関係を線図で表したものである。
【符号の説明】
【0098】
1 複合加工機 10 ベッド
100 ワーク支持駆動ユニット 101 主軸台ベース
102 主軸台スライドガイド 103 主軸台
104 主軸駆動モータ 105 主軸
200 ホイール回転主軸ユニット 201 ホイール回転主軸
202 トラクションドライブユニット 203 クランプ部
300 多自由度リンク機構 301 リンクヘッド
302 リニアガイドベース 303 リンク
304 リニアガイド 305 リンク駆動サーボモータ
306 ホイール回転主軸駆動モータ 307 スライダ
308 ボールねじ
400 自動工具交換ユニット 402 ツールポッド
403 ツールタレット 404 サーボモータ
405 ボールブッシュ 406 結合部
407 溝部
501a 第1の加工ツール 501b 第2の加工ツール
502 旋削工具 503 切削工具
504 熱処理工具 505 研削工具
506 表面仕上げ工具 510 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する形状加工ツール、熱処理加工ツール、及び、仕上げ加工ツールから所定の順序で1つの加工ツールを選択し、複数種類の加工を前記ワークに対して選択的に行う複数の複合加工機を前記ワークの生産数量、前記複合加工機の稼動期間、及び、前記ワークの単位数量あたりの加工時間に応じて前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、
前記複数種類の加工の中から前記複数の複合加工機がそれぞれ分担する分担加工を前記ワークの生産数量、前記複合加工機の稼動期間、及び、前記ワークの単位数量あたりの加工時間に応じて決定する分担加工決定ステップと、
前記ワークを前記分担加工の加工順序に基づいて前記複数の複合加工機の間で受け渡すことによって前記複数の複合加工機に前記分担加工を実行させる分担加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法。
【請求項2】
ワークを加工する形状加工ツール、熱処理加工ツール、及び、仕上げ加工ツールから所定の順序で1つの加工ツールを選択し、複数種類の加工を前記ワークに対して選択的に行う複数の複合加工機を前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、
前記複数種類の加工の中から前記複数の複合加工機がそれぞれ分担する分担加工を前記ワークの単位時間当りの生産数量に応じて決定する分担加工決定ステップと、
前記ワークを前記分担加工の加工順序に基づいて前記複数の複合加工機の間で受け渡すことによって前記複数の複合加工機に前記分担加工を実行させる分担加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法。
【請求項3】
前記配置ステップは、前記複数の複合加工機として第1より第3の複合加工機を前記加工ラインに配置し、
前記分担加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工を分担させ、前記第3の複合加工機に研削加工を分担させることを特徴とする請求項1記載のワーク加工方法。
【請求項4】
前記配置ステップは、前記複数の複合加工機として第1及び第2の複合加工機を前記加工ラインに配置し、
前記分担加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、前記第2の複合加工機に研削加工を分担させる第1の分担加工モードと、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工と研削加工を分担させる第2の分担加工モードを設定し、
前記旋削加工、前記焼入れ加工、及び前記研削加工の各加工時間に基づいて前記第1あるいは第2の分担加工モードを実行することを特徴とする請求項1記載のワーク加工方法。
【請求項5】
ワークを加工する形状加工ツール、熱処理加工ツール、及び、仕上げ加工ツールから所定の順序で1つの加工ツールを選択し、複数種類の加工をn個(nは2以上の整数)のワークに行うN台(Nは2以上の整数)の複合加工機を前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、
N台の前記複合加工機のそれぞれが前記複数種類の加工の全加工を(n/N)個の前記ワークに行う第1の加工時間と、N台の前記複合加工機が前記複数種類の加工の中から選択した分担加工をn個の前記ワークに行う第2の加工時間とを演算する演算ステップと、
N台の前記複合加工機中の前記第2の加工時間の最大値が、前記第1の加工時間より小なるとき、n個の前記ワークをN台の前記複合加工機の間で受け渡すことによりN台の前記複合加工機がn個の前記ワークに施す前記分担加工に基づいてn個の前記ワークに前記複数種類の加工を所定の順序で行い、前記第2の加工時間の最大値が、前記第1の加工時間より大なるとき、N台の前記複合加工機のそれぞれが前記複数種類の加工の全加工をn/N個の前記ワークに所定の順序で同時に行う加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法。
【請求項6】
前記加工ステップは、N台の前記複合加工機に前記複数種類の加工としての旋削加工、焼入れ加工、及び研削加工を所定の順序で分担して実行させることを特徴とする請求項5記載のワーク加工方法。
【請求項7】
前記配置ステップは、N台の前記複合加工機として第1より第3の複合加工機を前記加工ラインに配置し、
前記加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工を分担させ、前記第3の複合加工機に研削加工を分担させることを特徴とする請求項5記載のワーク加工方法。
【請求項8】
前記配置ステップは、N台の前記複合加工機として第1及び第2の複合加工機を前記加工ラインに配置し、
前記加工ステップは、前記第1の複合加工機に旋削加工と焼入れ加工を分担させ、前記第2の複合加工機に研削加工を分担させる第1の分担加工モードと、前記第1の複合加工機に旋削加工を分担させ、前記第2の複合加工機に焼入れ加工と研削加工を分担させる第2の分担加工モードを設定し、
前記旋削加工、前記焼入れ加工、及び前記研削加工の各加工時間に基づいて前記第1あるいは第2の分担加工モードを実行することを特徴とする請求項5記載のワーク加工方法。
【請求項9】
ワークを加工する形状加工ツール、熱処理加工ツール、及び、仕上げ加工ツールから所定の順序で1つの加工ツールを選択し、複数種類の加工をn個(nは2以上の整数)のワークに行うN台(Nは2以上の整数)の複合加工機を前記ワークの加工ラインに配置する配置ステップと、
N台の前記複合加工機のそれぞれが前記複数種類の加工の全加工を(n/N)個の前記ワークに所定の順序で同時に行う第1の加工モードと、n個の前記ワークをN台の前記複合加工機の間で受け渡すことによりN台の前記複合加工機がn個の前記ワークに施す前記複数種類の加工の中から選択した分担加工に基づいてn個の前記ワークに前記複数種類の加工を所定の順序で行う第2の加工モードを設定する加工モード設定ステップと、
前記ワークの種類及び前記複数種類の加工の内容に応じた前記第1及び第2の加工モードの加工時間を演算する演算ステップと、
前記第1及び第2の加工モードの中から前記加工時間の短い加工モードを選択して前記ワークを加工する加工ステップを有することを特徴とするワーク加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−305709(P2006−305709A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134255(P2005−134255)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】