説明

複合加工糸及びその製造方法並びにその織編物

【課題】複合加工糸に捲縮とループ、及び撚りを付与することにより、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を有し、かつ十分な糸形態安定性に優れ、シルキースパン調風合いを有する織編物が提供できる複合加工糸と、その製造方法、並びにその加工糸を使った織編物を提供する。
【解決手段】 乾伸度が35%以上60%以下であるセルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとに交絡及びループを形成させて複合糸としたのち、複合糸に仮撚加工を施して実撚部を形成して、(1)複合加工糸の捲縮率が3%以上30%未満であり、(2)実撚部の長さが1mm以上5mm未満であり、(3)実撚部の撚数が300T/m以上1000T/m未満であって、(4)実撚部が5個/m以上30個/m未満存在し、(5)閉ループ部分が5個/m以上50個/m未満存在する、実撚部と閉ループ部分とを有する複合加工糸を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を有し、かつ十分な糸形態安定性に優れた、シルキースパン調風合いを有する織編物が提供できる複合加工糸及び製造方法、並びにその織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
シルキースパン調風合いを有する織編物の素材に対するニーズは多く、従来も種々の検討がなされてきた。例えば、特公昭61−14253号公報(特許文献1)によれば、アセテート繊維と熱可塑性繊維を引き揃えてエア仮撚方式を用いて捲縮を付与し、続いて流体乱流処理によりアセテート繊維に毛羽とループを発生させると共に、糸全体に嵩高を付与した加工糸が提案されている。
【0003】
また、例えば特開平11−222740号公報(特許文献2)では、アセテート繊維と熱可塑性合成繊維または再生繊維を引き揃えてエア交絡処理を施し、引き続き仮撚加工を行い、毛羽またはループを形成させ、交絡により糸の集束性を向上させた加工糸が提案されている。
【特許文献1】特公昭61−14253号公報
【特許文献2】特開平11−222740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、上記特許文献1により提案された加工糸の製造方法によれば、嵩高で紡績糸調の風合いは得られるものの、毛羽やループの存在により光沢感が低下するため、シルキー風合いを兼ね備えたものではなかった。
【0005】
また上記特許文献2に記載された加工糸の製造方法によれば、得られる複合糸は毛羽またはループが少なく光沢性は得られるものの、交絡数が少なく、また交絡による集束のみで加工糸が形成されており、さらにアセテート繊維と熱可塑性合成繊維または再生繊維とでは熱収縮性が異なるため糸長差が発生し、製編織時のワッシャーやガイド等のしごきに対して、耐えうるものではなく、後加工の通過性に優れているとは言いがたい。
【0006】
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するものであり、該複合加工糸に捲縮とループ、及び撚りを付与することにより、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を有し、かつ十分な糸形態安定性に優れ、シルキースパン調風合いを有する織編物を提供することができる複合加工糸とその製造方法、並びにその加工糸を使った織編物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の基本的構成は、セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントからなる複合加工糸であって、以下の(1)〜(5)を満たす実撚部と、閉ループ部分を有する複合加工糸にある。
(1)複合加工糸の捲縮率が3%以上30%未満であり、
(2)実撚部の長さが、1mm以上5mm未満であり、
(3)実撚部の撚数が、300T/m以上1000T/m未満であって、
(4)実撚部が、5個/m以上30個/m未満存在し、
(5)閉ループ部分が、5個/m以上50個/m未満存在する。
ここで、セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとの重量比率が90:10〜60:40であることが好ましい。
【0008】
第2の基本的構成は、乾伸度が35%以上60%以下であるセルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントに交絡とループを形成させて複合糸とし、引き続き、複合糸に仮撚加工を施す複合加工糸の製造方法にある。好ましい態様によれば、セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントに交絡とループを形成させた複合糸が、10個/m以上100個/m未満の閉ループを有している。
【0009】
ここで、セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントを引き揃えて、インターレースノズルを用いて、以下の(6)(7)を満たす条件で、交絡とループを形成させて複合糸とすることが好ましい。
(6)オーバーフィード率が2%以上10%以下であり、
(7)エア圧力が0.1MPa以上0.4MPa以下である。
【0010】
また、複合糸に仮撚加工を施したのち常温で弛緩熱セット処理を行うとよい。
【0011】
本発明の第3の基本的構成は上記構成を備えた複合加工糸を含む織編物にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複合加工糸、その製造方法、及び前記加工糸から得られる織編物は、セルロース系マルチフィラメントの乾伸度が高い特性を活用することで従来とは異なる条件設定が可能となることから、従来のセルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントからなる複合加工糸では得られない、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を有し、かつ十分な糸形態安定性に優れた、シルキースパン調風合いを有する最終製品である織編物が得られるようになり、衣料用分野に与える価値は極めて大である。具体的には、乾伸度が高いセルロース系マルチフィラメント糸を用いることで従来とは異なる捲縮とループ、及び撚りを付与することが可能となったことにより、適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を有し、かつ十分な糸形態安定性に優れた、シルキースパン調風合いを有する織編物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の複合加工糸は、セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントからなる複合加工糸であって、複合加工糸の捲縮率が3%以上30%未満であることが必要である。捲縮率が3%未満の場合は、織編物を製織または製編したときにフクラミ感を得ることができないが、3%以上好ましくは5%以上あれば、適度なフクラミ感を織編物に付与することができる。なお、織編物への適度なフクラミ感の付与を考慮すると、前記捲縮率は30%未満、より好ましくは25%以下である。
【0014】
また、得られる複合加工糸には実撚部の存在することが重要であって、その実撚部の長さは1mm以上5mm未満であり、実撚部の撚数が300T/m以上1000T/m未満、実撚部の単位長さあたりの個数が5個/m以上30個/m未満であることが必要である。実撚部が存在することで、織編物を製織または製編する場合に、工程通過性が良好となり、適度なハリ感、シャリ感を得ることができる。
【0015】
実撚部の長さは1mm以上5mm未満、好ましくは1mm以上3mm以下であることが必要であり、1mm未満では織編物を製織または製編する場合の工程通過性に寄与するものとはならず、5mm以上では織編物としたときには、虫食い調の外観となりやすく好ましくない。また実撚部の撚数は、300T/m以上1000T/m未満であることが必要であり、300T/m未満では織編物を製織または製編する場合の工程通過性に寄与するものとはならず、1000T/m以上では織編物としたときに風合いが硬くなりやすくなる。実撚部の個数は5個/m以上30個/m未満が必要である。5個/m未満では織編物を製織または製編する場合の工程通過性に寄与するものとはならず、30個/m以上では織編物としたときに虫食い調の外観となりやすく好ましくない。また、ここでいう実撚部は、Z撚部またはS撚部の両方を指す。
【0016】
更に、5個/m以上50個/m未満の閉ループ部分の存在が必要である。閉ループの形成により、複合加工糸の糸形態安定性に寄与し、織編物を製織または製編する場合に、工程通過性を良好にする上で重要である。閉ループの形成が5個/m未満の場合では織編物を製織または製編する場合の工程通過性に寄与するものとならず、50個/m以上の場合は光沢感に欠けるものとなり、シルキー感を低下させることにつながり、製品の品位低下を招く恐れがある。ここで言う閉ループとは、エア交絡処理、所謂インターレース加工に代表される開繊して形成される図1に示すような根元が開いたループ(開ループ)ではなく、流体撹乱処理工程で形成される図2に示すような根元が閉じた形態のループ(閉ループ)をいう。
【0017】
本発明においてセルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとの複合比率を90:10〜60:40で複合したセルロース系成分を多く含む複合加工糸とすることが好ましい。さらに好ましくは複合比率90:10〜80:20である。セルロース系マルチフィラメントの重量比率が60〜90%の範囲であれば、織編物に製織または製編した場合に、セルロース系マルチフィラメントがもつ光沢感や清涼感の特徴が発揮され、更に相対的に熱可塑性マルチフィラメントの風合い要素が低くなり、風合いの硬化、ぬめり、ふかつき等を生じることなく、また、熱可塑性マルチフィラメントにより糸強度が保持され、染色加工でシワ等が発生しにくくなる。
【0018】
本発明において複合加工糸を構成するセルロース系マルチフィラメントの材質は特に限定されるものではなく、再生繊維のレーヨン、リヨセル、キュプラ、半合成繊維のアセテート等を用いることが可能である。また熱可塑性マルチフィラメントの材質も特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミド繊維等を用いることが可能である。さらに、セルロース系マルチフィラメントも熱可塑性マルチフィラメントも個々の構成フィラメントの断面形状、繊度斑、染色特性等が特に限定されるものではなく、さらに本発明の目的を逸脱しない範囲で各種添加物等を含むことも可能である。
【0019】
次に、上述した本実施形態の複合加工糸を製造する方法の一例について、図3を参照しながら説明する。ここで図3は、本発明の複合加工糸11を製造する装置の構成を概略的に示す概略図である。
【0020】
本発明の複合加工糸を得るためには、乾伸度が35%以上60%以下、より好ましくは40%以上55%以下であるセルロース系マルチフィラメントを用いることが必要である。乾伸度が35%以上60%以下であるセルロース系マルチフィラメントを用いることにより、毛羽が無く、多くのループを形成することが可能となり、またエア交絡も強固に形成することができる。35%未満では、ループ形成時に毛羽が多数発生するために、複合加工糸としたときに光沢感が減少し、シルキー感を低下させることになり、製品の品位低下を招く恐れがある。また60%を越える場合は、該複合加工糸を用いて織編物を製織または製編した場合に形態安定性が悪くなり、製品の品位低下を招く恐れがある。該セルロース系マルチフィラメントは、上記伸度範囲を満たしていれば、単繊維成分が単独の成分からなるものでも、2種類以上の成分からなるものであってもよい。
【0021】
図3に示した製造装置は、乾伸度が35%以上60%以下のセルロース系マルチフィラメント12と熱可塑性マルチフィラメント13を、第1糸条供給ローラー14を介して、交絡エアノズル15にオーバーフィード率2%以上10%以下の範囲、より好ましくは4%以上8%以下、エア圧力が0.1MPa以上0.4MPa以下の範囲、より好ましくは0.1MPa以上0.3MPa以下で供給し、交絡とループを施す。ここで付与されるループは、閉ループと開ループの両方を含めたループが形成される。なお、オーバーフィード率が2%未満では、閉ループが得られず交絡及び開ループのみが形成されるため、織編物を製織または製編する場合の工程通過性に寄与するものとならない。また、10%を越える場合は、糸加工性が不安定となり好ましくない。
【0022】
交絡エアノズル15のエア圧力が0.1MPa未満では、閉ループが得られないばかりか、交絡も甘くなり、織編物を製織または製編する場合の工程通過性に寄与するものとならず、0.4MPaを越える場合には、毛羽の発生が増大し、光沢感に欠けるものとなり、シルキー感を低下させることにつながり、製品の品位低下を招く恐れがある。
【0023】
前記交絡エアノズル15により所定の条件で交絡処理を施されたマルチフィラメントは、次に、第2糸条供給ローラー16と第1引取ローラー19との間で仮撚加工が行われる。第2糸条供給ローラー16と第1引取ローラー19との間には、第1ヒーター17(接触ヒーター)と仮撚スピンドル18とが配される。
【0024】
第2糸条供給ローラー16を介して所定のオーバーフィード率で仮撚加工領域に供給された複合糸は、仮撚スピンドルで所定方向に回転が与えられることにより、第2糸条供給ローラー16と仮撚スピンドル18との間(即ち、加撚領域)で仮撚加撚方向の撚りが掛けられると共に、第1ヒーター17により熱処理が行われる。
【0025】
続いて、複合糸は、前記仮撚スピンドル18を通過して、仮撚スピンドル18と第1引取ローラー19との間の解撚領域で仮撚加撚方向とは逆方向の撚りが掛けられて解撚作用を受ける。この一連の操作により、複合糸は他の部分よりも集束性が高い交絡または閉ループでは、交絡または閉ループを起点として設定加撚数以上の撚りが付与された状態で熱セットされると共に、解撚領域で未解撚部となり、実撚部が形成される。
【0026】
このように所定の交絡及びループを付与された複合糸に対して、仮撚加工を行うことにより、糸形態安定性に優れ、工程通過性の良い複合加工糸を得ることができる。
【0027】
更に、図3に示した製造装置において、第1引取ローラー19の後段に、前記仮撚加工が施されたマルチフィラメント(仮撚加工糸)に常温で弛緩熱セットを行う第2ヒーター20(非接触ヒーター)が配されている。この第2ヒーター20で仮撚加工糸に弛緩熱セット処理を行うことにより、同仮撚加工糸の顕在トルクの軽減等の処理を行うことができる。
【0028】
その後、第2ヒーター20で熱セット処理を受けた仮撚加工糸は、第2引取ローラー21を経由して巻取部22で巻き取られる。以上のような工程を経ることにより、本発明に係る前記複合加工糸を製造することができる。なお、図3に示した製造装置では、交絡エアノズル15により行われる交絡処理、第2糸条供給ローラー16と第1引取ローラー19との間で行われる仮撚加工、及び第2ヒーター20による弛緩熱セット処理が連続的に行われて、前記仮撚加工糸を効率的に製造しているが、本発明はこれに限定されず、それぞれの処理及び工程毎に分割して、各工程を別々に実施しても良い。
【0029】
本発明の複合加工糸を含む織編物は、その混率並びに織物組織や編物組織を、目的の風合いや、製品外観が得られる範囲で決定すればよく、本発明の複合加工糸単独からなる織編物、または、本発明の嵩高仮撚加工糸を織編物の一部に用いた交編物、交織物でもよい。
【0030】
また、織編物に本発明の複合加工糸を含んだ撚糸を用いてもよい。該撚糸とは、本発明の複合加工糸を撚糸したもの、あるいは、本発明の複合加工糸同士を合撚したもの、または本発明の複合加工糸と他繊維とを合撚したものであり、本発明の複合加工糸の特徴とともに他繊維の特徴をも併せもつことが可能となる。例えば、本発明の複合加工糸と、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、熱可塑性繊維等の他繊維とが合撚されることで、該他繊維が有している本来の特徴、例えば、光沢感、清涼感、シャリ感、ウェット感等の風合いを損なわずに、両者の特徴を織編物に付与することができる。また、合撚による撚り効果でハリコシ感に富んだ織編物を得ることが可能となる。
【0031】
上述の合撚に使用する他繊維とは、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル繊維等の熱可塑性繊維等である。また、それぞれの繊維を構成する単繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、得られる織編物の風合い、光沢等を考慮して、菊型、円形、扁平、Y字等の糸断面形状を選択すればよく、また、単繊維繊度、染色特性等についても特に限定されない。
【0032】
本発明の撚糸の撚り方向及び合撚数には特に限定はなく、構成糸条の本数、本発明の嵩高仮撚加工糸の混率、撚り数等は目的の風合いや織編物外観が得られる範囲で適宜設定すればよい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。なお、実施例及び比較例で得られた複合糸及び複合加工糸の物性測定及び評価は、以下の方法を用いて行われた。
【0034】
(エア加工後の複合糸の閉ループ数の測定方法)
エア加工後の複合糸を別途サンプリングし、その複合糸1mに3.6×10-3g/dtexの初荷重を付与し、幅20cmの台紙に巻取り、マイクロスコープ( (株) KEYENCE社製、製品名:VHX−100)を用いて、50倍に拡大して閉ループの個数を測定した。複合糸10本を測定し、その平均値を算出して閉ループの個数とした。
【0035】
(実撚数の測定方法)
複合加工糸1mに3.6×10-3g/dtexの初荷重を付与し、幅20cmの台紙に巻取り、マイクロスコープ( (株) KEYENCE社製、製品名:VHX−100)を用いて、50倍に拡大して実撚部の撚角度を10点測定した。実撚数の測定には、あらかじめ測定糸と同程度の繊度の撚糸を作成し、撚角度と撚数との相関を求め、その結果を元に撚角度から実撚数を算出した。実撚数は測定した10点の平均値として算出した。
【0036】
(実撚長及び個数の測定方法)
複合加工糸1mに3.6×10-3g/dtexの初荷重を付与し、幅20cmの台紙に巻取り、マイクロスコープ( (株) KEYENCE社製、製品名:VHX−100)を用いて、50倍に拡大して、実撚長及び個数を測定した。複合加工糸10本を測定し、その平均値として算出した。
【0037】
(捲縮特性)
JIS L−1013法 伸縮性のA法に準拠して測定した。
【0038】
(複合加工糸の閉ループ数の測定方法)
複合加工糸1mに3.6×10-3g/dtexの初荷重を付与し、幅20cmの台紙に巻取り、マイクロスコープ( (株) KEYENCE社製、製品名:VHX−100)を用いて、50倍に拡大して閉ループの個数を測定した。複合加工糸10本を測定し、その平均値として算出した。
【0039】
(織編物評価)
得られた複合加工糸あるいは撚糸を製編織して、ハンドリング並びに目視判定による評価を行った。
【0040】
以下、より具体的な実施例につき説明する。
(実施例1)
単繊維断面が、セルローストリアセテートとセルローストリアセテートとの間にセルロースジアセテートが挟まれた三層接合構造からなる、乾伸度42%のアセテート系マルチフィラメント12(ブライト84dtex/20フィラメント)と、ポリエステルマルチフィラメント13(ブライト11dtex/4フィラメント)とを供給糸として、第1糸条供給ローラー14を経て、交絡エアノズル15に供給し、エア圧力0.15MPa、オーバーフィード率(以下、OF率と略記する。)4%で交絡とループを付与し複合糸とした。得られた複合糸の閉ループ数は57個/mであった。次いで、複合糸を第2糸条供給ローラー16を経て、仮撚加撚域に供給して、加工速度100m/分、仮撚オーバーフィード率(以下、仮撚OF率と略記する。)−2%、仮撚温度170℃(第1ヒーター17の温度)、仮撚数2000T/m(Z撚)の条件で仮撚加工を行い、第1引取ローラー19を通過したのち、弛緩オーバーフィード率(以下、弛緩OF率と略記する。)4%、弛緩熱セット温度25℃(第2ヒーター20の温度)で弛緩熱セット処理を行い、巻取り部22で巻取り、本発明の複合加工糸を得た。
得られた複合加工糸の糸物性を表1に示す。
【0041】
得られた複合加工糸を用いて織物(経糸密度10.56羽/cm、緯糸密度120本/2.54cm、サテン組織)を作成し、常法により精錬後に染色温度120℃、染色時間30分の条件で分散染料にて染色を行った。得られた織物は適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を併せ持ち、糸形態安定性に優れたものであった。
【0042】
(実施例2)
乾伸度52%のトリアセテートマルチフィラメント12(ダル84dtex/15フィラメント)とポリエステルマルチフィラメント13(ブライト11dtex/4フィラメント)とを供給糸として、第1糸条供給ローラー14を経て、交絡エアノズル15に供給し、エア圧力0.25MPa、OF率4%で交絡を付与した。エア加工後における複合糸の閉ループ数は50個/mであった。次いで、第2糸条供給ローラー16を経て、仮撚加撚域に供給して、加工速度100m/分、仮撚OF率−2%、仮撚温度165℃(第1ヒーター17の温度)、仮撚数2000T/m(Z撚)の条件で仮撚加工を行い、第1引取ローラー19を通過し、弛緩OF率4%、弛緩熱セット温度25℃(常温)(第2ヒーター20の温度)で弛緩熱セット処理を行い、巻取り部22で巻取り、本発明の複合加工糸を得た。
得られた複合加工糸の糸物性を表1に示す。
【0043】
得られた複合加工糸を追撚数800T/m(Z撚り方向)で合撚糸を作成した。得られた合撚糸で織物(経糸密度10.56羽/cm、緯糸密度125本/2.54cm、サテン組織)を作成し、常法により精練後に高圧分散染色を行った。得られた織物は適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を併せ持ち、糸形態安定性に優れたものであった。
【0044】
(実施例3)
実施例1にて使用した三層接合構造のアセテート系マルチフィラメント12(ブライト84dtex/20フィラメント)とポリエステルマルチフィラメント13(ブライト11dtex/4フィラメント)を供給糸として、第1糸条供給ローラー14を経て、交絡エアノズル15に供給し、エア圧力0.2MPa、OF率6%で交絡を付与した。エア加工後における複合糸の閉ループ数は85個/mであった。次いで、第2糸条供給ローラー16を経て、仮撚加撚域に供給して、加工速度100m/分、仮撚OF率−2%、仮撚温度170℃(第1ヒーター17の温度)、仮撚数2200T/m(Z撚)の条件で仮撚加工を行い、第1引取ローラー19を通過し、弛緩OF率4%、弛緩熱セット温度25℃(常温)(第2ヒーター20の温度)で弛緩熱セット処理を行い、巻取り部22で巻取り、本発明の複合加工糸を得た。
得られた複合加工糸の糸物性を表1に示す。
【0045】
得られた複合加工糸を用いて織物(経糸密度10.56羽/cm、緯糸密度120本/2.54cm、サテン組織)を作成し、常法により精練後に高圧分散染色を行った。得られた織物は適度なフクラミ感とソフトなタッチ及び適度な光沢感を併せ持ち、糸形態安定性に優れたものであった。
【0046】
(比較例1)
乾伸度28%のトリアセテートマルチフィラメント12(ブライト84dtex/20フィラメント)とポリエステルマルチフィラメント13(ブライト11dtex/4フィラメント)とを供給糸として、第1糸条供給ローラー14を経て、交絡エアノズル15に供給し、エア圧力0.1MPa、OF率2%で交絡を付与した。エア加工後における加工糸のループ数は15個/mであり、多数の毛羽を有していた。次いで、第2糸条供給ローラー16を経て、仮撚加撚域に供給して、加工速度100m/分、仮撚OF率−2%、仮撚温度170℃(第1ヒーター17の温度)、仮撚数2000T/m(Z撚)の条件で仮撚加工を行い、第1引取ローラー19を通過し、弛緩OF率4%、弛緩熱セット温度25℃(常温)(第2ヒーター20の温度)で弛緩熱セット処理を行い、巻取り部22で巻取ったが、本発明の物性を備えた複合加工糸を得ることはできなかった。
得られた複合加工糸の糸物性を表1に示す。
【0047】
得られた複合加工糸を用いて実施例1と同じ条件で織物を作成したが、糸形態安定性が悪く、製品の品位の低いものであった。常法により精錬後に実施例1と同じ条件で染色を行ったところ、毛羽により光沢感も低く、フクラミ感はあるもののふかつき感があり、品位の低いものとなった。
【0048】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】複合加工糸における開ループを示す概略図である。
【図2】複合加工糸における閉ループを示す概略図である。
【図3】本発明の複合加工糸を製造する装置の構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
11 複合加工糸
12 セルロース系マルチフィラメント糸
13 熱可塑性マルチフィラメント糸
14 第1糸条供給ローラー
15 交絡エアノズル
16 第2糸条供給ローラー
17 第一ヒーター
18 仮撚スピンドル
19 第1引取ローラー
20 第2ヒーター
21 第2引取ローラー
22 巻取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとからなる複合加工糸であって、
(1)複合加工糸の捲縮率が3%以上30%未満であり、
(2)実撚部の長さが1mm以上5mm未満であり、
(3)実撚部の撚数が300T/m以上1000T/m未満であって、
(4)実撚部が5個/m以上30個/m未満存在し、
(5)閉ループ部分が5個/m以上50個/m未満存在する、
(1)〜(5)の条件を満足する実撚部と閉ループ部分とを有する複合加工糸。
【請求項2】
セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとの重量比率が90:10〜60:40である請求項1に記載の複合加工糸。
【請求項3】
乾伸度が35%以上60%以下であるセルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとに交絡及びループを形成させて複合糸とし、引き続き、複合糸に仮撚加工を施して実撚部を形成する複合加工糸の製造方法。
【請求項4】
セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとに交絡及びループを形成させた複合糸が、10個/m以上100個/m未満のループを有する請求項3に記載の複合加工糸の製造方法。
【請求項5】
セルロース系マルチフィラメントと熱可塑性マルチフィラメントとを引き揃えて、インターレースノズルを用い、オーバーフィード率が2%以上10%以下、エア圧力が0.1MPa以上0.4MPa以下である条件を満たして、交絡及びループを形成させて複合糸とする請求項3又は4に記載の複合加工糸の製造方法。
【請求項6】
複合糸に仮撚加工を施したのち常温で弛緩熱セット処理を行う請求項3〜5のいずれかに記載の複合加工糸の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の複合加工糸を含む織編物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−138315(P2009−138315A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318604(P2007−318604)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】