説明

複合合成樹脂組成物並びにこれを用いた材料

骨材に対して混合性とその混合物に対する圧縮性を両立させることができ、且つ骨材と骨材との間に生ずる空隙に強靱な透水性、保水性膜或いはX線又はコバルト60線源からの放射線をも遮蔽するような遮蔽膜を形成する液状複合合成樹脂組成物を提供するものであって、長さが1ミクロン〜500ミクロンの範囲にある無機質又は有機質繊維を、サイズの小さなものより順次液状合成樹脂に対して1重量%〜15重量%の割合で加えて混合して繊維に液状合成樹脂を吸着させ、更に太さが3ミクロン〜900ミクロンで長さが1mm〜50mmの範囲にある無機質又は有機質繊維を、サイズの小さなものより順次上記液状合成樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で加えて混合して上記繊維に液状合成樹脂を吸着させてなる複合合成樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、接着性を有する複合合成樹脂組成物とこれを用いて構成される材料に関するものである。
【背景技術】
土木或いは建築等の分野において骨材の接着剤として従来使用されていたセメント、アスファルトに替わり、最近合成樹脂が多く使用されるようになっている。
合成樹脂には、溶剤を加えて液体として使用される液状合成樹脂と、粉体の状態で使用されるものとがあるが、それぞれ特有の硬化作用があり、その物性に応じて利用され、液状合成樹脂は例えば骨材と混練して舗装体やブロックが製造されている。
しかし、土木又は建築等接着剤が使用される分野において混合性と圧縮性の両立、即ち混合性と混合物に対する圧縮性が要求され、粘度の高い接着剤では骨材との良好な混合性が得られず、逆に混合性の良い低粘度の接着剤では圧縮性の良好な混合物を得ることができない。
特に、液状合成樹脂を接着剤とする場合には本来常温で施工を行うために液状合成樹脂の初期硬化が始まるわずかな時間帯でしか圧縮作業ができず、硬化が進行する中で圧縮作業を続ければ一旦硬化しはじめたものを更に圧縮するため、硬化が進んでいる液状合成樹脂の部分が破壊される現象が多く見られる。
しかし、従来接着剤として使用されてきた液状合成樹脂は施工気温によって混合性が大きく左右され、混合性は液状合成樹脂の粘度高低にのみ頼らざるを得ず、圧縮性を高めるために施工気温に応じて液状合成樹脂の粘度を調整しなければならなかった。
即ち、粘度が低ければ低気温の施工においても、混合を均一に行うことができるが、得られた混合物が低粘度であれば十分な圧縮性を得ることができず、舗装体はじめとする接着剤と骨材の混合体においては混合体の強度の条件は骨材の強度と骨材の安定性により定められるが、圧縮性の不十分な接着剤においては骨材の安定を十分に図ることができず、したがって十分な強度の混合体を得ることができない。例えば、液状合成樹脂中に粒度の密粒の骨材を配合した場合には、石粉の部分及び細砂の部分がダマ化して十分な圧縮性が得られない。
また、勿論圧縮性を高めるために、液状合成樹脂の粘度を高めれば、混合性に不足が生じて骨材の剥離の原因となる。
一方、液状合成樹脂を接着剤として使用して製造された透、排水体等については、骨材と骨材との重なり合う部分に液状合成樹脂が沈降固化して所謂点接着の状態にあり、また骨材と骨材との間に生ずる空隙には硬化後の樹脂が固化して埋め込まれた状態にある。
このような透、排水体においては透水性は骨材と骨材との間に生ずる空隙に頼っているため、土砂、粉塵等がこの空隙に詰まりやすく、これにより硬化後の樹脂が固化されている部分に過剰な力が加わり、骨材の剥離が生ずる。
これに対して、本発明者は液状合成樹脂の骨材に対する混合性とその混合物の圧縮性を両立させるために、液状合成樹脂中に長さ1mm以上の繊維を混合して液状合成樹脂の見かけ粘度を高める方法を試みてきた(特許第3145353号公報)。
しかし、液状合成樹脂の粘度の高低に応じて長さ1mm以上の繊維を加えて見かけ粘度を調整しただけでは、繊維に液状合成樹脂を完全に吸着させることができず、未吸着の液状合成樹脂が残留されるために、混合性と圧縮性を両立させるに至らず、また長さ1mm以上の繊維の混入量を多くすると、これらが起こす絡み合いによって混合性が損なわれる等の欠点がある。
更に、骨材と骨材との間に生ずる空隙には未吸着で残留していた液状合成樹脂が流入して薄膜を形成するため、透水時の空隙に土砂、粉塵等が目詰まり生じ、これが原因で骨材剥離が生ずる等の問題は解決されていない。
【発明の開示】
この発明は、上記実情に鑑み、長さが1ミクロン〜500ミクロン無機質又は有機質繊維を、液状合成樹脂に対して1重量%〜15重量%の割合で加えて混合して繊維に液状合成樹脂を吸着させ、更に太さが3ミクロン〜900ミクロンで長さが1mm〜50mmの無機質又は有機質繊維を、上記液状合成樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で加えて混合して該繊維に液状合成樹脂を加えて混合して上記繊維に液状合成樹脂を吸着させてなる複合合成樹脂組成物を提案するものである。
更に、具体的には長さが1ミクロン〜500ミクロンの範囲にある無機質又は有機質繊維を、サイズの小さなものより順次液状合成樹脂に対して1重量%〜15重量%の割合で加えて混合して繊維に液状合成樹脂を吸着させ、更に太さが3ミクロン〜900ミクロンで長さが1mm〜50mmの範囲にある無機質又は有機質繊維を、サイズの小さなものより順次上記液状合成樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で加えて混合して上記繊維に液状合成樹脂を吸着させてなる複合合成樹脂組成物を提案するものである。
この発明においては低粘度の液状合成樹脂をミクロンサイズの繊維に吸着重合させ、これにより液状合成樹脂を安定した状態で長さ1mm以上の繊維に吸着重合させる。
このため、この発明においては繊維に未吸着の液状合成樹脂が残留することなく、したがってこの発明に係わる複合合成樹脂組成物においては骨材との間において十分な混合性とその混合物の圧縮性を得ることができる。
この発明によれば液状合成樹脂の初期粘度が800cps〜1500cpsの範囲において例えば施工気温が施工気温が−5℃においても均一な混合性が得られる。
また、施工気温が30℃〜40℃を超えた場合においても十分な圧縮性を得ることができる。
また、この発明では骨材の粒度が密粒のものを配合しても、石粉の部分及び細砂の部分もダマ化することなく、粒径2mm〜8mmの7号砕石或いは30mmトップの6号砕石又は40mmトップの5号砕石も一様に冷温下で混合することができた。
一方、この発明によれば骨材と骨材との間に生ずる空隙には長さ1mm以上の繊維を支柱として、この周りにミクロンサイズの繊維に吸着重合された液状合成樹脂が充填され、適当な保水性と透水性を備えた膜が形成される。
しかも、骨材と骨材との間に生じた空隙に形成される膜は1mm以上の繊維をフレームとしてその周りにミクロンサイズの繊維に吸着重合された液状合成樹脂を充填するものであり、このため強靱で、目詰まりがなく、永く透水性と保水性を発揮させることができる。
また、この発明によれば液状合成樹脂組成物の使用量と使用する繊維とを調整することにより、骨材間にX線、コバルト60線源からの放射線をも遮断できる膜を形成することもできる。
ここで使用するミクロンサイズの繊維は液状合成樹脂の物性に対応して1ミクロン〜500ミクロンの中から選択される。
この発明で使用する液状合成樹脂としては、例えばエポキシ系合成樹脂、ウレタン系合成樹脂、ポリウレタン系合成樹脂、ビニルエステル系合成樹脂、ポリエステル系合成樹脂、アクリル系合成樹脂、フェノール系合成樹脂等の中から用途に合わせて選択するものとする。
この発明で使用する繊維としては、液状合成樹脂と相溶性のない強靱な繊維、例えばシリカ繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ビニル繊維、エポキシ繊維等の中から用途に合わせて選択するものとする。
また、従来の1mm以上の繊維に対しては不安定な吸着しか得られなかったが、一旦液状合成樹脂をミクロンサイズの繊維に吸着させることにより安定した吸着が実現され、これにより混合性と圧縮性の両立することができ、液状合成樹脂の性能と機能が抜本的に改善された。
この発明によれば、液状合成樹脂の使用上の領域を一気に拡大し、従来のセメント、アスファルトの欠陥を補い得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明に係わる複合合成樹脂組成物により骨材間に生じた空隙に形成された透、保水性膜の拡大模写図、図中Aは骨材、Bはミクロサイズの繊維に吸着された液状合成樹脂、Cは長さ1mm以上の繊維に吸着された液状合成樹脂、Dは液状合成樹脂組成物中に形成された超微細な空隙である。
【発明を実施するための最良の形態】
この発明に係わる複合合成樹脂組成物の用途を列挙すると、セメントコンクリート廃材又はアスファルトコンクリート廃材、焼却灰、溶融チップ、ヘドロ、貝殻、火山灰、鉱砕物、鉄鋼スラグ等と混合して容器等の成形材、密粒又は租粒の骨材等或いは砂、砂利、廃プラスチック片、ガラス片、タイヤ片、溶融チップ、鉄鋼スラグ、陶器片、かわら片、鉱砕、土、籾殻、木片、火山灰、焼却灰、貝殻等と混合して道路等の舗装材、砂、砂利、廃プラスチック片、ガラス片、廃タイヤ片、溶融チップ、鉄鋼スラグ、陶器片、かわら片、鉱砕、土、籾殻、木片、火山灰、焼却灰、貝殻等と混合してブロックの成形材、廃タイヤ片、溶融チップ、鉄鋼スラグ、陶器片、かわら片、鉱砕、土等と混合して護岸材、魚礁材等の成形材、廃タイヤ片、かわら片、シュレッダーダスト又は金属片等と混合してスレート或いは軽量で強靱な防音乃至断熱材、シュレッダーダスト又は発泡スチロール又はペーパーシュレッダー等と混合してコンクリートパネルの成形材、砕石、砂、鉄鋼スラグ等と混合して砂防乃至擁壁材、ヘドロ、大理石片、火山灰、焼却灰、溶融チップ等と混合してタイル乃至テラゾ、砂利、砕石、廃プラスチック片、火山灰、陶器片、かわら片、もみ殻、シュレッダーダスト、ペーパースレッダー、木片等と混合してプランター乃至植木鉢の成形材、アルミ廃材片、ゼオライト、バクハン石片、化石片、木炭等と混合して窓枠或いはその他の建材の成形材、ゼオライト又は火山灰、焼却灰等と混合して造園材、園芸材、砕石、砂等と混合してカルバードの成形材、砕石、砂等と混合して雨水処理ブロックの成形材として使用できる。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物は塗料として、或いはセラミックス、ゼオライト、砂等と混合してセメント構造物の補強用の吹き付け乃至塗装用塗料として用いることができる。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物は有害物質溶出遮断のための塗料として、或いは汚染された土壌等と混合して圧縮固形することにより有害物質の溶出を防止するために使用することができる。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物は繊維強化プラスチック(以下、FRPと略記する)素材又はFRP製品の補修剤として、或いは砂等と混合してアスファルト構造物乃至その他の構造物の補修材として用いることができる。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物をX線乃至コバルト60線源等の放射線防護乃至遮蔽体の構成基材乃至これら放射線防護乃至遮断用の塗装剤として用いることができる。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物により塗料を構成する場合には、基材とする液状合成樹脂は20℃における粘度が1200cps〜1400cpsのものを使用し、これに10ミクロン〜50ミクロンから選択された無機質又は有機質の繊維を混合吸着させ、更に太さ10ミクロン〜50ミクロン長さ1mm〜3mmから選択された無機質又は有機質の繊維を吸着させることが好ましい。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物によりFRP素材又はFRP製品の補修剤を構成する場合には、基材とする液状合成樹脂は20℃における粘度が1500cps〜1600cpsのものを使用し、これに7ミクロン〜100ミクロンから選択された無機質又は有機質の繊維を液状合成樹脂に対して6重量%〜10重量%の割合で加えて混合吸着させ、更に太さ10ミクロン〜100ミクロン長さ1mm〜100mmから選択された無機質又は有機質の繊維を液状合成樹脂に対して5重量%〜8重量%の割合で加えて混合吸着させることが好ましい。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物によりX線乃至コバルト60線源等の放射線防護乃至遮蔽体或いはこれら放射線防護乃至遮断用の塗装剤を構成する場合には、基材とする液状合成樹脂は20℃における粘度が3000cps程度のものを使用し、これに7ミクロン〜20ミクロンから選択された無機質又は有機質の繊維を液状合成樹脂に対して7重量%〜10重量%の割合で加えて混合吸着させ、更に太さ7ミクロン〜10ミクロン長さ1mm〜5mmから選択された無機質又は有機質の繊維を液状合成樹脂に対して8重量%〜10重量%の割合で加えて混合吸着させることが好ましい。
この発明に係わる複合合成樹脂組成物にゼオライト、バクハン石片、化石片、木炭等を混合することにより建材の成形材を構成する場合の複合合成樹脂組成物は、基材とする液状合成樹脂は20℃における粘度が1600cps〜2000cpsのものを使用し、これに7ミクロン〜15ミクロンから選択された無機質又は有機質の繊維を液状合成樹脂に対して3重量%〜7重量%の割合で加えて混合吸着させ、更に太さ7ミクロン〜20ミクロン長さ1mm〜5mmから選択された無機質又は有機質の繊維を液状合成樹脂に対して2重量%〜5重量%の割合で加えて混合吸着させることが好ましい。
【実施例】
以下、この発明の実施例を示す。
[実施例1]
20℃における粘度が1400cpsのエポキシ系合成樹脂(東和化成社製)50Kgをオムニミキサー(千代田技研工業社製30L)に入れ、これに10ミクロンのシリカ繊維(ニチビ社製)500gを混入して1分間混合してシリカ繊維にエポキシ系合成樹脂を吸着させ、更に20ミクロンのシリカ繊維(ニチビ社製)500gを加えて2分間混合吸着させた後、これに太さ10ミクロン長さ3mmのポリエステル繊維(東レ社製)1Kgを投入して2分間混合して吸着させ、施工気温が0℃でも混合できる程度の粘度の複合合成樹脂組成物53Kgを得た。
この実施例で得られた複合合成樹脂組成物50gをガラス板上に採り、それを押し広げて検証した。
なお、1mm以上のポリエステル繊維のみを実施例1と同様に混合して得られた複合合成樹脂組成物についての同様な検証結果では繊維と繊維の重なり合って構成されるフレーム間隙は未吸着の液状合成樹脂で埋め尽くされているが、この実施例で得られた複合合成樹脂組成物をガラス板上に押し広げた検証結果によれば、長さmm単位のポリエステル繊維が重なって構成されるフレーム間隙は長さミクロン単位のシリカ繊維に吸着重合された液状合成樹脂で充填されている。
即ち、長さmm単位の繊維が重なって構成されるフレーム間隙には液状合成樹脂に吸着重合された長さミクロン単位の繊維により、適当に水を保水しながら透水する微細孔が形成される。したがって、この発明によれば各分野で利用可能な透水性と保水性を兼ね備えた、所謂透、保水性体を形成することができる。
[実施例2]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物3Kgとフレーク状の廃タイヤ片64Kgを2基の平型ミキサーに等分に入れて共に2分間混合し、これに600gづつの硬化剤を加えて3分間混合し、合計68.2Kgの廃タイヤ混合材を得、これを予め準備した1m×1m×30mmの路盤上に均一に敷設し、これを1トンの鉄輪ローラーで2分間転圧して舗装した。また、廃タイヤ混合材の20.8Kgを300mm×300mm×50mmの金型5枚に詰め、それぞれ10トンの油圧機で3分間静止圧縮して5枚の平板を得た。
[実施例3]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物4.5Kgと含水率50%のヘドロ75Kgを等量に分けて2基の平型ミキサーに入れ、4分間混合し、これにそれぞれ900gづつの硬化剤を加え、更に3分間混合し、合計81.3Kgのヘドロ混合材を得、この内56.3Kgの混合材を1m×1m×50mmの路盤上に均一に敷設し、これを1トンの鉄輪ローラーで3分間転圧して舖装した。また、ヘドロ混合材25Kgを300mm×300mm×50mmの金型5枚に詰め、これを10トンの油圧機で3分間静止圧縮して平板とした。
実施例3によれば油圧機で圧縮する際に予想を超える水分が滲みだしたが、その後加えた複合合成樹脂組成物により強靱に硬化された。
[実施例4]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物3Kgを、シュレッダーペーパー50Kgを等量に分けて2基の平型ミキサーに入れ、ともに3分間混合した後、これにそれぞれ600gづつの硬化剤を加えて2分間混合し、合計54.2Kgの混合材を得、この内49.2Kgを1m×1m×20mmの路盤上に均一に敷設し、これを1トンの鉄輪ローラーで2分間転圧して舗装した。また、混合材5Kgを300mm×300mm×30mmの金型3枚に詰め、これを10トンの油圧機で2分間静止圧縮して平板とした。
[実施例5]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物3Kgを、シュレッダーダスト60Kgを等量に分けて2基の平型ミキサーに入れ、ともに3分間混合した後、これにそれぞれ600gづつの硬化剤を加えて2分間混合し、合計64.2Kgの混合材を得、この内48Kgを1m×1m×30mmの路盤上に均一に敷設し、これを1トンの鉄輪ローラーで2分間転圧して舗装した。また、混合材12Kgを300mm×300mm×30mmの金型3枚に詰め、これを10トンの油圧機で3分間静止圧縮して平板とした。複合合成樹脂組成物を使用することにより物性的に種々雑多なシュレッダーダストを混合と圧縮を行わせることができ、強靱なボードを得ることができた。
[実施例6]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物1.8Kgと15Kgの発泡スチロール片を等量に分けて2基の平型ミキサーに入れ、ともに3分間混合した後、これにそれぞれ0.38Kgの硬化剤を加えて2分間混合し、合計17.56Kgの混合材を得、これをそれぞれ300mm×300mm×30mmの金型5枚に詰め、これを10トンの油圧機で3分間静止圧縮して平板ブロックとした。
この実施例によれば本来吸着性を有する発砲スチロール片を、砕石と同様な混合割合でで混合して強靱な平板ブロックに成形できた。
【実施例7】
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物2Kgとアスファルトコンクリート廃材片40Kgを平型ミキサーで2分間混合した後、これに0.8Kgの硬化剤を加え、更に2分間混合して42.8Kgの混合材を得、これを1m×1mの路盤上に均一に敷設し、1トンの鉄輪ローラーで転圧して1m×1m×30mmの強靱で透水性、保水性をもつ舗装とした。
この実施例によればアスファルトコンクリート廃材片を、砕石と同様な混合割合で混合して路盤上に鉄輪ローラーで転圧することにより、従来の液状合成樹脂、セメント、アスファルト等の舗装材では不可能であった強靱で透、保水性を有する舗装体が得られた。
[実施例8]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物21Kgとセメントコンクリート廃材片41Kgを平型ミキサーで2分間混合した後、これに0.8Kgの硬化剤を加え、更に2分間混合して43.8Kgの混合材を得、これを1m×1mの路盤上に均一に敷設し、1トンの鉄輪ローラーで転圧して1m×1m×30mmの強靱で透水性、保水性をもつ舖装とした。
[実施例9]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物200gを容器に採り、これに80gの硬化剤を混合した後、無機質の顔料10gを加えて混合し、これを通常塗装用として使用しているコンプレッサー気圧吹き付け機のポットに入れ、予め用意した縦1800mm横900mmのベニヤ板に対してほぼ300mmの距離から直角に吹き付けることにより液状合成樹脂特有の光沢によりなかば艶が抑えられ、且つ組成物中の1mm以上の繊維が地模様となった塗膜を得ることができた。
この場合使用したノズルも特に径の大きなものとせずに通常の径のものを使用したが、液垂れもなく、ほぼ2mm厚の塗膜を得ることができた。
また、塗膜硬化後のベニヤ板については、その強度は塗装前のベニヤ板でなく、PC板に似た強度のものとなっていた。
[実施例10]
実施例9で得られた塗料を予め用意した300mm×300mm×50mmのセメントコンクリートブロックの数カ所に生じたクラック部分に吹き付けて補強した。
[実施例11]
実施例1で得られた複合合成樹脂組成物50gと0mm〜3mmにクラッシングした廃プラスチック片を混合した後、これに20gの硬化剤を加えて更に混合して混合材を得た。一方外型、内型、底型の組み合わせで構成される内径100mm高さ150mmの円筒状の金型を予め用意し、この金型の厚さ5mmの型の空間部に上記混合材を詰め、これを竹製の棒で圧縮成型した後内型を抜き、次いで底型を外し、最後に外型を外して植木鉢を製作した。
[実施例12]
20℃における粘度が3000cpsのエポキシ系合成樹脂(東和化成社製)30Kgをオムニミキサー(千代田技研工業社製30L)に入れ、これに10ミクロンのシリカ繊維(ニチビ社製)300gを混入して2分間混合してシリカ繊維にエポキシ系合成樹脂を吸着させ、更に20ミクロンのシリカ繊維(ニチビ社製)300gを加えて2分間混合吸着させ、また太さ10ミクロン長さ2mmのシリカ繊維(ニチビ社製)450gを入れて2分間混合吸着させ、更に太さ10ミクロン長さ3mmのポリエステル繊維(東レ社製)450gを投入して混合して吸着させ、31.5Kgの複合合成樹脂組成物を得た。この場合最後に混合吸着させた時間は繊維全体の分散を完全にするため3分間を要した。
[実施例13]
実施例12で得られた複合合成樹脂組成物3Kgと0mm〜5mmの大理石片30Kgを平型ミキサーで3分間混合し、これに1.2Kgの硬化剤を加えて混合し、34.2Kgの混合材を得た。これを300mm×300mm×50mmの金型5枚に詰め、15トンの油圧機で圧縮して平板ブロックを製作した。この平板ブロックを常温で24時間養生させた後それぞれ研磨してテラゾ5枚を製作した。
[実施例14]
実施例12で得られた複合合成樹脂組成物200gに硬化剤80gを混合した後、100mm×100mm×10mmの金型に詰め、これを10トンの油圧機で圧縮してX線防御の性能試験のための試験体を製作した。
実施例14で製作した試験体下記の試験を行い、JISZ4501に基づきその結果を下記に示す。
試験日 平成14年8月28日
試験場所 東京都立産業技術研究所
試験条件 X線装置 フィリップ社製MG−161型(平滑回路、焦点寸法3.0mm,Be窓)
X線管電圧及び管電流 MG−161100Kv,10mA付近ろ過板0.26mmCu
X線管電圧及び管電流 MG−161,150Kv,10mA付近ろ過板0.70mmCu
X線焦点−試験管距離 1500mm
X線焦点−測定器距離 50mm
測定器、電離箱照射線量率計 東洋メディック社製RAMTEC−1000型A−4ブローブ使用
X線ビーム 狭いビーム

従来の液状合成樹脂、セメント、アスファルト等の材質でX線防御体を製造することが不可能であったが、この実施例によれば、この発明に係わる複合合成樹脂組成物を使用することによりX線防御体の製造が可能であることが明らかになった。
[実施例15]
実施例12で得られた複合合成樹脂組成物3Kgに10ミクロン及び20ミクロンのシリカ繊維(ニチビ社製)を各1.92gと太さ10ミクロン長さが2mmと5mmのポリエステル繊維(東レ社製)各30gを加えて混合吸着させて複合合成樹脂組成物3063.84gを得た。これを300mm×300mm×30mmの金型に詰め、10トンの油圧機で圧縮してコバルト60線源遮断性能試験のための試験体を製作した。
実施例15で製作した試験体についての試験条件と試験結果を下記に示す。
試験日 平成14年10月1日
試験場所 東京都立産業技術研究所
試験方法 鉛遮蔽体でコンメート(10mm)したコバルト60線源とシーベルトメーター検出部の間に当該試験体(30cm×30cm×3cm)及び鉛板(30cm×30cm、厚さ1.0,1.5,2.0,3.0mm)を置き、その中央部での1cm線量当量率を30秒間隔10回測定した結果を比較して当該試験体のコバルト60ガンマ線(1.173,1.333MeV)に対する鉛当量を求めた。
線源 コバルト60線源
測定機器 シーベルトメーター アロカDRM301S.N.J94.002523
測定結果
測定資料 当該試験体
鉛当量(コバルト60) 2.2mmPb
従来の液状合成樹脂、セメント、アスファルト等の材質でコバルト60線源から発する放射線防御体を製造することが不可能であったが、この実施例によれば、この発明に係わる複合合成樹脂組成物を使用することによりコバルト60線源から発する放射線防御体の製造が可能であることが明らかになった。なお、実施例14,15において液状合成樹脂の粘度が更に高いもの、例えば初期粘度3000cpsのものを使用することによりX線乃至その他の放射線の防御機能を更に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
1mm以上の繊維に対しては不安定な吸着しか得られなかったが、この発明によれば一旦液状合成樹脂をミクロンサイズの繊維に吸着させることにより安定した吸着が実現され、これにより混合性と圧縮性の両立することができ、液状合成樹脂の性能と機能が抜本的に改善され、液状合成樹脂の使用上の領域を一気に拡大し、従来のセメント、アスファルトの欠陥を補い得るものとなる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さが1ミクロン〜500ミクロン無機質又は有機質繊維を、液状合成樹脂に対して1重量%〜15重量%の割合で加えて混合して繊維に液状合成樹脂を吸着させ、更に太さが3ミクロン〜900ミクロンで長さが1mm〜50mmの無機質又は有機質繊維を、上記液状合成樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で加えて混合して該繊維に液状合成樹脂を加えて混合して上記繊維に液状合成樹脂を吸着させてなることを特徴とする複合合成樹脂組成物。
【請求項2】
長さが1ミクロン〜500ミクロンの範囲にある無機質又は有機質繊維を、サイズの小さなものより順次液状合成樹脂に対して1重量%〜15重量%の割合で加えて混合して繊維に液状合成樹脂を吸着させ、更に太さが3ミクロン〜900ミクロンで長さが1mm〜50mmの範囲にある無機質又は有機質繊維を、サイズの小さなものより順次上記液状合成樹脂に対して1重量%〜10重量%の割合で加えて混合して上記繊維に液状合成樹脂を吸着させてなることを特徴とする複合合成樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される複合合成樹脂組成物により構成される容器等の成形材、道路等の舗装材、ブロックの成形材、護岸材、魚礁材等の成形材、防音乃至断熱材、コンクリートパネルの成形材、砂防乃至擁壁材、タイル乃至テラゾ材料、プランター乃至植木鉢の成形材、建材の成形材、造園材、園芸材、カルバードの成形材、砕石、砂等と混合して雨水処理ブロックの成形材、塗料、セメント構造物の補強用の吹き付け乃至塗装用塗料、有害物質溶出遮断材、繊維強化プラスチック素材又はこれらの製品の補修材、構造物の補修材、X線乃至コバルト60線源等の放射線防護乃至遮蔽材等の材料。

【国際公開番号】WO2005/052061
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515752(P2005−515752)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016775
【国際出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(591260203)
【出願人】(503430795)株式会社アムテック (1)
【Fターム(参考)】