説明

複合容器

【課題】 使用済みの容器の残液量を削減することができるように改良された複合容器を提供することを目的とする。
【解決手段】 複合容器1は、外装容器2と、外装容器2内に内装された内装容器3と、内装容器3の天面に設けられた液取り出し口8とを備える。当該容器を傾けて液を排出する時に液が滞留する、内装容器3の肩部分に、凹み15がつけられている。凹み15が付けられているので、容器を傾けて液を排出する時に、液が滞留する部分がなく、液取り出し口8から全て排出され、残液量が削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に複合容器に関し、より特定的には、使用済みの容器の残液量を削減することができるように改良された複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
遮光性が必要な半導体関連の溶液(研磨剤、エッチング液、レジスト他)は、鉄缶単体には貯蔵できないため、鉄缶の内部にポリ容器が内装された複合容器に貯蔵されて流通している。
【0003】
図5(A)は、従来の複合容器の平面図であり、図5(B)は部分断面図であり、図5(C)はキャップ部分の部分断面図であり、図5(D)は、図5(B)におけるD部拡大図である。
【0004】
これらの図に示すように、複合容器1は、鉄製の外装容器2と、外装容器2内に内装されたポリ容器3とからなる。外装容器2には把持部4が設けられる。外装容器2は、胴板5と上下2枚の天地板6とからなる。上方の天地板6には窪み7が設けられ、窪み7に設けられた開口部から、ポリ容器3の天面に設けられた液取り出し口8が突出している。液取り出し口8は、蓋9で密閉されている。
【0005】
図5(C)に示すように、液取り出し口8を閉じる蓋9は、キャップ10と内蓋11からなる。キャップ10の内壁面には、液取り出し口8の外面に設けられたねじ山に嵌まり込む、ねじ溝が設けられている。
【0006】
内蓋11は、液取り出し口8の内面に接する嵌まり込み部を有し、嵌まり込み部が液取り出し口8の内面に接するように嵌まり込むことによって、ポリ容器3が密閉される。図5(D)に示すように、ポリ容器3は、鉄製の外装容器2内に入れられ、天地板6と胴板5をかしめることによって内装される。
【0007】
図6(A)は、外装容器内に内装される従来のポリ容器3の単体の平面図であり、図6(B)は側方から見た側面図である。これらの図に示すように、液取り出し口8が形成された天面の片半分12ともう一方の片半分13は段差を有し、これらは天面の片半分12からもう一方の片半分13に向けて上る斜面14で接続されている。この段差は、図5(B)を再び参照して、液取り出し口8の上端と外装容器2の上端とをほぼ面一に揃えるためのものである。これらを面一にすることにより、複合容器を積み重ねて運搬、保管することができる。ポリ容器3は、ポリエチレン樹脂を用いるブロー成型によって成型され、その厚みは1〜2mmにされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の複合容器は以上のように構成されており、使用時、容器内の液体はポンプで吸い上げて取り出される。
【0009】
しかしながら、図7に示すように、容器内の液体をポンプで吸い上げた後、ユーザによっては、容器を傾けて液出しすることもあり、この際に内装容器3の肩部分3sに排出し切れない残液19が滞留し、ひいては、使用済みの容器内に液体が残るという問題点があった。複合容器内に保存される液体には、比較的高価な液体が多いので、残液分がコスト的に損になるという問題点、および使用済み容器の廃棄処理時等に悪影響が出るという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、容器内の液体を使い切ることができるように改良された複合容器を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、使用済みの容器の残液量を削減し、廃棄処理が容易な複合容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる複合容器は、外装容器と、上記外装容器内に内装された内装容器と、上記内装容器の天面に設けられた液取り出し口とを備え、当該容器を傾けて液を排出する時に液が滞留する、上記内装容器の肩部分に、凹みがつけられている。
【0013】
本発明によれば、容器を傾けて液を排出する時に、液が滞留しやすい肩部分に、凹みが付けられているので、液が滞留できず、液取り出し口から排出され、残液量が削減する。
【0014】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記凹みは、上記天面から段差を持たせて凹む凹部で形成されている。このように構成することにより、外装容器の従来の形状に変形を加えず、残液量を削減させた複合容器が得られる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記液取り出し口は、上記天面の片半分側に偏って設けられ、上記凹部は、上記天面の上記片半分側にある肩部分であって、かつ上記天面の中心と上記液取り出し口の中心を通る線分の両側に設けられている。
【0016】
本発明によれば、上記凹部は、上記天面の中心と上記液取り出し口の中心を通る線分の両側に設けられているので、より一層残液量が削減する。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記天面と上記凹部は斜面で接続されている。当該複合容器の落下時、あるいは容器内の液圧により、上記天面と上記凹部の接続部は、強度的に弱くなるが、この部分を斜面にすることにより、衝撃を緩和することができ、割れにくくなる。
【0018】
上記斜面の上端と下端にはそれぞれアールが付けられているのが好ましい。このように構成することにより、上記天面と上記凹部の接続部の強度が高まり、より割れにくくなる。
【0019】
平面形状において、上記凹部の角部にはアールが付けられているのが好ましい。このように構成することにより、上記天面と上記凹部の接続部の強度が一層高まり、より割れにくくなる。
【0020】
上記天面の上記片半分ともう一方の片半分は段差を有し、これらは上記天面の上記片半分から上記もう一方の片半分に向けて上る斜面で接続されている。上記天面の上記片半分に液取り出し口を設けると、液取り出し口の上端と外装容器の上端とをほぼ面一にすることができ、複合容器の積み重ねを実現することができる。また従来の外装容器をそのまま適用することができる。
【0021】
上記外装容器と上記内装容器の上記凹部との隙間部分にはスペーサが設けられるのが好ましい。スペーサには例えばポリスチレン発泡体が使用される。スペーサの存在により、内装容器の強度が一層高まる。
【0022】
上記内装容器はポリエチレン樹脂を用いるブロー成型によって成型され、その厚みは1〜2mmにされている。
【0023】
本発明は、容量が22リットル以下の複合容器に特に好ましく適用することができる。容量が22リットル以下の複合容器は、現場でユーザが担ぎ上げられる大きさであるため、ユーザが容器を傾けて液出しする頻度が高いからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる複合容器によれば、容器を傾けて液を排出する時に、液が滞留しやすい肩部分に、凹みが付けられているので、残液量が削減する。したがって、残液分が少ない分、コスト的に有利となる。また、使用済み容器を容易に廃棄処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
残液量の少ない複合容器を得るという目的を、内装容器の天面形状を液が残りにくい形状にするということによって実現した。以下この発明の実施例を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0026】
図1(A)は、実施例1にかかる複合容器の平面図であり、図1(B)は部分断面図である。実施例1にかかる複合容器は以下の点を除いて、図5に示す従来の複合容器と同一であり、同一部分には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。実施例1にかかる複合容器が、図5に示す従来の複合容器と異なる点は、当該容器を傾けて液を排出する時に液が滞留する、内装容器3の肩部分に、凹み15がつけられている点である。以下これについて詳細に説明する。
【0027】
図2(A)は、実施例1にかかる複合容器の中に内装されるポリ容器の平面図である。図2(B)は、図2(A)における矢印B方向から見た側面図であり、図2(C)は、図2(A)における矢印C方向から見た側面図である。図2(D)は、図2(A)におけるD−D線に沿う、液取り出し口近傍の部分断面図である。
【0028】
これらの図に示すように、ポリ容器3は、天面16に設けられた液取り出し口8を備える。ポリ容器3の肩部分に、当該複合容器を傾けて液を排出する時に液が滞留するのを防止する凹みがつけられている。凹みは、天面16から段差を持たせて凹む凹部15で形成されている。液取り出し口8は、天面16の片半分側に偏って設けられ、凹部15は、天面16の肩部分であって、かつ天面16の中心と液取り出し口8の中心を通る線分の両側に設けられている。このような凹部15は、ポリエチレン樹脂を用いるブロー成型によって容易に形成される。ポリ容器3の厚みは1〜2mmにされる。図2(D)を参照して、鉄製の外装容器の上部の天地板6はパッキン18を介してポリ容器の天面16に接する。
【0029】
本実施例によれば、容器を傾けて液を排出する時に、液が滞留していた部分に凹部15が形成されているので、液は滞留せず、液取り出し口8から排出され、残液量が削減する。
【0030】
天面16と凹部15は斜面17で接続されている。斜面17の角度は約45度である。複合容器の落下時、あるいは容器内の液圧により、天面16と凹部15の接続部は、強度的に弱くなるが、この部分を斜面17にすることにより、衝撃を緩和することができる。斜面17の上端と下端のそれぞれにアールを付けるのが好ましい。アールを付けると、天面16と凹部15の接続部の強度が高まり、割れにくくなる。
【0031】
平面形状において、凹部15の角部15a、15b、15cにはアールが付けられているのが好ましい。このように構成することにより、天面16と凹部15との接続部の強度が一層高まる。
【0032】
図示しないが、外装容器とポリ容器の凹部15との隙間部分にはスペーサが設けられるのが好ましい。スペーサには例えばポリスチレン発泡体が使用される。凹部15を設けるとポリ容器の強度は弱くなるが、外装容器とポリ容器の凹部15との隙間部分にスペーサを介在させることにより、補強される。
【0033】
本実施例は、容量が22リットル以下の複合容器の場合に特に好ましい。容量が22リットル以下の複合容器は、現場でユーザが担ぎ上げられる大きさであるため、ユーザが容器を傾けて液出しする頻度が高いからである。
【実施例2】
【0034】
図3(A)は、実施例2にかかる複合容器に内装されるポリ容器の平面図である。図3(B)は側面図である。鉄製の外装容器の図示は省略している。
【0035】
これらの図に示すように、外装容器内に内装されたポリ容器3は、天面16に設けられた液取り出し口8を備える。ポリ容器3の肩部分に、当該複合容器を傾けて液を排出する時に液を滞留させないように凹み15がつけられている。本実施例では、当該複合容器を傾けて液を排出する時に液が滞留する従来の肩部分(点線部分)を面取りし、斜面にした。このような実施例であっても、残液量を削減させることができる。また斜面に限らず、肩部分のアールを従来よりも大きくすることによっても、相当の効果を奏する。
【実施例3】
【0036】
図4(A)は、実施例3にかかる複合容器に内装されるポリ容器の平面図である。図4(B)は側面図である。鉄製の外装容器の図示は省略している。
【0037】
これらの図に示すように、外装容器内に内装されたポリ容器3は、天面16に設けられた液取り出し口8を備える。液取り出し口8をポリ容器3の側壁側に近づけ、天面16の中心と液取り出し口8の中心を通る線分の延長線上の肩部分を、従来の肩部分(点線)のアールRより大きくし、当該複合容器を傾けて液を排出する時に液が肩部分に滞留しないようにされている。このような実施例であっても、残液量を削減させることができる。なお、アールを大きくする代わりに、この部分を斜面にしてもよい。本実施例の場合、液取り出し口8がポリ容器3の側壁側に近づけられているので、外装容器の形状はそれに応じて変える必要がある。
【0038】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、使用済みの容器の残液量を削減することができるように改良された複合容器を与え、コスト的にも有利になり、廃棄処理時等に悪影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(A) 実施例1にかかる複合容器の平面図である。 (B) 実施例1にかかる複合容器の部分断面図である。
【図2】(A) 実施例1にかかる複合容器の中に内装されるポリ容器の平面図である。 (B) 図1(A)における矢印B方向から見た側面図である。 (C) 図1(A)における矢印C方向から見た側面図である。 (D) 図1(A)におけるD−D線に沿う、液取り出し口近傍の断面図である。
【図3】(A) 実施例2にかかる複合容器に内装されるポリ容器の平面図である。 (B) 実施例2にかかる複合容器に内装されるポリ容器の側面図である。
【図4】(A) 実施例3にかかる複合容器に内装されるポリ容器の平面図である。 (B) 実施例3にかかる複合容器に内装されるポリ容器の側面図である。
【図5】(A) 従来の複合容器の平面図である。 (B) 従来の複合容器の部分断面図である。 (C) キャップ部分の部分断面図である。 (D) 図5(B)におけるD部拡大図である。
【図6】(A) 外装容器内に内装される従来のポリ容器の単体の平面図である。 (B) 外装容器内に内装される従来のポリ容器の単体の側面図である。
【図7】従来の複合容器を傾けて液を取り出す際に、肩部分に残る残液の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0041】
1 複合容器
2 外装容器
3 ポリ容器
4 把持部
5 胴板
6 天地板
7 窪み
8 液取り出し口
9 蓋
10 キャップ
11 内蓋
14 斜面
15 凹み
16 天面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装容器と、
前記外装容器内に内装された内装容器と、
前記内装容器の天面に設けられた液取り出し口とを備えた複合容器において、
当該容器を傾けて液を排出する時に液が滞留する、前記内装容器の肩部分に、凹みがつけられていることを特徴とする複合容器。
【請求項2】
前記凹みは、前記天面から段差を持たせて凹む凹部で形成されている請求項1に記載の複合容器。
【請求項3】
前記液取り出し口は、前記天面の片半分側に偏って設けられ、
前記凹部は、前記天面の前記片半分側にある肩部分であって、かつ前記天面の中心と前記液取り出し口の中心を通る線分の両側に設けられている請求項2に記載の複合容器。
【請求項4】
前記天面と前記凹部は斜面で接続されている請求項2または3に記載の複合容器。
【請求項5】
前記斜面の上端と下端にはそれぞれアールが付けられている請求項4に記載の複合容器。
【請求項6】
平面形状において、前記凹部の角部にはアールが付けられている請求項2から5のいずれか1項に記載の複合容器。
【請求項7】
前記天面の前記片半分ともう一方の片半分は段差を有し、これらは前記天面の前記片半分から前記もう一方の片半分に向けて上る斜面で接続されている請求項3に記載の複合容器。
【請求項8】
前記外装容器と前記内装容器の前記凹部との隙間部分にはスペーサが設けられている備えた請求項2から7のいずれか1項に記載の複合容器。
【請求項9】
前記内装容器はポリエチレン樹脂を用いるブロー成型によって成型され、その厚みは1〜2mmにされている請求項1から8のいずれか1項に記載の複合容器。
【請求項10】
前記内装容器の容量は22リットル以下に選ばれている請求項1から9のいずれか1項に記載の複合容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−45429(P2007−45429A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229576(P2005−229576)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)
【出願人】(595100598)株式会社ジャパンペール (7)
【Fターム(参考)】