説明

複合廃棄物処理システム

【課題】 処理系統にて発生した生成物を有効利用でき、特にガス化処理若しくはメタン発酵処理にて発生したガスを貯蔵安定性、輸送性の良好なエネルギーに転換することが可能な複合廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】 低カロリーごみ10をメタン発酵槽11にてメタン発酵処理する低カロリーごみ処理ラインと、高カロリーごみ20をガス化炉21によりガス化する高カロリーごみ処理ラインと、からなる複合廃棄物処理システムにおいて、前記ガス化炉21にて発生したガス化ガス22をガス精製装置24にて精製し、精製ガスからメタノール合成装置25、DME合成装置27により液体燃料を合成するようにし、好適には、他の高カロリー廃棄物を炭化処理して得られた炭化物を液媒体と混合してスラリー化し、このスラリー燃料を前記ガス化炉に導入してガス化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨芥ごみ、下水汚泥等の低カロリー廃棄物をメタン発酵処理する低カロリー廃棄物処理ラインと、都市ごみ、産業廃棄物等の高カロリー廃棄物にガス化、焼却等の熱処理を施す高カロリー廃棄物処理ラインとからなる複合廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策やエネルギの安定供給の確保、地域分散型電源の確保といった観点からバイオマスという再生可能でクリーンなエネルギ源が注目されている。また、廃棄物処理問題の顕在化に伴い、資源を有効利用し循環型社会を構築することにより環境保全及び省資源化を図ることが推奨されており、農林水産資源、有機性廃棄物など生物由来の有機性資源であるバイオマスを、エネルギ源や工業原料として総合的に利活用する技術が要望されている。
バイオマスをエネルギ源や工業原料に転換する技術としては、メタン発酵処理、直接燃焼発電、炭化ガス化発電等が知られている。
【0003】
図7に、特許文献1(特開2003−275722号公報)等に記載される従来の有機系廃棄物(バイオマス)の処理方法を示す。
厨芥ごみ、下水汚泥等の高含水率の低カロリーごみは、メタン発酵(80)により有機物を低分子化した後、発生した消化汚泥を脱水(81)し、脱水廃液は生物処理(82)して窒素化合物及びBODを分解し、廃液中の懸濁物を凝集沈殿(83)により凝集分離し、処理水は高度処理設備等へ送られて浄化された後に放流する。また、前記メタン発酵(80)にて発生したバイオガスを利用してガスエンジン発電機等の発電設備により発電(84)して電力を回収する。
【0004】
都市ごみや産業廃棄物等の高カロリーごみは、ガス化炉によりガス化(85)し、生成したガス化ガスはボイラ(86)にて燃焼させる。さらに該ボイラ(86)にて蒸気を生成し、この蒸気を利用して蒸気タービン発電機により発電(87)して電力を回収する。これらの発電した電力はシステム内で利用、又は他の産業へ売電される。前記低カロリーごみのメタン発酵残渣及び凝集沈殿残渣は高カロリーごみとともにガス化処理する。また、ボイラ(86)から排出される燃焼排ガスは集塵等の排ガス処理(88)を行なった後に大気放出される。さらに、低カロリーごみのメタン発酵(80)により発生したバイオガスをガス化(85)に供給し、外部燃料の供給を低減するようにしている。
【0005】
このように従来の有機系廃棄物の処理では、バイオマスの利活用に際しては電力利用が中心であった。しかし、バイオマスにより発電した電力は非常に安価で、且つ他の場所で利用するには電力託送費が高いという問題があり、売電を目的とした発電は殆どなされていないのが実状であった。また、自家託送する場合にも莫大なインフラ費用を必要とする。さらに、エネルギー回収形態を電力とした場合、安定に貯蔵することが困難であり、エネルギの有効利用が図りきれていなかった。
また、メタン発酵により得られたバイオマスを基に発電を行なう場合、メタン発酵が生物処理であることから日変動、季節変動が大きく、安定的に発電することができないという問題があった。
【0006】
一方、廃棄物や固体燃料等のバイオマスを原料として液体燃料を製造する液体燃料合成システムが特許文献2(特開2003−171675号公報)に開示されている。
特許文献2には、廃棄物を流動床ガス化炉にてガス化して水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスを生成し、該生成ガスを用いてメタノール、ジメチルエーテル、ガソリン、灯油、軽油等の炭化水素液体燃料を合成する方法が記載されている。この液体燃料の合成プロセスは、水素と一酸化炭素を主成分とするガスを反応に適した温度、圧力とし、触媒の存在下で合成反応させることにより得られる。この合成反応は、例えばメタノール合成反応、DME(ジメチルエーテル)合成反応、FT反応(フィッシャー・トロプシュ)等が挙げられる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−275722号公報
【特許文献2】特開2003−171675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1等に記載されるように、従来の複合廃棄物処理システムではバイオマスの利活用に際しては電力利用が中心であったが、バイオマスにより発電した電力は非常に安価で、且つ他の場所で利用するには電力託送費が高いという問題があった。また、エネルギー回収形態を電力とした場合、安定に貯蔵することが困難であり、エネルギの有効利用が図りきれていないという問題も有していた。
また、特許文献2に記載の廃棄物の液体燃料化合成システムは、単に廃棄物から液体燃料を製造する技術であり、廃棄物処理における生成物の有効利用については考慮されておらず、廃棄物の循環利用を目的とするものではない。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、高カロリー廃棄物を熱処理する高カロリー廃棄物処理ラインと、低カロリー廃棄物をメタン発酵する低カロリー廃棄物処理ラインとからなる複合廃棄物処理システムを構築するにあたって、これらの処理系統にて発生する生成物を有効利用し、環境保全の観点から資源の有効利用及び排出物の減量化が可能である複合廃棄物処理システムを提供することを目的とし、特にガス化処理若しくはメタン発酵処理にて発生したガスを貯蔵安定性、輸送性の良好なエネルギーに転換することが可能な複合廃棄物処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
第1の発明として、低カロリー廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽を備えた低カロリー廃棄物処理ラインと、高カロリー廃棄物をガス化するガス化炉を備えた高カロリー廃棄物処理ラインと、からなる複合廃棄物処理システムにおいて、
前記ガス化炉にて発生したガス化ガスを精製するガス精製装置と、該精製したCO、Hを主成分とする精製ガスから液体燃料を合成する液体燃料合成装置と、を設けるとともに、前記メタン発酵槽にて発生したバイオガスを前記ガス化炉に助燃剤として送給することを特徴とする。
尚、本発明において、前記ガス化処理ラインの廃熱により水蒸気を製造し、該水蒸気を利用した蒸気タービン発電機により発電を行い、電力を生成するようにしても良い。
【0011】
本発明によれば、従来の複合廃棄物処理システムのように電力の生成のみならず、廃棄物から液体燃料を生成することにより転換エネルギーを安定して貯蔵することができ、また輸送性も向上する。
また、前記バイオガスを前記ガス化炉の助燃剤として利用することにより、外部からの助燃剤の供給量を低減若しくは皆無とすることができ、且つバイオガスの有効利用、廃棄物量の低減が可能となる。
【0012】
また、前記メタン発酵槽にて発生したバイオガスからCOを分離回収するガス分離装置を設け、前記COを前記ガス化炉に流動化ガスとして導入することを特徴とする。
このガス分離装置としては、例えばPSA(圧力スイング吸着法)、VPSA(真空圧力スイング吸着法)等を利用することが好適である。
さらに、前記メタン発酵槽にて生じた発酵液を廃水処理する廃水処理装置を設け、該廃水処理後の発酵液を加熱して生成した水蒸気を前記ガス化炉にガス化剤として導入することを特徴とする。
これらの発明によれば、前記メタン発酵槽にて発生したバイオガス、処理液を有効利用することができ、且つ外部からの流動化ガス又はガス化剤の供給量を低減若しくは皆無とすることができ、資源の循環サイクルが形成できる。
また、前記高カロリー廃棄物を炭化処理する炭化炉を設け、該炭化炉にて製造した炭化物を前記ガス化炉に導入してガス化することを特徴とする。このとき、木質系廃棄物の発生地域に前記炭化炉を設け、前記木質系廃棄物を原料として前記炭化炉により製造した炭化物を前記ガス化炉に輸送することが好ましい。
本発明によれば、廃棄物(木質系廃棄物を含む)を炭化することにより、減容化を図ることができるため、輸送性が向上し、広域に分散する廃棄物であっても集約処理が容易となる。また系内でエネルギーを循環することが可能となる。
【0013】
また、前記高カロリー廃棄物を炭化処理する炭化炉と、該炭化炉にて生成した炭化物を液媒体と混合してスラリー化するスラリー燃料製造装置と、を設け、該スラリー燃料製造装置にて得られたスラリー燃料を前記ガス化炉に導入してガス化することを特徴とする。
このとき、木質系廃棄物の発生地域に前記炭化炉と前記スラリー燃料製造装置を設け、前記木質系廃棄物を原料として前記炭化炉及び前記スラリー燃料製造装置により得られたスラリー燃料を前記ガス化炉に輸送することが好ましい。
本発明によれば、廃棄物(木質系廃棄物を含む)をスラリー化することにより輸送性が向上し、広域に分散する廃棄物であっても集約処理が容易となる。また系内でエネルギーを循環することが可能となる。
【0014】
さらに、前記高カロリー廃棄物を焼却処理する焼却炉と、該焼却炉の排ガスから廃熱回収するボイラと、を設け、該ボイラにて生成した水蒸気を前記ガス化炉にガス化剤として導入することを特徴とする。
本発明のように、ボイラを備えた焼却炉を併設し、該ボイラにて生成した水蒸気をガス化剤とすることにより、水蒸気の予熱コストを削減することができる。
【0015】
また、第2の発明として、低カロリー廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、該メタン発酵槽にて発生したバイオガスを精製するガス精製装置と、を備えた低カロリー廃棄物処理ラインと、
高カロリー廃棄物に焼却、ガス化等の加熱処理を施す熱処理炉を備えた高カロリー廃棄物処理ラインと、からなる複合廃棄物処理システムにおいて、
前記メタン発酵槽にて発生したバイオガスの少なくとも一部をCO、Hを主成分とする改質ガスに改質する改質装置と、該改質ガスから液体燃料を合成する液体燃料合成装置と、を設けるとともに、前記バイオガスの他の一部を前記熱処理炉に助燃剤として送給することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前記第1の発明と同様に、廃棄物から液体燃料を生成することにより、転換エネルギーを安定して貯蔵することができ、また輸送性も向上する。また、前記バイオガスを前記熱処理炉の助燃剤として利用することにより、外部からの助燃剤の供給量を低減若しくは皆無とすることができ、且つバイオガスの有効利用、廃棄物量の低減が可能となる。尚、前記熱処理炉としては、焼却炉、溶融炉、ガス化炉等を用いることができる。
また、メタン発酵のような生物処理で生成したエネルギーであっても安定貯蔵が可能であるため、日変動や季節変動に左右されず安定した燃料の供給が可能となる。
【0017】
また、前記熱処理炉の高温排ガスを前記改質装置に送給し、該高温排ガスを前記改質装置の加熱に用いることを特徴とする。
さらに、前記熱処理炉の廃熱を用いて水蒸気を生成するボイラを設け、前記メタン発酵槽から排出され、廃水処理した処理液を前記ボイラに導入して水蒸気を生成し、該生成した水蒸気を前記改質装置に改質剤として導入することを特徴とする。
これらの発明のように、前記熱処理炉の廃熱、前記メタン発酵槽の発酵液を改質装置にて利用することにより、資源の循環サイクルが形成され、廃棄物の有効利用、省資源化が達成できる。
【0018】
さらにまた、前記ガス精製装置が、原料ガスを通流させる吸着塔と、該吸着塔内を減圧排気する減圧排気手段と、該吸着塔内部に配設された吸着剤と、を備え、圧力スイング吸着法により原料ガス中に含有される不純物ガスを選択的に吸着、分離し、目的とする精製ガスを高純度で回収する装置であることを特徴とする。
このように、圧力スイング吸着法を用いて目的とするガス成分を選択的に分離、回収することにより、高純度で高品質のガスを回収することができる。
【0019】
また、前記液体燃料製造装置でメタノールを製造する場合であって、該製造したメタノールをメタン発酵液の脱窒処理の炭素源として生物処理槽に導入することを特徴とする。
これによれば、前記メタノールを系内で有効利用することができ、且つメタン発酵において外部からの炭素源の供給量を低減若しくは皆無とすることができ、コスト削減が期待できる。
【0020】
また、前記液体燃料合成装置にて製造した液体燃料を輸送する輸送手段を備えた複合廃棄物処理システムであって、該輸送手段の輸送用燃料として前記液体燃料を用いることを特徴とする。
これにより、システム内で製造したエネルギーを他の離れた地域に安価で供給することができるようになり、廃棄物から転換したエネルギーの需要拡大が期待できる。
【発明の効果】
【0021】
以上記載のごとく本発明によれば、低カロリー廃棄物処理ラインと高カロリー廃棄物処理ラインとを有機的に結び付け、夫々の処理にて発生した熱、廃液、メタンガス、二酸化炭素、水蒸気、炭化物等の生成物を有効利用することにより、資源の循環サイクルが形成され、省資源化及び廃棄物排出抑制が達成される。
さらに、ガス化処理若しくはメタン発酵処理にて発生したガスを原料として液体燃料を製造することにより、電力を生成する場合に比べて貯蔵安定性、輸送性が飛躍的に向上し、効率的なエネルギーの供給が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施例に係るシステムは、廃棄物をその性状、種類によって2以上に分別して夫々処理を行うようにした、異なる処理系統が2以上組み合わされた複合廃棄物処理システムである。
【0023】
本実施例において処理対象とされる廃棄物はバイオマスであり、紙ごみ等の一般廃棄物及び廃プラスチック、廃油等の産業廃棄物からなる高カロリー廃棄物、し尿、下水汚泥、家畜糞尿、食品系廃棄物等の含水率の高い低カロリー廃棄物などが挙げられる。
図1は本発明の実施例1に係る複合廃棄物処理システムのフロー図、図2は本発明の実施例2に係る複合廃棄物処理システムのフロー図、図3は図2に示した実施例2に係るシステムの炭化物処理ラインを示すフロー図、図4は本発明の実施例3に係る複合廃棄物処理システムのフロー図、図5は図4に示した実施例3に発電設備を設けた場合の複合廃棄物処理システムのフロー図、図6は本発明の実施例4に係る複合廃棄物処理システムのフロー図である。
【実施例1】
【0024】
図1に示されるように、本実施例1に係る複合廃棄物処理システムは、低カロリーごみ10をメタン発酵処理してバイオガスを生成する低カロリーごみ処理ラインと、高カロリーごみ20をガス化して生成したガス化ガスから液体燃料を回収する高カロリーごみ処理ラインと、から構成される。
前記低カロリーごみ処理ラインは、低カロリーごみ10が供給されるメタン発酵槽11と、該メタン発酵槽にて生じた消化汚泥が導入される脱水機12と、脱水により生じた廃液13が導入される排水処理装置15と、高度処理装置16と、を備えている。
前記高カロリーごみ処理ラインは、高カロリーごみ20が供給されるガス化炉21と、ガス化により生成したCO、Hを主成分とするガス化ガス22が導入されるガス精製装置24と、精製ガスが導入されるメタノール合成装置25と、該メタノール合成装置25にて合成されたメタノールが導入されるDME合成装置27と、前記メタノール合成装置25で生成されたメタノール26及び前記DME合成装置27で合成されたDME(ジメチルエーテル)が貯留される液体燃料タンク29と、を備えている。
【0025】
前記メタン発酵槽11は、中温(30〜40℃)若しくは高温(50〜60℃)で且つ嫌気性条件に維持され、槽内に供給された低カロリーごみ10をメタン菌の分解作用により低分子化し、消化汚泥と、メタン及び二酸化炭素を主成分とするバイオガス19を生成する。
前記排水処理装置15は、生物処理装置や凝集沈殿処理装置等であり、生物処理装置は微生物の分解作用により廃液13中の汚濁物質を除去する装置であれば特に限定されないが、特に生物学的硝化脱窒法により廃液13に含有される窒素化合物及び有機物を除去する装置であることが好ましい。また、凝集沈殿装置は、凝集剤の添加により廃液13に含有される溶解性汚濁物質をフロック化して除去する。
前記高度処理装置16は、活性炭吸着塔やオゾン処理、膜分離等であり、微量有害成分、色度成分塩類を除去する。
【0026】
前記ガス化炉21は、高カロリーごみ20を加熱してガス化する装置であり、その構造は限定されるものではないが、特に噴流床ガス化炉が好適である。
該ガス化炉21では、高カロリーごみ20が供給されるとともに酸素、水蒸気等のガス化剤が供給され、800〜1100℃の温度域で下記式(1)に示す燃焼反応及び下記式(2)で示す水性ガス化反応(改質反応)を起こし、一酸化炭素、水素、メタン、エタン、二酸化炭素等を含むガス化ガスと、タールや煤などの未燃固形物と、飛灰と、不燃物とを生じ、また、メタン、エタン、タールなどの炭化水素や煤などの未燃固形分は、下記式(3)で示す改質反応を起こし、一酸化炭素、水素を主成分とするガス化ガス22を生成する。
C+O → CO+熱 …(1)
C+HO → CO+H …(2)
+mHO → mCO+(m+n/2)H …(3)
また、該ガス化炉21では、前記メタン発酵槽11にて発生したメタンガスをガス化の助燃剤として利用することが好ましい。さらに、該ガス化炉21が噴流床ガス化炉である場合、前記メタン発酵槽11にて発生したメタンガスをCOとCHとにガス分離し、該COを前記ガス化炉21の下方より導入し、流動化ガスとして用いることが好ましい。さらにまた、前記メタン発酵槽11にて生じた廃液13を排水処理、高度処理した後にこの処理水17を加熱して水蒸気を生成し、該水蒸気を前記ガス化炉21に導入し、ガス化剤として用いることが好ましい。
【0027】
前記ガス精製装置24は、ガス化ガス22中の煤や未燃固形分を除去し、ガス化ガス中の水溶性成分、余剰水分及び触媒被毒物を除去する装置である。
前記メタノール合成装置25は、メタノール合成反応圧(圧力3〜8MPa)で且つメタノール合成温度(180〜300℃)まで昇温昇圧された前記ガス化ガス22を、メタノール合成用触媒(Cu系触媒等)を充填した合成塔にて合成反応を起してメタノールを製造する装置である。前記合成塔の後段には蒸留塔が設けられ、該蒸留塔にて粗メタノールを蒸留して低沸点成分及びパラフィン類を分離し、製品メタノール26を精製する。
【0028】
また、本実施例では前記メタノール合成装置25の他にDME合成装置27を具備する構成としても良く、前記メタノール合成装置25にて生成したメタノールからの脱水反応によりDMEを合成するようにしても良い。前記DME合成装置27では、DME合成反応に適した温度(240〜320℃)に昇温したメタノールを、DME合成用触媒(アルミナ系等)を充填した反応塔に供給し、DME合成反応によりDMEを合成し、さらに製造した粗DMEを蒸留して製品DMEを製造する。このとき、前記メタノール合成装置25と前記DME合成装置27とが一体型となった装置を用いることもできる。
前記メタノール合成装置25、前記DME合成装置27は他の液体燃料製造装置と代替することもできる。この液体燃料製造装置は、ガス化ガスを原料として液体燃料を製造する装置であれば特に限定されない。例えば、FT(Fischer-Tropsch)製造装置が挙げられる。
【0029】
前記FT製造装置はH、COからなる精製ガスから液体炭化水素燃料を製造する装置であり、精製ガスから液状炭化水素を製造する方法、又は精製ガスからメタノールを経て液状炭化水素を製造する方法等があり、本実施例では何れの方法を用いることもできる。その製造方法の一例として、まず前記ガス精製装置24で精製したH、COからなる精製ガスから水素分離器にて水素を分離し、FT合成反応に適したH/COモル比に調整し、この調整ガスをFT合成反応に適した温度まで昇温した後、FT合成反応触媒(鉄系触媒等)を充填した反応器に導入し、180〜350℃、22〜25atmの条件下でFT合成反応させて液体炭化水素燃料を製造する。このFT製造では、液体燃料からワックスまでの多様な製品を製造できる。例えば、前記反応器にて180〜250℃、25atmの条件下でFT合成反応を行なうことによりワックスを製造することができ、また330〜350℃、22atmの条件下でFT合成反応を行なうことによりディーゼル油を製造することができる。
【0030】
前記液体燃料タンク29は、メタノール26、DME28等の液体燃料を一時的に貯留するタンクである。
このタンクに貯留された液体燃料は、輸送車等の輸送手段により各地の液体燃料利用先に輸送されるが、このとき、該輸送手段の輸送用燃料としてこの液体燃料を利用することが好ましい。また、前記液体燃料のうち、前記メタノール26はメタン発酵液の脱窒処理の炭素源として排水処理装置15に導入し、利用することもできる。
【0031】
次に、本実施例に係る処理方法を説明する。
まず、低カロリーごみ10はメタン発酵槽11に送給され、該メタン発酵槽11にてメタン発酵されてバイオガスと消化汚泥に分解され、該バイオガスは不純物を除去されたメタンガス19としてシステム内で場内利用される。好適なメタンガス19の利用先としては、高カロリーごみを処理するガス化炉21の助燃剤が挙げられる。また、前記バイオガスをCOとCHとにガス分離し、該COをガス化炉21の流動化ガスとして用いることもできる。
一方、前記メタン発酵により発生した消化汚泥は、脱水機12にて脱水される。脱水廃液13は生物処理を含む排水処理装置15にて有機物、窒素化合物等を分解された後に高度処理装置16にて処理され、処理水17として放流される。このとき、該処理水17を加熱して水蒸気を生成し、前記ガス化炉21のガス化剤として用いることが好適である。また、前記脱水器12から排出した残渣(脱水汚泥)14、凝集沈殿装置16にて分離された残渣18は、高カロリーごみ20と混合されて処理される。
【0032】
高カロリーごみ20は、ガス化炉21にて前記メタンガス19を助燃剤としてガス化され、CO、Hを主成分とするガス化ガス22を生成する。該ガス化ガス22はガス精製装置24に導入され、ここでガス中のCO、H以外の不純物を除去され精製ガスとされた後にメタノール合成装置25に送給される。メタノール合成装置25では、CO/Hモル比を制御された精製ガスからメタノール合成反応によりメタノール26が生成される。メタノール26はこのまま液体燃料として利用しても良いし、またDME製造装置27の原料として用い、DME合成反応によりDME28を製造しても良い。
このようにして製造されたメタノール26、DME28は一旦液体燃料タンク29に貯留され、該液体燃料を輸送用燃料とする輸送車により各地の利用先まで輸送される。また、メタノール26は、前記排水処理装置15に導入して炭素源として利用することもできる。
【0033】
本実施例によれば、低カロリーごみ10の処理ラインと高カロリーごみ20の処理ラインとを有機的に結び付け、夫々の処理にて発生した熱、廃液、メタンガス、二酸化炭素、水蒸気等の生成物を有効利用することにより、資源の循環サイクルが形成され、省資源化及び廃棄物排出抑制が達成される。
さらに、ガス化炉21若しくはメタン発酵槽11にて発生したガスを原料として液体燃料を製造することにより、電力を生成する場合に比べて貯蔵安定性、輸送性が飛躍的に向上し、効率的なエネルギーの供給が可能となる。
【実施例2】
【0034】
図2に本実施例2に係る複合廃棄物処理システムのフロー図を示す。尚、以下の実施例2〜4において、上記した実施例1と同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2に係る複合廃棄物処理システムは、低カロリーごみ10をメタン発酵処理してバイオガスを生成する低カロリーごみ処理ラインと、高カロリーごみ20をガス化して生成したガス化ガスから液体燃料を回収する高カロリーごみ処理ラインと、木質系廃棄物を炭化して炭化物を生成する木質系廃棄物処理ラインと、から構成される。
前記木質系廃棄物とは、間伐材、伐採木材、剪定枝、製材廃材、建築廃材等の木材加工の過程で発生した木質材をいう。
【0035】
前記低カロリーごみ処理ラインは、低カロリーごみ10が供給されるメタン発酵槽11と、該メタン発酵槽にて生じた消化汚泥が導入される脱水機12と、脱水により生じた廃液13が導入される排水処理装置15と、高度処理装置16と、を備えている。
前記高カロリーごみ処理ラインは、高カロリーごみ20が供給されるガス化炉21と、ガス化により生成したCO、Hを主成分とするガス化ガスが導入されるガス精製装置24と、精製ガスが導入されるメタノール合成装置25と、該メタノール合成装置25にて生成されたメタノールが導入されるDME合成装置27と、前記メタノール合成装置25で生成されたメタノール26及び前記DME合成装置27で合成されたDMEが貯留される液体燃料タンク29と、を備えている。
【0036】
前記木質系廃棄物処理ラインは、木質系バイオマスを炭化処理する炭化炉31を備えている。
前記炭化炉31は、木質系廃棄物30を無酸素雰囲気若しくは低酸素雰囲気下で加熱し、炭化物14を生成する装置であり、公知の各種装置を採用可能であって特に限定されるものではないが、特に外部加熱式のロータリーキルンが好ましい。この場合ロータリーキルンは、バイオマスが供給されて熱分解反応がなされる熱分解ドラムと、その周囲に加熱ガスが導入される外殻とを有し、間接加熱により炉内を300〜800℃、好ましくは400〜550℃に維持し、木質系廃棄物30を熱分解し、炭化物32を生成する。このとき、同時に一酸化炭素、水素を主成分とする分解ガスが発生するが、これは前記ガス精製装置24に送給して有効利用することが好ましい。
尚、前記炭化炉31は、剪定枝、間伐材が生じる山間部に設置されることが好適である。
【0037】
次に、本実施例に係る処理方法を説明する。
本実施例2では、低カロリーごみ10及び高カロリーごみ20は上記した実施例1と同様の処理を行い、一方、前記木質系廃棄物30は炭化炉31にて炭化処理され、炭化物32として前記ガス化炉21に導入され、ガス化処理された後に液体燃料の製造が行なわれる。
本実施例の好ましい形態は、図3に示されるように、前記炭化炉31が間伐材や剪定枝が発生する山間部に設置され、前記間伐材や剪定枝等の木質系廃棄物30を現地にて炭化処理し、生成した炭化物32をさらにスラリー燃料製造装置210にて重油、水等の液媒体と混合してスラリー燃料32’を製造し、ガス化炉21に輸送する。
このように炭化物32単独や炭化物32をスラリー化して集約し、該集約したスラリー燃料32’として輸送することにより、輸送性、貯蔵性が向上し、集約処理が容易となる。
【0038】
前記炭化物32及びスラリー燃料32’は、ガス化炉21にてガス化処理され、発生したガス化ガスは改質装置211に送給される。該改質装置211では水性ガス化反応により炭化水素系ガスがCO、Hガスに転換され、ここで生成された改質ガスは熱回収装置212に導入されて熱回収を行なった後、PSA装置214に送給される。前記熱回収装置212では、前記改質ガスから回収した廃熱から蒸気が生成され、該蒸気を利用して蒸気タービン発電機213により発電される。また、前記ガス化炉21の高温排ガスから廃熱回収するボイラ217を設けても良く、前記メタン発酵槽11からの処理水17を該ボイラ217に導入して水蒸気を生成し、該水蒸気を改質剤として前記改質装置211に導入するようにしても良い。さらにまた、前記ガス化炉21の高温排ガスを前記改質装置211に導入して、その廃熱を用いて改質装置211を加熱するようにしても良い。
【0039】
発電した電力は、後段のPSA装置214に送電され、ここで利用されることが好ましい。一例として前記PSA装置214の具体的構成は、吸着剤を充填した吸着塔と、原料ガスを加圧導入するためのブロワと、吸着塔内の圧力を調整する真空ポンプと、を備え、ブロワにより吸着塔内に改質ガスが導入され、吸着剤によりHO、N、CO等の除去すべき不純物ガスのみが選択的に吸着分離される結果、目的とするCO、Hの高純度ガスを回収することができる。運転にあたって、前記吸着剤が吸着ガスで飽和された時点で、真空ポンプにより脱離排気され、吸着剤が再生されるようになっている。
【0040】
前記PSA装置214では、PSA(圧力スイング吸着法)により改質ガスからCO、Nを同時に分離除去し、高濃度のCO、Hからなる精製ガスが生成される。さらに、精製ガスは液体燃料合成装置215に導入され、ここでメタノール、DME、ディーゼル油、ガソリン、ワックス等の液体燃料に転換され、さらに液体燃料タンク216に貯留される。
このように、ガス精製装置としてPSA装置214を利用することによりCO、Nを同時に除去することができ、設備コストを安価にできる。また、前記熱回収装置212で発電した電力をPSA装置214に利用することで、外部から電力を供給する必要がなくなる。
【実施例3】
【0041】
図4に本実施例3に係る複合廃棄物処理システムのフロー図を示す。
本実施例3に係る複合廃棄物処理システムは、低カロリーごみ10をメタン発酵処理してバイオガスを生成する低カロリーごみ処理ラインと、高カロリーごみ20をガス化して生成したガス化ガスから液体燃料を回収する高カロリーごみ処理ラインと、産業廃棄物40を焼却処理する産業廃棄物処理ラインと、から構成される。本実施例において産業廃棄物処理ラインで処理対象とされる廃棄物40は、不燃物混入が大きい廃棄物又は粗大廃棄物等のように、ガス化処理、メタン発酵処理に不適当な廃棄物であり、例えば建築廃材、シュレッダダスト等の高カロリー廃棄物が挙げられる。
【0042】
前記低カロリーごみ処理ラインは、低カロリーごみ10が供給されるメタン発酵槽11と、該メタン発酵槽にて生じた消化汚泥が導入される脱水機12と、脱水により生じた廃液13が導入される排水処理装置15と、高度処理装置16と、を備えている。
前記高カロリーごみ処理ラインは、高カロリーごみ20が供給されるガス化炉21と、ガス化により生成したCO、Hを主成分とするガス化ガスが導入されるガス精製装置24と、精製ガスが導入されるメタノール合成装置25と、該メタノール合成装置25にて生成されたメタノールが導入されるDME合成装置27と、前記メタノール合成装置25で生成されたメタノール26及び前記DME合成装置27で合成されたDMEが貯留される液体燃料タンク29と、を備えている。
【0043】
前記産業廃棄物焼却処理ラインは、産業廃棄物40を焼却処理する焼却炉41と、該焼却41からの排ガスが導入され、廃熱回収するボイラ43と、排ガス処理設備44と、を備えている。
前記焼却炉41は、公知の各種装置を採用可能であって特に限定されるものではなく、例えばストーカ炉、循環流動床炉、気泡流動床炉、ロータリーキルン炉等が用いられる。
【0044】
次に、本実施例に係る処理方法を説明する。
本実施例3では、低カロリーごみ10及び高カロリーごみ20は上記した実施例1と同様の処理を行い、一方、前記産業廃棄物40は焼却炉41にて焼却処理され、焼却灰42は不図示の灰処理設備に送られる。前記焼却炉41にて発生した排ガスはボイラ43に送給され、該ボイラ43にて廃熱回収されて水蒸気46が生成される。この水蒸気46は前記ガス化炉21に送られ、ガス化剤として利用することが好ましい。また、ボイラ43から排出された排ガスは排ガス処理設備44にて無害化され、排ガス45として大気放出される。
このように、建築廃材等の産業廃棄物を焼却炉にて処理し、ボイラ43により熱回収を行い、ガス化炉21の予熱水蒸気として利用することによりコスト削減が達成できるとともに、廃棄物中の有価物を有効利用できる。
【0045】
また、本実施例3に発電設備を加えたシステムを図5に示す。
図5に示されるように、前記ボイラ43で生成した水蒸気46を蒸気タービン47に送給し、該水蒸気46で蒸気タービン47を回転させ、これに連結された発電機15を駆動することにより電力48を発生させる。
また、前記メタン発酵槽11にて発生したバイオガス19をガス精製装置51に送給し、該ガス精製装置51にてCO等の不純物ガスを除去し、精製バイオガスを燃料としてガスエンジン発電機、又はガスタービン発電機52を駆動させて発電し、電力53を回収するようにしても良い。
このとき、前記発電機は、上記した他にも、燃料電池式発電装置、ガスエンジン−蒸気タービン式発電装置、ガスタービン−蒸気タービン式発電装置、燃料電池−スチームタービン式発電装置、燃料電池−ガスエンジン−スチームタービン式発電装置等にすることも可能である。
この発電設備により回収した電力は系内利用することにより、系外からの電力コストを削減することができる。また、廃棄物を有価エネルギーに転換して有効利用することができる。
【実施例4】
【0046】
図6に本実施例4に係る複合廃棄物処理システムのフロー図を示す。
本実施例4に係る複合廃棄物処理システムは、低カロリーごみ10をメタン発酵処理し、得られたバイオガスから液体燃料を製造する低カロリーごみ処理ラインと、高カロリーごみ20を焼却処理する高カロリーごみ処理ラインと、から構成される。
前記高カロリーごみ処理ラインは、高カロリーごみ20が供給される焼却炉70と、焼却炉70からの排ガスが導入されて廃熱回収するボイラ71と、ボイラ71で生成した水蒸気を利用して発電を行なう蒸気タービン発電機73と、を備え、前記ボイラ71からの高温排ガス72は後述する改質装置61、液体燃料合成装置63に送給し、廃熱利用する。または、排ガス処理された後、大気放出される。また、前記ボイラ71で生成した水蒸気の一部は後述する改質装置61に送給される。
前記低カロリーごみ処理ラインは、低カロリーごみ10が供給されるメタン発酵槽11と、該メタン発酵槽にて生じた消化汚泥が導入される脱水機12と、脱水により生じた廃液13が導入される生物処理装置15と、生物処理後の廃液が導入される凝集沈殿装置16と、また、前記メタン発酵槽11にて発生したバイオガスが導入される脱硫装置60と、脱硫後のバイオガスが導入される改質装置61と、改質ガスを冷却するガス冷却塔62と、冷却した改質ガスが導入される液体燃料合成装置63と、合成された液体燃料が貯留される液体燃料タンク64と、を備えている。
【0047】
次に、本実施例4に係る処理方法を説明する。
まず、高カロリーごみ20は焼却炉70にて焼却処理され、該焼却炉70からの排ガスはボイラ71に導入されて廃熱回収された後、高温排ガス72は、改質装置61、液体燃料合成装置63に送給し、廃熱利用するか、排ガス処理された後、大気放出される。
前記ボイラ71にて生成された水蒸気は蒸気タービン発電機73に送給され、ここで発電に利用され、発電電力74は場内利用される。また、前記水蒸気の一部は前記改質装置61に送給され、改質剤として用いられる。
【0048】
低カロリーごみ10はメタン発酵槽11に送給され、該メタン発酵槽11にてメタン発酵されてバイオガスと消化汚泥に分解され、該バイオガスは不純物を除去されたメタンガス19としてシステム内で場内利用される。好適なメタンガス19の利用先としては、高カロリーごみを処理する焼却炉70の助燃剤が挙げられる。
一方、前記メタン発酵により発生した消化汚泥は、脱水機12にて脱水される。脱水廃液13は排水処理装置15にて有機物、窒素化合物等を分解された後に高度処理装置16にて処理され、処理水17は放流される。このとき、好適には高度処理した処理水の一部17は水とともに前記ボイラ71に送給し、前記焼却炉70の廃熱により水蒸気を生成して前記改質装置61に導入し、改質剤として用いる。前記脱水器12から排出した残渣(脱水汚泥)14、凝集沈殿装置16にて分離された残渣18は、高カロリーごみ20と混合されて処理される。
【0049】
また本実施例4では、前記メタン発酵槽11にて発生したバイオガスを脱硫装置60にて脱硫し、不純物を除去した後に改質装置61に送給し、Ni系金属触媒の存在下で180〜300℃、6〜8atmの条件下で改質反応することによりCO、Hを主成分とする改質ガスに改質し、さらにガス冷却塔62にて該改質ガスを冷却した後、液体燃料合成装置63に供給する。該液体燃料合成装置63では、前記改質ガスを原料として、前記実施例1に記載したメタノール合成反応、DME合成反応、FT合成反応によりメタノール、DME、その他の液体炭化水素燃料等の液体燃料を製造する。製造した液体燃料は液体燃料タンク64に貯留される。
また、本実施例では前記脱硫装置60としてPSA装置を用いることが好ましい。PSA装置の具体的構成は、前記実施例2に記載した構成と略同様のものである。このようにPSA装置を用いることにより、バイオガスから硫化水素とCOを同時に除去することができ効率的である。
【0050】
さらに、前記前記改質装置61と蒸留装置の熱源として、前記改質ガスの廃熱若しくは余剰のバイオガスを燃焼した燃焼熱(1100℃程度)を用いても良いが、好適には前記ボイラ71からの高温排ガス72を用いることが好ましい。これにより、本システム内の燃料は自給できるようになり、自立型プロセスとすることができる。
本実施例によれば、廃棄物から貯蔵性、輸送性の良い汎用性に優れた液体燃料を得ることができ、廃棄物処理のみならず地球温暖化対策にも貢献できるシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1に係る複合廃棄物処理システムのフロー図である。
【図2】本発明の実施例2に係る複合廃棄物処理システムのフロー図である
【図3】図2に示した実施例2に係るシステムの炭化物処理ラインを示すフロー図である。
【図4】本発明の実施例3に係る複合廃棄物処理システムのフロー図である。
【図5】図4に示した実施例3に発電設備を設けた場合の複合廃棄物処理システムのフロー図である。
【図6】本発明の実施例4に係る複合廃棄物処理システムのフロー図である。
【図7】従来の廃棄物処理システムを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0052】
10 低カロリーごみ
11 メタン発酵槽
20 高カロリーごみ
21 ガス化炉
22 ガス化ガス
24 ガス精製装置
25 メタノール合成装置
26 メタノール
27 DME合成装置
28 DME
30 木質系廃棄物
31 炭化炉
32’ スラリー燃料
40 産業廃棄物
61 改質装置
63 液体燃料合成装置
210 スラリー燃料製造装置
211 改質装置
212 熱回収装置
214 PSA装置
215 液体燃料合成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低カロリー廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽を備えた低カロリー廃棄物処理ラインと、高カロリー廃棄物をガス化するガス化炉を備えた高カロリー廃棄物処理ラインと、からなる複合廃棄物処理システムにおいて、
前記ガス化炉にて発生したガス化ガスを精製するガス精製装置と、該精製したCO、Hを主成分とする精製ガスから液体燃料を合成する液体燃料合成装置と、を設けるとともに、前記メタン発酵槽にて発生したバイオガスを前記ガス化炉に助燃剤として送給することを特徴とする複合廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記高カロリー廃棄物を炭化処理する炭化炉を設け、該炭化炉にて製造した炭化物を前記ガス化炉に導入してガス化することを特徴とする請求項1記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記高カロリー廃棄物を炭化処理する炭化炉と、該炭化炉にて生成した炭化物を液媒体と混合してスラリー化するスラリー燃料製造装置と、を設け、該スラリー燃料製造装置にて得られたスラリー燃料を前記ガス化炉に導入してガス化することを特徴とする請求項1記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記メタン発酵槽にて生じた発酵液を廃水処理する廃水処理装置を設け、該廃水処理後の処理水を加熱して生成した水蒸気を前記ガス化炉にガス化剤として導入することを特徴とする請求項1記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項5】
前記高カロリー廃棄物を焼却処理する焼却炉と、該焼却炉の排ガスから廃熱回収するボイラと、を設け、該ボイラにて生成した水蒸気を前記ガス化炉にガス化剤として導入することを特徴とする請求項1記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項6】
低カロリー廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、該メタン発酵槽にて発生したバイオガスを精製するガス精製装置と、を備えた低カロリー廃棄物処理ラインと、高カロリー廃棄物に焼却、ガス化等の加熱処理を施す熱処理炉を備えた高カロリー廃棄物処理ラインと、からなる複合廃棄物処理システムにおいて、
前記メタン発酵槽にて発生したバイオガスの少なくとも一部をCO、Hを主成分とする改質ガスに改質する改質装置と、該改質ガスから液体燃料を合成する液体燃料合成装置と、を設けるとともに、前記バイオガスの他の一部を前記熱処理炉に助燃剤として送給することを特徴とする複合廃棄物処理システム。
【請求項7】
前記熱処理炉の高温排ガスを前記改質装置に送給し、該高温排ガスを前記改質装置の加熱に用いることを特徴とする請求項6記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項8】
前記熱処理炉の廃熱を用いて水蒸気を生成するボイラを設け、前記メタン発酵槽から排出され、廃水処理した処理水を前記ボイラに導入して水蒸気を生成し、該生成した水蒸気を前記改質装置に改質剤として導入することを特徴とする請求項6記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項9】
前記ガス精製装置が、原料ガスを通流させる吸着塔と、該吸着塔内を減圧排気する減圧排気手段と、該吸着塔内部に配設された吸着剤と、を備え、圧力スイング吸着法により原料ガス中に含有される不純物ガスを選択的に吸着、分離し、目的とする精製ガスを高純度で回収する装置であることを特徴とする請求項1若しくは6記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項10】
前記液体燃料製造装置でメタノールを製造する場合であって、該製造したメタノールをメタン発酵液の脱窒処理の炭素源として生物処理装置に導入することを特徴とする請求項1若しくは6記載の複合廃棄物処理システム。
【請求項11】
前記液体燃料合成装置にて製造した液体燃料を輸送する輸送手段を備えた請求項1若しくは6記載の複合廃棄物処理システムであって、該輸送手段の輸送用燃料として前記液体燃料を用いることを特徴とする複合廃棄物処理システム。
【請求項12】
前記メタン発酵槽にて発生したバイオガスからCOを分離回収するガス分離装置を設け、前記COを前記ガス化炉に流動化ガスとして導入することを特徴とする請求項1若しくは6記載の複合廃棄物処理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−205135(P2006−205135A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24396(P2005−24396)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】