説明

複合材料、発光素子、及び発光装置

【課題】種々の電極に対してホール注入障壁が実質的にない材料を提供する。また、これらの特性を有する上に、高い耐熱性を有する材料を提供する。さらに、このような複合材料を用いることにより、駆動電圧の低い発光素子および発光装置を提供する。
【解決手段】有機化合物と無機化合物とを含む複合材料であって、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極で挟んで測定した前記複合材料からなる薄膜層の電流−電圧特性が、下記式(1)に従う複合材料を作製する。また、これを用いて発光素子および発光装置を作製する。


(Jは電流密度、Vは電圧、φは前記複合材料におけるキャリア発生のための活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度、AおよびBはパラメータ、nは2以上10以下の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料であって、各種電極と良好な接触をとれる複合材料に関する。また、前記複合材料を電極に接して設けた電流励起型の発光素子に関する。また、前記発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物を用いた発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の有機化合物を含む層(発光層)を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子およびホールがそれぞれ発光層に輸送され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子およびホール)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0003】
なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能であり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。
【0004】
このような発光素子は通常、サブミクロン程度の薄膜で形成されるため、薄型軽量に作製できることが大きな利点である。また、キャリアが注入されてから発光に至るまでの時間はマイクロ秒程度あるいはそれ以下であるため、非常に応答速度が速いことも特長の一つである。これらの特性は、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。
【0005】
また、これらの発光素子は膜状に形成されるため、大面積の素子を形成することにより、面状の発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0006】
このように、発光性の有機化合物を用いた電流励起型の発光素子は、発光装置や照明等への応用が期待されているが、未だ課題も多い。その課題の一つとして、消費電力の低減が挙げられる。消費電力を低減するためには、発光素子の駆動電圧を低減することが重要な課題になる。電流励起型の発光素子は流れる電流量によって発光強度が決まるため、駆動電圧を低減するためには、低い電圧で多くの電流を流す必要がある。
【0007】
これまで、駆動電圧を低減させるための手法として、バッファ層を電極に接して設けるという試みがなされている。具体的には、陽極との界面に芳香族アミン化合物を用いたバッファ層を設けることにより、駆動電圧を低減できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1で用いられている芳香族アミン化合物は、HOMO準位の位置が高く、陽極を形成する電極材料の仕事関数に近い値を有するので、ホールの注入障壁を小さくすることができる。その結果、比較的低い電圧で電流を多く流すことができる。
【0008】
また、電子受容性の分子をホール輸送性の高分子材料に添加し、導電性を高くした層を陽極との界面に用いるという方法も報告されている(例えば、非特許文献2参照)。このような構成とすることでも、駆動電圧を低減することができる。
【非特許文献1】Y.Shirota、外7名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.65、807−809(1994)
【非特許文献2】A.Yamamori、外3名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.72、2147−2149(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1で述べられているようなホール注入障壁を小さくできる有機化合物は限られている上に、それらの材料は一般には耐熱性が高くないという問題がある。非特許文献2で述べられているような電子受容性の分子に関しても同様である。
【0010】
また、従来では、ホール注入障壁を小さくできる有機化合物を用いたとしても、ホール注入障壁を実質的に消失させることはできず、発光素子の電流−電圧特性は注入律速(すなわち、ショットキー注入機構が支配的な電流−電圧特性)となるため、駆動電圧のさらなる低減には限界があった。
【0011】
さらに、陽極として仕事関数の大きくない材料を用いた場合、そのホール注入障壁はより大きくなってしまうため、発光素子の駆動電圧の上昇を防ぐためには、陽極を形成する電極材料として仕事関数の高いものを用いなければならないという制限もあった。このことは即ち、仕事関数の大きくないアルミニウム等の汎用的な金属を陽極として用いることができないという問題に繋がる。
【0012】
そこで本発明では、電極からのホール注入障壁が実質的にない材料を提供することを課題とする。また、種々の電極に対してホール注入障壁が実質的にない材料を提供することを課題とする。また、これらの特性を有する上に、高い耐熱性を有する材料を提供することを課題とする。
【0013】
また、これらの材料を用いることにより、駆動電圧の低い発光素子および発光装置を提供することを課題とする。また、これらの材料と、汎用的な金属を組み合わせて用いることにより、安価な発光素子および発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、有機化合物と無機化合物とを複合した複合材料を発光素子の電極に接して設けることにより、課題を解決できることを見出した。この複合材料の特徴は、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極を用いて測定した時の電流−電圧特性が、不純物半導体的な挙動を示す電流(すなわち、温度が上がると流れやすくなるオーム電流)とトラップ電荷制限電流との足し合わせにより表される点である。
【0015】
このような電流−電圧特性を示す複合材料は、有機化合物のみからなる従来の材料とは異なり、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極に対してはホール注入障壁が実質的に存在しないことがわかった。また、無機化合物を複合しているため、高い耐熱性も有する。
【0016】
したがって本発明の構成は、有機化合物と無機化合物とを含む複合材料であって、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極で挟んで測定した前記複合材料からなる薄膜層の電流−電圧特性が、下記式(1)に従う複合材料である。
【0017】
【数2】

(Jは電流密度、Vは電圧、φは前記複合材料におけるキャリア発生のための活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度、AおよびBはパラメータ、nは2以上10以下の整数を表す。)
【0018】
なお、この時、前記φが0.01eV以上0.5eV以下であることが好ましい。また、電流−電圧特性を測定する際の前記薄膜層の膜厚は、10nm〜500nmであることが好ましい。
【0019】
また、前記無機化合物は、前記有機化合物に対して電子受容性を示すことが好ましい。特に、遷移金属酸化物は電子受容性の高いものが多く、中でも酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが好適である。
【0020】
一方、前記有機化合物は、ホール輸送性を有することが好ましい。特に、芳香族アミン化合物はホール輸送性の高いものが多く、好適である。また、芳香族アミン化合物は、電子受容性を示す前記無機化合物に対し、電子を与えやすいという点でも好ましい。
【0021】
このような本発明の複合材料を発光素子の電極に接して設けることにより、駆動電圧の低い発光素子を得ることができる。また、先に述べた通り、本発明の複合材料は3.5eV〜5.5eVの電極に対してはホール注入障壁が実質的に存在しないため、仕事関数がこの範囲にある汎用的な金属を発光素子の電極として用いることができる。したがって、安価な発光素子を提供することができる。
【0022】
したがって本発明の構成は、第1の電極と第2の電極との間に、第1の層と、発光物質を含む第2の層とを有し、前記第1の層は前記第1の電極に接して設けられており、前記第1の層が上述した本発明の複合材料からなる発光素子である。
【0023】
また、本発明の発光素子は、電極と、電極に接する層(すなわち本発明の複合材料を用いた層)とがオーム接触を形成している点も特徴である。すなわち本発明の他の構成は、第1の電極と第2の電極との間に、有機化合物と無機化合物とを含む第1の層と、発光物質を含む第2の層とを有し、前記第1の層は前記第1の電極に接して設けられており、前記第1の層に対して前記第1の電極がオーム接触を形成している発光素子である。
【0024】
この時、前記無機化合物は、前記有機化合物に対して電子受容性を示すことが好ましい。特に、遷移金属酸化物は電子受容性の高いものが多く、中でも酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが好適である。
【0025】
一方、前記有機化合物は、ホール輸送性を有することが好ましい。特に、芳香族アミン化合物はホール輸送性の高いものが多く、好適である。また、芳香族アミン化合物は、電子受容性を示す前記無機化合物に対し、電子を与えやすいという点でも好ましい。
【0026】
なお、前記第1の電極は陽極であることが好ましい。また、前記第1の電極は、3.5eV〜5.5eVの仕事関数を有する材料を含むことが好ましい。
【0027】
上述した本発明の発光素子は、駆動電圧を低減できるという特徴があるため、本発明の発光素子を有する発光装置も消費電力を低減できる。また、本発明の発光素子は、安価に作成することができるため、本発明の発光素子を有する発光装置も安価に作製することができる。したがって、本発明の発光素子を用いた発光装置も本発明に含むものとする。
【0028】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光素子を用いた画像表示デバイスもしくは発光体を指す。また、発光素子にコネクター、例えば異方導電性フィルム(FPC:Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0029】
本発明を実施することで、電極からのホール注入障壁が実質的にない材料を提供することができる。また、種々の電極に対してホール注入障壁が実質的にない材料を提供することができる。また、これらの特性を有する上に、高い耐熱性を有する材料を提供することができる。
【0030】
また、これらの材料を用いることにより、駆動電圧の低い発光素子および発光装置を提供することができる。また、これらの材料と、汎用的な金属を組み合わせて用いることにより、安価な発光素子および発光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
まず、本発明の複合材料の態様について説明する前に、従来の有機化合物の場合を例に挙げ、その問題点を説明する。
【0032】
図2は、電極200から有機化合物210へホール230が注入される場合を説明するためのエネルギー準位の模式図である。図中、201が電極200のフェルミ準位、211が有機化合物210のHOMO準位、212が有機化合物210のLUMO準位である。通常、ホールはHOMO準位に注入されるため、図中の220がホール230にとってのショットキー障壁となる。したがって、ショットキー障壁220を小さくするためには、電極のフェルミ準位201の位置を下げる(すなわち、仕事関数を大きくする)か、または有機化合物のHOMO準位211の位置を上げる必要がある。しかしながら、ホールを受け取り輸送できる有機化合物のHOMO準位を、−5eVよりも上げることは比較的困難であり、5eVよりも仕事関数が大きい電極を用いない限り、ショットキー障壁220を実質的になくすことは困難である。
【0033】
この時、電極200から有機化合物210へ注入されたホールが流れる際の電流量は、下記式(2)で表されるショットキー注入機構の電流密度Jsの式で支配される。すなわち、このような電極200と有機化合物210とを組み合わせたデバイスは、バルクの導電性に支配されるのではなく、注入律速のデバイスとなる。
【0034】
【数3】

(Tは温度、φはショットキー障壁、qは素電荷量、Vは電圧、εは有機化合物の誘電率、dは電極間距離、kはボルツマン定数を表す。)
【0035】
このように、従来の有機化合物では、流れる電流がショットキー障壁φに大きく依存するため、電極と有機化合物とを組み合わせたデバイスにおいては、電極や有機化合物の材料の種類に大きな制限があった。
【0036】
この問題を克服したのが、本発明の複合材料である。以下ではまず、実施形態1として、本発明の複合材料の一態様について説明する。
【0037】
[実施形態1]
本発明の複合材料の一態様は、有機化合物と、その有機化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む構成である。この時、電子受容性を示す無機化合物を多く混在させることにより、複合材料は不純物濃度の高い不純物半導体(p型)の性質を有するようになる。すなわち、伝導機構はバンド伝導である。
【0038】
不純物濃度の高い不純物半導体(p型)の性質を有する場合、電極100から本発明の複合材料110へホールが注入される際のエネルギー準位の模式図は、図1のようになる。図1(a)は、電極100と本発明の複合材料110が接触する前の状態を模式的に表したものであり、101が電極100のフェルミ準位、111が複合材料110の価電子帯の上端、112が複合材料110の伝導帯の下端、113が複合材料110のフェルミ準位である。
【0039】
このような電極100と複合材料110とを接触させた場合、フェルミ準位が一致するように電子が移動する。その結果、図1(b)に示す通り、電子はトンネル効果により障壁を通過できるようになるため、ショットキー障壁(ここではホール注入障壁)は実質的に消失する。
【0040】
ところで、ショットキー障壁が消失した不純物半導体には、オーム電流が流れることになり、その電流−電圧特性はオームの法則に従う。したがって、その電流密度Johは、下記式(3)で表される。
【0041】
【数4】

(σは導電率、Eは電界強度、dは電極間距離、Vは電圧を表す。)
【0042】
この時、不純物半導体の導電率σは、下記式(4)で表されるように、アレニウスプロットが線形になるような温度依存性を有する。
【0043】
【数5】

(φaはキャリア発生のための活性化エネルギー、Tは温度、kはボルツマン定数、σは物質固有の定数である。)
【0044】
したがって、式(3)(4)から、ショットキー障壁が消失した不純物半導体の電流密度Johは、下記式(5)で表されることになる。
【0045】
【数6】

【0046】
本発明の複合材料の場合、ショットキー障壁が実質的に消失した結果、上記式(5)で表されるバンド伝導的な電流が流れるようになる。この特性は、複合材料中の有機化合物のHOMO準位の位置にほとんど依存せず得られるため、本発明の複合材料には様々な有機化合物を適用することができる。
【0047】
そして、それだけではなく、本発明の複合材料に流れる電流はトラップ電荷制限電流の項が足し合わされていることを本発明者は見出した。トラップ電荷制限電流は空間電荷制限電流の一種で、外部から注入されたキャリアを流す際の薄膜特有の電流であり、有機化合物の分子間のホッピング伝導などがそれに当たる。その電流密度Jは、下記式(6)のように電圧のべき乗で表される。なお、Bは前記電極間距離dや素電荷量q、前記複合材料の種類によって決まる移動度μ、誘電率ε、単位体積あたりのトラップの数Nt、及び複合材料中の有機化合物の体積あたりのLUMO準位の数NLUMOなどにより決まるパラメータである。
【0048】
【数7】

(Bは前記電極間距離dや素電荷量q、前記複合材料の種類によって決まる移動度μ、誘電率ε、単位体積あたりのトラップの数Nt、及び複合材料中の有機化合物の体積あたりのLUMO準位の数NLUMOなどにより決まるパラメータ、nは2以上10以下の整数、Vは電圧を表す。)
【0049】
つまり、本発明の複合材料に流れる電流の電流密度J=Joh+Jは、上記式(5)および(6)より、下記式(1)で表される(ただし、σ/d=Aとおいた)。
【0050】
【数8】

(Jは電流密度、Vは電圧、φは前記複合材料におけるキャリア発生のための活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度、Aは前記電極間距離と物質固有の値σにより決まるパラメータ、Bは前記電極間距離dや素電荷量q、前記複合材料の種類によって決まる移動度μ、誘電率ε、単位体積あたりのトラップの数Nt、及び複合材料中の有機化合物の体積あたりのLUMO準位の数NLUMOなどにより決まるパラメータ、nは2以上10以下の整数を表す。)
【0051】
本発明の複合材料の電流−電圧特性が式(1)に従う要因は、本発明の複合材料は不純物濃度の高い不純物半導体の性質(電極とオーム接触を形成し、なおかつオームの法則に従う)を持っていると同時に、用いている有機化合物の性質(トラップ電荷制限電流が流れる)も有していることである。すなわち、式(1)で表されるような電流−電圧特性を示す本発明の複合材料は、有機化合物に電子受容性物質を添加することによるキャリア発生(ここではホール発生)を利用したバンド伝導と、有機化合物が外部から注入されたキャリアを輸送する際の有機化合物間のホッピング伝導を併せ持ち、大電流を流せるという特徴を有している。
【0052】
さらに、上述したような電流−電圧特性が、3.5eV〜5.5eVの仕事関数を有する材料を電極に用いた場合に得られることもわかった。式(1)はオーム接触を仮定した式であるから、このことはすなわち、本発明の複合材料が3.5eV〜5.5eVの仕事関数を有する材料とオーム接触を形成できることを示している。
【0053】
以下では、本実施形態1における本発明の複合材料を形成するのに好適な材料を列挙するが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0054】
本実施形態1における本発明の複合材料は、有機化合物と無機化合物とを含んでいるが、無機化合物はその有機化合物に対して電子受容性を示す。無機化合物を用いることにより、耐熱性の向上という効果も得られる。無機化合物としては特に限定されることはないが、遷移金属酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが好適である。
【0055】
ここで、無機化合物が電子受容性を示すことから、有機化合物にはホールが発生するため、有機化合物としてはホール輸送性の有機化合物が好ましい。ホール輸送性の有機化合物としては、例えば、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)の他、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス{N−[4−ジ(m−トリル)アミノ]フェニル−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、4,4’−ビス[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BBPB)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。また、上述した化合物の中でも、TDATA、MTDATA、m−MTDAB、TPD、NPB、DNTPD、BBPB、TCTAなどに代表される芳香族アミン化合物は、ホールを発生しやすく、有機化合物として好適な化合物群である。
【0056】
本発明の複合材料の作製方法としては、例えば、上述したような有機化合物と無機化合物の両方を抵抗加熱により蒸発させ、共蒸着する手法が挙げられる。その他、有機化合物を抵抗加熱により蒸発させる一方で、無機化合物をエレクトロンビーム(EB)により蒸発させ、共蒸着してもよい。また、有機化合物を抵抗加熱により蒸発させると同時に、無機化合物をスパッタリングし、両方を同時に堆積する手法も挙げられる。その他、湿式法により成膜してもよい。
【0057】
[実施形態2]
本実施形態2では、実施形態1で述べたような本発明の複合材料を用いた電流励起型の発光素子について説明する。典型的な素子構造を図3に示す。本発明の発光素子は、第1の電極301と第2の電極302との間に、実施形態1で述べたような本発明の複合材料からなる第1の層311と、発光物質を含む第2の層312とを有し、第1の層311は第1の電極301に接して設けられている。
【0058】
本実施形態2においては、第1の電極301の電位を第2の電極302よりも高くすることにより電流が流れ、第2の層312中でホール321と電子322が再結合して発光する素子を例示する。したがって、第1の電極301は陽極として作用する。
【0059】
実施形態1で述べたように、第1の電極301を構成する材料の仕事関数が3.5eV〜5.5eV程度であれば、第1の層311は第1の電極301とオーム接触する。したがって、駆動電圧が低い発光素子を作製することができる。
【0060】
また、第1の電極301としては、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの範囲にある材料を用いることができる。具体的には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Ozide、以下ITOとする)、珪素を添加したインジウム錫酸化物(以下ITSOとする)などの透明電極の他、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、金、白金、銀、アルミニウム、およびそれらの合金などを用いることができる。特に、チタン、モリブデン、アルミニウム、あるいはそれらの合金は、配線などにもよく用いられる汎用的な金属であり、これらを第1の電極301とすることで安価な発光素子を提供することができる。アルミニウム(仕事関数は4eV程度)のように、通常はホール注入が困難な金属を第1の電極301とすることができるのは、本発明の特徴の一つである。
【0061】
第2の電極302は、第1の電極301と同様の材料で構成することができる。ただし、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等の仕事関数の小さい金属またはそれらの合金を用いてもよい。
【0062】
なお、発光素子から光を取り出すため、第1の電極301および第2の電極302の少なくとも一方または両方を、透明電極とすればよい。また、発光素子を担持するための基板は、第1の電極301側、第2の電極302側のいずれに設けられていてもよい。
【0063】
次に、第2の層312について説明する。第2の層312は発光機能を担う層であり、少なくとも発光性の有機化合物を含んでいればよい。その他、ホール輸送性材料、電子輸送性材料、電子注入材料を適宜組み合わせて用いることができる。また、第2の層312は、発光性の有機化合物を含む発光層のみの単層であってよいが、その他ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層などを組み合わせた多層であってもよい。
【0064】
発光性の有機化合物としては、例えば、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、クマリン30、クマリン6、クマリン545、クマリン545T、ペリレン、ルブレン、ペリフランテン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)、5,12−ジフェニルテトラセン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−[2−(ジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCM2)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−4H−ピラン(略称:BisDCM)等が挙げられる。また、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’](ピコリナト)イリジウム(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}(ピコリナト)イリジウム(略称:Ir(CFppy)(pic))、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(略称:Ir(ppy))、(アセチルアセトナト)ビス(2−フェニルピリジナト−N,C’)イリジウム(略称:Ir(ppy)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(略称:Ir(thp)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2−フェニルキノリナト−N,C’)イリジウム(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C’]イリジウム(略称:Ir(btp)(acac))などの燐光を放出できる化合物用いることもできる。
【0065】
発光性の有機化合物と組み合わせて用いることができるホール輸送性材料としては、例えば、先に述べたTDATA、MTDATA、m−MTDAB、TPD、NPB、DNTPD、BBPB、TCTAなどが挙げられる。また、電子輸送性材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−ビフェニリル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。また、電子注入材料としては、上述した電子輸送性材料の他に、LiF、CsFなどのアルカリ金属ハロゲン化物や、CaFのようなアルカリ土類ハロゲン化物、LiOなどのアルカリ金属酸化物のような絶縁体の超薄膜がよく用いられる。また、リチウムアセチルアセトネート(略称:Li(acac)や8−キノリノラト−リチウム(略称:Liq)などのアルカリ金属錯体も有効である。さらに、上述した電子輸送性材料と、Mg、Li、Cs等の仕事関数の小さい金属とを共蒸着等により混合した材料を使用することもできる。
【0066】
なお、発光性の有機化合物は、上述したホール輸送性材料や電子輸送性材料、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)などに分散させて用いてもよい。
【0067】
なお、第1の層311は本発明の複合材料からなるため、実施形態1で述べたような手法で作成することができる。また、第2の層312は抵抗加熱による蒸着法や、スピンコート、インクジェット、印刷等の湿式法で形成することができる。また、第1の電極301および第2の電極302に関しても同様に、抵抗加熱による蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング、湿式法などを用いて形成することができる。
【0068】
[実施形態3]
本実施形態2においては、実施形態1とは異なる本発明の発光素子の一態様について説明する。素子構造を図4に示す。本実施形態3の発光素子は、第1の電極401と第2の電極402との間に、実施形態1で述べたような本発明の複合材料からなる第1の層411と、発光物質を含む第2の層412とを有し、第1の層411は第1の電極401に接して設けられている。また、第1の層411と第2の層412との間には、電子を発生する第3の層413が設けられている。
【0069】
本実施形態3においては、第1の電極401の電位を第2の電極402よりも低くすることにより電流が流れるが、この時、第3の層413から第2の層412へ注入された電子422と、第2の電極402から注入されたホール423が第2の層412中で再結合して発光する。一方、本発明の複合材料を用いた第1の層411は、第1の層411と第3の層413との界面近傍で発生したホール421を第1の電極401の方へ受け渡す。
【0070】
実施形態1で述べたように、第1の電極401を構成する材料の仕事関数が3.5eV〜5.5eV程度であれば、第1の層411は第1の電極401とオーム接触する。したがって、駆動電圧が低い発光素子を作製することができる。
【0071】
また、第1の電極401としては、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの範囲にある材料を用いることができる。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)、珪素を添加したインジウム錫酸化物(ITSO)などの透明電極の他、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、金、白金、銀、アルミニウム、およびそれらの合金などを用いることができる。特に、チタン、モリブデン、アルミニウム、あるいはそれらの合金は、配線などにもよく用いられる汎用的な金属であり、これらを第1の電極401とすることで安価な発光素子を提供することができる。第2の電極402も、第1の電極401と同様の材料で構成することができる。
【0072】
なお、発光素子から光を取り出すため、第1の電極401および第2の電極402の少なくとも一方または両方を、透明電極とすればよい。また、発光素子を担持するための基板は、第1の電極401側、第2の電極402側のいずれに設けられていてもよい。
【0073】
第2の層412は発光機能を担う層であり、少なくとも発光性の有機化合物を含んでいればよい。構成としては、実施形態2で述べた第2の層と同様の構成を適用することができる。
【0074】
第3の層は、電子を発生できる層であれば特に限定はされないが、具体的には、電子輸送性の有機化合物と、その有機化合物に対して電子供与性を示す物質とを有する層を含んでいればよい。電子輸送性の有機化合物としては、先に述べたAlq、Almq、BeBq、BAlq、Zn(BOX)、Zn(BTZ)、BPhen、BCP、PBD、OXD−7、TPBI、TAZ、p−EtTAZなどを用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属、あるいはそれらの合金が挙げられる。また、酸化リチウム、酸化バリウム、窒化リチウム、窒化マグネシウム、窒化カルシウム等のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を用いることもできる。
【0075】
なお、第2の層412と第2の電極402との間には、正孔注入層が設けられていてもよい。正孔注入層に用いることのできる材料としては、HPc、CuPc、VOPcの他、実施形態1で述べたような本発明の複合材料を用いてもよい。
【0076】
なお、第1の層411は本発明の複合材料からなるため、実施形態1で述べたような手法で作成することができる。また、第2の層412や第3の層413は抵抗加熱による蒸着法や、スピンコート、インクジェット、印刷等の湿式法で形成することができる。また、第1の電極401および第2の電極402に関しても同様に、抵抗加熱による蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング、湿式法などを用いて形成することができる。
【0077】
[実施形態4]
本発明の発光装置の構成について図5を参照して説明する。なお、図5(A)は発光装置を示す上面図、図5(B)は図5(A)をA−A’で切断した断面詳細図、図5(C)は発光装置の断面構造図を示している。図5(A)において、ソース側駆動回路501、画素部502、ゲート側駆動回路503を点線で示している。また、封止基板504はシール材505でTFT及び発光素子が形成された基板510と固定されている。ソース側駆動回路501、画素部502、ゲート側駆動回路503は基板510と封止基板504に挟まれて封止される。この場合、好ましくは封止材806を基板510と封止基板504の間に充填して固体化すると良い。シール材505、封止材806は水蒸気透過率が低い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0078】
接続配線507は、ソース側駆動回路501及びゲート側駆動回路503に入力される信号を伝送するものであり、基板510の端部に引き出されるように配設されている。接続配線507の端部において、外部回路と接続するフレキシブルプリント配線基板(FPC)508が接続されている。この接続部と重なるようにシール材505によるシールパターンを形成することにより、基板510において画素部502の占める割合を増やすことができる。すなわち、基板510において駆動回路やFPCなどの接続領域が形成される所謂額縁領域の幅を小さくすることができる。
【0079】
図5(C)は発光装置の断面構造図を示している。基板510におけるソース側駆動回路、画素部、ゲート側駆動回路などの素子形成領域808は、封止材806と封止基板504によって封止されている。フレキシブルプリント配線基板(FPC)508は基板510若しくは封止基板504側に配設された回路基板807と接続している。回路基板807にはこの発光装置を制御するコントロール回路や電源回路などが設けられている。フレキシブルプリント配線基板(FPC)508を湾曲させて基板510若しくは封止基板504側に配設された回路基板807と接続することにより、このモジュールの小型化を図ることができる。このようなモジュールの構成は、携帯電話器や電子手帳など小型の電子機器に適用する場合に、それらの機器の小型化を図ることができる。
【0080】
次に、断面構造について図5(B)を用いて説明する。基板510上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路501と、画素部502が示されている。
【0081】
なお、ソース側駆動回路501はnチャネル型TFT523とpチャネル型TFT524とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成してもよい。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0082】
また、画素部502はスイッチング用TFT511と、電流制御用TFT512とそのドレインに電気的に接続された第1の電極513とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極513の端部を覆って絶縁物514が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0083】
また、カバレッジを良好なものとするため、絶縁物514の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物514の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物514の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物514として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0084】
第1の電極513上には、層515、および第2の電極516がそれぞれ形成され、発光素子517を構成している。発光素子517は、実施形態2や実施形態3で述べたような発光素子の構成を適用すればよい。したがって、層515は実施形態2や実施形態3で述べた第1の層および第2の層を少なくとも含んでおり、第1の層が第1の電極513に接して設けられている。また、第1の電極513、第2の電極516の構成も、先に述べた実施形態2や実施形態3の構成を適用すればよい。
【0085】
また、本実施形態4では、接続配線507と第1の電極513を異なる材料で形成しているが、同じ材料で形成することもできる。すなわち、接続配線507をそのまま第1の電極513として用いることができるため、プロセス数を削減でき、コストの低減に繋がる。これは、本発明の複合材料を含む第1の層が、第1の電極513とオーム接触を形成できる特性を有することにより生まれる利点である。
【0086】
さらにシール材505で封止基板504を基板510と貼り合わせることにより、基板510、封止基板504、およびシール材505で囲まれた領域506に発光素子517が備えられた構造になっている。なお、領域506には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材505が充填される構成も含むものとする。
【0087】
なお、シール材505にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板504に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0088】
以上のようにして、本発明の発光素子を用いた発光装置を得ることができる。
【0089】
[実施形態5]
本実施例では、本発明の発光素子を用いた発光装置を利用して完成させた様々な電気器具について説明する。
【0090】
本発明の発光素子を有する発光装置を利用して作製された電気器具として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電気器具の具体例を図6に示す。
【0091】
図6(A)は表示装置であり、筐体6101、支持台6102、表示部6103、スピーカー部6104、ビデオ入力端子6105等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部6103に用いることにより作製される。なお、表示装置は、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用装置が含まれる。
【0092】
図6(B)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体6201、筐体6202、表示部6203、キーボード6204、外部接続ポート6205、ポインティングマウス6206等を含む。本発明のCEL素子を有する発光装置をその表示部6203に用いることにより作製される。
【0093】
図6(C)はモバイルコンピュータであり、本体6301、表示部6302、スイッチ6303、操作キー6304、赤外線ポート6305等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部6302に用いることにより作製される。
【0094】
図6(D)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体6401、筐体6402、表示部A6403、表示部B6404、記録媒体(DVD等)読み込み部6405、操作キー6406、スピーカー部6407等を含む。表示部A6403は主として画像情報を表示し、表示部B6404は主として文字情報を表示するが、本発明の発光素子を有する発光装置をこれら表示部A6403、B6404に用いることにより作製される。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0095】
図6(E)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体6501、表示部6502、アーム部6503を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部6502に用いることにより作製される。
【0096】
図6(F)はビデオカメラであり、本体6601、表示部6602、筐体6603、外部接続ポート6604、リモコン受信部6605、受像部6606、バッテリー6607、音声入力部6608、操作キー6609、接眼部6610等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部6602に用いることにより作製される。
【0097】
ここで、図6(G)は携帯電話であり、本体6701、筐体6702、表示部6703、音声入力部6704、音声出力部6705、操作キー6706、外部接続ポート6707、アンテナ6708等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部6703に用いることにより作製される。なお、表示部6703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0098】
以上の様に、本発明の発光素子を有する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電気器具に適用することが可能である。
【実施例1】
【0099】
本実施例1では、有機化合物と、有機化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを複合した本発明の複合材料を例示する。有機化合物としてはホール輸送性を有するBBPBを、無機化合物としては酸化モリブデンを用いた。
【0100】
まず、ガラス基板を真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、BBPBと酸化モリブデン(VI)とをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりBBPBと酸化モリブデンを複合した本発明の複合材料を成膜した。この時、BBPBは0.4nm/sの成膜レートで蒸発させ、酸化モリブデンはBBPBに対して1/4の量(重量比)を蒸発させた。したがって、モル比では、NPB:酸化モリブデン=1:1となっている。なお、膜厚は50nmとした。
【0101】
このようにして成膜したBBPB−酸化モリブデン複合材料の吸収スペクトルを測定した結果を、図7中のA.に示す。比較のため、BBPBのみの膜(図中B.)および酸化モリブデンのみの膜(図中C.)の吸収スペクトルも合わせて図示した。
【0102】
図7からわかる通り、A.の複合材料は、BBPBあるいは酸化モリブデンそれぞれの単独の膜では見られなかった新たな吸収が、500nm付近、800nm付近および1500nm付近に見られた。これは、BBPBと酸化モリブデンが電子の授受を行っているためであり、酸化モリブデンがBBPBから電子を受容し、BBPBにホールが発生しているものと考えられる。したがって、本発明の複合材料は、高濃度に不純物が添加された不純物半導体のように、各種の電極とオーム接触を形成することができ、またバンド伝導的なキャリア輸送を行うことが示唆される。
【0103】
一方で、BBPB単独(B.)にも見られる350nm付近の吸収は、複合材料(A.)にも観察されている。このことから、本発明の複合材料は、BBPBの性質も残存しており、ホッピング伝導(トラップ電荷制限電流)によるキャリア輸送も行うことが示唆される。
【実施例2】
【0104】
本実施例2では、本発明の複合材料の電流−電圧特性について例示する。まず、比較のため、上述したBBPBのみの膜の電流―電圧特性について例示する。
【0105】
[比較例]
まず、110nmの膜厚でITSOが成膜されたガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆った。
【0106】
次に、そのガラス基板を、ITSOが形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、BBPBを抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、真空蒸着法によりBBPBを成膜した。膜厚は200nmとした。さらにその上に、アルミニウム(Al)を200nm成膜した。
【0107】
このようにして得られた、基板側からITSO、BBPB、Alの順で積層された積層構造に関して、−35℃、−20℃、−5℃、10℃、25℃、40℃、55℃、70℃、85℃、および100℃にて電圧−電流特性を調べた結果を図8(a)に示す。なお、ITSOの電位をAlよりも高くした場合を順バイアスとしている。
【0108】
図8(a)に示す通り、順バイアスでは電流は流れるため、ITSOからはホールが注入されていることがわかった。また、逆バイアスでは電流が流れず、整流性を示したため、Alからホールは注入されていないことが示唆された。
【0109】
次に、図8(a)で得られた電流−電圧特性から、本比較例において流れている電流が本当にショットキー注入機構に支配されている(すなわち注入律速である)かどうかを解析した。先に述べた式(2)において、V=0とおいた時のJ(=Jとする)は、下記式(7)で表される。
【0110】
【数9】

【0111】
この式を変形すると、下記式(8)が得られる。
【0112】
【数10】

【0113】
したがって、もしショットキー注入機構が支配的であれば、J/Tをアレニウスプロットすると、直線に乗るはずである。各温度におけるJは、図8(b)に示すように、図8(a)で得られた電流−電圧特性の横軸を電圧Vの平方根に、縦軸を電流密度Jの対数におきかえ、各温度におけるプロットを外挿(図中の実線)することによって得られる。得られた各温度におけるJの値を下記表1に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
このようにして得られたJ0の値を用い、式(8)に従ってアレニウスプロットを行った結果を図9に示す。図9に示す通り、アレニウスプロットは線形性を示したため、ITSOからBBPBへのホール注入はショットキー注入機構であることが示唆された。また、そのショットキー注入が電流量を支配していることもわかった。なお、図9のプロットの傾きからショットキー障壁φを求めたところ、0.62eVであった。
【0116】
[実施例]
続いて、本発明の複合材料の電流−電圧特性について例示する。まず、110nmの膜厚でITSOが成膜されたガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆った。
【0117】
次に、そのガラス基板を、ITSOが形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、BBPBと酸化モリブデン(VI)とルブレンをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりBBPBと酸化モリブデンとルブレンからなる本発明の複合材料を成膜した。この時、BBPBを0.2nm/sの成膜レートで蒸発させ、BBPB:酸化モリブデン:ルブレン=2:0.75:0.02(質量比)となるように調節した。膜厚は比較例と揃えるため、200nmとした。さらにその上に、アルミニウム(Al)を200nm成膜した。なお、ルブレンは膜質の安定化剤として添加したものであり、必ずしも必要ではない。
【0118】
このようにして得られた、基板側からITSO、BBPBと酸化モリブデンとルブレンとの混合膜、Alの順で積層された積層構造に関して、−35℃、−20℃、−5℃、10℃、25℃、40℃、55℃、70℃、85℃、および100℃にて電圧−電流特性を調べた結果を図10(a)に示す。なお、ITSOの電位をAlよりも高くした場合を順バイアスとしている。
【0119】
まず、先ほどの比較例(図8(a))とは異なり、順バイアスで・逆バイアスの両方でほぼ同等の電流が流れているため、ITSOからでもAlからでも、同等の量のホールが注入されていることがわかった。また、先の比較例に比べて、低い電圧で多量の電流が流れることもわかった。
【0120】
次に、図10(a)で得られた電流−電圧特性から、本実施例において流れている電流がショットキー注入機構に支配されている(すなわち注入律速である)かどうかを解析した。まずは、順バイアス時(つまり、ITSOからのホール注入時)において、先の比較例と同様、図10(a)で得られた電流−電圧特性の横軸を電圧Vの平方根に、縦軸を電流密度Jの対数におきかえ(図10(b)参照)、各温度におけるプロットを外挿(図中の実線)することによってJ0を求めた。次いで、式(8)に従ってアレニウスプロットを行った。結果を図11に示す。
【0121】
図11に示す通り、本発明の複合材料の場合は、J/Tのアレニウスプロットが直線に乗らないことがわかった。このことはすなわち、ITSOから本発明の複合材料へのホール注入は、ショットキー注入機構が支配的ではないことを示唆している。
【0122】
そこで、次に、本発明の複合材料の電流−電圧特性が、先の実施形態1で述べた式(1)に従うかどうかを解析した。式(1)において、Aexp(−φ/(2kT))=A’とおくと、式(1)は下記式(9)のように書くことができる。
【0123】
【数11】

【0124】
ただし、A’は下記式(10)で示される。
【数12】

【0125】
図10(a)における順バイアス時のプロットを、式(9)でフィッティングした結果を図12に示す。図中の破線は、式(9)においてn=5とした場合のフィッティングである。図12の通り、非常に精度よくフィッティングされていることがわかる。このフィッティングより求まった各温度におけるA’の値を下記表2に示す。
【0126】
【表2】

【0127】
ここで、式(10)から下記式(11)が得られるため、A’をアレニウスプロットすると直線に乗るはずである。結果を図13に示す。
【0128】
【数13】

【0129】
図13に示す通り、アレニウスプロットは線形性を示したため、ITSOから本発明の複合材料へのホール注入はオーム接触を形成しており、なおかつその電流量は式(1)に従うことがわかった。なお、この時の活性化エネルギーφは0.26eVであった。
【0130】
また、逆バイアスにおいても順バイアスとほぼ同じ電流量を流していることから、Alから本発明の複合材料へのホール注入もオーム接触を形成しており、なおかつその電流量は式(1)に従うことがわかった。
【0131】
なお、ITSOの仕事関数は4.89eV、Alの仕事関数は4eV前後である(いずれも、光電子分光装置AC−2(理研計器(株)製)を用いて測定した)。以上のことから、本発明の複合材料は、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極で挟んで測定した電流−電圧特性が式(1)に従っていることがわかった。
【0132】
また、式(1)に従うということは、本発明の複合材料は電極とオーム接触している上に大電流を流せるということに繋がるため、本発明の複合材料を電極に接して設けた発光素子は、駆動電圧を低減できる。また、アルミニウムのような汎用的な金属を陽極に用いることもできる。
【実施例3】
【0133】
本実施例3では、有機化合物と、有機化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを複合した本発明の複合材料を例示する。有機化合物としてはホール輸送性を有するNPBを、無機化合物としては酸化モリブデンを用いた。
【0134】
まず、実施例1と同様に、共蒸着法によりNPBと酸化モリブデンを複合した本発明の複合材料を成膜した。この時、NPBは0.4nm/sの成膜レートで蒸発させ、酸化モリブデンはNPBに対して1/4の量(重量比)を蒸発させた。したがって、モル比では、NPB:酸化モリブデン=1:1となっている。なお、膜厚は50nmとした。
【0135】
このようにして成膜したNPBと酸化モリブデンとの複合材料の吸収スペクトルを測定した結果を、図14中のA.に示す。比較のため、NPBのみの膜(図中B.)の吸収スペクトルも合わせて図示した。酸化モリブデンのみの膜に関しては、実施例1の図7で図示したのでここでは省略する。
【0136】
図14からわかる通り、A.の複合材料は、NPBあるいは酸化モリブデンそれぞれの単独の膜では見られなかった新たな吸収が、500nm付近、800nm付近および1400nm付近に見られた。これは、NPBと酸化モリブデンが電子の授受を行っているためであり、酸化モリブデンがNPBから電子を受容し、NPBにホールが発生しているものと考えられる。したがって、本発明の複合材料は、高濃度に不純物が添加された不純物半導体のように、各種の電極とオーム接触を形成することができ、またバンド伝導的なキャリア輸送を行うことが示唆される。
【0137】
一方で、NPB単独(B.)にも見られる350nm付近の吸収は、複合材料(A.)にも観察されている。このことから、本発明の複合材料は、NPBの性質も残存しており、ホッピング伝導(トラップ電荷制限電流)によるキャリア輸送も行うことが示唆される。
【実施例4】
【0138】
本実施例4では、本発明の複合材料の電流−電圧特性について例示する。まず、比較のため、上述したNPBのみの膜の電流−電圧特性について例示する。
【0139】
[比較例]
まず、110nmの膜厚でITSOが成膜されたガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆った。
【0140】
次に、そのガラス基板を、ITSOが形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、NPBを抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、真空蒸着法によりNPBを成膜した。膜厚は200nmとした。さらにその上に、アルミニウム(Al)を200nm成膜した。
【0141】
このようにして得られた、基板側からITSO、NPB、Alの順で積層された積層構造に関して、−35℃、−20℃、−5℃、10℃、25℃、40℃、55℃、70℃、および85℃にて電流−電圧特性を調べた結果を図15(a)に示す(NPBのガラス転移点は100℃弱であるため、100℃のデータは取得しなかった)。なお、ITSOの電位をAlよりも高くした場合を順バイアスとしている。
【0142】
図15(a)に示す通り、順バイアスでは電流は流れるため、ITSOからはホールが注入されていることがわかった。また、逆バイアスでは電流が流れず、整流性を示したため、Alからホールは注入されていないことが示唆された。
【0143】
次に、図15(a)で得られた電流−電圧特性から、本比較例において流れている電流が本当にショットキー注入機構に支配されている(すなわち注入律速である)かどうかを解析した。解析方法は、実施例2で述べた手法と同様であり、図15(a)の電流−電圧特性の横軸を電圧Vの平方根に、縦軸を電流密度Jの対数におきかえ(図15(b)参照)、各温度におけるプロットを外挿(図中の実線)することによってy切片(J)を求め、各温度におけるJが式(8)に従うかどうかを確認した。
【0144】
得られた各温度におけるJの値を下記表3に示す。また、得られたJの値を用い、式(8)に従ってアレニウスプロットを行った結果を図16に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
図16に示す通り、アレニウスプロットは線形性を示したため、ITSOからNPBへのホール注入はショットキー注入機構であることが示唆された。また、そのショットキー注入が電流量を支配していることもわかった。なお、図16の傾きからショットキー障壁φを求めたところ、0.49eVであった。
【0147】
[実施例]
続いて、本発明の複合材料の電流−電圧特性について例示する。まず、110nmの膜厚でITSOが成膜されたガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆った。
【0148】
次に、そのガラス基板を、ITSOが形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定した。そして、NPBと酸化モリブデン(VI)とルブレンをそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりNPBと酸化モリブデンとルブレンからなる本発明の複合材料を成膜した。この時、NPBを0.2nm/sの成膜レートで蒸発させ、NPB:酸化モリブデン:ルブレン=2:0.75:0.04(質量比)となるように調節した。膜厚は比較例と揃えるため、200nmとした。さらにその上に、アルミニウム(Al)を200nm成膜した。なお、ルブレンは膜質の安定化剤として添加したものであり、必ずしも必要ではない。
【0149】
このようにして得られた、基板側からITSO、NPB:酸化モリブデン:ルブレン混合膜、Alの順で積層された積層構造に関して、−35℃、−20℃、−5℃、10℃、25℃、40℃、55℃、70℃、および85℃にて電流−電圧特性を調べた結果を図17(a)に示す。なお、ITSOの電位をAlよりも高くした場合を順バイアスとしている。
【0150】
まず、先ほどの比較例(図15(a))とは異なり、順バイアス・逆バイアスの両方でほぼ同等の電流が流れているため、ITSOからでもAlからでも、同等の量のホールが注入されていることがわかった。また、先の比較例に比べて、低い電圧で多量の電流が流れることもわかった。
【0151】
次に、図17(a)で得られた電流−電圧特性から、本実施例において流れている電流がショットキー注入機構に支配されている(すなわち注入律速である)かどうかを解析した。まずは、順バイアス時(つまり、ITSOからのホール注入時)において、先の比較例と同様、図17(a)で得られた電流−電圧特性の横軸を電圧Vの平方根に、縦軸を電流密度Jの対数におきかえ(図17(b)参照)、各温度におけるプロットを外挿(図中の実線)することによってJを求めた。次いで、式(8)に従ってアレニウスプロットを行った。結果を図18に示す。
【0152】
図18に示す通り、本発明の複合材料の場合は、J/Tのアレニウスプロットが直線に乗らないことがわかった。このことはすなわち、ITSOから本発明の複合材料へのホール注入は、ショットキー注入機構が支配的ではないことを示唆している。
【0153】
そこで、次に、本発明の複合材料の電流−電圧特性が、先の実施形態1で述べた式(1)に従うかどうかを解析した。解析手法は、実施例2と同様であり、図17(a)における順バイアス時のプロットを式(9)でフィッティングし、各温度におけるA’を求め、A’が式(11)に従うかどうかを確認した。
【0154】
まず、図17(a)における順バイアス時のプロットを、式(9)でフィッティングした結果を図19に示す。図中の破線は、式(9)においてn=5とした場合のフィッティングである。図19の通り、非常に精度よくフィッティングされていることがわかる。このフィッティングより求まった各温度におけるA’の値を下記表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
また、A’をアレニウスプロットした結果を図20に示す。図20に示す通り、アレニウスプロットは線形性を示したため、ITSOから本発明の複合材料へのホール注入はオーム接触を形成しており、なおかつその電流量は式(1)に従うことがわかった。なお、この時の活性化エネルギーφは0.31eVであった。
【0157】
また、逆バイアスにおいても順バイアスとほぼ同じ電流量を流していることから、Alから本発明の複合材料へのホール注入もオーム接触を形成しており、なおかつその電流量は式(1)に従うことがわかった。
【0158】
なお、ITSOの仕事関数は4.89eV、Alの仕事関数は4eV前後である(いずれも、光電子分光装置AC−2(理研計器(株)製)を用いて測定した)。以上のことから、本発明の複合材料は、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極で挟んで測定した電流−電圧特性が式(1)に従っていることがわかった。
【0159】
また、式(1)に従うということは、本発明の複合材料は電極とオーム接触している上に大電流を流せるということに繋がるため、本発明の複合材料を電極に接して設けた発光素子は、駆動電圧を低減できる。また、仕事関数の大きくないアルミニウムのような汎用的な金属を陽極に用いることもできる。
【実施例5】
【0160】
本実施例5では、有機化合物と、有機化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを複合した本発明の複合材料を例示する。有機化合物としてはホール輸送性を有するDNTPDを、無機化合物としては酸化モリブデンを用いた。
【0161】
まず、実施例1と同様に、共蒸着法によりDNTPDと酸化モリブデンを複合した本発明の複合材料を成膜した。この時、DNTPDは0.4nm/sの成膜レートで蒸発させ、酸化モリブデンはNPBに対して1/4の量(重量比)を蒸発させた。したがって、モル比では、NPB:酸化モリブデン=1:1.5となっている。なお、膜厚は50nmとした。
【0162】
このようにして成膜したDNTPD−酸化モリブデン複合材料の吸収スペクトルを測定した結果を、図21中のA.に示す。比較のため、DNTPDのみの膜(図中B.)の吸収スペクトルも合わせて図示した。酸化モリブデンのみの膜に関しては、実施例1の図7で図示したのでここでは省略する。
【0163】
図21からわかる通り、A.の複合材料は、DNTPDあるいは酸化モリブデンそれぞれの単独の膜では見られなかった新たな吸収が、900nm付近に見られた。これは、DNTPDと酸化モリブデンが電子の授受を行っているためであり、酸化モリブデンがDNTPDから電子を受容し、DNTPDにホールが発生しているものと考えられる。したがって、本発明の複合材料は、高濃度に不純物が添加された不純物半導体のように、各種の電極とオーム接触を形成することができ、またバンド伝導的なキャリア輸送を行うことが示唆される。
【0164】
一方で、DNTPD単独(B.)にも見られる350nm付近の吸収は、複合材料(A.)にも観察されている。このことから、本発明の複合材料は、DNTPDの性質も残存しており、ホッピング伝導(トラップ電荷制限電流)によるキャリア輸送も行うことが示唆される。
【実施例6】
【0165】
本実施例6では、本発明の複合材料の電流−電圧特性について例示する。まず、比較のため、上述したDNTPDのみの膜の電流―電圧特性について例示する。
【0166】
[比較例]
まず、110nmの膜厚でITSOが成膜されたガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆った。
【0167】
次に、そのガラス基板を、ITSOが形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定する。そして、DNTPDを抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、真空蒸着法によりDNTPDを成膜した。膜厚は200nmとした。さらにその上に、アルミニウム(Al)を200nm成膜した。
【0168】
このようにして得られた、基板側からITSO、DNTPD、Alの順で積層された積層構造に関して、−35℃、−20℃、−5℃、10℃、25℃、40℃、55℃、70℃、および85℃にて電流−電圧特性を調べた結果を図22(a)に示す(DNTPDのガラス転移点は100℃弱であるため、100℃のデータは取得しなかった)。なお、ITSOの電位をAlよりも高くした場合を順バイアスとしている。
【0169】
図22(a)に示す通り、順バイアスでは電流は流れるため、ITSOからはホールが注入されていることがわかった。また、逆バイアスでは電流が流れず、整流性を示したため、Alからホールは注入されていないことが示唆された。
【0170】
次に、図22(a)で得られた電流−電圧特性から、本比較例において流れている電流が本当にショットキー注入機構に支配されている(すなわち注入律速である)かどうかを解析した。解析方法は、実施例2で述べた手法と同様であり、図22(a)の電流−電圧特性の横軸を電圧Vの平方根に、縦軸を電流密度Jの対数におきかえ(図22(b)参照)、各温度におけるプロットを外挿(図中の実線)することによってy切片(J)を求め、各温度におけるJが式(8)に従うかどうかを確認した。
【0171】
得られた各温度におけるJの値を下記表5に示す。また、得られたJの値を用い、式(8)に従ってアレニウスプロットを行った結果を図23に示す。
【0172】
【表5】

【0173】
図23に示す通り、アレニウスプロットは線形性を示したため、ITSOからDNTPDへのホール注入はショットキー注入機構であることが示唆された。また、そのショットキー注入が電流量を支配していることもわかった。なお、図23の傾きからショットキー障壁φを求めたところ、0.20eVであった。
【0174】
[実施例]
続いて、本発明の複合材料の電流−電圧特性について例示する。まず、110nmの膜厚でITSOが成膜されたガラス基板を用意する。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺を絶縁膜で覆った。
【0175】
次に、そのガラス基板を、ITSOが形成された面が下方になるように真空蒸着装置内の基板ホルダーに固定した。そして、DNTPDと酸化モリブデン(VI)をそれぞれ別の抵抗加熱式の蒸発源に入れ、真空に引いた状態で、共蒸着法によりDNTPDと酸化モリブデンからなる本発明の複合材料を成膜した。この時、DNTPDを0.2nm/sの成膜レートで蒸発させ、DNTPD:酸化モリブデン=2:1(質量比)となるように調節した。膜厚は比較例と揃えるため、200nmとした。さらにその上に、アルミニウム(Al)を200nm成膜した。
【0176】
このようにして得られた、基板側からITSO、DNTPDと酸化モリブデンとの混合膜、Alの順で積層された積層構造に関して、−35℃、−20℃、−5℃、10℃、25℃、40℃、55℃、70℃、および85℃にて電流−電圧特性を調べた結果を図24(a)に示す。なお、ITSOの電位をAlよりも高くした場合を順バイアスとしている。
【0177】
まず、先ほどの比較例(図22(a))とは異なり、順バイアスで・逆バイアスの両方でほぼ同等の電流が流れているため、ITSOからでもAlからでも、同等の量のホールが注入されていることがわかった。また、先の比較例に比べて、低い電圧で多量の電流が流れることもわかった。
【0178】
次に、図24(a)で得られた電流−電圧特性から、本実施例において流れている電流がショットキー注入機構に支配されている(すなわち注入律速である)かどうかを解析した。まずは、順バイアス時(つまり、ITSOからのホール注入時)において、先の比較例と同様、図24(a)で得られた電流−電圧特性の横軸を電圧Vの平方根に、縦軸を電流密度Jの対数におきかえ(図24(b)参照)、各温度におけるプロットを外挿(図中の実線)することによってJを求めた。次いで、式(8)に従ってアレニウスプロットを行った。結果を図25に示す。
【0179】
図25に示す通り、本発明の複合材料の場合は、J/Tのアレニウスプロットが直線に乗らないことがわかった。このことはすなわち、ITSOから本発明の複合材料へのホール注入は、ショットキー注入機構が支配的ではないことを示唆している。
【0180】
そこで、次に、本発明の複合材料の電流−電圧特性が、先の実施形態1で述べた式(1)に従うかどうかを解析した。解析手法は、実施例2と同様であり、図24(a)における順バイアス時のプロットを式(9)でフィッティングし、各温度におけるA’を求め、A’が式(11)に従うかどうかを確認した。
【0181】
まず、図24(a)における順バイアス時のプロットを、式(9)でフィッティングした結果を図26に示す。図中の破線は、式(9)においてn=5とした場合のフィッティングである。図26の通り、非常に精度よくフィッティングされていることがわかる。このフィッティングより求まった各温度におけるA’の値を下記表6に示す。
【0182】
【表6】

【0183】
また、A’をアレニウスプロットした結果を図27に示す。図27に示す通り、アレニウスプロットは線形性を示したため、ITSOから本発明の複合材料へのホール注入はオーム接触を形成しており、なおかつその電流量は式(1)に従うことがわかった。なお、この時の活性化エネルギーφは0.37eVであった。
【0184】
また、逆バイアスにおいても順バイアスとほぼ同じ電流量を流していることから、Alから本発明の複合材料へのホール注入もオーム接触を形成しており、なおかつその電流量は式(1)に従うことがわかった。
【0185】
なお、ITSOの仕事関数は4.89eV、Alの仕事関数は4eV前後である(いずれも、光電子分光装置AC−2(理研計器(株)製)を用いて測定した)。以上のことから、本発明の複合材料は、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの電極で挟んで測定した電流−電圧特性が式(1)に従っていることがわかった。
【0186】
また、式(1)に従うということは、本発明の複合材料は電極とオーム接触を形成している上に大電流を流せるということに繋がるため、本発明の複合材料を電極に接して設けた発光素子は、駆動電圧を低減できる。また、アルミニウムのような汎用的な金属を陽極に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明の複合材料と電極との接触を示す図。
【図2】従来の有機化合物と電極との接触を示す図。
【図3】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図4】本発明の発光素子の構成を示す図。
【図5】本発明の発光装置の構成を示す図。
【図6】本発明の発光装置を用いた電気器具を示す図。
【図7】本発明の複合材料の吸収スペクトルを示す図。
【図8】比較例の電流−電圧特性を示す図。
【図9】比較例がショットキー注入機構であることを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図10】本発明の複合材料の電流−電圧特性を示す図。
【図11】本発明の複合材料の電流−電圧特性がショットキー注入機構であることを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図12】本発明の複合材料の電流−電圧特性を式(1)でフィッティングした図。
【図13】本発明の複合材料の電流−電圧特性が式(1)に従うことを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図14】本発明の複合材料の吸収スペクトルを示す図。
【図15】比較例の電流−電圧特性を示す図。
【図16】比較例がショットキー注入機構であることを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図17】本発明の複合材料の電流−電圧特性を示す図。
【図18】本発明の複合材料の電流−電圧特性がショットキー注入機構であることを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図19】本発明の複合材料の電流−電圧特性を式(1)でフィッティングした図。
【図20】本発明の複合材料の電流−電圧特性が式(1)に従うことを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図21】本発明の複合材料の吸収スペクトルを示す図。
【図22】比較例の電流−電圧特性を示す図。
【図23】比較例がショットキー注入機構であることを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図24】本発明の複合材料の電流−電圧特性を示す図。
【図25】本発明の複合材料の電流−電圧特性がショットキー注入機構であることを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【図26】本発明の複合材料の電流−電圧特性を式(1)でフィッティングした図。
【図27】本発明の複合材料の電流−電圧特性が式(1)に従うことを仮定した場合のアレニウスプロットを示す図。
【符号の説明】
【0188】
100 電極
101 電極100のフェルミ準位
110 複合材料
111 複合材料110の価電子帯の上端
112 複合材料110の伝導帯の下端
113 複合材料110のフェルミ準位
200 電極
201 電極200のフェルミ準位
210 有機化合物
211 有機化合物210のHOMO準位
212 有機化合物210のLUMO準位
220 ショットキー障壁
230 ホール
301 第1の電極
302 第2の電極
311 第1の層
312 第2の層
321 ホール
322 電子
401 第1の電極
402 第2の電極
411 第1の層
412 第2の層
413 第3の層
421 ホール
422 電子
423 ホール
501 ソース側駆動回路
502 画素部
503 ゲート側駆動回路
504 封止基板
505 シール材
506 領域
507 接続配線
508 フレキシブルプリント配線基板(FPC)
510 基板
511 スイッチング用TFT
512 電流制御用TFT
513 第1の電極
514 絶縁物
515 層
516 第2の電極
517 発光素子
523 nチャネル型TFT
524 pチャネル型TFT
806 封止材
807 回路基板
808 素子形成領域
6101 筐体
6102 支持台
6103 表示部
6104 スピーカー部
6105 ビデオ入力端子
6201 本体
6202 筐体
6203 表示部
6204 キーボード
6205 外部接続ポート
6206 ポインティングマウス
6301 本体
6302 表示部
6303 スイッチ
6304 操作キー
6305 赤外線ポート
6401 本体
6402 筐体
6403 表示部A
6404 表示部B
6405 記憶媒体読み込み部
6406 操作キー
6407 スピーカー部
6501 本体
6502 表示部
6503 アーム部
6601 本体
6602 表示部
6603 筐体
6604 外部接続ポート
6605 リモコン受信部
6606 受像部
6607 バッテリー
6608 音声入力部
6609 操作キー
6610 接眼部
6701 本体
6702 筐体
6703 表示部
6704 音声入力部
6705 音声出力部
6706 操作キー
6707 外部接続ポート
6708 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物と無機化合物とを含む複合材料であって、仕事関数が3.5eV〜5.5eVの一対の電極で挟んで測定した前記複合材料からなる薄膜層の電流−電圧特性が、下記式(1)に従うことを特徴とする複合材料。
【数1】

(Jは電流密度、Vは電圧、φは前記複合材料におけるキャリア発生のための活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度、AおよびBはパラメータ、nは2以上10以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記φが、0.01eV以上0.5eV以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合材料において、前記薄膜層の膜厚が、10nm〜500nmであることを特徴とする複合材料。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の複合材料において、前記無機化合物が、前記有機化合物に対して電子受容性を示すことを特徴とする複合材料。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の複合材料において、前記無機化合物が、遷移金属酸化物であることを特徴とする複合材料。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の複合材料において、前記無機化合物が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、および酸化レニウムからなる群より選ばれるいずれかまたは複数であることを特徴とする複合材料。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の複合材料において、前記有機化合物が、ホール輸送性を有することを特徴とする複合材料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の複合材料において、前記有機化合物が、芳香族アミン化合物であることを特徴とする複合材料。
【請求項9】
第1の電極と第2の電極との間に、第1の層と、発光物質を含む第2の層とを有し、前記第1の層は前記第1の電極に接して設けられており、前記第1の層が請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の複合材料からなることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
第1の電極と第2の電極との間に、有機化合物と無機化合物とを含む第1の層と、発光物質を含む第2の層とを有し、前記第1の層は前記第1の電極に接して設けられており、前記第1の層に対して前記第1の電極がオーム接触を形成している発光素子。
【請求項11】
前記無機化合物が、前記有機化合物に対して電子受容性を示すことを特徴とする請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記無機化合物が、遷移金属酸化物であることを特徴とする請求項10に記載の発光素子。
【請求項13】
前記無機化合物が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、および酸化レニウムからなる群より選ばれるいずれかまたは複数であることを特徴とする請求項10に記載の発光素子。
【請求項14】
請求項10乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光素子において、前記有機化合物が、ホール輸送性を有することを特徴とする発光素子。
【請求項15】
請求項10乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光素子において、前記有機化合物が、芳香族アミン化合物であることを特徴とする発光素子。
【請求項16】
請求項9乃至請求項15のいずれか一項に記載の発光素子において、前記第1の電極が陽極であることを特徴とする発光素子。
【請求項17】
請求項9乃至請求項15のいずれか一項に記載の発光素子において、前記第1の電極が3.5eV〜5.5eVの仕事関数を有する材料を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の発光素子を用いた発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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