説明

複合材料の構造要素、特にコネクティングロッドの上に、突出部を作製する方法

本発明は、複合繊維からなる1次層(N1、...、N7)の積層物から少なくとも局所的に作られており突出部を形成するための少なくとも1つの延長部(113)を画定する複合材料の構造要素上に、突出部を作製する方法を提供する。この方法は、少なくとも延長部において1次層を分離する工程と、その1次層の間に中間層(116)を挿入する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の構造要素、特にコネクティングロッドの上に、突出部(lug)を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マンドレルの周りにフィラメントを巻き付けて得られる、あるいは実際には繊維織物の層を巻き付けて得られる、複合材料の中空体を含むコネクティングロッドが知られている。
【0003】
中空体の厚みは、適当な回数巻き付けることによって得られる。
【0004】
中実体が層を積み重ねて作られている複合材料コネクティングロッドも知られている。
【0005】
また、中空体の壁又は中実体のいずれかからの、連結フォークの突出部になる延長部を付与することも知られている。本体を重合した後、突出部を得るために、延長部に穴を開けて、場合によりそれらを切断して成形すれば十分である。
【0006】
それでも、このようにして得られる突出部の厚みは、中空体の壁の厚み又は中実体の厚みと同じである。残念なことに、その厚みは必ずしも十分ではない。現行技術は以下の特許文献:フランス国特許第2060049号、ドイツ国特許第3726340号、フランス国特許第2705610号、米国特許第5279892号、米国特許第6036904号に説明されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複合材料の構造要素上に1つ又は複数の突出部を製造する新規方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、複合繊維からなる1次層の積層物から少なくとも局所的に作られていて突出部を形成するための少なくとも1つの延長部を画定する複合材料の構造要素上に、突出部を作製する方法を提供し、その方法は、少なくとも延長部において1次層を分離する工程と、1次層の間に中間層を挿入する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このようにして、延長部の厚みはもはや構造要素の厚みに制約されない。特に、適当な厚みの突出部を得るために、延長部をより厚く作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照すると、本発明の方法は、2つのフォーク103を有するチューブ本体102を含む完全な複合コネクティングロッド100であって、2つのフォーク103のそれぞれが2つの対面する突出部104を備える、複合コネクティングロッド100を得るためのものである。
【0011】
図2に示す本発明の特定態様によれば、最初の工程は、繊維布帛、この例では炭素繊維布帛から、パターン110を切り抜くことにあり、そのパターン110は、対向する2つの縁部112を有する中央部分111と、パターンの対称軸114の両側において、中央部分111の各端に2つの延長部を含む、中央部分111から突出する4つの延長部113を有する。
【0012】
繊維布帛は、複数の1次層を結合するために、ある1次層から他の1次層へ延在する縦糸繊維によって相互に繋がれた横糸繊維を有する複数の1次層を含んでなる、いわゆる「2.5D」織りから得ることが好ましい。そのように1次層の間を結合することにより、1次層を互いに固定することを可能にしつつ、パターンを成形しているときに1次層間における相対的な滑りも可能にする。
【0013】
この点において、好ましい布帛は特許文献のフランス国特許第2759096号に記載の布帛であり、図6を参照して以下説明される。この布帛は、以下によって構成される基本織りを含む。
【0014】
・第1に、布帛の厚さ方向Eにそれぞれ延在する少なくとも8つの列C1〜C8にまとめられており、かつ、所定ピッチPで間隔が空けられた、少なくとも3本の重なり合う横糸繊維を有する列C2、C4、C6、C8と、同じピッチPで間隔が空けられた、少なくとも4本の重なり合う横糸繊維を有する列C1、C3、C5、C7との間で交互する互い違いの配置で配設されている、少なくとも28本の横糸繊維1〜28であって、少なくとも7つの1次層N1〜N7を画定するように延在する少なくとも28本の横糸繊維1〜28。
【0015】
・第2に、横糸繊維方向にオフセットしている少なくとも4つの平行な面P1、P2、P3、P4に配設されている、少なくとも12本の縦糸繊維29〜40であって、各面が、これらの面のそれぞれに次のように配置された3本の重なり合う平行な縦糸繊維を含む。
【0016】
・第1の縦糸繊維(番号がそれぞれ29、32、35、38)は、4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の最上部の横糸繊維(1、8、15、22)を、先の列から少なくとも2ピッチP分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C5、C7、C1、C3)の中間上部の横糸繊維(16、23、2、9)と繋ぐ。第1の縦糸繊維は、最初の列から少なくとも4ピッチP分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の上端の横糸繊維(1、8、15、22)の上に戻る。
【0017】
・第2の縦糸繊維(番号がそれぞれ30、33、36、39)は、4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間上部の横糸繊維(2、9、16、23)を、先の列から少なくとも2ピッチP分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C5、C7、C1、C3)の中間下部の横糸繊維(17、24、3、10)と繋ぐ。第2の縦糸繊維は、最初の列から少なくとも4ピッチP分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間上部の横糸繊維(2、9、16、23)の上に戻る。
【0018】
・第3の縦糸繊維(番号がそれぞれ31、34、37、40)は、4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間下部の横糸繊維(3、10、17、24)を、先の列から少なくとも2ピッチP分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C5、C7、C1、C3)の最下部の横糸繊維(18、25、4、11)と繋ぐ。第3の縦糸繊維は、最初の列から少なくとも4ピッチP分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間下部の横糸繊維(3、10、17、24)の上に戻る。
【0019】
平行な縦糸繊維(29、30、31;32、33、34;35、36、37;38、39、40)の位置は、ある面から他の面に1ピッチP分長手方向にオフセットしている。連続線は面P1の縦糸繊維29、30、31を表し、短い破線は面P2の縦糸繊維32、33、34を表し、1点鎖線は面P3の縦糸繊維35、36、37を表し、最後に長い破線は面P4の縦糸繊維38、39、40を表す。オフセットが特にはっきりと確認できる。
【0020】
図2に戻ると、パターン110は、横糸繊維がパターン110の対称軸114に沿って延在するように、布帛から切り抜かれる。
【0021】
本発明の特定態様によれば、次にパターン110を巻き上げて、その縁部112を互いに近づけることによってチューブを形成する。図3に線図で示すように、縁部が面取りされた形状となるように布帛の層は互いに滑り、このとき滑り量は対称軸114においてゼロで縁部112に近傍において最大である。
【0022】
次に縁部112を互いに当てて配置する。得られるチューブの厚さが接合区域で実質的に一定であるように、縁部112の一方の端面がパターン110の内面にもたれていることが好ましい。
【0023】
この例では縁部112は平行でないため、円錐形のチューブ状部分が得られる。しかしながら、平行な縁部112を有するパターン110を切断することによって同様の方法で円筒形のチューブ状部分を得ることが可能である。
【0024】
本発明の特定態様によれば、図4に示すように、横糸繊維によって形成された1次層を分離するために、縦糸繊維が延長部113の端部から取り除かれる。こうして、互いに間隔を空けることが可能な1次層N1〜N7(真横から見たところ、太線によって表される)が作られる。中間層116(細線によって表され1つの中間層のみが参照番号を付されている)は、中間層116を構成する繊維が、斜めに、好ましくは1次層N1〜N7を構成する横糸繊維に対して45度の角度で延在するように、隣り合った1次層の間に挿入されている。
【0025】
中間層116は、端部の厚さを一定かつ布帛の厚さの実質的に2倍にするために、延長部113の厚さを徐々に変化させるような方法で配設されることが好ましい。このようにするために、延長部113の中央からの距離の増加に伴って長さの増加する中間層116が挿入される。
【0026】
次に、延長部113の端部を補強するために、1次層N1〜N7及び中間層116を横断して横断繊維117を導入する(図中、横断繊維は点線で表され、それらの1つのみが参照番号を有する)。こうして、特に強くてこれらの層が互いに滑ることを防止する3次元構造がその端部に付与される。横断繊維は縫うことによって挿入されることが好ましい。
【0027】
中間層を取り付けたパターンはマンドレル(不図示)上で成形される。その後、従来の樹脂トランスファー成形(RTM)法を用いて、樹脂をパターンの繊維及び中間層の繊維の間に拡散する。
【0028】
このようにして、重なり合った縁部112は樹脂によって結合される。重なり合った面取り面は、接合部(図1に見られる)が非常に強く、その接合部によってコネクティングロッドが引張及び圧縮の両方の応力に耐えるのに適したものとなるように、2つの縁部112の間により大きな結合領域を提供する。
【0029】
こうして、両端に延長部によって形成された、厚みの増した2つのアームを有する強いチューブ本体が製造され、そのアームは対になって互いに対面して延在する。次に、アームを突出部104に変形するために、アームを切断して成形しそれらに穴を開けることが残っている。こうして、全体が複合材料で作られた図1に示すコネクティングロッドが製造される。
【0030】
好ましくは、そして図5に示すように、突出部はそれぞれ一対のリング120を備え、各対は、突出部104のうち1つの穴の中に延在する円筒部分122及び突出部104の側面の1つに接して延在するカラー123を有する第1のリング121と、第1のリング121の円筒部分122の内側で密接して延在する円筒部分126及び円筒部分122の端部にもたれているカラー127を有する第2のリング125とを含む。その円筒部分122の長さは、突出部がカラー123及び127の間で軽く締め付けられるように、突出部の幅104よりもごく僅かに短いことが好ましい。
【0031】
そのようなコネクティングロッドは、着陸装置用の折り畳み式支柱又はステーを構成するために有利に使用される。本発明のコネクティングロッドがこのような用途で有利に使用できるように、そのような支柱は、ヒンジで連結されており本質的に引張及び圧縮において作動する、2つのコネクティングロッド要素を含む。加えて、そのような支柱又はステーは、例えばタイヤによって跳ね上げられた石からの衝撃に耐えることも可能であることが知られている。使用される「2.5D」布帛は、その高い耐衝撃性及び耐剥離性について特に周知である。
【0032】
このような寸法取りは、金属支柱又はステーと比較して重量の節約が顕著であることを示す。その上、製造時間も非常に短縮される。
【0033】
本発明は上記記載に制限されない。逆に、本発明は特許請求の範囲の定める範囲内にある任意の変形を含む。
【0034】
特に、図6を参照して特定の布帛の使用を説明したが、より多数の1次層を有する同様の布帛を使用することも可能であり、あるいは実際には、1次層が互いに滑ることが可能な他の布帛を使用することも可能である。そのような布帛は、1次層を重ね合わせてそれらを緩く縫い合わせることによって得ることが可能である。
【0035】
縁部と縁部の接合を補強するために、重合の前に2つの縁部を縫い合わせることも可能である。
【0036】
本発明の方法はコネクティングロッドに関連しているが、本発明の方法は、複合材料で作られた他の任意の構造要素に同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の方法により得られるコネクティングロッドの斜視図である。
【図2】本発明のコネクティングロッドを作製するための切り抜きパターンの正面図である。
【図3】図1のコネクティングロッドの本体を通る線III−IIIの横断面である。
【図4】真横から見たときの図1のパターンの部分図である。
【図5】図1の線V−Vの横断面図である。
【図6】本発明の方法を実施する際に使用するのに適した、結合された複数の層を含む布帛の線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合繊維からなる1次層(N1、...、N7)の積層物から少なくとも局所的に作られており突出部を形成するための少なくとも1つの延長部(113)を画定する複合材料の構造要素上に、前記突出部を作製する方法であって、少なくとも前記延長部において前記1次層を分離する工程と、前記1次層の間に中間層(116)を挿入する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記中間層が、前記延長部において前記1次層を形成する横糸繊維に対して斜めに配向した繊維を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1次層及び前記中間層を通して横断繊維(117)を挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記延長部(113)の中心面の両側における距離の増加に伴って長さの増加する中間層(116)を挿入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
樹脂を注入し重合した後に、前記延長部に穴を開けて、連結フォークの突出部(104)を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
開けられた前記穴にリングの対(120)を取り付ける、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記延長部が、互いに滑ることが可能なように重ね合わせて結合された1次層(N1、...、N7)から構成される複合繊維布帛から切り抜かれた、対向する2つの縁部(112)を有するパターン(110)の一部を形成し、前記パターンを、前記1次層が互いに滑って前記2つの縁部に面取り形状を付与するようにチューブに巻いて前記構造要素の本体を形成し、前記面取り形状の縁部を重ね合わせて接合する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パターンを、
・第1に、前記布帛の厚さ方向(E)にそれぞれ延在する少なくとも8つの列(C1〜C8)にまとめられており、かつ、所定ピッチ(P)で間隔が空けられた、少なくとも3本の重なり合う横糸繊維を有する列(C2、C4、C6、C8)と、同じピッチ(P)で間隔が空けられた、少なくとも4本の重なり合う横糸繊維を有する列(C1、C3、C5、C7)との間で交互する互い違いの配置で配設されている、少なくとも28本の横糸繊維(1〜28)であって、少なくとも7つの1次層(N1〜N7)を画定するように延在する少なくとも28本の横糸繊維(1〜28)と、
・第2に、前記横糸繊維方向にオフセットしている少なくとも4つの平行な面(P1、P2、P3、P4)に配設されている、少なくとも12本の縦糸繊維(29〜40)であって、各面が、これらの面のそれぞれに次のように配置された3本の重なり合う平行な縦糸繊維、すなわち
・4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の最上部の横糸繊維(1、8、15、22)を、先の列から少なくとも2ピッチ(P)分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C5、C7、C1、C3)の中間上部の横糸繊維(16、23、2、9)と繋ぎ、最初の列から少なくとも4ピッチ(P)分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の上端の横糸繊維(1、8、15、22)の上に戻る、第1の縦糸繊維(番号がそれぞれ29、32、35、38)と、
・4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間上部の横糸繊維(2、9、16、23)を、先の列から少なくとも2ピッチ(P)分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C5、C7、C1、C3)の中間下部の横糸繊維(17、24、3、10)と繋ぎ、最初の列から少なくとも4ピッチ(P)分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間上部の横糸繊維(2、9、16、23)の上に戻る、第2の縦糸繊維(番号がそれぞれ30、33、36、39)と、
・4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間下部の横糸繊維(3、10、17、24)を、先の列から少なくとも2ピッチ(P)分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C5、C7、C1、C3)の最下部の横糸繊維(18、25、4、11)と繋ぎ、最初の列から少なくとも4ピッチ(P)分間隔の空いた4つの横糸繊維列(C1、C3、C5、C7)の中間下部の横糸繊維(3、10、17、24)の上に戻る、第3の縦糸繊維(番号がそれぞれ31、34、37、40)と、
を含み、平行な縦糸繊維(29、30、31;32、33、34;35、36、37;38、39、40)の位置が、ある面から他の面に1ピッチ(P)分長手方向にオフセットしている、少なくとも12本の縦糸繊維(29〜40)と
から構成される基本織りを含む布帛から切り抜く、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パターンが対称軸(114)を有し、前記1次層が、前記対称軸に沿って延在する横糸繊維を有するように、前記パターンを前記布帛から切り抜く、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記パターンをチューブに形成したときに対面することになる少なくとも2つの延長部(113)を有するように、前記パターンを切り抜く、請求項7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−516607(P2009−516607A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541780(P2008−541780)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002504
【国際公開番号】WO2007/060305
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(597060689)メシエードウティ ソシエテ アノニム (8)
【Fターム(参考)】