説明

複合材料

【課題】定着ベルト用の熱伝導性が改善された新しい複合材料を提供する。
【解決手段】熱伝導性を有するポリイミド樹脂110中に複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120を実質的に均一に分散させることにより、該複合材料に約0.4W/mK〜約2.5W/mKの熱伝導率を付与するとともに、該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子の各々は窒化アルミニウム粒子コア上に配設した不動態化層を含んで窒化アルミニウム粒子コアの表面の酸化および熱劣化を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、静電複写および電子写真に関し、さらに具体的には、定着ベルト用の熱伝導性が改善された複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
より高い熱伝導性を実現するために、定着器材料にはフィラーが組み込まれている。しかし、熱伝導性フィラーを定着部材に組み込むと、この複合定着器材料の硬度が増大する。このため、定着用途のための熱伝導性材料を開発する際には1つの制限要因が存在する。最高レベルの熱伝導性を定着剤に付与しながら同時に、得られた複合材料の適した物理的性質のバランスを維持するには、非常に高い熱伝導性を有する粒子を有していることが望ましい。従来、窒化アルミニウムが熱伝導性フィラーとして定着器材料に使用されてきたが、窒化アルミニウムの固有の熱的不安定性によって制限される。窒化アルミニウムなどのフルオロエラストマーからなる複合材料は熱不安定性であることがわかっているが、この複合材料の架橋副産物には発熱反応があるために、その使用が禁止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,945,223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、先行技術のこれらの問題および他の問題を克服して、熱伝導性が改善された新しい複合材料を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
種々の実施形態によれば、複合材料がある。この複合材料は熱伝導性を有するポリイミド樹脂と該ポリイミド樹脂中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子とを含んで、該複合材料に約0.4W/mK〜約2.5W/mKの熱伝導率を付与することができる。該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子の各々は窒化アルミニウム粒子コア上に配設した不動態化層を含んで窒化アルミニウム粒子コアの表面の酸化および熱劣化を阻止することができることを特徴とする。
【0006】
種々の実施形態によれば、複合材料がある。該複合部材はフルオロポリマーまたはフルオロエラストマーの少なくとも1つと該フルオロポリマーまたは該フルオロエラストマーの少なくとも1つの中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子とを含んで、該複合材料に約0.4W/mK〜約2.5W/mの熱伝導率を付与することができる。該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子の各々は窒化アルミニウム粒子コア上に配設した不動態化層を含んで窒化アルミニウム粒子コアの表面の酸化および熱劣化を阻止することができることを特徴とする。
【0007】
種々の実施形態によれば、複合材料がある。該複合部材は、熱伝導性を有するシリコーンエラストマーと該シリコーンエラストマー中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子とを含んで該複合材料に約0.4W/mK〜約2.5W/mKの熱伝導率を付与することができる。該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子の各々は、窒化アルミニウム粒子コア上に配設した不動態化層を含んで窒化アルミニウム粒子コアの表面の酸化および熱劣化を阻止することができることを特徴とする。
【0008】
更に別の実施形態によれば、複合材料を製造する方法がある。該方法は複数の窒化アルミニウム粒子を提供するステップと該複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に不動態化層を形成するステップとを含んで複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子を提供することができる。該不動態化層は窒化アルミニウム粒子の表面の酸化および熱劣化を阻止することを特徴とする。該方法は該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をポリマー中に分散させて約0.4W/mK〜約2.5W/mKの熱伝導率を該複合材料に付与するステップを更に含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本教示の種々の実施形態に係る複合材料を示す略断面図である。
【図2】本教示の種々の実施形態に係る例示の不動態化された窒化アルミニウム粒子を示す略図である。
【図3】本教示の種々の実施形態に係る例示の不動態化された窒化アルミニウム粒子を示す略図である。
【図4】本教示の種々の実施形態に係る複合材料を製造するステップを示す例示の方法である。
【図5】本教示の種々の実施形態に係る例示の定着サブシステムを示す略図である。
【図6】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【図7】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【図8】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【図9】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【図10】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【図11】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【図12】本教示の実施形態に係る例示の定着器部材を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本教示の種々の実施形態に係る複合材料100を概略的に示している。いくつかの実施形態では、複合材料100は、約0.2W/mK〜約0.4W/mKの範囲の熱伝導率を有するポリイミド樹脂110とポリイミド樹脂110中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120とを含んで、該ポリイミド樹脂の熱伝導率よりも最大で約500%、該複合材料の熱伝導率を増大させ得る。種々の実施形態では、複合材料100は約0.4W/mK〜約2.5W/mKの範囲の熱伝導率を、場合によっては約0.5W/mK〜約1.5W/mKの範囲の熱伝導率を有し得る。場合によっては、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120は、複合材料100の総重量の約0.01重量%〜約50重量%の範囲の量で、他の場合には、複合材料100の総重量の約3重量%〜約35重量%の範囲の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120は、図2に示す球状粒子220および図3に示す高アスペクト比粒子320の1以上を含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320の各々は、約5nm〜約5μmの範囲の、場合によっては約10nm〜約2μmの範囲の少なくとも1つの寸法を有し得る。また、図2および3に示すように、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320の各々は、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含んで、不動態化層224、324が窒化アルミニウム粒子コア222、322の表面の酸化および熱劣化を阻止し得る。
【0011】
種々の実施形態では、ポリイミドを含む不動態化層224、324は、以下に示すように、ポリイミド前駆体モノマー(例えば、4,4’‐オキシジアニリン)をピロメリット酸無水物と縮合反応させることによって形成され得る。
【0012】
【化1】

【0013】
縮合反応(1)は約25℃〜約200℃の範囲の温度で実行され得る。ある実施形態では、不動態化層224、324は、限定するものではないがポリアミド酸、BTDA(ベンゾフェノンテトラカルボン酸)、1,4‐ベンゼンジアミン、MPD(4,4’‐メチレンビスベンゼンアミン)およびBTDE(4,4’‐カルボニルビス(1,2‐ベンゼンジカルボン酸)などの他の適切なポリイミド前駆体モノマーを用いて形成され得る。不動態化層224、324の厚さおよび表面粗さはプロセス条件(例えば、反応時間、反応媒体の温度およびモノマー濃度)によって制御され得る。
【0014】
種々の実施形態では、ポリイミド樹脂110と複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320とを含む複合材料100は、現在使用されている材料よりも高い熱伝導性を必要とするベルト定着器または他のベルト構成要素の基材として使用され得る。如何なる特定の理論によっても拘束しようとするものではないが、複合材料100は、電子写真システムおよび/または静電複写システムの定着器サブシステムにおいて、熱転写の改善をもたらすとともに低エネルギー消費または高速のプロセス速度を可能にするものと考えられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、図1に示す複合材料100は、フルオロポリマーおよび約0.2W/mK〜約0.4W/mKの範囲の熱伝導率を有するフルオロエラストマー110の1以上と、フルオロポリマーおよびフルオロエラストマー110の1以上の中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120とを含んで、フルオロポリマーおよびフルオロエラストマー110の1以上の熱伝導率よりも最大で約500%、複合材料100の熱伝導率を増大させ得る。種々の実施形態では、複合材料100は約0.5W/mK〜約2.5W/mKの範囲の、場合によっては約0.5W/mK〜約1.5W/mの範囲の熱伝導率を有し得る。フルオロポリマーおよびフルオロエラストマーの例には、限定するものではないがポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー、およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマーを含み得る。
【0016】
図2および3に示すように、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320の各々は、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。いくつかの実施形態では、不動態化層224、324は窒化アルミニウム粒子コア222、322の表面の酸化および熱劣化を阻止し得る。他の実施形態では、不動態化層224、324はフルオロポリマーおよびフルオロエラストマー110の1以上中の窒化アルミニウム粒子120、220、320の分散性を改善し得る。他のいくつかの実施形態では、不動態化層224、324はフルオロポリマーおよびフルオロエラストマー110の1以上の物理的性質(例えば、デュロメータ硬度、引張強度、極限伸び、堅牢性(toughness)および初期モジュラス(initial modulus))を向上させ得る。
【0017】
不動態化層224、324は、以下に示すように、1種以上のフッ素化モノマー(例えば、フルオロフェニレンジアミン、テトラフルオロ無水フタル酸、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、三フッ化塩化エチレンおよびパーフルオロメチルビニルエーテル等)の縮合反応によって形成することができる。
【0018】
【化2】

【0019】
縮合反応(2)は約25℃〜約200℃の範囲の温度で行うことができる。フッ素化ポリイミド系モノマーを反応スキーム2に示すが、適した他の任意のフッ素化モノマーを用いてもよい。
【0020】
種々の実施形態では、フルオロポリマーおよびフルオロエラストマー110の1以上と複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320とを含む複合材料100は、高い熱伝導性を必要とするベルト定着器または他のベルト構成要素のトップコート材料として使用され得る。如何なる特定の理論によっても拘束しようとするものではないが、複合材料100は、電子写真システムおよび/または静電複写システムの定着器サブシステムにおいて、熱転写の改善をもたらすとともに低エネルギー消費または高速のプロセス速度を可能にするものと考えられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、図1に示す複合材料100は、熱伝導性を有するシリコーンエラストマー110とシリコーンエラストマー110中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120とを含んで、シリコーンエラストマー110の熱伝導率よりも最大で約500%、複合材料100の熱伝導率を増大させ得る。種々の実施形態では、複合材料100は約0.5W/mK〜約2.5W/mKの範囲の、場合によっては約0.5W/mK〜約1.5W/mの範囲の熱伝導率を有し得る。限定するものではないが室温加硫(RTV)シリコーンゴム類、高温加硫(HTV)シリコーンゴム類、および低温加硫(LTV)シリコーンゴム類のようなシリコーンゴム類などの任意の適したシリコーンエラストマー110を用いてもよい。市販のシリコーンゴム類の例には、限定するものではないがシラスチック(SILASTIC(登録商標))735ブラックRTVおよびシラスチック(SILASTIC(登録商標))732RTV(ダウコーニング社、ミシガン州ミッドランド所在)、ならびに106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(ゼネラルエレクトリック社、ニューヨーク州アルバニー所在)が挙げられる。適した他のシリコーン材料には、限定するものではないがシルガード(登録商標)(Sylgard)182(ダウコーニング社、ミシガン州ミッドランド所在)、シロキサン類(ポリジメチルシロキサン類が好ましい)、フルオロシリコーン類(例えば、シリコーンゴム552(Sampson Coatings社、バージニア州リッチモンド所在))、ジメチルシリコーン類、液体シリコーンゴム類(例えば、ビニル架橋熱硬化性ゴム類またはシラノール室温架橋材料)等が挙げられる。
【0022】
図2および3に示すように、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320の各々は、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。いくつかの実施形態では、不動態化層224、324は、以下に示すように、シリコーンエラストマー系オリゴマー(silicone elastomeric oligomer)を窒化アルミニウム粒子(例えば、以下に示すように低分子量のシラノール官能性ポリジメチルシロキサン)と熱反応させることによって形成され得る(式中、Rは水酸基、x=1〜10、y=0〜5である)。
【0023】
【化3】

【0024】
限定するものではないがクロロシラン類およびトリメトキシシラン類などの適した他の任意のシリコーン構造体および前駆体モノマーを反応スキーム(3)に使用してもよい。種々の実施形態では、シリコーン系エラストマー110と複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子120、220、320とを含む複合材料100を用いて、現在使用されている材料よりも高い熱伝導率を必要とするベルト定着器または他のベルト構成要素中に柔軟層が形成され得る。
【0025】
種々の実施形態によれば、図4に示すように、複合材料を製造する方法400がある。方法400には、ステップ431に示すように複数の窒化アルミニウム粒子を提供する工程と、ステップ432に示すように複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に不動態化層を形成して不動態化された窒化アルミニウム粒子を形成する工程とを含み得る。種々の実施形態では、該不動態化層は、不所望の反応に対して、窒化アルミニウム粒子の表面の酸化および熱劣化を阻止することができる。方法400には、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をポリマー中に分散させて約0.4W/mK〜約2.5W/mKの熱伝導率を複合材料に付与するステップ433を含んでもよい。また、該不動態化層は、不動態化された窒化アルミニウム粒子のポリマー中での分散性を改善し、ポリマーとの不所望の反応を阻止し、熱伝導性および物理的性質(例えば、デュロメータ硬度、引張強度、極限伸び、堅牢性(toughness)および初期モジュラス(initial modulus))を増大させ得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、複数の窒化アルミニウム粒子各々の上に不動態化層を形成するステップ432には、反応スキーム(1)に示すように、限定するものではないが4,4’‐オキシジアニリン、ピロメリット酸無水物、ポリアミド酸、BTDA(ベンゾフェノンテトラカルボン酸)、1,4‐ベンゼンジアミン、MPD(4,4’‐メチレンビスベンゼンアミン)およびBTDE(4,4’‐カルボニルビス(1,2‐ベンゼンジカルボン酸)等の1以上のモノマーを該複数の窒化アルミニウム粒子に添加して混合物を形成し、該混合物を約25℃〜約200℃の範囲の温度で加熱して、該1以上のモノマーの縮合反応生成物を含んだ不動態化層を該複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に形成するステップを含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をポリマー中に分散させるステップには、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をポリイミド(例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトン)中に分散させるステップを含み得る。
【0027】
他の実施形態では、複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に不動態化層を形成するステップ432には、反応スキーム(2)に示すように、1以上のモノマー(例えば、フルオロフェニレンジアミン、テトラフルオロ無水フタル酸、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、三フッ化塩化エチレンおよびパーフルオロメチルビニルエーテル)を該複数の窒化アルミニウム粒子に添加して混合物を形成し、該混合物を約25℃〜約200℃の範囲の温度で加熱して、該1以上のモノマーの縮合反応生成物を含んだ不動態化層を該複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に形成するステップを含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をポリマー中に分散させるステップには、フルオロポリマーおよびフルオロエラストマー(例えば、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー類、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー類、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー類、およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマー類)の少なくとも1つの中に複数の不動態化された該窒化アルミニウム粒子を分散させるステップを含み得る。
【0028】
他の実施形態では、複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に不動態化層を形成するステップ432には、反応スキーム3に示すように、1以上のシリコーンエラストマー系オリゴマーを該複数の窒化アルミニウム粒子に添加して混合物を形成し、該混合物を約25℃〜約200℃の範囲の温度で加熱して、該1以上のモノマーの縮合反応生成物を含んだ不動態化層を該複数の窒化アルミニウム粒子の各々の上に形成するステップを含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をポリマー中に分散させる該ステップには、該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子をシリコーンエラストマー(例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム類、高温加硫(HTV)シリコーンゴム類、および低温加硫(LTV)シリコーンゴム類のようなシリコーンゴム類)中に分散させるステップを含み得る。市販のシリコーンゴム類の例には、限定するものではないがシラスチック(SILASTIC(登録商標))735ブラックRTVおよびシラスチック(SILASTIC(登録商標))732RTV(ダウコーニング社、ミシガン州ミッドランド所在)、ならびに106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(ゼネラルエレクトリック社、ニューヨーク州アルバニー所在)が挙げられる。適した他のシリコーン材料には、限定するものではないがシルガード(登録商標)(Sylgard)182(ダウコーニング社、ミシガン州ミッドランド所在)、シロキサン類(ポリジメチルシロキサン類が好ましい)、フルオロシリコーン類(例えば、シリコーンゴム552(Sampson Coatings社、バージニア州リッチモンド所在))、ジメチルシリコーン類、液体シリコーンゴム類(例えば、ビニル架橋熱硬化性ゴム類またはシラノール室温架橋材料)等が挙げられる。
【0029】
図5は本教示の種々の実施形態に係る例示の定着サブシステム500を概略的に示している。定着サブシステム500は、ベルト状の定着器部材540と、定着ニップ552を形成するように設置可能な回転自在圧力ロール(rotatable pressure roll)554とを含み得る。未定着(unfused)のトナー画像を担持する媒体556が定着のために定着ニップ552に送給され得る。図6は本教示の種々の実施形態に係る例示の定着ベルト540、640の断面を概略的に示している。例示の定着ベルト640は、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’が基材642の熱伝導率を増大させるように、ポリイミド610’中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’を含んだ基材642を含み得る。複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’の各々は、図2および3に示すように、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。また、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’は、反応スキーム(1)に示すように形成され得る。例示の定着ベルト640は基材642上に配設したトップコート層644を含んでもよく、トップコート層644はフルオロポリマーおよびフルオロエラストマーの1以上を含み得る。該1以上のフルオロポリマーおよびフルオロエラストマーは、1以上のモノマー繰り返し単位(例えば、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびそれらの混合物)を含み得る。例示のトップコート層1144は、限定するものではないがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー、およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマーを含み得る。
【0030】
図7は定着ベルト540,640の別の例示の実施形態740を示している。定着ベルト740は基材742上に配設したトップコート層744を含み得る。該基材742はポリイミド710’中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子720’を含む。また、トップコート層744は、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子720’’がトップコート層744の熱伝導率を増大させるように、フルオロポリマーおよびフルオロエラストマー710’’の少なくとも1以上の中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子720’’を含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子720’’の各々は、図2および3に示すように、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。ある実施形態では、フッ素化モノマーの縮合反応生成物を含む不動態化層224、432は、反応スキーム(2)に示すように形成され得る。
【0031】
図8は定着ベルト540、640、740の別の例示の実施形態840を示している。図8に示す定着ベルト840は基材842上に配設した柔軟層846と該柔軟層846上に配設したトップコート層844とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、柔軟層846はシリコーンエラストマー810’’’中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子820’’’を含み得る。図2および3に示すように、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子820’’’の各々は、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。種々の実施形態では、シリコーンエラストマー系オリゴマーを含む不動態化層224、324は反応スキーム3に示すように形成され得る。基材842はポリイミド810’中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子820’を含んでもよい。
【0032】
図9は定着ベルト540、640、740、840の別の例示の実施形態940を示しており、3層(ポリイミド910’を含む基材942、基材942上に配設したシリコーンエラストマー910’’を含む柔軟層946および柔軟層946上に配設したフルオロエラストマーおよびフルオロポリマー910’’の1以上を含むトップコート層944)の各々はそれぞれ、不動態化された窒化アルミニウム粒子920’、920’’、920’’’を含み得る。
【0033】
図10は本教示の実施形態に係る別の例示の定着ベルト540、1040の断面を概略的に示している。例示の定着ベルト1040は基材1042と基材1042上に配設したトップコート層1044とを含み得る。基材1042は適した任意の高温プラスチック基材(例えば、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトン)であり得る。トップコート層1044は、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子1020’’がトップコート層1044の熱伝導率を増大させるように、フルオロポリマーおよびフルオロエラストマー1010’’の少なくとも1つの中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子1020’’を含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子1020’’の各々は、図2および3に示すように、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。ある実施形態では、不動態化層224、432はフッ素化モノマーの縮合反応生成物を含み、反応スキーム2に示すように形成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、例示の定着ベルト1040は基材1042とトップコート層1044との間に配設した柔軟層を含み得る。柔軟層用の材料の例には、限定するものではないが室温加硫(RTV)シリコーンゴム類;高温加硫(HTV)シリコーンゴム類;および低温加硫(LTV)シリコーンゴム類のようなシリコーンゴム類を含み得る。市販のシリコーンゴム類の例には、限定するものではないがシラスチック(SILASTIC(登録商標))735ブラックRTVおよびシラスチック(SILASTIC(登録商標))732RTV(ダウコーニング社、ミシガン州ミッドランド所在)、ならびに106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(ゼネラルエレクトリック社、ニューヨーク州アルバニー所在)が挙げられる。適した他のシリコーン材料には、限定するものではないがシルガード(登録商標)(Sylgard)182(ダウコーニング社、ミシガン州ミッドランド所在)、シロキサン類(ポリジメチルシロキサン類が好ましい)、フルオロシリコーン類(例えば、シリコーンゴム552(Sampson Coatings社、バージニア州リッチモンド所在))、ジメチルシリコーン類、液体シリコーンゴム類(例えば、ビニル架橋熱硬化性ゴム類またはシラノール室温架橋材料)等が挙げられる。
【0035】
図11は定着ベルト540、1040の別の例示の実施形態1140を示しており、定着ベルト1140は基材1142とトップコート層1144との間に配設した柔軟層を含んでいる。種々の実施形態では、柔軟層1146はシリコーンエラストマー1110’’’中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子1120’’’を含み得る。複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子1120’’’の各々は、図2および3に示すように、窒化アルミニウム粒子コア222、322上に配設した不動態化層224、324を含み得る。種々の実施形態では、不動態化層224、324はシリコーンエラストマー系オリゴマーを含み、反応スキーム3に示すように形成され得る。
【0036】
図12は定着ベルト540、1040、1140の別の例示の実施形態1240を示しており、定着ベルト1240は基材1242とトップコート層1244との間に配設した柔軟層1246を含み、柔軟層1246のみが、シリコーンエラストマー1110’’’中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子1120’’’を含んでいる。基材1142は適した任意の高温プラスチック基材(例えば、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトン)であり得る。トップコート層1144はフルオロポリマーおよびフルオロエラストマーの1以上を含み得る。フルオロポリマーおよびフルオロエラストマーの1以上は、1以上のモノマー繰り返し単位(例えば、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびそれらの混合物)を含み得る。トップコート層1144の例には、限定するものではないがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー類、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー類、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー類、およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマー類を含み得る。
【0037】
図6〜12に示した定着ベルトの種々の実施形態に関し、基材642、742、842、1242には、不動態化された粒子620’、720’、820’、1210’およびポリイミド610’、710’、810’、1210’の総重量の約0.01重量%〜約50重量%の範囲の量で、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’、720’、820’を含み得る。いくつかの実施形態では、トップコート層744、944、1044、1144には、不動態化された粒子720’’、920’’、1020’’、1120’’とフルオロポリマーおよびフルオロエラストマー710’’、910’’、1010’’、1110’’の1以上との総重量の約0.01重量%〜約50重量%の範囲の量で、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子720’’、920’’、1020’’、1120’’を含み得る。他の実施形態では、柔軟層846、946、1146、1246には、不動態化された粒子820’’’、920’’’、1120’’’、1220’’’とシリコーンエラストマー810’’’、910’’’、1110’’’、1210’’’との総重量の約0.01重量%〜約50重量%の範囲の量で、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子820’’’、920’’’、1120’’’、1220’’’を含み得る。種々の実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’、720’、820’、720’’、920’’、1020’’、1120’’、820’’’、920’’’、1120’’’、1220’’’には、図2に示す球状粒子220および図3に示す高アスペクト比粒子320の1以上を含み得る。ある実施形態では、複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子620’、720’、820’、720’’、920’’、1020’’、1120’’、820’’’、920’’’、1120’’’、1220’’’には、約5nm〜約5μmの範囲の少なくとも1つの寸法を、場合によっては約10nm〜約2μmの範囲の少なくとも1つの寸法を有する粒子を含み得る。また、反応スキーム1、2および3は反応スキームの例示であって、当業者であれば、適した他の任意の反応スキームならびに他の任意のモノマーを用いて、窒化アルミニウム粒子220、320、620’、720’、820’、720’’、920’’、1020’’、1120’’、820’’’、920’’’、1120’’’、1220’’’のコア222、322の上に不動態化層224、324を形成することができる。
【符号の説明】
【0038】
100 複合材料、110 ポリイミド樹脂、120,220,320,620,720’,820’,820’’’,920’,920’’,920’’’,1020’’,1120’’’ 不動態化された窒化アルミニウム粒子、224,324 不動態化層、222,322 窒化アルミニウム粒子コア、320 高アスペクト比粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、熱伝導性を有するポリイミド樹脂と、約0.4W/mK〜約2.5W/mKの熱伝導率を該複合材料に付与するように該ポリイミド樹脂中に実質的に均一に分散させた複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子とを含み、該複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子の各々が、窒化アルミニウム粒子コア上に配設した不動態化層を含んで該窒化アルミニウム粒子コアの表面の酸化および熱劣化を阻止することを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
前記不動態化層が、4,4’‐オキシジアニリン、ピロメリット酸無水物、ポリアミド酸、BTDA(ベンゾフェノンテトラカルボン酸)、1,4‐ベンゼンジアミン、MPD(4,4’‐メチレンビスベンゼンアミン)およびBTDE(4,4’‐カルボニルビス(1,2‐ベンゼンジカルボン酸)からなる群より選択されるモノマーの縮合反応生成物を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子が、球状粒子および高アスペクト比粒子の1以上を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記複数の不動態化された窒化アルミニウム粒子が、約5nm〜約5μmの範囲の少なくとも1つの寸法を有する複数の粒子を含む、請求項1に記載の複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−282196(P2010−282196A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125936(P2010−125936)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】