説明

複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法と修理構造及び接続構造

【課題】 複合材に埋め込まれた埋込光ファイバが損傷した場合、その損傷した埋込光ファイバを代替光ファイバに置換えて、もとの埋め込まれた光ファイバ全体を修復できる複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法を提供すること。
【解決手段】 複合材の内部に埋め込んだ埋込光ファイバ10を有する複合材構造体1の埋込光ファイバ修理方法として、前記埋込光ファイバ10の損傷部分を含む複合材の一部分を一体的に除去して開口部3を形成し、前記開口部3に露出する埋込光ファイバ10の端面を複合材端面と一体的に研磨し、前記研磨した埋込光ファイバの芯と代替光ファイバの芯とが連続するように位置調整して両端面を突き合わせ、該埋込光ファイバの端面と代替光ファイバの端面とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材で形成された構造体に埋め込まれた光ファイバの損傷時に、その損傷部分の光ファイバを修理する方法とその修理構造、及び接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合材構造が種々の分野で利用されている。複合材は、金属材に比べて重量が軽く強度や剛性が高いことから、適用した構造体の重量を軽減できるため、例えば、航空機等の構造体において利用が拡大している。
【0003】
一方、複合材構造体は、異物の衝突などによって内部に損傷が生じる可能性があるため、点検で発見できない損傷を許容する設計(損傷許容設計)や次の点検までの間に損傷が致命的なものとならないような設計(フェールセーフ設計)を行う必要がある。また、設計上許容できない損傷は点検時に発見して修理する必要があり、機体外面だけでなく、機体内面側からも目視点検や非破壊検査を実施しなくてはならない。さらに、複雑な形状や曲面を有する複合材構造体の場合には、非破壊検査による検査ができない場合もある。そこで、これら損傷許容設計やフェールセーフ設計で生じる構造分の重量軽減、目視点検・非破壊検査のコスト低減/期間短縮/検査漏れ防止/容易化に寄与するための、複合材構造体における損傷有無等の構造健全性を検査・診断する方法として、複合材内部に光ファイバセンサを埋め込み、その光ファイバセンサによって損傷等を検知する損傷検知システムが提案されている。
【0004】
この種の先行技術として、例えば、光ファイバセンサを埋め込んだ複合材構造などの、光ファイバを用いて構成した光路形成体に、互いに異なる周波数の光信号を反射する複数のセンサ部(歪計測用FBG(Fiber Bragg Grating)センサなど)を間隔をあけて設け、各センサ部で反射した光信号の有無および強度(透過光強度計測)などから損傷の有無、程度や位置を判定するようにした損傷検知装置(実施形態として、複合材に生じた衝撃によって生じるFBGセンサの歪計測値と解析値の比較や、歪の到達時間差による損傷検知装置を含む)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、上記したような損傷検知方法を採用する場合、複合材内部の埋込光ファイバに損傷を生じると、その部分を修理する必要がある。例えば、光ファイバ単体の修理方法としては、損傷部分を切除した後、代替光ファイバを切除位置に配置し、代替光ファイバを融着または端面を付合わせた状態で接続する方法が採用されている。しかし、複合材に埋め込まれた光ファイバの修理は、上記修理方法では不可能である。
【0006】
そこで、複合材に埋め込まれた光ファイバが損傷した場合の修理方法として、図14(a) 〜(c) に示す方法が考えられている。この方法は、複合材構造体101の複合材102に埋め込まれた埋込光ファイバ110に損傷200が生じると(a) 、その損傷した部分の複合材102の表面に代替光ファイバ120を接着剤121で接着し(b),(c) 、損傷位置から離れた位置で既設の光ファイバと接続するものである。
【0007】
なお、複合構造体に埋設された光ファイバが損傷した場合の修理方法として、例えば、その部分の複合材を表面層から削って除去し、除去した部分の光ファイバの端部に新しい光ファイバの端部を融着等で接合するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−321223号公報
【特許文献2】特表2009−517680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の図14で示す修理方法では、埋め込んだ光ファイバそのものの修理にはなっておらず、埋め込んだ光ファイバは、その損傷部分はもとより、その損傷部のために必要な透過光が得られなくなった他の健全な部分も使用できないまま放置せざるを得ない。また、上記光ファイバセンサとして用いられる光ファイバは、例えば、コア径5μm〜10μm程度、グラッド径40μm〜130μm程度のものが用いられるため、上記したように複合材の表面に接着して端部を既設の光ファイバと接続する構成では、表面に接着された光ファイバの耐久性、信頼性が問題になる場合もある。特に、細径の光ファイバの場合には耐久性、信頼性がより問題になる。さらに、複合材構造体によっては、複合材表面に光ファイバを配設することができない部分の場合もあり、その場合には上記方法は適用できない。
【0010】
その上、埋め込んだ場合と比べて、光ファイバセンサによって反射する光信号の有無や強度などにより損傷を正確に検知することが難しくなる場合がある。
【0011】
なお、上記特許文献2に記載された修理方法では、上記したような埋め込んだ光ファイバの損傷時に、その部分の複合材を表面層から削って除去する際、埋め込んだ光ファイバをさらに損傷させる可能性があり、埋め込んだ光ファイバを健全な状態で引き出すことが困難である。そのため、再び正確な損傷等の検出ができる光ファイバセンサや必要な透過光が得られる光ファイバの状態に修理するのは難しい。
【0012】
そこで、本発明は、複合材に埋め込まれた埋込光ファイバが損傷した場合、その損傷部分の埋込光ファイバを代替光ファイバに置換えて、もとの埋め込まれた光ファイバ全体を修復できる、複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法とその修理構造及び接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法は、複合材の内部に埋め込んだ埋込光ファイバを有する複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法であって、前記埋込光ファイバの損傷部分を含む複合材の一部分を除去して開口部を形成し、前記開口部に露出する埋込光ファイバの端面と複合材端面とを研磨し、前記研磨した埋込光ファイバの芯と代替光ファイバの芯とが連続するように位置調整して両端面を突き合わせ、該埋込光ファイバの端面と代替光ファイバの端面とを接続することを特徴とする。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「埋込光ファイバ」は、複合材の内部に埋め込まれている光ファイバをいい、「代替光ファイバ」は、複合材から除去した埋込光ファイバに置換して損傷部分に配設する光ファイバをいう。この構成によれば、複合材の内部に埋め込まれている埋込光ファイバが損傷したとしても、その損傷部分の埋込光ファイバを複合材と一体的に除去した後に板厚の範囲内で代替光ファイバに置換えて、埋込光ファイバを修復することができる。
【0014】
また、前記代替光ファイバは、端部に光ファイバアレイを有し、該光ファイバアレイと前記埋込光ファイバの端面とを接着して接続するようにしてもよい。このように構成すれば、研磨後の埋込光ファイバの位置を検知し、代替光ファイバの光ファイバアレイを研磨した埋込光ファイバに接着剤で接着することで容易に結合させることができる。
【0015】
また、前記埋込光ファイバの端面と複合材端面との研磨後、埋込光ファイバの損傷部と反対方向の端部に設けた光源から埋込光ファイバ内に光を通し、前記開口部に露出する埋込光ファイバの端面で前記光源の光を検知し、該光の強度が最も強い位置を埋込光ファイバの芯位置と判断して前記代替光ファイバの芯を配置して接続するようにしてもよい。このように構成すれば、埋込光ファイバの損傷部分で光強度を検知することで埋込光ファイバの芯位置を精度よく迅速に検知することができ、埋込光ファイバの芯に代替光ファイバの芯を合わせる作業を迅速に行なうことができる。
【0016】
また、前記埋込光ファイバは、光反射デバイスを備え、前記埋込光ファイバの端面と複合材端面との研磨後、該研磨した埋込光ファイバ端面から入射光を入れ、前記光反射デバイスで反射した反射光を検知し、該反射光の強度が最も高い位置を埋込光ファイバの芯位置と判断して前記代替光ファイバの芯を配置して接続するようにしてもよい。このように構成すれば、FBGセンサ等の光反射デバイスを備えた埋込光ファイバにおいて、光反射デバイスによる反射光を利用することで埋込光ファイバの芯位置を迅速に検知することができ、埋込光ファイバの芯に代替光ファイバの芯を合わせる作業を迅速に行なうことができる。
【0017】
また、前記埋込光ファイバと接続した代替光ファイバを、複合材構造体の片面で該複合材構造体に保持し、他面で前記開口部を塞ぐようにしてもよい。このように構成すれば、埋込光ファイバの損傷部分を含む複合材の一部分を除去することによる複合材構造体の強度低下を抑えた埋込光ファイバの修理ができる。
【0018】
また、前記開口部に複合材薄板を接着して積層し、該複合材薄板の間に前記埋込光ファイバと接続した代替光ファイバを埋め込んで前記開口部を塞ぐようにしてもよい。この「複合材薄板」は、硬化後の硬い板、及び硬化前の軟らかい板(プリプレグ)の両方を含む。このように構成すれば、埋込光ファイバの損傷部分を複合材の一部と一体的に除去した開口部を積層した複合材薄板で埋めるので、複合材構造体の強度低下を抑えることができる。この場合、開口部を円錐状に形成することにより、積層した複合材薄板と周囲の複合材構造体との間で良好な接着強度が期待でき、信頼性の高い修理が可能となる。
【0019】
一方、本発明に係る複合材構造体の埋込光ファイバ修理構造は、前記いずれかの埋込光ファイバ修理方法によって修理した修理構造であって、前記損傷部分の埋込光ファイバの端面に接続した代替光ファイバは、前記複合材構造体の一方の面に設けた代替光ファイバ保持具で保持され、前記代替光ファイバ保持具を設けた複合材構造体の他方の面は、前記開口部を塞ぐ補修材を設けたことを特徴とする。補修材は、複合材であってもチタン合金等の金属であってもよい。この補修材は、接着やボルトなどによるファスナー結合によって取付けられる。この構成によれば、複合材構造体に埋め込まれた埋込光ファイバの損傷部分を板厚の範囲内で代替光ファイバに置換えた後、その修理部分における代替光ファイバの保持と、複合材構造体の強度低下を抑止することができ、信頼性の高い光ファイバとして修復できる。
【0020】
一方、本発明に係る埋込光ファイバの接続構造は、複合材構造体の内部に埋め込んだ埋込光ファイバに光ファイバアレイを接続する埋込光ファイバの接続構造であって、前記埋込光ファイバは、前記複合材構造体の端面に位置する部分に研磨面を有し、前記光ファイバアレイは、前記埋込光ファイバの研磨面で両光ファイバの芯が連続するように位置調整した状態で該埋込光ファイバの端面と接着して接続されていることを特徴とする。この構成によれば、内部に埋込光ファイバが埋め込まれた複合材構造体の縁部を切断したとしても、その切断面の埋込光ファイバに光ファイバアレイを接続して連続した光ファイバを形成することが容易にできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複合材構造体に損傷検知等のために埋め込まれた光ファイバの損傷時に、その部分を板厚の範囲内で代替光ファイバに置換えて修理することができるので、複合材構造体へ埋め込んだ光ファイバを用いた損傷検知等のためのシステムを損傷前と同じ状態に修復することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法の第1実施形態によって修理する複合材構造体の断面図であり、(a) は修理前の断面図、(b) は修理開始時の断面図である。
【図2】図1に示す埋込光ファイバ修理方法によって修理する複合材構造体に代替光ファイバを接続する断面図である。
【図3】図1に示す埋込光ファイバ修理方法によって代替光ファイバを結合した複合材構造体部分の断面図である。
【図4】図1に示す複合材構造体の光ファイバ修理方法によって航空機を修理する場合の模式図である。
【図5】図3の代替光ファイバを結合した複合材構造体部分の他の例を示す拡大断面図である。
【図6】図2に示す埋込光ファイバ修理装置の光ファイバアレイ保持部と複合材構造体の修理部分とを示す断面図である。
【図7】図2に示す埋込光ファイバ修理装置による修理手順を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法の第2実施形態によって修理する複合材構造体の修理部分の断面図である。
【図9】本発明に係る複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法の第3実施形態によって修理する複合材構造体の修理部分の断面図である。
【図10】本発明に係る複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法の第4実施形態によって修理する複合材構造体の修理部分の断面図である。
【図11】本発明に係る埋込光ファイバの接続構造の第1実施形態を模式的に示す側面図である。
【図12】本発明に係る埋込光ファイバの接続構造の第2実施形態を模式的に示す側面図である。
【図13】実施例における光強度計測結果を示す一覧表である。
【図14】(a) 〜(c) は、従来の複合材に埋め込まれた光ファイバが損傷した場合の修理方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、複合材構造を利用した構造体の具体例として航空機(胴体、翼、舵等)を例にして説明する。以下の説明における複合材構造体1を形成する複合材2は、例えば、エポキシ樹脂などの高分子樹脂をマトリックスとするプリプレグシート(prepreg sheet)を板厚方向に積層して硬化成型したものが用いられる。プリプレグ(pre-impregnated materialsの略称)シートは、マトリックスである樹脂を予め強化繊維基材に含浸させた成型用中間基材である。また、以下の説明では、埋込光ファイバ10及び代替光ファイバ20の一例として、複合材構造体1への埋め込みを考慮し、後述するような細径光ファイバを用いた例を説明する。
【0024】
さらに、複合材構造体1に埋め込まれた埋込光ファイバ10の損傷は、複合材構造体1の損傷に伴って発生し、その損傷有無や損傷位置は、上述した透過光強度計測やFBGセンサ歪計測によって計測され、非破壊検査等によって正確に特定されているものとして説明する。
【0025】
まず、図1〜3に基づいて、複合材構造体1の埋込光ファイバ10に損傷200が生じた場合の修理方法の全体的手順を説明する。
【0026】
図1(a) に示すように、複合材2で形成された複合材構造体1に埋め込まれた埋込光ファイバ10に損傷200が生じた場合、図1(b) に示すように、その損傷部分を含む複合材2の一部分を一体的に除去する。この複合材2の除去としては、例えば、直径30mm程度の円形の開口部(貫通穴)3をあけることによって除去される。そして、開口部3の部分に露出する埋込光ファイバ10の端面10aが複合材2の端面2aと一体的に研磨される。
【0027】
次に、図2に示すように、埋込光ファイバ修理装置30によって、研磨した埋込光ファイバ10の端面10aの位置が検知され、代替光ファイバ20の端面をその位置に移動させて突き合わせ、接着剤によって接着結合される。図示する埋込光ファイバ修理装置30は、研磨後の埋込光ファイバ10の位置を検知し、代替光ファイバ20をその位置に移動させて突き合わせる作業を自動的に行なうことができる。詳細は後述する。
【0028】
また、この実施形態の埋込光ファイバ修理装置30は、複合材構造体1の外面に吸着するバキュームチャック31が設けられており、例えば、図4に示すように、航空機80の外面に吸着されて固定される。なお、この実施形態では、埋込光ファイバ修理装置30をバキュームチャックで航空機80の外面に吸着させて支持する例を説明したが、埋込光ファイバ修理装置30は、床面に組み立てた足場に設置するようにしてもよい。但し、航空機80が揺れている場合は、外面に吸着させて固定する方が、埋込光ファイバ修理装置30も同じように揺れるため、代替光ファイバ20の自動調芯が比較的容易である。この埋込光ファイバ修理装置30は、修理対象物や修理位置等に応じて適した方法で支持するようにすればよく、この実施形態に限定されるものではない。
【0029】
さらに、図2に示すように、埋込光ファイバ修理装置30は、上部に光ファイバ移動部32が備えられている。この例の代替光ファイバ20は、端部に光ファイバアレイ(光導波路素子と光ファイバを結合するための接続デバイス)21が設けられている。そのため、上記光ファイバ移動部32は、光ファイバアレイ21を埋込光ファイバ10と接続するように位置調整する光ファイバアレイ移動部32(光ファイバ移動部と同一であるため同一符号を付す)となっている。この光ファイバアレイ移動部32は、保持する光ファイバアレイ21を6自由度(6軸)で位置調整できる自動調芯機能を備えている。6自由度は、図中に斜矢印で示すX軸、Y軸、Z軸方向の移動と、各軸周りの回転運動が可能なものである。
【0030】
このように、光ファイバアレイ移動部32は、代替光ファイバ20の端部である光ファイバアレイ21を、上記開口部3の中で上記6自由度によって埋込光ファイバ10の位置に自動調芯できるようになっている。光ファイバアレイ移動部(光ファイバ移動部)32は、5〜6自由度が好ましいが、それ以下の自由度であってもよい。
【0031】
次に、図3に示すように、両端部の光ファイバアレイ21が埋込光ファイバ10に接続された代替光ファイバ20が、複合材構造体1の内面側に設けられた代替光ファイバ保持具4で保持される。また、複合材構造体1の修理部分外面には、開口部3を外面から塞ぐように補修材5が接着またはファスナー結合される。補修材5は、修理部分における荷重を支持し、開口部3を設けた部分における複合材構造体1の強度を修理前と同等以上にしている。この補修材5の材質としては、複合材2でもよいが、チタン合金等の金属であってもよい。これにより、損傷した埋込光ファイバ10を板厚の範囲内で代替光ファイバ20に置換えることができ、複合材構造体1に埋め込んだ光ファイバを修復することができる。
【0032】
一方、上記開口部3は、図5に示すように円錐形状に形成し、複合材薄板6を積層して埋込光ファイバ10に連結した代替光ファイバ20を埋め込んで塞ぐようにしてもよい。複合材薄板6としては、硬化後の硬い板、硬化前の柔らかい板の好ましい板を使用して埋め込めばよい。この場合、複合材薄板6を、埋込光ファイバ修理装置30が配置された反対側の複合材構造体片面から積層し、埋込光ファイバ10の位置に達したときに代替光ファイバ20を接続し、その後、複合材構造体の他面まで複合材薄板6を積層するようにすればよい。
【0033】
このように構成した場合、円錐形状に形成した開口部3を積層した複合材薄板6で埋めるので、積層した複合材薄板6と周囲の複合材構造体1との間で良好な接着強度が期待でき、信頼性の高い修理が可能となる。なお、このように複合材薄板6を積層して埋める開口部3の形状は、円錐形状に限られるものではない。
【0034】
次に、図6,7に基づいて、上記図2に示す埋込光ファイバ修理装置30による埋込光ファイバ10の修理流れをより具体的に説明する。以下の説明では、埋込光ファイバ10の損傷部分が複合材構造体1の損傷に伴って発生し、その損傷位置を非破壊検査等で正確に特定した後に、その損傷した埋込光ファイバ10を含む複合材2の一部分を切除し、その切除した部分の埋込光ファイバ10の露出面を研磨した後、複合材2に残っている埋込光ファイバ10の端面10aに代替光ファイバ20の端部に設けられた光ファイバアレイ21を接続する作業を説明する。
【0035】
まず、図6に示すように、上記埋込光ファイバ修理装置30には、切除した部分の複合材2に埋め込まれている埋込光ファイバ10の位置を検知する光ファイバ位置検知部34が設けられている。この光ファイバ位置検知部34は、埋込光ファイバ10の他端に設けられた光源35からの光で埋込光ファイバ10の芯位置を検知できるようになっている。
【0036】
また、上記光ファイバ移動部32には、代替光ファイバ20の端部に設けられた光ファイバアレイ21を保持する光ファイバアレイ保持部41が上部に設けられている。この光ファイバ移動部32は、保持した光ファイバアレイ21を6自由度で位置調整可能に構成されている。この6自由度は、例えば、光ファイバ移動部32をステッピングモータ33の駆動制御によって位置調整することで制御される。さらに、後述する光ファイバアレイ21と埋込光ファイバ10とを接続する接着剤として、この実施形態では紫外線硬化樹脂が用いられ、その紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射装置37が設けられている。
【0037】
また、上記光ファイバアレイ21が一端に設けられた代替光ファイバ20は、他端が光検知器36に接続され、上記光源35の光を検知するようになっている。この実施形態では、光ファイバアレイ21と光検知器36との接続を、光ファイバアレイ21に接続可能なアダプタ43が一端に設けられた光ファイバ44で接続するようにしている。アダプタ43は、光ファイバアレイ21の形状に一致し、かつ光ファイバ44を接続できるものとなっている。なお、この例では、アダプタ43と光検知器36とを接続する光ファイバ44の中間部に汎用のFC形光ファイバコネクタ45が設けられている。このように光ファイバ44の接続をコネクタで簡単に接続できるようにして、接続作業の容易化を図っている。
【0038】
これら光ファイバアレイ移動部32、光ファイバ位置検知部34、光検知器36は、制御用パソコン38に接続され、この制御用パソコン38に位置情報、光検知情報等の各種信号が記憶され、この制御用パソコン38で各部が制御されるようになっている。また、この制御用パソコン38により、後述するように、光ファイバアレイ移動部32で光ファイバアレイ21の芯が埋込光ファイバ10の芯に自動調芯させられる。
【0039】
このような構成により、上記埋込光ファイバ修理装置30によれば、複合材構造体1に埋め込まれた埋込光ファイバ10の端面に、極力光損失が小さい状態で光ファイバアレイ21を接続することが可能となる。
【0040】
次に、上記埋込光ファイバ修理装置30による代替光ファイバ20の接続について、図7とともに説明する。以下の説明では、破損した埋込光ファイバ10を複合材2の一部分と一体的に切除した後の手順を説明する。複合材2の切除としては、所定径の開口部(貫通穴)3を複合材構造体1にあけることによって行なわれる。開口部3の大きさは、埋込光ファイバ10の間隔、修理装置における光ファイバ移動部32の大きさと可動範囲、複合材構造体1の損傷範囲等から決定される。
【0041】
(1) [修理部前処理:埋込光ファイバ端面の研磨]
まず、複合材構造体1にあけられた開口部3に面する埋込光ファイバ10の端面を研磨する。この研磨としては、埋込光ファイバ10の端面と複合材2の切除面とが一体的に研磨される。
【0042】
(2) [機器接続:光ファイバと機器の接続]
次に、埋込光ファイバ修理装置30の光ファイバ位置検知部34を開口部3に配置し、複合材2に埋め込まれた埋込光ファイバ10の片端を光源35に接続する。また、光ファイバアレイ21が設けられた代替光ファイバ20の反対方向端部を光検知器36に接続する。
【0043】
(3) [光ファイバ位置の検知]
次に、光源35からの透過光をもとに、埋込光ファイバ10の芯位置を埋込光ファイバ修理装置30の光ファイバ位置検知部34で検出する。この光ファイバ位置検知部34は、光源35の光の光強度が最も高くなる位置が埋込光ファイバ10の芯位置としている。この例では、この動作によって、埋込光ファイバ10の芯位置が埋込光ファイバ修理装置30に備えられた制御用パソコン38に記憶される。
【0044】
(4) [光ファイバ位置検知部と光ファイバアレイの入替]
次に、制御用パソコン38に記憶された埋込光ファイバ10の芯位置で、光ファイバ位置検知部34と光ファイバアレイ21とが入替えられる。この位置調整は、自動調芯機能を備える光ファイバアレイ移動部32の位置制御によって正確に行なわれる。なお、光ファイバ位置検知部34による埋込光ファイバ10の検知を、真正面ではなく軸芯位置からずれた位置で行った場合、光ファイバ位置検知部34と光ファイバアレイ21の入替えを不要とすることもできる。
【0045】
(5) [自動調芯]
次に、光ファイバアレイ移動部32の位置制御によって光ファイバアレイ21を走査させ、光源35からの光強度が最も高くなる位置を光検知器36で探査する。
【0046】
(6) [接着剤による接続]
そして、埋込光ファイバ修理装置30によって、埋込光ファイバ10の端面に光ファイバアレイ21が接着剤で接続される。この接着剤は、例えば、紫外線硬化樹脂が用いられ、紫外線照射装置37から紫外線を照射することで硬化させられる。これにより、代替光ファイバ20の光ファイバアレイ21と埋込光ファイバ10の端面とが接続され、連続した光ファイバとなって修復される。この例では紫外線硬化樹脂で埋込光ファイバ10に光ファイバアレイ21を接続しているが、他の接着剤による接続も可能である。但し、紫外線硬化樹脂又は他の接着剤は、接続する光ファイバ10,20の屈折率と同程度の屈折率を持つ紫外線硬化樹脂又は接着剤が使用される。
【0047】
以上の工程により、代替光ファイバ20の一端に設けられた光ファイバアレイ21を一方の埋込光ファイバ10の端面10aに接続する作業が完了する。
【0048】
次に、代替光ファイバ20の他端に設けられた光ファイバアレイ21が、他方の埋込光ファイバ10の端面10aに接続される。代替光ファイバ20の他端を接続するときには、上記光源35を反対方向の埋込光ファイバ10の片端に接続し、光検知器36を、先に代替光ファイバ20を接続した埋込光ファイバ10の光源35が接続されていた片端に接続する。
【0049】
そして、光源35からの光を光検知器36で検知し、その光強度が最も強い位置を埋込光ファイバをの芯位置として自動調芯し、接着剤によって他端の光ファイバアレイ21が埋込光ファイバ10の端面10aに接続される。
【0050】
この工程により、代替光ファイバ20の両端に設けられた光ファイバアレイ21を開口部3に露出している埋込光ファイバ10の両端面10aに接続する作業が完了し、埋込光ファイバ10を修復する作業が完了する。
【0051】
次に、図8〜10に基づいて、上記埋込光ファイバ修理装置30とは異なる構成例と、それらの埋込光ファイバ修理装置による代替光ファイバ20の接続手順を説明する。以下の例でも、代替光ファイバ20の端部に光ファイバアレイ21が設けられ、この光ファイバアレイ21を移動させる光ファイバアレイ移動部32を備えている。この光ファイバアレイ移動部32も、上記したように、6自由度(X方向、Y方向、Z方向の並進と、各軸周りの回転運動)で、光ファイバアレイ21を並進、回転させながら自動で調芯できるように構成されている。これらの例でも、光源35の光を光検知器36で検知し、光強度の最も高くなる位置が埋込光ファイバ10の芯位置として制御用パソコン38(図6)に記憶される。制御用パソコン38等の記載は省略する。
【0052】
図8に示す第2実施形態の埋込光ファイバ修理装置40は、上記第1実施形態における光ファイバ位置検知部34を使用せずに、最初から光ファイバアレイ21を埋込光ファイバ10の芯位置に移動させて自動調芯するようにした実施形態である。なお、上記図6に示す構成と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0053】
この埋込光ファイバ修理装置40によれば、開口部3に面する埋込光ファイバ10の端面10aを研磨後、光ファイバアレイ21を埋込光ファイバ10の端面10aに移動させ、光源35からの光を光検知器36で検知する。そして、光強度の最も高くなる位置を埋込光ファイバ10の芯位置として、制御用パソコン38によって光ファイバアレイ21の位置を自動調芯することができる。従って、この実施形態の埋込光ファイバ修理装置40によれば、光ファイバアレイ21を埋込光ファイバ10の芯位置に調芯する作業を迅速に行うことができ、埋込光ファイバ10の修理をより迅速に行うことができる。しかも、光ファイバアレイ移動部32の光ファイバアレイ保持部41を小型化して複合材構造体1の修理部分に設ける開口部3に入れやすくすることができる。
【0054】
また、アダプタ43によって、代替光ファイバ20や光検知器36に接続される光ファイバ44の接続作業を容易に行なうこともでき、複合材構造体1の埋込光ファイバ修理を迅速に効率良く行なうことができる。
【0055】
そのため、この実施形態の埋込光ファイバ修理装置40によれば、例えば、航空機における胴体等の修理も迅速に行なうことができ、修理時間が限られる複合材構造体1であっても迅速に修理できる信頼性の高い修理方法を提供することができる。
【0056】
次に、図9に示す第3実施形態を説明する。この実施形態では、埋込光ファイバ10がFBGセンサ11を有する構成となっており、FBGセンサ11の反射光強度を使用して調芯するように構成されている。なお、この実施形態でも、上記図6に示す構成と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0057】
また、この実施形態でも、光ファイバアレイ21と光検知器36との接続を、光ファイバアレイ21に形状が一致して接続可能なアダプタ43が一端に設けられた光ファイバ44で接続するようにしている。この光ファイバ44も、汎用のFC形光ファイバコネクタ45によって接続されている。この例の光ファイバコネクタ45は、光源35の入射光とFBGセンサ11の反射光とを通過させるものが用いられる。
【0058】
さらに、この光ファイバコネクタ45で接続された光ファイバ44は、サーキュレータ51を介して光源35及び光検知器36に接続されている。このサーキュレータ51により、光源35からの入射光52は光ファイバコネクタ45を介して光ファイバアレイ21に送り、FBGセンサ11からの反射光53は光検知器36に送られる。この実施形態でも、光ファイバ44の接続を光ファイバコネクタ45で簡単に接続できるようにして、接続作業の容易化を図っている。
【0059】
このような埋込光ファイバ修理装置50によれば、光ファイバアレイ移動部32の光ファイバアレイ保持部41を小型化して複合材構造体1の修理部分に設ける開口部3に入れやすくすることができる。
【0060】
また、FBGセンサ11の反射光強度をもとに光ファイバアレイ21の調芯を行なって正確に接続することができる。さらに、アダプタ43及び光ファイバコネクタ45によって、代替光ファイバ20や光検知器36に接続される光ファイバ44の接続作業を容易に行なうことができ、複合材構造体1の埋込光ファイバ修理を迅速に効率良く行なうことができる。
【0061】
従って、この実施形態でも、例えば、航空機における胴体等の修理も迅速に行なうことができ、修理時間が限られる複合材構造体1であっても迅速に修理できる信頼性の高い修理方法を提供することができる。
【0062】
なお、この第3実施形態では、埋込光ファイバ10がFGBセンサ11を有する構成としているが、FGBセンサ11の無い埋込光ファイバ10であれば、開口部3における埋込光ファイバ10の端面10aと反対方向にFGBセンサと同様の光反射デバイスを取り付ければよい。このようにすれば、FGBセンサ11と同様に入射光52を反射し、その反射光53の強度を光検知器36で検知して光ファイバアレイ21の調芯を行なって正確に接続することができる。
【0063】
次に、図10に示す第4実施形態を説明する。この実施形態の埋込光ファイバ修理装置60は、上記図8に示すように、光ファイバアレイ21を保持する光ファイバアレイ保持部41を光ファイバアレイ移動部32の上方に配置した構成を2つ設け、光ファイバアレイ保持部41で保持した光ファイバアレイ21を互いに外向きに配置している。詳細な構成は上記した図8と同一であり、図示及び説明は省略する。
【0064】
この例によれば、それぞれの光ファイバアレイ保持部41で代替光ファイバ20の両端に設けられた光ファイバアレイ21を保持し、上記図8における埋込光ファイバ10の端面10aに代替光ファイバ20の光ファイバアレイ21を接続するための光源35からの光を光検知器36で検知して調芯する作業をそれぞれ両端部で行うことで、代替光ファイバ20の両端に設けられた2つの光ファイバアレイ21をほぼ同時に埋込光ファイバ10の位置に自動調芯することができる。
【0065】
この埋込光ファイバ修理装置60の場合、光ファイバアレイ移動部32の光ファイバアレイ保持部41を小型化して複合材構造体1の修理部分に設ける開口部3に入れやすくするのが好ましい。
【0066】
また、上記図8と同様の作業で、開口部3に面する2箇所の埋込光ファイバ10に代替光ファイバ20の両端部に設けられた光ファイバアレイ21をほぼ同時に接続することができ、複合材構造体1の埋込光ファイバ修理を迅速に効率良く行なうことができる。
【0067】
従って、この実施形態でも、例えば、航空機における胴体等の修理も迅速に行なうことができ、修理時間が限られる複合材構造体1であっても迅速に修理できる信頼性の高い修理方法を提供することができる。
【0068】
ところで、図11及び図12に示すように、上記複合材構造体1に埋め込まれた埋込光ファイバ10と光ファイバアレイ21との接続構造としては、端面角が90°の接続でも、端面角が傾斜(例えば、45°)した接続であってもよい。光ファイバアレイ21の端面は、修理箇所の条件や、光ファイバのコア径、クラッド径等に応じて決定すればよい。
【0069】
図11に示す接続構造70は、埋込光ファイバ10が設けられた複合材構造体1の端面角を90°とした例である。この例の場合、埋込光ファイバ10に接続する光ファイバアレイ21の端面角も90°となる。
【0070】
図12に示す接続構造71は、埋込光ファイバ10が設けられた複合材構造体1の端面角を45°とした例である。この例の場合、埋込光ファイバ10に接続する光ファイバアレイ21の端面角も45°となる。
【0071】
このような接続構造で接続される上記複合材構造体1の埋込光ファイバ10と光ファイバアレイ21とは、互いの光ファイバ軸芯が一致するように調芯され、紫外線硬化樹脂等で接着される。
【実施例1】
【0072】
次に、上記接続構造70,71によって接続した光ファイバの接続部分についての試験結果を以下に説明する。この試験では、埋込光ファイバ10を埋め込んだ複合材構造体1の端面に露出した埋込光ファイバ10に、接続する光ファイバ端部の光ファイバアレイ21を接続し、接続後の、透過する光強度を計測したものである。 試験環境としては、常温、常湿である。
【0073】
試験における複合材構造体1は、180℃硬化炭素繊維強化エポキシ樹脂複合材とする。また、複合材構造体1に埋め込まれた埋込光ファイバ10は、ポリイミド被覆細径光ファイバ(シングルモード)であり、コア径:8.5μm、クラッド径:40μm、被覆径:48μm、である。
【0074】
このような複合材構造体1の埋込光ファイバ10と光ファイバアレイ21との接続を、端面角90°における接続と、端面角45°における接続とによって試験をした。
【0075】
また、埋込光ファイバ10の端面に光ファイバアレイ21を接続する際、埋込光ファイバ10のコアと光ファイバアレイ21のコアとを自動調芯装置を用いて軸芯を合わせている。そして、軸芯合わせ完了後、紫外線硬化性樹脂で、複合材構造体1の埋込光ファイバ10と光ファイバアレイ21とを固定している。
【0076】
そして、上記したように接続した埋込光ファイバ10の接続部における光強度を計測した。光強度の計測は、複合材構造体1に埋め込んだ細径埋込光ファイバ10を取り出している側に、シングルモードの光ファイバコード(片端にFC形コネクタ付;通信用単心石英光ファイバ)を融着接続器にて融着する。この光ファイバコードコネクタ側に光源、光ファイバアレイ側に光検知器を接続し、光ファイバコード〜細径光ファイバ〜光ファイバアレイの透過光強度を計測する。上記光源としては、中心波長:1550nm、光検知器としては、波長範囲:0.75〜1.7μm、で計測した。
【0077】
図13は、上記実施例において試験した光強度計測結果を示す一覧表である。図示する試験結果の評価は、以下の通りである。
【0078】
試験結果の評価としては、光源の光強度に対する調芯接続後の光強度を比較した。その光損失は、端面角90°の場合で6.8dB、端面角45°の場合で8.1dBとなっている。そして、この結果を見ると、光ファイバアレイ21を埋込光ファイバ10に接続したことで生じる光損失は、複合材構造体1に備えられた損傷検知システムの光ファイバセンサとして運用可能なレベルであると判断できる。なお、これらの損失の値は光ファイバアレイ21と埋込光ファイバ10の接続部以外の光損失を含んでおり、光ファイバアレイ21と埋込光ファイバ10の接続部のみの光損失はこれらの損失の値よりかなり小さいと考えられる。
【0079】
また、複合材構造体1に埋め込まれている埋込光ファイバ10は、外部の計測機器と接続する必要があるため、埋込光ファイバ10を複合材構造体1の周辺から出すか、埋込光ファイバ10と接続されたコネクタを複合材構造体1の周辺に設ける必要がある。しかし、複合材構造体1は、所定の寸法を出すために、製造時にその周辺をトリム加工する必要があり、周辺から埋込光ファイバ10を出したり、周辺にコネクタを設けることは困難である。この課題を解決するために、特開2003−315601号公報に示されるような構造体の製造方法がある。しかし、上記したような接続構造70,71によれば、埋込光ファイバ10が埋め込まれている複合材構造体1の製造時に、複合材構造体1の周辺をトリム加工したとしても、そのトリム加工後に複合材構造体1の端面と一体的に埋込光ファイバ10の端面を研磨すれば、その埋込光ファイバ10に光ファイバアレイ21を接続することができる。従って、埋込光ファイバ10を外部の計測機器と接続するために特別なコネクタを用いることのない接続構造70,71を構成することができる。
【0080】
なお、上記実施形態では、航空機の複合材構造体1を例に説明したが、他の構成における複合材構造体においても同様に埋込光ファイバ10の損傷部分を修理することができ、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0081】
また、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る複合材構造の埋込光ファイバ修理方法は、航空機のように埋込光ファイバで衝撃損傷等を検知する複合材構造体において利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 複合材構造体
2 複合材
2a 端面
3 開口部(貫通穴)
4 代替光ファイバ保持具
5 補修材
6 複合材薄板
10 埋込光ファイバ
10a 端面
11 FBGセンサ
20 代替光ファイバ
21 光ファイバアレイ
30 埋込光ファイバ修理装置
31 バキュームチャック
32 光ファイバアレイ移動部(光ファイバ移動部)
33 ステッピングモータ
34 光ファイバ位置検知部
35 光源
36 光検知器
37 紫外線照射装置
38 制御用パソコン
40 埋込光ファイバ修理装置
41 光ファイバアレイ保持部
43 アダプタ
44 光ファイバ
45 光ファイバコネクタ
50 埋込光ファイバ修理装置
51 サーキュレータ
52 入射光
53 反射光
60 埋込光ファイバ修理装置
70,71 接続構造
80 航空機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材の内部に埋め込んだ埋込光ファイバを有する複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法であって、
前記埋込光ファイバの損傷部分を含む複合材の一部分を除去して開口部を形成し、
前記開口部に露出する埋込光ファイバの端面と複合材端面とを研磨し、
前記研磨した埋込光ファイバの芯と代替光ファイバの芯とが連続するように位置調整して両端面を突き合わせ、該埋込光ファイバの端面と代替光ファイバの端面とを接続することを特徴とする複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法。
【請求項2】
前記代替光ファイバは、端部に光ファイバアレイを有し、該光ファイバアレイと前記埋込光ファイバの端面とを接着して接続するようにした請求項1に記載の複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法。
【請求項3】
前記埋込光ファイバの端面と複合材端面との研磨後、埋込光ファイバの損傷部と反対方向の端部に設けた光源から埋込光ファイバ内に光を通し、
前記開口部に露出する埋込光ファイバの端面で前記光源の光を検知し、該光の強度が最も強い位置を埋込光ファイバの芯位置と判断して前記代替光ファイバの芯を配置して接続するようにした請求項1又は2に記載の複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法。
【請求項4】
前記埋込光ファイバは、光反射デバイスを備え、
前記埋込光ファイバの端面と複合材端面との研磨後、該研磨した埋込光ファイバ端面から入射光を入れ、
前記光反射デバイスで反射した反射光を検知し、該反射光の強度が最も高い位置を埋込光ファイバの芯位置と判断して前記代替光ファイバの芯を配置して接続するようにした請求項1又は2に記載の複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法。
【請求項5】
前記埋込光ファイバと接続した代替光ファイバを、複合材構造体の片面で該複合材構造体に保持し、他面で前記開口部を塞ぐようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法。
【請求項6】
前記開口部に複合材薄板を接着して積層し、該複合材薄板の間に前記埋込光ファイバと接続した代替光ファイバを埋め込んで前記開口部を塞ぐようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材構造体の埋込光ファイバ修理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の埋込光ファイバ修理方法によって修理した修理構造であって、
前記損傷部分の埋込光ファイバの端面に接続した代替光ファイバは、前記複合材構造体の一方の面に設けた代替光ファイバ保持具で保持され、前記代替光ファイバ保持具を設けた複合材構造体の他方の面は、前記開口部を塞ぐ補修材を設けたことを特徴とする複合材構造体の埋込光ファイバ修理構造。
【請求項8】
複合材構造体の内部に埋め込んだ埋込光ファイバに光ファイバアレイを接続する埋込光ファイバの接続構造であって、
前記埋込光ファイバは、前記複合材構造体の端面に位置する部分に研磨面を有し、
前記光ファイバアレイは、前記埋込光ファイバの研磨面で両光ファイバの芯が連続するように位置調整した状態で該埋込光ファイバの端面と接着して接続されていることを特徴とする埋込光ファイバの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−255856(P2012−255856A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127984(P2011−127984)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省、「次世代構造部材創製・加工技術開発」委託契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】