説明

複合材風力タービンタワーの垂直方向製造方法

【課題】複合材タワー(4)を製造する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、型枠(22)を硬化性の樹脂で少なくとも部分的に満たすステップと、型枠(22)内で樹脂を少なくとも部分的に硬化させるステップと、少なくとも部分的に硬化した樹脂の上方に型枠(22)の一部を持上げるステップと、持上げた型枠(22)を硬化した樹脂に接して施した一層硬化性の樹脂で少なくとも部分的に満たすステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は、総括的には風力タービンタワー構造及び複合材風力タービンタワー構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、風の運動エネルギーを機械エネルギーに変換するための機械である。水を圧送するような又は小麦を粉にするような機械で機械エネルギーを直接使用する場合には、風力タービンは、風車と呼ぶことができる。同様に、機械エネルギーを電気に変換する場合には、機械はまた、風力発電機又は風力発電プラントと呼ぶことができる。
【0003】
風力タービンは一般的に、その周りでブレードが回転する垂直方向又は水平方向軸に従って分類される。図1には、1つのいわゆる水平方向軸型風力発電機を概略的に示しており、この水平方向軸型風力発電機は、General Electric Companyから購入可能である。その風力タービン2の具体的な構成は、ドライブトレイン8を囲むナセル6を支持したタワー4を含む。ブレード10は、ハブ9上に配置されて、ナセル6の外側でドライブトレイン8の一端部に「ロータ」を形成する。回転ブレード10は、ナセル6の内側でドライブトレイン8の他端部に配置された発電機14と共に風速計18からの入力を受ける制御システム16に連結されたギアボックス12を駆動する。
【0004】
ブレード10の寸法が増大するにつれて、タワー4の寸法も増大する。最近の風力タービンタワー4は一般的に、遠隔場所で製造されかつ次にタービン2の設置場所で組立てられた鋼板で製作される。しかしながら、多くの場合、これら材料は、製造し、輸送しまた組立てるのが困難でありかつ費用がかかる。複合材を使用することにより、タワー4の構成要素の重量及び輸送コストを減少させることができるが、従来型の方法は、依然として多数の部品の輸送を必要としまた次にそれら部品を、戸外の建設場所において互いに結合しなければならないことが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Vionis, et al., "Divelopment of a MW Scale Wind Turbine For High Wind Complex Terrain Sites; The MEGAWIND Project," (EWWC, March 1, 2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのような従来型の方法に関連するこれらの及びその他の欠点は、様々な実施形態において複合材タワーを製造する方法を提供することによって本明細書で解決され、本方法は、型枠を硬化性の樹脂で少なくとも部分的に満たすステップと、型枠内で樹脂を少なくとも部分的に硬化させるステップと、少なくとも部分的に硬化した樹脂の上方に型枠の一部を持上げるステップと、持上げた型枠を硬化した樹脂に接して施した一層硬化性の樹脂で少なくとも部分的に満たすステップとを含む。
【0007】
次に、幾つかの図の各々を通して必ずしも縮尺通りではないが、同じ参照符号を使用して対応する部分を表している以下の図(「[図1]〜[図6]」)を参照して、
本技術の様々な態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来型の風力発電機の概略側面図。
【図2】図1に示す風力タービンタワーを垂直方向に製造するためのシステムの概略断面図。
【図3】図2に示すシステムのための補強システムの概略図。
【図4】図2に示すシステムのための補強構成の概略図。
【図5】図2に示すシステムのための別の補強構成の概略図。
【図6】図2に示すシステムのためのさらに別の補強構成の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図2は、図1に示す風力タービンタワー4又はあらゆるその他のタワーを垂直方向に製造するためのシステム20の概略断面図を示している。図示したタワー4は、垂直方向にその直径が減少するほぼ円形断面を有しているが、楕円形及び/又は多角形を含むその他のタワー断面を使用することができる。
【0010】
垂直方向製造システム20は、タワー4の下方部分が形成されると持上げられる型枠又はカラー22を含む。ここに示した実施例では、型枠22は、フック又は留め金のような取外し可能ファスナ26によってチェーン又はケーブル24に連結される。ケーブル24は、支持構造体29上の1つ又はそれ以上のプーリ28及び/又はその他の滑車装置を介してウィンチ30まで延び、ウィンチ30においてケーブルは型枠22を持上げるように巻かれる。従って、システム20は、「自動ジャッキアップカラー」と呼ぶことができる。しかしながら、様々なその他の方法もまた、型枠22を持上げ及び/又は降下させることができる。各新規な樹脂の層は、約1/2〜1フィートの高さとすることができる。製作の間に外部環境からタワー4の内部を保護しかつ製作材料の内部配置を可能にするために、任意選択的なカバー23を設けることができる。
【0011】
樹脂供給源32は、型枠22の内側及び外側壁間に形成されたトラフ34に樹脂並びにあらゆる任意選択的な補強材を供給する。例えば、樹脂は地上からホースを通して圧送することができる。好適な樹脂マトリックス材料には、それに限定されないが、複合材の形成に適したポリエステル、ポリビニル、エポキシ又はあらゆるその他のマトリックスを含むことができる。
【0012】
初期位置では、型枠22の底面は、該型枠を樹脂で満たす時に基礎上に載置されることになる。必要に応じて、様々なシール法を使用して樹脂が型枠22から漏洩するのを防止することができる。例えば、型枠22の底面には、タワー4の下方部分に対して緊密に固定された永久又は使い捨てゴムスカートを設けることができる。それに代えて又はそれに加えて型枠22の壁は、それに対して湿潤又は乾燥積層プロセスを使用してタワー4を形成する表面を構成することができる。
【0013】
樹脂は、型枠22を新規な位置に持上げる前に硬化又は部分的に硬化させることが可能である。例えば赤外線又は紫外線照射のようなエネルギー源36を設けて、硬化プロセスを促進することができる。樹脂が硬化又は部分的に硬化しかつ型枠22が新規な位置に持上げられると、その後このプロセスが繰返される。このようにして、タワー4は、一連の前の層上に載置された比較的薄い層として徐々に構築される。
【0014】
様々な方法を使用して、樹脂マトリックスの曲げ強度及び剛性を強化するようにタワー4に補強部を設けることができる。図3に示すように、トラフ34内に1つ又はそれ以上のリブリング38を配置することができる。例えば、リング38は、樹脂が硬化又は部分的に硬化する間に型枠22に固定することができる。リング38の2つ又はそれ以上はまた、軸方向巻き線40のような軸方向支持体で連結或いはそれとは別に結合することができる。図3には、2つの軸方向巻き線40のみを示しているが、あらゆる数の巻き線もまた設けることができ、かつそれら巻き線はリング38の周りに延びることができる。結合巻き線38の1つは、樹脂を満たしたトラフ34内に埋設した状態にし、その他のリングは、型枠22を上向きに移動させた時に次のリングのための軸方向巻き線を受けるようにトラフ34の上方に配置することができる。
【0015】
図4に示すように、垂直方向突出部42が、タワー4の壁からトラフ34内に延びて軸方向補強部を形成することができる。図5に示すように、突出部42は、その周りに強化繊維44を巻付けることができるマンドレルとして作用することができる。それに代えて又はそれに加えて、トラフ34の内側壁は、繊維44を巻付けるのに適したマンドレルを構成することができる。これに関連して、型枠22はまた、繊維44を巻付けるのを可能にするような様々な回転機能を備えることができる。それに代えて又はそれに加えて、それに対して繊維44を巻付けることができる短いマンドレル(図示せず)をトラフ34内に設けることができる。型枠22にはまた、繊維巻付けプロセスのためのマンドレル及び樹脂凝固型具の両方として作用する複数の壁を設けることができる。トラフ34内において、繊維プリフォームもまた使用することができる。
【0016】
本出願と同一出願人の係属中である、2008年2月27日に出願した「複合材風力タービンタワー」の名称の米国特許出願番号第12/038471号(代理人ドケット番号第227235号)において説明されているように、繊維44は長手方向繊維及び円周方向繊維を含むことができる。それに代えて又はそれに加えて、図6に示すように、タワー4の周りには、テープ46を巻付けることができる。軸方向巻き線40、垂直方向突出部42、繊維44及び/又はテープ46は、複合材を形成するのに適したガラス繊維、炭素繊維、金属繊維又はあらゆるその他の繊維のような天然又は人工繊維とすることができる。テープ46は、高軸方向配向を有する布テープとすることができる。巻き線40、突出部42及び繊維44の数は、限定されるものではなく、好適な強靱複合材を構成するのに適したあらゆる数及びあらゆる密度を備えることができる。
【0017】
上記の本発明技術は、従来型の方法に優る様々な利点をもたらす。例えば、垂直方向製造システム20は、タワー4を複数セクションとしてではなくて連続体として形成することを可能にする。一体部品構成は、セクション間フランジ及び付随ボルトトルク保持の必要性を排除することによって、タワーのコストを大幅に低減する。本システム20は、工場場所からのタワーセクションの輸送及び大量の現場製造設備の準備に関連するコストのかかる配送を回避しながら複合材の使用を可能にする。
【0018】
上記した実施形態、特にあらゆる「好ましい」実施形態は、本明細書において本発明技術の様々な態様の明確な理解を得るために説明した様々な実施形態の単なる一例であることを強調しておきたい。当業者には、特許請求の範囲の適切な構成によってのみ定まる保護の範囲から実質的に逸脱することなく、それらの実施形態の多くを変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0019】
2 風力タービン
4 タワー
6 ナセル
8 ドライブトレイン
9 ハブ
10 ブレード
12 ギアボックス
14 発電機
16 制御システム
18 風速計
20 垂直方向製造システム
22 型枠
23 カバー
24 ケーブル
26 ファスナ
28 プーリ
29 支持構造体
30 ウィンチ
32 樹脂供給源
34 トラフ
36 照射源
38 リング
40 軸方向巻き線
42 突出部
44 繊維
46 テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材タワー(4)を製造する方法であって、
型枠(22)を硬化性の樹脂で少なくとも部分的に満たすステップと、
前記型枠(22)内で前記樹脂を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
前記少なくとも部分的に硬化した樹脂の上方に前記型枠(22)の一部を持上げるステップと、
前記持上げた型枠(22)を前記硬化した樹脂に接して施した一層硬化性の樹脂で少なくとも部分的に満たすステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記硬化性の樹脂に対して補強材を付加するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記補強材が、少なくとも1つのリング(38)を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記補強材が、互いに結合された複数のリングを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記補強材が、前記一層硬化性の樹脂内に延びる複数の垂直方向突出部(42)を含む、請求項2から請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記補強材が、螺旋テープ(46)を含む、請求項2から請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記硬化性の樹脂に対して補強材を付加するステップが、マンドレルの周りに繊維(44)を巻付けるステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記マンドレルが、前記型枠(22)の壁を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記型枠(22)が、環状型枠を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
複合材タワー(4)を垂直方向に製造するための装置であって、
環状型枠(22)と、
前記型枠(22)に硬化性の樹脂を供給するようになった樹脂供給源と、
前記硬化性の樹脂が少なくとも部分的に硬化した後に、該樹脂の上方に前記型枠(22)の一部を持上げるようになったウィンチ(30)と、を含む、
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248896(P2010−248896A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91878(P2010−91878)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】