説明

複合樹脂シート及び画像表示装置用基板

【課題】ガラス同等の優れた透明性を有し、屈折率温度依存性、更に線膨張係数や吸湿性が十分に低減された複合樹脂シートを提供することであり、更には該複合樹脂シートからなる画像表示装置用基板を提供することである。
【解決手段】透明樹脂、及び該透明樹脂中に分散された無機微粒子を含有する複合樹脂シートにおいて、前記無機微粒子は前記透明樹脂中に一次粒子の状態または一次粒子が複数個凝集した状態で分散され、かつ、前記無機微粒子の粒子径をD(nm)と規定したとき、無機微粒子の個数分布関数において累積個数が全個数のそれぞれ50%及び90%となる粒子径D50及びD90が下記式(1)、(2)で規定する条件を満たしていることを特徴とする複合樹脂シート。(1)D50≦30 (2)D90−D50≦25

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、屈折率の温度依存性、線膨張係数や吸湿性が低い複合樹脂シートに関し、更に詳しくは、液晶表示装置等の種々の画像表示装置用基板、またはタッチパネル用基板、太陽電池用基板として特に好適に用いることができる複合樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子や有機EL表示素子等の表示素子用基板(特にアクティブマトリックスタイプ)、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板等としては、ガラス板が広く用いられている。しかしながら、ガラス板は割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向きなどの理由から、近年、その代替として種々のプラスチック素材が検討されている。
【0003】
プラスチック素材の線膨張係数や寸法変化率を低減させ、耐熱性、耐溶剤性、剛性等を向上させるために樹脂中に無機微粒子を含有させ複合樹脂組成物とする技術は周知であり、特にガラス代替として各種の基材に好ましく適用できる透明な複合樹脂シートとして、これまでに多くの技術が開示されている(特許文献1,2,3)。
【0004】
例えば特許文献1及び特許文献2においては、樹脂中に含有される無機微粒子として平均粒子径が100nm以下の金属酸化物が言及されており、特に特許文献1では粒子径200nmを超える粒子が含まれないことが望ましいとの記載がある。しかしながら、樹脂中に数10質量%という多量の無機微粒子が混合される系においては、無機微粒子は樹脂中で粒子径分布を形成し、粒子径200nm未満であっても粒子径の大きい粒子の個数は光線透過率に大きな影響を与える。このため、粒子径分布を極めて狭く制御することがこの技術の実用化を図る上で不可欠となるが、ガラス代替の基材として実用化に耐え得るように粒子径分布を制御する技術については、現状において、何ら開示されていない。
【0005】
また特許文献3においては、樹脂中に含有される無機微粒子として平均粒子径が1nm〜100μmの酸化物が言及されており、更に、樹脂中には均一に分散していることが望ましいとの記載がある。しかしながら、樹脂中に存在していると考えられる無機微粒子の凝集体について、その大きさ、または凝集体間距離等の具体的な態様、更にその達成手段等について何らの記載も無く、透明性を十分に向上させた複合樹脂シートの開示には至っていない。
【特許文献1】特開2003−105214号公報
【特許文献2】特開2005−239802号公報
【特許文献3】特開2005−139235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマー素材中に無機微粒子を含有させ、線膨張係数等の種々の物性を改良するためには、場合によっては40質量%以上または50質量%以上の無機微粒子を混合する必要があり、このように無機微粒子の添加量が多い場合においては、無機微粒子による光の散乱の影響が無視できなくなり、樹脂中での無機微粒子の粒子径、及び粒子間距離が光線透過率に大きく影響すると予想される。
【0007】
実際に、樹脂中に無機微粒子を分散した場合においては、無機微粒子の粒子径は分布を形成し、特に粒子径の大きい粒子の個数が光線透過率に大きな影響を与え、更に粒子間距離、すなわち粒子のバラつき具合も光線透過率に大きな影響を与える。このため、樹脂中での粒子径分布及びバラつき具合を制御することがこの技術の実用化を図る上で不可欠となるが、特にガラス代替基板として実用化に耐え得るようにこれらを制御する技術については、現状において、何ら開示されていない。
【0008】
本発明は上述の通り従来の技術では十分に達成できなかった課題を解決しようとするものであり、本発明の目的は、ガラス同等の優れた透明性を有し、屈折率温度依存性、更に線膨張係数や吸湿性が十分に低減された複合樹脂シートを提供することであり、更には該複合樹脂シートからなる画像表示装置用基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、複合樹脂シート中における無機微粒子の凝集体の粒子径分布を十分に狭く制御し、更に凝集体間距離も均一に制御させ分散させることによって、満足できる透明性を達成し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は以下の手段により達成される。
【0011】
1.透明樹脂、及び該透明樹脂中に分散された無機微粒子を含有する複合樹脂シートにおいて、前記無機微粒子は前記透明樹脂中に一次粒子の状態または一次粒子が複数個凝集した状態で分散され、かつ、前記無機微粒子の粒子径をD(nm)と規定したとき、無機微粒子の個数分布関数において累積個数が全個数のそれぞれ50%及び90%となる粒子径D50(nm)及びD90(nm)が下記式(1)、(2)で規定する条件を満たしていることを特徴とする複合樹脂シート。
【0012】
50≦30 (1)
90−D50≦25 (2)
2.任意の前記無機微粒子とそれに隣り合う前記無機微粒子との中心間距離をL(nm)と規定したとき、中心間距離Lの頻度分布関数における最大頻度を示すピーク値Lp(nm)が下記式(3)で規定する条件を満たすことを特徴とする前記1に記載の複合樹脂シート。
【0013】
Lp≦60nm (3)
3.前記透明樹脂が脂環式ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする前記1または2に記載の複合樹脂シート。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂シートを用いることを特徴とする画像表示装置用基板。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、優れた透明性を有し、更に屈折率の温度依存性が低く制御された複合樹脂シート及び画像表示装置用基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態について更に詳細に説明する。
【0017】
本発明の複合樹脂シートにおいては、透明性を確保して光透過率を高く維持するために、図1(a)に示す通り、無機微粒子が一次粒子(単体)の状態で透明樹脂中に分散されているのが好ましい。しかしながら、現実には、図1(b)に示す通り、無機微粒子は単体でのみ分散しているのではなく、単体が複数個凝集した凝集体の状態でも分散しており、単体と凝集体とが混在した無機微粒子として透明樹脂中に存在している。
【0018】
そのため、無機微粒子(単体とその凝集体とを含むもの)の粒子径をD(図1(b)参照)と規定したとき、無機微粒子の粒子径Dのとり得る値の範囲、特に粗大粒子を少なく制御することが非常に重要な要素となり、本発明に係る複合樹脂シートでは、粒子径Dが下記式(1)、(2)の両条件を満たすようになっている。そして当該複合樹脂シートでは、これら両条件を満たすように、透明樹脂中に分散した無機微粒子の粒子径分布を制御することにより、多量の無機微粒子を透明樹脂中に分散させた場合であっても、光線透過率の向上を図ることができる。
【0019】
50≦30 (1)
90−D50≦25 (2)
上記式(1)、(2)中、D50及びD90は、図2(a)、(b)に示す通り、無機微粒子の粒子径Dとその粒子径Dを有する無機微粒子の個数との分布を関数として表現した場合に、その個数分布関数において、無機微粒子の累積個数が全個数のそれぞれ50%及び90%となる粒子径D(nm)を意味する。
【0020】
無機微粒子の個数分布関数を求める方法としては、無機微粒子が透明樹脂中に分散された複合樹脂シートの切片を準備してその透過型電子顕微鏡写真から画像解析を行って求める方法や、光散乱等を利用する方法等が挙げられるが、本実施形態における無機微粒子の個数分布関数は測定対象や粒子径Dの範囲等の観点からX線小角散乱法によって求めたものとなっている。具体的には、当該個数分布関数は、測定装置(小角広角X線回折装置)として理学電機株式会社製RINT2500/PCを、その装置から得られたX線小角散乱曲線の解析ソフトとして理学電機株式会社製NANO−solver Ver3.0を用いて算出したものとなっている。
【0021】
無機微粒子の粒子径D50は上記式(1)に規定する条件を満たすものとなっているが、当該粒子径D50が30nmより大きいと、透明樹脂中の無機微粒子による光の散乱の程度が大きくなり、本発明の目的効果を実現することができなくなる。複合樹脂シートの光線透過率を高めるためには、無機微粒子の粒子径D50は20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
ここで、無機微粒子の平均一次粒子径をDpと規定したとき、平均一次粒子径Dpは1〜30nmであることが好ましく、1〜20nmであることがより好ましく、1〜10nmであることが特に好ましい。無機微粒子の「平均一次粒子径Dp」とは、無機微粒子の単体(凝集体を構成する単体を含む。)を同体積の球に換算したときの直径の平均値を示し、この値は、無機微粒子が透明樹脂中に分散された複合樹脂シートの切片の透過型電子顕微鏡写真から評価することができる。平均一次粒子径Dpが1nm未満の場合、透明樹脂に対する無機微粒子の分散が困難になり所望の性能が得られないおそれがあることから、平均一次粒子径Dpは1nm以上であることが好ましい。他方、平均一次粒子径Dpが30nmを超えると、得られる複合樹脂シートが濁るなどして透明性が低下するおそれがあることから、平均一次粒子径Dpは30nm以下であることが好ましい。
【0023】
なお、無機微粒子の上記粒子径D50は、無機微粒子の平均一次粒子径Dpとの関係においては、D50≧Dpの条件を満たすのが好ましく、複合樹脂シートの製造上の観点からD50≧Dp+1(nm)の条件を満たすのが更に好ましい。
【0024】
更に、本発明の複合樹脂シートにおいては、任意の無機微粒子(単体とその凝集体とを含むもの)とそれに隣り合う無機微粒子(同)との中心間距離をL(図1(b)参照)と規定したとき、無機微粒子同士の中心間距離Lとのとり得る値の範囲が非常に重要な要素となり、中心間距離L(nm)が下記式(3)の条件を満たすことが好ましく、この条件を満たしたときに、透明性に優れ光線透過率を高く維持することができる。
【0025】
Lp≦60nm (3)
上記式(3)中、Lpは、図2(b)に示す通り、任意の無機微粒子同士の中心間距離Lとその中心間距離Lの出現頻度との分布を関数として表現した場合に、その頻度分布関数におけるピークの中心間距離L(nm)を示すものである。
【0026】
中心間距離Lの頻度分布関数も、無機微粒子の個数分布関数と同様に、X線小角散乱法によって求めたものとなっており、具体的には、測定装置(小角広角X線回折装置)として理学電機株式会社製RINT2500/PCを、その装置から得られたX線小角散乱曲線の解析ソフトとして理学電機株式会社製NANO−solver Ver3.0を用いて算出したものとなっている。
【0027】
無機微粒子同士の中心間距離Lpは上記式(3)に規定する条件を満たすことが好ましいが、中心間距離Lpが60nmを超えると、無機微粒子同士の中心間距離Lが大きくなりすぎることにより、複合樹脂シートの光線透過率の低下が起こる。無機微粒子同士の中心間距離Lpは40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。ただし、無機微粒子同士の中心間距離Lpは、製造上の観点から、Lp≧Dp+3(nm)を満たすことが好ましい。
【0028】
ここで、本発明の複合樹脂シートにおいては、無機微粒子同士の中心間距離Lが下記式(4)で規定する条件を満たすことが好ましく、この条件を満たした場合に、更に高い光線透過率を示すようになっている。
【0029】
95≦100nm (4)
上記式(4)中、L95とは、任意の無機微粒子同士の中心間距離Lとその中心間距離Lの出現頻度との頻度分布関数(図2(b)参照)において、累積頻度が全頻度の95%となる中心間距離Lを示すものである。
【0030】
無機微粒子同士の中心間距離L95は上記式(4)に規定する条件を満たすことが好ましいが、無機微粒子同士の中心間距離L95が100nm以上になると、複合樹脂シートの光線透過率の低下が起こりやすくなる。無機微粒子同士の中心間距離L95は80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることが更に好ましい。
【0031】
次に、本発明について更に具体的に説明する。
【0032】
1.透明樹脂
本発明の複合樹脂シートで用いられる透明樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明性の高い樹脂であれば特に限定されるものではないが、耐熱性や加工性の観点から、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、更に吸水性が低く、透明性に優れることから脂環式ポリオレフィン樹脂が最も好ましい。脂環式ポリオレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、シクロヘキサジエン系ポリマー、オレフィンマレイミド交互共重合体などが挙げられ、ノルボルネン系樹脂としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンとの付加型重合体などが挙げられ、例えばTFT液晶表示装置用基板のように製造工程で高温にさらされる可能性のある用途では耐熱性のあるノルボルネン系単量体の付加型重合体が好ましい。
【0033】
ノルボルネン系単量体としては、ノルボルネン、そのアルキル、アルキリデン、芳香族置換誘導体及びこれらオレフィンのハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基等の極性基置換体、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン等;ノルボルネンに1つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4:5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4:5,10:6,9−トリメタノ−1,2,3,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a−ドデカヒドロ−2,3−シクロペンタジエノアントラセン等;シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、その上記と同様の誘導体や置換体、例えば、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン等;等が挙げられる。
【0034】
本発明の複合樹脂シートにおいては、透明樹脂の吸湿性が複合シートの物性に大きく影響するため、特に寸法安定性の観点から透明樹脂の吸水率は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。特に脂環式ポリオレフィン樹脂について具体的な製品を用いる場合には、日本ゼオン製:ZEONEX、三井化学製:APEL、JSR製:アートン、チコナ製:TOPAS等が好適に用いられる。
【0035】
また、上述したような各種の樹脂は単独で用いてもよく2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。2種以上の樹脂を混合して用いる場合においては、その吸湿率は個々の樹脂における吸湿率の平均値と略同一と考えられ、その平均の吸湿率が0.2%以下になるように組み合わせることが好ましい。
【0036】
2.無機微粒子
本発明の複合樹脂シートが含有する無機微粒子としては、上記式(1)及び式(2)、更に好ましくは式(3)で規定する条件を満たすような無機微粒子の中から任意に選択することができる。具体的には酸化物微粒子、金属塩微粒子、半導体微粒子などが好ましく用いられ、この中から、画像表示装置用基板、または他の種々用途として使用する波長領域において、吸収、発光、蛍光等が生じないものを適宜選択して使用することが好ましい。
【0037】
酸化物微粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができ、具体的には、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl24)等が挙げられる。
【0038】
その他の酸化物微粒子として希土類酸化物を用いることもでき、具体的には酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。金属塩微粒子としては、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられ、具体的には炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0039】
半導体微粒子とは、半導体結晶組成の微粒子を意味し、該半導体結晶組成の具体的な組成例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al23)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga23)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In23)、硫化インジウム(In23)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As23)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb23)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi23)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe34)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta25)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti25、Ti23、Ti59等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr24)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr24)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。
【0040】
なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF21515や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0041】
透明樹脂として特に好ましく用いられる脂環式ポリオレフィン樹脂を用いた場合に、上記式(1)及び式(2)で規定された条件を満たす特に好ましい無機微粒子としては、例えば、シリカ(酸化珪素)、酸化アルミニウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl24)、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。同様に上記式(3)で規定された条件を満たす特に好ましい無機微粒子としては、例えば、酸化珪素、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0042】
一般に、透明樹脂中に微粒子を分散させる際には、母材となる透明樹脂の屈折率と微粒子の屈折率の差が小さい方が光を透過させた場合に散乱を起こし難いため、透明樹脂に対し、屈折率の差が小さくなるような微粒子を選択することが好ましい。具体的には、透明樹脂と分散される微粒子との屈折率差は、0〜0.3の範囲であることが好ましく、0〜0.15の範囲であることが更に好ましい。
【0043】
尚、複合樹脂シートとして好ましく用いられる透明樹脂の屈折率は、1.4〜1.6程度である場合が多く、屈折率差を小さくするという観点から、これらの透明樹脂に分散させる無機微粒子としては、例えば酸化珪素、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物が好ましく用いられる。
【0044】
上述したこれらの無機微粒子は、1種類の無機微粒子を用いてもよく、また複数種類の無機微粒子を併用してもよい。異なる性質を有する複数種類の無機微粒子を用いることで、必要とされる特性を更に効率よく向上させることもできる。複数種類の無機微粒子は、混合型、コアシェル(積層)型、化合物型、1つの母材無機微粒子中にもう1つの無機微粒子が存在する複合型等、何れであってもよい。
【0045】
無機微粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状の微粒子が好適に用いられる。具体的には、粒子の最小径(微粒子の外周に接する平行な2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最小値)/最大径(微粒子の外周に接する平行な2本の接線を引く場合における当該接線間の距離の最大値)が0.5〜1.0であることが好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい。
【0046】
更に、無機微粒子は表面処理が施されていることが好ましい。無機微粒子の表面処理の方法としては、カップリング剤等の表面修飾剤による表面処理、ポリマーグラフト、メカノケミカルによる表面処理などが挙げられる。
【0047】
また、無機微粒子の表面処理に用いられる表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤を始め、シリコーンオイル、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。これらは特に限定されるものではないが、無機微粒子及び無機微粒子を分散する透明樹脂の種類により適宜選択することが可能である。また、各種表面処理を2つ以上同時または異なる時に行ってもよい。
【0048】
シラン系の表面処理剤としては、ビニルシラザントリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、微粒子の表面を広く覆うためにヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。
【0049】
シリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル及びフッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルを用いることが可能である。
【0050】
また、これらの処理剤は、ヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン、水等で適宜希釈して用いられてもよい。
【0051】
表面修飾剤による表面処理の方法としては、湿式加熱法、湿式濾過法、乾式撹拌法、インテグラルブレンド法、造粒法等が挙げられる。100nm以下の表面改質を行う場合は、乾式撹拌法が粒子凝集抑制の観点から好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0052】
これらの表面修飾剤は、1種類のみを用いてもよく、複数種類を併用してもよい。また、用いる表面修飾剤によって得られる表面修飾微粒子の性状は異なることがあり、複合樹脂シートを得るに当たって用いる透明樹脂との親和性の向上を、表面修飾剤を選ぶことによって図ることも可能である。表面修飾の割合は、特に限定されるものではないが、表面修飾後の無機微粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99質量%の範囲であることが好ましく、30〜98質量%の範囲であることがより好ましい。
【0053】
本発明で用いる無機微粒子の製造方法としては特に限定は無く、公知のあらゆる製造方法を適用することが可能であるが、粒子径分布が狭く均一な微粒子を用いることが好ましいことから、反応晶析法やゾルゲル法などの液相法により製造することが好ましい。
【0054】
3.添加剤
複合樹脂シートの製造工程及び成形工程においては、必要に応じて各種添加剤(以下、配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、特に限定はないが、主に、可塑剤、酸化防止剤、耐光安定剤等が挙げられ、それ以外にも、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤等の樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラー等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能であり、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。特に、少なくとも可塑剤または酸化防止剤が含有されていることが好ましい。
【0055】
(3−1)可塑剤
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等が挙げられる。
【0056】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等が挙げられる。
【0057】
(3−2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による着色や強度低下を防止できる。また、酸化防止剤は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、重合体100質量部に対して、0.001〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.01〜1質量部の範囲であることがより好ましい。
【0058】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが適用可能であり、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0059】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0060】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0061】
(3−3)耐光安定剤
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤等が挙げられるが、本発明においては、透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALS)の中でも、テトラヒドロフランを溶媒として用いた液体クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量Mnが1,000〜10,000であるものが好ましく、2,000〜5,000であるものがより好ましく、2,800〜3,800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できない、または、射出成形等の加熱溶融成形時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下するといった問題が生じるからである。
【0062】
上述したHALSとしては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンと、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)と、モルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕等のピペリジン環がリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等のピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンと、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等のMnが2,000〜5,000の範囲であるものが好ましい。
【0064】
(3−4)配合量等
上述した各種添加剤の配合量は、重合体100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲であることが好ましく、0.02〜15質量部の範囲であることがより好ましく、0.05〜10質量部であることが特に好ましい。これは、添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られないため、特に画像表示装置の基板として使用する場合、例えばバックライト等の照射によって着色が生じてしまい、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生するとともに、樹脂への分散性が低下するため、基材の透明性が低下するからである。
【0065】
また、最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することが好ましい。これによって、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できるからである。
【0066】
4.透明樹脂と無機微粒子の混合方法
本発明の複合樹脂シートは、透明樹脂及び無機微粒子を含有する複合樹脂組成物を製造し、該複合樹脂組成物をシート状に形成することにより得られるが、その複合樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。従って、無機微粒子の存在下で透明樹脂を重合させることで複合化する方法、透明樹脂の存在下で無機微粒子を形成し複合化する方法、無機微粒子を透明樹脂の溶媒になる液中に分散して分散液とし、その後溶媒を除去することで複合化する方法、無機微粒子と透明樹脂を別々に用意し、溶融混練、溶媒を含んだ状態での溶融混練などで複合化する方法等、何れの方法によっても製造することができる。各種添加剤はこのような複合化の過程のどの工程で加えても良いが、複合化に支障のない添加タイミングを選択することが好ましい。
【0067】
複合樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、複合樹脂組成物は上記の中でも溶融混練法で製造されることが好ましい。溶融混練に用いることのできる装置としては、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造することもできる。
【0068】
複合樹脂組成物の製造方法において溶融混練法を用いる場合、透明樹脂と無機微粒子を一括で添加し混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。この場合、押出機などの溶融混練装置では、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。また、混練後、透明樹脂以外の成分で予め添加しなかった成分を添加して更に溶融混練する際も、これらを一括で添加して混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。分割して添加する方法も、一成分を数回に分けて添加する方法も採用でき、一成分は一括で添加し、異なる成分を段階的に添加する方法も採用でき、そのいずれをも合わせた方法でも良い。
【0069】
溶融混練法による複合化を行う場合、無機微粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することが可能である。あるいは、液中に分散した状態で添加することも可能である。液中に分散した状態で添加する場合は、混練後に脱気を行うことが好ましい。また、液中に分散した状態で添加する場合は、予め凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。分散には各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズは各種の素材があるがその大きさは小さいものが好ましく、特に直径0.001mm以上0.1mm以下のものが好ましい。
【0070】
複合樹脂組成物における透明樹脂及び無機微粒子の混合の程度は、特に限定されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、均一に混合していることが好ましい。混合の程度が不十分の場合には、複合樹脂組成物中の無機微粒子の粒子径分布が広くなり、特に粗大な凝集粒子を含むことが懸念される。複合樹脂組成物中の無機微粒子の粒子径分布はその製造方法に大きく影響されることから、用いられる透明樹脂及び無機微粒子の特性を十分に勘案して最適な方法を選択することが重要である。
【0071】
透明樹脂に対する無機微粒子の割合は特に限定されるものではなく、使用する無機微粒子の複屈折性や線膨張係数等にもよるが、5〜70vol%の範囲であることが好ましく、10〜50vol%の範囲であることがより好ましい。無機微粒子の体積濃度が低すぎると期待する配向複屈折低減効果が得られず、体積濃度が高すぎると混練性及び成形性が低下する。
【0072】
5.複合樹脂シートの形成方法
本発明の複合樹脂シートの形成方法としては特に限定は無く、公知の樹脂シートを形成する方法を適宜用いることが可能で、例えば、溶剤にて溶液化して型に塗布し冷却・固化し乾燥させて成形するキャスティング法(溶液成膜法)、ペレット化しダイコーターを利用してシート状に押し出す押出し成形法(溶融成膜法)など、様々な方法を挙げることができる。
【0073】
複合樹脂シートの成形方法としては特に限定されるものではないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れたシートを得るためには溶融成膜法が好ましく、具体的には市販のプレス成形、押出し成形、射出成形等が挙げられ、成形性及び生産性の観点から適宜選択することができる。溶融成膜法については、更に詳細には溶融押出し成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類できる。これらの中で、特に機械的強度及び表面精度等が要求される画像表示装置用基板フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れている。得られる複合樹脂シートの物性を鑑みると、溶融温度は120℃〜280℃の範囲であることが好ましく、200℃〜250℃であることがより好ましい。
【0074】
即ち、粉体またはペレット状に成形された原料の複合樹脂組成物を熱風乾燥または真空乾燥した後、複合樹脂シート構成材料と共に加熱し溶融し、その流動性を発現させた後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押出して、例えば、静電印加法等により冷却ドラム或いはエンドレスベルト等に密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。冷却ドラムの温度は90〜150℃に維持されていることが好ましい。
【0075】
冷却ドラムから剥離され得られたフィルムは、1つまたは複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、再度加熱して長手方向に一段または多段縦延伸後冷却することが好ましい。このとき、本発明の複合樹脂シートのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内で加熱して搬送方向(長手方向;MD)あるいは幅手方向(TD)に延伸することが好ましい。(Tg−20)〜(Tg+20)℃の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。また延伸工程の後、緩和処理を行うことも好ましい。
【0076】
上記あるいはそれ以外の方法でシートを形成した後、表面に平滑化コーティングを施すなど、表面の平滑性を向上させる処理を行ってもよい。
【0077】
本発明の複合樹脂シートは、25℃〜160℃における線膨張係数が5.00×10-5/℃以下であることが好ましく、4.00×10-5/℃以下であることがより好ましく、3.00×10-5/℃以下であることが特に好ましい。線膨張係数は、例えばJIS規格K−7197に記載のTMA法によって測定し、下記式1より算出できる。下記式1において、△Is(T1)、△Is(T2)は、それぞれサンプル測定時の温度T1(℃)及びT2(℃)におけるTMA測定値(μm)を示し、L0は、室温におけるサンプルの長さ(mm)のことである。
【0078】
【数1】

【0079】
本発明の複合樹脂シートは、最大表面粗さ(最大高さ;PV値又はRpv値)が1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。シートがこれより粗くなると、例えば液晶表示素子用基板として用いる場合、シートに接触している液晶部分に厚みムラを生じ、表示不良の問題が起こりうる。
【0080】
本発明の複合樹脂シートは、種々の用途において必要に応じて、ガスバリア層、ハードコート層、カール防止層、導電膜層、各層間との密着性を増すため接着層等、種々の機能層を積層してもよい。
【0081】
6.複合樹脂シートの用途
本発明の複合樹脂シートは、その用途として特に限定は無く、様々な分野に適用することができる。具体的には、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板、液晶ディスプレイなどの画像表示装置に用いる導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;画像表示装置用基板などを挙げることができる。
【0082】
本発明の複合樹脂シートは特に透明性に優れることから、上記の様々な用途の中でも種々の光学フィルムや画像表示装置用基板として特に好適に用いられ、特に画像表示装置用のガラス代替基板として用いるのが機能を十分に発揮できる上で好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0084】
実施例1
〈試料1〜5の作成〉
脂環式ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン社製:ゼオネックス330R)とシリカ(日本アエロジル社製:RX300、平均一次粒子径7nm)を、混練装置(HAAKE社製:ポリラボミキサーシステム)を用いて、設定温度180℃〜220℃、ロータ回転数10〜50rpm、混練時間1〜30分の間で条件を変化させて混練させ、複合樹脂シート中におけるD50、D90−D50、更にLpが表1に記載のようになるように、それぞれ試料1〜5を作製した。尚、無機微粒子の体積分率はいずれも0.3となるようにした。
【0085】
〈複合樹脂シート1〜5の作成〉
上述した製法によって作製した各試料を、減圧下70℃で3時間乾燥させペレットを作成し、溶融押出し法によって複合樹脂シートを作成した。溶融押出し条件は、回転数200rpm、バレル温度240℃、キャスティングドラム温度90℃とし、得られるシートの膜厚は80μmとなるように調節して成膜した。得られたシートは表1に示す通り、それぞれシート1〜5とした。
【0086】
《評価方法》
1.無機微粒子の粒子径分布及び中心間距離分布の測定
小角広角X線回折装置(理学電機株式会社製:RINT2500/PC)を用いてX線小角散乱測定を行い、各試料1〜5における複合樹脂シート中の無機微粒子の分散粒子の粒子径分布及び中心間距離分布を求めた。測定は、以下の測定条件による透過法で行った。このとき、各試料1〜5の厚さを1/μ(μは各試料1〜5の質量吸収係数)となるように調整した。
【0087】
ターゲット:銅
出力:40kV−200mA
1stスリット:0.04mm
2ndスリット:0.03mm
受光スリット:0.1mm
散乱スリット:0.2mm
測定法:2θ FTスキャン法
測定範囲:0.1°〜6°
サンプリング:0.04°
計数時間:30秒
得られた散乱パターンに基づいて、解析ソフト(理学電機株式会社製:NANO−solver Ver3.0)を用いて各試料1〜5の解析を行った。ここで、解析に必要なブランクデータは、測定用の各試料1〜5を受光スリットボックスの入射側に設置して、同条件で測定することによって得た。
【0088】
解析は、散乱体のモデルを球とし、ブランクデータの除去、スリット補正を行った後、フィッティングを行い、無機微粒子の分散粒子の粒子径分布及び中心間距離分布を求めた。得られた粒子径分布に基づいてD50の数値を計算し、得られた中心間距離分布に基づいてLpの数値を算出した。これらの算出結果を下記表1に示した。
【0089】
2.光線透過率
各試料1〜5を加熱溶融した後、それら各試料1〜5を厚さ寸法が3mmのプレート状に成型した。得られたプレート状の各試料1〜5について、分光光度計(株式会社島津製作所製:UV−3150)により、波長588nmにおける厚さ方向の透過率を測定した。その測定結果を下記表1に示した。
【0090】
3.dn/dT変化率の算出
自動屈折計(カルニュー光学工業株式会社製:KPR−200)を用いて、各試料1〜5の温度を10℃から60℃まで変化させ、波長588nmにおける屈折率nを測定し、各試料1〜5におけるdn/dTを算出した。更に、無機微粒子が添加されていない透明樹脂(日本ゼオン製:ZEONEX330R)についても、同様の方法によりdn/dTを算出した。
【0091】
これら算出結果に基づいて、下記式により、各試料1〜5のdn/dTの変化率を算出した。その算出結果を下記表1に示した。
【0092】
dn/dT変化率=(透明樹脂におけるdn/dT−各試料1〜5におけるdn/dT)/(透明樹脂におけるdn/dT)×100
【0093】
【表1】

【0094】
表1より、試料2〜5を用いた、前記式(1)及び前記式(2)で規定する条件を満たす複合樹脂シート2〜5は、条件を満たさない複合樹脂シート1に対し、光線透過率が高く、(dn/dT)が減少しており、屈折率の温度依存性が小さくかつ透明性が高い、光学的に優れたシートであることが判明した。更に、D50を20nm以下にすると光線透過率が著しく向上した(シート5)。
【0095】
また、複合樹脂シート2〜5の中でも、前記式(3)で規定する条件を満たす複合樹脂シート3〜5は、条件を満たさない複合樹脂シート2に対し、特に(dn/dT)が減少しており、屈折率温度依存性が小さくなる。更に、D50が同等の場合でLpを30nm以下にすると、その効果が特に著しいことが判明した(シート4)。
【0096】
実施例2
実施例1における複合樹脂シート1及び5を用いて、簡易的に液晶表示素子用基板として使用し比較検討を行った。
【0097】
富士通社製カラー液晶ディスプレイVL−1530Sから偏光板をはがし、実施例1におけるシート1及びシート5をそれぞれ載せ、更に取り除いた偏光板を再び載せて、シート1及びシート5が無い場合との色ずれの度合い等を比較した結果、シート1ではこれがない場合に比べ色ずれが起こり、又暗くなってしまったが、シート5はこれがない場合に比べても色ずれは小さく、また、明るさの変化もなく、実施例1と同様の実験結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】無機微粒子が透明樹脂中に分散した状態を示す模式図である。
【図2】分散粒子の粒径Dとその粒径Dを有する分散粒子の個数との個数分布関数及び任意の分散粒子同士の中心間距離Lとその中心間距離Lの出現頻度との頻度分布関数をそれぞれ示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂、及び該透明樹脂中に分散された無機微粒子を含有する複合樹脂シートにおいて、前記無機微粒子は前記透明樹脂中に一次粒子の状態または一次粒子が複数個凝集した状態で分散され、かつ、前記無機微粒子の粒子径をD(nm)と規定したとき、無機微粒子の個数分布関数において累積個数が全個数のそれぞれ50%及び90%となる粒子径D50(nm)及びD90(nm)が下記式(1)、(2)で規定する条件を満たしていることを特徴とする複合樹脂シート。
50≦30 (1)
90−D50≦25 (2)
【請求項2】
任意の前記無機微粒子とそれに隣り合う前記無機微粒子との中心間距離をL(nm)と規定したとき、中心間距離Lの頻度分布関数における最大頻度を示すピーク値Lp(nm)が下記式(3)で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂シート。
Lp≦60nm (3)
【請求項3】
前記透明樹脂が脂環式ポリオレフィン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合樹脂シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂シートを用いることを特徴とする画像表示装置用基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−204521(P2007−204521A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22229(P2006−22229)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】