説明

複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体

【課題】環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能なポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を提供する。
【解決手段】複合樹脂粒子は、ASTMにより測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂と、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下のビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む。発泡性複合樹脂粒子は、上記ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含む。予備発泡粒子は、上記発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて得られる。発泡成形体は、上記予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡成形体は、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子に発泡剤を含浸した発泡性複合樹脂粒子を形成し、この発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子とし、この予備発泡粒子を成形することで得られる。このように発泡成形体を得るために用いられるポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子としては、従来より化石燃料資源由来のポリエチレン系樹脂を用いていた(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/027944号
【特許文献2】特許第2668384号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、大気中の二酸化炭素の増加に対する環境問題、及び、化石燃料資源の枯渇への危惧が生じてきている。このため、この種の問題解決に貢献できる複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体が要望されている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能なポリエチレン系複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑みて、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子において植物由来のポリエチレン系樹脂を用いることに着目し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の複合樹脂粒子は、ASTM(米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials)により測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂と、該植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下のビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む。
【0008】
本発明者が鋭意研究した結果、植物由来のポリエチレン系樹脂と、ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を用いて発泡成形体を作製しても、従来の化石燃料資源由来のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を用いて作製した発泡成形体と同等の性能を有することを見出した。このため、本発明の植物由来のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子は、化石燃料資源由来のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む樹脂粒子の代替となり得る。したがって、本発明は、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能な複合樹脂粒子を提供することができる。
【0009】
上記ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子において、耐衝撃性が必要な用途には、上記植物由来ポリエチレン系樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が好ましい。また、低摩擦抵抗が必要な用途には、上記植物由来ポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0010】
これにより、本発明のポリエチレン系樹脂と、ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を用いて作製した発泡成形体の高い耐衝撃性もしくは低い摩擦抵抗を発揮することができる。
【0011】
本発明の発泡性複合樹脂粒子は、上記ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含む。
【0012】
本発明の発泡性複合樹脂粒子によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むので、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能な発泡性複合樹脂粒子を提供することができる。
【0013】
本発明の予備発泡粒子は、上記発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて得られる。
【0014】
本発明の予備発泡粒子によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むので、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能な予備発泡粒子を提供することができる。
【0015】
本発明の発泡成形体は、予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られる。
【0016】
本発明の発泡成形体によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むので、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能な発泡成形体を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、植物由来ポリエチレン系樹脂を含むので、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能な複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子は、ASTMにより測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂と、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下のビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含むことを意味する。具体的には、本実施の形態のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子は、ASTMにより測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部当たりに10質量部以上1000質量部以下のビニル芳香族系モノマーを含浸させながら、重合させてもよい。また、ビニル芳香族系モノマーを重合して得られた樹脂と植物由来ポリエチレン系樹脂を単純に混合して複合樹脂粒子としても良い。
【0020】
植物由来ポリエチレン系樹脂は、植物度が80%以上であれば特に限定されず、例えばBraskem S.A.社製の商品名「SLL−118」、「SLH−218」、「SHD−7255LS−L」などを用いることができる。
【0021】
ここで、上記植物度は、ASTM D6866 により測定される値である。植物度が80%以上の場合、石油由来などの化石燃料資源由来ポリエチレン系樹脂を低減できるので、化石燃料資源の使用量を低減でき、環境問題及び化石燃料資源の枯渇の解決に貢献可能である。
【0022】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0023】
植物由来ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE:密度 0.910〜0.940g/cm3)、高密度ポリエチレン系樹脂(HDPE:密度 0.940〜0.970g/cm3)などであってもよく、耐衝撃性が必要な用途には、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子を用いて発泡成形体を作成すると、高い耐衝撃性を発揮することができる。また、低摩擦抵抗が必要な用途には、高密度ポリエチレン系樹脂が好ましい。高密度ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む複合樹脂粒子を用いて発泡成形体を作成すると、低い摩擦抵抗を発揮することができる。
【0024】
ビニル芳香族系モノマーは、特に限定されないが、スチレン及び置換スチレン(置換基には、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が含まれる)のいずれも使用できる。置換スチレンとしては、例えば、クロルスチレン類、p−メチルスチレン等のビニルトルエン類、α−メチルスチレン等が挙げられる。この内、スチレンが一般に好ましい。また、スチレン系モノマーは、スチレンと、置換スチレンとの混合物、スチレンと共重合可能な少量の他のモノマー(例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸アルキルエステル(アルキル部分の炭素数1〜8程度)、マレイン酸モノ乃至ジアルキル(アルキル部分の炭素数1〜4程度)、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ乃至ジアクリル酸乃至メタクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイド等)との混合物が使用できる。これら混合物中、スチレンが優位量(例えば、50重量%以上)を占めることが好ましい。
【0025】
ビニル芳香族系モノマーの量は、植物由来ポリエチレン系樹脂10質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下であり、100質量部以上400質量部以下であることが好ましい。10質量部以上の場合、ビニル芳香族系モノマーの剛性が良好であるという特性を発現しやすい。100質量部以上の場合、ビニル芳香族系モノマーの特性をより発現しやすい。1000質量部以下の場合、ポリエチレン系樹脂の弾性が高く、耐油性及び耐衝撃性が良好であるという特性が発現しやすい。400質量部以下の場合、ポリエチレン系樹脂の特性をより発現しやすい。
【0026】
ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子は、無機核剤をさらに含むことが好ましい。無機核剤としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、ゼオライト、炭酸カルシウム等を使用できる。
【0027】
ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子が無機核剤をさらに含む場合には、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下が好ましい。0.01質量部以上であると、植物由来ポリエチレン系樹脂中にビニル芳香族系モノマーを分散させやすい。2質量部以下であると、発泡成形体の強度を向上できる。
【0028】
ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子は、必要に応じて、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加物をさらに含んでいてもよい。着色剤としては、無機着色剤及び有機着色剤のいずれを用いてもよいが、酸化鉄、カーボンブラック等の無機系の着色剤を用いることが好ましい。
【0029】
続いて、本実施の形態におけるポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子の製造方法について説明する。
【0030】
まず、植物由来ポリエチレン系樹脂を押出機に供給する。この時、必要に応じて、植物由来ポリエチレン系樹脂と併せてタルク等の添加物を押出機に供給してもよい。この供給物を溶融混練し、造粒することで植物由来ポリエチレン系樹脂粒子を形成する。
この工程では、植物由来ポリエチレン系樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂または高密度ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
次に、分散剤を含む水溶液中に、植物由来ポリエチレン系樹脂粒子100質量部と、ビニル芳香族系モノマー10質量部以上1000質量部以下とを加熱・攪拌下にて分散して、植物由来ポリエチレン系樹脂粒子にビニル芳香族系モノマーを含浸させる。
【0032】
分散剤としては、特に限定されず、例えば、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム等を用いることができる。
【0033】
上記水溶液中に、重合開始剤をさらに混合してもよい。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネ−ト等の有機過酸化物を用いることができる。
【0034】
次に、分散液を昇温して、植物由来ポリエチレン系樹脂粒子中でビニル芳香族系モノマーを重合させる。
【0035】
以上の工程を実施することにより、本実施の形態のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を製造することができる。
【0036】
なお、ビニル芳香族系モノマーの量が多い場合(例えば300質量部を超える場合)、重合体粉末の発生を低減するために、ビニル芳香族系モノマーを2段階以上に分けて植物由来ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させてもよい。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態の発泡性複合樹脂粒子は、実施の形態1のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子と、揮発性発泡剤とを含む。
【0038】
揮発性発泡剤は、特に限定されないが、例えば、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素類等を単独もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0039】
揮発性発泡剤の含有量は、特に限定されないが、発泡性複合樹脂粒子を構成する植物由来ポリエチレン系樹脂及びビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂の合計100質量部に対して、例えば5質量部以上30質量部以下である。
【0040】
続いて、本実施の形態における発泡性複合樹脂粒子の製造方法について説明する。
まず、実施の形態1のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を製造する。
【0041】
次に、例えば、回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を供給して回転させながら、揮発性発泡剤を圧入する。この時、必要に応じて、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子と併せて気泡調整剤等の添加物を回転混合機に供給してもよい。
次に、所定の温度まで昇温し、その温度で維持した後、冷却する。
【0042】
以上の工程を実施することにより、本実施の形態における発泡性複合樹脂粒子を製造することができる。
なお、本実施の形態の発泡性複合樹脂粒子は、ビニル芳香族モノマーの重合終了後のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子に揮発性発泡剤を混合しているが、ビニル芳香族系モノマーの重合中に揮発性発泡剤を混合してもよい。
【0043】
(実施の形態3)
本実施の形態の予備発泡粒子は、実施の形態2の発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させてなる。予備発泡粒子は、実施の形態2の発泡性複合樹脂粒子を嵩密度10kg/m3以上300kg/m3以下に予備発泡されていることが好ましい。この嵩密度では、外観が良好になる。
【0044】
本実施の形態の予備発泡粒子の製造方法は、実施の形態2の発泡性複合樹脂粒子を製造する工程と、この発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、所定の圧力の蒸気を導入して予備発泡させる工程とを備える。
【0045】
(実施の形態4)
本実施の形態の発泡成形体は、実施の形態3の予備発泡粒子を用いて発泡成形させてなる。
【0046】
本実施の形態の発泡成形体は、実施の形態3の予備発泡粒子を製造する工程と、この予備発泡粒子を金型内に供給し、水蒸気を導入して、予備発泡粒子を発泡成形する工程とを備える。
【実施例】
【0047】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜9を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
以下に、実施例1〜9及び比較例1〜9中の各種値の測定方法を記載する。
【0048】
(植物度)
ポリエチレン系樹脂の植物度は、ASTM D6866 により測定した。
【0049】
(ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート)
ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgf荷重にて測定した。
【0050】
(嵩密度)
JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。具体的には、見かけ密度測定器により予備発泡粒子をメスシリンダー内に自然落下させ、その重量を測定し、下記の式により算出した。
嵩密度(kg/m3)=重量(kg)/メスシリンダー内の粒子容積(m3
【0051】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体の密度は、JIS A 9511:1995「発泡プラスチック保温板」に準拠して測定した。
【0052】
(衝撃強度)
発泡成形体を縦215mm、横40mm、高さ20mmの大きさにカットしたサンプルを作製した。このサンプルを155mmのスパンで配置された一対の保持部材上に載置した後、両保持部材の中間位置で、かつサンプルの幅方向の中心位置に、所定の高さから重さ321gの鋼球を落下させて、サンプルの破壊の有無を確認した。
この試験では、鋼球を落下させる高さを変えて繰り返し行い、サンプルが破壊された高さの最低値を落球衝撃値とした。つまり、落球衝撃値が高いほど、衝撃強度が高いことを意味する。
なお、鋼球を落下させる最大高さは120cmに設定した。このため、落球衝撃値が120cmを超える場合、鋼球の重さを534g、1044gに変更して上記と同様にして落球衝撃値を測定し、その値を下記の式により321gの鋼球による落球衝撃値に換算した。
321gでの落球衝撃値=(534/321)×(534gでの落球衝撃値)・・・(式1)
321gでの落球衝撃値=(1044/321)×(1044gでの落球衝撃値)・・・(式2)
実施例1〜8及び比較例1〜8において、落球衝撃値が120cmより高く、200cmより低い場合は、式1により換算した値であり、落球衝撃値が200cm以上の場合は、式2により換算した値を意味する。
【0053】
(発泡成形体の静摩擦係数)
JIS K7125:1999「プラスチックフィルム及びシートの摩擦係数試験方法」記載の方法に準拠して、静摩擦係数、動摩擦係数、第一極大荷重、積分平均荷重及び振幅を測定した。この場合の摩擦係数試験とは、同一材料の上を滑らせた時の摩擦係数を測定するものである。
まず、発泡成形体から100mm×100mm、厚み0.5mm以下の試験片を切り出した。この試験片と、63mm×63mm(接触面積40cm2)、全質量200g(1.96N)の滑り片とを、両面テープで貼り付けた。この際、均一な圧力分布をかけるために、滑り片の底面を弾力性のある材料、フェルトで覆っておいた。
次に、表面が水平で平滑である試験テーブルの上に、A4サイズ以上の滑り相手材料(発泡成形体)を置き、その上に上記試験片と滑り片を載せた。
テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、UCT−10T)を用いて、滑り相手材料の上を、試験速度100mm/分、試験距離80mmで試験片を動かして荷重を測定した。
測定区間における最初に現れた極大点荷重及び荷重平均値を、それぞれ第一極大荷重(N)及び積分平均荷重(N)とした。
力は直線的に増加して摩擦を与え、最大荷重に達するピークが静摩擦力FSを表す。
静摩擦力FSに第一極大荷重の値を用い、次の式3により静摩擦係数μSを求めた。
μS=FS/FP (式3)
[式中、μSは静摩擦係数、FSは静摩擦力(N)、FPはすべり片の質量によって生じる法線力(=1.96N)を示す]
【0054】
(実施例1)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLL−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が87%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であった。
【0055】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで、楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0056】
次に、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子50質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部を予めスチレンモノマー50質量部に溶解した。
【0057】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
【0058】
次に、分散液の温度を130℃に昇温して3時間保持し、スチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0059】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)14質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0060】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度60kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0061】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後水蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度60kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
【0062】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、251.0cmと優れていた。
【0063】
(実施例2)
実施例2のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体は、基本的には実施例1と同様に製造したが、ブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)16質量部を圧入して、嵩密度30kg/m3の予備発泡粒子及び発泡成形体を得た点において異なっていた。
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、205.5cmと優れていた。
【0064】
(実施例3)
まず、実施例1及び2と同様に、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLL−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が87%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であった。
【0065】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0066】
次に、分散剤としての第3リン酸カルシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子30質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.10質量部を予めスチレンモノマー15質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0067】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
【0068】
次に分散液の温度を140℃に昇温して3時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0069】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレンモノマー55質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり11質量部の割合で5時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0070】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)14質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0071】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度60kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0072】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後水蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度60kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
【0073】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、213.5cmと優れていた。
【0074】
(実施例4)
実施例3のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体は、基本的には実施例3と同様に製造したが、ブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)16質量部を圧入して、嵩密度30kg/m3の予備発泡粒子及び発泡成形体を得た点において異なっていた。
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、160.0cmと優れていた。
【0075】
(実施例5)
まず、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLH−218」メルトフローレート:2.3g/10分、密度:0.918g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が84%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であった。
【0076】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0077】
次に、ピロリン酸ナトリウム(分散剤)0.8質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子20質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.10質量部を予めスチレンモノマー10質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0078】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
次に分散液の温度を120℃に昇温して3時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0079】
引き続いて、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.35質量部をスチレンモノマー70質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり10質量部の割合で7時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子を得た。
【0080】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)14質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0081】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度60kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0082】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後水蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度60kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
【0083】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、154.0cmと優れていた。
【0084】
(実施例6)
実施例6のポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体は、基本的には実施例5と同様に製造したが、ブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)16質量部を圧入して、嵩密度30kg/m3の予備発泡粒子及び発泡成形体を得た点において異なっていた。
【0085】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、121.0cmと優れていた。
【0086】
(実施例7)
まず、実施例1及び2と同様に、無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SLL−118」メルトフローレート:1.0g/10分、密度:0.916g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が87%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であった。
【0087】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで、楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0088】
次に、分散剤としてのピロリン酸マグネシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子80質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.15質量部を予めスチレンモノマー20質量部に溶解した。
【0089】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレンモノマーを含浸させた。
【0090】
次に、分散液の温度を130℃に昇温して3時間保持し、スチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子を得た。
【0091】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)14質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0092】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度60kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0093】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後水蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度60kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
【0094】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、390.0cmと優れていた。
【0095】
(実施例8)
実施例8のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体は、基本的には実施例7と同様に製造したが、ブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)16質量部を圧入して、嵩密度30kg/m3の予備発泡粒子及び発泡成形体を得た点において異なっていた。
【0096】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、300.0cmと優れていた。
【0097】
(実施例9)
無架橋の高密度ポリエチレン系樹脂(Braskem S.A.製 商品名「SHD−7255LS−L」メルトフローレート:4.5g/10分、密度:0.954g/cm3)を準備した。このポリエチレン系樹脂は、ASTMにより測定された植物度が94.5%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂であった。
【0098】
次に、植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部及びタルク0.5質量部を押出機に供給した。この供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は0.60mgであった。
【0099】
次に、分散剤としての第3リン酸カルシウム0.8質量部、及び、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.02質量部を水100質量部に分散させて分散用媒体を得た。
この分散用媒体に上記ポリエチレン系樹脂粒子30質量部を分散させて懸濁液を得た。
更に重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.15質量部を予めスチレンモノマー15質量部に溶解して第1のスチレンモノマーを得た。
【0100】
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含む第1のスチレンモノマーを30分かけて定量で添加したのち、60℃の温度で1時間撹拌することでポリエチレン系樹脂粒子中に第1のスチレンモノマーを含浸させた。
【0101】
次に分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、第1のスチレンモノマーをポリエチレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
【0102】
引き続いて、120℃に冷却し、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド0.25質量部をスチレンモノマー55質量部に溶解させて第2のスチレンモノマーを得て、第1の重合の反応液に1時間当たり11質量部の割合で5時間かけて連続的に第1の重合の反応液に滴下し、ポリエチレン系樹脂粒子中に含浸させながら重合(第2の重合)させることで、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子を得た。
【0103】
続いて、実施例1と同様に、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂を含む複合樹脂粒子100質量部、ステアリン酸モノグリセリド0.15質量部及びジイソブチルアジペート0.5質量部を供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(n−ブタン:i−ブタン=7:3)15質量部を圧入した。その後70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0104】
得られた発泡性複合樹脂粒子を予備発泡機に供給し、0.02MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させ、嵩密度25kg/m3の予備発泡粒子を得た。
【0105】
次に、予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後水蒸気を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、密度25kg/m3、縦300mm、横400mm、高さ50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。
【0106】
得られた発泡成形体の静摩擦係数を測定したところ、0.28と優れていた。
【0107】
(比較例1)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を日本ポリエチレン製の商品名「NF−464A」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.918g/cm3)とすること以外は実施例1と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例1のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0108】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、250.5cmであった。
【0109】
(比較例2)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を日本ポリエチレン製の商品名「NF−464A」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.918g/cm3)とすること以外は実施例2と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例2のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0110】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、205.0cmであった。
【0111】
(比較例3)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を日本ポリエチレン製の商品名「NF−444A」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.912g/cm3)とすること以外は実施例3と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例3のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0112】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、215.5cmであった。
【0113】
(比較例4)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を日本ポリエチレン製の商品名「NF−444A」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.912g/cm3)とすること以外は実施例4と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例4のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0114】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、159.5cmであった。
【0115】
(比較例5)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂をプライムポリマー製の商品名「SP−1520」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.913g/cm3)とすること以外は実施例5と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例5のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0116】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、154.5cmであった。
【0117】
(比較例6)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂をプライムポリマー製の商品名「SP−1520」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.913g/cm3)とすること以外は実施例6と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例6のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0118】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、120.5cmであった。
【0119】
(比較例7)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を日本ポリエチレン製の商品名「NF−464A」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.918g/cm3)とすること以外は実施例7と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例7のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0120】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、390.0cmであった。
【0121】
(比較例8)
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を日本ポリエチレン製の商品名「NF−464A」(メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.918g/cm3)とすること以外は実施例8と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例2のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0122】
得られた発泡成形体の落球衝撃値を測定したところ、300.5cmであった。
【0123】
(比較例9)
無架橋の高密度ポリエチレン系樹脂を東ソー製の商品名「09S53B」(メルトフローレート:2.6g/10分、密度:0.936g/cm3)とすること以外は実施例9と同様にして、ポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂を含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を製造した。なお、比較例9のポリエチレン系樹脂は石油由来のものであった。
【0124】
得られた発泡成形体の静摩擦係数を測定したところ、0.29であった。
【0125】
(評価結果)
植物由来のポリエチレン系樹脂を用いた実施例1〜9の各々と、石油由来のポリエチレン系樹脂を用いた比較例1〜9の各々とを対比すると、同等の落球衝撃値もしくは静摩擦係数が得られることがわかった。このことから、植物由来のポリエチレン系樹脂を備えた場合であっても、実用的な物性を有するポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体を提供できることがわかった。したがって、植物由来のポリエチレン樹脂を備えたポリエチレン系樹脂とビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体の実用化が可能であるので、石油由来などの化石燃料資源由来のポリエチレン系樹脂を用いたときに生じる環境問題及び化石燃料資源の枯渇に対して解決に貢献可能であることがわかった。
【0126】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTMにより測定された植物度が80%以上の植物由来ポリエチレン系樹脂と、
前記植物由来ポリエチレン系樹脂100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下のビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む、複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記植物由来ポリエチレン系樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、または、高密度ポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載の複合樹脂粒子。
【請求項3】
前記ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂は、ポリスチレン系樹脂である、請求項1または2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の複合樹脂粒子と、
揮発性発泡剤とを含む、発泡性複合樹脂粒子。
【請求項5】
請求項4に記載の発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させて得られた、予備発泡粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の予備発泡粒子を用いて発泡成形させて得られた、発泡成形体。

【公開番号】特開2013−6966(P2013−6966A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140944(P2011−140944)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】