説明

複合機

【課題】本体ユニットに対して上部ユニットが開閉する複合機の改良。プリンタユニット11に対してスキャナユニット12が閉じられる際の緩衝を実現しつつ円滑な開閉動作の実現。コンパクトで安価な開閉機構28の実現。
【解決手段】連結棒27の先端部32が支持ピン30を介してスキャナユニット12に接続されており、基端部33に設けられたスライドピン31が緩衝部28を介してプリンタユニット11に接続されている。緩衝部28は、ピストン34及び保持器35を有する。ピストン34は、保持器35に支持され、前後方向2にスライドする。ピストン34と保持器35の間にコイルバネ63が介在している。スキャナユニット12が閉じられる際に、スライドピン31によってピストン34がスライドされ、コイルバネ63が縮む。コイルバネ63が一定量だけ縮むと、スライドピン31とピストン34との係合が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくともプリント機能を有する本体ユニットと、本体ユニットの上部に配置され、本体ユニットに対して開閉する上部ユニットとを備えた複合機に関し、詳細には、この上部ユニットの開閉機構に関するものである。なお、上部ユニットは、フラットベッドスキャナを搭載したスキャン機能や自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder:ADF)を備えていてもよい。
【背景技術】
【0002】
原稿から画像を読み取るスキャン機能、画像を被記録媒体上に形成するプリント機能その他の機能を備えた複合機が従来から提供されている。一般に複合機は、プリント機能を有する本体ユニットを備え、スキャン機能を有する上部ユニットが本体ユニットの上部に配置されている。このような構造の複合機では、ジャム処理やメンテナンスの便宜のため、上部ユニットが本体ユニットに対して開閉可能となっている。典型的には、上部ユニットは、本体ユニットに対して所定の回動軸を中心に回動し、本体ユニットの上面を覆う閉姿勢と当該上面を解放する開姿勢との間で変位する。
【0003】
ジャム処理や本体ユニットのメンテナンスに際して上部ユニットの開姿勢が保持されるように、上部ユニットを支持する支持部材(スタンド等とも称される。)が設けられている(たとえば、特許文献1参照)。このような支持部材が設けられているから、作業者が上部ユニットを支えなくても上部ユニットが開姿勢に保持され、メンテナンス等が容易に行われる。また、特に上部ユニットが閉じられるときに本体ユニットへの衝撃が緩和されるために、ダンパー機構が設けられているのが好ましい(たとえば、特許文献2〜特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−44061号公報
【特許文献2】特開平10−143044号公報
【特許文献3】特開平5−323686号公報
【特許文献4】特開平5−224472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されたダンパー機構は、本体ユニットに対する上部ユニットの姿勢に応じたバネ力を上部ユニットに加えるものであり、閉じた姿勢のときに最大のバネ力が上部ユニットに作用する。しかし、このような機構では、常時バネ力が作用するため、ダンパー機構は十分な機械的強度を備えることが必要であり、製造コストが上昇するという問題があった。特許文献3及び4に開示されたダンパー機構も同様である。
【0006】
本発明は、かかる背景のもとになされたものであって、その目的は、本体ユニットに対して閉じられる際の緩衝を実現しつつ上部ユニットの円滑な開閉動作を実現し、しかもコンパクトで安価な開閉機構を備えた複合機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る複合機は、少なくとも画像形成機能を備えた本体装置と、当該本体装置の上部に配置された上部ユニットと、当該上部ユニットを上記本体装置に連結し、当該本体装置に対して倒伏することにより当該本体装置の上面を覆う閉姿勢と当該本体装置に対して起立することにより当該本体装置の上面を露出させる開姿勢との間で姿勢変化を許容する開閉機構とを有する。この開閉機構は、上記上部ユニットを上記本体装置に対して回動可能に支持する回動支持軸と、上記上部ユニットに設けられ、当該上部ユニットの回動に連動して所定方向に変位するスライダと、上記所定方向一方向きにスライド可能であると共に当該一方向きのスライド量に比例する弾性力で上記所定方向他方向きに弾性付勢され、上記所定方向一方向きに変位する上記スライダが係合することによって上記弾性力に抗してスライドし且つ当該弾性力が所定の大きさ以上になったときに上記スライダとの係合が外れるように形成された緩衝部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、本体装置に対して上部ユニットが開閉する。具体的には、上部ユニットは、回動支持軸を中心に回動し、開姿勢と閉姿勢との間で姿勢変化する。
【0009】
上部ユニットが開姿勢から閉姿勢へ姿勢変化するときに、緩衝部が上部ユニットが本体装置に接触する際の衝撃を緩和する。具体的には、上部ユニットの閉動作に連動してスライダが所定方向一方向きにスライドし、緩衝部と係合して当該緩衝部を同向きにスライドさせる。この緩衝部は上記所定方向他方向きに弾性付勢されているから、上記スライダは、この弾性付勢力に抗して上記緩衝部をスライドさせる。しかも、この弾性付勢力は、緩衝部のスライド量に比例するから、この緩衝部のスライド量が大きくなると上記弾性付勢力も大きくなる。そして、この弾性付勢力が一定以上となったときに、スライダと緩衝部との係合が解除され、緩衝部のスライド変位が復元する。
【0010】
一方、上部ユニットが閉姿勢から開姿勢へ姿勢変化するときは、スライダが所定方向他方向きにスライドする。ただし、緩衝部の変位が復元されており、当該緩衝部が元の位置に復帰しているので、スライダと緩衝部とが係合することはない。したがって、上部ユニットは何らストレスを受けることなく円滑に開姿勢へと変化することができる。
【0011】
(2) 上記緩衝部は、上記スライダが係合する係合部が形成されたピストンと、当該ピストンを上記所定方向にスライド可能に支持する保持器と、当該保持器に設けられ、上記ピストンを上記所定方向他方向きに弾性付勢するバネとを備えたものであるのが好ましい。
【0012】
この構成では、緩衝部の構造がきわめて簡単である。上部ユニットが閉姿勢に変化する際に、上記スライダがピストンの係合部に係合する。このピストンがスライダに押されて上記所定方向一方向きにスライドする。ピストンのスライド量に比例した弾性付勢力が一定以上となったときにスライダが上記係合部から外れ、ピストンが元の位置に復帰する。
【0013】
(3) 上記緩衝部は、上記スライダを上記所定方向に沿って変位させる案内溝を備えていてもよい。
【0014】
これにより、スライダのスライド変位が安定し、スライダと緩衝部との係合が解除される弾性付勢力が一定となる。すなわち、上部ユニットが閉姿勢となったときにスライダと緩衝部との係合が解除されるように容易に設定され得る。
【0015】
(4) 上記係合部は、上記スライダの外周面が当接する傾斜面を備え、上記スライダの外周面は、上記傾斜面と線接触ないし点接触する滑らかな凸曲面に形成されているのが好ましい。
【0016】
この構成では、上部ユニットが閉姿勢へと変化するときにスライダの外周面が係合部の傾斜面に当接し、緩衝部がスライドする。上記弾性付勢力が一定以上となったときに、スライダの外周面が係合部の傾斜面を乗り越え、スライダと緩衝部との係合が解除される。
【0017】
(5) 一端部及び他端部を有し、当該一端部が上記上部ユニットに回動自在に設けられ、当該上部ユニットの姿勢変化に伴って上記他端部が上記本体装置の上面に沿って変位する補助アームが設けられていてもよい。そして、上記スライダ及び上記緩衝部は、上記補助アームの他端部に設けられ、上記保持器のスライドを所定位置で規制するストッパが上記本体装置の上面に設けられているのが好ましい。
【0018】
この構成では、補助アームが設けられているから、上部ユニットの開閉に際してスライダが安定して本体装置の上面に沿って変位する。また、上部ユニットが閉姿勢となる直前にストッパによって保持器のスライドが規制されることにより、保持器に対して相対的にピストンが確実に変位する。これにより、上部ユニットが閉姿勢となったときに、簡単な構造で確実にピストンとスライダとの係合が解除される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、上部ユニットの閉姿勢への姿勢変化に対して弾性力による制動が発生するので、上部ユニットが閉じられる際の衝撃が緩和される。しかも、上部ユニットの閉姿勢への姿勢変化に対してのみ制動力が作用し、当該閉姿勢において当該制動力が解除されるから、緩衝部の強度設計が容易であると共に、緩衝部が小型軽量化且つ低廉化が実現される。その結果、複合機の製造コストも低減する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。
【図2】図2は、複合機10の側面図である。
【図3】図3は、複合機10の開閉機構25の拡大斜視図である。
【図4】図4は、開閉機構25の緩衝部28の分解斜視図である。
【図5】図5は、複合機10のスキャナユニット12が閉じられる際の動作を示す要部拡大図である。
【図6】図6は、スキャナユニット12が閉じられる際の動作を示す要部拡大図である。
【図7】図7は、スキャナユニット12が倒伏する際の緩衝部28の挙動を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態の第1の変形例に係る緩衝部68の拡大断面図である。
【図9】図9は、本実施形態の第2の変形例に係る開閉機構75の拡大である。
【図10】図10は、本実施形態の第3の変形例に係る開閉機構80の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る複合機の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0022】
[複合機の概略構成と特徴点]
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機10の外観斜視図であって、(A)図は、プリンタユニット11(「本体装置」の一例)に対してスキャナユニット12(「上部ユニット」の一例)が閉じられた状態を示し、(B)図は開かれた状態を示している。典型的にはプリンタユニット11のメンテナンスやジャム処理の際に、スキャナユニット12がプリンタユニット11に対して開かれる。
【0024】
本明細書において、複合機10の使用状態(図1(A)が示す状態)を基準として矢印1の方向が「上下方向」と定義される。また、開口13が設けられている側を手前側(正面側)として矢印2の方向が「前後方向」と定義され、矢印3の方向が「左右方向」と定義される。
【0025】
図1が示すように、複合機10は、高さ(上下方向1の長さ)に対して横幅(左右方向3の長さ)及び奥行き(前後方向2の長さ)が大きい薄型の直方体に形成されている。複合機10は、ファクシミリ機能、プリント機能、スキャン機能、及びコピー機能などの各種の機能を有している。なお、複合機10は、必ずしもこれら全ての機能を具備していなければならないものではなく、たとえばプリント機能のみを有するプリンタやコピー機能のみを有する複写機として実施されてもよい。
【0026】
プリンタユニット11は、複合機10の下部に配置されている。プリンタユニット11は、筐体14を備えており、筐体14の正面側に開口13が形成されている。開口13に記録用紙を収容するためのトレイ24が着脱自在に装着されている。なお、同図(B)は、トレイ24の図示を省略している。プリンタユニット11は、典型的にはインクジェット記録方式を採用するが、インクジェット記録方式に限定されず、電子写真方式あるいは熱転写方式のものも採用され得る。
【0027】
プリンタユニット11の上側にスキャナユニット12が配置されている。スキャナユニット12は、筐体15を備えており、この筐体15の上面に図示されていないコンタクトガラスが設置されている。画像が読み取られる原稿は、このコンタクトガラスの上面に載置される。スキャナユニット12は、筐体15の上面を開閉する原稿カバー17を備えている。この原稿カバー17が閉じられることによって(同図(A)の状態)、上記コンタクトガラス上に載置された原稿が原稿カバー17によって押さえられる。また、原稿カバー17は、自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder:ADF)19を備えている。これにより、複数の原稿が順次1枚ずつ上記コンタクトガラス上に自動的に送られるようになっている。なお、このADF19は省略されていてもよい。
【0028】
スキャナユニット12は、後述する開閉機構25を介して同図(A)(B)が示すようにプリンタユニット11に対して開閉自在となっている。本実施形態に係る複合機の特徴とするところは、この開閉機構25の構造であって、当該開閉機構25により、スキャナユニット12の滑らかな開閉と、閉じられるときの緩衝が実現されている。
【0029】
[スキャナユニットの開閉機構(概略)]
【0030】
図2は、複合機10の側面図であって、スキャナユニット12が開かれた状態を示している。なお、同図では、開閉機構25の一部の図示が省略されている。
【0031】
同図が示すように、スキャナユニット12は、複合機10の後背部側に回動軸26(「回動支持軸」の一例)を介して回動可能に支持されている。回動軸26は、プリンタユニット11の筐体14の後背部に配置されている。スキャナユニット12の筐体15の後背部に軸受部27が形成されている。回動軸26が軸受部27に支持されることによって筐体15と筐体14とが連結され、その結果、スキャナユニット12がプリンタユニット11の上面に対して開閉し、当該上面を覆う閉姿勢(図1(A)が示す姿勢)と当該上面から上方へ離反した開姿勢(図1(B)が示す姿勢)との間で回動可能となる。スキャナユニット12が開姿勢となると、プリンタユニット11の上面が露出されるので、複合機10のユーザーは、プリンタユニット11の上面から内部にアクセスすることが可能となる。
【0032】
図3は、開閉機構25の拡大斜視図である。
【0033】
開閉機構25は、上記回動軸26、スキャナユニット12とプリンタユニット11とを連結する連結棒27(「補助アーム」の一例)と、当該連結棒27とプリンタユニット11との間に介在された緩衝部28(「緩衝部」の一例)とを備えている。この緩衝部28は、スキャナユニット12が閉姿勢となる際の衝撃を緩和する。
【0034】
[連結棒]
【0035】
図4は、緩衝部28の分解斜視図である。
【0036】
図3及び図4が示すように、連結棒27は、細長平板からなり、平板部29と、支持ピン30と、スライドピン31(「スライダ」の一例)とを備えている。この連結棒27は、スキャナユニット12が開姿勢となったときに、当該スキャナユニット12を支持し、開姿勢を維持する。支持ピン30は、連結棒27の先端部32(「一端部」の一例)に突設されており、本実施形態では円柱状に形成されている。この支持ピン30は、図1が示すように、スキャナユニット12の筐体15の所定の位置に回動可能に係合されている。したがって、支持ピン30は、スキャナユニット12の開閉と共に回動軸26(図2参照)を中心にして移動する。すなわち、支持ピン30は、回動軸26を中心とし、回動軸26と支持ピン30との距離を半径とする仮想円弧上を移動する。
【0037】
図4が示すように、スライドピン31は、平板部29の基端部33(「他端部」の一例)に突設されている。スキャナユニット12が開閉されると、上記支持ピン30が上記回動軸26を中心とする上記仮想円弧に沿って移動すると共に、上記基端部33は、プリンタユニット11の上面49に沿って移動することになる。本実施形態では、スライドピン31も円柱状に形成されており、平板部29からプリンタユニット11の外側に向かって突出している。このスライドピン31は、緩衝部28と係合しており、スキャナユニット12が開閉される際に緩衝部28に対して後述のようにスライドする。
【0038】
[緩衝部]
【0039】
図3及び図4が示すように、緩衝部28は、ピストン34(「ピストン」の一例)と、保持器35(「保持器」の一例)と、コイルバネ63(「バネ」の一例)とを備えている。
【0040】
保持器35は、直方体状に形成されており、内部にピストン34を収容するピストン収容室36が形成されている。具体的には、保持器35は細長平板が屈曲されることにより構成されており、第1板部37、第2板部38、第3板部39及び第4板部40を備えている。保持器35は、樹脂又は金属等から構成され得るが、典型的には樹脂により成形される。第1板部37〜第4板部40は、図4が示すように順次連続しており、第1板部37と第3板部39とが対向し、第2板部38と第4板部40とが対向している。第1板部37の先端41と、第4板部40との間に所定の隙間42が設けられている。この隙間42は、上記スライドピン31が挿通し得るように設定されている。
【0041】
第1板部37及び第3板部39に、細長矩形の貫通孔43、44が設けられている。後述されるように、上記ピストン34の両端部が貫通孔43、44に嵌め込まれるようになっている。なお、図4が示すように、保持器35の外側面(すなわち同図において手前側面)は解放されているが、保持器35の内側面に側板45が設けられている(図2、図5(C)参照)。そして、この側板45に溝46が設けられており、この溝46にピストン34の係合ピン47(図4参照)が嵌め込まれるようになっている。上記溝46は、本実施形態では上記側板45に細長の貫通孔が形成されることにより構成されているが、当該溝46の構造は上記係合ピン47が確実に嵌合可能であれば特に限定されない。
【0042】
第3板部39に取付板48が突設されている。図3が示すように、緩衝部28は、取付板48を介してプリンタユニット11の筐体14に取り付けられている。具体的には、筐体14の上面49にアンカー50(「ストッパ」の一例)が突設されている。このアンカー50は、一対の平板からなり、各平板は、同図が示すように所定のスパンで対向配置されている。このアンカー50に固定ピン51が掛け渡されている。上記取付板48は、アンカー50を構成する一対の平板の間に配置されており、上記固定ピン51が取付板48を貫通している。したがって、緩衝部28は、固定ピン51に支持され、当該固定ピン51の回りに回動することができるようになっている。
【0043】
図4が示すように、第4板部40の中央部52が内側に(第2板部38側に)隆起している。これにより、緩やかな斜面53、54が形成されている。図5(C)が示すように、上記側板45の下端縁55は、上記斜面53、54に沿うように切りかかれている。このため、当該下端縁55及び第4板部40により緩やかな山形の案内溝56(「案内溝」の一例)が形成されている。上記スライドピン31は、この案内溝56に嵌め込まれるようになっており、当該案内溝56は、スライドピン31のスライドを案内する。
【0044】
図3が示すように、ピストン34は、保持器35の内部に嵌め込まれている。図4が示すように、ピストン34は、基板57と、基板57の上面に突設されたリブ58、59と、基板57の側面に突設された上記係合ピン47とを備えている。本実施形態では、基板57、リブ58、59及び係合ピン47は、一体的に形成されている。
【0045】
基板57は、矩形の細長平板である。この基板57の中央部60(「係合部」の一例)は、図4が示すように屈曲されており、下方に突出している。このため、基板57の中央部60は一対の傾斜面61(「傾斜面」の一例)及び傾斜面62を備え、これら傾斜面61、62は、前後方向に傾斜している。基板57の両端部は、上記保持器35の第1板部37及び第3板部39に係合している。具体的には、基板57の両端部が上記貫通孔43、44にそれぞれ挿通されており、当該両端部は、当該貫通孔43、44に対してスライドすることができる。図5(C)が示すように、基板57の中央部60は、上記案内溝56内に進入している。このため、スライドピン31が案内溝56に沿ってスライドすると、スライドピン31は上記中央部60の傾斜面61に当接することになる。したがって、スライドピン31が傾斜面61に当接した後にさらに案内溝56に沿ってスライドすると、当該スライドピン31に押圧されてピストン34もスライドする。
【0046】
上記リブ58、59は、上記中央部60の両側に配置されている。各リブ58、59は、ピストン34の剛性を高めると共に、リブ59は、図3及び図5(C)が示すように、コイルバネ63の座部を構成しており、コイルバネ63の端部がリブ59に当接するようになっている。また、上記係合ピン47は、リブ58、59のそれぞれに設けられている。本実施形態では、係合ピン47は円柱状に形成されており、図中右側(保持器35の側板45側)へ突出している。そして、この係合ピン47は、上記側板45に設けられた溝46に嵌め込まれており、この溝46の方向に沿ってスライドすることができる。つまり、ピストン34は、上記係合ピン47が上記溝46に沿ってスライドすることによって当該溝46の方向(「所定方向」の一例)にスライド変位が可能となっている。
【0047】
図3が示すように、コイルバネ63は、ピストン34が保持器35に嵌め込まれた状態でピストン34と保持器35との間に挿入されている。具体的には、コイルバネ63は、いわゆる圧縮コイルバネであって、ピストン34の基板57上に載置され、リブ59と保持器35の第3板部39との間に嵌め込まれている。コイルバネ63は、基板57上に単に載置されているか、あるいはコイルバネ63の両端のいずれか一方のみがリブ59又は保持器15の第3板部39に固定されている。つまり、コイルバネ63が保持器15とピストン34との間に組み付けられる際に、コイルバネ63の両端がそれぞれリブ59及び第3板部39に固定されることはない。
【0048】
図3及び図4においてピストン34が右側(図1における前側)にスライドすると、スライドピン31が嵌め込まれている案内溝56が山形に形成されていることから、案内溝56とスライドピン31との間の隙間がスライドピン31の外径よりも小さくなり、スライドピン31がピストン34の傾斜面61に当接し、コイルバネ63が圧縮される。ピストン34は、当該ピストン34のスライド量に比例した弾性力で左側(図1における後側)に弾性力を受ける(図7参照)。この弾性力は、ピストン34の傾斜面61を介してスライドピン31に付加される。そして、上記案内溝56が山形に形成されていることから、スライドピン31が所定距離だけスライドすれば、当該スライドピン31がピストン34の中央部60を乗り越える。すなわち、案内溝56とピストン34との間にスライドピン31の外径よりも大きな隙間が形成され、当該スライドピン31と上記傾斜面61との係合が解除されると共に、コイルバネ63の弾性変形が復元される。
【0049】
連結棒27の長さ、案内溝56の形状及びコイルバネ63の長さ(自然長)は、次のように決定される。
【0050】
スキャナユニット12が閉じられると、前述のように支持ピン30が上記仮想円弧上を移動すると共に、スライドピン31が図3及び図4において右側(図1における前側)にスライドする。連結棒27の長さは、スキャナユニット12が閉姿勢に到達する直前においてスライドピン31がピストン34の傾斜面61に当接するように設定されている。また、上記案内溝56の形状は、スキャナユニット12が閉姿勢に到達したときにスライドピン31とピストン34との係合が解除されるように形成されている。コイルバネ63の長さ(自然長)は、スライドピン31が傾斜面61に当接した状態で、当該コイルバネ63の両端が上記リブ59と上記第3板部39に当接するように設定されている。したがって、スキャナユニット12が閉姿勢となる直前の姿勢となったときにスライドピン31が傾斜面61に当接し、この状態を基準としてスキャナユニット12がさらに閉姿勢側へ変位するとコイルバネ63が圧縮されて、スキャナユニット12の急激な姿勢変化が抑制される。しかも、スキャナユニット12が閉姿勢に到達したときは、スライドピン31とピストン34との係合が外れて、コイルバネ63は自然長に復帰する。
【0051】
[スキャナユニットの開閉動作]
【0052】
この複合機10では、スキャナユニット12は、回動軸26を回動中心として上記開姿勢と閉姿勢との間で回動し、プリンタユニット11に対して開閉動作を行う。
【0053】
図5及び図6は、スキャナユニット12が閉じられる際の動作を示す要部拡大図である。図6(A)〜(C)はスキャナユニット12の倒伏動作を順に示しており、図7は、スキャナユニット12が倒伏する際の緩衝部28の挙動を示している。図7(A)〜(C)は、図6(A)〜(C)にそれぞれ対応している。
【0054】
スキャナユニット12が開姿勢から閉姿勢へと倒伏するとき、図5(A)(B)が示すように、支持ピン30もスキャナユニット12と共に回動し、連結棒27も倒伏する。したがって、連結棒27の基端部33に設けられたスライドピン31も安定して図中右側に変位する。このスライドピン31が係合する緩衝部28は、プリンタユニット11に設けられたアンカー50に取り付けられているから、スライドピン31は、図5(C)が示すように、案内溝56に沿って図中右側へ移動する。
【0055】
スキャナユニット12がさらに倒伏すると、スライドピン31は上記案内溝56の斜面53に沿って右側へ移動し、ピストン34の傾斜面61に当接する。ピストン34はスライドピン31に押されて右側へスライドする。ピストン34が右側へスライドすると、前述のようにコイルバネ63が弾性変形し、ピストン34は、当該変形量に応じた弾性力を左向きに受ける。すなわち、ピストン34を介してスライドピン31が当該弾性力を受けることになるから、スキャナユニット12が倒伏する際に当該倒伏動作を妨げる向きに上記弾性力が作用することになる。
【0056】
図6(A)及び図7(A)が示すように、さらにスキャナユニット12が倒伏すると、スライドピン31は上記案内溝56の斜面53に沿って右側へ移動し、さらに斜面54に沿って移動する。これにより、ピストン34は、より強い弾性力を左向きに受ける。図6(B)及び図7(B)が示すように、さらにスキャナユニット12が倒伏すると、スライドピン31は上記案内溝56の斜面54を通過する。これにより、コイルバネ63がさらに圧縮される。さらにスキャナユニット12が倒伏すると、図6(C)が示すように、スライドピン31とピストン34の中央部60との係合が解除される。本実施形態では、このようにスライドピン31とピストン34との係合が解除された直後にスキャナユニット12が閉姿勢に変化するように設定されている。スライドピン31とピストン34との係合が解除されると、図7(C)が示すように、圧縮されていたコイルバネ63が伸長して自然長へ戻る。同時に、ピストン34は、コイルバネ63の弾性力により図中左側へスライドされ、元の位置、すなわち、案内溝56との間にスライドピン31の外径よりも小さな隙間が形成される位置まで復帰する(図5(A)参照)。
【0057】
このように、スキャナユニット12が倒伏する際に、当該倒伏動作を妨げるように弾性力が作用する。したがって、スキャナユニット12がプリンタユニット11に対して閉じられる際の衝撃が緩和され、滑らかに閉姿勢へ変化することができる。しかも、かかる緩衝を行う緩衝部28は、前述のようにきわめて簡単な構造であるから、コスト安価に実現される。さらに、スキャナユニット12が閉姿勢になる直前に当該弾性力が前述のように解消される。スキャナユニット12が閉姿勢から開姿勢へと変化する際には上記弾性力が作用しないので、滑らかな姿勢変化が実現される。
【0058】
特に本実施形態では、上記緩衝部28が案内溝56(図5(C))を備えているから、スライドピン31は、この案内溝56に沿って円滑にスライドすることができる。これにより、スライドピン31のスライド変位が安定し、スライドピン31がピストン34から外れるとき(スライドピン31と緩衝部28との係合が解除されるとき)の弾性力が一定となる(図7(B)参照)。すなわち、スキャナユニット12が閉姿勢となったときに確実にスライドピン31がピストン34から外れるように、容易に設計され得るという利点がある。もっとも、上記案内溝56は省略されても良い。
【0059】
さらに本実施形態では、上記スライドピン31は丸棒からなり、このスライドピン31がピストン34の傾斜面61に対して線接触状態で当接する。したがって、ピストン34がスライドしてコイルバネ63の弾性力が一定以上となったときに、スライドピン31がピストン34の傾斜面61を乗り越えて確実に両者の係合が解除される。つまり、スキャナユニット12が閉姿勢に変化する際に、当該閉姿勢に到達するときに上記弾性力が確実に解除されるという利点もある。なお、スライドピン31の形状は丸棒に限定されない。たとえば、スライドピン31の先端部が球状に形成され、スライドピン31が上記傾斜面61に対して点接触状態で当接していてもよい。要するに、スライドピン31の外周面が、上記傾斜面61に対して線接触ないし点接触するように凸曲面に形成されていればよい。
【0060】
[実施形態の第1の変形例]
【0061】
図8は、本実施形態の第1の変形例に係る緩衝部68の拡大断面図である。
【0062】
本変形例に係る緩衝部68が上記実施形態に係る緩衝部28と異なるところは、上記緩衝部28では、保持器35の第4板部40の中央部52(図4、図5(C)参照)が隆起されることによって上方に凸となる案内溝56が形成されていたのに対し、本変形例では、図8が示すように、保持器35の第4板部40に凹部69が設けられており、これにより、下方に凸となる案内溝70が形成されている点である。なお、その他の構成については、上記実施形態に係る緩衝部28と同様である。
【0063】
本変形例では、スキャナユニット12が閉姿勢に変化したとき、スライドピン31がピストン34を押すことによってコイルバネ63が変形される。図8において、スライドピン31が所定の距離だけ右側に移動すると、スライドピン31が下方に移動する。これにより、案内溝70とピストン34との間にスライドピン31の外径よりも大きな隙間が形成され、当該スライドピン31とピストン34の傾斜面61との係合が解除される。なお、本変形例では、下方に凸となる案内溝70が形成されているが、スライドピン31を案内する溝は、真直であってもよい。その場合は、ピストン34がスライドピン31から離反するような構造であってもよいが、要するに、ピストン34が所定距離だけスライドしたときに、案内溝70(56)とピストン34との間にスライドピン31の外径よりも大きな隙間が形成され、ピストン34とスライドピン31との係合が解除されるような構造が実現されていればよい。
【0064】
[実施形態の第2の変形例]
【0065】
図9は、本実施形態の第2の変形例に係る開閉機構75の拡大である。同図(A)は斜視図であり、同図(B)は要部拡大断面図である。
【0066】
本変形例に係る開閉機構75が上記実施形態に係る開閉機構25と異なるところは、上記開閉機構25では、図1(B)、図5が示すように、細長板状の連結棒27が設けられており、緩衝部28がプリンタユニット11の前側端部に配置されていたのに対し、本変形例では、緩衝部28がプリンタユニット11の後側端部に配置され、スキャナユニット12を支持する回動軸26の近傍に突片76が設けられている点である。そして、この突片76の先端部にスライドピン31が設けられており、このスライドピン31が緩衝部28と係合している。なお、その他の構成については、上記実施形態に係る開閉機構25と同様である。
【0067】
[実施形態の第3の変形例]
【0068】
図10は、本実施形態の第3の変形例に係る開閉機構80の斜視図である。なお、同図では、プリンタユニット11及びスキャナユニット12は模式的に描かれている。
【0069】
本変形例に係る開閉機構80が上記実施形態に係る開閉機構25と異なるところは、上記実施形態では、一つの開閉機構25が設けられていたのに対し、本変形例では、2つの開閉機構80が設けられている点、及び上記実施形態では、緩衝部28に連結されている連結棒27は単一の平板から構成されていたのに対し、本変形例では、連結棒81は、一対の平板を備えている点である。各開閉機構80は、プリンタユニット11及びスキャナユニット12の両端部(左右方向の端部)に配置されている。また、各開閉機構80は、それぞれ緩衝部82を備えており、上記連結棒81を構成する平板は、各緩衝部82の両側を挟むように配置されている。なお、その他の構成については、上記実施形態に係る開閉機構25と同様である。
【0070】
本変形例では、スキャナユニット12の重量が大きい場合であっても、スキャナユニット12の円滑な開閉が可能となる。
【0071】
また、本実施形態及び各変形例では、プリンタユニット11に対してスキャナユニット12が開閉する態様を開示したが、これに限定されるものではなく、たとえば、スキャナユニット12において、原稿カバー17の開閉に本実施形態及び各変形例に係る開閉機構25、75、80が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10・・・複合機
11・・・プリンタユニット
12・・・スキャナユニット
15・・・筐体
17・・・原稿カバー
25・・・開閉機構
26・・・回動軸
27・・・連結棒
28・・・緩衝部
29・・・平板部
30・・・支持ピン
31・・・スライドピン
32・・・先端部
33・・・基端部
34・・・ピストン
35・・・保持器
49・・・上面
50・・・アンカー
51・・・固定ピン
52・・・中央部
55・・・下端縁
56・・・案内溝
57・・・基板
60・・・中央部
61・・・傾斜面
62・・・傾斜面
63・・・コイルバネ
68・・・緩衝部
69・・・凹部
70・・・案内溝
75・・・開閉機構
76・・・突片
80・・・開閉機構
81・・・連結棒
82・・・緩衝部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも画像形成機能を備えた本体装置と、
当該本体装置の上部に配置された上部ユニットと、
当該上部ユニットを上記本体装置に連結し、当該本体装置に対して倒伏することにより当該本体装置の上面を覆う閉姿勢と当該本体装置に対して起立することにより当該本体装置の上面を露出させる開姿勢との間で姿勢変化を許容する開閉機構とを有する複合機であって、
当該開閉機構は、
上記上部ユニットを上記本体装置に対して回動可能に支持する回動支持軸と、
上記上部ユニットに設けられ、当該上部ユニットの回動に連動して所定方向に変位するスライダと、
上記所定方向一方向きにスライド可能であると共に当該一方向きのスライド量に比例する弾性力で上記所定方向他方向きに弾性付勢され、上記所定方向一方向きに変位する上記スライダが係合することによって上記弾性力に抗してスライドし且つ当該弾性力が所定の大きさ以上になったときに上記スライダとの係合が外れるように形成された緩衝部とを備えている複合機。
【請求項2】
上記緩衝部は、
上記スライダが係合する係合部が形成されたピストンと、
当該ピストンを上記所定方向にスライド可能に支持する保持器と、
当該保持器に設けられ、上記ピストンを上記所定方向他方向きに弾性付勢するバネとを備えている請求項1に記載の複合機。
【請求項3】
上記緩衝部は、
上記スライダを上記所定方向に沿って変位させる案内溝を有する請求項1又は2に記載の複合機。
【請求項4】
上記係合部は、上記スライダの外周面が当接する傾斜面を備え、
上記スライダの外周面は、上記傾斜面と線接触ないし点接触する滑らかな凸曲面に形成されている請求項2又は3に記載の複合機。
【請求項5】
一端部及び他端部を有し、当該一端部が上記上部ユニットに回動自在に設けられ、当該上部ユニットの姿勢変化に伴って上記他端部が上記本体装置の上面に沿って変位する補助アームが設けられており、
上記スライダ及び上記緩衝部は、上記補助アームの他端部に設けられ、
上記保持器のスライドを所定位置で規制するストッパが上記本体装置の上面に設けられている請求項2に記載の複合機。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−203574(P2011−203574A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71868(P2010−71868)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】