説明

複合流体機械

【課題】ポンプへ吸入される前の作動流体がハウジング内で膨張後の作動流体により加熱されることを抑制して、ポンプ吸入側でのキャビテーションの発生を抑えることができる複合流体機械を提供する。
【解決手段】複合流体機械11において、モータ・ジェネレータ20の駆動軸21の軸方向に沿った、ギヤポンプ30の吸入通路13d及びギヤポンプ30と、膨張機部40との間に液冷媒の貯留部51が設けられている。この貯留部51にはギヤポンプ30の吐出通路17aが連通している。そして、ギヤポンプ30から吐出された液冷媒は、貯留部51を経由して第1ボイラ62へ吐出されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクル装置に用いられ、膨張機部と、ポンプと、回転電機とをハウジング内に一体に備える複合流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の複合流体機械として、例えば、特許文献1の一体ユニットが挙げられる。図4に示すように、一体ユニット80は、ギヤポンプ81と、モータ/発電機82と、膨張機83とが、モータ/発電機82のシャフト84の軸方向に沿って並設されて形成されている。ギヤポンプ81のハウジングは、遮断壁88と、ケーシング89とから構成されている。シャフト84の先端に設けられた駆動シャフト84aは、遮断壁88を貫通してケーシング89に支持されている。また、遮断壁88とケーシング89には従動シャフト85が支持されている。
【0003】
遮断壁88とケーシング89との間に区画される空間内には、駆動シャフト84aと一体回転する主動ギヤ86が配設されるとともに、従動シャフト85と一体回転する従動ギヤ87が互いに噛み合うように配設されている。そして、駆動シャフト84aと、主動ギヤ86と、従動シャフト85と、従動ギヤ87とからギヤポンプ81が構成されている。また、遮断壁88内には、遮断壁88とケーシング89との間の空間に連通する吐出通路及び吐出孔(図示せず)と、吸入通路及び吸入孔(図示せず)とが形成されている。
【0004】
一体ユニット80において、ギヤポンプ81とモータ/発電機82との間には、上記遮断壁88が介在している。この遮断壁88により、一体ユニット80内には、モータ/発電機82及び膨張機83が収容された空洞部90が区画されるとともに、遮断壁88によりギヤポンプ81と空洞部90とが遮断されている。
【0005】
そして、ランキンサイクル装置の稼働時、膨張機83から吐出された作動流体は空洞部90に流出する。一方、ランキンサイクル装置のコンデンサ(図示せず)で冷却されて液体となった作動流体は、ギヤポンプ81のポンプ作用により吸入通路及び吸入孔を流通してギヤポンプ81内に吸入され、さらに、吐出孔及び吐出通路を流通した後、ランキンサイクル装置の熱交換器へ吐出される。
【0006】
一体ユニット80の内部において、膨張機83によって膨張された作動流体と、ギヤポンプ81内の作動流体とは、遮断壁88を介して熱交換を行う。すなわち、膨張機83によって膨張された作動流体の持つ熱が、ギヤポンプ81内の作動流体に遮断壁88を介して奪われ、ギヤポンプ81内の作動流体が昇温される。その結果、一体ユニット80では、その内部で熱交換を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−138797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の一体ユニット80においては、膨張機83によって膨張された作動流体と、ギヤポンプ81内の作動流体とが、遮断壁88を介して熱交換を行う。そして、ギヤポンプ81に作動流体を吸入するための吸入通路及び吸入孔は、遮断壁88の内部に形成されている。このため、ハウジング内において、ギヤポンプ81へ吸入される前の作動流体に遮断壁88を介して膨張後の作動流体の熱が伝達され、ポンプへ吸入される前の作動流体の飽和蒸気圧が上昇する。その結果、キャビテーションが発生し、ギヤポンプ81による作動流体の移送能力が低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポンプへ吸入される前の作動流体がハウジング内で膨張後の作動流体により加熱されることを抑制して、ポンプ吸入側でのキャビテーションの発生を抑えることができる複合流体機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、吸入通路を介して作動流体を吸入するとともに吐出通路を介して前記作動流体を吐出するポンプと、前記ポンプから吐出された作動流体と排熱源からの流体との間で熱交換させる熱交換器と、前記熱交換器で熱交換された作動流体を膨張させて機械的エネルギーを出力する膨張機部と、前記膨張機部から吐出された作動流体を凝縮する凝縮器と、を順次接続してなる回路を備えるランキンサイクル装置に用いられ、前記膨張機部と、前記ポンプと、発電機又は電動機として機能する回転電機と、をハウジング内に一体に備える複合流体機械である。そして、複合流体機械において、前記回転電機の駆動軸の軸方向に沿った、前記吸入通路及び前記ポンプと前記膨張機部との間に前記作動流体の貯留部が設けられるとともに、前記ポンプの吐出通路が前記貯留部に連通され、前記ポンプから吐出された作動流体が、前記貯留部を経由して前記熱交換器へ吐出されるように構成されている。
【0011】
これによれば、貯留部の作動流体により、膨張後の作動流体がポンプに直接接触することが無くなる。そして、膨張機部によって膨張された作動流体の持つ熱は、膨張機部及びハウジングを介して貯留部に貯留された作動流体に伝達され、膨張後の作動流体の持つ熱がポンプに直接伝達されることが無くなる。よって、ポンプへ吸入される前の作動流体がハウジング内で膨張後の作動流体により加熱されることを抑制することができる。その結果として、ポンプの吸入側でキャビテーションが発生することが抑制される。
【0012】
また、前記膨張機部は、前記駆動軸と一体回転する従動軸を回転中心として駆動されるとともに前記軸方向に直交する方向に沿って前記ハウジング内全体に亘るように設けられ、前記貯留部は前記従動軸を取り囲むように該従動軸の周面と前記ハウジングの内面との間の空間に形成されていてもよい。
【0013】
これによれば、貯留部全体が作動流体によって満たされることにより、膨張機部へ吸入される作動流体の持つ熱、及び吐出される作動流体の持つ熱の両方がポンプに直接伝達されることが無くなる。
【0014】
また、前記回転電機、前記ポンプ、前記貯留部、及び前記膨張機部が、この順序で前記軸方向に沿って並設されていてもよい。これによれば、貯留部内の作動流体により、膨張後の作動流体の持つ熱が、ポンプに直接伝達されることが回避される。その結果、軸方向に沿ってポンプよりさらに膨張機部から離れた位置に配設された回転電機が、膨張後の作動流体の持つ熱により加熱されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポンプへ吸入される前の作動流体がハウジング内で膨張後の作動流体により加熱されることを抑制して、ポンプ吸入側でのキャビテーションの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の複合流体機械及びランキンサイクル装置を示す図。
【図2】実施形態の複合流体機械及びランキンサイクル装置を模式的に示す図。
【図3】複合流体機械を示す図1のA−A線断面図。
【図4】背景技術の一体ユニットを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、複合流体機械11のハウジング12は、筒状をなすセンタハウジング13と、このセンタハウジング13の一端に接合されたフロントハウジング14と、センタハウジング13の他端に接合されたリヤハウジング15とから形成されている。センタハウジング13の内周面には、センタハウジング13の内側に向けて延びる仕切壁13aが形成されるとともに、この仕切壁13aによってセンタハウジング13内が2つの空間に仕切られている。
【0018】
仕切壁13aとフロントハウジング14との間には回転電機としてのモータ・ジェネレータ20が収容されている。モータ・ジェネレータ20は駆動軸21を有するとともに、この駆動軸21は、仕切壁13a及びフロントハウジング14に設けられた軸受16によって回転可能に支持されている。駆動軸21には、モータロータ20aが駆動軸21と一体回転可能に固定されている。また、センタハウジング13の内周面には、ステータ20bがモータロータ20aを取り囲むように固定されている。そして、モータ・ジェネレータ20は、ステータ20bのコイル20cへの通電によりモータロータ20aを回転させる電動機としての機能と、モータロータ20aが回転されることでステータ20bのコイル20cに電力を生じさせる発電機としての機能とを併せ持つ。図2に示すように、モータ・ジェネレータ20にはインバータ22を介してバッテリ23が接続されるとともに、モータ・ジェネレータ20で生じた電力はインバータ22を介してバッテリ23に蓄電されるようになっている。
【0019】
図1に示すように、仕切壁13aのリヤハウジング15側の面には、駆動軸21を取り囲むように長円形状の凹部13cが形成されている。そして、仕切壁13aのリヤハウジング15側の面にサイドプレート17が固着されることにより、凹部13cが閉鎖されて仕切壁13aとサイドプレート17との間にポンプ室18が区画されている。また、図3に示すように、仕切壁13aとサイドプレート17には、従動ギヤ19の軸部19aが回転可能に支持されている。そして、ポンプ室18内には、従動ギヤ19と、駆動軸21に取着された主動ギヤ21aが互いに噛み合わされた状態で配設されている。そして、ポンプ室18と、従動ギヤ19と、主動ギヤ21aとからギヤポンプ30が形成されている。
【0020】
図1に示すように、仕切壁13aには、ポンプ室18(凹部13c)に連通する吸入通路13dが形成されている。本実施形態では、吸入通路13dは、センタハウジング13の上面に開口するように複合流体機械11の上部に形成されている。また、仕切壁13a及びサイドプレート17には、ポンプ室18(凹部13c)に連通する吐出通路17aが仕切壁13aからサイドプレート17に跨るように形成されている。本実施形態では、吐出通路17aは ポンプ室18の下部に位置するように形成されている。
【0021】
センタハウジング13内において、仕切壁13aよりリヤハウジング15側の空間内には支持ブロック25が固設されている。駆動軸21の他端側(リヤハウジング15側)は、サイドプレート17を貫通して支持ブロック25に挿入されるとともに、駆動軸21の他端側には従動軸26が駆動軸21と一体回転可能に設けられている。この従動軸26は、支持ブロック25に設けられた軸受27によって回転可能に支持されている。
【0022】
複合流体機械11において、仕切壁13aと、リヤハウジング15との間には、作動流体としての冷媒を膨張させる膨張機部40が設けられている。膨張機部40において、従動軸26の先端には、従動軸26の中心軸Lに対して偏心した位置に偏心軸41が設けられるとともに、偏心軸41は従動軸26の回転により従動軸26の中心軸Lの周りを公転するようになっている。偏心軸41にはブッシュ42が固定されるとともに、ブッシュ42は偏心軸41と共に中心軸Lの周りを公転するようになっている。このブッシュ42には軸受装置43を介して可動スクロール44が回転可能に支持されるとともに、カウンタウェイト45が固定されている。
【0023】
可動スクロール44は、軸受装置43に支持された円盤状をなす可動側端板44aと、この可動側端板44aから突設された渦巻状の可動側渦巻壁44bとからなる。また、センタハウジング13内において、支持ブロック25のリヤハウジング15側には、固定スクロール46が可動スクロール44と対向するように固設されている。そして、支持ブロック25と固定スクロール46との間に可動スクロール44が回転可能に配設されている。固定スクロール46は、円盤状をなす固定側端板46aと、この固定側端板46aから可動スクロール44に向けて突設された渦巻状の固定側渦巻壁46bとを一体に備えている。そして、可動スクロール44の可動側渦巻壁44bと、固定スクロール46の固定側渦巻壁46bとは互いに噛み合わされて容積変更可能な作動室47を区画する。
【0024】
また、固定スクロール46における固定側端板46aの中央部には吸入口46cが形成されている。固定側端板46aとリヤハウジング15との間には、吸入チャンバ48が区画されるとともに、この吸入チャンバ48には吸入口46cを介して膨張前の作動室47に連通している。また、リヤハウジング15には、吸入チャンバ48に連通する吸入ポート15aが形成されている。さらに、固定スクロール46の内周面と、可動スクロール44における可動側渦巻壁44bの最外周面との間には吐出チャンバ50が区画形成されるとともに、センタハウジング13には吐出チャンバ50に連通する吐出ポート13gが形成されている。本実施形態では、吐出ポート13gはセンタハウジング13の下部に下方へ向けて開口するように形成されている。上記構成の膨張機部40は、従動軸26の軸方向に直交する方向に沿ってセンタハウジング13内全体に亘るように設けられている。
【0025】
複合流体機械11において、センタハウジング13の内周面と、サイドプレート17と、支持ブロック25との間には、貯留部51が区画されている。この貯留部51は、従動軸26を取り囲むように環状に形成されている。すなわち、貯留部51は、この貯留部51内に露出する支持ブロック25の外周面全体を囲むように形成されている。また、貯留部51は、サイドプレート17に形成された吐出通路17aを介して、ポンプ室18に連通している。このため、ギヤポンプ30のポンプ作用によって、ポンプ室18から吐出された作動流体は、吐出通路17aを介して貯留部51へ吐出されるようになっている。センタハウジング13には、貯留部51に連通する吐出孔13hが形成されている。そして、貯留部51へ吐出された作動流体は、吐出孔13hを介して後述するランキンサイクル装置60へ吐出されるようになっている。
【0026】
次に、上記複合流体機械11が用いられるランキンサイクル装置60について説明する。
ランキンサイクル装置60は、複合流体機械11の膨張機部40、凝縮器61、複合流体機械11のギヤポンプ30、及び熱交換器としての第1ボイラ62、第2ボイラ63を順次接続してなる回路を備える。
【0027】
図1及び図2に示すように、貯留部51に連通する吐出孔13hには第1流路60aを介して第1ボイラ62の吸熱器62aが接続されている。第1ボイラ62は、吸熱器62aに加え放熱器62bを備える。この放熱器62bは、排熱源としてのエンジン64に接続された冷却水循環経路65上に設けられている。冷却水循環経路65上にはラジエータ65aが設けられている。そして、車両のエンジン64を冷却した冷却水(高温流体)は、冷却水循環経路65を循環して放熱器62b及びラジエータ65aで放熱する。
【0028】
第1ボイラ62の吸熱器62aの吐出側には接続通路60bを介して第2ボイラ63の吸熱器63aが接続されている。第2ボイラ63は、吸熱器63aに加え放熱器63bを備える。この放熱器63bは、エンジン64に接続された排気通路66上に設けられている。そして、エンジン64からの排気は、放熱器63bで放熱した後、マフラ67から排気される。よって、ギヤポンプ30から吐出され、さらに貯留部51を経由した液冷媒は、第1及び第2ボイラ62,63の吸熱器62a,63aと放熱器62b,63bとの間での熱交換によりエンジン64からの排熱によって加熱される。
【0029】
第2ボイラ63の吸熱器63aの吐出側には、第2流路60cを介して膨張機部40における吸入ポート15aが接続され、第1及び第2ボイラ62,63で加熱された高温高圧の冷媒ガスは第2流路60c及び吸入ポート15aを介して膨張機部40に吸入されるようになっている。膨張機部40の吐出ポート13gには、第3流路60dを介して凝縮器61が接続されている。そして、膨張機部40で膨張した低圧の冷媒ガスは、第3流路60dを介して凝縮器61へ吐出されるようになっている。凝縮器61の吐出側には第4流路60eを介してギヤポンプ30の吸入通路13dが接続されている。よって、ランキンサイクル装置60では、冷媒は、複合流体機械11の膨張機部40、凝縮器61、複合流体機械11のギヤポンプ30、第1ボイラ62、及び第2ボイラ63の並び順に沿って回路を流れるようになっている。
【0030】
さて、バッテリ23からの電力がインバータ22を介してモータ・ジェネレータ20に供給されるとモータ・ジェネレータ20が電動機として駆動され、ギヤポンプ30が駆動される。ギヤポンプ30により、液冷媒が第1流路60aを介して第1ボイラ62へ送られる。
【0031】
そして、第1ボイラ62及び第2ボイラ63において、吸熱器62a,63aと放熱器62b,63bとの間での熱交換により、液冷媒がエンジン64からの排熱によって加熱される。加熱後の高温高圧の冷媒ガスは、第2流路60cを介して吸入ポート15aから膨張機部40の作動室47に導入されて膨張し、この膨張により膨張機部40が機械的エネルギー(駆動力)を出力する。そして、この駆動力によって可動スクロール44が回転し、従動軸26を介してモータ・ジェネレータ20の駆動軸21回転されるとともにギヤポンプ30が駆動される。
【0032】
このとき、エンジン64からの排熱量が大きく、膨張機部40からの出力により、駆動軸21が予め設定された所定回転数を越えて回転する場合には、モータ・ジェネレータ20を発電機として機能させて駆動軸21の回転数を抑えるようにする。そして、所定回転数を越える出力は電力に変換され、インバータ22を介してバッテリ23に充電される。
【0033】
膨張を終えて圧力が低下した冷媒ガスは、吐出チャンバ50に吐出された後、吐出ポート13gを介して第3流路60dへ吐出される。第3流路60dへ吐出された冷媒ガスは、凝縮器61を通過して液化し(液冷媒)、第4流路60eを介して吸入通路13dからポンプ室18に導入される。そして、膨張機部40からの出力により駆動されるギヤポンプ30により、ポンプ室18に導入された液冷媒は、吐出通路17aを経由して貯留部51へ吐出される。すると、貯留部51に液冷媒が貯留され、ギヤポンプ30と膨張機部40との間に液冷媒が介在する状態となる。
【0034】
そして、貯留部51が液冷媒により満たされると、オーバーフローした液冷媒が吐出孔13hから第1流路60aに吐出され、第1流路60aを介して第1ボイラ62及び第2ボイラ63へ供給される。以後、上述したように、冷媒は、膨張機部40、凝縮器61、及びギヤポンプ30を流れて、エンジン64が駆動されている間は、冷媒はランキンサイクル装置60の回路を循環する。
【0035】
上記複合流体機械11が用いられたランキンサイクル装置60において、貯留部51にはギヤポンプ30によって吐出された液冷媒が貯留され、ギヤポンプ30と膨張機部40との間には液冷媒が介在されている。そして、貯留部51が液冷媒によって満たされることにより、貯留部51内に露出する支持ブロック25の側面の全体、貯留部51内に露出するセンタハウジング13の内周面(内面)の全体、及び貯留部51に露出するサイドプレート17の面の全体に液冷媒が接触している。
【0036】
そして、吐出チャンバ50及び吐出ポート13g内の冷媒ガス、すなわち、膨張機部40によって膨張された冷媒ガスの持つ熱は、可動スクロール44、固定スクロール46、センタハウジング13及び支持ブロック25を介して、貯留部51に貯留された液冷媒に伝達される。すなわち、膨張後の冷媒ガスがサイドプレート17に直接接触することが無くなり、膨張後の冷媒ガスの持つ熱がサイドプレート17に直接伝達されることが無くなる。
【0037】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)駆動軸21の軸方向において、ギヤポンプ30及びその吸入通路13dと、膨張機部40との間には貯留部51が設けられている。そして、この貯留部51は、ギヤポンプ30の吐出通路17aに連通し、貯留部51にはギヤポンプ30から吐出された液冷媒が貯留される。このため、膨張機部40での膨張後の冷媒ガスの熱は貯留部51の液冷媒に伝達される。よって、膨張後の冷媒ガスの持つ熱がギヤポンプ30に直接伝達されることが無くなり、ギヤポンプ30へ吸入される前の液冷媒がハウジング12内で膨張後の冷媒ガスにより加熱されることを抑制することができる。その結果、ギヤポンプ30の吸入側でのキャビテーションの発生が抑制され、ギヤポンプ30による液冷媒の移送能力低下を抑制することができる。
【0038】
(2)複合流体機械11には、モータ・ジェネレータ20、ギヤポンプ30、貯留部51及び膨張機部40がこの順序で駆動軸21の軸方向に沿って並設されている。そして、貯留部51内の液冷媒により、膨張後の冷媒ガスの持つ熱が、ギヤポンプ30に直接伝達されることが回避される。その結果、ギヤポンプ30よりさらに膨張機部40から離れた位置に配設されたモータ・ジェネレータ20が、膨張後の冷媒ガスの持つ熱により加熱されることを抑制することができる。
【0039】
(3)膨張機部40は、駆動軸21の軸方向に直交する方向(径方向)に沿ってセンタハウジング13内全体に亘るように設けられている。また、貯留部51は従動軸26を取り囲むように従動軸26の周面とセンタハウジング13の内周面との間の空間に形成されている。よって、膨張機部40において支持ブロック25を介してギヤポンプ30側に臨む面の全てが貯留部51に面している。したがって、貯留部51全体が液冷媒によって満たされることにより、膨張機部40へ吸入される冷媒ガスの持つ熱、及び吐出される冷媒ガスの持つ熱の両方がギヤポンプ30に直接伝達されることが無くなる。
【0040】
(4)貯留部51は従動軸26を取り囲むように従動軸26の周面とセンタハウジング13の内周面との間の空間に形成されている。そして、貯留部51全体が液冷媒によって満たされると、センタハウジング13の内周面に液冷媒が接触する。このため、膨張機部40の熱がセンタハウジング13を介して伝わっても、その熱は貯留部51の液冷媒に伝達される。したがって、貯留部51全体が液冷媒によって満たされることにより、膨張機部40へ吸入される冷媒ガスの持つ熱、及び吐出される冷媒ガスの持つ熱の両方がセンタハウジング13を介してギヤポンプ30に伝達されることが抑制される。
【0041】
(5)貯留部51を設けることにより、膨張機部40から吐出された冷媒ガスの持つ熱は、ギヤポンプ30から吐出された液冷媒に伝達される。よって、膨張機部40から吐出された後、凝縮器61で放熱される熱の一部を、ギヤポンプ30から吐出された液冷媒の加熱に用いることができ(内部熱交換を行うことができ)、ランキンサイクル装置60の効率を向上させることができる。
【0042】
(6)ギヤポンプ30の吐出通路17aはポンプ室18の下部に位置するようにサイドプレート17の下部に形成されている。よって、貯留部51の下部側には液冷媒が速やかに貯留される。また、膨張機部40の吐出ポート13gは、センタハウジング13の下部に形成される。このため、貯留部51全体に液冷媒が貯留されなくても、貯留部51内の液冷媒により、膨張機部40から吐出された冷媒ガスの持つ熱が、ギヤポンプ30に直接伝達されることが回避される。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 膨張後の冷媒ガスの持つ熱を貯留部51の液冷媒に伝えることができるのであれば、貯留部51は従動軸26を取り囲むように環状に形成されていなくてもよく、例えば、従動軸26より下方のみに設けられていてもよい。
【0044】
○ 実施形態では、複合流体機械11を、駆動軸21の軸方向に沿ってモータ・ジェネレータ20、ギヤポンプ30、貯留部51、及び膨張機部40の順序で並設したが、吸入通路13d及びギヤポンプ30と、膨張機部40との間に膨張機部40が介在されていれば順序は変更してもよい。例えば、複合流体機械11を、駆動軸21の軸方向に沿って、ギヤポンプ30、モータ・ジェネレータ20、貯留部51、及び膨張機部40の順序で並設してもよい。
【0045】
○ 作動流体は冷媒でなくてもよい。
○ 実施形態において、ポンプはギヤポンプ30の他の形態のポンプとしてもよい。
○ 実施形態において、膨張機部40はスクロール型とは他の形式であってもよい。
【0046】
○ 実施形態では、複合流体機械11をランキンサイクル装置60のみに用いたが、複合流体機械11に圧縮機部及びクラッチ機構を一体に設けて、冷凍サイクルを並設してもよい。
【0047】
○ 貯留部51に連通する吐出孔13hをセンタハウジング13の上部に形成してもよい。これにより、ギヤポンプ30の停止時に冷媒ガスが貯留部51に溜まるのを防止するとともに、貯留部51を常に液冷媒で満たすことができる。
【0048】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記ポンプの吐出通路が前記ハウジングの下部に設けられるとともに、前記膨張機部の吐出ポートが前記ハウジングの下部に設けられている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の複合流体機械。
【0049】
(ロ)前記貯留部には作動流体として液冷媒が貯留される請求項1〜請求項3、及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の複合流体機械。
【符号の説明】
【0050】
11…複合流体機械、12…ハウジング、13d…吸入通路、17a…吐出通路、20…回転電機としてのモータ・ジェネレータ、21…駆動軸、26…従動軸、30…ポンプとしてのギヤポンプ、40…膨張機部、51…貯留部、60…ランキンサイクル装置、61…凝縮器、62…熱交換器としての第1ボイラ、63…熱交換器としての第2ボイラ、64…排熱源としてのエンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入通路を介して作動流体を吸入するとともに吐出通路を介して前記作動流体を吐出するポンプと、
前記ポンプから吐出された作動流体と排熱源からの流体との間で熱交換させる熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換された作動流体を膨張させて機械的エネルギーを出力する膨張機部と、
前記膨張機部から吐出された作動流体を凝縮する凝縮器と、を順次接続してなる回路を備えるランキンサイクル装置に用いられ、
前記膨張機部と、前記ポンプと、発電機又は電動機として機能する回転電機と、をハウジング内に一体に備える複合流体機械であって、
前記回転電機の駆動軸の軸方向に沿った、前記吸入通路及び前記ポンプと前記膨張機部との間に前記作動流体の貯留部が設けられるとともに、
前記ポンプの吐出通路が前記貯留部に連通され、
前記ポンプから吐出された作動流体が、前記貯留部を経由して前記熱交換器へ吐出されるように構成されている複合流体機械。
【請求項2】
前記膨張機部は、前記駆動軸と一体回転する従動軸を回転中心として駆動されるとともに前記軸方向に直交する方向に沿って前記ハウジング内全体に亘るように設けられ、前記貯留部は前記従動軸を取り囲むように該従動軸の周面と前記ハウジングの内面との間の空間に形成されている請求項1に記載の複合流体機械。
【請求項3】
前記回転電機、前記ポンプ、前記貯留部、及び前記膨張機部が、この順序で前記軸方向に沿って並設されている請求項1又は請求項2に記載の複合流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196315(P2011−196315A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66412(P2010−66412)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】