複合粒子の粉砕及び分散方法
【課題】 単体では微粒化が困難である塑性変形し易い金属やその化合物を、水中での凝集を抑えて微粒子に粉砕するとともに均一に分散させる。
【解決手段】 塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化及び分散させた懸濁液を製造する。
【解決手段】 塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化及び分散させた懸濁液を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子の粉砕及び分散方法に関する。
【0002】
近年、環境への配慮や健康問題から衣類や生活用品等に対して高い抗菌性や防黴性が求められている。例えば、コア材の表面に抗菌性や防黴性が高い金属層をコートした構造のコア−シェル型ナノ構造体のような複合粒子を作製することで、シェル材料の表面積の拡大による効率的なイオン化を可能とし、各種化学反応過程を変化させることができる。その結果、材料の抗菌活性が向上する。また、半導体からなる臭いセンサにおける感度向上やガス選択性の向上、さらに、ガス分解や合成用触媒の触媒性能の向上を目的として、複合粒子の微細化が進められている。これら複合粒子の表面での反応を応用した機能性材料の高性能化に求められるのは、複合粒子の粒径を小さくしつつ、有効表面積が大きな機能性材料とすることである。
【0003】
抗菌に関しては、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属粒子が高い抗菌性能を示す材料として知られている。また、白金やパラジウムなどの金属が高い触媒性能を示す材料として知られている。そして、これら機能性材料をナノサイズとすることで単位質量あたりの表面積を増大させることができ、それらの機能性を効果的に発現させることが可能となる。しかしながら、これら機能性材料は、ナノサイズにすると非常に大きな凝集力が発生し、大きな凝集体を形成する傾向がある。それを空気中に放置した場合、焼結した様な状態になり、これを水に混合しても一度結合した粒子はその凝集が容易にほぐれることがなく、すぐに沈殿してしまい均一な懸濁液とはならない。そこで従来は、アルミナ、ジルコニア、ゼオライト等のセラミックス粒子を担体(コア材)として、ナノサイズの抗菌性金属を担持させた複合粒子を形成し使用している(特許文献1、2)。あるいは、分散剤を添加することで粒子の凝集をある程度防ぐことが行われているが、一般に分散剤は粒子製造の最終段階で分散剤を添加することが多く、ナノレベルの微粉化になるとその凝集エネルギーが、(ミクロンサイズとは異なり)非常に大きいため、一度凝集結合した粒子を再度微粒化させることは困難である。
【0004】
また上記懸濁液の応用として、懸濁液を衣類や生活用品等にコートした場合に、凝集による粒状の組織(凝集体)が付着することで、外観上のムラ(斑点)が生じることがあるが、この外観上のムラを目立たなくするためには、凝集体の粒径を適度に小さくし、水などの溶媒に対する分散性を良好にする必要がある。つまり粒子の安定な分散状態を維持するためには、粒子の粒径をナノサイズ(数百nm以下)とする必要がある。しかしながら、上述のように金属を含む複合粒子をナノサイズの微粉体とした場合には、この材料の特性から複合粒子全体が凝集し易く、より大きな凝集体を形成する傾向がある。
【0005】
一般に粒子を微粒化させる方法としては、超音波振動による分散・微粒化(超音波分散法)、ビーズミル法などの粉砕用媒体を使用した湿式の機械的接触式粉砕や同体摩擦粉砕による方法(機械的接触式粉砕法)が知られている(特許文献1では単に湿式粉砕機と記述されている)。しかし、ビーズミル法などを用いた機械的接触式粉砕では、粉砕用媒体と粒子とが点接触するため粉砕のためのエネルギー密度が高くなりすぎて、粒子の構造自体が壊れたり、粉砕用媒体と粒子との点接触箇所における過剰な温度上昇(発熱)によって、粒子の所望の機能性が劣化してしまう不具合が生じる。さらに粉砕用媒体から発生するcontaminant(汚染物質:コンタミとも呼ばれる)が混入する不具合がある。これら処理の問題は、本来の構造とは異なる粒子になることや、上記発熱による分散剤の劣化、再凝集、さらに、粒子表面にビーズの元素が付着することによる溶液中の表面電位の変化をもたらし、不安定な分散状態となり、かえって大きな凝集体が形成されてしまうことである。その他の方法としては、粒子の混合液をチャンバーノズルから高圧噴射することで、粒子自体を壊さずコンタミの混入がない微粒化工法が開発され実用化されている(特許文献3、非特許文献1)。
【0006】
特許文献1には、無機担体に抗菌性金属を担持させてなる無機抗菌剤をホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩及びリン酸アルカリ金属塩から選ばれる無機分散剤にて水に分散させてなる繊維品の抗菌加工剤が記載されており、湿式粉砕機を用いて無機抗菌剤の平均粒径を10〜1000nmの範囲に微粒化し水に分散させることができるとの記述がある。
【0007】
特許文献2には、金属酸化物を担体として塩化銀を担持させた無機抗菌剤の粉末とアニオン性界面活性剤と水との混合液を、粉砕装置を用いることなく、撹拌装置のみを使用して撹拌し、前記無機抗菌剤の一次粒子の平均粒子径が100〜500nmの微粒子として分散してなる水分散液の製造方法が記載されており、上記撹拌装置として、プロペラ式、パドル式、タービン式、高圧ホモジナイザー、スタティックミキサー等の市販の攪拌装置が列挙されている。
【0008】
特許文献3には、一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体又は/及び微粒子を得る噴流衝合装置が記載されており、前記第1と第2のノズル手段からの噴流を前記一点の先方で受け止めて噴流の流体力を分散させる噴流受け止め手段として回転自在な硬質ボールの記載がある。また非特許文献1には、株式会社スギノマシン製の高圧噴射分散処理装置「スターバースト(装置の商品名)」による電子部品材料の微粒化の事例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−370911号公報
【特許文献2】特開2007−70299号公報
【特許文献3】特許第3151706号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“高圧噴射分散処理装置「スターバースト」によるナノ電子材料の微粒化”, 原島謙一,工業調査会,電子材料 2008年9月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、複合粒子の粒径を小さくしつつ有効表面積が大きな機能性材料とするために、コア材の表面に金属などの機能性材料を形成させたナノサイズ複合粒子は、その金属などの部分が結合し易く、大きな凝集体を形成し易い傾向がある。そのため表面積の減少が起こり、複合粒子の所望の抗菌性能や触媒性能が発揮され難くなる。また、その凝集体の粒径が数百nm程度まで大きくなると、溶液中で沈殿が起こり、この懸濁液をコートした場合等には、粒状の汚れが付着したように見えてしまい見映えが非常に悪くなり、実用にならない。本明細書では、説明をわかり易くするために、以後、上記複合粒子の単体を一次粒子と定義し、これら一次粒子同士が凝集して形成された凝集体を二次粒子と定義する。
【0012】
前記二次粒子を微粒化する微粒化手段としては、上述した超音波振動による粉砕・分散法(超音波分散法)や、ビーズミル法などを用いた湿式の機械的接触式粉砕や同体摩擦粉砕による方法(機械的接触式粉砕法)が考えられる。しかしながら、超音波分散法ではエネルギーを局所的に集中させることが難しく、ナノサイズの複合粒子からなる二次粒子の粉砕・分散には使用できない。接触式粉砕法では、複合粒子の表面に形成された柔らかい部分が磨り潰されて複合粒子の表層から金属成分が脱落したり、前記複合粒子同士が擦れあって磨耗粉が発生することで新たな凝集体(二次粒子)が形成する。また粉砕用媒体と複合粒子(一次粒子)との点接触箇所における過剰な温度上昇(発熱)によって、前記一次粒子の凝集がさらに進み大きな二次粒子が形成され易くなる他、上記発熱によって分散剤が温度劣化する等の多くの問題点が生じるため、ナノレベルの微粒化ができない。一般に金属などを含む材料に荷重を加えたときの機械的特性は、粘りがあるため塑性変形し易く、結果として粉砕しにくいという性質がある。一方、セラミックスは、金属などを含む材料とは逆に、硬くて弾性率が高いが、粘りが無く、割れやすい機械的特性をもっている。このことが、従来の機械的接触式粉砕においては、セラミックスの粉砕が比較的簡単でありながら、金属などの柔らかい材料の粉砕が困難となっている主な要因である。
【0013】
そこで本発明の目的は、単体では微粒化が困難である塑性変形し易い金属やその化合物を、水中での凝集を抑えて微粒子に粉砕するとともに均一に分散させる複合粒子の分散方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の複合粒子の分散方法は、塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化することを特徴とする。
ここで本明細書におけるナノサイズとは、粒子の粒径が数百nm以下のサイズであり、特にメジアン粒径が100nm以下のサイズを指している。本明細書におけるメジアン粒径とは、粒子の表面積から粒子の粒径を求めた値(MA)であり、粒子の表面積の大きさと対応している。前記複合粒子には、タンパク質や合成樹脂などの有機物も含まれる。前記分散剤は、水に添加して表面張力を下げることで前記複合粒子と水との界面を改質する分散補助剤であり、適量が水に添加される。前記混合液には、その用途に応じてアルコールなどの揮発性溶剤が含有される場合がある。
【0015】
本発明は、前記二次粒子と分散剤と水との混合液を、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記二次粒子の結合をほぐして微粒化し、微粒化した二次粒子や一次粒子と水との界面を分散剤の作用により改質することで再凝集することを防ぎ、微粒化しつつ単分散するものである。
本発明によれば、高圧噴射された水と周囲との圧力差によってキャビテーションを発生させることで、従来の超音波振動子によるキャビテーションよりも遙かに大きなエネルギーの作用で前記二次粒子の結合を粉砕するか、ほぐすことができる。その一方で、本発明は水を介したソフトな微粒化であるから、接触式粉砕法のように、硬いビーズとの直接的な物理的接触がなく、一次粒子の構造自体を破壊することがない。また、本発明の処理は水中で行うために、水によって微粒化機構全体の冷却が可能となり、微粒化処理部分での大きな発熱もなく、分散剤の熱劣化を防ぐとともに、ナノサイズ複合粒子特有の性質である金属材料の融点が低下することによる再凝集効果を防ぐことができ、安定したナノサイズの微粒化が達成できる。
【0016】
前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーとしては、シングルノズルチャンバー、斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー等が挙げられる。いずれのチャンバーにおいても前記二次粒子を粉砕するために必要十分なエネルギーを有している。その中でも、シングルノズルチャンバーが好ましい。シングルノズルチャンバーは、その構造上、水のキャビテーションと水の乱流の作用のみを用いているから、比較的小さな粉砕エネルギーを利用するため、強い衝突による再凝集効果がないからである。
【0017】
本発明は、前記二次粒子のメジアン粒径が初期値の50%以下、及び/又は、前記二次粒子のメジアン粒径が100nm以下となるよう前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、銀などの柔らかい金属においても前記二次粒子のメジアン粒径を10から100nmの範囲にすることができるので、前記懸濁液の透明性が維持され見映えが良く、前記複合粒子の表面積の大幅な拡大が図れる。前記二次粒子の微粒化のための粉砕エネルギーは、チャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの範囲で変化させて制御するため、表面に柔らかい材料を有する複合粒子の微細化にも適用される。例えば、粉砕エネルギーが大きすぎて、その構造が破壊、あるいは再凝集する複合粒子の場合には、前記高圧噴射粉砕処理装置からの圧力を30から245MPaの間で調整することで処理を行い、前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲となるまで前記高圧噴射分粉砕処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返す。前記高圧噴射粉砕処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を繰り返す回数が多くなるにしたがって、前記二次粒子の粒径のばらつきが小さくなり、単分散の懸濁液の状態に近づく。
【0019】
本発明は、前記二次粒子のメジアン粒径が1,000から3,000nmの範囲となるよう前記混合液を超音波分散機にかけて前処理した後、前記高圧噴射分散処理装置にて前記二次粒子を微粒化することが好ましい。本発明によれば、前記混合液を超音波分散機にかけて前記二次粒子のメジアン粒径を前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルの内径よりも小さくする前処理を行うことで、前記高圧噴射分散処理装置からの前記混合液の高圧噴射が目詰まりすることなくよりスムーズに処理する。
【0020】
本発明は、前記複合粒子がコアとなるセラミックス粒子の表面に金属粒子を担持させるか、または、コア材の表面に金属材料若しくは金属を含む複合材料を外層として薄く島状あるいは層状にコートした構造の粒子の粉砕及び分散に適用することが好ましい。前記コア材としては微粉化が可能なセラミックスが好ましく、前記金属膜又は金属粒子若しくは金属成分が銀、銅、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムのいずれかを含むことが好ましい。本発明では、コア材として、例えばジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ等のセラミックス粒子が用いられる。本発明によれば、コア材の弾性率を、コア材の表面に担持させた金属又は金属を含む複合材料の弾性率よりも高く設定することで、複合粒子の粉砕効果を高め、その結果、ナノレベルの微粒化が可能になる。上記の構造の複合粒子とすることで、有効表面積が大きな機能性材料を有する複合粒子を形成することができる。前記金属粒子又は金属材料として用いる銀、銅、亜鉛、ニッケルは、優れた抗菌性能を有する。また、白金やパラジウムは、優れた触媒性能を有するが、非常に高価な貴金属である。本発明によれば、前記二次粒子の微粒化によって、複合粒子の実質的表面積を増大させることができ、コストを抑えつつ効果的に抗菌性能や触媒性能を発現させることができる。
【0021】
本発明は、前記複合粒子のうち塑性変形し易い金属またはその化合物の濃度を前記複合粒子の濃度に対するモル比で最大50mol%以下に設定し、好ましくは前記モル比で最大25mol%以下に設定することを特徴とする。
【0022】
前記複合粒子全体に対する金属の濃度が高まると、前記複合粒子の表面における前記金属の比表面積が増大し、前記複合粒子の表面における前記金属の凝集力が前記複合粒子の表面における前記コア材部分の反発力を上回り、分散の効果が小さくなる。本発明での、より好ましい前記金属の前記複合粒子に対する濃度はモル比で最大25mol%以下であり、これは、前記コア材部分の静電反発が前記金属の凝集力を完全に上回ることができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、凝集した複合ナノ粒子を粉砕するか、又はほぐした瞬間に、複合ナノ粒子の界面に分散剤を付着させて再凝集を防ぎつつ、コア材の静電反発力を利用することで、ナノレベルの粉砕分散を達成するものである。本発明によれば、柔らかく弾性のある表面をもつ複合粒子の構造を破壊させることなく、一次粒子径まで微粒化することも可能である。本発明によるキャビテーションの作用は、ビーズミル法などの他の硬い材料との機械的接触によるものとは大きく異なり、ビーズと複合粒子、さらに複合粒子同士の摩擦が少なく、また、ビーズ同士やビーズと複合粒子との衝突やずりによる運動エネルギーに伴う局所的発熱がない。そのため、柔らかい表面を有する複合粒子の構造を破壊することはない。また本発明は、その原理上から、温度による再凝集がないため、安定した微粒化が容易である。
【0024】
本発明によって、前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲とすることができ、表面積の拡大による抗菌性能や触媒性能の大幅な向上が図れた。また本発明によって得られた懸濁液は、その透明性が維持され、懸濁液をコーティング処理した対象物の見映えが良くなった。また、微粒化に適した粉砕エネルギーであるために、単分散化も可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にて使用する高圧噴射分散処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記高圧噴射分散処理装置のシングルノズルチャンバーの概略構成を示す模式図である。
【図3】上記高圧噴射分散処理装置の斜向衝突チャンバーの概略構成を示す模式図である。
【図4】上記高圧噴射分散処理装置のボール衝突チャンバーの概略構成を示す模式図である。
【図5】セラミックスを各種微粒化装置にて微粒化したコア材の粒径分布を示す分布図である。
【図6】金属粒子を担持させた複合粒子の構造を示す模式図であり、(a)は一次粒子の状態の複合粒子を例示し、(b)は一次粒子が凝集した二次粒子を例示している。
【図7】上記二次粒子の分布状態を透過型電子顕微鏡にて観察した画像であり、(a)は処理前の観察画像を例示し、(b)は処理後の観察画像を例示している。
【図8】上記処理前と処理後の二次粒子径の分布を示した図である。
【図9】上記二次粒子を既知のビーズミル法にて微粒化を試みた場合の処理前と処理後の粒径分布を示した図である。
【図10】本発明を適用した実施形態の複合粒子を分散させた懸濁液の製造手順を示す製造工程フロー図である。
【図11】上記実施形態の製造過程での二次粒子の粒径分布を示した図である。
【図12】上記実施形態の複合粒子における金属成分の濃度と粒径分布との関係を示した図である。
【図13】上記実施形態の複合粒子における金属成分の濃度と粒径分布との関係を示した図である。
【図14】既知のビーズミル法による微粒化作用を模式的に示した図であり、(a)はセラミック粒子の場合を例示し、(b)は複合粒子の場合を例示している。
【図15】本発明を適用した実施形態による微粒化作用を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【0027】
本発明にて使用する高圧噴射分散処理装置
図1は、本発明にて使用する高圧噴射分散処理装置100の概略構成を示すブロック図である。高圧噴射分散処理装置100は、高圧ポンプ102を油圧駆動及び制御する油圧発生・制御部101と、混合液10を加圧する高圧ポンプ102と、混合液10を投入する原料タンク103と、投入され加圧された混合液10内の粒子1aを噴射させ加速して衝突させることで粒子1aを微細化して粒子1bとするとともに分散させるチャンバー40と、チャンバー40にて微粒化され分散された粒子1bを有する懸濁液20を冷却する熱交換器105からなる。高圧噴射分散処理装置100は、粒子1aの混合液10をチャンバーノズルから高圧噴射することで、粒子1a自体を壊さず、コンタミの混入がない状態で、微粒化して微粒子1bとするとともに均一に分散して懸濁液20とする。
【0028】
混合液10は、例えば粒子1aと界面活性剤と水との混合液10である。原料タンク103に混合液10を投入し、高圧ポンプ102にて混合液10を加圧して、チャンバー40内のノズルから混合液10を噴射させ加速して衝突させることで粒子1aを微細化して微粒子1bとするとともに、微粒子1bが均一に分散した懸濁液20とし、チャンバー40内の噴射によって温度が上昇した懸濁液20を、熱交換器105にて常温まで冷却して排出する(図1)。チャンバー40には、用途によって、シングルノズルチャンバー、斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー等の種類がある。
【0029】
図2は、シングルノズルチャンバー41の概略構成を示す模式図である。シングルノズルチャンバー41は、混合液10を1つのノズル411から液中に噴射させ粒子1aを加速し、出口412から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル411は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、ノズル411を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力によって、微粒化と分散を行う。シングルノズルチャンバーは、その構造上、水のキャビテーションと水の乱流の作用のみを用いている。
【0030】
図3は、斜向衝突チャンバー42の概略構成を示す模式図である。斜向衝突チャンバー42は、混合液10を対向配置された1対のノズル421から液中に噴射させ粒子1aを加速して互いに対向衝突(対面衝突)させ、出口422から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル421は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、ノズル421を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力と、粒子1a同士が対向衝突するときの衝撃力と、対向噴流での相対速度増加による剪断力によって、微粒化と分散を行う。
【0031】
図4は、ボール衝突チャンバー43の概略構成を示す模式図である。ボール衝突チャンバー43は、混合液10を1つのノズル431から液中に噴射させ粒子1aを加速してセラミックボール433に衝突させ、出口432から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル431は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、セラミックボール433は窒化珪素等からなる。ノズル431を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力と、粒子1aがセラミックボール433に衝突するときの衝撃力によって、微粒化と分散を行う。
【0032】
セラミックス粒子の微粒化
図5は、セラミックスを微粒化した粒径分布を示す図である。装置条件を調整することで、ビーズミル法を使用した湿式の機械的接触式粉砕機の場合と、シングルノズルチャンバーを使用した高圧噴射粉砕処理装置の場合のいずれにおいても、粒径の分布を概ね30から100nmの範囲内とすることができた。一方、ビーズミル法では、点接触するビーズとの衝突やずり方のムラによって、粒径の分布が40から300nm程度まで大きな分布を示すことが分かった。粒子の表面積から粒子の粒径を求めた値(MA)をメジアン粒径とすると、MAはそれぞれの手法で、60nmと80nmになった。高圧噴射粉砕処理法の方が、凝集している粒子全体にキャビテーションのエネルギーが行き渡り、粉砕漏れがなく、単分散に近い状態の粒子を作製できることが示された。
【0033】
複合粒子の観察
図6は、代表的な金属粒子として銀を担持させた複合粒子の構造を示す模式図である。セラミックス粒子をコア材2として、ナノサイズの金属粒子3を担持させた複合粒子の単体を一次粒子(符号1)とする。(図6(a))、これら一次粒子(符号1)同士には、金属を含む表面部分に強い凝集力が働き、二次粒子(符号1a)が形成される。
図7は、上記複合粒子の二次粒子(符号1a)の分布状態を透過型電子顕微鏡にて観察した画像である。図7(a)は単位長さ20nmの処理前の凝集した粒子の拡大像である。図7(b)は本発明による微粒化処理後の粒子の単位長さ5nmまで拡大した像である。(a)では、上記複合粒子が数多く凝集して巨大な二次粒子が形成されていることが分かる。(b)では、本発明による微粒化において、その構造が変化していないことが分かる。この微粒化処理の条件を最適化することで、複合粒子の構造変化を起こすことなく、微粒化できることが明らかになった。
図8は、凝集した複合粒子1と分散剤と水を市販の攪拌機にて攪拌した混合液における粒子の粒度分布を示した図である。粒度分布の測定には、レーザ回折散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製の型番LA−910)と、日機装社のレーザードップラー方式の粒度分布計UPA-UZ152を使用した。作製した混合液の粒度分布は、MAが約10,000nmと非常に大きくなっており、粒子の分布も1,000〜100,000nmまで広範囲に分布している。これは、上記複合粒子の一次粒子が数多く凝集して巨大な二次粒子が形成されているためである。
【0034】
既知のビーズミル法による複合粒子の微粒化
上記複合粒子が数多く凝集して形成された巨大な二次粒子を、既知のビーズミル法によって微粒化することを試みた。微粒化の条件は、上記セラミックス粒子の加工と同様の加工条件とした。処理後のビーズには多くの銀金属が付着していた。図9は、上記複合粒子の二次粒子を既知のビーズミル法にて微粒化を試みた場合の二次粒子の粒径分布を示した図である。ビーズミル法によって加工した混合液の粒子の分布は、35nmから2,000nmと非常に広範囲に分布しており、分布の大きなピークが2,000nmのところに観察された。これは、ビーズによって複合粒子の構造が崩れて、剥離した銀が凝集したものである。つまり、ビーズミル法ではこのような構造の複合粒子を微粒化することが原理的に不可能であることが明らかになった。
【0035】
実施例1
図10は、本発明を適用した実施形態の複合粒子を分散させた懸濁液の製造手順を示す製造工程フロー図である。図10(a)に示す本発明の製造手順は、混合及び攪拌処理(ステップS1)と、超音波分散処理(ステップS2)と高圧噴射粉砕処理(ステップS3)からなる。図10(b)では、図10(a)に示す製造手順のうち超音波分散処理(ステップS2)を省いている。図10(a)に基づき、本実施例による複合粒子を分散させた懸濁液の製造手順を以下に説明する。
【0036】
ジルコニアセラミックスをコア材2とし、コア材2の表面に銀3を担持させて複合粒子1を作製した。本実施例では、金属成分である銀3を、複合粒子1に対するモル比で5mol%とした。複合粒子1の合成終了後、分散剤を添加した水と混合し、混合液10とした(図10(S1))。本実施例では、複合粒子1を、水溶液に対するモル比で2mol%とした。一次粒子(符号1)には大きな凝集力が働き、凝集して巨大な二次粒子(符号1a)が形成された。攪拌後の混合液10における複合粒子(符号1a)の二次粒子径を示すMAは約20,000nmであった(図11)。
【0037】
上記攪拌後の混合液10を超音波分散機にて超音波分散処理した(図10(S2))。超音波分散機のパワーは200W級の装置を使用した。超音波分散処理は、前記二次粒子(符号1a)のMAを適度に小さくして分散させ、高圧噴射粉砕処理装置のチャンバーノズルからスムーズに高圧噴射させるための処理であり、ノズル径が小さい場合等、必要に応じて行う。超音波分散処理後の複合粒子(符号1a)のMAは約2,000nmとなり、超音波処理のみでのナノレベルの微粒化には、限界があることが分かった(図11)。
【0038】
上記超音波分散処理後の混合液10を高圧噴射粉砕処理装置100にて高圧噴射粉砕処理した(図10(S3))。高圧噴射粉砕処理装置100は、株式会社スギノマシン製の高圧噴射粉砕処理装置「スターバースト(装置商品名)」を使用した。高圧噴射粉砕処理装置100のチャンバーはシングルノズルチャンバー41であり、チャンバーノズル径は0.1mmとし、装置圧力は245MPaに設定した。高圧噴射粉砕処理は、高圧噴射した水と周囲との圧力差によってキャビテーションを発生させることで、キャビテーションの作用で複合粒子間の結合をほぐし、その構造を破壊させることなく複合粒子を微粒化するための処理である。
【0039】
上記超音波分散処理後の混合液10を高圧噴射粉砕処理装置100にて、高圧噴射を1回行ったところ、複合粒子(符号1b)のMAは約111nmとなった(図11)。さらに、高圧噴射を合計5回行ったところ、複合粒子MAは約80nmとなった(図11)。その後、さらに高圧噴射を合計10回行ったが、複合粒子のMAは約80nmであり、その大きさの変化は見られなかった(図11)。これは、高圧噴射を複数回、(ここでは合計5回)行えば、完全に微粒化されていることを示している。またこの処理によって、粒径の分布の幅が非常に狭くなっていることも明らかである。つまり、高圧噴射粉砕処理によって複合粒子が完全に一次粒子まで小さくなり、また粒径のばらつきもなくなり、分散性にも優れた懸濁液20を作製することができた。
【0040】
本発明に係る高圧噴射粉砕処理装置100による高圧噴射粉砕処理時間は100cc/分であり、高圧噴射を合計5回行った場合の高圧噴射粉砕処理時間は単純計算でおよそ100cc/5分となり、従来のビーズミル法の1/10以下の処理時間であった。また本発明の製造方法では、また、キャビテーションを利用した作用で粒子を引き離す方式のために構造に与える損傷も少なく、処理温度も最高で約70℃と大きな発熱もなかった。
【0041】
本発明の製造方法によって得られた懸濁液20をガラス容器に入れて、約1年間放置したが、粒子の沈降は見られず、透明な状態が維持されていることを確認した。また、粒子径の測定も行ったが同じ粒度分布を示し、この処理の安定性と有効性が示された。これは、処理温度の上昇が少ないことにより、分散剤の劣化が抑制されていることを示している。
【0042】
上記実施例では、図10(a)に示す製造手順で、混合・攪拌処理(ステップS1)、超音波分散処理(ステップS2)、高圧噴射粉砕処理(ステップS3)の順序で懸濁液20を製造したが、処理前の複合粒子(符号1a)が高圧噴射粉砕処理装置100のチャンバーノズルからスムーズに吐出される場合には、図10(b)に示すように、超音波分散処理(ステップS2)を省いても特に支障ない。例えば複合粒子の二次粒子(符号1a)の粒径が、チャンバーノズル径よりも小さい状態であれば、超音波分散処理(ステップS2)を省いても支障ない。
【0043】
実施例2
ジルコニアセラミックス粒子をコア材2とし、コア材2の表面に銀3を担持させて複合粒子1を作製した。本実施例では、複合粒子1を、水溶液に対するモル比で2mol%とし、複合粒子1における金属成分の濃度を変えて実験を行った。図12は、本実施例の複合粒子における金属成分の濃度と粒径分布との関係を示した図である。
銀3の複合粒子1に対するモル比(濃度)が高まると、二次粒子1aのメジアン粒径が大きくなり、二次粒子1aの粒径ばらつきも拡大する(図12)。これは、複合粒子1に対する銀3の濃度が高まると、複合粒子1の表面における銀3の比表面積が増大し、複合粒子1の表面における銀3の凝集力が複合粒子1の表面におけるコア材2の反発力を上回る結果、分散効果が小さくなり、ナノレベルの径の粒子が得られないためである。
本実施例によれば、金属成分である銀3を、複合粒子1に対するモル比で最大50mol%以下とすることで、前記二次粒子1aのメジアン粒径が1000nm未満となる。そして、金属成分である銀3を、複合粒子1に対するモル比で最大25mol%以下とすることで、前記コア材部分の反発力が前記金属成分の凝集力を完全に上回り、前記二次粒子1aのメジアン粒径が100nm以下となり、前記二次粒子1aの粒径ばらつきも非常に狭くなる(図12)。
【0044】
実施例3
ジルコニアセラミックス粒子からなるコア材2の表面に銀3を外層としてコートさせたコア−シェル型ナノ構造体を複合粒子1とした場合と、ジルコニアセラミックス粒子2と金属粒子3を混合した混合物を複合粒子1とした場合とで、金属の濃度と粒径分布との関係をそれぞれ評価した。本実施例では、複合粒子1を水溶液に対するモル比で2mol%とし、複合粒子1における金属の濃度を変えて実験を行った。本実施例の複合粒子における金属の濃度と粒径分布(メジアン粒径MA)との関係を第1表に示す。
【第1表】
【0045】
【0046】
第1表によれば、コア材2の表面に銀3を担持させたコア−シェル型ナノ構造体では、金属の濃度が50mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が500nm未満となり、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が100nm未満となる。一方で、セラミックス粒子2と銀粒子3を混合した混合物を複合粒子1とした場合では、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が100nm未満となり前記二次粒子1aの粒径のばらつきも非常に狭くなるが、金属の濃度が50mol%では二次粒子1aのメジアン粒径の減少が見られなかった(図13)。これは、金属の濃度が50mol%以上では金属単体の凝集力が大きくなってしまうことによるものであり、粒子の構造にはよらない。
【0047】
次に、セラミックス粒子2と銅水酸化物3を混合した混合物を複合粒子1とした場合では、金属の濃度が50mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が100nm未満となった。また、銅水酸化物のみならず、銅酸化物、炭酸銅においても二次粒子1aのメジアン粒径が小さくなることが確認された(第1表)。
【0048】
次に、第1表における金属の濃度100mol% を基準(100%)とした混合濃度によるメジアン粒径MAの変化率を第2表に示す。
【第2表】
【0049】
【0050】
第2表によれば、コア材2の表面に銀3を担持させたコア−シェル型ナノ構造体では、金属の濃度が50mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が半減し、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が10%未満となった。セラミックス粒子2と銀粒子3を混合した混合物を複合粒子1とした場合では、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が10%未満となった。つまり、コア−シェル型のような複合粒子以外の構造の塑性変形が主の柔らから部分をもつ酸化物などの粉体とセラミックスの組合せに関しても、本発明の手法が有効であることが判明した。
【0051】
考察
図14は、既知のビーズミル法による微粒化作用を模式的に示した図であり、(a)はセラミック粒子の場合を例示し、(b)は複合粒子の場合を例示している。ビーズミル法では、ビーズとの機械的接触で粉砕・微粒化を行うために、靱性が小さい(粘りが少ない)セラミックスの場合には、セラミックスが割れやすく微粒化処理に適している(図13(a))。しかしながら、セラミックスをコア材とし、表面に柔らかな金属などの材料を含む構造の複合粒子の場合には、ビーズと接触した柔らかな金属などの材料は塑性変形によって、エネルギーが吸収され粉砕に至ることはなく、延びるかビーズに付着、あるいは、溶液中にはぎ取られ、それら粒子同士が大きく凝集し、粉砕・微粒化できない(図13(b))。
図15は、本発明を適用した実施形態による微粒化作用を模式的に示した図である。高圧噴射分散処理装置を用いた方法では、乱流やキャビテーションのエネルギーが粒子全体に作用するために、効率的で均一な粉砕が可能となる。つまり本発明では、凝集した複合ナノ粒子を一時的にほぐした瞬間に、複合ナノ粒子の界面に分散剤を付着させて再凝集を防ぎつつ、コア材の静電反発力を利用することで、ナノレベルの粉砕分散が達成できる。それと同時に、弾性率の高い硬いセラミックスによって、複合粒子の凝集に対して効果的な粉砕ができるため、ナノレベルの粉砕と分散が達成できる。
【0052】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲となるよう前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの間で調整し、前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲となるまで前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返す回数を調整することで、多種多様な複合粒子を分散させた懸濁液を製造することができる。本発明の製造方法は、複合粒子を分散させた懸濁液全般に適用され、抗菌剤、臭いセンサ材料、燃料電池の電極材等、広範囲に亘って適用可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10 混合液、
20 懸濁液、
1 複合粒子(一次粒子)、
2 コア材(セラミックス粒子)、
3 金属粒子(金属層又は金属を含む複合材料からなる層)、
1a 複合粒子(微粒化前の二次粒子)、
1b 複合粒子(微粒化後の二次粒子)、
40 チャンバー、
41 シングルノズルチャンバー、
100 高圧噴射分散処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子の粉砕及び分散方法に関する。
【0002】
近年、環境への配慮や健康問題から衣類や生活用品等に対して高い抗菌性や防黴性が求められている。例えば、コア材の表面に抗菌性や防黴性が高い金属層をコートした構造のコア−シェル型ナノ構造体のような複合粒子を作製することで、シェル材料の表面積の拡大による効率的なイオン化を可能とし、各種化学反応過程を変化させることができる。その結果、材料の抗菌活性が向上する。また、半導体からなる臭いセンサにおける感度向上やガス選択性の向上、さらに、ガス分解や合成用触媒の触媒性能の向上を目的として、複合粒子の微細化が進められている。これら複合粒子の表面での反応を応用した機能性材料の高性能化に求められるのは、複合粒子の粒径を小さくしつつ、有効表面積が大きな機能性材料とすることである。
【0003】
抗菌に関しては、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属粒子が高い抗菌性能を示す材料として知られている。また、白金やパラジウムなどの金属が高い触媒性能を示す材料として知られている。そして、これら機能性材料をナノサイズとすることで単位質量あたりの表面積を増大させることができ、それらの機能性を効果的に発現させることが可能となる。しかしながら、これら機能性材料は、ナノサイズにすると非常に大きな凝集力が発生し、大きな凝集体を形成する傾向がある。それを空気中に放置した場合、焼結した様な状態になり、これを水に混合しても一度結合した粒子はその凝集が容易にほぐれることがなく、すぐに沈殿してしまい均一な懸濁液とはならない。そこで従来は、アルミナ、ジルコニア、ゼオライト等のセラミックス粒子を担体(コア材)として、ナノサイズの抗菌性金属を担持させた複合粒子を形成し使用している(特許文献1、2)。あるいは、分散剤を添加することで粒子の凝集をある程度防ぐことが行われているが、一般に分散剤は粒子製造の最終段階で分散剤を添加することが多く、ナノレベルの微粉化になるとその凝集エネルギーが、(ミクロンサイズとは異なり)非常に大きいため、一度凝集結合した粒子を再度微粒化させることは困難である。
【0004】
また上記懸濁液の応用として、懸濁液を衣類や生活用品等にコートした場合に、凝集による粒状の組織(凝集体)が付着することで、外観上のムラ(斑点)が生じることがあるが、この外観上のムラを目立たなくするためには、凝集体の粒径を適度に小さくし、水などの溶媒に対する分散性を良好にする必要がある。つまり粒子の安定な分散状態を維持するためには、粒子の粒径をナノサイズ(数百nm以下)とする必要がある。しかしながら、上述のように金属を含む複合粒子をナノサイズの微粉体とした場合には、この材料の特性から複合粒子全体が凝集し易く、より大きな凝集体を形成する傾向がある。
【0005】
一般に粒子を微粒化させる方法としては、超音波振動による分散・微粒化(超音波分散法)、ビーズミル法などの粉砕用媒体を使用した湿式の機械的接触式粉砕や同体摩擦粉砕による方法(機械的接触式粉砕法)が知られている(特許文献1では単に湿式粉砕機と記述されている)。しかし、ビーズミル法などを用いた機械的接触式粉砕では、粉砕用媒体と粒子とが点接触するため粉砕のためのエネルギー密度が高くなりすぎて、粒子の構造自体が壊れたり、粉砕用媒体と粒子との点接触箇所における過剰な温度上昇(発熱)によって、粒子の所望の機能性が劣化してしまう不具合が生じる。さらに粉砕用媒体から発生するcontaminant(汚染物質:コンタミとも呼ばれる)が混入する不具合がある。これら処理の問題は、本来の構造とは異なる粒子になることや、上記発熱による分散剤の劣化、再凝集、さらに、粒子表面にビーズの元素が付着することによる溶液中の表面電位の変化をもたらし、不安定な分散状態となり、かえって大きな凝集体が形成されてしまうことである。その他の方法としては、粒子の混合液をチャンバーノズルから高圧噴射することで、粒子自体を壊さずコンタミの混入がない微粒化工法が開発され実用化されている(特許文献3、非特許文献1)。
【0006】
特許文献1には、無機担体に抗菌性金属を担持させてなる無機抗菌剤をホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩及びリン酸アルカリ金属塩から選ばれる無機分散剤にて水に分散させてなる繊維品の抗菌加工剤が記載されており、湿式粉砕機を用いて無機抗菌剤の平均粒径を10〜1000nmの範囲に微粒化し水に分散させることができるとの記述がある。
【0007】
特許文献2には、金属酸化物を担体として塩化銀を担持させた無機抗菌剤の粉末とアニオン性界面活性剤と水との混合液を、粉砕装置を用いることなく、撹拌装置のみを使用して撹拌し、前記無機抗菌剤の一次粒子の平均粒子径が100〜500nmの微粒子として分散してなる水分散液の製造方法が記載されており、上記撹拌装置として、プロペラ式、パドル式、タービン式、高圧ホモジナイザー、スタティックミキサー等の市販の攪拌装置が列挙されている。
【0008】
特許文献3には、一対のノズル手段から噴射される高圧流体噴流同士を互いに衝突させることにより乳化分散流体又は/及び微粒子を得る噴流衝合装置が記載されており、前記第1と第2のノズル手段からの噴流を前記一点の先方で受け止めて噴流の流体力を分散させる噴流受け止め手段として回転自在な硬質ボールの記載がある。また非特許文献1には、株式会社スギノマシン製の高圧噴射分散処理装置「スターバースト(装置の商品名)」による電子部品材料の微粒化の事例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−370911号公報
【特許文献2】特開2007−70299号公報
【特許文献3】特許第3151706号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“高圧噴射分散処理装置「スターバースト」によるナノ電子材料の微粒化”, 原島謙一,工業調査会,電子材料 2008年9月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、複合粒子の粒径を小さくしつつ有効表面積が大きな機能性材料とするために、コア材の表面に金属などの機能性材料を形成させたナノサイズ複合粒子は、その金属などの部分が結合し易く、大きな凝集体を形成し易い傾向がある。そのため表面積の減少が起こり、複合粒子の所望の抗菌性能や触媒性能が発揮され難くなる。また、その凝集体の粒径が数百nm程度まで大きくなると、溶液中で沈殿が起こり、この懸濁液をコートした場合等には、粒状の汚れが付着したように見えてしまい見映えが非常に悪くなり、実用にならない。本明細書では、説明をわかり易くするために、以後、上記複合粒子の単体を一次粒子と定義し、これら一次粒子同士が凝集して形成された凝集体を二次粒子と定義する。
【0012】
前記二次粒子を微粒化する微粒化手段としては、上述した超音波振動による粉砕・分散法(超音波分散法)や、ビーズミル法などを用いた湿式の機械的接触式粉砕や同体摩擦粉砕による方法(機械的接触式粉砕法)が考えられる。しかしながら、超音波分散法ではエネルギーを局所的に集中させることが難しく、ナノサイズの複合粒子からなる二次粒子の粉砕・分散には使用できない。接触式粉砕法では、複合粒子の表面に形成された柔らかい部分が磨り潰されて複合粒子の表層から金属成分が脱落したり、前記複合粒子同士が擦れあって磨耗粉が発生することで新たな凝集体(二次粒子)が形成する。また粉砕用媒体と複合粒子(一次粒子)との点接触箇所における過剰な温度上昇(発熱)によって、前記一次粒子の凝集がさらに進み大きな二次粒子が形成され易くなる他、上記発熱によって分散剤が温度劣化する等の多くの問題点が生じるため、ナノレベルの微粒化ができない。一般に金属などを含む材料に荷重を加えたときの機械的特性は、粘りがあるため塑性変形し易く、結果として粉砕しにくいという性質がある。一方、セラミックスは、金属などを含む材料とは逆に、硬くて弾性率が高いが、粘りが無く、割れやすい機械的特性をもっている。このことが、従来の機械的接触式粉砕においては、セラミックスの粉砕が比較的簡単でありながら、金属などの柔らかい材料の粉砕が困難となっている主な要因である。
【0013】
そこで本発明の目的は、単体では微粒化が困難である塑性変形し易い金属やその化合物を、水中での凝集を抑えて微粒子に粉砕するとともに均一に分散させる複合粒子の分散方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の複合粒子の分散方法は、塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化することを特徴とする。
ここで本明細書におけるナノサイズとは、粒子の粒径が数百nm以下のサイズであり、特にメジアン粒径が100nm以下のサイズを指している。本明細書におけるメジアン粒径とは、粒子の表面積から粒子の粒径を求めた値(MA)であり、粒子の表面積の大きさと対応している。前記複合粒子には、タンパク質や合成樹脂などの有機物も含まれる。前記分散剤は、水に添加して表面張力を下げることで前記複合粒子と水との界面を改質する分散補助剤であり、適量が水に添加される。前記混合液には、その用途に応じてアルコールなどの揮発性溶剤が含有される場合がある。
【0015】
本発明は、前記二次粒子と分散剤と水との混合液を、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記二次粒子の結合をほぐして微粒化し、微粒化した二次粒子や一次粒子と水との界面を分散剤の作用により改質することで再凝集することを防ぎ、微粒化しつつ単分散するものである。
本発明によれば、高圧噴射された水と周囲との圧力差によってキャビテーションを発生させることで、従来の超音波振動子によるキャビテーションよりも遙かに大きなエネルギーの作用で前記二次粒子の結合を粉砕するか、ほぐすことができる。その一方で、本発明は水を介したソフトな微粒化であるから、接触式粉砕法のように、硬いビーズとの直接的な物理的接触がなく、一次粒子の構造自体を破壊することがない。また、本発明の処理は水中で行うために、水によって微粒化機構全体の冷却が可能となり、微粒化処理部分での大きな発熱もなく、分散剤の熱劣化を防ぐとともに、ナノサイズ複合粒子特有の性質である金属材料の融点が低下することによる再凝集効果を防ぐことができ、安定したナノサイズの微粒化が達成できる。
【0016】
前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーとしては、シングルノズルチャンバー、斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー等が挙げられる。いずれのチャンバーにおいても前記二次粒子を粉砕するために必要十分なエネルギーを有している。その中でも、シングルノズルチャンバーが好ましい。シングルノズルチャンバーは、その構造上、水のキャビテーションと水の乱流の作用のみを用いているから、比較的小さな粉砕エネルギーを利用するため、強い衝突による再凝集効果がないからである。
【0017】
本発明は、前記二次粒子のメジアン粒径が初期値の50%以下、及び/又は、前記二次粒子のメジアン粒径が100nm以下となるよう前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、銀などの柔らかい金属においても前記二次粒子のメジアン粒径を10から100nmの範囲にすることができるので、前記懸濁液の透明性が維持され見映えが良く、前記複合粒子の表面積の大幅な拡大が図れる。前記二次粒子の微粒化のための粉砕エネルギーは、チャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの範囲で変化させて制御するため、表面に柔らかい材料を有する複合粒子の微細化にも適用される。例えば、粉砕エネルギーが大きすぎて、その構造が破壊、あるいは再凝集する複合粒子の場合には、前記高圧噴射粉砕処理装置からの圧力を30から245MPaの間で調整することで処理を行い、前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲となるまで前記高圧噴射分粉砕処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返す。前記高圧噴射粉砕処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を繰り返す回数が多くなるにしたがって、前記二次粒子の粒径のばらつきが小さくなり、単分散の懸濁液の状態に近づく。
【0019】
本発明は、前記二次粒子のメジアン粒径が1,000から3,000nmの範囲となるよう前記混合液を超音波分散機にかけて前処理した後、前記高圧噴射分散処理装置にて前記二次粒子を微粒化することが好ましい。本発明によれば、前記混合液を超音波分散機にかけて前記二次粒子のメジアン粒径を前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルの内径よりも小さくする前処理を行うことで、前記高圧噴射分散処理装置からの前記混合液の高圧噴射が目詰まりすることなくよりスムーズに処理する。
【0020】
本発明は、前記複合粒子がコアとなるセラミックス粒子の表面に金属粒子を担持させるか、または、コア材の表面に金属材料若しくは金属を含む複合材料を外層として薄く島状あるいは層状にコートした構造の粒子の粉砕及び分散に適用することが好ましい。前記コア材としては微粉化が可能なセラミックスが好ましく、前記金属膜又は金属粒子若しくは金属成分が銀、銅、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムのいずれかを含むことが好ましい。本発明では、コア材として、例えばジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ等のセラミックス粒子が用いられる。本発明によれば、コア材の弾性率を、コア材の表面に担持させた金属又は金属を含む複合材料の弾性率よりも高く設定することで、複合粒子の粉砕効果を高め、その結果、ナノレベルの微粒化が可能になる。上記の構造の複合粒子とすることで、有効表面積が大きな機能性材料を有する複合粒子を形成することができる。前記金属粒子又は金属材料として用いる銀、銅、亜鉛、ニッケルは、優れた抗菌性能を有する。また、白金やパラジウムは、優れた触媒性能を有するが、非常に高価な貴金属である。本発明によれば、前記二次粒子の微粒化によって、複合粒子の実質的表面積を増大させることができ、コストを抑えつつ効果的に抗菌性能や触媒性能を発現させることができる。
【0021】
本発明は、前記複合粒子のうち塑性変形し易い金属またはその化合物の濃度を前記複合粒子の濃度に対するモル比で最大50mol%以下に設定し、好ましくは前記モル比で最大25mol%以下に設定することを特徴とする。
【0022】
前記複合粒子全体に対する金属の濃度が高まると、前記複合粒子の表面における前記金属の比表面積が増大し、前記複合粒子の表面における前記金属の凝集力が前記複合粒子の表面における前記コア材部分の反発力を上回り、分散の効果が小さくなる。本発明での、より好ましい前記金属の前記複合粒子に対する濃度はモル比で最大25mol%以下であり、これは、前記コア材部分の静電反発が前記金属の凝集力を完全に上回ることができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、凝集した複合ナノ粒子を粉砕するか、又はほぐした瞬間に、複合ナノ粒子の界面に分散剤を付着させて再凝集を防ぎつつ、コア材の静電反発力を利用することで、ナノレベルの粉砕分散を達成するものである。本発明によれば、柔らかく弾性のある表面をもつ複合粒子の構造を破壊させることなく、一次粒子径まで微粒化することも可能である。本発明によるキャビテーションの作用は、ビーズミル法などの他の硬い材料との機械的接触によるものとは大きく異なり、ビーズと複合粒子、さらに複合粒子同士の摩擦が少なく、また、ビーズ同士やビーズと複合粒子との衝突やずりによる運動エネルギーに伴う局所的発熱がない。そのため、柔らかい表面を有する複合粒子の構造を破壊することはない。また本発明は、その原理上から、温度による再凝集がないため、安定した微粒化が容易である。
【0024】
本発明によって、前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲とすることができ、表面積の拡大による抗菌性能や触媒性能の大幅な向上が図れた。また本発明によって得られた懸濁液は、その透明性が維持され、懸濁液をコーティング処理した対象物の見映えが良くなった。また、微粒化に適した粉砕エネルギーであるために、単分散化も可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にて使用する高圧噴射分散処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記高圧噴射分散処理装置のシングルノズルチャンバーの概略構成を示す模式図である。
【図3】上記高圧噴射分散処理装置の斜向衝突チャンバーの概略構成を示す模式図である。
【図4】上記高圧噴射分散処理装置のボール衝突チャンバーの概略構成を示す模式図である。
【図5】セラミックスを各種微粒化装置にて微粒化したコア材の粒径分布を示す分布図である。
【図6】金属粒子を担持させた複合粒子の構造を示す模式図であり、(a)は一次粒子の状態の複合粒子を例示し、(b)は一次粒子が凝集した二次粒子を例示している。
【図7】上記二次粒子の分布状態を透過型電子顕微鏡にて観察した画像であり、(a)は処理前の観察画像を例示し、(b)は処理後の観察画像を例示している。
【図8】上記処理前と処理後の二次粒子径の分布を示した図である。
【図9】上記二次粒子を既知のビーズミル法にて微粒化を試みた場合の処理前と処理後の粒径分布を示した図である。
【図10】本発明を適用した実施形態の複合粒子を分散させた懸濁液の製造手順を示す製造工程フロー図である。
【図11】上記実施形態の製造過程での二次粒子の粒径分布を示した図である。
【図12】上記実施形態の複合粒子における金属成分の濃度と粒径分布との関係を示した図である。
【図13】上記実施形態の複合粒子における金属成分の濃度と粒径分布との関係を示した図である。
【図14】既知のビーズミル法による微粒化作用を模式的に示した図であり、(a)はセラミック粒子の場合を例示し、(b)は複合粒子の場合を例示している。
【図15】本発明を適用した実施形態による微粒化作用を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【0027】
本発明にて使用する高圧噴射分散処理装置
図1は、本発明にて使用する高圧噴射分散処理装置100の概略構成を示すブロック図である。高圧噴射分散処理装置100は、高圧ポンプ102を油圧駆動及び制御する油圧発生・制御部101と、混合液10を加圧する高圧ポンプ102と、混合液10を投入する原料タンク103と、投入され加圧された混合液10内の粒子1aを噴射させ加速して衝突させることで粒子1aを微細化して粒子1bとするとともに分散させるチャンバー40と、チャンバー40にて微粒化され分散された粒子1bを有する懸濁液20を冷却する熱交換器105からなる。高圧噴射分散処理装置100は、粒子1aの混合液10をチャンバーノズルから高圧噴射することで、粒子1a自体を壊さず、コンタミの混入がない状態で、微粒化して微粒子1bとするとともに均一に分散して懸濁液20とする。
【0028】
混合液10は、例えば粒子1aと界面活性剤と水との混合液10である。原料タンク103に混合液10を投入し、高圧ポンプ102にて混合液10を加圧して、チャンバー40内のノズルから混合液10を噴射させ加速して衝突させることで粒子1aを微細化して微粒子1bとするとともに、微粒子1bが均一に分散した懸濁液20とし、チャンバー40内の噴射によって温度が上昇した懸濁液20を、熱交換器105にて常温まで冷却して排出する(図1)。チャンバー40には、用途によって、シングルノズルチャンバー、斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー等の種類がある。
【0029】
図2は、シングルノズルチャンバー41の概略構成を示す模式図である。シングルノズルチャンバー41は、混合液10を1つのノズル411から液中に噴射させ粒子1aを加速し、出口412から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル411は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、ノズル411を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力によって、微粒化と分散を行う。シングルノズルチャンバーは、その構造上、水のキャビテーションと水の乱流の作用のみを用いている。
【0030】
図3は、斜向衝突チャンバー42の概略構成を示す模式図である。斜向衝突チャンバー42は、混合液10を対向配置された1対のノズル421から液中に噴射させ粒子1aを加速して互いに対向衝突(対面衝突)させ、出口422から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル421は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、ノズル421を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力と、粒子1a同士が対向衝突するときの衝撃力と、対向噴流での相対速度増加による剪断力によって、微粒化と分散を行う。
【0031】
図4は、ボール衝突チャンバー43の概略構成を示す模式図である。ボール衝突チャンバー43は、混合液10を1つのノズル431から液中に噴射させ粒子1aを加速してセラミックボール433に衝突させ、出口432から懸濁液20を排出するタイプである。ノズル431は、単結晶ダイヤモンド等を使用しており、セラミックボール433は窒化珪素等からなる。ノズル431を粒子1aが通過するときの剪断力と、液中噴射によるキャビテーション衝撃力と、粒子1aがセラミックボール433に衝突するときの衝撃力によって、微粒化と分散を行う。
【0032】
セラミックス粒子の微粒化
図5は、セラミックスを微粒化した粒径分布を示す図である。装置条件を調整することで、ビーズミル法を使用した湿式の機械的接触式粉砕機の場合と、シングルノズルチャンバーを使用した高圧噴射粉砕処理装置の場合のいずれにおいても、粒径の分布を概ね30から100nmの範囲内とすることができた。一方、ビーズミル法では、点接触するビーズとの衝突やずり方のムラによって、粒径の分布が40から300nm程度まで大きな分布を示すことが分かった。粒子の表面積から粒子の粒径を求めた値(MA)をメジアン粒径とすると、MAはそれぞれの手法で、60nmと80nmになった。高圧噴射粉砕処理法の方が、凝集している粒子全体にキャビテーションのエネルギーが行き渡り、粉砕漏れがなく、単分散に近い状態の粒子を作製できることが示された。
【0033】
複合粒子の観察
図6は、代表的な金属粒子として銀を担持させた複合粒子の構造を示す模式図である。セラミックス粒子をコア材2として、ナノサイズの金属粒子3を担持させた複合粒子の単体を一次粒子(符号1)とする。(図6(a))、これら一次粒子(符号1)同士には、金属を含む表面部分に強い凝集力が働き、二次粒子(符号1a)が形成される。
図7は、上記複合粒子の二次粒子(符号1a)の分布状態を透過型電子顕微鏡にて観察した画像である。図7(a)は単位長さ20nmの処理前の凝集した粒子の拡大像である。図7(b)は本発明による微粒化処理後の粒子の単位長さ5nmまで拡大した像である。(a)では、上記複合粒子が数多く凝集して巨大な二次粒子が形成されていることが分かる。(b)では、本発明による微粒化において、その構造が変化していないことが分かる。この微粒化処理の条件を最適化することで、複合粒子の構造変化を起こすことなく、微粒化できることが明らかになった。
図8は、凝集した複合粒子1と分散剤と水を市販の攪拌機にて攪拌した混合液における粒子の粒度分布を示した図である。粒度分布の測定には、レーザ回折散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製の型番LA−910)と、日機装社のレーザードップラー方式の粒度分布計UPA-UZ152を使用した。作製した混合液の粒度分布は、MAが約10,000nmと非常に大きくなっており、粒子の分布も1,000〜100,000nmまで広範囲に分布している。これは、上記複合粒子の一次粒子が数多く凝集して巨大な二次粒子が形成されているためである。
【0034】
既知のビーズミル法による複合粒子の微粒化
上記複合粒子が数多く凝集して形成された巨大な二次粒子を、既知のビーズミル法によって微粒化することを試みた。微粒化の条件は、上記セラミックス粒子の加工と同様の加工条件とした。処理後のビーズには多くの銀金属が付着していた。図9は、上記複合粒子の二次粒子を既知のビーズミル法にて微粒化を試みた場合の二次粒子の粒径分布を示した図である。ビーズミル法によって加工した混合液の粒子の分布は、35nmから2,000nmと非常に広範囲に分布しており、分布の大きなピークが2,000nmのところに観察された。これは、ビーズによって複合粒子の構造が崩れて、剥離した銀が凝集したものである。つまり、ビーズミル法ではこのような構造の複合粒子を微粒化することが原理的に不可能であることが明らかになった。
【0035】
実施例1
図10は、本発明を適用した実施形態の複合粒子を分散させた懸濁液の製造手順を示す製造工程フロー図である。図10(a)に示す本発明の製造手順は、混合及び攪拌処理(ステップS1)と、超音波分散処理(ステップS2)と高圧噴射粉砕処理(ステップS3)からなる。図10(b)では、図10(a)に示す製造手順のうち超音波分散処理(ステップS2)を省いている。図10(a)に基づき、本実施例による複合粒子を分散させた懸濁液の製造手順を以下に説明する。
【0036】
ジルコニアセラミックスをコア材2とし、コア材2の表面に銀3を担持させて複合粒子1を作製した。本実施例では、金属成分である銀3を、複合粒子1に対するモル比で5mol%とした。複合粒子1の合成終了後、分散剤を添加した水と混合し、混合液10とした(図10(S1))。本実施例では、複合粒子1を、水溶液に対するモル比で2mol%とした。一次粒子(符号1)には大きな凝集力が働き、凝集して巨大な二次粒子(符号1a)が形成された。攪拌後の混合液10における複合粒子(符号1a)の二次粒子径を示すMAは約20,000nmであった(図11)。
【0037】
上記攪拌後の混合液10を超音波分散機にて超音波分散処理した(図10(S2))。超音波分散機のパワーは200W級の装置を使用した。超音波分散処理は、前記二次粒子(符号1a)のMAを適度に小さくして分散させ、高圧噴射粉砕処理装置のチャンバーノズルからスムーズに高圧噴射させるための処理であり、ノズル径が小さい場合等、必要に応じて行う。超音波分散処理後の複合粒子(符号1a)のMAは約2,000nmとなり、超音波処理のみでのナノレベルの微粒化には、限界があることが分かった(図11)。
【0038】
上記超音波分散処理後の混合液10を高圧噴射粉砕処理装置100にて高圧噴射粉砕処理した(図10(S3))。高圧噴射粉砕処理装置100は、株式会社スギノマシン製の高圧噴射粉砕処理装置「スターバースト(装置商品名)」を使用した。高圧噴射粉砕処理装置100のチャンバーはシングルノズルチャンバー41であり、チャンバーノズル径は0.1mmとし、装置圧力は245MPaに設定した。高圧噴射粉砕処理は、高圧噴射した水と周囲との圧力差によってキャビテーションを発生させることで、キャビテーションの作用で複合粒子間の結合をほぐし、その構造を破壊させることなく複合粒子を微粒化するための処理である。
【0039】
上記超音波分散処理後の混合液10を高圧噴射粉砕処理装置100にて、高圧噴射を1回行ったところ、複合粒子(符号1b)のMAは約111nmとなった(図11)。さらに、高圧噴射を合計5回行ったところ、複合粒子MAは約80nmとなった(図11)。その後、さらに高圧噴射を合計10回行ったが、複合粒子のMAは約80nmであり、その大きさの変化は見られなかった(図11)。これは、高圧噴射を複数回、(ここでは合計5回)行えば、完全に微粒化されていることを示している。またこの処理によって、粒径の分布の幅が非常に狭くなっていることも明らかである。つまり、高圧噴射粉砕処理によって複合粒子が完全に一次粒子まで小さくなり、また粒径のばらつきもなくなり、分散性にも優れた懸濁液20を作製することができた。
【0040】
本発明に係る高圧噴射粉砕処理装置100による高圧噴射粉砕処理時間は100cc/分であり、高圧噴射を合計5回行った場合の高圧噴射粉砕処理時間は単純計算でおよそ100cc/5分となり、従来のビーズミル法の1/10以下の処理時間であった。また本発明の製造方法では、また、キャビテーションを利用した作用で粒子を引き離す方式のために構造に与える損傷も少なく、処理温度も最高で約70℃と大きな発熱もなかった。
【0041】
本発明の製造方法によって得られた懸濁液20をガラス容器に入れて、約1年間放置したが、粒子の沈降は見られず、透明な状態が維持されていることを確認した。また、粒子径の測定も行ったが同じ粒度分布を示し、この処理の安定性と有効性が示された。これは、処理温度の上昇が少ないことにより、分散剤の劣化が抑制されていることを示している。
【0042】
上記実施例では、図10(a)に示す製造手順で、混合・攪拌処理(ステップS1)、超音波分散処理(ステップS2)、高圧噴射粉砕処理(ステップS3)の順序で懸濁液20を製造したが、処理前の複合粒子(符号1a)が高圧噴射粉砕処理装置100のチャンバーノズルからスムーズに吐出される場合には、図10(b)に示すように、超音波分散処理(ステップS2)を省いても特に支障ない。例えば複合粒子の二次粒子(符号1a)の粒径が、チャンバーノズル径よりも小さい状態であれば、超音波分散処理(ステップS2)を省いても支障ない。
【0043】
実施例2
ジルコニアセラミックス粒子をコア材2とし、コア材2の表面に銀3を担持させて複合粒子1を作製した。本実施例では、複合粒子1を、水溶液に対するモル比で2mol%とし、複合粒子1における金属成分の濃度を変えて実験を行った。図12は、本実施例の複合粒子における金属成分の濃度と粒径分布との関係を示した図である。
銀3の複合粒子1に対するモル比(濃度)が高まると、二次粒子1aのメジアン粒径が大きくなり、二次粒子1aの粒径ばらつきも拡大する(図12)。これは、複合粒子1に対する銀3の濃度が高まると、複合粒子1の表面における銀3の比表面積が増大し、複合粒子1の表面における銀3の凝集力が複合粒子1の表面におけるコア材2の反発力を上回る結果、分散効果が小さくなり、ナノレベルの径の粒子が得られないためである。
本実施例によれば、金属成分である銀3を、複合粒子1に対するモル比で最大50mol%以下とすることで、前記二次粒子1aのメジアン粒径が1000nm未満となる。そして、金属成分である銀3を、複合粒子1に対するモル比で最大25mol%以下とすることで、前記コア材部分の反発力が前記金属成分の凝集力を完全に上回り、前記二次粒子1aのメジアン粒径が100nm以下となり、前記二次粒子1aの粒径ばらつきも非常に狭くなる(図12)。
【0044】
実施例3
ジルコニアセラミックス粒子からなるコア材2の表面に銀3を外層としてコートさせたコア−シェル型ナノ構造体を複合粒子1とした場合と、ジルコニアセラミックス粒子2と金属粒子3を混合した混合物を複合粒子1とした場合とで、金属の濃度と粒径分布との関係をそれぞれ評価した。本実施例では、複合粒子1を水溶液に対するモル比で2mol%とし、複合粒子1における金属の濃度を変えて実験を行った。本実施例の複合粒子における金属の濃度と粒径分布(メジアン粒径MA)との関係を第1表に示す。
【第1表】
【0045】
【0046】
第1表によれば、コア材2の表面に銀3を担持させたコア−シェル型ナノ構造体では、金属の濃度が50mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が500nm未満となり、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が100nm未満となる。一方で、セラミックス粒子2と銀粒子3を混合した混合物を複合粒子1とした場合では、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が100nm未満となり前記二次粒子1aの粒径のばらつきも非常に狭くなるが、金属の濃度が50mol%では二次粒子1aのメジアン粒径の減少が見られなかった(図13)。これは、金属の濃度が50mol%以上では金属単体の凝集力が大きくなってしまうことによるものであり、粒子の構造にはよらない。
【0047】
次に、セラミックス粒子2と銅水酸化物3を混合した混合物を複合粒子1とした場合では、金属の濃度が50mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が100nm未満となった。また、銅水酸化物のみならず、銅酸化物、炭酸銅においても二次粒子1aのメジアン粒径が小さくなることが確認された(第1表)。
【0048】
次に、第1表における金属の濃度100mol% を基準(100%)とした混合濃度によるメジアン粒径MAの変化率を第2表に示す。
【第2表】
【0049】
【0050】
第2表によれば、コア材2の表面に銀3を担持させたコア−シェル型ナノ構造体では、金属の濃度が50mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が半減し、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が10%未満となった。セラミックス粒子2と銀粒子3を混合した混合物を複合粒子1とした場合では、金属の濃度が25mol%以下で二次粒子1aのメジアン粒径が10%未満となった。つまり、コア−シェル型のような複合粒子以外の構造の塑性変形が主の柔らから部分をもつ酸化物などの粉体とセラミックスの組合せに関しても、本発明の手法が有効であることが判明した。
【0051】
考察
図14は、既知のビーズミル法による微粒化作用を模式的に示した図であり、(a)はセラミック粒子の場合を例示し、(b)は複合粒子の場合を例示している。ビーズミル法では、ビーズとの機械的接触で粉砕・微粒化を行うために、靱性が小さい(粘りが少ない)セラミックスの場合には、セラミックスが割れやすく微粒化処理に適している(図13(a))。しかしながら、セラミックスをコア材とし、表面に柔らかな金属などの材料を含む構造の複合粒子の場合には、ビーズと接触した柔らかな金属などの材料は塑性変形によって、エネルギーが吸収され粉砕に至ることはなく、延びるかビーズに付着、あるいは、溶液中にはぎ取られ、それら粒子同士が大きく凝集し、粉砕・微粒化できない(図13(b))。
図15は、本発明を適用した実施形態による微粒化作用を模式的に示した図である。高圧噴射分散処理装置を用いた方法では、乱流やキャビテーションのエネルギーが粒子全体に作用するために、効率的で均一な粉砕が可能となる。つまり本発明では、凝集した複合ナノ粒子を一時的にほぐした瞬間に、複合ナノ粒子の界面に分散剤を付着させて再凝集を防ぎつつ、コア材の静電反発力を利用することで、ナノレベルの粉砕分散が達成できる。それと同時に、弾性率の高い硬いセラミックスによって、複合粒子の凝集に対して効果的な粉砕ができるため、ナノレベルの粉砕と分散が達成できる。
【0052】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲となるよう前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの間で調整し、前記二次粒子のメジアン粒径が10から100nmの範囲となるまで前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返す回数を調整することで、多種多様な複合粒子を分散させた懸濁液を製造することができる。本発明の製造方法は、複合粒子を分散させた懸濁液全般に適用され、抗菌剤、臭いセンサ材料、燃料電池の電極材等、広範囲に亘って適用可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
10 混合液、
20 懸濁液、
1 複合粒子(一次粒子)、
2 コア材(セラミックス粒子)、
3 金属粒子(金属層又は金属を含む複合材料からなる層)、
1a 複合粒子(微粒化前の二次粒子)、
1b 複合粒子(微粒化後の二次粒子)、
40 チャンバー、
41 シングルノズルチャンバー、
100 高圧噴射分散処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化することを特徴とする複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項2】
前記複合粒子がセラミックス粒子の表面に塑性変形し易い金属またはその化合物を有することを特徴とする請求項1記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項3】
前記複合粒子のうち弾性率が高い材料がセラミックス粒子であり、このセラミックス粒子がジルコニア、アルミナ、チタニア、又はシリカのいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項4】
前記複合粒子のうち塑性変形し易い金属が銀、銅、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムのいずれかを含むことを特徴とする請求項1または3記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項5】
前記複合粒子のうち塑性変形し易い金属またはその化合物の濃度を前記複合粒子の濃度に対するモル比で最大50mol%以下に設定し、好ましくは前記モル比で最大25mol%以下に設定することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項6】
前記複合粒子の微粒化後のメジアン粒径が初期値の50%以下、及び/又は、前記複合粒子の微粒化後のメジアン粒径が100nm以下となるよう前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項7】
前記複合粒子の微粒化前のメジアン粒径が1000から3000nmの範囲となるよう前記混合液を超音波分散機にかけて前処理した後、前記高圧噴射分散処理装置にて前記前記複合粒子を微粒化することを特徴とする請求項6記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項1】
塑性変形し易い金属またはその化合物とセラミックスなどの弾性率が高い材料を含有する微粉体の複合粒子を、分散剤と水とに混合した後、高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから所定の圧力で高圧噴射することで前記複合粒子を微粒化することを特徴とする複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項2】
前記複合粒子がセラミックス粒子の表面に塑性変形し易い金属またはその化合物を有することを特徴とする請求項1記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項3】
前記複合粒子のうち弾性率が高い材料がセラミックス粒子であり、このセラミックス粒子がジルコニア、アルミナ、チタニア、又はシリカのいずれかを含むことを特徴とする請求項1または2記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項4】
前記複合粒子のうち塑性変形し易い金属が銀、銅、亜鉛、ニッケル、白金、又はパラジウムのいずれかを含むことを特徴とする請求項1または3記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項5】
前記複合粒子のうち塑性変形し易い金属またはその化合物の濃度を前記複合粒子の濃度に対するモル比で最大50mol%以下に設定し、好ましくは前記モル比で最大25mol%以下に設定することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項6】
前記複合粒子の微粒化後のメジアン粒径が初期値の50%以下、及び/又は、前記複合粒子の微粒化後のメジアン粒径が100nm以下となるよう前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルからの圧力を30から245MPaの間で調整し、必要に応じて前記高圧噴射分散処理装置のチャンバーノズルから前記混合液を所定の圧力で高圧噴射する作業を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【請求項7】
前記複合粒子の微粒化前のメジアン粒径が1000から3000nmの範囲となるよう前記混合液を超音波分散機にかけて前処理した後、前記高圧噴射分散処理装置にて前記前記複合粒子を微粒化することを特徴とする請求項6記載の複合粒子の粉砕及び分散方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−20081(P2011−20081A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168792(P2009−168792)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]