説明

複合粒子の製造方法

【課題】填料歩留りを向上し、かつ繊維間に分布する填料粒子によって繊維間結合が阻害されず、少量のパルプでも嵩を出すことができ、同時に白色度、不透明度を向上できる嵩高填料の製造方法を提供する。
【解決手段】無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散し、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し酸を添加し、シロカゾルを生成させ、最終反応液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより、無機微粒子・シリカ複合粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、新規な複合填料の製造方法に関する。
【従来の技術】
【0003】
近年、森林資源保護、省資源問題、ゴミ問題を含む環境負荷軽減の見地から紙の軽量化が必要とされている。紙の軽量化を目指す場合、特に印刷紙、包装紙等の分野では、白色度、不透明度、印刷適性を高めるために、各種の填料を内添して製造している。従来から填料内添による紙の白色度、不透明性の向上方法として、二酸化チタンのような屈折率の大きな填料を内添して散乱効率を上げる方法並びに白土、タルク、炭酸カルシウム、有機顔料等の屈折率1.5近辺の填料を内添して、パルプ繊維間の密着を抑制し散乱表面積を増加させる方法がとられている。
【0004】
また、これまでは紙の軽量化に対応するために、単に坪量を下げたり脱墨パルプの比率を上げるなどの方法が行われてきた。しかしながら、この方法では紙が薄くなり、白色度、不透明度が低下して裏抜けなどの印刷適性が悪くなる。不透明度と裏抜けは紙の厚さと密接な関係があり、これまではパルプを余分に使用したり嵩のでるパルプを使用することによって、嵩高い紙を製造してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような粒子径の小さい炭酸カルシウムなどの填料は抄紙時に大部分が白水中に流出し、紙層中への保持が非常に悪いという問題があった。またこのような小さな填料粒子はパルプ繊維間に分布することによって繊維間の結合を阻害し紙力を低下させてしまう欠点がある。
【0006】
本発明の目的は、填料の歩留まりを向上し、かつ繊維間に分布する填料粒子によって繊維間結合が阻害されず、少量のパルプでも嵩を出すことができ、同時に白色度、不透明度を向上できる「軽くて厚い紙」を製造可能とする嵩高填料の製造方法および填料内添紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより、無機微粒子・シリカ複合粒子を製造し、パルプスラリーに填料として内添することにより解決された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、珪酸ナトリウム溶液に希硫酸などの酸を添加することにより生成する数nm程度のシリカゾル微粒子を無機微粒子の表面全体に薄く付着させ、シリカゾルの結晶成長に伴い、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と別の無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子間で結合が生じ、無機微粒子・シリカ複合粒子の凝集体が形成されることを特徴とするものである。
【0009】
このために、最終反応液のpHは重要な因子でありpHは中性〜弱アルカリ性の範囲とし、反応系に水和珪酸(ホワイトカーボン)が生成しないようにpHをコントロールする必要がある。好ましいpHは8〜11の範囲である。pHが7未満の酸性条件になるまで硫酸を添加してしまうと、シリカゾルではなくホワイトカーボンが生成してしまい、ホワイトカーボンが無機微粒子の凝集体の周りを球状に取り囲んでしまうため、ホワイトカーボンの光学的特性が優先的に現れ、コアー内の無機微粒子の光学的特性が全く発揮されなくなってしまう。pHが11を超えた場合、シリカゾルの生成が不十分となり、本発明の無機微粒子・シリカ複合体の凝集体を得にくい。
【0010】
本発明で反応中に生成されるシリカゾルは、珪酸ナトリウム(水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸の希釈液と高温下で反応させ、加水分解反応と珪酸の重合化により得られる粒子径10〜20nmのシリカゾル粒子である。
【0011】
本発明で使用される珪酸アルカリ溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手性の点で望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO2換算)で3〜10重量%が好適である。10重量%を超えると形成される複合体は無機微粒子・シリカ複合凝集体ではなく、前記の無機微粒子がホワイトカーボンでカプセル化され、コアー内の無機微粒子の光学的特性が全く発揮されなくなってしまう。また、3重量%未満では複合粒子中のシリカ成分が低下するため、凝集体粒子が形成しにくくなってしまう。
【0012】
本発明で使用される無機微粒子としては、製紙用填料である軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレイ、焼成カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。粒径としては、形成される複合凝集体粒子の粒径を鑑み、0.05〜50ミクロンが望ましい。
【0013】
これらの無機微粒子は、珪酸ナトリウム溶液に分散剤としての機能があるため、予め珪酸ナトリウム溶液に分散した後に使用される。しかし、分散に際して粒子の分散性が良くない場合には、分散剤を添加した水に填料を分散してから、珪酸ナトリウム溶液を後添加しても良い。特に、二酸化チタンは粒径が小さく凝集し易いので、分散剤を使用した方が望ましい。分散剤としては、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリカルボン酸ソーダ等が挙げられる。
【0014】
上記の無機微粒子は、単独で使用しても良いが、二種以上の無機微粒子を併用することにより、機能性の高い複合填料を製造することもできる。
【0015】
本発明で使用される酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸などの鉱酸の希釈液、酢酸、二酸化炭素等が挙げられるが、価格、ハンドリングの点で希硫酸が最も望ましい。さらに、希硫酸を使用する場合の添加時の濃度は、0.2 〜1.0モル濃度が望ましい。
【0016】
本発明での無機微粒子・シリカ複合粒子の製造時の反応温度に関しては、60〜100℃の範囲が望ましい。反応温度はシリカゾルの生成、結晶成長速度及び形成された無機微粒子・シリカ複合凝集体粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が60℃未満ではシリカゾルの生成・成長速度が遅く、形成された無機微粒子・シリカ複合凝集体粒子の結合強度が弱いため、填料内添紙の抄造時にかかるハイシェアーで凝集体が壊れ易い。100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。最適反応温度は70〜90℃である。
【0017】
また、無機微粒子・シリカ複合粒子を製造する場合、無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加、分散しスラリーを調製するが、このスラリー濃度は、3〜35重量%が望ましい。スラリー濃度を調整することにより、形成される無機微粒子・シリカ複合凝集体粒子の粒径がコントロールされると同時に無機微粒子とシリカの組成比率が決まる。
【0018】
さらに、無機微粒子・シリカ複合凝集体粒子の平均粒径を10〜60ミクロンの大粒径にすることにより、填料の歩留りを高めることが可能である。粒径コントロールの方法としては、次の三つの方法が挙げられる。(1)珪酸分として3.61%濃度の珪酸アルカリ水溶液に無機微粒子を添加して得られる填料スラリー濃度を3.2〜9.6重量%にする。(2)原料として粒子径の大きい2〜10ミクロンの無機微粒子を使用する。(3)無機微粒子・シリカ複合凝集体粒子のスラリーを風乾または加熱乾燥して得られる固体を乾式または湿式粉砕する。以上の方法で、10〜60ミクロンのサイズに粒径コントロールすることが可能である。
【0019】
本発明では、無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを中性〜弱アルカリ性、好ましくは8〜11の範囲に調整することにより無機微粒子・シリカ複合粒子を製造し、スラリーをろ過・水洗するとウェットケーキが得られる。
【0020】
このウェットケーキを再度、水に分散して填料スラリーとし、これを抄造時にパルプスラリーに内添して填料内添紙が得られる。この時に無機微粒子・シリカ複合粒子のウェットケーキを風乾または加熱乾燥処理で乾燥微粒子とした後、再度、乾式粉砕機または湿式粉砕機を使用して、粒径を調整した填料スラリーを抄造時にパルプスラリーに内添して填料内添紙を得ると、本発明の効果である嵩高性を飛躍的に高めることが可能である。湿式粉砕機としては、公知のホモミキサー、ホモジナイザー、サンドグラインダー等が挙げられる。
【0021】
本発明では、本発明の効果を損ねない範囲で公知の填料としてクレー、シリカ、タルク、焼成カオリン、炭酸カルシウムなどの無機填料、あるいは塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体系樹脂などの合成樹脂から製造される有機填料を併用することもできる。
【0022】
また、必要に応じて、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂などの紙力増強剤;アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物などのろ水性あるいは歩留まり向上剤;硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、耐水化剤、紫外線防止剤、退色防止剤などの助剤などを含有してもよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例及び比較例に従って詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、説明中、パーセントは重量パーセントを示す。
【0024】
実施例及び比較例で製造した中性上質紙について、嵩高性、白色度、不透明度、裂断長、填料歩留りを以下に示す方法にて測定した。
・嵩高性:坪量と紙厚から紙の密度を算出した。密度が低いほど嵩高性は高いことを示す。
・白色度の測定:白色度はJIS P 8123に基づきハンター白色度計で測定した。
・不透明度の測定:不透明度はJIS P 8138に基づき、ハンター反射率計を使用して測定した。
・填料の歩留り:予め作成しておいた、填料を配合していない手抄きシート(ブランク)及び填料を配合した手抄きシートより10×10cmの紙片10枚を切り取り、105℃×3時間乾燥させた後に絶乾重量を秤りとる。次に、この絶乾紙片を電気炉にて575℃×2時間焼くことによりシート中に含まれる灰分を求める。填料歩留り(%)は下記の式より算出した。
填料歩留り={(填料入りシート灰分重量/同絶乾重量-ブランク灰分重量/同絶乾重量)}/填料配合率×100・裂断長:JIS P 8113により次式で求めた。
裂断長=引張強さ/(試験片の幅×試験片の坪量)×1000・灰分:JIS P 8128に基づき灰化温度は575℃とした。
・複合粒子の比率:蛍光X線分析により複合粒子の成分比を測定した。
以上の測定結果にて総合品質評価を行った。評価は次の3段階とした。
◎:非常に良い、 ○:良い、 ×:劣る
【0025】
<合成例1>炭酸カルシウム(奥多摩工業製 TP-121)の粉体30gを珪酸ナトリウム水溶液(珪酸分として3.61%)312gに添加して、ホモミキサーを使用して回転数3000rpmで20分間、分散処理を行い炭酸カルシウムスラリーを調製した。次に、このスラリーを攪拌機、温度センサー、還流冷却器の付いた1Lの四口フラスコに入れ、攪拌しながら油浴にて75℃に昇温した。次に容器内のスラリーを75℃に保ちながら、0.36規定の硫酸276gをマイクロチューニングポンプを使用して、滴下速度1.53ml/分で3時間かけて滴下し炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは10.3であった。さらに、No.2ろ紙を用いてろ過・水洗し再度ろ過することにより、炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子のウェットケーキが得られた。粒度分布測定装置マスターサイザーS(マルバーン社製)を使用して、レーザー回折/散乱法により50%体積平均粒子径を測定したところ、平均粒径は8ミクロンであり、炭酸カルシウムとシリカの比率は70:30であった。
【0026】
<合成例2>合成例1において、炭酸カルシウム(奥多摩工業製 TP-121)の粉体を70gに変更した以外は合成例1と同様にして炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは10.2であった。得られた炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子の平均粒径は5.4ミクロンであり、炭酸カルシウムとシリカの比率は86:14であった。
【0027】
<合成例3>合成例1において、得られた炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子を105℃、5時間で加熱乾燥を行った。次にこの乾燥粉体をサンドグラインダーで湿式粉砕を行い平均粒径が2.0ミクロンの炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子が得られた。
【0028】
<合成例4>炭酸カルシウム(奥多摩工業製 TP-121)の粉体18gと二酸化チタン(古河機械金属製 FA-50)12gを珪酸ナトリウム水溶液(珪酸分として3.61%)312gに添加して、ホモミキサーを使用して回転数3000rpmで20分間、分散処理を行い炭酸カルシウム、二酸化チタンの混合スラリーを調製した。次に、このスラリーを攪拌機、温度センサー、還流冷却器の付いた1Lの四口フラスコに入れ、攪拌しながら油浴にて75℃に昇温した。次に容器内のスラリーを75℃に保ちながら、0.36規定の硫酸276gをマイクロチューニングポンプを使用して、滴下速度1.53ml/分で3時間かけて滴下し炭酸カルシウム・二酸化チタン・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは10.1であった。さらに、No.2ろ紙を用いてろ過・水洗し再度ろ過することにより、炭酸カルシウム・二酸化チタン・シリカ複合凝集粒子のウェットケーキが得られた。平均粒径は4.9ミクロンであり、炭酸カルシウムと二酸化チタンとシリカの比率は52:34:14であった。
【0029】
<合成例5>カオリン(CADAM製 アマゾン88SD)の粉体30gを珪酸ナトリウム水溶液(珪酸分として3.61%)312gに添加して、ホモミキサーを使用して回転数3000rpmで20分間、分散処理を行いカオリンスラリーを調製した。次に、このスラリーを攪拌機、温度センサー、還流冷却器の付いた1Lの四口フラスコに入れ、攪拌しながら油浴にて75℃に昇温した。次に容器内のスラリーを75℃に保ちながら、0.36規定の硫酸276gをマイクロチューニングポンプを使用して、滴下速度1.53ml/分で3時間かけて滴下しカオリン・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは8.5であった。さらに、No.2ろ紙を用いてろ過・水洗し再度ろ過することにより、カオリン・シリカ複合凝集粒子のウェットケーキが得られた。平均粒径は12.7ミクロンであり、カオリンとシリカの比率は70:30であった。
【0030】
<合成例6>合成例5において、得られたカオリン・シリカ複合凝集粒子を105℃、5時間で加熱乾燥を行った。次にこの乾燥粉体をサンドグラインダーで湿式粉砕を行い平均粒径が2.5ミクロンのカオリン・シリカ複合凝集粒子が得られた。
【0031】
<合成例7>合成例1において、炭酸カルシウムの粉体を20gに変更した以外は合成例1と同様にして炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは10.2であった。得られた炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子の平均粒径は10.0ミクロンであり、炭酸カルシウムとシリカの比率は65:35であった。
【0032】
<合成例8>合成例1において、炭酸カルシウムの粉体を10gに変更した以外は合成例1と同様にして炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは10.1であった。得られた炭酸カルシウム・シリカ複合凝集粒子の平均粒径は30.5ミクロンであり、炭酸カルシウムとシリカの比率は60:40であった。
【0033】
<合成例9>合成例5において、カオリンの粉体を20gに変更した以外は合成例5と同様にしてカオリン・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは9.8であった。得られたカオリン・シリカ複合凝集粒子の平均粒径は15.0ミクロンであり、カオリンとシリカの比率は70:30であった。
【0034】
<合成例10>合成例5において、カオリンの粉体を10gに変更した以外は合成例5と同様にしてカオリン・シリカ複合凝集粒子を得た。この時の反応液のpHは9.6であった。得られたカオリン・シリカ複合凝集粒子の平均粒径は35.5ミクロンであり、カオリンとシリカの比率は68:32であった。
【0035】
<合成例11>炭酸カルシウム(奥多摩工業製 TP-121)の粉体30gを珪酸ナトリウム水溶液(珪酸分として3.61%)312gに添加して、ホモミキサーを使用して回転数3000rpmで20分間、分散処理を行い炭酸カルシウムスラリーを調製した。次に、このスラリーを攪拌機、温度センサー、還流冷却器の付いた1Lの四口フラスコに入れ、攪拌しながら油浴にて75℃に昇温した。次に容器内のスラリーを75℃に保ちながら、10重量%の濃度の硫酸180gをマイクロチューニングポンプを使用して、滴下速度1.0ml/分で3時間かけて滴下し炭酸カルシウム・シリカ複合粒子を得た。この時の反応液のpHは5.7であった。さらに、No.2ろ紙を用いてろ過・水洗し再度ろ過することにより、炭酸カルシウム・シリカ複合粒子のウェットケーキが得られた。平均粒子径は9ミクロンであり、炭酸カルシウムとシリカの比率は25:75であり、シリカの比率の方が炭酸カルシウムより高かった。複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、粒子は球状であり炭酸カルシウムはホワイトカーボンで完全に覆われていた。
【0036】
<合成例12>カオリン(CADAM製 アマゾン88SD)の粉体30gを珪酸ナトリウム水溶液(珪酸分として3.61%)312gに添加して、ホモミキサーを使用して回転数3000rpmで20分間、分散処理を行いカオリンスラリーを調製した。次に、このスラリーを攪拌機、温度センサー、還流冷却器の付いた1Lの四口フラスコに入れ、攪拌しながら油浴にて75℃に昇温した。次に容器内のスラリーを75℃に保ちながら、10重量%の濃度の硫酸180gをマイクロチューニングポンプを使用して、滴下速度1.0ml/分で3時間かけて滴下しカオリン・シリカ複合粒子を得た。この時の反応液のpHは6.5であった。さらに、No.2ろ紙を用いてろ過・水洗し再度ろ過することにより、カオリン・シリカ複合粒子のウェットケーキが得られた。平均粒子径は9.5ミクロンであり、カオリンとシリカの比率は20:80であり、シリカの比率の方がカオリンより高かった。複合粒子を電子顕微鏡で観察したところ、粒子は球状でありカオリンはホワイトカーボンで完全に覆われていた。
【0037】
[実施例1]広葉樹晒パルプ(LBKP CSF407ml)のスラリー(濃度 1.00%)に、合成例1の複合凝集体粒子スラリーをパルプ絶乾重量当り10%となるように添加し、1分間攪拌後、硫酸バンドを絶乾重量当り1%添加した。さらに、1分間攪拌後、歩留向上剤として、カチオンPAM(ハイモロック DR-1500)をパルプと填料の合計絶乾重量当り100ppm 添加攪拌し、pHが8.0〜8.5になるように硫酸バンドを微量添加した。この調成したパルプスラリーを用いて、角型手抄機で目標坪量が64g/m2、紙中灰分が10重量%となるように抄造し、プレスにより脱水後、送風乾燥機(50℃、1時間)にて乾燥しシートサンプルを作製した。このシートの密度、白色度、不透明度、裂断長を測定し表1に示した。
【0038】
[実施例2]実施例1において、合成例2の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0039】
[実施例3]実施例1において、合成例3の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0040】
[実施例4]実施例1において、合成例4の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0041】
[比較例1]実施例1において、炭酸カルシウム(奥多摩工業製 TP-121)の粉体を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0042】
[比較例2]実施例1において、合成例11の複合粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0043】
[実施例5]実施例1において、合成例5の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0044】
[実施例6]実施例1において、合成例6の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0045】
[比較例3]実施例1において、カオリン(CADAM製 アマゾン88SD)を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0046】
[比較例4]実施例1において、合成例12の複合粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例1と同様に物性を測定評価し、結果を表1に示した。
【0047】
以上の実施例1〜6および比較例1〜4の物性測定評価結果を表1に示した。
【0048】
[実施例7]広葉樹晒パルプ(LBKP CSF407ml)のスラリー(濃度 1.00%)に、合成例7の複合凝集体粒子スラリーをパルプ絶乾重量当り10%となるように添加し、1分間攪拌後、硫酸バンドを絶乾重量当り1%添加した。さらに、1分間攪拌後、歩留向上剤として、カチオンPAM(ハイモロック DR-1500)をパルプと填料の合計絶乾重量当り100ppm 添加攪拌し、pHが8.0〜8.5になるように硫酸バンドを微量添加した。この調成したパルプスラリーを用いて、角型手抄機で目標坪量が64g/m2、紙中灰分が10重量%となるように抄造し、プレスにより脱水後、送風乾燥機(50℃、1時間)にて乾燥しシートサンプルを作製した。このシートの密度、白色度、不透明度、裂断長、填料歩留りを測定し表2に示した。
【0049】
[実施例8]実施例7において、合成例8の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例7と同様に物性を測定評価し、結果を表2に示した。
【0050】
[実施例9]実施例7において、合成例9の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例7と同様に物性を測定評価し、結果を表2に示した。
【0051】
[実施例10]実施例7において、合成例10の複合凝集粒子を用いた以外は同一条件でシ−トを作製した。得られたシートつき実施例7と同様に物性を測定評価し、結果を表2に示した。
【0052】
以上の実施例7〜10および比較例1,2の物性測定評価結果を表2に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示すように、実施例1及び実施例2の炭酸カルシウムを原料として製造した炭酸カルシウム・シリカ複合粒子では、比較例1の炭酸カルシウムのみの場合に比較して、紙の密度が4〜6%低下しており嵩高性が認められた。さらに、白色度は0.8〜1.0ホ゜イント、不透明度は0.7〜0.8ポイント上昇しており、裂断長も27%高くなり填料内添による紙力の低下が少なかった。
【0055】
実施例3の加熱乾燥した炭酸カルシウム・シリカ複合粒子をサンドグラインダーで粉砕したものでは、紙の密度が10%低下しており極めて高い嵩高性が認められた。さらに、白色度は1.6ポイント、不透明度は1.3ポイント上昇しており、裂断長も47%高くなり紙力の低下が極めて少なかった。
【0056】
実施例4の炭酸カルシウム・二酸化チタン・シリカ複合粒子では、紙の密度が6%低下しており高い嵩高性が認められた。さらに、二酸化チタンが複合化されているため、白色度、不透明度共に2.5ポイント上昇しており、裂断長も47%高くなり紙力の低下が極めて少なかった。
【0057】
また、比較例2の最終反応液のpHを5.7の酸性領域にしたものでは、炭酸カルシウムとシリカの比率が25:75で、シリカの比率の方が炭酸カルシウムより高く、炭酸カルシウムがホワイトカーボンで完全に覆われた球状体であるため、嵩高性がなく、白色度は0.4ポイント、不透明度は1.4ポイント低下した。裂断長は殆ど変化が無い。
【0058】
実施例5のカオリンを原料として製造したカオリン・シリカ複合粒子では、比較例3のカオリンのみの場合に比較して、紙の密度が8%低下しており高い嵩高性が認められた。さらに、白色度は1.2ポイント、不透明度は1.9ポイント上昇しており、裂断長も40%高くなり紙力の低下が少なかった。
【0059】
実施例6の加熱乾燥したカオリン・シリカ複合粒子をサンドグラインダーで粉砕したものでは、比較例3のカオリンのみの場合に比較して、紙の密度が12%低下しており高い嵩高性が認められた。さらに、白色度は1.5ポイント、不透明度は2.4ポイント上昇しており、裂断長も47%高くなり紙力の低下が少なかった。
【0060】
また、比較例4の最終反応液のpHを6.5の酸性領域にしたものでは、カオリンとシリカの比率が20:80であり、シリカの比率の方がカオリンより高く、カオリンがホワイトカーボンで完全に覆われた球状体であるため、嵩高性がなく、白色度は0.2ポイント、不透明度は 1.0ポイント低下した。裂断長は殆ど変化が無い。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示すように、実施例7〜10の複合粒子の粒径を10ミクロン以上にすると、嵩高性、白色度、不透明度が高く、紙力の低下も少なく、填料歩留りが43〜47%で非常に高かった。
[発明の効果]
【0063】
無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより形成される無機微粒子・シリカ複合粒子を紙に内添することにより以下の特性を備えた填料内添紙が得られた。
1)軽くて厚い嵩高性の高い紙が得られる2)白色度、不透明度などの光学特性が優れている3)嵩高でありながら紙力(裂断長、引裂強度)が優れている4)填料の歩留りが高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を60〜100℃の範囲に保持し鉱酸(リン酸類及びホウ酸類除く)を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを中性〜弱アルカリ性の範囲に調整することにより形成される、紙用填料としての無機微粒子・シリカ複合粒子の凝集体の製造方法において、
前記シリカゾル微粒子を無機微粒子の表面全体に薄く付着させ、シリカゾルの結晶成長に伴い、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と別の無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子間で結合を生じさせた、無機微粒子・シリカ複合粒子の凝集体が形成されること、及び前記複合粒子のレーザー回折/散乱光による50%体積平均粒子径が10〜60ミクロンであることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
無機微粒子が炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、焼成カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウムの単独または2種以上の混合物である請求項1記載の無機微粒子・シリカ複合粒子の凝集体の製造方法。
【請求項3】
珪酸アルカリ水溶液の濃度が3〜10重量%(SiO2換算)である請求項1記載の無機微粒子・シリカ複合粒子の凝集体の製造方法。
【請求項4】
無機微粒子を珪酸アルカリ水溶液に分散後、鉱酸(リン酸及びホウ酸類類除く)添加による最終反応液のpHが8〜11の範囲である請求項1記載の無機微粒子・シリカ複合粒子の凝集体の製造方法。

【公開番号】特開2006−307229(P2006−307229A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151792(P2006−151792)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【分割の表示】特願2001−232086(P2001−232086)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】