説明

複合部材及び複合部材の製造方法

【課題】シアノアクリレート系の接着剤を用いて加飾層を有する第1部材を第2部材に接着した複合部材において、外観品質が優れると共に接合強度を確保し易い複合部材を提供する。
【解決手段】 透明又は半透明のキートップ21とキーパッド11とがシアノアクリレート系の接着剤35により接着されてなり、キートップ21は、キーパッド11と接着された状態で外部から視認可能な加飾層23と、加飾層23のキーパッド側に形成されて加飾層23を補強する保護層25とを有し、接着剤35の接着成分が保護層25に浸透して硬化された複合部材であり、加飾層23と接着剤35との間に、接着剤35の硬化促進剤を含有する保護層25を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加飾層を有する第1部材をシアノアクリレート系接着剤を用いて第2部材に接着した複合部材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の部材を接合するためにシアノアクリレート系の接着剤が使用されている。
【0003】
例えば、携帯電話機、携帯情報端末装置(PDA)等、モバイル機器に用いるキーユニット等では、ゴム状弾性体製の柔軟なキーパッドの表面に硬質樹脂製のキートップを接着するために、シアノアクリレート系接着剤を使用したものが多数知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1では、キートップを透明又は半透明の樹脂により形成し、このキートップのフラットな裏面に着色層を設け、シアノアクリレート系の接着剤を用いて、キートップの裏面を弾性体からなるベース部材に接着していた。ここでは、シアノアクリレートモノマーにより、着色層が溶解されてにじんだり、キートップが変色することがあるため、キートップとベース部材との間のクリアランスを小さくし、着色剤やキートップに接触させるシアノアクリレート系の接着剤の存在量を少なくし、硬化時間を短くしていた。
【0005】
また、下記特許文献2では、弾性体からなるベース部材の接着面に窪みを設けてキートップを接着していた。ここでは、窪みに接着剤を収容して接着することで、ベース部材の接着剤の接着面積を広くし、接着強度を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4020732号公報
【特許文献2】特開2005−197109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、着色層等の加飾層には、シアノアクリレート系の接着剤の接着成分により外観品質が低下され易いものがある。例えば、メタリックインクやミラーインク等のように金属粉末を含有する加飾層では、接着面から浸透する接着成分により曇りやシミなどが生じ易く外観品質が低下し易かった。
【0008】
ところで、メタリックインクやミラーインク等の加飾層の場合、加飾層自体に強度がないなどのため、通常、加飾層の背面側に保護層を積層して設けたり、加飾層と保護層を多数積層することで付着力を確保している。接着剤の接着成分は、このような多層構造に対して徐々に浸透しつつ硬化するが、浸透した接着成分が加飾層にまで達して外観品質を低下させることがあった。
【0009】
しかも、接着剤の接着成分が加飾層まで浸透して硬化した場合、保護層や加飾層の物理的性質を変化させ、これらの層の部材に対する付着力などを低下してしまい、結果的に、シアノアクリレート系の接着剤により接着された部材間の接合強度を低下させることになっていた。
【0010】
特に、特許文献2などのように、ベース部材の表面に接着剤を収容する窪みを設けてシアノアクリレート系の接着剤により接着する場合には、窪みに収容された分の接着剤の量に応じて接着剤の硬化時間が長くなり易く、硬化が完了するまでの間に外観品質の低下や接合強度の低下が生じ易かった。
【0011】
そこで、この発明は、シアノアクリレート系の接着剤を用いて加飾層を有する第1部材を第2部材に接着した複合部材において、外観品質が優れると共に接合強度を確保し易い複合部材を提供することを課題とし、そのような複合部材を製造するための製造方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1に記載の複合部材は、透明又は半透明の第1部材と第2部材とがシアノアクリレート系の接着剤により接着されてなり、前記第1部材は、前記第2部材と接着された状態で外部から視認可能な加飾層と、前記加飾層の前記第2部材側に形成されて前記加飾層を補強する保護層とを有し、前記接着剤の接着成分が前記保護層に浸透して硬化された複合部材において、前記加飾層と前記接着剤との間に、前記接着剤の硬化促進剤を含有する層を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の複合部材は、透明又は半透明の第1部材と第2部材とがシアノアクリレート系の接着剤により接着されてなり、前記第1部材は、前記第2部材と接着された状態で外部から視認可能な加飾層と、前記加飾層の前記第2部材側に形成されて前記加飾層を補強する保護層とを有し、前記接着剤の接着成分が前記保護層に浸透して硬化された複合部材において、前記保護層は前記接着剤の硬化促進剤を含有する層からなることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の複合部材は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記硬化促進剤を含有する層は、前記接着剤より広い面積を有し、前記硬化促進剤を含有する層の周縁側に前記接着剤と対向しない非接着部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の複合部材は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記第2部材の前記接着剤の配置面に窪みが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の複合部材は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記接着剤と前記硬化促進剤を含有する層との間に、前記シアノアクリレート系の接着剤の硬化促進剤を含有しない非促進層が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の複合部材は、請求項1乃至5の何れか一つに記載の構成に加え、前記加飾層は、金属粉末を含有することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の複合部材の製造方法は、透明又は半透明の第1部材と第2部材とがシアノアクリレート系の接着剤からなる接着剤により接着されてなり、前記第1部材は、前記第2部材と接着された状態で外部から視認可能な加飾層と、前記加飾層の前記第2部材側に形成されて前記加飾層を補強する保護層とを有し、前記接着剤の接着成分が前記保護層に浸透して硬化された複合部材を製造する方法において、前記第1部材の前記加飾層より背面側に、前記接着剤の硬化促進剤を含有する層を形成し、前記第2部材の表面に前記接着剤を塗布し、前記硬化促進剤を含有する層と前記接着剤とが対応するように前記第1部材と前記第2部材とを配置して接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の複合部材によれば、シアノアクリレート系の接着剤と加飾層との間に硬化促進剤を含有する層を備えたので、接着した際、接着剤から加飾層側に浸透する接着成分の硬化が硬化促進剤により促進される。そのため、接着成分が保護層を浸透して加飾層に到達し難くなり、接着成分による加飾層の劣化を防止して外観品質の低下を防止できる。また、接着成分が加飾層まで浸透した状態で硬化した部分が形成されないため、保護層の補強作用を確保でき、第1部材と第2部材との十分な接合強度を得易い。その結果、外観品質が優れると共に接合強度を確保し易い複合部材を提供できる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、加飾層を補強する保護層が接着剤の硬化促進剤を含有する層からなるので、第1部材と第2部材との間の層数を増加することなく硬化促進剤を含有する層を設けることができ、製造が容易である。
【0021】
請求項3に記載の複合部材によれば、硬化促進剤を含有する層が接着剤より広い面積を有し、その層の周縁側に接着剤と対向しない非接着部を有するので、接着成分が硬化促進剤を含有する層の周囲を経由して加飾層に到達することを確実に防止することができ、加飾層の劣化をより確実に防止し易い。
【0022】
請求項4に記載の複合部材によれば、第2部材の前記接着剤の配置面に窪みが設けられていると、第2部材の接着剤との接触面積を窪みの表面積分広くすることで、接着剤の第2部材に対する接合強度を向上できるが、接着時に、窪みに対応する部分の接着剤の硬化時間が他の部分に比べて長くなり、接着成分が加飾層側へ浸透し易くなる。ところが、この発明では硬化促進剤を含有する層が配置されているので、接着成分が加飾層まで浸透することを防止でき、そのため、接着剤による接合強度を向上させても加飾層の外観品質を防止することが可能である。
【0023】
請求項5に記載の複合部材によれば、接着剤と硬化促進剤を含有する層との間に、シアノアクリレート系の接着剤の硬化促進剤を含有しない非促進層が設けられているので、接着剤が第1部材側の表面に接触しても硬化が促進されない。そのため、接着する際、接着剤が配置面で硬化されずに広がり易く、接着剤を所望の範囲に配置して硬化させ易い。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、加飾層が金属粉末を含有すると、金属粉末による光の反射等により光沢のある加飾層を外部から視認できるが、加飾層が接着成分により僅かでも劣化した場合、金属粉末を用いない加飾層に比べて光沢等の外観品質の低下が生じ易い。ところが、この発明では硬化促進剤を含有する層が配置されているので、接着成分が加飾層まで到達して加飾層が劣化されることが防止できるため、金属粉末を用いた加飾層であっても外観品質を確保することが可能である。
【0025】
請求項7に記載の複合部材の製造方法によれば、第1部材の加飾層より背面側に、接着剤の硬化促進剤を含有する層を形成し、第2部材の表面に接着剤を配置し、硬化促進剤を含有する層と接着剤とを対応させて第1部材と第2部材とを接着するので、加飾層側に浸透する接着成分の硬化が硬化促進剤により促進される。そのため、接着成分が保護層を浸透して加飾層に到達し難くなり、接着成分による加飾層の劣化を防止して外観品質の低下を防止できる。また、接着成分が加飾層まで浸透した状態で硬化した部分が形成されないため、保護層の補強作用を確保でき、第1部材と第2部材との十分な接合強度を得易い。その結果、外観品質が優れると共に接合強度を確保し易い複合部材を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1の押釦用カバー部材を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1の押釦用カバー部材の製造工程を示す概略断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の押釦用カバー部材の製造工程において、接着剤の硬化状態の変化を示す模式的な概略断面図である。
【図4】押釦用カバー部材の製造工程において、保護層に硬化促進剤が含有されていない場合の接着剤の硬化状態の変化を示す模式的な概略断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2の押釦用カバー部材を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2の押釦用カバー部材の製造工程において、接着剤の硬化状態の変化示す模式的な概略断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2の押釦用カバー部材の製造工程において、接着剤が押し広げられる上をの変化を示す概略断面図である。
【図8】この発明の実施の形態3の押釦用カバー部材を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態3の押釦用カバー部材の製造工程において、接着剤の硬化状態の変化示す模式的な概略断面図である。
【図10】押釦用カバー部材の製造工程において、保護層に硬化促進剤が含有されていない場合の接着剤の硬化状態の変化を示す模式的な概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
【0028】
図1乃至図4は、この実施の形態1を示す。ここでは、第1部材としてのキートップ21と弾性体からなる第2部材としてのキーパッド11とが接着剤35により接着された複合部材としての押釦用カバー部材10の例を用いて説明する。
【0029】
まず、この実施の形態1で使用する接着剤35は、例えば、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレートなどのシアノアクリレート系の接着剤である。この接着剤35には、シアノアクリレートモノマー等の接着成分が含有され、パラ−スルホン酸等の安定化剤、キノン、ハイドロキノン等の重合禁止剤、ポリ(メチル)メタクリレート等の増粘剤、アクリル系エラストマー等の補強剤などが含まれていてもよい。
【0030】
この接着剤35は、塗布後、水や塩基性物質等と接触することで主成分が重合を開始し、比較的短時間で硬化されるものである。この接着剤35を配置面に塗布して硬化させると、配置面に密着して表面で硬化すると共に、接着成分が内部に浸透した状態で硬化し、これらにより所望の接着力が得られる。
【0031】
この実施の形態1においてシアノアクリレート系の接着剤35の硬化を促進するために使用される硬化促進剤は、接着成分が接触することで接着剤35の硬化を促進できる成分である。この硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、アミジン化合物等の有機塩基性物質、苛性ソーダ、苛性カリ等の無機塩基性物質、更には、第4アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の有機金属化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
【0032】
この実施の形態1のキートップ21は、各種の形状に形成されたキートップ本体22と、キートップ本体22の背面に形成された加飾層23と、加飾層23の背面側に形成された保護層25とを備える。加飾層23と保護層25とは、それぞれ1層であってもよく、複数層積層されたものであってもよい。
【0033】
キートップ本体22は、透明又は半透明の材料により形成され、キーパッド11側となる背面が平面に形成されている。キートップ本体22を構成する材料は、シアノアクリレート系接着剤を用いて接着可能な材料であればよく、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂等の樹脂などである。
【0034】
加飾層23は、キートップ本体22の背面の全面又は一部に、各種の塗料、インク等を用いて、不透明又は半透明に形成された層である。この加飾層23は、例えば、着色部、文字、図形、記号等の表示部などが適宜なデザインで形成されている。また、この加飾層23は、キートップ21がキーパッド11に接着されて押釦用カバー部材10を構成した状態で、キートップ21の表面側の外部から視認可能となっている。
【0035】
この実施の形態では、加飾層23はメタリックインク、ミラーインク等のように、金属粉末を含有する層により形成されている。金属粉末を含有する層の場合、加飾層23自体の強度が金属粉末を含有しない層に比べて弱くなり易い。また、光を反射或いは乱反射させる層であるため、接着剤35の接着成分が浸透された際、光の反射或いは乱反射の状態が容易に変化して外観品質が低下し易い層である。
【0036】
保護層25は、加飾層23の背面側に積層されることで、加飾層23自体の強度や加飾層23のキートップ21に対する付着力等を補強したり、接着剤との接着力を確保する層である。この保護層25としては、例えばウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系、ポリカーボネート系などの溶剤蒸発型や熱硬化型の塗料又はインク、紫外線や可視光で硬化する光硬化型の塗料又はインクなどが挙げられる。これらはシアノアクリレート系の接着剤35の接着成分が浸透した状態で硬化可能な材料である。
【0037】
この実施の形態では、この保護層25に接着剤35の硬化を促進するための上述のような硬化促進剤が含有されており、この保護層25が硬化促進剤を含有する層となっている。この保護層25では、少なくとも含有させる硬化促進剤により変質や劣化が生じ難い材料からなるものが用いられている。
【0038】
このような保護層25では、接着剤35の接着成分が徐々に浸透しつつ、浸透する接着成分の硬化が促進されるようになっている。キートップ21が接着剤35により接着された状態では、保護層25に接着成分が適度に浸透した状態で硬化されている。
【0039】
一方、キーパッド11は、弾性体により各種の形状に成形された成形体であり、表側にはキートップ21を当接して装着する装着面37が突出して設けられ、裏側には装着面37に対応する位置に、図示しない接点部を作動させるためのプランジャ部13が設けられている。装着面37には、接着剤35が収容された接着剤収容部31が設けられ、接着剤収容部31内の接着剤35の配置面に窪み33が設けられている。
【0040】
キーパッド11を構成する弾性体は、適宜選択可能であるが、この実施の形態ではシリコーンゴムを用いている。シリコーンゴムはシアノアクリレート系の接着剤35の接着成分が浸透し難い材料であるため、予めプラズマ処理、コロナ処理、UV処理、プライマー処理などの接着性向上処理を施してもよい。
【0041】
ここでは、装着面37の接着剤収容部31及び窪み33の表面にプライマー処理が施されてプライマー層15が形成されたものを用いている。このプライマー層15は、シアノアクリレート系の接着剤35の硬化促進剤を含有する層であり、硬化促進剤は保護層25に含有されるものと同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
この実施の形態では、装着面37が平面視においてキートップ21の背面より狭い面積に形成されている。そのため、キートップ21の背面には、保護層25が全周の縁側で接着剤35と対向しない状態で配置された非接着部29が形成されている。このような非接着部29が形成されていると、接着後にも硬化促進剤を含有する保護層25が未接着状態で残留することになるが、加飾層23と接着剤35との間を確実に硬化促進剤を含有する保護層25で隔離できて好適である。
【0043】
次に、このような押釦用カバー部材10を製造する例について、図2を用いて説明する。
【0044】
まず、(a)キートップ本体22に対応する型面形状を有する下型51及び上型53を備えた成形型50を用い、透明樹脂を成形してキートップ本体22を作製する。ここでは複数のキートップ本体22が連結した状態の成形品を作製する。
【0045】
(b)得られたキートップ本体22の平坦な背面に、ミラーインクやメタリックインク等のインクや塗料を用いてスクリーン印刷等により、各種デザインに対応した加飾層23を形成する。加飾層23を十分に硬化させた後、加飾層23の背面に、加飾層23に応じて選択された保護インクに硬化促進剤を均一に含有させたものを用い、スクリーン印刷、塗装等により保護層25を形成し、十分に硬化する。この工程を所望の数の加飾層23及び保護層25が得られるまで繰り返す。加飾層23や保護層25を複数設ける場合、加飾層23と保護層25とを交互に形成してもよい。
【0046】
保護層25を複数層設ける場合、全ての層に硬化促進剤を含有させてもよいが、少なくとも1層、好ましくは最も接着剤35に近い層を硬化促進剤が含有されたインクを用いて形成し、その他の保護層25を硬化促進剤が含有されない保護インクを用いて形成するのが好適である。これによりキートップ21を作製する。
【0047】
(c)その後、各キートップ21が独立するように切り離し、バリなどを除去した後、接着用のキートップ固定治具55に各キートップ21を所定位置に収容する。
【0048】
(d)一方、キーパッド11の形状に対応すると共に、装着面37に対応する位置に接着剤収容部31及び窪み33に対応する形状を有する下型61及び上型63を備えた成形型60を用い、シリコーンゴム等の弾性体用の材料を充填し、成形型60内で成形して加硫し、キーパッド11を作製する。ここでは、複数のキーパッド11が連結した状態の成形品を作製する。
【0049】
(e)得られたキーパッド11の装着面37に、硬化促進剤を含有してキーパッド11を構成する材料との接着性のよいプライマーを用いてプライマー処理を施し、接着剤収容部31及び窪み33の表面にプライマー層15を形成する。このキーパッド11を接着用のキーパッド固定治具65の所定位置に収容する。
【0050】
(f)この状態で、キーパッド11の装着面37の接着剤収容部31及び窪み33にシアノアクリレート系の接着剤35を塗布して収容する。
【0051】
(g)キートップ固定治具55とキーパッド固定治具65とを、キートップ21の保護層25とキーパッド11の接着剤35とが対応するように、所定位置で組み合わせ、キートップ21とキーパッド11との間の接着剤35を硬化させて接着する。この実施の形態では、接着時には、キートップ21の硬化促進剤を含有する保護層25とキーパッド11の装着面37に塗布された接着剤35とが直接接触した状態で接着される。
【0052】
(h)接着剤35の硬化後、型開きして取り出し、必要に応じてバリの除去、切断等を施すことにより、キートップ21とキーパッド11とが接着剤35により接着された押釦用カバー部材10を製造する。
【0053】
以上のような押釦用カバー部材10を製造すれば、キートップ21の加飾層23より背面側に、接着剤35の硬化促進剤を含有する保護層25を形成し、キーパッド11の表面側の装着面37に接着剤35の層を形成し、保護層25と接着剤35とを対応させてキートップ21とキーパッド11とを接着するので、接着剤35から加飾層23側に浸透する接着成分の硬化が硬化促進剤を含有する保護層25により促進される。そのため、接着成分が保護層25を浸透して加飾層23に到達することを防止できる。
【0054】
即ち、硬化促進剤を含有した保護層25ではなく、従来のように硬化促進剤を含有していない保護層27をキートップ21の加飾層23の背面に設けた場合、図4(a)に示すように、キーパッド11の装着面37に設けられた接着剤収容部31及び窪み33に、シアノアクリレート系の接着剤35を塗布して収容し、接着剤35に保護層27を接触させて当接すると、図4(b)に示すように、接着剤収容部31のプライマー層15に接する外周囲側から接着剤35の硬化が始まり、内部に進行する。硬化時には接着剤35の接着成分が徐々に保護層27に浸透しつつ保護層27内でも硬化する。そして、硬化が進むと、図4(c)に示すように、外周囲では接着剤35が硬化するが、窪み33が設けられた最内部では接着剤量が多い分、接着剤35の硬化が遅れる。そのため、この部分では、接着成分の保護層27内への浸透がさらに進むことになる。
【0055】
その結果、図4(d)に示すように、保護層27内へ浸透した接着成分が加飾層23に到達し、加飾層23が接着成分により劣化される。そして、加飾層23に斑などが生じるなどの外観品質の低下が生じ、更に、加飾層23や保護層27自体の強度が低下して所望の接合強度が得られなくなる。
【0056】
ところが、硬化促進剤を含有した保護層25をキートップ21の加飾層23の背面に設けていると、図3(a)に示すように、キーパッド11の接着剤収容部31に接着剤35を収容して、キートップ21を当接させると、図3(b)に示すように、接着剤収容部31のプライマー層15及び保護層25に接する外周囲側から内部側へ接着剤35の硬化反応が進む。この硬化時には接着剤35の接着成分が保護層25に浸透するが、保護層25に含有された硬化促進剤と接触することで深く浸透せずに硬化される。そして、硬化が進むと、図3(c)に示すように、外周囲の接着剤35が硬化し、窪み33が設けられている最内部では接着剤量が多い分、接着剤35の硬化が遅れる。そのため、この部分では、接着成分は保護層25内へ浸透するが、保護層25に含有された硬化促進剤と接触することで深く浸透せずに硬化される。
【0057】
その結果、図3(d)に示すように、保護層25に接着成分が深く浸透することなく、接着剤35の硬化が完了することができ、接着成分が加飾層23に到達し難い。そして、この保護層25の硬化促進剤の作用の結果、接着成分による加飾層23の劣化を防止することができ、接着成分による加飾層23の外観品質の低下を防止できる。更に、接着成分が加飾層23まで浸透した状態で硬化した部分が形成されないため、保護層25の補強作用を確保でき、キートップ21とキーパッド11との十分な接合強度が得られる。
【0058】
また、ここでは、キーパッド11の接着剤35の配置面に窪み33が設けられているため、キーパッド11に対する接着剤35の接触面積を窪み33の表面積分広くすることで、接着剤35のキーパッド11に対する接合強度を向上することができ、これによりキートップ21とキーパッド11との接合強度を向上することが可能である。
【0059】
更に、この押釦用カバー部材10では、硬化促進剤を含有する層が保護層25からなるので、キートップ21とキーパッド11との間の層数を増加することなく硬化促進剤を含有する層を設けることができ、製造が容易である。
【0060】
また、この押釦用カバー部材10では、硬化促進剤を含有する保護層25が平面視で接着剤より広い面積を有し、硬化促進剤を含有する保護層25の周縁側に接着剤35と対向しない非接着部29が形成されているので、接着成分が保護層25の周囲を経由して加飾層23に到達することを確実に防止することができ、加飾層23の劣化をより確実に防止できる。
【0061】
更に、この押釦用カバー部材10では、加飾層23が金属粉末を含有する層からなるが、硬化促進剤を含有する保護層25により、接着成分が加飾層23まで到達して加飾層23を劣化させることが防止でき、金属粉末を用いた加飾層23であっても外観品質を確保することが可能である。
【0062】
なお、上記実施の形態は、この発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記では、第1部材として押釦用カバー部材のキートップ、第2部材としてキーパッドの例について説明したが、何ら限定されるものではなく、他の各種の部材であっても、この発明を適用することで、同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
また、上記では、加飾層23としてミラーインクやメタリックインク等の金属粉末を含有する材料により形成された層について説明したが、加飾層23は金属粉末を含有する材料に限定されるものではなく、適宜の材料を用いて形成された加飾層23であっても、何ら異なることなくこの発明を適用することが可能である。
【0064】
更に、上記では、硬化促進剤を含有する層が保護層25からなる例について説明したが、保護層25とは別に、硬化促進剤を含有する層を形成してもよい。
【0065】
また、上記では、キーパッド11の装着面37が平面視においてキートップ21、加飾層23及び保護層25の外形形状より小さい例について説明したが、装着面37の外形がキートップ21の外形と同一であっても、キートップ21の外形より大きいものであっても、この発明を同様に適用可能である。
【0066】
その場合でも、接着剤35がキートップ21の外形より外側にはみ出ることは外観品質を低下させて好ましくないという理由で、接着剤35よりも硬化促進剤が含有された保護層25を広い面積とするのがよく、保護層25の周縁部に接着剤35と対向しない非接着部29が形成されるのが好適であり、これにより、接着成分が硬化促進剤を含有する保護層25を経由することなく保護層25に到達することも防止できる。
【0067】
また、上記では、保護層25および加飾層23をそれぞれ一層ずつ設けた例について説明したが、加飾層23及び保護層25は何れも複数積層することが可能である。
【0068】
更に、キートップ21としての樹脂成形体に印刷により加飾層23を形成した例について説明したが、樹脂成形体を構成する材料に金属粉末等の加飾成分が含有されて成形されることで、成形体自体が加飾層23を構成するものであってもよい。
(実施の形態2)
【0069】
図5乃至図7は、実施の形態2を示す。
【0070】
この実施の形態2の押釦用カバー部材10では、図5に示すように、2層の保護層25、27を有し、硬化促進剤を含有する保護層25の背面側に、シアノアクリレート系の接着剤35の硬化促進剤を含有しない非促進層からなる保護層27が設けられている。そのため、キートップ21とキーパッド11とを接着剤35により接着すると、接着剤35に対して硬化促進剤を含有しない保護層27が隣接して配置される。
【0071】
その他は実施の形態1と同様の構成を有している。
【0072】
このような構成を有するキーパッド11であっても、実施の形態1と同様に、接着成分が保護層25を浸透して加飾層23に到達することを防止可能である。
【0073】
即ち、図6(a)に示すように、キーパッド11の装着部の接着剤収容部31に接着剤35を収容して、キートップ21を当接させると、図6(b)に示すように、接着剤収容部31のプライマー層15と接する外周囲側から内部側へ接着剤35の硬化反応が進む。この硬化時には接着剤35の接着成分は、硬化促進剤が含有されていない保護層27に徐々に浸透する。
【0074】
硬化が進むと、図6(c)に示すように、外周囲の接着剤35が硬化し、窪み33が設けられている最内部では、接着剤35量が多い分、接着剤35の硬化が遅れる。そのため、この部分では、接着成分は硬化促進剤が含有されていない保護層27に更に浸透する。
【0075】
そして、図6(d)に示すように、接着成分が保護層27にさらに浸透すると、接着成分が硬化促進剤を含有する保護層25に到達する。すると、この保護層25では、硬化促進剤が含有されているため、接着成分の硬化が促進される。
【0076】
そのため、図6(e)に示すように、硬化促進剤を含有する保護層25内で接着成分が深く浸透することなく、接着剤35の硬化が完了することができ、接着成分が加飾層23に到達することが防止される。
【0077】
その結果、実施の形態1と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0078】
しかも、この実施の形態では、接着剤35の保護層25側に、シアノアクリレート系の接着剤35の硬化促進剤を含有しない保護層27が隣接して設けられているので、接着剤35がキートップ21側の表面に接触しても硬化が促進されない。そのため、接着時に、接着剤35が表面で硬化されずに広がり易く、接着剤35を所望の範囲に配置して硬化させ易い。
【0079】
即ち、図7(a)に示すように、接着剤35をキーパッド11の装着部の接着剤収容部31の接着剤35の配置面に塗布した後、キートップ21を近接させると、図7(b)に示すように、キートップ21の保護層27と接着剤35の配置面との間で接着剤35が押し広げられる。このとき、保護層27には硬化剤促進剤が含有されていないため、接着剤35は硬化が促進されることなく、保護層27に接触しつつ、均一に広がる。そのため、図7(c)に示すように、キートップ21とキーパッド11の装着面37とが当接して、保護層27と接着剤35配置面との間が所定の間隙に達すると、接着剤35は所望の範囲に配置された状態となる。
【0080】
ところが、キートップ21の最外層に硬化促進剤が含有された保護層25が存在すると、保護層25と接着剤35の配置面との間で接着剤35が押し広げられる途中で、保護層25の硬化促進剤と接触することで接着剤35の硬化が促進されることになる。そのため、接着剤35の硬化が過剰に促進された部分では、それ以上に接着剤35が広がり難くなり、均一に広がらない部分が生じることがある。その場合、保護層25と接着剤35配置面との間が所定の間隙に達しても、接着剤35は所望の範囲とはずれた範囲に配置された状態となる。
【0081】
従って、この実施の形態2のように、接着剤35に接する層を、硬化促進剤が含有されていない保護層27とすれば、接着剤35を所望の範囲に配置させて硬化することが可能となる。
(実施の形態3)
【0082】
図8乃至図10は、この実施の形態3を示す。
【0083】
この実施の形態3の押釦用カバー部材10では、図8に示すように、キーパッド11の装着面37が平面に形成されており、接着剤収容部31及び窪み33が設けられていない。そのため、平坦なプライマー層15の表面に層状に配置された接着剤35により、キートップ21が接着されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0084】
このような構成の押釦用カバー部材であっても、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができ、接着時には、接着剤35の硬化促進剤を含有する保護層25により、接着剤35の接着成分が保護層25を浸透して加飾層23に到達することを防止することができる。
【0085】
即ち、硬化促進剤を含有していない保護層27を加飾層23の背面に設けている場合には、図10(a)に示すように、キーパッド11の装着面37のプライマー層15上に接着剤35を塗布してキートップ21の保護層27を接触させると、図10(b)に示すように、プライマー層15と接触する面から接着剤35の硬化が始まり、内部に進行する。硬化が進むと、図10(c)に示すように、接着剤35の接着成分が徐々に保護層27に浸透しつつ保護層27内でも硬化する。硬化が遅い箇所等ではより加飾層23側に浸透する。そして、図10(d)に示すように、接着剤35が完全に硬化するまでの間に、保護層27に浸透した接着成分が加飾層23に到達し、加飾層23の外観品質を低下させ、例えば加飾層23がミラーインクからなる場合には光沢が損なわれて曇りが生じる。
【0086】
ところが、硬化促進剤を含有する保護層25を加飾層23の背面に設けていれば、図9(a)に示すように、キーパッド11の装着面37のプライマー層15上に接着剤35を塗布してキートップ21の保護層25を接触させると、図9(b)に示すように、プライマー層15と接触する面と、保護層25と接触する面との両面から接着剤35の硬化が始まり、両面側から内部に進行し、図9(c)に示すように、硬化が進む。このとき、接着剤35の接着成分が保護層25に浸透するが、保護層25に含有された硬化促進剤と接触することで深く浸透せずに硬化される。そして、図9(d)に示すように、保護層25に接着成分が深く浸透することなく、接着剤35の硬化が完了する。そのため、加飾層23の劣化は生じ難く、加飾層23の優れた外観品質を確保することができ、接着強度が低下することも防止できる。
【0087】
なお、この実施の形態3では、硬化促進剤を含有する保護層25を接着剤35と直接接触する層に設けた例について説明したが、特に限定されるものではなく、実施の形態2と同様に、硬化促進剤が含有されている保護層25より接着剤35側に、硬化促進剤が含有されていない保護層27を設けることで、実施の形態2と同様に、接着剤35を所望の範囲に広く配置させ易くすることも可能である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例について説明する。
【0089】
(実施例1)
【0090】
ボリカーボネート系樹脂を予め射出成形してキートップ本体22を準備し、背面に加飾インキMIR9100シルバー(帝国インキ製造(株)社製、商品名)にて記号、数字、文字等を印刷し、乾燥温度80℃、乾燥時間30minにて乾燥させて加飾層23を形成した。
【0091】
その後、加飾層23の背面に、保護インキGA4100(十条ケミカル(株)社製、商品名)100質量部に、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール0.1質量部を配合したものを印刷し、紫外線硬化用メタルハライドランプ[D]bulb(フュージョン・ユーブイ・システムズ・ジャパン(株)社製、商品名)にて積算光量500mJ/cmにて乾燥させて保護層25を形成した。
【0092】
そして、キートップ21を治具に吸着固定し、ランナー部、ゲート部等の余剰部分を刃治具により切断除去した。
【0093】
次にポリカーボネート樹脂にて、多数のキートップ21用の貫通穴を有する硬質樹脂成形体からなるライトガイド用のハードベースを射出成形にて製作した。
【0094】
得られたハードベースを、所定のキーパッド11の形状に対応する型面を有する金型にインサートし、ハードベースに対して十分な接着性のある成分を含有するシリコーンゴムKE−2030−70A(信越化学工業(株)社製、商品名)50質量部と、シリコーンゴムKE−2030−70B(信越化学工業(株)社製、商品名)50質量部との混合物からなる原料を金型内に充填し、成形温度120℃、成型時間90秒の条件で一体化させ、半製品のハードベースの貫通穴に、キートップ21を接着する装着面37が平面からなるキーパッド11を成形した。
【0095】
ハードベースとキーパッド11が−体化された半製品を金型から取り出し、キーパッド11の装着面37にプライマー770(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)をスプレー方式にて塗布し、5分間自然乾燥してプライマー層15を形成した。
【0096】
この半製品を治具に吸着固定し、プライマー層15上にシアノアクリレート系接着剤401(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)をデイスペンサー方式にて塗布した。
【0097】
次いで、キートップ21を精度良く位置合わせして密着させ、0.1kg/cmの圧力にて60秒保持し、硬化させて接着し、図8に示すような押釦用カバー部材10を製造した。
【0098】
この製造では、従来より効率よくかつ高品質なハードベースー体型のスイッチ用カバー部材10を得ることが出来た。また、得られたスイッチ用カバー部材の外観品質の評価を目視にて行った。加飾層23の劣化が認められないものは〇、認められたものは×として結果を表1に示す。
(実施例2)
【0099】
ボリカーボネート系樹脂を予め射出成形してキートップ本体22を準備し、背面に加飾インキMIR9100シルバー(帝国インキ製造(株)社製、商品名)にて記号、数字、文字等を印刷し、乾燥温度80℃、乾燥時間30minにて乾燥させて加飾層23を形成した。
【0100】
主剤SG740((株)セイコーアドバンス社製、商品名)100質量部と、SG740用硬化剤((株)セイコーアドバンス社製、商品名)10質量部とを配合した保護インキ100質量部に、硬化促進剤の3−ジメチルアミノ−1−プロパノール0.1質量部を配合したコーティング剤を作製した。
【0101】
このコーティング剤を加飾層23の背面に印刷し、乾燥温度80℃、乾燥時間30分にて乾燥させて保護層25を形成した。そして、キートップ本体22を治具に吸着固定し、ランナー部、ゲート部等の余剰部分を刃治具により切断除去し、キートップ21を作製した。
【0102】
−方、シリコーンゴムコンパウンドKE−9610U(信越化学工業(株)社製、商品名)100質量部と、架橋剤C−8A(信越化学工業(株)社製、商品名)0.5質量部からなる原料を、成形型にて成形温度180℃、成形時間5分、成形圧力180kg/cmの条件で圧縮成形して、透光性を有し、キートップ21を接着する装着面37が平面からなるキーパッド11の形状を成形し、これを乾燥温度200℃、乾燥時間60分にて乾燥した。その後、バリなどの余剰部分を治具により切断除去し、図8に示すようなキーパッド11を作製した。このキーパッド11を治具に吸着固定した。
【0103】
次いで、装着面37にプライマー770(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)をスプレー方式にて塗布し、5分間自然乾燥してプライマー層15を形成した。
【0104】
この半製品を治具に吸着固定し、プライマー層15上にシアノアクリレート系接着剤401(ヘンケルジャパン(株)社製、商品名)をデイスペンサー方式にて塗布した。次いで、キートップ21を精度良く位置合わせして密着させ、0.1kg/cmの圧力にて30秒保持し、硬化させて接着し、図8のような押釦用カバー部材10を製造した。
【0105】
この製造では、従来より効率よくかつ高品質な押釦用カバー部材を得ることが出来た。
【0106】
また、得られた押釦用カバー部材10の外観品質の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例3)
【0108】
実施例2と同様の方法により作製されたキートップ21の背面に、更に、主剤SG740((株)セイコーアドバンス社製、商品名)100質量部と、SG740用硬化剤((株)セイコーアドバンス社製、商品名)10質量部と、シンナーT−980((株)セイコーアドバンス社製、商品名)10質量部とを配合した保護インキ100質量部を配合したコーティング剤を作製した。このコーティング剤を保護層25の背面に印刷し、乾燥温度80℃、乾燥時間30分にて乾燥させて保護層27を形成した。その他は、実施例2と同様にして図5と同様に保護層27を有して、接着剤収容部31及び窪み33を有しないキーパッド11を製造した。
【0109】
この製造では、従来より効率よくかつ高品質なスイッチ用カバー部材を得ることが出来た。
(実施例4)
【0110】
キーパッド11を成形する際、所定の金型を用いて、キートップ21を接着する装着面37に、接着剤収容部31及び窪み33を形成する他は、全て実施例1と同一にして、図1に示すようなスイッチ用カバー部材10を作成し、外観品質の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
【0111】
キーパッド11を成形する際、所定の金型を用いて、キートップ21を接着する装着面37に、接着剤収容部31及び窪み33を形成する他は、全て実施例2と同一にして、図1に示すような押釦用カバー部材10を作成し、外観品質の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
【0112】
キーパッド11を成形する際、所定の金型を用いて、キートップ21を接着する装着面37に、接着剤収容部31及び窪み33を形成する他は、全て実施例3と同一にして、図5に示すような押釦用カバー部材10を作成し、外観品質の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1乃至6)
【0113】
保護インキに硬化促進剤を添加しない他は、全て実施例1乃至6と同様にして、実施例1乃至6の保護層25の代わりに、保護層27を設けた押釦用カバー部材10を製造した。
【0114】
得られた押釦用カバー部材10を作成し、外観品質の評価を行った。結果を表1に示す。ここでは、実施例番号と比較例番号とが対応している。
【0115】
(表1)

【0116】
表1から明らかな通り、保護層に硬化促進剤を含有させた実施例1〜6では、何れも比較例1〜6に比べて、接着剤35に起因した外観品質の低下部分が確認されなかった。また、実施例1〜6では、保護層25内で接着剤35の接着成分が加飾層23まで到達していないため、保護層本来の接合強度が確保できていた。
【0117】
これに対し、比較例1〜6では接着剤35の接着成分が加飾層23に到達しており、加飾層23に斑が生じており、外観品質が低下していた。
【符号の説明】
【0118】
10 押釦用カバー部材
11 キーパッド(第2部材)
21 キートップ(第1部材)
23 加飾層
25、27 保護層
29 非接着部
31 接着剤収容部
33 窪み
35 接着剤
37 装着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明の第1部材と第2部材とがシアノアクリレート系の接着剤により接着されてなり、前記第1部材は、前記第2部材と接着された状態で外部から視認可能な加飾層と、前記加飾層の前記第2部材側に形成されて前記加飾層を補強する保護層とを有し、前記接着剤の接着成分が前記保護層に浸透して硬化された複合部材において、
前記加飾層と前記接着剤との間に、前記接着剤の硬化促進剤を含有する層を備えたことを特徴とする複合部材。
【請求項2】
透明又は半透明の第1部材と第2部材とがシアノアクリレート系の接着剤により接着されてなり、前記第1部材は、前記第2部材と接着された状態で外部から視認可能な加飾層と、前記加飾層の前記第2部材側に形成されて前記加飾層を補強する保護層とを有し、前記接着剤の接着成分が前記保護層に浸透して硬化された複合部材において、
前記保護層は前記接着剤の硬化促進剤を含有する層からなることを特徴とする接合部材。
【請求項3】
前記硬化促進剤を含有する層は、前記接着剤より広い面積を有し、該硬化促進剤を含有する層の周縁側に前記接着剤と対向しない非接着部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記第2部材の前記接着剤の配置面に窪みが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の複合部材。
【請求項5】
前記接着剤と前記硬化促進剤との間に、前記シアノアクリレート系の接着剤の硬化促進剤を含有しない非促進層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の複合部材。
【請求項6】
前記加飾層は、金属粉末を含有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の複合部材。
【請求項7】
透明又は半透明の第1部材と第2部材とがシアノアクリレート系の接着剤からなる接着剤により接着されてなり、前記第1部材は、前記第2部材と接着された状態で外部から視認可能な加飾層と、前記加飾層の前記第2部材側に形成されて前記加飾層を補強する保護層とを有し、前記接着剤の接着成分が前記保護層に浸透して硬化された複合部材を製造する方法において、
前記第1部材の前記加飾層より背面側に、前記接着剤の硬化促進剤を含有する層を形成し、
前記第2部材の表面に前記接着剤を塗布し、
前記硬化促進剤を含有する層と前記接着剤とが対応するように前記第1部材と前記第2部材とを配置して接着することを特徴とする複合部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−225350(P2010−225350A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69556(P2009−69556)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】