説明

複合金属半製品を製造するための方法

複合金属半製品を製造するための方法であって、第1の金属若しくは第1の金属合金から成る、るつぼとして形成された基体内に、第2の金属若しくは第2の金属合金から成る電極を導入し、電極を電流供給下で前記基体内で溶解させ、この際に、基体の第1の金属若しくは第1金属合金を所定の横断面にわたって溶解させ、上記両金属若しくは両金属合金が、凝固後に、上記両金属若しくは両金属合金から成るスラグのない混合区域を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合金属半製品を製造するための方法並びに半製品に関する。
【0002】
特許文献DE2355745号明細書は、複合金属部材、特に異なる特性又は組成を有する外殻部と心部とを備えたロール体を製造するための方法に関するものである。この方法によれば、まず、製造したい部材の形状を有した鋳型内に第1の液状金属を流し込む。この金属は、所望の厚さの硬化された外殻が得られるまで冷ますことができる。第1の金属の残された液状部分は導出され、同時に、第1の金属とは異なる特性及び/又は組成を有する第2の金属と入れ替えられる。この第2の金属は、部材の心部を形成するものである。この場合、この第2の金属は、鋳型の上方部分から導入される。
【0003】
特許文献DE2553402号明細書には、複合ロールを製造する方法及び装置が記載されている。この複合ロールは、高硬度と耐摩耗性の第1材料から成る外殻部と、ロールの心部を成す第2材料から成る中心部及び首部とを有している。外殻部は、所定の外径と厚みを有する中空円筒形状に予め鋳造される。鋳型装置が作られ、この場合、外殻部は、ロールの首部を形成するための鋳型区分上に置かれ、外殻部と前記鋳型区分の長手方向軸線は鉛直方向で延びている。次いで、エレクトロスラグ溶融材料から成る電極が、外殻部及び首鋳型区分の内部に装入される。この電極は、その化学的組成が、溶融後及び再凝固後に心部が第2材料から成り、電極が、外殻部及び前記鋳型区分の内部が充填されるように溶融されるように選択された材料から成っている。この先行技術では、内側の材料と外側の材料との間にスラグが形成され危険があるので、混合領域において両金属の結合は不可能である。
【0004】
特許文献WO9732112号明細書に開示された、特に蒸気タービン用のタービン軸は、回転軸線に沿って延びると共に、軸線方向に延びる最大半径R1の第1の部位と、これに隣接し軸方向に延びる最大半径R2>R1を有する第2の部位とを有している。第1の部位は、第1の温度で使用するのに適した第1の母材から成り、第2の部位は、第1の温度よりも低い第2の温度で使用するのに適した第2の母材から成り、これらの第1及び第2の母材がそれぞれ8.0〜12.5重量%のCrを含む鋼合金を含み、それらのオーステナイト化温度が本質的に同じである。中空円筒の内部で、第2の材料から成る電極が電気式スラグ溶解法(ESU法)によって溶解され、これにより上述したのと同様の問題が生じる恐れがある。
【0005】
本発明の課題は、種々様々な使用例のために、異なる金属若しくは金属合金から成る多数の種々様々な半製品を形成することができる、複合金属半製品を製造するための方法を提供することである。
【0006】
さらに、構成が簡単で、異なる金属若しくは金属合金から成る種々様々な複合金属半製品を製造するために適した、複合金属半製品を製造するための装置を提供することである。
【0007】
つまり、両金属若しくは金属合金の所定の移行領域において良好な結合部を有している複合金属半製品が提供されるのが望ましい。
【0008】
この課題は、複合金属半製品を製造するための方法であって、第1の金属若しくは第1の金属合金から成る、るつぼとして形成された基体内に、第2の金属若しくは第2の金属合金から成る電極を導入し、電極を電流供給下で前記基体内で溶解させ、この際に、基体の第1の金属若しくは第1金属合金を所定の横断面にわたって溶解させ、上記両金属若しくは両金属合金が、凝固後に、上記両金属若しくは両金属合金から成るスラグのない混合区域を形成するようにしたことにより解決される。
【0009】
本発明による方法の有利な別の構成は、方法の従属請求項に記載されている。
【0010】
上記課題はさらに、複合金属半製品を製造するための装置であって、底面を有する少なくとも1つの冷却ポットを有しており、該冷却ポットが、第1の金属若しくは第1金属合金から成る基体を収容しており、該基体は、冷却ポットの壁に対して所定の間隔を置いて配置されており、前記基体は底部部材を有しており、前記冷却ポットはさらに、前記基体の内側に装入されたVAR条件下で溶解する第2の金属若しくは第2の金属合金から成る電極と、前記基体と前記壁との間の空間に充填された冷却媒体とを収容しており、前記基体は上端部の領域で取り外し可能なフランジによって閉じられていることにより解決される。
【0011】
本発明による装置の有利な別の構成は、従属請求項に記載されている。
【0012】
この課題はさらに、第1の金属若しくは第1金属合金から成る基体と、第2の金属若しくは第2の金属合金から成り有利にはVAR条件下で溶解する電極とから成る複合金属半製品であって、上記両金属若しくは金属合金の間に、上記両金属若しくは金属合金から成る所定の横断面のスラグを有さない混合区域が形成されている複合金属半製品により解決される。
【0013】
本発明による複合金属半製品の有利な別の構成は、従属請求項に記載されている。
【0014】
冷却ポットは、有利には鋼又は鋼合金から成っている。
【0015】
るつぼとして形成される基体のための材料としては、金属、例えば第1のニッケル基合金、鉄基合金、コバルト基合金、またはチタン基合金を使用することができ、電極は、金属若しくは金属合金、例えば第2のニッケル基合金、鉄基合金、コバルト基合金、チタン基合金から成っている。その後の使用例に応じて、第1の合金と第2の合金の混合物を使用することもできる。
【0016】
本発明は上記の基合金に限定されるものではなく、むしろ、使用例に応じて、選択的に、必要に応じて異なる金属若しくは合金を使用することができる。同様に、電極よりも軟らかい又は硬い材料から成るるつぼを形成することも考えられる。当業者は、さらなる加工の形式に応じて、又は最終製品に求められる点を考慮し、適当な材料を選択することができる。
【0017】
複合金属半製品を形成する際に、使用される金属又は金属合金が、類似の熱伝導性を有していると有利である。このような前提により、使用される材料の特に内部のスラグのない結合部と均一な混合区域が得られる。
【0018】
従って、本発明による方法又は本発明による装置により、外側金属と内側金属との間の所定の横断面の領域において、両金属若しくは両金属合金から成るスラグのない混合区域を有している複合金属半製品が形成される。このような手段により、両金属若しくは金属合金の間のスラグのない内部の結合部が得られ、これによりさらなる加工、例えば鍛造を良好に行うことができる。この場合、両金属若しくは両金属合金の利点は維持される。
【0019】
本発明により製造された複合金属半製品は、次いで、適当な加工ステップ、例えば押出加工、ピルガー加工、圧延加工、鍛造、又は引き抜き加工により、線材、薄板、帯状体、又は棒状体のような製品となるように変形される。
【0020】
表1には、本発明による複合金属半製品を製造するために使用することができる、選択された幾つかの合金が記載されている。
【0021】
本発明を、図示した実施の形態につき以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】原理図として、複合金属半製品を製造するための装置を示した図である。
【0023】
例えば鋼又は鋼合金から成る冷却ポット1は、下方に向かって閉じられた底面2を有しており、この冷却ポット1の内側には、第1の金属合金、例えばニッケル基合金から成る、管状の構成部分として形成された基体3が装入されている。管状の構成部分3は、下端部の領域で底部部材4によって閉じられている。底部部材4は構成部分3に溶接されていても、構成部分3に一体成形されていても良い。構成部分3は上方領域においては取り外し可能なフランジ5によって閉じられていて、このフランジ5は構成部分3に例えばねじ結合によって(図示せず)作用結合されている。フランジ5は切欠6を有しており、この切欠6を通して、第2の金属合金、例えば別のニッケル基合金から成る電極7が導入される。構成部分3は冷却ポット1の壁8に対して規定された間隔aを置いて配置されており、その空間には、冷却媒体、例えば水が充填される。冷却媒体は下方から上方に向かって冷却ポット1を貫流する。VAR条件下で電極7が溶解された場合、電極7の材料9が下方から上方へ上昇しながら、管状の構成部分3の内側で溶解される。一方では管状の構成部分3の、他方では電極7の選択された金属合金により、管状の構成部分3の内壁10は、予め設定可能な横断面bにわたって溶解し、これにより複合金属半製品の凝固状態では、両金属合金から成るスラグのない混合区域cが生じる。
【0024】
単なる例として記載するが、るつぼ材料は選択的にインコネル617から成っていて、電極は同じ材料又は、例えば合金C−263のような別の材料から成っていて良い。
【0025】
両材料はニッケル基合金であるが、異なる材料特性を有している。既に言及したように、本発明はニッケル基合金に限定されるものではなく、むしろ、最終製品の使用例に応じて、別の金属若しくは合金を使用することができる。
【0026】
これに関しては表1を参照されたい。この表1には、混合区域cのスラグを含まない最良の形成のために、似たような熱膨張係数を有する別の材料組み合わせが記載されている。
【0027】
【表1】

【符号の説明】
【0028】
1 冷却ポット
2 底面
3 基体(るつぼ)
4 底部部材
5 フランジ
6 切欠
7 電極
8 壁
9 材料
10 基体の内壁
a) 基体3と壁8との間隔
b) 基体3の溶解横断面
c) 電極7と基体3の間の混合区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属半製品を製造するための方法であって、第1の金属若しくは第1の金属合金から成る、るつぼとして形成された基体(3)内に、第2の金属若しくは第2の金属合金から成る電極(7)を導入し、電極(7)を電流供給下で前記基体(3)内で溶解させ、この際に、基体(3)の第1の金属若しくは第1金属合金を所定の横断面(b)にわたって溶解させ、上記両金属若しくは両金属合金が、凝固後に、上記両金属若しくは両金属合金から成るスラグのない混合区域(c)を形成するようにすることを特徴とする、複合金属半製品を製造するための方法。
【請求項2】
前記基体(3)を、冷却ポット(1)の壁(8)に対して所定の間隔(a)をもって配置し、前記基体(3)と前記壁(8)との間の空間に冷却媒体を貫流させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基体(3)と前記壁(8)との間の空間を水によって冷却する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記基体(3)と前記壁(8)との間の空間に水を所定の温度及び流れ速度で下方から上方に向かって貫流させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
電極(7)をVAR条件下で前記基体(3)の内側で、スラグを有さないように溶解させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記基体(3)として中空体、特に中空円筒体を使用し、該中空体は、下端部の領域では底部部材(4)と作用結合しており、上端部の領域では取り外し可能なフランジ(5)によって閉じられている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記中空体(3)のための材料として、Ni基合金、Fe基合金、Co基合金、又はTi基合金を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
電極(7)の材料として、ニッケル基合金、鉄基合金、コバルト基合金、又はチタン基合金を使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
製造した半製品を、線材材料、薄板材料、帯状材料、又は棒状材料となるように変形させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
半製品を、押出加工、ピルガー加工、圧延加工、鍛造、又は引き抜き加工により最終的な形状となるようにする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
複合金属半製品を製造するための装置であって、底面(2)を有する少なくとも1つの冷却ポット(1)を有しており、該冷却ポットが、第1の金属若しくは第1金属合金から成る基体(3)を収容しており、該基体(3)は、冷却ポット(1)の壁(8)に対して所定の間隔(a)を置いて配置されており、前記基体(3)は底部部材(4)を有しており、前記冷却ポット(1)はさらに、前記基体(3)の内側に装入されたVAR条件下で溶解する第2の金属若しくは第2の金属合金から成る電極(7)と、前記基体(3)と前記壁(8)との間の空間に充填された冷却媒体とを収容しており、前記基体(3)は上端部の領域で取り外し可能なフランジ(5)によって閉じられていることを特徴とする、複合金属半製品を製造するための装置。
【請求項12】
前記フランジ(5)が前記基体(3)にねじ固定により結合されている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
冷却媒体が水から成っており、冷却ポット(1)を下方から上方に向かって貫流する、請求項11又は12記載の装置。
【請求項14】
第1の金属若しくは第1の金属合金から成る基体(3)と、第2の金属若しくは第2の金属合金から成りVAR条件下で溶解する電極(7)とから成る複合金属半製品であって、上記両金属若しくは両金属合金の間に、上記両金属若しくは両金属合金から成る所定の横断面のスラグを有さない混合区域(c)が形成されていることを特徴とする、複合金属半製品。
【請求項15】
中空体として形成された基体(3)が、電極(7)とは異なる金属若しくは金属合金から成っている、請求項14記載の半製品。
【請求項16】
前記中空体(3)が、第1のNi基合金、Fe基合金、Co基合金、又はTi基合金から成っている、請求項14又は15記載の半製品。
【請求項17】
電極(7)が、第2のニッケル基合金、鉄基合金、コバルト基合金、又はチタン基合金から成っている、請求項14から16までのいずれか1項記載の半製品。
【請求項18】
前記中空体(3)と電極(7)とが、ほぼ同様の熱膨張係数を有した合金から成っている、請求項14から17までのいずれか1項記載の半製品。

【図1】
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【公表番号】特表2012−504700(P2012−504700A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529441(P2011−529441)
【出願日】平成21年7月11日(2009.7.11)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000973
【国際公開番号】WO2010/037355
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(399009918)ティッセンクルップ ファオ デー エム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (20)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp VDM GmbH
【住所又は居所原語表記】Plettenberger Strasse 2 D−58791 Werdohl Germany
【Fターム(参考)】