説明

複合高分子の製造方法および複合高分子組成物

【課題】 既存の高分子製造設備で大幅な改良を施すことなく、汎用プラスチックの耐熱性を向上した複合高分子の製造方法および該複合高分子を用いた樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 10以上の炭素で構成される環状化合物と少なくとも一種の単量体の共存下で、前記単量体を重合することで、前記環状化合物の内側空洞内に重合体の分子鎖が貫通した構造の複合高分子の製造方法。前記環状化合物の内側空洞の直径は0.12〜0.45nmの範囲であることが好ましく、前記環状化合物は、シクロデキストリン又はクラウンエーテルが好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状化合物の内側空洞内を重合体の分子鎖が貫通した構造を有する複合高分子の製造方法および該複合高分子を用いた複合高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用プラスチックスは軽量性、成形性、低価格および優れた生産性の観点から、日常生活用品および産業用品に幅広い用途を有している。しかし汎用プラスチックの一般的な欠点として耐熱性が低いことが挙げられる。汎用プラスチックスが、たとえば200℃〜250℃において耐熱性を有しておれば、自動車などの産業製品あるいは日常製品の用途はかなり広がる。しかし汎用プラスチックスは、耐熱性の高い結晶性高分子であっても、耐熱温度は約200℃以下である。
【0003】
耐熱温度が200℃以上のプラスチックスとしては、たとえば液晶ポリマーなどのスーパーエンジニアリングプラスチックスがあるが、これは成形性が悪く、価格も非常に高価なため用途は限定されたものとなる。また耐熱温度の高いプラスチックスとしてフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂もあるが、射出成形、押し出し成形ができないため生産性が悪く、大量生産には不適である。
【0004】
また、特許文献1には耐熱性を向上させるため、芳香族ビニル単量体と不飽和ジカルボン酸無水物の構造を特定範囲に規定した重合体を得る技術が開示されている。しかしこの技術では、材料の組み合わせが限定されるため汎用性が乏しく、出来上がった樹脂の物性の自由度が小さく、大量生産の実用化にはいたっていない。
【特許文献1】特開2005−54097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既存の高分子製造設備で大幅な改良を施すことなく、汎用プラスチックの耐熱性を向上した複合高分子の製造方法および該複合高分子を用いた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、10以上の炭素で構成される環状化合物と少なくとも一種の単量体の共存下で、前記単量体を重合することで、前記環状化合物の内側空洞内に重合体の分子鎖が貫通した構造の複合高分子の製造方法に関する。前記環状化合物の内側空洞の直径は0.12〜0.95nmの範囲であることが好ましい。前記環状化合物は、シクロデキストリンまたはクラウンエーテルが好適に使用される。
【0007】
そして複合高分子中の環状化合物は、重合体の構成単位に対し1〜100モル%の範囲が好ましい。また前記重合体は熱可塑性樹脂が使用できる。本発明は前記複合高分子を熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーまたはゴムと混合してなる複合高分子組成物である。
【発明の効果】
【0008】
10以上の炭素で構成される環状化合物は、その環状分子鎖の内側に形成される空洞は通常、内径が0.12nm〜0.95nmの範囲となる。重合体の主鎖または側鎖の一部が環状化合物の空洞を貫通した構造の複合高分子は重合体の主鎖および/または側鎖はかさの高い環状化合物によって束縛されるため分子運動は制限される。その結果、複合高分子の流動性は制限され耐熱性が向上する。そして該複合高分子を混合することで耐熱性の優れた組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、10以上の炭素で構成される環状化合物と少なくとも一種の単量体の共存下で、前記単量体を重合することで、前記環状化合物の内側空洞内を重合体の分子鎖が貫通した構造を有する複合高分子の製造方法である。
【0010】
10以上の炭素を含む環状化合物は、その分子鎖の内側に形成される空洞は、一般に内径が0.12nm〜0.95nmの範囲となる。かかる環状化合物の存在下で単量体を付加重合あるいは縮重合すれば、生成した重合体の一部はその主鎖または側鎖が環状化合物の空洞を貫通あるいは環状化合物の空洞と重合体に形成される分子空洞が契合した構造の複合高分子が生成する。かかる複合高分子は重合体の主鎖およびまたは側鎖はかさの高い環状化合物によって束縛され分子運動は制限される。その結果、複合高分子の流動性は制限され耐熱性が向上する。
【0011】
かかる複合高分子の構造の概念図を、反応式に基づいて化学式(1)に示している。ここでは重合体としてポリイミド、環状化合物として18−クラウン−6−エーテルを用いたものを例示している。化学式(1)において、18−クラウン−6−エーテル(環状化合物)の存在下で、ジカルボン酸とジアミンを縮重合させることでポリイミド樹脂が生成するが、ポリイミド樹脂の主鎖は18−クラウン−6−エーテル(環状化合物)の分子鎖で形成される空洞を貫通した構造となる。化学式(1)においてポリアミド酸およびポリイミドを円状の破線で示したものが18−クラウン−6−エーテルである。
【0012】
【化1】

【0013】
<環状化合物>
前記環状化合物は10以上の炭素を含む化合物で構成され、その分子鎖で形成される空洞の内径は0.12nm〜0.95nmの範囲が好ましい。前記空洞の内径が0.12nm未満の場合、重合体が環状化合物の空洞を貫通する効率が低下し、一方0.95nmを超えると環状化合物による重合体の束縛力が低下することになり耐熱性の向上は必ずしも十分ではない。より好ましくは、その分子鎖で形成される空洞の内径は0.12nm〜0.45nmの範囲である。本発明において環状化合物はその分子鎖の内側で空洞を形成するものであればよい。好ましくはシクロデキストリンまたはクラウンエーテルである。
【0014】
シクロデキストリンは、少なくとも6個のグルコピラノース単位がα結合によって結合されている環状オリゴサッカライドである。グルコース残基12個までのシクロデキストリンが公知であるが、6、7および8個の残基を有する最も一般的な同族体3種(αシクロデキストリン、βシクロデキストリンおよびγシクロデキストリン)が一般に採用できる。
【0015】
シクロデキストリンは選択的な酵素合成法によって製造され、ドーナツの環の形に配列された6、7または8個のグルコースモノマーからなり、それぞれα、β、またはγシクロデキストリンがある。特定のグルコースモノマーを組み合わせることによって、シクロデキストリンに、特定の容積の空洞空部分を有する剛直で円錐台状の分子構造を与えることができる。分子鎖の空洞は親油性で、外部に比較すると炭化水素原料を引きつけやすい。そのため重合体の一部はシクロデキストリンの内側空洞を貫通して複合体を形成する。
【0016】
該オリゴサッカライド環は円錐台のようなトーラスを形成していて、それぞれのグルコース残基の1級ヒドロキシル基がトーラスの狭い側の端に並んでいる。2級グルコピラノースヒドロキシル基は広い側の端に位置している。シクロデキストリン分子と、その誘導体は、次の化学式(2)で表わすことができる。(環の炭素の番号は一般的なものである)、ここで空になっている結合は環状分子のためのものである
【0017】
【化2】

【0018】
ここでRおよびRは、1級ヒドロキシまたは2級ヒドロキシルである。
なお官能基の修飾は、目的とする複合高分子の用途に基づく要求特性に応じて任意に調整し得る。
【0019】
ここでシクロデキストリンの一般的な特性を以下に示す。
CDの性質 α−CD、β−CD、γ−CD
重合度(n):6、7、8
分子サイズ(nm)
内径:0.57、0.78、0.95
外径:1.37、1.53、1.69
高さ:0.7、0.7、0.7
次に、本発明では環状化合物としてクラウンエーテルが使用できる。クラウンエーテルとしては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、21−クラウン−7、ジベンゾ−14−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−21−クラウン−7、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−60−クラウン−20、トリベンゾ−18−クラウン−6、テトラベンゾ−24−クラウン−8、2,4−ジケト(13−クラウン−4)、2,4−ジケト(16−クラウン−5)、2,4−ジケト(19−クラウン−6)、2,4−ジオキソ(18−クラウン−6)、サイクラム、12−チアクラウン−4、15−チアクラウン−5、18−チアクラウン−6、ベンゾ−12−アザクラウン−4、ベンゾ−15−アザクラウン−5、ベンゾ−18−アザクラウン−6、ジアザ−12−クラウン−4、ジアザ−15−クラウン−5、ジアザ−18−クラウン−6、シクロヘキシル−12−クラウン−4、シクロヘキシル−15−クラウン−5、シクロヘキシル−18−クラウン−6、シクロヘキシル−21−クラウン−7、N,N’−ジベンジル−4,13−ジアザ−18−クラウン−6などが挙げられ、クラウンエーテルを含むものであれば、これらの例示したものに限られるものではない。
【0020】
複合高分子において前記環状化合物は、重合体の構成単位に対して1〜100モル%の範囲で導入される。より好ましくは、5〜30モル%の範囲で導入される。導入量が1モル%未満の場合は環状化合物による複合効果が低く耐熱性の向上は期待し難い。一方、100モル%を越えると環状化合物による複合高分子の特性への影響が大きくなり好ましくない特性が生じる。
【0021】
なお前記環状化合物は、溶媒、単量体との相溶性を高めるため、あるいは単量体の重合反応性を調整するため、官能基で修飾することができる。また環状化合物は1種類、または2種類以上を用いることも可能である。また環状化合物のすべてが複合高分子を構成する必要はなく、一部は複合高分子との混合物として存在してもよいことは言うまでもない。
【0022】
<重合体>
本発明に用いられる重合体は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂のいずれも適用できるが、成形性、生産性を重要視する場合は熱可塑性樹脂が好適に採用される。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂および熱可塑性ポリイミド樹脂などの結晶性樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂およびスチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂などの非結晶性樹脂が挙げられる。
【0024】
そして重合体が非結晶性樹脂の場合、ガラス転移温度は100℃〜220℃の範囲のものが好適に使用される。ガラス転移温度が100℃未満の場合は、前記複合高分子の形成による耐熱温度は、その分だけ低くなる。一方、220℃を越える場合は、既に耐熱性が優れているため耐熱性の改善の観点からは効果的とはいえず、またスーパーエンジニアリングプラスチックスで代替可能となる。なおガラス転移温度の低い樹脂の有する特性を活かしながら、耐熱性を改善する場合はガラス転移温度の100℃未満の樹脂を採用しうることは当然である。
【0025】
上記観点から、熱可塑性樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。なおこれらの樹脂は、最も広い概念で理解すべきであり、たとえば
ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリ(イミド・イソインドロキナゾリンジオンイミド)樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂,ポリエステルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂などが挙げられる。
【0026】
ここでポリイミド樹脂を用いる場合の具体例を示す。ポリイミド系樹脂の前駆体溶液は、N−メチル−2−ピロリドン,N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応により得られる。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物は、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4, 4’−テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物などが例示できる。
【0028】
一方、ジアミンは、4−(1H,1H,11H−エイコサフルオロウンデカノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パ−フルオロ−1−ブタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−ヘプタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−(1H,1H−パーフルオロ−1−オクタノキシ)−1,3−ジアミノベンゼン、4−ペンタフルオロフェノキシ−1,3−ジアミノベンゼン、4−(2,3,5,6−テトラフルオロフェノキシ)−1,3−ジアミノベンゼンなどが例示できる。
【0029】
本発明において使用される熱硬化性樹脂は、たとえばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂および熱硬化性ポリイミド樹脂がある。
【0030】
<複合高分子の製造方法>
複合高分子の製造方法は、前記環状化合物を単量体と共存させながら重合させることで得ることができる。この場合、2種類の単量体から縮重合で重合体を得る方法のほか、少なくとも1種類の単量体を付加重合で重合体を得る方法がある。そして付加重合はラジカル重合、アニオン重合またはカチオン重合が採用でき、均質溶液重合、不均質溶液重合、乳化重合、塊重合が用いられる。そして重合触媒、重合開始剤、連鎖移動剤、重合度調整剤などは公知のものが適宜使用できる。
【0031】
環状化合物の仕込み量は、単量体の仕込み量(モル数)の0.01〜10倍が用いられる。仕込み量が0.01倍よりも少ない場合は、耐熱性を向上できる程度に環状化合物を重合体に導入することはできない。一方、仕込み量が10倍を超えると、単量体の重合反応速度を低下し、また好ましくない副反応が生じる。環状化合物の仕込み量は、より好ましくは、単量体の仕込み量(モル数)の0.05〜1倍である。
【0032】
<複合高分子組成物>
本発明の複合高分子は、耐熱性などの特性を改善するため、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、プラスチックまたはゴム成分と混合した組成物として用いることができる。さらに2種類以上の複合高分子を混合して使用するとも可能である。この場合、一般的が配合剤、たとえば酸化防止剤、カーボン、シリカなどの各種充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などをその用途、要求特性に応じて用いることができる。
【0033】
さらに、本発明の複合高分子を繊維状に成形し、熱可塑性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどと混合することで、その組成物は耐熱性の優れた複合材料が得られる。その用途としては、たとえばタイヤのコード材が挙げられ、複合材料を形成する樹脂としては、たとえば、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂がある。
【0034】
さらに本発明の複合高分子をタイヤのトレッドゴムに混合することで、耐破壊特性を改善できる。ここでゴムとして、たとえば炭素数2〜8の直鎖、分岐、環状の少なくとも1つの不飽和性結合基を有する、アルケン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、シラノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体より生成されるゴムが挙げられる。ゴム組成物の用途によっては、単量体の水素原子の一部または全部を、ハロゲン基などで置換して用いることができる。
【0035】
これらのゴムとして、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0036】
本発明の複合高分子と熱可塑性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどとの混合は、バンバリーミキサー、一軸または二軸押出機、プラストミルなどの機械的混合法のほか、ゴムなどを溶媒に溶解させた後、その中に複合高分子を分散させ、溶媒をキャストする方法が採用できる。また本発明の複合高分子を熱可塑性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどと混練中に反応させることもできる。
【実施例】
【0037】
実施例1
4−4’−アミノジフェニルエーテル0.60g(3.00×10-3モル)、ピロメリット酸2無水化物0.65g(3.00×10-3モル)、18−クラウン−60.79g(3.00×10-3モル)を、N−メチルピロリドン溶液中に混合してアルゴン雰囲気中において、温度0℃で4時間処理した。得られたポリアミド酸をNメチルピロリドン溶媒で洗浄し、未反応の単量体および18−クラウン−6を除去した。
【0038】
前記ポリアミド酸を100℃で1時間フィルム状にキャストし、200℃で4時間、2〜3mmHgの減圧下で熱処理をしてポリイミド樹脂を生成した。
【0039】
(1) 複合高分子の構造の同定
1H−核磁気共鳴装置を用いて、洗浄したポリイミド樹脂に18−クラウン−6(環状化合物)が導入されている割合を測定した。18−クラウン−6は、3.54ppmにピークがあり、このピークの存在からその導入が確認され、さらにピーク面積の割合からその導入割合を計算することができる。
【0040】
上記ポリイミド樹脂中の18−クラウン−6の導入量は重合体構成単位に対して、5.0モル%であった。
【0041】
(2) 耐熱性の測定
レオロジー社の動的粘弾性装置DVE−V4を用いて、周波数10Hz、開始温度0℃、ステップ温度が5℃、終了温度が400℃、昇温速度3℃/minの条件下で複合高分子の耐熱性(E’、E’’、tanδ)を測定した。その結果を示す図1において、本発明の複合高分子は約250℃までは1×108Paの弾性率を維持しており、明らかなガラス転移温度は観察されなかった。
【0042】
比較例1
18−クラウン−6を用いないで、実施例1と同じ条件でポリイミド樹脂を得た。実施例1と同様に動的粘弾性装置で耐熱性を測定した。その結果を図2に示す。図2から約150℃にガラス転移温度が現れ、それ以上の温度では弾性率は急激に低下した。
【0043】
図1、図2の対比から、実施例1の複合高分子は、環状化合物の導入されていない比較例1に比べて耐熱性が大幅に向上していることが認められる。
【0044】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上述の如く、本発明の複合高分子は汎用プラスチックスと環状化合物の複合体を形成したため、汎用プラスチックスの軽量性、成形性、低価格および優れた生産性を維持し、耐熱性を向上したものである。したがって、従来の日常生活用品および産業用品に幅広い用途を一層拡張することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】複合高分子の動的粘弾性特性の測定結果を示す図である。
【図2】ポリイミド樹脂の動的粘弾性特性の測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10以上の炭素で構成される環状化合物と少なくとも一種の単量体の共存下で該単量体を重合し、前記環状化合物の内側空洞内を重合体の分子鎖が貫通した構造の複合高分子の製造方法。
【請求項2】
環状化合物の内側空洞の直径は0.12nm〜0.95nmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
環状化合物がシクロデキストリンまたはクラウンエーテルであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
複合高分子中の環状化合物は、重合体の構成単位に対し1〜100モル%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
重合体は熱可塑性樹脂である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法で製造された複合高分子を熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマまたはゴムと混合してなる複合高分子組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−46013(P2007−46013A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234512(P2005−234512)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】