説明

複層ガラス

【課題】一次封着シールの変形および劣化を抑制すると共に、十分な耐久性を確保することができる。
【解決手段】対向する2枚の板ガラス2、2と、2枚の板ガラス2、2間に所定の間隔が形成されるように板ガラス2、2の周縁部に配されたスペーサ3と、板ガラス2、2とスペーサ3との間にそれぞれ設けられた一次封着シール4と、スペーサ3および一次封着シール4の外側に一次封着シール4設けられた二次封着シール5と、二次封着シール5内に設けられた複数の補強部材6とを備える。2枚の板ガラス2間には、乾燥空気が封入された空気層7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の板ガラスが周縁部に設けられたスペーサを介して一定間隔の空気層を形成するように配設され、空気層に乾燥空気が封入された複層ガラスが使用されている。複層ガラスは、断熱性が高く、ガラス面の結露を防止することができる。
近年では、特殊金属膜がコーティングされ、低放射であるLow−Eガラスを使用したLow−E複層ガラスが多用されており、熱放射を抑制して断熱性および遮熱性を高めている。
このような複層ガラスは、スペーサとガラス板との間に一次封着シールが配されて、スペーサおよび一次封着シールの外側に二次封着シールが配されており、これらの封着部によって空気層の気密が確保されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−21958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、複層ガラスは、住宅に多用されていて主に小さいサイズであったが、昨今の省エネルギー、結露の防止、居住性の向上などの面から、ビルなどの住宅以外の建物にも使用されることが急増し、大きいサイズのものが設置されることが多くなった。大きいサイズの複層ガラスを設置する際には、サッシ構法が一般的であるが、リブガラス構法や構造ガスケット支持構法なども採用されている。
【0005】
そして、複層ガラスのサイズが大きくなることで、強風などによって1枚の複層ガラスに作用する荷重が大きくなり、封着部に作用する荷重も大きくなる。
更に、リブガラス構法では、シーリング材などの接着部材が荷重を負担する従来のサッシ構法と比べて、封着部へ作用する荷重が大きくなる。
また、構造ガスケット支持構法では、ガスケットのグリップ力(シールリップ力)によって封着部に大きな荷重が常時作用している。
【0006】
ここで、封着部に作用する荷重と封着部の変化を確認するために、複層ガラスに圧力試験、クリープ試験および定荷重繰返し試験を行った。
封着部に大きな荷重が作用すると、封着部の一次封着シールおよび二次封着シールは共に変形し、一次封着シールは、空気層側にはみ出すように塑性変形し元の形状に戻らなかった。これに対し、二次封着シールは、作用した荷重により弾性変形し除荷後には復元した。そして、二次封着シールが復元すると、一次封着シールを引っ張り、これにより一次封着シールは空気を巻き込んで劣化してしまった。
また、空気層内の乾燥空気の膨張収縮挙動によってもガラスが面外方向に変形するので、同様に一次封着シールが劣化してしまった。
【0007】
このように、一次封着シールが劣化すると、複層ガラスの封着状態が解けて内部に結露が生じてしまい、特に、Low−Eガラスを使用している場合には特殊金属膜が腐食してしまい、複層ガラスが使用できない状態となってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、一次封着シールの変形を抑えると共に、十分な耐久性を確保することができる複層ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る複層ガラスは、複数の板ガラスが縁周部に配されたスペーサを介して隔置され、前記板ガラス間に空気層が形成された複層ガラスにおいて、前記板ガラスと前記スペーサとの間に配設された一次封着シールと、前記スペーサおよび一次封着シールの外側に配設された二次封着シールと、前記二次封着シールの変形を抑制する補強部材とを備えることを特徴とする。
本発明では、二次封着シールの変形を抑制する補強部材を備えることにより、複層ガラスに荷重が作用した際に、二次封着シールの変形が抑制され、一次封着シールの変形を抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強部材は、前記二次封着シールの内部に配設されていることが好ましい。
本発明では、補強部材は、前記二次封着シールの内部に配設されていることにより、二次封着シールの変形を効率的に抑制できる。
【0011】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強部材は、前記板ガラスの縁周部に沿う方向に延在し、前記板ガラスの縁周部に直交する面における断面形状が長方形状またはC字型状の部材としてもよい。
本発明では、補強部材は、板ガラスの縁周部に沿う方向に延在し、板ガラスの縁周部に直交する面における断面形状が長方形状またはC字型状の部材であることにより、複層ガラスに荷重が作用した際に、二次封着シールの変形が大幅に抑制され、一次封着シールの変形を抑えることができる。
【0012】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強部材は、複数の板状の部材であって、前記二次封着シールと交互に積層されていてもよい。
本発明では、補強部材は、複数の板状の部材であって、二次封着シールと交互に積層されていることにより、複層ガラスに荷重が作用した際に、二次封着シールの変形が防止され、一次封着シールの変形を抑えることができる。
【0013】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強部材は、前記板ガラスの側部に配設された側板と連結していてもよい。
本発明では、補強部材は、板ガラスの側部に配設された側板と連結していることにより、複層ガラスに荷重が作用した際に、側板が補強部材の変位を抑制できるので、二次封着シールの変形が効率的に防止され、一次封着シールの変形を抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強材は、前記板ガラスの縁周部に沿って互いに間隔をあけて複数配設されていてもよい。
本発明では、補強材は、前記板ガラスの縁周部に沿って互いに間隔をあけて複数配設されていることにより、複層ガラスに荷重が作用した際に、二次封着シールの変形が防止され、一次封着シールの変形を抑えることができる。
また、二次封着シール全体に補強部材が配設されている場合と比べてコストを下げることができる。
【0015】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強材は、前記複数の板ガラスの側部の全長にわたって配設されると共に、前記二次封着シールおよび前記板ガラス小口に接着されていてよい。
本発明では、補強材は、複数の板ガラスの側部の全長にわたって配設されると共に、二次封着シールおよび前記板ガラス小口に接着されていることにより、複層ガラスに荷重が作用した際の二次封着シールの変形を抑制できると共に、板ガラス間への湿気の侵入を防止することができる。これにより、長寿命な複層ガラスとすることができる。
【0016】
また、本発明に係る複層ガラスでは、前記補強部材は、アルミニウム合金で形成されていてもよい。
本発明では、補強部材はアルミニウム合金で形成されていることにより、二次封着シールとの接着耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一次封着シールの変形を抑制できることにより、一次封着シールに空気が巻き込まれることによる一次封着シールの劣化を防止できるので、封着部の気密が常に確保され、複層ガラスを長期にわたって安定した状態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)、(b)は本発明の第一の実施の形態による複層ガラスの一例を示す図で、(a)は(b)のA−A線断面図、(b)は正面図である。
【図2】第一の実施の形態による複層ガラスの変形例を示す図である。
【図3】第二の実施の形態による複層ガラスの一例を示す図である。
【図4】第三の実施の形態による複層ガラスの一例を示す図である。
【図5】(a)は第四の実施の形態による複層ガラスの一例を示す図、(b)は第四の実施の形態による複層ガラスの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第一の実施の形態による複層ガラスについて、図1および図2に基づいて説明する。
図1(a)、(b)に示すように、第一の実施の形態による複層ガラス1は、対向する2枚の板ガラス2,2と、2枚の板ガラス2、2間に所定の間隔が形成されるように板ガラス2、2の周縁部に配されたスペーサ3と、板ガラス2,2とスペーサ3との間にそれぞれ設けられた一次封着シール4と、スペーサ3および一次封着シール4の外側に設けられた二次封着シール5と、二次封着シール5内に設けられた複数の補強部材6とから概略構成される。
2枚の板ガラス2間には、乾燥空気が封入された空気層7が形成されている。
【0020】
板ガラス2は、通常のフロートガラスや、通常のフロートガラスに特殊金属膜がコーティングされたLow−Eガラスなどで、矩形板状に形成されている。
スペーサ3は、内部に乾燥剤(不図示)が収容されている。そして、この乾燥剤が空気層7内の空気と接触できるように、スペーサ3には空気層7側のみに通気孔(不図示)が形成されている。スペーサ3は、金属によって形成されている。 一次封着シール4は、接着性の高いブチルゴムなどで形成されていて、板ガラス2とスペーサ3とを接着して密封している。
二次封着シール5は、シリコーンゴムなどで形成されていて、2枚の板ガラス2,2、スペーサ3および一次封着シール4と接着されている。一次封着シール4および二次封着シール5は、空気層7を密閉している。
図1(b)に示すように、スペーサ3、一次封着シール4および二次封着シール5は、板ガラス2の周縁部に沿って四角形を描くように設置されている。
【0021】
図1(b)に示すように、板ガラス2の周縁部に沿って四角形を描くように設置された二次封着シール5の各角部5aと、各辺部5bの中間部の内部にそれぞれ補強部材6が設置されている。補強部材6は、二次封着シール5に部分的に設置されている。図中では、補強部材6の設置位置を斜線で示している。
補強部材6の数量と配置は、複層ガラス1の形状、寸法の他、複層ガラス1に作用する風圧によって封着部に作用する荷重(線荷重)の大きさによって決定される。
補強材部6は、板ガラス2の周縁部に沿って延在する所定の長さの部材で、長さ方向に直交する面における断面形状が図1(a)に示すようなC字型状または、図2に示すような長方形状などに形成されている。
補強部材6は、二次封着シール5との接着耐久性に優れるアルミニウム合金板で形成されている。
なお、補強部材6は、アルミニウム合金以外の金属や硬質樹脂、ガラスなどで形成されていてもよい。
【0022】
次に、上述した複層ガラス1の作用について図面を用いて説明する。
第一の実施の形態による複層ガラス1に風圧力などの荷重が作用すると、一次封着シール4および二次封着シール5の封着部にも荷重が作用する。
このとき、補強部材6が設置されている部分の二次封着シール5は、変形が抑えられ、これに伴いこの二次封着シール5の付近の一次封着シール4の変形が押さえられる。そして、補強部材6は、二次封着シール5に部分的に複数設置されているので、一次封着シール4および二次封着シール5の変形を全体的に抑えることができる。
そして、一次封着シール4が空気層7側にはみ出して空気を巻き込むことがないので、一次封着シール4の劣化を防ぐことができる。
また、複層ガラス1をリブガラス構法や構造ガスケット構法に採用し、封着部にサッシ構法と比べて大きな荷重が作用する場合や、温度変化による空気層7の乾燥空気の膨張収縮挙動が生じた場合にも、二次封着シール5に補強部材6が部分的に複数設置されていることで、一次封着シール4および二次封着シール5の変形を同様に抑制し、一次封着シール4の劣化を防ぐことができる。
【0023】
第一の実施の形態による複層ガラス1によれば、一次封着シール4の劣化を防ぐことができるので、気密性が長期にわたって確保され、長期にわたって安定した状態で使用することができる効果を奏する。
【0024】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0025】
図3に示すように、第二の実施の形態による複層ガラス21では、第一の実施の形態と同様に補強部材26が二次封着シール5内に部分的に設置されている。本実施の形態では、補強部材26は、面方向を板ガラス2の面方向と合わせた複数の薄板26aであり、複数の薄板26aは、二次封着シール5と同じ材質で薄板状に形成された複数の薄板状二次封着シール25と交互に積層されている。
第二の実施の形態による複層ガラス21では、二次封着シール5内に部分的に補強部材26が設置されているので、第一の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0026】
図4に示すように、第三の実施の形態による複層ガラス31では、第一の実施の形態と同様に補強部材36が二次封着シール5内に部分的に設置されている。本実施の形態では、補強部材36は、その面方向を板ガラス2の面方向と合わせた2枚の板部材36aであり、2枚の板部材は互いに間隔をあけて設置されている。2枚の板部材36a間には二次封着シール5が配されている。
また、本実施の形態では、板ガラス2、2の側方に、板ガラス2と直交する向きに配設された側板38が設けられていて、側板38は、2枚の板部材36aの端部と連結している。側板38は、補強部材36と同等の材料で形成されている。
連結された補強部材36および側板38は、二次封着シール5に直交する面の断面形状が略π型に形成されている。
第三の実施の形態による複層ガラス31では、二次封着シール5内に部分的に補強部材36および側板38が設置されているので、第一の実施の形態と同様の効果を奏する。
また、側板38によって補強部材36の変位が抑制されるので、二次封着シール5の変形が抑制され、一次封着シール4の変形と劣化を防ぐことができる。
【0027】
図5(a)、(b)に示すように、第四の実施の形態による複層ガラス41では、2枚の板ガラス2、2の小口(側部)に全長にわたってアルミニウム合金板で形成された補強部材46が配設されている。補強部材46は、接着剤48などで二次封着シール5および板ガラス2の小口と接着されている。接着剤48には、例えば、二次封着シール5と同材料のものなどを使用する。補強部材46は、図5(a)に示すような板状の部材でもよく、図5(b)に示すような端部が板ガラス2側に折り返された断面形状が略C字型の部材でもよい。
第四の実施の形態による複層ガラス41では、2枚の板ガラス2、2の小口に全長にわたって補強部材46が配設されていることにより、2枚の板ガラス2、2の連結が補強されるため、複層ガラス41に作用する荷重による二次封着シール5の変形を抑制することができる。
更に、板ガラス2、2内への湿気の侵入を確実に防止することができ、複層ガラス41の耐久性を向上させ、耐用年数を大きく延ばすことが可能となる。
【0028】
以上、本発明による複層ガラスの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、補強部材6、26、36は、二次封着シール5の各辺部5bの中央部に配設されているが、各辺部5bに互いに間隔をあけて複数挿入されてもよい。また、補強部材6、26、36は、間隔をあけずに、二次封着シール5の各角部5aおよび各辺部5b全長にわたって連続して挿入されてもよい。
また、上記の実施の形態では、複層ガラス1は、矩形状に形成されているが、矩形以外の形状の複層ガラスとしてもよい。
また、上記の実施の形態では、複層ガラス1は、2枚の板ガラス2、2を備えているが、3枚以上の板ガラス2と、それぞれ対向する板ガラス2間に形成された複数の空気層7を備える構造としてもよい。
また、上記の第三の実施の形態では、補強部材36の2枚の板部材36aが二次封着シール5に挿入されて、2枚の板部材36aが側板38と連結しているが、2枚でなく1枚や3枚以上の板部材36aとしてもよい。また、補強部材36を板部材36aに代わって棒状の部材とし、この棒状の部材と側板38とが連結された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1、21、31 複層ガラス
2 板ガラス
3 スペーサ
4 一次封着シール
5 二次封着シール
6、26、36 補強部材
7 空気層
38 側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板ガラスが縁周部に配されたスペーサを介して隔置され、前記板ガラス間に空気層が形成された複層ガラスにおいて、
前記板ガラスと前記スペーサとの間に配設された一次封着シールと、
前記スペーサおよび一次封着シールの外側に配設された二次封着シールと、
前記二次封着シールの変形を抑制する補強部材とを備えることを特徴とする複層ガラス。
【請求項2】
前記補強部材は、前記二次封着シールの内部に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス。
【請求項3】
前記補強部材は、前記板ガラスの縁周部に沿う方向に延在し、前記板ガラスの縁周部に直交する面における断面形状が長方形状またはC字型状の部材であることを特徴とする請求項2に記載の複層ガラス。
【請求項4】
前記補強部材は、複数の板状の部材であって、前記二次封着シールと交互に積層されていることを特徴とする請求項2に記載の複層ガラス。
【請求項5】
前記補強部材は、前記板ガラスの側部に配設された側板と連結していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項6】
前記補強材は、前記板ガラスの縁周部に沿って互いに間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複層ガラス。
【請求項7】
前記補強材は、前記複数の板ガラスの側部の全長にわたって配設されると共に、前記二次封着シールおよび前記板ガラス小口に接着されていることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラス。
【請求項8】
前記補強部材は、アルミニウム合金で形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複層ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241114(P2011−241114A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114197(P2010−114197)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】