説明

複数のデジタル権利管理のためのコンテンツ配信

【課題】複数のデジタル権利管理(DRM)方式の使用を可能にする。
【解決手段】コンテンツの識別されたセグメントを複写し(610)、次に、第1のDRMに関連した第1の暗号化方式を用いて、コンテンツの識別されたセグメントを暗号化して、第1の暗号化セグメントを形成する。第2のDRMに関連した第2の暗号化方式を用いて、複写セグメントを暗号化(614)して、第2の暗号化セグメントを形成する。第1の及び第2の暗号化セグメントコンテンツを指し示すポインタのセットを生成する(618)。次に、コンテンツの第1及び第2の暗号化セグメントを含むファイルを生成する(622)。次に、選択的暗号化複数のDRM使用可能ファイルを生成するために、DRM権利データとともに、コンテンツの第1及び第2の暗号化セグメント、ポインタ、及び暗号化されていないコンテンツを含むファイルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、キャンディローア(Candelore)等によって2002年10月18日に出願された米国特許出願第10/273,905号、発明の名称「ビデオスライス及びアクティブ領域に基づく2つの部分的暗号化(Video Slice and Active Region Based Dual Partial Encryption)」、キャンディローア等によって2002年10月18日に出願された米国特許出願第10/273,903号、発明の名称「スターパターン部分的暗号化(Star Pattern Partial Encryption)」、キャンディローア等によって2002年10月18日に出願された米国特許出願第10/274,084号、発明の名称「スライスマスク及びモートパターン部分的暗号化(Slice Mask and Moat Pattern Partial Encryption)」、及びキャンディローア等によって2002年10月18日に出願された米国特許出願第10/274,019号、発明の名称「ビデオ場面変化検出(Video Scene Change Detection)」に関連しており、これらの米国特許出願は、引用することにより、本願に援用される。
【0002】
また、本出願は、キャンディローア等によって2002年9月9日に出願された米国特許仮出願第60/409,675号「コンテンツ置換のための汎用PID再マッピング(Generic PID Remapping for Content Replacement)」にも関連し、その優先権の利益を主張する。この仮出願も、引用することにより、本願に援用される。
【0003】
[著作権表示]
本出願の明細書で開示する一部は、著作権保護の対象となる内容を含んでいる。特許文書又は特許開示としての形で公開されているので、著作権者は、特許商標局の特許ファイル又は記録としての、特許文書又は特許開示の複製に対しては異議はないが、そうでない場合は、いかなるものであれ全ての著作権の権利を留保する。
【0004】
本発明は、一般的にはデジタル権利管理の分野に関する。より詳細には、本発明は、複数のデジタル権利管理シナリオ(multiple digital rights management scenarios)を可能にするデジタルビデオの複数の暗号化に特に有用な複数の暗号化方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0005】
音楽及び映画のようなオーディオ及びビデオコンテンツの従来の配信において、著作物に対する権利は、著作物を含む物理媒体の所有者によって管理される。物理媒体の所有者は、未許可の使用を一応防いでいる。このような従来の「パッケージメディア(packaged media)」では、著作権侵害が過去も現在も蔓延しているが、この問題は、コンテンツのデジタル配信環境においては劇的に増大する。コンテンツの所有者は、全体としてデジタル権利管理(digital rights management:以下、DRMという。)と呼ばれるこのようなコンテンツの保護に役立つ様々な方法を考案している。DRMは、コンテンツを保護するために採用されている多数の暗号化方式を含むだけではなく、創作されたコンテンツの使用を許可し、さらには、コンテンツの権利を監視及び追跡するための様々な処理も含む。
【0006】
幾つかの形式のDRMが現在市場に出回っている。おそらく、最も顕著なDRMは、マイクロソフト社のWindows(商標)オペレーティングシステムのメディアプレーヤ(Media Player)の一部を形成しており、「相互的(Reciprocal)」と呼ばれている。別の広く使用されているDRM方式は、リアルネットワーク社(Real Network)のリアルプレーヤ(Real Player(商標))に組み込まれている。現在、マイクロソフト社からのDRMソリューションは、圧縮アルゴリズムに密接に結合している。DRMは、通常、パーソナルコンピュータ(personal computer:以下、PCという。)プラットフォーム上で実行される。その結果、DRMソリューションは、ソフトウェアの改竄を検出するよう設計されており、したがって、ソフトウェアの実行動作を混乱させる結果となっている。
【0007】
DRMの上述した2つの具体例は、発達し、進化を続ける技術分野のほんの2つにすぎない。さらに、DRMは、コンテンツを不法にコピーする人に対してコンテンツをより強力に保護する継続した基盤上で、実現されることが予想できる。
【0008】
しかしながら、残念なことに、利用可能なDRMの種類が複数あるため、ユーザは、様々なDRMシナリオをサポートするソフトウェア(又はプラグイン)の複数のセットを取得し、又は自分のコンピュータでサポートを希望するコンテンツの使用を限定しなければならないかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
新規性を有すると考えられる本発明の特徴を、特に特許請求の範囲に示す。しかしながら、発明自体は、構成及び動作の方法に関し、その目的及び効果と共に、図面を参照して以下に説明する本発明の特定の具体的実施形態によって、最もよく理解することができる。
【0010】
本発明には、多くの異なる形式の実施形態があるが、図面に示し、ここに詳細に説明する実施形態は特定のものであり、この開示は発明の原理の一例であって、本発明を図示及び説明した特定の実施形態に限定することを意図したものではない。以下の説明では、幾つかの図面中の同じ、類似又は対応する部分については、同様な指示番号を使用している。
【0011】
用語「スクランブル」と「暗号化」、それらのバリエーションは、ここでは同じ意味で使用している。用語「ビデオ」は、ここでは、この場合、真の視覚情報を包含するために使用するだけではなく、会話的意味(例えばビデオテープレコーダ)においても使用し、また、ビデオ信号だけではなく、関連したオーディオ及びデータも包含する。この明細書では、一般的には「2つの選択的暗号化(dual selective encryption)」の実施形態を説明しているが、当業者にとって、発明から逸脱することなく、複数の部分的暗号化(multiple partial encryption)を実現するために本発明を利用できることは明らかである。ここでは、用語「部分的暗号化(partial encryption)」と「選択的暗号化(selective encryption)」は同じ意味で使用している。
【0012】
上述した出願人が同一の特許出願は、ここで一般的に部分的暗号化又は選択的暗号化と呼ばれる方法の様々な形態に関連した発明を記載している。より詳細には、特定のデジタルコンテンツの選択された部分が2つ(以上)の暗号化技術を用いて暗号化され、コンテンツの他の部分は暗号化されないままである装置が記載されている。暗号化する部分を適切に選択することにより、コンテンツ全体を選択して暗号化する必要はなく、複数の復号装置を用いる条件に対して、コンテンツを効果的に暗号化することができる。幾つかの実施形態においては、複数の暗号化装置を用いて、コンテンツを効果的に暗号化するために必要なデータオーバヘッドは僅か数%である。この結果、ケーブル又は衛星配信システムにおいて、複数の製造会社からのセットトップボックス又は他の条件付アクセス(conditional access:以下、CAという。)を実装した受信機を単一のシステムで使用することができ、したがって、ケーブル又は衛星会社は、自由な立場でセットトップの提供業者を競争的に探すことができる。
【0013】
本発明は、同様の選択的暗号化技術を、複数のデジタル権利管理の問題に適用する。上述の特許出願に記載された部分的暗号化処理では、あらゆる適切な暗号化方式を用いている。しかしながら、これらの暗号化技術は、上述の特許出願に記載された技術を使用して、データストリーム全体を暗号化するのではなく、データストリームに選択的に適用される。一般的には、これに限定するものではないが、選択的暗号化処理は、情報の知的な選択を利用して暗号化を行い、番組全体を2回暗号化する必要はない。暗号化のためにデータを適切に選択することにより、番組マテリアルを効果的にスクランブルし、システムに侵入し、料金を支払うことなく商業コンテンツを不法に再生することを希望する連中から隠すことができる。オーディオ又はビデオデータを表すために用いられるMPEG(又は類似したフォーマット)のデータは、フレームからフレームへの情報の冗長性に強く依存している。特定のデータは、色差及び輝度データを表す「アンカー」データとして伝送することができる。そして、多くの場合、ブロックの動きを記述した動きベクトルを送ることによって、このデータを表示画面において単純に移動して、後続のフレームを生成する。また、色差及び輝度データの変化も、絶対アンカーデータを再び符号化するのでなく、差分としてエンコードされる。したがって、このアンカーデータ、あるいは例えば他の鍵となるデータを暗号化することにより、ビデオを効果的に見えなくすることができる。
【0014】
本発明の特定の実施形態は、コンテンツの残りの部分を第1及び第2のDRMによりデコードするために重要又は重大なコンテンツを複製及び暗号化することにより、第2の(又は複数の)デジタル権利管理(DRM)ソリューションを可能にする。コンテンツの複製に際して、帯域幅オーバヘッドを大幅に増やす必要はない。地上及び衛星放送ストリームとは違って、PCによりインターネットを介して配信され、最終的には復号されるコンテンツは188バイトのパケットに制御する必要はない。地上及び衛星ストリームの場合は、ハードウェア復号は、トランスポートヘッダの中のスクランブルビットに基づき、通常は1パケット当たりベースで行われる。ソフトウェアの中で行われるコンテンツ復号はこれよりもはるかに大きいデータの塊としてかつ選択的にすることができる。
【0015】
本発明を適用した特定の実施形態によれば、暗号化するために選択するビデオデータは、任意の個別データでもよいし、以下のデータ(詳細については、上述の出願に記載)の組合せでもよい。それらのデータとは、ビデオフレームのアクティブ領域に現れるビデオスライスヘッダ、ビデオフレームのアクティブ領域を表すデータ、ビデオフレーム内部のスターパターンデータ、場面変化を表すデータ、Iフレームパケット、Iフレームに続く第1のPフレームの動きベクトルを含むパケット、イントラ_スライス_フラグインジケータセットを有するパケット、イントラ_スライスインジケータセットを有するパケット、イントラ_コーディッドマクロブロックを含むパケット、イントラ_コーディッドマクロブロックを含むスライス用データ、ビデオスライスヘッダに続く第1のマクロブロックからのデータ、ビデオスライスヘッダを含むパケット、アンカーデータ、及び、漸進的リフレッシュビデオデータ用、ビデオフレーム上に垂直及び/又は水平モートパターンで配列されたデータ用、及びビデオ及び/又はオーディオの利用を困難にするその他のあらゆる選択データ用Pフレームデータである。このような幾つかの技術及びその他の技術は、上述の参照特許出願に開示されており、そのいずれも(又はその他の技術を)、コンテンツの一部を暗号化するために、本発明が利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の幾つかの実施形態であるデジタル権利管理を含むデジタルコンテンツ配信システムのブロック図である。
【図2】本発明の幾つかの実施形態である具体的なファイル構造を示したものである。
【図3】本発明の幾つかの実施形態であるビデオデータ用バイトオフセット配列を示したものである。
【図4】本発明の幾つかの実施形態であるオーディオデータ用バイトオフセット配列を示したものである。
【図5】本発明の幾つかの実施形態であるビデオ又はオーディオコンテンツ内部の具体的なDRM配列を示したものである。
【図6】本発明の幾つかの実施形態である複数のDRMによるコンテンツのエンコードのための方法を示したフローチャートである。
【図7】本発明の幾つかの実施形態である複数のDRMを有するコンテンツの取得及び再生を示したフローチャートである。
【図8】本発明の幾つかの実施形態であるコンテンツプロバイダサーバシステムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施形態である再生コンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1を参照して、本発明の特定の実施形態であるコンテンツ配信システムについて説明する。このコンテンツ配信システム100において、例えば、デジタルコンテンツプロバイダ104は、コンテンツ、例えばオーディオ又はビデオコンテンツをインターネット108を介して、例えばダウンロード又はストリーミングにより、ユーザのパーソナルコンピュータシステム112に配信して、ユーザに提供する。パーソナルコンピュータシステム112は、例えばマルチメディアコンピュータシステムであり、ビデオディスプレイ116と、スピーカセット、例えばスピーカ120L及び120Rを駆動するステレオ(又はマルチチャンネル)オーディオシステムとを備える。パーソナルコンピュータシステム112は、あらゆる適切なオペレーティングシステムを使用して動作し、オーディオ及び/又はビデオコンテンツを再生するための1つ以上のソフトウェアプログラム(以下、「メディアプレーヤ」)を搭載している。
【0018】
デジタルコンテンツプロバイダ104は、コンテンツのオンライン配信者として役割を果たすアドレス可能なウェブサイトとして動作する。この具体例において、ウェブサイトは、コンピュータ、例えばインターネット108に接続されたパーソナルコンピュータシステム112を有するユーザによって様々な条件下で購入することができるコンテンツを格納したコンテンツデータベース130を有するものとして示されている。本発明の範囲を限定するものではないが、具体例を簡単にするために、デジタルコンテンツプロバイダ104は、2つのデジタル権利管理方式、すなわち134として示されるDRMAと、138として示されるDRMBとを使用して、コンテンツを供給する能力を有するものとして示されている。従来のデジタルコンテンツプロバイダにおいては、1つのDRM方式しか使用されず、コンテンツは、その特定のDRM方式に関する暗号化方式を用いて暗号化された形式で格納されている。
【0019】
本発明を適用した特定の実施形態では、コンテンツデータベース130に格納されているコンテンツは、コンテンツプロバイダの2つの(一般的には複数の)DRMに一致した2つの(複数の)選択的暗号化によって格納されている。この方法によって、デジタルコンテンツプロバイダ104には、コンテンツを複数のDRMで別々に格納するのに伴う要件及びコストの負担がかからない。さらに、購入時に、指定のDRMを使用してコンテンツを動的に暗号化することも要求されない。
【0020】
コンテンツは、ユーザに配信するために、図2に示すものに類似したファイルとして、配置することができる。このファイル構造において、ユーザに配信されるファイルは、選択部分(selected portion)が複数の暗号化(multiply encrypted)によって格納されている。一具体例において、これに限定されるものではないが、コンテンツをMPEGのデータとして格納する場合、MPGEのIフレーム又はビデオスライスヘッダの全てを暗号化することにより、ファイル全体の暗号化を必要とすることなく、暗号化の実質的なレベルを達成することができる。また、他のあらゆる適切な選択的暗号化処理も、無制限で用いることができる。一旦、オーディオ及び/又はビデオの選択部分が暗号化のために選択されると、選択部分は複製され、暗号化される。この具体例においては、選択部分は、ある場合にはDRMAに一致した暗号化処理によって、別の場合にはDRMBに一致した暗号化処理によって暗号化される。そして、コンテンツは、元の暗号化されていない(original clear)コンテンツを複製され暗号化されたコンテンツで置換することによって、再び組み立てられる。(なお、他の具体例においては、コンテンツを暗号化し又は暗号化しないで格納しておき、「即座に(on the fly)」ファイルを処理及び構成して、ユーザに配信することもできる。)
【0021】
このオーディオ/ビデオコンテンツの具体例において、コンテンツは、オーディオコンテンツ206及びビデオコンテンツ210として格納される。さらに、ファイルは、オーディオコンテンツの暗号化される部分として選択される部分を指し示すオーディオ暗号化ポインタ212のセットを含んでいる。さらに同様に、ファイルは、ビデオコンテンツの暗号化される選択部分を指し示すビデオ暗号化ポインタ218のセットを含んでいる。DRMAデータセクション222は、デコーダがDRMAの暗号化方式を用いて暗号化されたコンテンツをデコードするために必要とされるデータを提供する。同様に、DRMBデータセクション226は、デコーダがDRMBの暗号化方式を用いて暗号化されたコンテンツをデコードするために必要とされるデータを提供する。識別セクション230は、ファイル中で利用可能なコンテンツ及びDRM方式を識別する。
【0022】
図3は、ビデオデータ210とビデオ暗号化ポインタ218との関係を示す図である。ファイル中のビデオデータの暗号化部分を指し示すポインタが格納されている。このような暗号化部分を304、308及び312として示す。このような暗号化部分には、320、324、328及び332として示す(クリアな)暗号化されていないデータの部分が点在して格納されている。もちろん、実際には多数であると考えられる暗号化セグメントの数に比べて、示されている暗号化セグメントの数が少ないので、この図3は、非常に簡略化されたものである。図3において、各暗号化セグメントは、小さなサイズ(すなわち暗号化量)で示してあるが、これに限定されるものではない。
【0023】
オーディオデータ206とオーディオ暗号化ポインタ212との関係も類似したものであり、これを図4に示す。ファイル中のオーディオデータの暗号化部分を指し示すポインタが格納されている。このような暗号化部分を404、408及び412として示す。このような暗号化部分には、420、424、428及び432で示す暗号化されていないデータの部分が点在して格納されている。この場合も、実際には多数であると考えられる暗号化セグメントに比べて、示されている暗号化セグメントの数が少ないので、この図4は、非常に簡略化されたものである。図4において、暗号化部分は、異なるサイズで示されており、このサイズによって、各暗号化セグメントの長さを示すことができる。
【0024】
いずれの場合にも、暗号化するバイト数は、必要に応じて、暗号化量として予め定義することができ、暗号化ポインタは、単に、連続したメモリのオフセット位置とすることができる。そして、暗号化されるデータ量は、予め設定された暗号化量(例えば8バイト)によって決定される。他の実施形態においては、暗号化ポインタセクションは、開始オフセットだけではなく、終了オフセット、あるいは開始オフセット及び多数のバイトを含むこともできる。
【0025】
図5は、暗号化コンテンツのセクションの最初の部分に示すバイトオフセット位置によって暗号化されたコンテンツの具体的なセクションを示す図である。データの次のセグメントは、(予め定義又は暗号化ポインタでエンコードされた)暗号化量によって定まる継続時間だけ続くDRMA暗号化コンテンツ502である。暗号化コンテンツ506の次のセグメントは、DRMBの暗号化方式によって暗号化され、暗号化量によって再び定義された継続時間だけ続く。所定の暗号化量を用いることによって、暗号化ポインタは単純化される。暗号化セグメントのサイズを指定することにより、暗号化ポインタの効率は下がるが、サイズを変えて、より柔軟性のある暗号化方式を実現することができる。なお、所定の暗号化量を用いる場合、複数の連続したセグメントを暗号化することにより、暗号化コンテンツのセグメントの長さをより長くという効果を達成することができる。
【0026】
DRMは、通常は、ユーザがコンテンツの視聴に対して料金を支払ったかどうかを確認する。視聴は、期間又は視聴するもの毎に許可することができる。ユーザが料金を支払うと、多くの場合、ユーザに復号のための復号鍵が配信され、これにより、コンテンツを復号することができる。2つ以上のDRMが並列して働くようにするためには、支払と、鍵管理動作と、コンテンツの復号とを明確に分離しなければならない。メディアプレーヤは、両方のDRMを選択できるようにしなければならない。選択的暗号化を用いることによって、コンテンツの大部分を暗号化しないで、(コンテンツの残りの部分を伸長するために必要とされる)ある重大な又は重要な(critical or important)コンテンツだけを暗号化して、送信することができる。重大又は重要なコンテンツは、複製され、コンテンツの1つのセットが1つのDRMによって暗号化され、コンテンツのもう1つのセットが別のDRMによって暗号化される。
【0027】
インターネットを介して配信される映画及び音楽は、IPネットワーク上で配信するためのUDPパケットにパケット化することができる。ファイルは、PC内で一旦再組み立てされると、本質的には平文とすることができる。ビデオ及びオーディオは、大きなパケット化された基本ストリーム(packetized elementary stream:PES)のファイルにすることができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態を実現するためには、メディアプレーヤが暗号化されたコンテンツをどのように識別するかについての合意が必要である。特定の実施形態においては、利用するのであれば、暗号化量は、標準化すべきであり、あるいは最小公倍数に関して合意が必要である。暗号化のデータの塊は、標準化する必要がある(例えば、ビデオ及びオーディオフレームの異なる部分からのビットを暗号化するために、一緒にすることができるであろうか。同じビットを何度も選択しない限り、これは、信号に対して複雑である。)。しかしながら、これらの事柄は、標準化交渉のテーマには適しているが、本発明の概念及び原理を理解するためには重要ではない。
【0029】
上述のファイルは、多くの処理のいずれかを使用して生成することができる。さらに、図示したファイル構造は、オーディオ/ビデオコンテンツについてのものであるが、ビデオ暗号化ポインタ及びビデオコンテンツを削除することにより、簡単にオーディオ専用に変えることができる。このようなファイルを生成する1つの生成処理を、600として図6に示す。生成処理600は、ステップ604から開始する。ステップ608において、複数の選択的暗号化するコンテンツのセグメントを選択するための選択基準が採用される。使用する判定基準は、上述のもの、上述の特許出願に記載されたもの、どこか他に記載されたもの、又は新たに設けられたもののいずれでもよい。コンテンツのセグメントが一旦選択されると、ステップ610において、それらのセグメントは、採用するDRM方式の数と同じ回数複製される。例えば、デジタルコンテンツプロバイダ104においては、1セットの複製選択データが生成される。
【0030】
ステップ614において、選択データの複製セットの各々がDRMの各々のための暗号化方式によって暗号化されるように、選択コンテンツは次に複数の暗号化される。コンテンツプロバイダ104の具体例においては、コンテンツの選択セグメントが複製される。1セットの選択セグメントはDRMAによって暗号化され、複製セットはDRMBによって暗号化される。次にステップ618において、暗号化ポインタのセットがオフセット値として生成され、場合によっては、ユーザがコンテンツに関するデジタル権利の取得を希望するまでは、暗号化部分及びファイルのサイズを決定する情報をコンテンツデータベース130に保存することができる。あるいはまた、コンテンツを暗号化されていない状態で(又は暗号化状態で)記憶することもでき、ユーザへの配信のためのファイルは、ユーザのコンテンツ購入後に生成することができる。
【0031】
ユーザがコンテンツに関する権利を購入した場合、ステップ623において、デジタル権利管理トランザクションが行われ、ユーザは特定の権利に対して料金を支払う。このような権利は特定の期間又は回数の視聴の権利を含むことがある。このトランザクション中には、コピー、再生機又はDRMのその他の属性に対して制限を課すことができる。トランザクションが完了すると、ステップ630において、購入されたコンテンツを含むファイルがデータベースから取り出され、購入された権利を定義するDRMデータが付加される。次にステップ634において、ファイルはユーザにダウンロード又はストリームされる。ユーザは、ステップ626におけるトランザクションにより取得したDRM権利に一致した方法で、(パーソナルコンピュータシステム112又は別の再生装置により)コンテンツを再生することができる。
【0032】
したがって、本発明の特定の実施形態である複数のデジタル権利管理シナリオ(DRM)の使用を可能にする方法は、少なくとも暗号化用コンテンツのセグメントを識別するために、デジタルコンテンツを表す暗号化されていないデータを調べるステップと、第1のDRMに関連した第1の暗号化方式を用いて、コンテンツの識別されたセグメントを暗号化して、第1の暗号化セグメントを形成するステップと、第2のDRMに関連した第2の暗号化方式を用いて、コンテンツの識別されたセグメントを暗号化して、第2の暗号化セグメントを形成するステップと、コンテンツの第1の暗号化セグメントへの第1のポインタを生成するステップと、コンテンツの第2の暗号化セグメントへの第2のポインタを生成するステップと、コンテンツの識別されたセグメントをデジタルコンテンツの中の第1の暗号化コンテンツ及び第2の暗号化コンテンツと交換し、部分的暗号化2つのDRM使用可能ファイルを形成するために、第1及び第2のポインタを挿入するステップとを有する。デジタル権利が購入されると、権利を使用可能にするDRMデータがファイルに付加され、ファイルがユーザに送信される。
【0033】
本発明の特定の実施形態に基づく、ユーザが使用する処理を、700として図7に示す、この処理はステップ702から開始する。ステップ706において、ユーザはコンテンツに関するデジタル権利をデジタル権利取得トランザクションによって取得する。次にステップ710において、ユーザはダウンロード又はストリーミングにより複数のDRMファイルを受け取ることができる。ステップ714において、ユーザが再生の開始を希望した場合は、ステップ718において、DRMデータが読み出され、その結果、ユーザのコンピュータ又はその他の再生装置のソフトウェアは、ユーザが取得したデジタル権利が有効であるかどうか(すなわち、期限切れ又は失効していないか)を判定することができる。ステップ722において、ソフトウェアがデジタル権利の期限切れ又は失効を判定した場合は、ステップ726において、再生が中止され、処理はステップ730において終了する。
【0034】
ステップ722において、ユーザのデジタル権利が確認された場合は、ソフトウェアは、ステップ734においてファイルの暗号化ポインタを読み出し、ステップ738においてコンテンツの読出を開始する。ステップ742において、コンテンツが暗号化された場合は、ステップ746において、コンテンツは、(再生ソフトウェア及び/又は再生機に応じて)再生のために使用されるDRM方式により、復号される。コンテンツが暗号化されなかった、又は復号された場合は、制御はステップ750に移り、そこで、コンテンツは再生され、又は再生のためにバッファリングされる。ステップ754において、ファイルの終わりに到達しなかった場合は、制御はステップ738に戻り、そこで、コンテンツの次のセグメントが読み出される。ステップ754においてファイルの終わりに到達した場合は、処理はステップ730において終了する。
【0035】
したがって、本発明の特定の実施形態によれば、複数のデジタル権利管理シナリオ(DRM)の少なくとも1つでデジタルコンテンツの権利を使用する方法は、コンテンツのデジタル権利を取得するためにトランザクションを実行するステップと、コンテンツの暗号化されていないセグメントと、コンテンツの第1のDRMに関連した第1の暗号化方式を用いて暗号化された第1の暗号化セグメントと、コンテンツの第2のDRMに関連した第2の暗号化方式を用いて暗号化された第2の暗号化セグメントと、コンテンツの第1の暗号化セグメントへの第1のポインタと、コンテンツの第2の暗号化セグメントへの第2のポインタと、デジタル権利を第1のDRM及び第2のDRMの少なくとも1つで使用可能にするDRMデータとを含むデジタルコンテンツを受け取るステップと、有効なデジタル権利がDRMデータから入手可能であると判断するステップと、コンテンツの視聴を可能にするために、第1及び第2の暗号化セグメントの1つを復号するステップとを有する。
【0036】
図6の処理600は、図8のコンピュータ800として示したような複数のDRMエンコーダとして動作するあらゆる適切なプログラム式汎用プロセッサにより実行することができる。コンピュータ800は、1つ以上の関連バス814を備えた1つ以上の中央演算処理装置(CPU)810を有し、これらのバス814は、中央演算処理装置810を公知の方法でランダムアクセスメモリ818及び不揮発性メモリ822に接続するために使用される。デジタルコンテンツプロバイダ104の使用のために出力を表示及び/又は印刷し、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)のようなユーザインタフェースを提供するために、ディスプレイ及びプリンタのような出力装置826が備えられている。同様に、オペレータによる情報の入力のために、キーボード、マウス及び取外し可能メディアリーダ830のような入力装置を備えることもできる。コンピュータ800は、オペレーティングシステム、複数のDRM暗号化方式、及び(付加マスストレージに記憶される可能性が最も高い)コンテンツを含むが、それらには限定されない大量の情報を記憶するための内部及び/又は外部付加ディスク又はその他のマスストレージ834も組み込んでいる。コンピュータシステム800は、コンテンツに関するユーザの要求に応じるためにインターネット108に接続されるインタフェース838も有している。単一のコンピュータとして図示してあるが、ここに記載した機能を実行するために、デジタルコンテンツプロバイダ104は複数のリンクコンピュータを使用することもできる。
【0037】
図7の処理700は、図9のコンピュータ900として示したようなデコーダ/復号器及びDRMバリデータとして動作するあらゆる適切なプログラム式汎用プロセッサにより実行することができる。コンピュータ900は一般的なパーソナルコンピュータ装置でよく、1つ以上の関連バス914を備えた1つ以上の中央演算処理装置(CPU)910を有し、これらのバス914は、中央演算処理装置810を公知の方法でランダムアクセスメモリ918及び不揮発性メモリ922に接続するために使用される。(場合によってはビデオの再生を含む)ユーザの使用のために出力を表示し、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)のようなユーザインタフェースを提供するために、ディスプレイアダプタ及びディスプレイのような出力装置926が備えられている。オーディオ又はオーディオ/ビデオコンテンツの再生のために、オーディオアダプタ及びオーディオ装置928を付加することもできる。同様に、オペレータによる情報の入力のために、キーボード、マウス及び取外し可能メディアリーダ930のような入力装置を備えることもできる。コンピュータ900は、オペレーティングシステム、DRM妥当性検査及び復号ソフトウェア、メディアプレーヤソフトウェア、及びダウンロードされたコンテンツを含むが、それらには限定されない大量の情報を記憶するための内部及び/又は外部付加ディスク又はその他のマスストレージ934も組み込んでいる。コンピュータシステム900は、例えば、コンテンツを購入するためにインターネット108に接続されるインタフェース938も有している。
【0038】
したがって、各潜在的DRM方式のためにコンテンツを完全に暗号化する必要のない複数のデジタル権利管理方式でコンテンツを簡単に供給するために、本発明の特定の実施形態はデジタルコンテンツプロバイダを提供する。これにより、(コンテンツの記憶又は複数の完全暗号化コピーのための)記憶容量又はデジタルコンテンツプロバイダが必要とする(急速暗号化のための)処理能力を小さくすることが可能になる。本発明の実施形態の使用により、コンテンツプロバイダが複数のDRMを低コストで簡単に提供することができるので、ユーザが自分のパーソナルコンピュータで複数のDRM方式及びメディアプレーヤを購入又はロードする必要なしで、広範囲のコンテンツをユーザに提供することができる。
【0039】
当業者には、本発明をプログラム式プロセッサ(例えば、コンピュータ800及び900)の使用に基づき具体的な実施形態に関して説明してきたことが了解されよう。しかしながら、発明をこのように限定すべきではない。というのは、本発明は、説明及び請求されたように発明と等価物である特殊目的ハードウェア及び/又は専用プロセッサのようなハードウェアコンポーネント同等物を使用して実現することもできるからである。同様に、本発明の代替的等価実施形態を構築するために、汎用コンピュータ、マイクロプロセッサベースコンピュータ、マイクロコントローラ、光コンピュータ、アナログコンピュータ、専用プロセッサ、及び/又は専用ハードワイヤードロジックを使用することもできる。さらに、再生機構を提供する汎用パーソナルコンピュータに関して本発明を説明してきたが、本発明から逸脱せずに、再生を専用機により行うことができる。
【0040】
当業者には、上述の実施形態を実現するために使用されるプログラムステップ及び関連データを、本発明から逸脱せずに、ディスクストレージ、並びに、例えば、読出し専用メモリ(ROM)デバイス、ランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス、光ストレージエレメント、磁気ストレージエレメント、光磁気ストレージエレメント、フラッシュメモリ、コアメモリ及び/又はその他の等価ストレージ技術のようなその他の形態のストレージを使用して実現できることが評価されよう。このような代替ストレージデバイスは等価物であると考えるべきである。
【0041】
本発明は、実施形態において説明したように、あらゆる適切な電子記憶媒体に記憶、又はあらゆる適切な電子通信媒体を介して伝送、あるいはまた任意のコンピュータ読出し可能又は伝送媒体の中に存在できる上述の実施形態のプログラミング命令を実行するプログラム式プロセッサを使用して実現される。しかしながら、当業者には、上述の処理を、本発明から逸脱せずに、かなり多数のバリエーション及び多数の適当なプログラミング言語で実現できることが評価されよう。例えば、発明から逸脱せずに、行われる特定の作業の順序を変更できることが多く、追加的作業の付加又は作業の削除も可能である。本発明から逸脱せずに、エラートラッピングを付加及び/又は強化することができ、ユーザインタフェース及び情報提示を変更することができる。これらの変更は全く等価であると考える。
【0042】
本発明の特定の形態を実施するソフトウェアコード及び/又はデータは、上述のような電子ストレージデバイスを含むが、それらには限定されない任意のコンピュータ読出し可能媒体、伝送媒体、記憶媒体又は伝送媒体、並びに、搬送波、電子信号、データ構造(例えば、ツリー、リンクリスト、テーブル、パケット、フレーム等)、光信号、伝送信号、包装信号、伝送媒体(例えば、回路接続、ケーブル、ツイストペア、光ファイバケーブル、導波管、アンテナ等)、及びコード及び/又はデータを記憶、搬送又は転送するその他の媒体の中に存在することもできる。このような媒体はソフトウェアコード及び/又はデータを記憶することもできるし、コード及び/又はデータをある場所から別の場所に送る働きをすることもできる。本発明の具体的な実施形態においては、MPEG準拠パケット、スライス、テーブル及びその他のデータ構造が使用されるが、本発明から逸脱せずに、その他のデータ構造も同様に使用することができるので、これを限定的に考えるべきではない。
【0043】
本発明を特定の実施形態との関連で説明してきたが、上述の説明に鑑みて、多くの代替物、修正、置換及び変更が当業者には明らかになろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲に入るような全ての代替物、修正及び変更を含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の権利管理シナリオ(DRM)の使用を可能にする方法であって、
暗号化のために、デジタルコンテンツを表す暗号化されていないデータを調べて、暗号化されていないデータのセグメントを識別するステップと、
データの前記セグメントを複製して、前記識別されたデータのセグメントの第1及び第2のコピーを生成するステップと、
前記識別されたデータのセグメントを複製した後に、第1のDRMと関連付けられた第1の暗号方法を用いて、前記識別されたデータのセグメントの第1のコピーを暗号化して、第1の暗号化されたセグメントを形成するステップと、
前記識別されたデータのセグメントを複製した後に、第2のDRMと関連付けられた第2の暗号方法を用いて、前記識別されたデータのセグメントの第2のコピーを暗号化して、第2の暗号化されたセグメントを形成するステップと、
前記第1の暗号化されたセグメントの位置を指し示す第1のポインタを生成するステップと、
前記第2の暗号化されたセグメントの位置を指し示す第2のポインタを生成するステップと、
前記第1及び第2の暗号化されたセグメントを形成した後に、前記識別されたデータのセグメントを、デジタルコンテンツ内の第1の暗号化されたセグメント及び第2の暗号化されたセグメントの両方と交換し、
前記第1及び第2のポインタを生成した後に、前記第1及び第2のポインタの両方を挿入して、部分的暗号化2つのDRM使用可能ファイルを形成するステップと、
を含み、
ここで、暗号化のために識別されたセグメントは、前記デジタルコンテンツを構成する全セグメントの一部のみを含み、暗号化のために識別されないセグメントは、部分的に暗号化された2つのDRM使用可能ファイルにおいて暗号化されないままである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248201(P2012−248201A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154898(P2012−154898)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2004−534603(P2004−534603)の分割
【原出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【出願人】(593181638)ソニー エレクトロニクス インク (371)
【Fターム(参考)】