説明

複数の無線通信エリアを構成する基地局およびその無線部

【課題】低消費電力化を達成することができる基地局およびその無線部を提供する。
【解決手段】基地局は、複数の無線通信エリア12.1〜12.Nをそれぞれ構成する複数の無線部10.1〜10.Nと、複数の無線部10.1〜10.Nと接続され送受信ベースバンド信号の処理を行う信号処理部11と、を有し、複数の無線部10.1〜10.Nの各々は、対応する無線通信エリア内の状況を監視して少なくとも2つの状況を検知するエリア監視部106.1〜106.Nと、検知された状況に応じて当該無線部の送信出力を制御する送信電力制御部105と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体通信システムの基地局に係り、特に複数の無線通信エリアを構成する基地局およびその無線部に関する。
【背景技術】
【0002】
移動局および無線基地局から構成される移動体通信システムでは、一般に、バッテリ駆動されている移動局の電力消費を低減する技術が種々提案されている。たとえば、移動局が待ち受け状態にある場合には、間欠受信を行うことで消費電力を低減している。また、特開2006−50243号公報(特許文献1)には、周辺の明るさや電波状態の変化などを検出することで広帯域・低レイテンシが不要な状況であると判定されると、省電力状態に移行する無線通信装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−50243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、省電力化は、移動局だけではなく無線基地局にも要請されており、特にオフィスビルなどで無線基地局を複数個設置する場合には、低消費電力化は考慮されるべきである。以下、無線基地局での低消費電力化について簡単に説明する。
【0005】
図3は一般的な移動体通信システムにおける無線基地局と移動局との間の無線通信を説明するための模式的なブロック図である。ここでは、無線通信エリア300が無線基地局301によって構成されているものとする。一般的に、無線基地局301は、無線通信エリア300に在圏する移動局302に対してパイロット信号(あるいはリファレンス信号ともいう。)を常に送信している。移動局302は無線基地局301から送信されるパイロット信号を受信することによって、移動体通信サービスの圏内/圏外を判定する。
【0006】
たとえば、移動局302がエリア300の圏外にいる場合には、無線基地局301からのパイロット信号を受信することができないので移動体通信サービスを受けることができない。この移動局302が図中の矢印で示すようにエリア300内に移動すると、無線基地局301からのパイロット信号を受信することで圏内にあると判定し、無線基地局301への通信を開始することができる。無線基地局301は、パイロット信号に対する移動局302からの応答によって、無線通信エリア300内の移動局の在圏状況の確認や通信制御を行うことができる。
【0007】
無線通信エリア300の大きさは無線基地局301から送信されるパイロット信号の無線送信出力によって決まる。したがって、無線基地局301の無線送信アンプは基地局機能部の中で比較的大きな電力を消費し、無線送信アンプの低消費電力化が基地局全体の電力を低減させる大きな要素となっている。
【0008】
ところが、無線通信エリア300内に在圏する複数の移動局302の位置情報の把握は、すべて無線基地局301から送信されるパイロット信号の応答によるものであるから、移動局が圏内に存在しない場合であっても、無線基地局301はパイロット信号の無線送信を停止することはできない。
【0009】
たとえば、閉空間のインドアエリアでは休日のオフィスや営業時間外の店舗、アウトドアエリアではテーマパークなどの限られた私設エリアにおいて、時間、人の流れによって移動体通信サービスが不要になる場合がある。このような移動体通信サービスが不要な時間帯であるにもかかわらず、無線基地局301は、パイロット信号の送信を継続しなければならない。なぜならば、無線基地局301の全体的な電力停止は無線周波数安定度の低下を招き、さらに移動体通信システムの上位ネットワークとの再設定が必要となるなど、再起動までに時間を要するからである。また、移動体通信ネットワーク上の基地局制御装置(RNC)は、移動局からの伝播品質の報告に基づいて当該無線基地局の送信電力制御を行っているので、移動局がエリアに存在しないときには、そもそも無線基地局の電力制御をする必要がない。
【0010】
このように、無線基地局301は、無線通信エリア内での通信対象の有無に関係なく、パイロット信号を常に送信し続ける必要があり、送信アンプでの大きな電力消費が無線基地局の省電力化を阻む要因の一つとなっている。特に、複数の閉空間にそれぞれ無線通信エリアを配置する必要があるオフィスビルのような場合には、無線基地局の電力消費の増加は大きな問題となる。
【0011】
そこで、本発明の目的は低消費電力化を達成することができる基地局およびその無線部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による基地局は、複数の無線通信エリアを有し移動局との無線通信を行う基地局であって、前記複数の無線通信エリアをそれぞれ構成する複数の無線部と、前記複数の無線部と接続され送受信ベースバンド信号の処理を行う信号処理部と、を有し、前記複数の無線部の各々は、対応する無線通信エリア内の状況を監視して少なくとも2つの状況を検知する検知手段と、前記検知された状況に応じて当該無線部の送信出力を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により基地局の低電力化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.一実施形態
図1は本発明の一実施形態による基地局の概略的構成を示すブロック図である。本実施形態による基地局は、N個の基地局無線部10.1〜10.Nと基地局信号処理部11とが接続された構成を有し、N個の基地局無線部により無線通信エリア12.1〜12.Nがそれぞれ構成されるものとする。言い換えれば、移動体通信ネットワークからみれば、1つの基地局がN個の無線通信エリア(あるいはセクタ)を有する。移動局MSは、任意の無線通信エリア内に位置することで基地局からのパイロット信号を受信し無線通信が可能となる。
【0015】
基地局無線部10.1〜10.Nは同一の回路構成を有するので、図1に示された基地局無線部10.1について説明する。基地局無線部10.1の無線送受信部は、受信アンプ101およびRF受信部102と、RF送信部103および送信電力アンプ104と、を有する。受信アンプ101は受信した無線(RF)信号を増幅し、RF受信部102は受信RF信号を復調したベースバンド信号を出力する。RF送信部103は、送信ベースバンド信号を変調してRF送信信号を送信電力アンプ104へ出力し、送信電力アンプ104が電力増幅して無線通信エリア12.1内へ送信する。
【0016】
送信電力アンプ104の送信出力は送信電力制御部105によって制御される。送信電力制御部105は、エリア監視部106.1からの監視信号に応じて送信電力アンプ104の送信出力を制御する。たとえばエリア監視部106.1により当該無線通信エリア12.1内にユーザがいないと判定されると、送信電力制御部105は送信電力アンプ104の送信出力を停止することができる。また、送信電力制御部105は、基地局信号処理部11からの制御信号に従って、特定のサービス提供時の送信動作のみ送信出力を停止するように制御されることもできる。
【0017】
エリア監視部106.1は、たとえば部屋の使用/未使用あるいは人の入室/退室など無線通信エリア12.1の状況を検知できる手段であればよく、既存の種々の監視方法を採用することができる。たとえば、部屋を未使用にするとき照明を消すことを利用する場合には光センサを、部屋を出るときの自動ドアの開閉動作を利用する場合には自動ドア動作検知器を、それぞれエリア監視部106.1として採用することができる。また、複数の光センサを用いて人の移動を検知したり、撮像装置を用いて画像解析により人の有無を判定したりする監視方法を採用することも可能である。あるいは、部屋の入出管理システムが設置されている場合にはその管理信号をエリア監視部の監視信号として利用することもできる。
【0018】
基地局無線部10.1はインタフェース107を通して基地局信号処理部11に接続され、RF受信部102およびRF送信部103の受信および送信ベースバンド信号などがやりとりされる。
【0019】
基地局信号処理部11は、各基地局無線部からの受信ベースバンド信号や各基地局無線部への送信ベースバンド信号を送受信するためのインタフェース110を有し、送受信ベースバンド信号の処理を行う信号処理部111と、基地局信号処理部11の全体的な動作制御を行う制御部112とを有する。なお、制御部112は、インタフェース110を通して任意の基地局無線部の無線送受信部や送信電力制御部105の制御を行うことも可能である。
【0020】
基地局無線部10.2〜10.Nは、基地局無線部10.1と同様の構成を有し、基地局無線部10.1〜10.Nと基地局信号処理部11とで1つの基地局が構成される。
【0021】
このように、本実施形態による基地局は、基地局無線部10.1〜10.Nと基地局信号処理部11とに分離されており、エリア監視部106.1〜106.Nを用いてそれぞれの無線通信エリア内の状況を監視し、それぞれの状況に応じて、基地局無線部10.1〜10.Nの送信出力を個別に制御することができる。これにより、たとえば利用者がいない部屋の基地局無線部の送信出力が停止することができ、不必要なパイロット信号その他送信信号の送信電力を削減することが可能となる。
【0022】
なお、サービスOFF状態であっても無線送受信部の受信アンプ101、RF受信部102およびRF送信部103はアクティブ状態である。したがって、エリア監視部106.1がサービスON条件を検出すると、送信電力アンプ104の出力をONにするだけでパイロット信号が送信され、移動局MSはサービス圏内になるので、即座にサービスを再開することが可能となる。これに対して、「発明が解決しようとする課題」の項で述べたように、既存のシステムでは、装置の立ち上げ、周波数安定待ち、RNCとの接続時間などが必要であり、サービスの再開に時間を要していた。
【0023】
2.実施例
図2は本発明の一実施例による基地局を適用した移動体通信インドアシステムの一例を示すブロック図である。ここでは、N=3とし、図1に示すブロックと同一機能のブロックには同一参照番号を付している。
【0024】
建物201内の1階〜3階の各階に基地局無線部10.1〜10.3が分散配置され、それらのエリア監視部106.1〜106.3として光センサが採用されている。また、基地局信号部11は他の基地局202と共に移動体通信ネットワーク203に接続されている。上述したように、基地局無線部10.1〜10.3と基地局信号処理部11とによって、他の基地局202と同様の1つの基地局が構成される。
【0025】
各階に配置された基地局無線部10.1〜10.3は、移動局MSと無線信号によって通信することができ、それぞれの無線通信エリアにおいて移動体通信サービスを提供することができる。これに加えて、本実施例による基地局無線部10.1〜10.3は、それぞれ光の明暗を検知する光センサ106.1〜106.3を備えており、それぞれの光センサのセンサ出力に応じて基地局無線部の送信出力が個別に制御可能である。
【0026】
図2に示す例では、1階および2階の部屋には照明が点灯してユーザがいるので、光センサ106.1および106.2の出力信号により送信電力制御部105は送信電力アンプ104を通常の送信出力に制御し、通常基地局無線部10.1および10.2はそれぞれパイロット信号を送信して各移動局MSとの無線通信が可能となる。これに対して、3階の部屋は照明が消されているために、光センサ106.3の出力信号により送信電力制御部105は送信電力アンプ104の送信出力を停止し、これによってパイロット信号を含む全ての送信信号は3階の部屋には送信されない。したがって、1階および2階における必要な移動体サービスの提供を継続しつつ、移動体サービスが不要となった3階の送信電力分の電力削減が可能となる。
【0027】
上述したように、本実施例によれば、光センサ106.1〜106.3により無線通信エリアの環境を監視しているので、人がいない時、営業時間外の店舗など、特定の私設無線通信エリアにおいて移動体通信サービスが不要である状況において、定常的に送信されているパイロット信号を含むすべての無線信号の送信を停止することができ、無駄となっていた無線アンプ部の消費電力を削減することができる。
【0028】
さらに、所望の無線通信エリアに設置された光センサの動作により、当該無線部の送信出力を直接制御しているので、移動体通信サービスが不要なエリアに設置されている無線部だけの送信出力を停止することができ、サービス低下を招くことなく効率的な電力低減が可能となる。
【0029】
本実施例において、光センサ106.1〜106.3の代わりに、自動ドア等の動作を検知する検知器など他の方式の監視手段を採用してもよい。また、エリア監視部106.1〜106.3は、全て同じ監視方式を採用する必要はなく、1階は光センサ106.1、2階は自動ドア検知器106.2というように、それぞれの無線通信エリアに適した監視手段を採用すればよい。
【0030】
3.他の実施例
上記実施例では、光センサ106.1〜106.3の監視状況に応じて、基地局無線部10.1〜10.3の送信出力を個別に停止することができるが、基地局信号処理部11の制御部112の制御により、特定のサービスの送信時だけ基地局無線部10.1〜10.3の送信出力を個別に停止することも可能である。すなわち、パイロット信号の送信は通常通り送信し続けるが、送信電力が高くなる特定のサービスの場合には、送信電力アンプ104の送信出力を停止して消費電力を低減するようにとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は移動体通信システムのインドアシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態による基地局の概略的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例による基地局を適用した移動体通信インドアシステムの一例を示すブロック図である。
【図3】一般的な移動体通信システムにおける無線基地局と移動局との間の無線通信を説明するための模式的なブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
10.1〜10.N 基地局無線部
11 基地局信号処理部
12.1〜12.N 無線通信エリア
101 受信アンプ
102 RF受信部
103 RF送信部
104 送信電力アンプ
105 送信電力制御部105
106.1〜106.N エリア監視部
107 インタフェース
110 インタフェース
111 信号処理部
112 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信エリアを有し移動局との無線通信を行う基地局であって、
前記複数の無線通信エリアをそれぞれ構成する複数の無線部と、前記複数の無線部と接続され送受信ベースバンド信号の処理を行う信号処理部と、を有し、
前記複数の無線部の各々は、
対応する無線通信エリア内の状況を監視して少なくとも2つの状況を検知する検知手段と、
前記検知された状況に応じて当該無線部の送信出力を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記制御手段は、所定状況が検知されると、前記送信出力を停止することを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記無線部は送信アンプと変調器を有し、前記制御手段は、所定状況が検知されると、前記送信アンプを停止することを特徴とする請求項1または2に記載の基地局。
【請求項4】
前記検知手段は光センサであり、前記光センサの出力が所定レベルより低いと前記送信出力を停止することを特徴とする請求項2または3に記載の基地局。
【請求項5】
前記複数の無線通信エリアの各々は屋内の閉空間であることを特徴とする請求項1−4のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項6】
請求項1−5のいずれか1項に記載の基地局を有する移動体通信システム。
【請求項7】
移動局との無線通信を行う基地局における無線部であって、
送信電力増幅手段と、
前記基地局の信号処理部と接続するためのインタフェース手段と、
無線通信エリア内の状況を監視して少なくとも2つの状況を検知する検知手段と、
前記検知された状況に応じて前記送信電力増幅手段の送信出力を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする無線部。
【請求項8】
前記制御手段は、所定状況が検知されると、前記送信出力を停止することを特徴とする請求項7に記載の無線部。
【請求項9】
前記制御手段は、所定状況が検知されると、前記送信電力増幅手段を停止することを特徴とする請求項7または8に記載の無線部。
【請求項10】
前記検知手段は光センサであり、前記光センサの出力が所定レベルより低いと前記送信出力を停止することを特徴とする請求項8または9に記載の無線部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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