説明

複数の飛行経路を有する飛行時間型質量分析器

複数の飛行経路を有するTOF質量分析器が記載される。このTOF質量分析器は、一団のイオンを生成し、そしてこれらの一団のイオンを加速する、パルス化イオン源を備える。イオン偏向器は、パルス化イオン源が一団のイオンを生成した後の、第1の所定の時間間隔および第2の所定の時間間隔の各々にわたって、イオンの第1の群を、このイオンの一団から第1のイオン経路へと方向付け、そしてイオンの第2の群を、第2のイオン経路へと方向付ける。第1のTOF質量分離器が、イオンの質量対電荷比に従って、イオンの第1の群を分離し、そして第1の検出器が、これらのイオンの第1の群を受容するために位置決めされる.第2のTOF質量分離器が、イオンの質量対電荷比に従って、イオンの第2の群を分離し、そして第2の検出器が、これらのイオンの第2の群を受容するように位置決めされる。さらなるイオン経路が使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
質量分析器は、目的のサンプルを貴下およびイオン化させ、そして得られるイオンの質量対電荷比を決定する。飛行時間型(TOF)質量分析器は、電場の影響下で所定のイオンがイオン源から検出器へと移動するために要する時間の量を測定することによって、イオンの質量対電荷比を決定する。イオンが検出器に達するために要する時間は、所定の場の強度の電場について、そのイオンの質量の直接的な関数であり、そしてそのイオンの電荷の逆関数である。
【0002】
最近、TOF質量分析器は、特に、比較的不揮発性の生体分子の分析のため、ならびに高速、高感度、および/または広い質量範囲を必要とする他の適用のために、広範に使用されるようになった。新たなイオン化技術(例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)およびエレクトロスプレー(ESI))は、質量分析器によって分析され得る分子の質量範囲を大いに拡大した。これらの技術は、インタクトな分子イオンを、分析に適した気相で生成し得る。
【0003】
TOF質量分析器は、高分解能かつ精密な質量測定を提供し、これは、サンプルの分子量についての正確なデータを決定し得る。例えば、MALDI−TOF質量分析器は、高い分解能を有することが示されている。MALDI−TOF質量分析器は、米国特許第5,625,184号、同第5,627,369号、および同第6,057,543号に記載されている。パルス化イオン抽出を用いる直交注入TOF質量分析器もまた、高い分解能を有することが示されている。
【0004】
飛行時間型質量分析器はまた、フラグメント化を引き起こし、そしてそのフラグメントの質量を測定することによって、サンプルについての構造的情報を決定し得る。いくつかのMALDI−TOF質量分析器は、イオンをフラグメント化するために、ポストソース崩壊(post source decay)(PSD)として公知の技術を使用する。他のMALDI−TOF質量分析器は、衝突セルを備え、個の衝突セルは、いくつかのイオンに、中性の気体分子との高エネルギー衝突を起こさせて、低い質量のフラグメントイオンの生成を増強し、そしていくらかのさらなるフラグメント化を生じる。なおほかの質量分析器は、エネルギーを持った衝突を、大気圧のエレクトロスプレーと減圧した質量分析器との間の界面において起こすことによってフラグメント化を生じる、ESI−TOFを使用する。
【0005】
タンデム型質量分析器(これらは一般に、MS−MS器具と称される)は、サンプルについての構造的情報を決定するために、直列の複数の質量分析器を使用する。MS−MS器具は、代表的に、ペプチド配列決定のために使用される。MS−MS器具は、第1イオンを選択し、この第1イオンをフラグメント化し、次いで、このフラグメントイオンを検出および分析し、これによって、選択された第1イオン由来のフラグメントイオンの質量スペクトルを生成するための、質量分析器技術を使用する。
【0006】
1つの型のタンデム型質量分析器は、2つの四重極質量フィルタおよび1つのTOF質量分析器を備える。第1の四重極質量フィルタは、第1イオンを選択する。第2の四重極質量フィルタは、十分に高い圧力および電圧で維持され、複数の低エネルギー衝突が起こって、選択された第1イオンのフラグメントを生成する。TOF質量分析器は、このフラグメントイオンを検出し、そしてこのフラグメントイオンのスペクトルを分析する。
【0007】
当該分野において公知のいくつかの型のTOF質量分析器が存在する。これらは、複数のイオン源を備える直線分析器、フィールドフリーの排気されたドリフト空間、および検出器を備える。別の型のTOF質量分析器は、フィールドフリードリフト空間の中にあるイオン偏向器をさらに備えて、イオン飛行時間の運動エネルギーへの依存を最小にする。なお別の型の質量分析器(米国特許第6,348,688号に記載される)は、タンデム型TOF質量分析器を提供するために、さらなる要素(例えば、イオン加速器、イオンフラグメント化器、および時限式イオン選択器)を備える。ここで、目的の第1イオン(例えば、特定のサンプルの分子イオン)が選択され、次いでこの目的のイオンが、そのイオンの内部エネルギーを増加させることによって、フラグメント化される。次いで、このイオンフラグメントの質量スペクトルが、第2のTOF質量分析器によって分析される。第1イオンの構造は、そのフラグメント化パターンを解釈することによって決定される。先行技術において、これらの分析器のうちの1つ以上が、単一の器具に組み込まれ得るが、異なる分析器は、同時に作動し得ない。用語「同時に」とは、本明細書中で、複数の分析器が、パルス化イオン源からのイオンの各個々のパルスで作動することを意味すると定義される。
【0008】
先行技術のTOF質量分析器において、複数の型の質量分析器が、イオンが1つより多い分析器によって分析され得るように配置され得る。先行技術に従うTOF質量分析器は、一団のイオンを生成し、そしてこの一団のイオンを加速する、パルス化イオン源を備える。この一団のイオンの一部分(所定の質量範囲に対応する)は、飛行経路に沿って方向付けられ、この飛行経路は、1つ以上の質量分析器を備え得る。1つの選考技術の分光計において、直線TOF質量分析器、反射器TOF質量分析器、およびタンデム型TOF MS−MS質量分析器が、共通の飛行経路を共有する。特定の測定のために使用される分析器は、これらの質量分析器の要素に適切な電圧を印加することによって、選択される。1つのみの質量分析器が、特定の測定について選択され得る。所定の質量範囲外のイオンは、これらのイオンがこれらの分析器の共通の飛行経路に入る前に、イオン偏向器によって排除される。多数の一団のイオンが、分離され、分析され、そしてデジタル化器において合計されて、質量スペクトルを生成する。この質量分析器についての操作条件は、所定の質量範囲内のイオンを記録するために最適化され、そしてイオン源によって生成された、この所定の質量範囲外にあるあらゆるイオンが、処分される。異なる質量分析器、質量範囲および操作様式が、引き続く分析のために選択されえ、そして再度、所定の質量範囲外にあるあらゆるイオンが、処分される。複数の分析器、操作条件、および質量範囲を使用する、複数の質量スペクトルのこの引き続く獲得は、サンプルと時間との両方を浪費する。従って、複数の様式の操作を同時に一度に実施し得る、改善されたTOF質量分析器に対する必要性が存在することが、明らかである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、複数の飛行経路を有するTOF質量分析器に関する。本発明のTOF質量分析器は、同時に一度に実施され得る、複数の操作様式を有する。本発明のTOF質量分析器は、類似の能力を有する公知の質量分析器と比較して、より効率的かつ製造がより安価である。例えば、1つのデジタル化器を使用して、2つの独立した質量分離器について同時にデータを記録し得る。
【0010】
本発明において、複数の質量分析器、質量範囲、および操作条件が、イオン源によって生成される個々の一団のイオンの各々に対して使用され得る。これらの結果は、単一のデジタル化器において合計され得、複数の質量スペクトルが、同時に獲得される。このことは、サンプルのより効率的な使用を可能にし、そして測定のために必要とされる全時間を減少させる。
【0011】
本発明に従うTOF質量分析器は、パルス化イオン源を備え、このパルス化イオン源は、一団のイオンを生成し、そしてこの一団のイオンを加速する。1つの実施形態において、このパルス化イオン源は、レーザー脱離/イオン化イオン源である。別の実施形態において、このパルス化イオン源は、遅延抽出イオン源である。なお別の実施形態において、このパルス化イオン源は、注入器およびパルス化イオン加速器であり、この注入器は、イオンを第1のフィールドフリー領域に注入し、そしてこのパルス化イオン加速器は、注入の方向に直交する方向で、これらのイオンを抽出する。
【0012】
本発明に従うTOF質量分析器は、イオン偏向器を備え、このイオン偏向器は、一団のイオンから選択されたイオンを、第1のイオン経路に沿ってか、または第2のイオン経路もしくは第3のイオン経路に沿って、方向付ける。いくつかの実施形態において、さらにより多くのイオン経路が使用され得る。時間依存型の電圧がこの偏向器に印加されて、利用可能なイオン経路の間を選択肢、そして所定の質量対電荷比の範囲内の質量対電荷比を有するイオンが、選択されたイオン経路に沿って伝搬することを可能にする。1つの実施形態において、本発明は、パルス化イオン源とイオン偏向器との間に介在する、フィールドフリードリフト空間を備える。
【0013】
第1の所定の電圧が、この偏向器に、第1の所定の時間間隔(これは、第1の所定の質量対電荷比の範囲に対応する)にわたって印加され、これによって、第1の質量対電荷比範囲内のイオンを、第1のイオン経路に沿って伝搬させる。1つの実施形態において、この第1の所定の電圧は、0であり、イオンが最初の経路に沿って伝搬し続けることを可能にする。
【0014】
第2の所定の電圧が、この偏向器に、第2の所定の時間範囲(第2の所定の質量対電荷比に対応する)にわたって印加され、これによって、第2の質量対電荷比範囲内のイオンを、第2のイオン化経路に沿って伝搬させる。さらなる時間範囲および電圧(第3、第4などを含む)が、特定の測定のために必要とされるほど多くのイオン経路に適合するために、使用され得る。第1の所定の電圧の振幅および極性は、イオンを第1のイオン経路に偏向させるように選択され、そして第2の所定の電圧の振幅および極性は、イオンを第2のイオン経路に偏向させるように選択される。第1の時間間隔は、第1の所定の質量対電荷比範囲内のイオンが、偏向器を通って伝搬する時間に対応するように選択され、そして第2の時間間隔は、第2の所定の質量対電荷比範囲内のイオンが、偏向器を通って伝搬する時間に対応するように選択される。
【0015】
第1のTOF質量分離器は、第1のイオン経路に沿って伝搬する、第1の質量対電荷比範囲内の一団のイオンを受容するように位置決めされる。第1のTOF質量分離器は、第1の質量対電荷比範囲内のイオンを、これらのイオンの質量に従って分離する。第1の偏向器が、第1のイオン経路に沿って伝搬しているイオンの第1の群を受容するように位置決めされる。第2のTOF質量分離器が、第2のイオン経路に沿って伝搬している一団のイオンの一部分を受容するように位置決めされる。
【0016】
第2のTOF質量分離器は、第2の質量対電荷比範囲内のイオンを、これらのイオンの質量に従って分離する。第2の検出器は、第2のイオン経路に沿って伝搬しているイオンの第2の群を受容するように位置決めされる。いくつかの実施形態において、さらなる質量分離器および検出器(第3、第4などが挙げられる)が、対応する経路に沿って方向付けられたイオンを受容するように位置決めされ得る。1つの実施形態において、第3のイオン経路が使用され、この第3のイオン経路は、第3の所定の質量範囲内のイオンを処分する。
【0017】
用語「質量分離器」とは、TOF質量分析器において、分析されるべきイオンを生成するイオン源の後でありかつイオン検出デバイスの前に位置決めされる、領域を意味するように、本明細書中において定義される。第1の質量分離器および第2の質量分離器は、任意の型の質量分離器であり得る。例えば、第1の質量分離器および第2の質量分離器のうちの少なくとも1つは、フィールドフリー領域、イオン加速器、イオンフラグメント化器、または時限式イオン選択器を備え得る。第1の質量分離器および第2の質量分離器はまた、複数の質量分離デバイスを備え得る。
【0018】
1つの実施形態において、このTOF質量分析器は、イオンの第1の群を受容するように位置決めされたイオン偏向器を備え、これによって、このイオン偏向器は、イオンの第1の群についての、このTOF質量分析器の解像力を改善する。1つの実施形態において、このTOF質量分析器は、イオン反射器を備え、このイオン反射器は、イオンの第2の群を受容するように位置決めされ、これによって、このイオン反射器は、イオンの第2の群についての、このTOF質量分析器の解像力を改善する。
【0019】
1つの実施形態において、このTOF質量分析器は、第1のデータ分析器および第2のデータ分析器を備え、これらのデータ分析器は、それぞれ第1の検出器および第2の検出器に、電気的に接続される。別の実施形態において、このTOF質量分析器は、単一のデータ分析器を備え、このデータ分析器は、第1の検出器と第2の検出器との両方に、電気的に接続される。
【0020】
1つの実施形態において、プロセッサが、時間により変動する電圧を発生させ、この電圧は、イオン偏向器に印加されて、パルス化イオン源が一団のイオンを生成した後に、第1の所定の時間間隔にわたって、一団のイオンの第1の部分を第1のイオン経路に偏向させ、そして第2の所定の時間間隔にわたって、イオン団の第2の部分を第2のイオン経路に偏向させる。このプロセッサは、データ分析器に、第1の検出器および第2の検出器のうちの少なくとも1つによって生成された電気信号を記録し、パルス化イオン源によって生成されたイオンの質量対電荷比を決定するように指示し得る。この電気信号は、単一のパルスによってか、または平均質量スペクトルを生成するために合計された、いくつかのサンプルの複数のパルスから、発生され得る。
【0021】
本発明に従う、TOF質量分析のための方法は、目的のサンプルから一団のイオンを生成し、そしてこの一団のイオンを加速する工程を包含する。この一団のイオンは、イオンの単一のパルスであり得る。1つの実施形態において、この一団のイオンは、レーザー脱離/イオン化を実施することによって生成される。別の実施形態において、この一団のイオンは、イオンをフィールドフリー領域に注入し、次いでこれらのイオンを、注入の方向に直交する方向で加速することによって、生成される。
【0022】
第1の所定の質量範囲内の質量電荷比を有する一団のイオン由来のイオンが、第1のTOF質量分迫器に方向付けられ、ここで、これらのイオンは、これらのイオンの質量対殿か比に従って分離され、そして検出される。第2の所定の質量範囲内の質量対電荷比を有する一団のイオン由来のイオンは、第2のTOF質量分析器に方向付けられ、ここで、これらのイオンは、これらのイオンの質量対電荷比に従って分離され、そして検出される。第1の質量範囲内および第2の質量範囲内のイオンは、任意の手段によって分離され得る。例えば、第1の質量範囲および第2の質量範囲のうちの少なくとも1つが、フィールドフリードリフト空間を通してイオンをドリフトさせることによって、分離され得る。
【0023】
第1の質量範囲および第2の質量範囲は、任意の手段によって決定され得る。1つの実施形態において、第1の質量範囲のイオンを検出するための時間間隔は、イオンの第2の群を検出するための時間間隔と重ならない。1つの実施形態において、この方法は、イオンの第1の群が比較的低い質量のイオンを含み、そしてイオンの第2の群が比較的高い質量のイオンを含むように、実施される。
【0024】
本発明に従って、イオンの1団に対してTOF質量分析を実施する方法は、目的のサンプルから一団のイオンを生成し、そしてこの一団のイオンを加速する工程を包含する。この一団のイオンは、イオンの単一のパルスであり得る。この一団のイオンの一部分は、この一団のイオンを生成した後の所定の時点で偏向される。イオンの第1の群が、この一団のイオンの一部分から分離され、次いで検出される。イオンの第2の群が、この一団のイオンの一部分から分離される。次いで、イオンの第2の部分の一部分が、フラグメント化される。次いで、イオンの第2の分およびそのフラグメントが、検出される。1つの実施形態において、イオンの第1の群を検出するための時間間隔は、イオンの第2の群およびそのフラグメントを検出するための時間間隔と重ならない。
【0025】
本発明は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の上記局面およびさらなる局面は、以下の説明を、添付の図面と組み合わせて参照することによって、よりよく理解され得る。図面において、同じ番号は、種々の図において、同じ構造的要素および特徴を示す。図面は、必ずしも同一縮尺ではなく、本発明の原理を説明する際に、強調がなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(詳細な説明)
図1は、本発明に従う、複数の飛行経路を有する直線TOF質量分析器10の実施形態の概略図を図示する。用語「直線TOF質量分析器」とは、イオン経路が実質的に共直線の経路に沿った1つの方向である質量分析器を意味するように、本明細書中で定義される。別の実施形態において、本発明に従うTOF質量分析器は、非直線のイオン経路を有し得る。用語「非直線飛行経路」とは、方向を変化させる飛行経路を意味するように、本明細書中で定義される。例えば、本発明のTOF質量分析器は、1つ以上の遅延静電場を用いてイオンの方向を変化させる、イオン経路に沿ったイオン反射器(これはまた、反射ミラーまたはイオンミラーと称される)を備え得る。
【0027】
いくつかの公知のTOF質量分析器は、複数の飛行経路を有する。例えば、公開されたPCT出願番号WO 00/77823 A2(これは、本願の譲受任に譲とされている)は、イオンビームを異なる飛行経路に空間的に押し込むように適合された、レンズおよびステアリングプレートを備える。これらのレンズおよびステアリングプレートは、イオンビームの焦点をずらして、このイオンビームの一部分を環状偏向器に衝突させるために使用される。この環状偏向器は、第1イオンのスペクトルを獲得するための、時限式のイオン選択器の前に位置決めされる。第1イオンのスペクトルが獲得された後に、これらのレンズおよびステアリングプレートは、イオンビームをCIDセルの入口に部分的に集束させ、目的のイオンを選択し、そして分析する。しかし、この公知のTOF質量分析器および他の公知のTOF質量分析器は、本発明に関連して本明細書中に記載されるような、単一パルスのイオンの間の複数の操作様式を達成し得ない。
【0028】
直線TOF質量分析器10は、サンプル14から一団のイオンを生成する、パルス化イオン源12を備える。用語「一団のイオン」とは、パルス化イオン源において単一の電気パルスによって生成される、一群のイオンを意味するように、本明細書中で定義される。サンプル14は、パルス化イオン源12が一団のイオンを生成し得る任意のサンプルであり得る。例えば、サンプル14は、タンパク質の酵素消化によって生成されるペプチドの混合物を含有する、生物学的サンプルであり得る。このサンプルはまた、無機化学的サンプルもしくは有機化学的サンプル、または有機化合物と無機化合物との混合物であり得る。
【0029】
1つの実施形態において、パルス化イオン源12は、遅延抽出イオン源であり、これは、イオン化事象に引き続いて所定の時間遅延の後に、イオンを抽出する。例えば、1つの実施形態において、パルス化イオン源12は、遅延抽出レーザー脱離/イオン化イオン源(図示せず)である。この実施形態において、パルス化レーザー16は、パルス化レーザービーム18でイオン化されるサンプル14を照射するように使用される。レーザービーム18は、レーザーパルスの間に、一団のイオンを生成する。
【0030】
別の実施形態において、パルス化イオン源12は、イオン注入器(図示せず)およびパルス化イオン加速器(図示せず)を備え、このイオン注入器は、第1のフィールドフリー領域内にイオンを注入し、そしてこのパルス化イオン加速器は、注入の方向に直交する方向でイオンを加速することによって、一団のイオンを、注入されたイオンから抽出する。他の実施形態(図示せず)において、パルス化イオン源12は、空気力に補助されるエレクトロスプレー、化学的イオン加減、またはICPイオン源である。
【0031】
生成された一団のイオンは、サンプル14および抽出グリッド22のうちの少なくとも1つに、イオン化後の所定の時点において電位を印加することによって、加速される。イオン偏向器26が、加速されたイオンの経路20に沿って位置決めされ、加速された一団のイオンを受容する。1つの実施形態において、フィールドフリードリフト空間24が、抽出グリッド22とイオン偏向器26との間に介在する。
【0032】
イオン偏向器26は、イオン化後の第1の所定の時間間隔の間に、第1のイオン経路28に沿って一団のイオンの第1の部分を方向付け、そしてイオン化後の第2の所定の時間間隔の間に、第2のイオン経路30に一団のイオンの第2の部分を方向付ける。任意の型のイオン偏向器が使用され得る。1つの実施形態において、1対の電極が、最初の伝搬の方向に対して実質的に平行に位置決めされる。イオンビームが、これらの電極の間を通過し、そしてこれらの電極の間の電位差が、これらのイオンビームを偏向させる。
【0033】
偏向の規模は、イオンの運動エネルギーに対する電位差の規模、電極間の間隔、および最初の伝搬の方向での偏向場の長さのようなパラメータを変化させることによって、制御される。偏向の方向は、印加される電位差の極性によって決定される。本発明の質量分析器のいくつかの実施形態において、イオン偏向器は、2つ以上の異なるイオン経路(図示せず)に、生成された一団のイオンを方向付けるために使用される。図1に図示される実施形態において、偏向器26に印加される電圧は、第1の所定の時間間隔の間は0であり、第1のイオン経路28は、加速されたイオン経路20と同時に起こる。第1のイオン経路28および第2のイオン経路30は、排気されたフィールドフリードリフト空間内に閉じ込められ、この空間は、一団のイオンにおけるイオンを、それらのイオンの質量対電荷比に従って、時間で分離する。第1の検出器32は、第1のイオン経路28の端部に位置決めされて、第1のイオン経路28内に伝搬したイオン団内のイオンを受容する。第2の偏向器34は、第2のイオン経路30の端部に位置決めされて、第2のイオン経路30内に伝搬したイオン団内のイオンを受容する。
【0034】
第1の所定の時間間隔は、第1の所定の質量範囲が偏向器26に達する時間間隔に対応するように選択され、そして第2の所定の時間間隔は、第2の所定の質量範囲が偏向器26に達する時間間隔に対応するように選択される。パルス化イオン源に適用される操作条件は、実質的に第1の質量範囲内にあるイオンが第1のイオン検出器32に間に合って集束され、そして実質的に第2の範囲内にあるイオンが第2のイオン検出器34に間に合って集束されるように、調節される。検出器32および34についての利得および他の操作条件は、それぞれ、第1の質量範囲および第2の質量範囲に対して独立して最適化され得る。
【0035】
2つ以上の質量範囲について質量スペクトルを同時に獲得することは、操作者がより迅速に、かつより効率的に、様々な型のイオンを検出することを可能にし、従って、目的のサンプルを分析するために要する時間を減少させる。
【0036】
図2は、本発明に従う第3の飛行経路を幽邃、そして1つの飛行経路内にイオンミラーを有する、TOF質量分析器50の実施形態の概略図を図示する。TOF質量分析器50は、パルス化イオン源12を備え、このパルス化イオン源は、図1に関して記載されたように、サンプル14から一団のイオンを生成する。1つの実施形態において、パルス化イオン源12は、遅延抽出イオン源であり、これは、イオン化事象に引き続いて、所定の時間遅延の後に、イオンを抽出する。
【0037】
発生した一団のイオンは、サンプル14および抽出グリッド22のうちの少なくとも1つに、イオン化後の所定の時点で電位を印加することによって、加速される。イオン偏向器26’が、加速されたイオンの経路20に沿って位置決めされ、加速された一団のイオンを受容する。1つの実施形態において、フィールドフリードリフト空間24が、抽出グリッド22とイオン偏向器26’との間に介在する。
【0038】
イオン偏向器26’は、イオン化後の第1の所定の時間間隔の間に、経路20に沿って伝搬する一団のイオンの第1の部分を、第1のイオン経路28へと方向付ける。イオン偏向器26’はまた、第2の所定の時間間隔の間に、経路20に沿って伝搬する一団のイオンの第2の部分を、第2のイオン経路30へと方向付け、そして第3の所定の時間間隔の間に、経路20に沿って伝搬する一団のイオンの第3の部分を、第3のイオン経路52へと方向付ける。任意の型の偏向器が、図1に関して記載されたように、使用され得る。
【0039】
図2に図示される実施形態において、偏向器26’に印加される電圧は、第1の所定の時間間隔の間は0であり、第1のイオン経路28は、加速されたイオン経路20と同時に起こる。一団のイオンの第1の部分は、第1のイオン経路28に沿ってイオン反射器54へと伝搬する。イオン反射器54は、一団のイオンを、第1の検出器32に反射させる。第2の経路30に偏向されたイオンは、第2の検出器34によって検出され、そして第3の経路52に偏向されたイオンは、第産の検出器56によって検出される。1つの実施形態において、TOF質量分析器50は、第3の検出器56を備えず、そして第3のイオン経路52に偏向されたイオンは、処分される。1つの実施形態において、第1の検出器32、第2の検出器34、および第3の検出器56は、単一のデジタル化器(図示せず)に電気的に結合されて、3つ全ての検出器からのスペクトルが、1つのデジタル化器によって同時に記録される。
【0040】
本発明に従うTOF質量分析器50の、多数の物理的実施形態が存在する。分析器50の実際の幾何学的形状は、多くの設計パラメータ、ならびに所望される特定の用途および測定に依存する。本発明を説明する目的で、以下の実施例が記載される。この実施例において、サンプル14とイオン偏向器26’との間の有効距離は、約4cmであり、第2の検出器30までの有効距離は、約20cmであり、そして反射分析器における第1の検出器30までの有効距離は、約200cmである。この実施例において、「有効距離」は、フィールドフリー領域については物理的距離に等しく、そして電場を含む領域については、フィールドフリー領域を通る飛行時間が電場を含む領域を通る飛行時間と等しくなるように、イオンがフィールドフリー領域を移動しなければならない距離として定義される。例えば、均一な電場の残りの部分からイオンが加速される場合、「有効距離」は、その電場の長さの2倍である。
【0041】
この例において、パルス化イオン源12は、遅延励起MALDI源であり、これは、質量20,000が第2検出器34において時間収束されるように、調整される。この収束の長さは、質量対電荷比の平方根にほぼ比例する。この実施形態において、質量2000は、約6.3cmにて収束される。イオン反射器54に印加される電圧は、質量2000が第1検出器32で再収束されるように、調整される。この実施形態において、500ダルトンに等しい、m/zを有するイオンは、イオン源12がパルスされた後、約0.5μ秒にてイオン検出器26’に到達し、3000ダルトンに等しいm/zを有するイオンは、約1.22μ秒にてイオン検出器26’に到達し、そして50,000ダルトンに等しいm/zを有するイオンは、約5μ秒にてイオン検出器26’に到達する。
【0042】
時間0において、イオン検出器26’中のイオンを第3イオン経路52へと向かわせる電圧が、イオン検出器26’に印加され、この第3イオン経路52において、これらのイオンは廃棄される。約0.5μ秒後、イオン検出器26’に印加された電圧は、停止される。これにより、500〜3000のm/z範囲のイオンがイオン反射器54へと通過し、その後、第1検出器32へと通貨する。1.22μ秒後、イオン検出器26’中のイオン(これは、3000より大きなm/zを有する)を第2イオン経路30、そして第2検出器34へと向かわせる、第2電圧が印加される。5μ秒後、約50,000より大きなm/zを有する任意のイオンを第3飛行経路52へと向かわせる電圧が、イオン検出器26’へと印加され、この第3飛行経路52において、これらのイオンは廃棄される。
【0043】
従って、この例において、0と500との間のm/z範囲にあるイオンおよび50,000よりも大きなm/z範囲にあるイオンは、廃棄される。範囲3000〜50,000にあるm/zを有するイオンは、約6.1μ秒と24.9μ秒との間の時間範囲内に、第2検出器32に到達する。500と3000との間のm/z範囲にあるイオンは、2.5μ秒と61.2μ秒との間の時間範囲内に、第1検出器30に到達する。これらの時間範囲は重複しないので、単一のデジタル化器が、両方のスペクトルを記録するために使用され得る。両方のスペクトルは、イオン源からの各イオンパルスについて記録され、多数のパルスからのスペクトルが、両方の質量範囲についての平均したスペクトルを同時に記録するために、デジタル化器により付加され得る。検出器利得および各質量範囲について使用されるデジタル化器のビン(bin)幅が、独立して最適化され得る。
【0044】
この例において、パルス化イオン源12とイオン検出器26’との間の有効距離は、イオン検出器26’から第1検出器32、第2検出器34、および第3検出器56までの有効距離に対して、短い。また、イオン検出器26’の物理的長さは、パルス化イオン源12とイオン検出器26’との間の有効距離に対して、短い。
【0045】
一実施形態において、イオン検出器26’の物理的長さは、パルス化イオン源12と、最も近い検出器との間の有効距離の10%に満たない。従って、イオン検出器26’に印加される電圧がある値から別の値へと変換される時点のイオン検出器26’内のイオン数は、最小になる。変換の間のイオン検出器26’内のイオン数を最小にすることによって、2つのビーム経路の間で部分的に偏向されて移動する検出されないイオンの数が最小になり、従って、測定の精度および感度が増加する。
【0046】
TOF質量分析計50について多くの適用が存在する。一実施形態において、TOF質量分析計50は、低分子量ペプチドと、より高分子量のペプチドおよびタンパク質との同時測定を実施する。低分子量ペプチドは、イオン反射器54および第1検出器32を使用して、第1イオン経路において高分解能で測定される。より高分子量のペプチドおよびタンパク質は、より低分解能で測定されるが、第2検出器34を使用して、第2イオン経路30中でより高感度で測定される。この実施形態において、第3検出器56は、必要ではなく、第3イオン経路52中へと偏向されるイオンは、廃棄される。
【0047】
図3は、本発明に従うTOF質量分析計100の実施形態のブロック図を示し、このTOF質量分析計は、1つのイオン経路中に第1質量分離器を有し、別のイオン経路中に第2質量分離器を有する。質量分析計100は、本明細書中に記載される一団のイオンを生成して加速する、パルス化イオン源102を備える。その後、加速された一団のイオンは、本明細書中に記載される質量分離器103を通して伝搬する。イオン検出器104は、イオン化後の所定の時間間隔の間に、生成した一団のイオンを第1イオン経路106および第2イオン経路108中へと偏向する。イオン偏向器104は、任意の型のイオン検出器であり得る。
【0048】
第1質量分離器110は、第1イオン経路106中に位置し、第2質量分離器112は、第2イオン経路108中に位置する。質量分離器110、112は、本明細書中に記載されるような任意の型のTOF質量分離器であり得る。第1検出器114は、第1イオン経路106中の第1質量分離器110の後に位置する。第2検出器116は、第2イオン経路108中の第2質量分離器112の後に位置する。
【0049】
第1検出器114および第2検出器116は、一団のイオン中のイオンが検出器114、116の表面に衝突する時に、出力として、電気パルスを生じる。第1検出器114の利得は、質量スペクトルの特定の部分の検出を最適にするために、第2検出器116の利得とは独立して調整され得る。また、第2検出器116の利得とは独立している第1検出器114の利得を調整することは、検出器の飽和を減少または排除するために使用され得る。
【0050】
第1検出器114および第2検出器116は、データ分析計またはデジタル化器118に電気接続されている、出力を有する。一実施形態において、デジタル化器118は、積分遷移(integrating transient)デジタル化器である。デジタル化器118は、第1検出器114および第2検出器116により生成される電気パルスを、時間の関数として記録する。一団のイオンの生成と、検出されるイオンに応じて第1検出器114および第2検出器116により生成される電気パルスの記録との間の時間間隔は、検出されるイオンの質量対電荷比の測定を提供するように、較正される。
【0051】
デジタル化器118は、第1質分離器110により分離されるイオンについてのデータと、第2質量分離器112により分離されるイオンについてデータとを、実質的に同時の時間に収集する。2つの独立した質量分離器についてのデータを記録するために1つのデジタル化器を使用すると、同等の能力を有する公知のTOF質量分析計と比較して、TOF質量分析計100の全コストを減少する。
【0052】
図5に関連して記載される別の実施形態において、TOF質量分析計は、第1および第2のデータ分析計またはデジタル化器を備え、これらは、第1質量分離器110により分離されるデータと、第2質量分離器112により分離されるデータとを、別個に収集する。2つのデジタル化器を備えると、TOF質量分析計のコストは有意に増加する。しかし、2つの検出器またはそれより多くの検出器によりイオンを検出するための時間範囲が重複する適用においては、質量スペクトルを明確に決定するために2つ以上のデジタル化器を使用することが、必要であり得る。
【0053】
2つのデジタル化器を備えると、デジタル化される特定のスペクトルのために適切な特性を有するデジタル化器を、各質量分離器について操作者が選択することが、可能にある。例えば、一実施形態において、第1質量分離器110が、質量スペクトルの低質量武運を分離するために使用され、第2質量分離器112が、質量スペクトルの高質量部分を分離するために使用される。
【0054】
この実施形態において、第1デジタル化器は、比較的小さいビン(bin)幅を有するように選択された第1検出器114に接続される。なぜなら、時間分解能が、第1デジタル化器にとって特に重要であるからである。第2デジタル化器は、比較的大きなビン(bin)幅を有する第2検出器116に接続される。なぜなら、時間分解能は、第2デジタル化器にとってそれほど重要ではなく、質量スペクトルを記録するために必要とされる全ビン(bin)の数を減少することが、有利であるからである。
【0055】
一実施形態において、TOF質量分析計100は、個々の記録につき1カウント/ビン(bin)未満が予測される場合、第1検出器114および第2検出器116のうちの1つから取得されるデータから、質量スペクトルのより弱い部分を記録する、イオン計数時間−デジタル変換器(TDC)(示さず)を備える。この実施形態において、積分遷移(integrating transient)デジタル化器は、他の検出器により検出されるスペクトルのより強い部分を記録し得る。
【0056】
一実施形態において、第1検出器114および第2検出器116のうちの一方において記録されるスペクトルが、第1検出器114および第2検出器116のうちのもう一方において記録される質量スペクトルを内部較正するために、使用される。第1検出器114および第2検出器116において記録されるスペクトルについての相対的質量スケールは、パルス化イオン源102から第2検出器116までの距離に対する、パルス化イオン源102から第1検出器114までの距離に依存する。その相対的距離は、第1検出器114および第2検出器116の両方において既知の質量についてスペクトルを記録することによって、正確に決定され得る。
【0057】
この実施形態において、TOF質量分析計100は、種々のパラメータ(例えば、加速電圧の変化、一団のイオンを形成することと飛行時間測定の開始との間の時間的遅延、ならびにパルス化イオン源102から第1検出器114および第2検出器116までの物理的変化)の結果として生じ得る飛行時間の変動について、較正する必要があり得る。例えば、パルス化イオン源102から第1検出器114および第2検出器116までの物理的距離は、TOF質量分析計内の熱膨張の結果として変化し得る。一実施形態において、TOF質量分析計100は、熱膨張の効果を減少するように設計される。この実施形態において、第1検出器114および第2検出器116は、両方が同じ熱膨張を経験するように、取り付けられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、TOF質量分析計100は、パルス化イオン源102、質量分離器103、パルス化イオン偏向器104、第1質量分離器110および第2質量分離器112のうちの少なくとも1つを制御する処理装置(示さず)、ならびにデジタル化器118を備える。本発明のTOF質量分析計100の一局面は、種々の操作様式が、電気的に選択され得ることである。この処理装置は、操作様式を選択するために使用され得る。処理装置はまた、デジタル化器118からのデータを処理して、検出されえるイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比を決定するために、使用され得る。
【0059】
2つのイオン群を分析するために直線MS様式でTOF質量分析計100を操作する方法は、パルス化イオン源102を用いて一団のイオンを生成する工程、およびその一団のイオンをパルス化イオン偏向器104に向かって加速させる工程を包含する。パルス化イオン検出器104は、イオン化後の所定時間において、生成した一団のイオンを、第1イオン経路106および第2イオン経路108へと偏向させる。
【0060】
第1TOF質量分離器110および第2TOF質量分離器112は、それぞれ、イオンの第1群および第2群を選択する。第1検出器114は、イオンの第1群を、時間の関数として検出する。第2検出器116は、イオンの第2群およびそのフラグメントを、時間の関数として検出する。TOF質量分析計100を操作する直線MS様式は、2つの質量範囲において比較的高い質量感度を提供し得る。第1検出器114の利得および第2検出器116の利得は、2つの質量範囲における質量検出を最適にするために、独立して調整され得る。
【0061】
例えば、一実施形態において、TOF質量分析計100は、第1質量分離器110および第2質量分離器112のうちの一方で低質量イオンを分離し、第1質量分離器110および第2質量分離器112のうちのもう一方で高質量イオンを分離する。低質量イオンについての焦点面は、所定の励起パルス遅延のための高質量イオンについての焦点面よりも、パルスイオン生成器102に近い。
【0062】
また、スペクトルの低質量部分の強度は、しばしば、スペクトルの高質量部分の強度よりもかなり強い。従って、この実施形態において、低質量イオンを検出する検出器の利得は、高質量イオンを検出する検出器の利得よりも低いように選択される。低質量検出器および高質量検出器の利得を適切に調整すると、低質量イオンおよび高質量イオンの両方について高い質量感度が生じ、そしてまた検出器飽和が排除される。
【0063】
図4は、本発明に従うTOF質量分析計150の実施形態のブロック図を示し、このTOF質量分析計は、1つの飛行経路中に質量分離器を有し、別の飛行経路中にタンデム型TOF質量分離器を有する。本発明のTOF質量分析計150の一局面は、複数の操作様式が実施され得ることである。このTOF質量分析計150は、複数の操作様式を、時間的に独立してかまたは同時に実施し得る。
【0064】
TOF質量分析計150は、図2に関連して記載されたTOF質量分析計100と類似する。しかし、TOF質量分析計150は、タンデム型TOF質量分析計152を備える。TOF質量分析計150は、本明細書中に記載される一団のイオンを生成して加速するパルス化イオン源102を備える。その後、加速された一団のイオンは、本明細書中に記載されるような質量分離器103を通って伝搬する。パルス化イオン偏向器104は、生成した一団のイオンを、イオン化後の所定の時点で、第1イオン経路106および第2イオン経路108へと偏向する。
【0065】
タンデム型TOF質量分離器152が、第1イオン経路106中に位置する。タンデム型TOF質量分析器152は、直列して位置する複数の質量分離器を備える。タンデム型TOF質量分離器152は、任意の型の分離器の一連の組み合わせである。一実施形態において、タンデム型TOF質量分離器152は、直列して構成された第1質量分離器および第2質量分離器を備える。例えば、第1および第2のTOF質量分離器は、イオン加速器、イオン選択器、およびイオン断片化器を備え得る。タンデム型TOF質量分離器152は、サンプルに関する構造情報を決定するために使用される。
【0066】
質量分離器110は、第2イオン経路108中に位置する。質量分離器110は、本明細書中に記載される任意の型の質量分離器であり得る。第1検出器114は、第1イオン経路106中のタンデム型TOF質量分離器152の後に位置する。第2検出器116は、第2イオン経路106中のタンデム型質量分離器152の後に位置する。第1検出器114および第2検出器116は、一団のイオン中のイオンが検出器114および検出器116の表面に衝突する時に、電気パルスを出力として生成する。第1検出器114の利得は、本明細書中に記載されるような第2検出器116の利得とは独立して調整され得る。
【0067】
第1検出器114および第2検出器116は、データ分析器またはデジタル化器118に電気接続された出力を有する。デジタル化器118は、第1検出器114および第2検出器116によって生成される電気パルスを、時間の関数として記録する。一団のイオンの生成と、検出されるイオンに応じて第1検出器114および第2検出器116から生成される電気パルスの記録との間の時間間隔は、イオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比の測定を提供するように較正される。検出されるイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比の測定から、一次イオンに関する構造情報が、決定され得る。
【0068】
デジタル化器118は、第1質量分離器110によって分離されるイオンについてのデータと、タンデム型TOF質量分離器152によって分離されるイオンについてのデータとを、時間的に実質的に同時に収集する。いくつかの実施形態において、TOF質量分析計150は、パルス化イオン源102、質量分離器103、パルス化イオン偏向器104、第1質量分離器110、タンデム型TOF質量分離器152、およびデジタル化器118のうちの少なくとも1つを制御する処理装置(示さず)を備える。この処理装置は、操作様式を選択するために使用され得る。この処理装置はまた、デジタル化器118からのデータを処理して、検出されるイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比を決定するために、使用され得る。
【0069】
TOF質量分析計150は、時間的に連続してかまたは同時に実施され得る、複数の操作様式を有する。例えば、TOF質量分析計150は、直線MS様式およびMS−MS様式の両方で同時に作動し得る。直線MS様式は、第1イオンの質量対電荷比を測定するために使用され得る。MS−MS様式は、第2イオン(前駆イオンまたは狭い範囲の前駆イオン)およびそのフラグメントの質量対電荷比を測定して、その第2イオンの分子構造を決定するために、使用され得る。従って、操作者は、公知のMS−MS機器と比較して、所定時間の間により多くの情報を、TOF質量分析計150から決定し得る。
【0070】
直線MS様式およびMS−MS様式でTOF質量分析計150を操作する方法は、パルス化イオン源102を用いて一団のイオンを生成する工程、およびその一団のイオンを質量分離器103の中へイオン偏向器104の方へと加速する工程を包含する。イオン検出器104は、第1イオン経路106において生成した一団のイオンから所定の質量範囲内の選択した第1イオン群を伝搬し、そして第2イオン経路108中へと一団のイオンの残りを偏向させる。
【0071】
タンデム型TOF質量分離器152は、第1イオン群から前駆イオン(または狭い範囲の前駆イオン)を選択し、その後、それらの前駆イオンを断片化する。第1検出器114は、時間の関数として、その前駆イオンおよびそのフラグメントを検出する。TOF質量分離器110は、第2イオン経路108において、一団のイオンの残りを分離する。第2検出器116は、第2イオン群からのイオンの質量スペクトルを、時間の関数として検出する。第1検出器114および第2検出器116の特徴および位置は、それぞれ、第1イオン群および第2イオン群中のイオンについて最適な分解能を提供するように選択され得る。第1検出器114および第2検出器116の利得は、2つの質量範囲中の質量の検出を最適にするように独立して調整され得る。
【0072】
第1検出器114および第2検出器116の両方は、検出器116によって検出される最高質量のイオンは、最低質量のフラグメントイオンが検出器114に到達する前に検出器116に到達することを仮定すると、本明細書中に記載されるような単一デジタル化器118に電気接続され得る。起こり得るあらゆる重複が、フラグメントスペクトルを重複させ得る高質量イオンをイオン経路106および108の両方から離れるように偏向させることによって、回避され得る。
【0073】
一実施形態において、MS−MSを備えた直線MS様式が、同位体によりコードされるアフィニティタグ技術を実施するために使用される。ICATTM試薬技術は、複合体サンプルを分離および分析して、構成成分タンパク質を同定して相対発現レベルを決定するための、質量分析法ベースの方法である。例えば、正常供給源および疾患供給源の両方に由来する複合体タンパク質サンプルが、別個に標識され得、その後あわされ得、精製され得、そして質量分析法によって分析され得る。発現されるタンパク質は、個々のタンパク質レベルでの変化を測定すること、および存在するタンパク質を同定することによって、種々の条件下で比較される。ICAT試薬技術は、治療介入のための標的、あるいは診断研究または毒性研究のためのマーカーを発見するために、使用され得る。
【0074】
TOF質量分析計150は、定量的タンパク質発現および重要タンパク質の同定を同時に実施し得る。直線MS様式が、定量的タンパク質発現を実施するために使用される。MS−MS様式が、重要タンパク質の同定を実施するために使用される。この適用において、使用される適切な同位体標識の質量(代表的には、8または9ダルトンである)ごとに異なるピーク対の相対強度を正確に決定することが、必要である。タンパク質の複合混合物に適用される場合、これらのスペクトルは、しばしば、100倍以上強度が異なる多数のそのようなピーク対を含む。
【0075】
正確な定量のためには、広範な動的範囲にわたってこれらのピークの強度を正確に測定することが必要である。そのスペクトル中の多数のピークを選択し、そのフラグメントに関するMS−MSスペクトルを得て、選択される構成成分が誘導されるタンパク質を同定するためにその選択される構成成分の構造を決定することもまた、必要である。先行技術のMS−MS機器において、単一ピークまたは小さい質量範囲が、選択され、断片化され、そして検出され、選択された質量範囲の外側のイオンはすべて、廃棄される。
【0076】
本発明に従うTOF質量分析計は、選択された質量範囲の外側のピークを第2質量分析計および検出器へと転送し、その後、MS−MSスペクトルを記録するためにしようされた同じデジタル化器を使用して、これらのピークを記録する。有効イオン飛行距離は、MSスペクトルが、MS−MSフラグメントスペクトルについて使用されるのとは異なる時間範囲内に入るように、選択される。各スペクトルについての検出器特徴は、独立して最適化され得る。従って、本発明のTOF質量分析計は、MS−MSスペクトル、およびMS−MSについて選択された部分以外の完全MSスペクトルの両方を、得るために使用され得る。
【0077】
望ましいMS−MS測定のすべてを完了した後、MSスペクトルは、一緒に合計されて、高品質完全MSスペクトルが生成され得る。測定精度は、そのスペクトルにおいて記録されたイオンの総数の平方根に比例する。従って、生成されるイオンのうちの本質的にすべてを検出すると、大部分のイオンがMS−MS測定の間に廃棄される公知の質量分析計と比較して、測定の精度を実質的に改善する。
【0078】
図5は、本発明に従うTOF質量分析計200のブロック図を示し、このTOF質量分析計は、1つのイオン経路中に第1タンデム型質量分離器を有し、別のイオン経路中に第2タンデム型質量分離器を有する。TOF質量分析計200は、図4に関連して記載されたTOF質量分析計150と類似する。しかし、TOF質量分析計200は、2つのタンデム型TOF質量分離器152および202を備える。
【0079】
TOF質量分析計200は、一団のイオンを生成して加速する、パルス化イオン源102を備える。その後、加速された一団のイオンは、本明細書中に記載される質量分離器103を通って伝搬する。イオン検出器104は、イオン化後の所定の時間間隔にて、その一団のイオンを、第1イオン経路106および第2イオン経路108へと偏向させる。
【0080】
タンデム型TOF質量分離器152は、第1イオン経路106中に位置する。第2タンデム型TOF質量分離器202は、第2イオン経路108中に位置する。タンデム型TOF質量分離器152および202は、本明細書中に記載されるような任意の型の質量分離器の一連の組み合わせを備える任意の型の質量分離器であり得る。例えば、第1TOF質量分離器152および第2TOF質量分離器202は、イオン加速器、イオン選択器、およびイオン断片化器を備え得る。
【0081】
第1検出器114は、第1イオン経路106においてタンデム型TOF質量分離器の後に位置する。第2検出器116は、第2イオン経路108において第2タンデム型TOF質量分離器の後に位置する。第1検出器114および第2検出器116は、イオンがこの検出器114および116に衝突した時に、電気パルスを出力として生成する。第1検出器114の利得は、本明細書中に記載されるような第2検出器とは独立して調整され得る。
【0082】
第1検出器114および第2検出器116は、それぞれ、第1デジタル化器204および第2デジタル化器206に電気接続されている出力を有する。第1デジタル化器204は、第1検出器114により生成される電気パルスを時間の関数として記録する。一団のイオンの生成と、検出されるイオンに応答して第1デジタル化器204および第2デジタル化器206により生成される電気パルスの記録との間の時間間隔は、検出されるイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比の測定を提供するように較正される。
【0083】
第1デジタル化器204および第2デジタル化器206は、2つの異なる型の前駆イオンについての検出されるイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比についてのデータを、時間的に実質的に同時に収集する。2つのデジタル化器は、本発明のこの実施形態において必要であり得る。なぜなら、2つのフラグメントスペクトルについての時間範囲は、重複し得るからである。
【0084】
いくつかの実施形態において、TOF質量分析計200は、パルス化イオン源102、質量分離器、パルス化イオン偏向器104、タンデム型TOF質量分離器151、第2タンデム型TOF質量分離器202、ならびに第1デジタル化器204および第2デジタル化器206のうちの少なくとも1つを制御する、処理装置(示さず)を備える。この処理装置は、操作様式を選択するために使用され得る。この処置装置はまた、第1デジタル化器204および第2デジタル化器206からのデータを処理して、前駆イオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比およびその前駆イオンについての構造情報を決定するために、使用され得る。
【0085】
TOF質量分析計200は、時間的に連続してかまたは同時に実施され得る、複数の操作様式を有する。一実施形態において、TOF質量分析計200は、2つの異なる前駆イオン(または狭い範囲の前駆イオン)に対するMS−MS分析を同時に実施する。TOF質量分析計200は、第1イオン経路106においてMS−MS様式で動作し、第2イオン経路108においてMS−MS様式で動作する。2つのMS−MS様式の同時操作により、2つの異なる型の前駆イオンからの構造情報を操作者が同時決定することが可能になる。従って、操作者は、公知のMS−MS機器と比較して、所定時間の間にTOF質量分析計200から多くの情報を決定する。
【0086】
図6は、本発明に従う非直線TOF質量分析計250のブロック図を示し、このTOF質量分析計は、1つのイオン経路中に質量分離器を有し、別のイオン経路中に質量分離器およびイオン反射器を有し、そして第3イオン経路中にタンデム型質量分離器を有する。非直線TOF質量分離器250は、図3のTOF質量分析計150と類似する。しかし、この非直線TOF質量分析計250は、第3イオン経路において非直線質量分析計252を備える。
【0087】
非直線TOF質量分析計250は、一団のイオンを生成するパルス化イオン源102を備える。その後、加速された一団のイオンは、本明細書中に記載されるような質量分離器103を通って伝搬する。パルス化イオン偏向器104は、生成した一団のイオンを、イオン化後の所定の時点で、第1イオン経路106、第2イオン経路108、および第3イオン経路254へと偏向させる。タンデム型TOF質量分離器152は、第1イオン経路106中に位置する。タンデム型TOD質量分離器153は、本明細書中に記載されるように直列した複数の質量分離器を備える。質量分離器110は、第2イオン経路108中に位置する。質量分離器110は、本明細書中に記載される任意の分離器であり得る。
【0088】
非直線252は、第3イオン経路254中に位置し、そして本明細書中に記載されるような質量分離器110および112に類似する質量分離器256を備える。この非直線分析器252はまた、第3イオン経路254において質量分離器256の後に位置する、イオン反射器258を備える。このイオン反射器258は、非直線動作様式のために使用される。
【0089】
第1検出器114は、第1イオン経路106においてタンデム型TOF質量分離器152の後に位置する。第2検出器116は、第2イオン経路108において質量分離器110の後に位置する。第3検出器260は、第3イオン経路254においてイオン反射器258の後に位置する。第1検出器114、第2検出器116および第3検出器260は、一団のイオン中のイオンが検出器114、116および260に衝突した時に、出力にて電気パルスを生成する。
【0090】
第1検出器114、第2検出器116および第3検出器260の特徴および位置は、検出されるイオンおよびフラグメントの最適な分解能力を提供するように、選択され得る。例えば、第1検出器114の利得および第2検出器116の利得は、検出されるイオンおよびそのフラグメントについて最適な分解能力を提供するように、独立して調整され得る。
【0091】
第1検出器114、第2検出器116、および第3検出器260は、デジタル化器118に電気接続されている出力を有する。デジタル化器118は、第1検出器114、第2検出器116、および第3検出器260によって生成される電気パルスを、時間の関数として記録する。一団のイオンの生成と、検出されるイオンに応答して第1検出器114、第2検出器116、および第3検出器260によって生成される電気パルスの記録との間の時間間隔は、そのイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比の測定を提供するように較正される。前駆イオンに関する構造情報が、そのイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比の測定から決定され得る。
【0092】
デジタル化器118は、第1質量分離器110、タンデム型TOF質量分離器152、および非直線質量分析計252によって分離されたイオンについてのデータを、時間的に実質的に同時に収集する。第1検出器114、第2検出器116、および第3検出器260は、最高質量のイオンは、本明細書中に記載されるような最小質量のフラグメントの前に上記検出器のうちの1つに衝突すると仮定すると、本明細書中に記載されるような単一のデジタル化器118に接続され得る。一実施形態において、イオン経路106、108および254の距離は、高質量イオンと低質量イオンとのスペクトル重複を回避するように調整される。一実施形態において、検出器104は、ある所定の質量を超えるイオンが、第3検出器260に到達するのを防いで、第1検出器114および第2検出器116により検出される質量スペクトルが重複するのを回避するように、エネルギー付与される。
【0093】
いくつかの実施形態において、TOF質量分析計250は、パルス化イオン源102、質量分離器103、パルス化イオン検出器104、第1質量分離器110、タンデム型TOF質量分離器152、非直線質量分析計252、およびデジタル化器118のうちの少なくとも1つを制御する、処理装置(示さず)を備える。この処理装置は、操作様式を選択するために使用され得る。この処理装置はまた、デジタル化器118からのデータを処理して、検出されるイオンおよびそのフラグメントの質量対電荷比を決定し、かつ前駆イオンの構造情報を決定するために、使用され得る。
【0094】
非直線TOF質量分析計250は、時間的に連続してかまたは同時に実施され得る、複数の操作様式を有する。この非直線TOF質量分析計250は、3つの操作様式を同時に実施し得る。3つの操作様式を同時に実施する能力により、この機器の処理能力および効率は有意に増加し得る。公知のタンデム型MS−MS機器において、3つの操作様式のうちのただ1つだけが、任意の所定時間に実施され得る。
【0095】
一実施形態において、TOF質量分析計250は、直線MS様式、MS−MS様式、および非直線MS様式において、同時に作動する。例えば、直線MS様式は、1つのイオン型を測定するために使用され得る。MS−MS様式は、別のイオン型の前駆イオン(または狭い範囲の前駆イオン)およびそのフラグメントの両方を測定して分子構造を決定するために、使用され得る。非直線MS様式は、第3のイオン型の高分解能質量分析のために使用され得る。
【0096】
直線MS様式、MS−MS様式、および非直線MS様式において非直線TOF質量分析計250を操作する方法は、パルス化イオン減102を用いて一団のイオンを生成する工程、その一団のイオンを、パルス化イオン検出器104に向けて加速する工程、を包含する。このパルス化イオン検出器104は、イオン化後の所定時間において、生成した一団のイオンを、第1イオン経路106、第2イオン経路108、および第3イオン経路254へと偏向させる。
【0097】
タンデム型TOF質量分離器152は、イオンの第1群中の前駆イオンを分離し、その後、その前駆イオンをフラグメント化する。第1検出器114は、上記前駆イオンおよびそのフラグメントを、時間の関数として検出する。TOF質量分離器110は、イオンの第2群中のイオンを分離する。第2検出器116は、イオンの第2群中のイオンの質量スペクトルを、時間の関数として検出する。
【0098】
非直線質量分析計252中の質量分離器256は、イオンの第3群中のイオンを分離する。イオンの第3群中の分離されたイオンは、質量分離器256を通過し、イオン反射器258へと貫通する。イオンの第3群中の分離されたイオンは、その後、イオン反射器258により生成される電界の方向における速度成分が0になるまで、減速される。イオンの第3群中の分離されたイオンは、イオン反射器258を通って方向を逆転され、そして逆方向に加速される。イオンの第3群中の分離されたイオンは、入射エネルギーと実質的に同じエネルギーで、しかし、反対方向の速度で、イオン反射器258を出る。
【0099】
例えば、より大きなエネルギーを有するイオンは、より深く貫通し、結果的には、より長い時間イオン反射器258に留まる。適切に設計されたイオン反射器において、電位は、イオンの飛行経路を改変して、同様の質量および電荷を有するイオンが初期エネルギーに関わらず同じ時間に第3検出器260に到達するように、選択される。従って、非直線質量分析計252は、比較的高い質量分解能を提供する。一実施形態において、非直線質量分析計252は、低い質量のイオンを検出するために使用される。イオン反射器258の焦点距離は、第3検出器260上へとより低質量を集束させるように調整される。
【0100】
本発明のTOF質量分析計について、多くの適用が存在する。例えば、本発明のTOF質量分析計についての1つの適用は、広範な質量範囲を有するペプチドおよびインタクトタンパク質の分子量を決定することである。例えば、本発明のTOF質量分析計は、2〜3ダルトン〜数十万ダルトンの質量範囲にある小さいペプチドおよびインタクトタンパク質の正確な分子量を同時に決定し得る。公知のTOF質量分析計は、同等の精度および感度を達成するために、一連の質量範囲にわたる数回の別個の測定を必要とする。
【0101】
広範な質量範囲および動的範囲にわたってそのような測定を行うことは、公知の質量分析計には困難である。MALDIマトリックスから誘導されるイオンは、代表的には、1kD未満の質量を有する。これらのイオンの量は、目的のタンパク質イオンの量と比較して非常に大きいものであり得る。これらの低質量イオンが検出器に衝突する場合、これらのイオンは、検出器を飽和し、その検出器が目的の高質量イオンを検出する能力を減少させる。公知の技術の1つは、パルス化偏向器を使用して低質量イオンを飛行経路から離れるように方向付け、その結果、高質量イオンのみが、検出される。しかし、これが行われる場合、低質量部分に関係するあらゆる情報が失われ、これらのイオンは、測定されない。
【0102】
本発明に従うTOF質量分析計は、第2検出器を用いてこれらの低質量イオンを検出可能である。第2検出器のパラメータ(例えば、その検出器の位置および利得)は、スペクトルの低質量部分を検出するために第2検出器の性能を最適化するために、独立して調整され得る。第2検出器により利用される時間範囲が第1検出器により使用される時間範囲と重複しない限り、単一デジタル化器が、第1検出器および第2検出器の両方のために使用され得る。
【0103】
本発明のいくつかの適用において、低質量イオンは、特に目的とされない。なぜなら、低質量イオンは、十分に特徴付けられるMALDIマトリックスから生成されるからである。しかし、低質量イオンおよび高質量イオンの両方のスペクトルが、各レーザーパルスについて同時に記録され、その結果、例えば温度変化に起因する電圧または距離の制御されていないいかなる変動も、両方のイオンセットについて同じである。低質量マトリックスの質量は既知であるので、既知のマトリックスイオンに対応するピークが、高質量イオンの質量較正を補正するために使用され得る。
【0104】
本発明のTOF質量分析計は、イオン反射器を備えたTOD質量分析計を使用して、低質量イオンの高分解能スペクトルを取得し得る。本発明に従うTOF質量分析計はまた、フィールドフリードリフト空間と検出器とを備える直線TOF質量分析計を使用して、高質量イオンの低分解能スペクトルを取得し得る。
【0105】
公知の質量分析計は、イオン源とイオン鏡との間で単一のイオン経路を使用し、これらの適用にとって十分には適していない。これらの公知の分析計において、直線検出器が、イオン経路に沿ってイオン鏡の後ろに位置する。高質量スペクトルが、鏡電圧を停止してイオンを直線検出器へと通過させることによって、直線検出器において取得され得る。原理上、鏡電圧は、各イオンパルスの飛行時間の間のいつかに、停止され得る。しかし、原理上、そのような手順は、いくつかの理由が原因で実際的ではない。理由の1つは、全質量範囲の大部分が、選択される任意の時間において鏡内にあることである。この鏡が停止された場合、これらのイオンは、両方のスペクトルに対してノイズしか寄与しない。さらに、イオン源集束条件は、直線検出器についてと、反射器については異なる。従って、2つの別個の測定が、必要となる。
【0106】
本発明に従うTOF質量分析計についてなお別の適用は、質量スペクトルにおいて多数のピークの強度を正確に決定すること、その後、そのスペクトル中に選択したピークをフラグメント化してそのフラグメントに関するMS−MSスペクトルを取得し、選択した成分の構造を決定することである。公知の質量分析計は、単一のピークまたは小さな質量範囲を選択し、その後、選択したイオンをフラグメント化して検出する。選択した質量範囲の外側にあるすべてのイオンは、廃棄される。
【0107】
本発明に従うTOF質量分析計は、選択した質量範囲の外側にあるイオンを、第2質量分析計および検出器へと方向転換させ、その後、デジタル化器へと向かわせる。このデジタル化器は、MS−MSスペクトルのために使用されるデジタル化器と同じデジタル化器であり得る。有効イオン飛行距離が、MSスペクトルがMS−MSフラグメントスペクトルのために使用される時間範囲とは異なる時間範囲内にあるように、選択される。各スペクトルについての検出器特徴は、独立して最適化され得る。従って、各MS−MSスペクトルはまた、MS−MS分析のために選択された部分以外は、完全なMSスペクトルを含む。
【0108】
望ましいMS−MS測定すべてを完了した後、MSスペクトルは、一緒に合計されて、高品質な完全MSスペクトルが生成される。測定の精度は、そのスペクトルにおいて記録される全イオン数の平方根に比例する。従って、上記イオンの本質的にすべてを検出すると、公知の質量分析計と比較して、測定の精度が実質的に改善される。公知の質量分析計においては、イオンの大部分は、MS−MS測定の間に廃棄される。
【0109】
(等価物)
本発明は、具体的な好ましい実施形態に関して特に示され記載されているが、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形式および詳細の種々の変化がこれらの実施形態においてなされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、本発明に従う、複数の飛行経路を有するTOF直線質量分析器の実施形態の概略図を図示する。
【図2】図2は、本発明に従う3つの飛行経路を有し、そして2つの飛行経路内にイオンミラーを有する、TOF質量分析器の実施形態の概略図を図示する。
【図3】図3は、1つのイオン経路内に第1の質量分離器を有し、そして別のイオン経路内に第2の質量分離器を有する、本発明に従うTOF質量分析器の実施形態のブロック図を図示する。
【図4】図4は、第1の飛行経路内に質量分析器を有し、そして別の飛行経路内にタンデム型質量分離器を有する、本発明に従うTOF質量分析器の実施形態のブロック図を図示する。
【図5】図5は、1つのイオン経路内に第1のタンデム型質量分離機を有し、そして別のイオン経路内に第2のタンデム型質量分析器を有する、本発明に従うTOF質量分析器のブロック図を図示する。
【図6】図6は、第1の飛行経路内に質量分離器を有し、第2の飛行経路内にイオン反射器を有し、そして第3の飛行経路内にタンデム型質量分離器を有する、本発明に従う非直線TOF質量分析器のブロック図を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の飛行経路を有するTOF質量分析器であって、該TOF質量分析器は、
a)一団のイオンを生成し、そして該一団のイオンを加速させる、パルス化イオン源;
b)イオン偏向器であって、該一団のイオンを受容し、そして該パルス化イオン源が該一団のイオンを生成した後の第1の所定の時間間隔にわたって、該イオンの第1の群を、該一団のイオンから第1のイオン経路へと方向付け、そして該パルス化イオン源が該一団のイオンを生成した後の第2の所定の時間間隔にわたって、該イオンの第2の群を、該一団のイオンから第2のイオン経路へと方向付ける、イオン偏向器;
c)該第1のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第1の群を受容するように位置決めされた、第1のTOF質量分離器であって、該第1のTOF質量分離器は、該イオンの質量対電荷比に従って、該イオンの第1の群を分離する、第1のTOF質量分離器;
d)該第1のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第1の群を受容するように位置決めされた、第1の検出器;
e)該第2のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第2の群を受容するように位置決めされた、第2のTOF質量分離器であって、該第2のTOF質量分離器は、該イオンの質量対電荷比に従って、該イオンの第2の群を分離する、第2のTOF質量分離器;および
f)該第2のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第2の群を受容するように位置決めされた、第2の検出器;
を備える、TOF質量分析器。
【請求項2】
前記パルス化イオン源が、レーザー脱離/イオン化イオン源を備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項3】
前記パルス化イオン源が、遅延励起イオン源を備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項4】
前記パルス化イオン源が、イオンを第1のフィールドフリー領域に注入する注入器、および該イオンを該注入の方向に直交する方向で抽出するパルス化イオン加速器を備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項5】
前記第1のTOF質量分離器および第2のTOF質量分離器のうちの少なくとも1つが、フィールドフリードリフト領域を備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項6】
前記パルス化イオン源と前記イオン偏向器との間に、質量分離器をさらに備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項7】
前記質量分離器が、フィールドフリー領域を備える、請求項6に記載のTOF質量分析器。
【請求項8】
前記第1のTOF質量分離器および第2のTOF質量分離器のうちの少なくとも1つが、イオンフラグメント化器を備え、該イオンフラグメント化器は、該第1のTOF質量分離器および第2のTOF質量分離器のうちの少なくとも1つにおいて伝搬するイオンの一部分をフラグメント化する、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項9】
前記第1のTOF質量分離器および前記第2のTOF質量分離器のうちの少なくとも1つが、時限式イオン選択器を備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項10】
前記イオンの第1の群を受容するように位置決めされるイオン偏向器をさらに備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項11】
前記イオンの第2の群を受容するように位置決めされるイオン偏向器をさらに備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項12】
請求項1に記載のTOF分析器であって、第1のデータ分析器および第2のデータ分析器をさらに備え、該分析器は、それぞれ、前記第1の検出器および第2の検出器に電気的に接続されている、TOF分析器。
【請求項13】
前記第1の検出器と第2の検出器との両方に電気的に接続されている、データ分析器をさらに備える、請求項1に記載のTOF質量分析器。
【請求項14】
前記データ分析器が、単一のパルスによってか、または平均質量スペクトルを生成するために合計された同じサンプルの複数のパルスのいずれかによって生成される電気信号を受信するデジタル化器である、請求項12に記載のTOF質量分析器。
【請求項15】
前記データ分析器が、単一のパルスによってか、または平均質量スペクトルを生成するために合計された同じサンプルの複数のパルスのいずれかによって生成される電気信号を受信するデジタル化器である、請求項13に記載のTOF質量分析器。
【請求項16】
請求項1に記載のTOF質量分析器であって、プロセッサをさらに備え、該プロセッサは、前記パルス化イオン源が前記一団のイオンを生成した後の第1の所定の間隔にわたって、前記イオンの第1の群を、前記第1のイオン経路に沿って伝搬するように方向付け、そして該パルス化イオン源が該一団のイオンを生成した後の第2の所定の間隔にわたって、イオンの第2の群を、前記第2のイオン経路に沿って伝搬するように、前記イオン偏向器に指示する、TOF質量分析器。
【請求項17】
請求項1に記載のTOF質量分析器であって、プロセッサをさらに備え、該プロセッサは、前記第1の検出器および第2の検出器のうちの少なくとも一方によって生成される電気信号を記録するようにデータ分析器に指示し、該プロセッサは、前記パルスイオン源によって生成されるイオンの質量対電荷比を決定する、TOF質量分析器。
【請求項18】
TOF質量分析のための方法であって、該方法は、
a)目的のサンプルから一団のイオンを生成し、そして加速する工程;
b)該一団のイオンを生成した後の第1の所定の時間の後に、イオンの第1の群を、該一団のイオンから第1のイオン経路へと方向付ける工程;
c)該イオンの第1の群を、該イオンの質量対電荷比に従って分離する工程;
d)該イオンの第1の群を検出する工程;
e)該一団のイオンを生成した後の第2の所定の時間において、イオンの第2の群を、該一団のイオンから第2のイオン経路へと方向付ける工程;
f)該イオンの第2の群を、該イオンの質量対電荷比に従って分離する工程;および
g)該イオンの第2の群を検出する工程;
を包含する、方法。
【請求項19】
前記イオンの第1の群を検出するための時間範囲が、前記イオンの第2の群を検出するための時間範囲と重ならない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イオンの第1の群を検出する工程が、該イオンの第1の群に対応するデータをデジタル化する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記イオンの第2の群を検出する工程が、該イオンの第2の群に対応するデータをデジタル化する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記イオンの第1の群が、比較的低い質量のイオンを含み、そして前記イオンの第2の群が、比較的高い質量のイオンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記一団のイオンを生成する工程が、レーザー脱離/イオン化を実施する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記一団のイオンを生成し、そして加速する工程が、イオンをフィールドフリー領域に注入する工程、および該イオンを、該注入の方向に直交する方向で加速する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記イオンの第1の群を分離する工程が、該イオンの第1の群を、フィールドフリードリフト空間を通してドリフトさせる工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記イオンの第2の群を分離する工程が、該イオンの第2の群を、フィールドフリードリフト空間を通してドリフトさせる工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記イオンの第1の群をフラグメント化する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記イオンの第2の群をフラグメント化する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記イオンの第1の群を分離する工程が、所定の時間間隔内でイオンを選択する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記イオンの第2の群を分離する工程が、所定の時間間隔内でイオンを選択する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記一団のイオンが、イオンの単一のパルスを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記データをデジタル化する工程が、単一のパルスによって生成されたか、または平均質量スペクトルを生じるように合計された同じサンプルの複数のパルスから生成されたかのいずれかの電気信号を受信する工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
前記データをデジタル化する工程が、単一のパルスによって生成されたか、または平均質量スペクトルを生じるように合計された同じサンプルの複数のパルスから生成されたかのいずれかの電気信号を受信する工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
複数の飛行経路を有するTOF質量分析器であって、該TOF質量分析器は、
a)一団のイオンを生成し、そして該一団のイオンを加速する、パルス化イオン源;
b)イオン偏向器であって、該イオン偏向器は、該一団のイオンを受容し、そして該パルス化イオン源が該一団のイオンを生成した後の第1の所定の時間間隔にわたって、イオンの第1の群を、該一団のイオンから第1のイオン経路へと方向付け、該パルス化イオン源が該一団のイオンを生成した後の第2の所定の時間間隔にわたって、イオンの第2の群を、該一団のイオンから第3のイオン経路へと方向付け、そして該パルス化イオン源が該一団のイオンを生成した後の第3の所定の時間間隔にわたって、イオンの第3の群を、該一団のイオンから第2のイオン経路へと方向付ける、イオン偏向器;
c)該第1のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第1の群を受容するように位置決めされた、第1のTOF質量分離器であって、該第1のTOF質量分離器は、該イオンの第1の群を、該イオンの質量対電荷比に従って分離する、第1のTOF質量分離器;
d)該第1のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第1の群を受容するように位置決めされた、第1の検出器;
e)該第2のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第2の群を受容するように位置決めされた、第2のTOF質量分離器であって、該第2のTOF質量分離器は、該イオンの第2の群を、該イオンの質量対電荷比に従って分離する、第2のTOF質量分離器;
f)該第2のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第2の群を受容するように位置決めされた、第2の検出器;
g)該第3のイオン経路に沿って伝搬する該イオンの第3の群を受容するように位置決めされた、第3のTOF質量分離器であって、該第3のTOF質量分離器は、該イオンの第3の群を、該イオンの質量対電荷比に従って分離する、第3のTOF質量分離器、
を備える、TOF質量分析器。
【請求項35】
前記第3のイオン経路に沿って伝搬する前記イオンの第3の群を受容するように位置決めされた、第3の検出器をさらに備える、請求項34に記載のTOF質量分析器。
【請求項36】
TOF質量分析計であって、
a)一団のイオンを生成し、そして加速するための手段;
b)該一団のイオンを生成した後の第1の所定の時間間隔にわたって、イオンの第1の群を、該一団のイオンから第1のイオン経路へと方向付けるための手段;
c)該イオンの第1の群を分離するための手段;
d)該イオンの第1の群を検出するための手段;
e)該一団のイオンを生成した後の第2の所定の時間間隔にわたって、イオンの第2の群を、該一団のイオンから第2のイオン経路へと方向付けるための手段;
f)該イオンの第2の群を分離するための手段;および
g)該イオンの第2の群を検出するための手段、
を備える、TOF質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−511912(P2006−511912A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563709(P2004−563709)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040276
【国際公開番号】WO2004/059693
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(595165597)パーセプティブ バイオシステムズ,インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】PerSeptive Biosystems,Inc.
【住所又は居所原語表記】500 Old Connecticut Path,Framingham,Massachusetts 01701,United States of America
【Fターム(参考)】