説明

複数ユニットポリマー前駆体を含有するスライド塗布液の方法

複数ユニットポリマー前駆体を含む第1の流体(55)を供給し、第1の流体を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、第1の塗布層を形成するために、第1の流体を第1のスライド表面(53)から基材(18)まで流すことによって基材を第1の流体で塗布し、基材を移動させ、第1の塗布層を硬化する、ことを含むスライド塗布の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複数ユニットポリマー前駆体を含むスライド塗布液の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド塗布は、基材に1つ又はそれ以上の液層を塗布する方法である。液層の前駆体を組成する1つ又はそれ以上の液は、斜面上に開く1つ又はそれ以上のスロットから流出する。1つ又はそれ以上の液は、斜面を流れ落ち、塗布ギャップを横切って、上向きに動く基材上に流れる。この分野で数多くの開発が報告されてきたが、スライド塗布の塗布速度の上限は、一般に基材上に塗布されるポリマー溶液のレオロジーによって決定づけられてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書に開示されるのは、複数ユニットポリマー前駆体を含む第1の液を供給し、第1の液を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことによって基材を第1の液で塗布し、基材を移動させ、第1の液を硬化させる、ことを含むスライド塗布の方法である。
【0004】
また本明細書に開示されるのは、複数ユニットポリマー前駆体と単一ユニットポリマー前駆体とを含む第1の液を供給し、第1の液を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことによって基材を第1の液で塗布し、基材を移動させ、第1の液の少なくとも一部を乾燥させ、第1の液を硬化させる、ことを含むスライド塗布の方法である。
【0005】
また本明細書に開示されるのは、複数ユニットポリマー前駆体と、単一ユニットポリマー前駆体と、1つ又はそれ以上の溶媒とを含む第1の液を供給し、第1の液を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、ローラを使用して基材を第1のスライド表面を通過させて移動させ、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことによって基材を第1の液で塗布し、第1の液を乾燥させ、第1の液を硬化させる、ことを含むスライド塗布の方法である。
【0006】
以下の本開示の異なる実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて考慮することで、本開示のより完全な理解が可能である。
【0007】
図面は、必ずしも縮尺にしたがうものではない。図面で用いられる同様の番号は同様の構成要素を示すものとする。ただし、与えられた図の構成要素を示す数字の使用は、同じ数字を付された別の図の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本明細書に開示される方法を実行するために使用することができるスライドコータの側断面図。
【図2】図1に示されるスライドコータの部分的な平面図。
【図3】図1に示されるスライドコータの部分的な側断面図。
【図4】図1に示されるスライドコータの実施形態の部分的な側断面図。
【図5】図1に示されるスライドコータの実施形態の部分的な側断面図。
【図6】図1に示されるスライドコータの実施形態の概略図及び追加の構成要素。
【図7】図1に示されるスライドコータの実施形態の部分的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で特に述べる以外の実施形態が意図され、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく作られてもよい。以下の発明を実施するための形態に限定されるものでない。提供する定義は、頻繁に使用されるある用語についての理解を促進するものであり、本開示を限定するものではない。
【0010】
他に指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される形状、量、物理特性を表わす数字はすべて、どの場合においても用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。それゆえに、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。
【0011】
端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に含まれる全ての数(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、並びにその範囲内のあらゆる範囲が含まれる。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書で使用するとき、用語の単数形の使用は、その内容が特に明確に指示しない限り、そのような用語の複数を含む実施形態を包含することができる。例えば、「溶媒を加える」という語句は、その内容が特に明確に指示しない限り、1種の溶媒、又は複数の溶媒を加えることを包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、用語「又は」は、その内容が特に明確に指示しない限り、一般的に「どちらか又は両方」を包含する意味で用いられる。
【0013】
「含む」、「含んでいる」又は同様の用語は、包含するが限定するものではない。すなわち、包括するが排他的ではない。
【0014】
本明細書に開示されるのは、スライド塗布の方法である。本明細書に開示される方法は、一般に利用可能で、当該技術分野で使用されるスライド塗布装置に一般に実施することができる。図1及び2は、一般に基材18用の塗布バックアップローラ32とスライドコータ34とを含んでいるスライド塗布装置30を図示している。スライドコータ34は、4つの液スロット46、48、50、52及びスライド表面53を画成する、5つのスライドブロック36、38、40、42、44を含む。第1のスライドブロック36は、塗布バックアップローラ32に隣接しており、スライド塗布装置30の真空レベルを調整するための真空ボックス54を含む。真空ボックス54は、塗布されたビード全体で差圧を保持する役目をし、それによって、塗布されたビードが安定する。
【0015】
第1の液55は、第1の液供給部56と第1のマニホールド58とを経由して、第1のスロット46に分配されることができる。第2の液60は、第2の液供給部62と第2のマニホールド64とを経由して、第2のスロット48に分配されることができる。第3の液66は、第3の液供給部と第3の液マニホールド70とを経由して、第3の液スロット50に分配されることができる。第4の液72は、第4の液供給部74と第4の液マニホールド76とを経由して、第4の液スロット52に分配されることができる。この実施形態では、第1の液層80、第2の液層82、第3の液層84、及び第4の液層86を含む最大4層までの液構造78の構造が可能となる。製品性能、又は操作の容易さの必要に応じて、追加のスライドブロックを加えて追加の液層を導入することができる。同様に、より少ない層を塗布する場合、例えば2層のみを塗布する場合、スライドブロックを除去することができる。
【0016】
液マニホールド58、64、70、及び76は、それぞれ液スロット46、48、50、52から横方向に均一な分配が行われるように設計されている。この設計は、スロット46、48、50、52に対するスロットの高さH(図3に図示)の選択に特有である。スロットの高さHは、(機械加工の限度による非均一性、又はダイスロット内の超過圧力による棒のゆがみという過度な問題を生じさせることなく)スロット内の圧力低下が、マニホールドを横切る圧力低下よりはるかに大きいように、十分に小さくしてある。これは、液がスロット内で均一に分配されるのに役立つ。
【0017】
図3に示すように、スライドブロック38、40、42、44は、とりわけダイマニホールド内の圧力を最小限にするため、及び機械加工の限度による非均一性という起こりうる問題を克服するために選ばれた、特定のスロットの高さHを有するように構成されることができる。スロットの高さは、通常は約100〜1500マイクロメートル(μm)の範囲を使用した。スライドブロック38、40、42、44もまた、図3に示すように、スロット段Tになるように、高さをずらして配列することができる。これらの段は、縞の発生、及び他の製品欠陥につながり得る、流れの分離ゾーン、及び液の再循環ゾーンの可能性を最小限にすることで、液がスライド表面53を均一に流れ落ちるのに役立つ。これらのスロット段は、約0〜2000μmの高さに及ぶことができる。スライド表面53上で流れの分離が発生することを最小限にする別の方法は、図3に示すように、液スロットの下流側に面取りCを機械加工することによるもので、本明細書で説明するように、スライド塗布の実施形態で使用することができる。
【0018】
スライドブロック36、38、40、42、44の機械加工において、バックアップローラ32に隣接している前部ブロック36の先端と同様に、液スロット46、48、50、及び52の端部を形成するブロック端部の仕上がりも重要になり得る。これらの端部に刻み目、バリ、又は他の欠陥があると、製品に縞が生じる欠陥につながる可能性がある。そのような欠陥を避けるために、端部は約0.02μm(8マイクロインチ)未満の仕上がりまで研磨されることができる。ダイ端部の仕上げの手順に関する詳細は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,851,137号及び米国特許第5,655,948号に開示される。
【0019】
図3は更に、位置角Pと、迎え角Aと、スライド角度Sとを含む、バックアップローラ32に対するスライドコータ34の方向を図示している。(スライド角度Sは、位置角Pと迎え角Aとの和である。)マイナスの位置角Pは一般に、バックアップローラ上の巻きの増大を可能にし、それによって塗布操作が一層安定する。しかしながら、方法は0又はプラスの位置角で使用することができる。スライド角度Sは、少なくとも部分的に、スライド斜面を流れ落ちる液の流れの安定性を決める。大きいスライド角度Sは、表面波が不安定になる原因となる可能性があり、その結果として塗布の欠陥につながる。スライド角度は、一般に0をやや超える数値から約45°に設定することができる。最も近いアプローチでのスライドコータ34とローラ32との間の距離はコーティングギャップGと称される。それぞれの層の湿潤厚さWは、塗布されたビードから実質的に遠く離れているが、相当の乾燥が起こる前に十分近くにある塗布された基材18の表面上の厚さである。
【0020】
スライド塗布装置30の他の部分は、より詳しく説明されるに値する。図4及び5は、耐久性がある低表面エネルギー部88を含むスライドコータの部分を図示している。これらの部分88は、所望の界面エネルギー特性を特定位置に供給し、塗布液を均一に留めて、乾燥した材料が堆積するのを防ぐ。耐久性がある低表面エネルギー部88を作る1つの工程に関する詳細は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,998,549号に開示される。
【0021】
図6は、特別のタイプの端から供給されるマニホールド100及び再循環ループ102を図示している。マニホールド100は、入口ポート104から出口ポート106までスロットLの深さが減少するように、出口ポート106の方へ傾斜して示されていることに留意されたい。液がマニホールド100の入口ポート104から出口ポート106まで横断する際に、スロットの出口で液の横方向の分配が均一であることを確実にするために、傾斜角度は液中の圧力低下を考慮に入れて注意深く調整することができる。図示されたマニホールドの設計では、マニホールド100に入る液の一部分のみが液スロット(スロット46、48、50、又は52等)を通って出て、残りは出口ポート106を通って再循環ループ102に流出する。出口ポート106を通って流れる部分は、再循環ポンプ108によって入口ポート104に再循環することができる。再循環ポンプ108は、液溜め部110及び新鮮な液ポンプ112から新鮮な液を受けることができる。新鮮な液が再利用された液と混合される前に、新鮮な液をろ過する、及び/又は加熱又は冷却するために、流体フィルタ114及び/又は熱交換器116を含むことができる。この場合、端から供給されるマニホールドの設計に適用されるのと同じ原理が、やはり適用可能である。しかしながら、マニホールドの設計、すなわち、キャビティの形状及び傾斜角度は、スロットの高さ及び液体レオロジーの選択のみならず、利用する再循環の割合にも依存する。
【0022】
図2(及び図7)に示されているように、スライド表面53を流れ落ちる液の流れは、表面のそれぞれの端部にエッジガイド119を使用することによって補助され得る。エッジガイド119は、溶液を固体表面に留める働きをなし得、その結果、固定した塗布幅が得られ、更に両端部で液の流れを安定させる。エッジガイドは直線であり得、スライド表面上をスロット46、48、50、52に垂直に流れを誘導することに留意されたい。エッジガイド119は、鋼、アルミニウム等の金属、ポリテトラフルオロエチレン(例えばTEFLON(登録商標))、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリ(メチレンオキシド)又はポリアセタール(例えばDELRIN(登録商標))等のポリマー、木、セラミック等、を含む1種の材料で作ることができ、又はポリテトラフルオロエチレンでコーティングされた鋼等の複数の材料で作ることができる。
【0023】
図7に図示されているように、エッジガイド119Aは収束タイプであり得る。収束角qは、約0度と約90度との間であり得、図2に示されている直線のエッジガイドの場合が0度に相当する。収束角qは、中央に対してビード端部で塗り厚を増加させることによって、塗布されたビード端部の安定性を増加させるために選択することができる。他の実施形態では、エッジガイドは、上述したように、耐久性がある低表面エネルギーの表面又は部を含むことができる。更に、エッジガイドは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,837,324号で説明するように、スライド表面上の液の深さ方向の断面と一致するように外形を作ることができる。
【0024】
スライドコータ34上にカバー又は囲い板を使用することもできる(図示せず)。そのようなカバー又は囲い板の一例が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,725,665号で詳細に説明される。
【0025】
本明細書に開示される方法は一般に、第1の液を供給し、第1の液を基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことによって基材を第1の液で塗布し、基材を移動させ、第1の液を硬化させる、工程を含む。
【0026】
本明細書に開示される方法の第1の工程は、第1の液を供給することを含む。第1の液を供給する工程は、調製済みの第1の液を調達する、又は第1の液を調製することにより遂行することができる。当業者に既知の溶液を調製する任意の方法が、第1の液を調製するために用いることができる。
【0027】
第1の液は、複数ユニットポリマー前駆体を含む。複数ユニットポリマー前駆体は、硬化されるとポリマーになる分子である。複数ユニットポリマー前駆体は重合可能な反応性基をまだ含有しているという理由で、複数ユニットポリマー前駆体はポリマーと区別することができる。オリゴマーの用語は一般に、複数ユニットポリマー前駆体と考えることができる。複数ユニットポリマー前駆体は一般に、形成される最終ポリマーの繰り返されるユニットを2つ以上含む。実施形態では、複数ユニットポリマー前駆体は、約10,000g/モル未満の数平均分子量(Mn)を有する。1つの実施形態では、複数ユニットポリマー前駆体は、約8000g/モル未満の数平均分子量を有する。1つの実施形態では、複数ユニットポリマー前駆体は、約6000g/モル未満の数平均分子量を有する。1つの実施形態では、複数ユニットポリマー前駆体は、約2000g/モル未満の数平均分子量を有する。1つの実施形態では、複数ユニットポリマー前駆体は、約1000g/モルの数平均分子量を有する。
【0028】
任意の複数ユニットポリマー前駆体が第1の液の構成成分として用いられることができる。実施形態では、複数の種類の複数ユニットポリマー前駆体が、第1の液に含まれることができる。実施形態では、アクリレートである複数ユニットポリマー前駆体が用いられることができる。実施形態では、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、カルボン酸半エステル、ポリエステルアクリレート、アクリレート化アクリル(acrylatedacrylics)、又はそれらの混合が、複数ユニットポリマー前駆体として用いられることができる。実施形態では、ウレタンアクリレートが、第1の液の複数ユニットポリマー前駆体として用いられることができる。
【0029】
用いられ得る市販の複数ユニットポリマー前駆体の例としては、Sartomer Company,Inc.(Exton,PA)から入手可能な製品、及びCognis Corporation(Cincinnati,OH)から入手可能なPHOTOMERR及びBISOMERRの製品ラインが含まれる。具体的な化合物は、Photomer(登録商標)6010脂肪族ウレタンジアクリレート(Cognis Corporation,Cincinnati,OH)、Photomer(登録商標)6210脂肪族ウレタンジアクリレート(Cognis Corporation,Cincinnati,OH)、CN 301ポリブタジエンジメタクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 964脂肪族ポリエステル系ウレタンジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 966脂肪族ポリエステル系ウレタンジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 981脂肪族ポリエステル/ポリエーテル系ウレタンジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 982脂肪族ポリエステル/ポリエーテル系ウレタンジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 985脂肪族ウレタンジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 991脂肪族ポリエステル系ウレタンジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、CN 9004二官能性脂肪族ウレタンアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、及びそれらの混合が例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で用いられる任意の液に含まれる特定の複数ユニットポリマー前駆体は、少なくとも一部は製造される最終的な物品に依存する。例えば、硬化されると、耐候性の強化、耐引っかき性の強化、又は他の同様の所望する性質を提供するという理由で、特定の複数ユニットポリマー前駆体が選ばれてもよい。本明細書で用いられる任意の液に利用される特定の複数ユニットポリマー前駆体は、少なくとも一部は第1の液が塗布される基材に依存する。例えば、使用される特定の基材によく付着するという理由で、特別の複数ユニットポリマー前駆体が選ばれてもよい。
【0031】
第1の液はまた、複数ユニットポリマー前駆体に加えて他の構成成分を含んでもよい。他のそのような任意成分の例としては、単一ユニットポリマー前駆体、1つ又はそれ以上の溶媒、光学的増強のための添加剤、反応開始剤、又は他の添加剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
第1の液は所望により、単一ユニットポリマー前駆体を含んでもよい。単一ユニットポリマー前駆体は、硬化されると、複数ユニットポリマー前駆体又はポリマーになる分子である。単一ユニットポリマー前駆体は、硬化されると形成するポリマー内で繰り返されるユニットを1つのみ含む。複数ユニットポリマー前駆体は、硬化されると形成するポリマー内で繰り返されるユニットを2つ以上有するという理由で、単一ユニットポリマー前駆体は、複数ユニットポリマー前駆体と区別することができる。モノマーの用語は一般に、単一ユニットポリマー前駆体と考えることができる。
【0033】
第1の液が単一ユニットポリマー前駆体を含む実施形態では、単一ユニットポリマー前駆体は、複数ユニットポリマー前駆体と類似し得る、又は異なり得る。実施形態では、複数の種類の単一ユニットポリマー前駆体が、第1の液に含まれ得る。実施形態では、アクリレートである単一ユニットポリマー前駆体を用いることができる。実施形態では、一官能性、二官能性、三官能性四官能性、高官能性のアクリレートモノマー、又はそれらの混合を用いることができる。
【0034】
用いられることができる市販の単一ユニットポリマー前駆体の例としては、Sartomer Company,Inc.(Exton,PA)から入手可能な製品が含まれる。具体的な化合物は、SR238 1,6ヘキサンジオールジアクリレートモノマー(Sartomer Company,Inc.,Exton、PA)、SR 355ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート(Sartomer,Exton,PA)、SR 9003プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer,Exton,PA)、SR 506アクリル酸イソボルニル(Sartomer,Exton,PA)、Bisomer HEA 2−ヒドロキシアクリル酸エチル(Cognis Corporation,Cincinnati,OH)、又はそれらの混合が例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で用いられる任意の液に所望により含まれる特定の単一ユニットポリマー前駆体は、少なくとも一部は製造される最終的な物品に依存する。例えば、複数ユニットポリマー前駆体の架橋性を高め、それによって硬化された層の最終的な物質的性質に影響を及ぼすという理由で、特定の単一ユニットポリマー前駆体が選ばれてもよい。同様に、複数ユニットポリマー前駆体の架橋速度を速め、それによって塗布工程全体をより速く行うことができるという理由で、特定の単一ユニットポリマー前駆体が選ばれてもよい。
【0036】
実施形態では、複数ユニットポリマー前駆体の量、及び単一ユニットポリマー前駆体の量(含まれる場合)は、第1の液を塗布する能力及び最終的な塗布された物品の性質の両方に影響を及ぼし得る。複数ユニットポリマー前駆体、及び/又は複数ユニットポリマー前駆体の量が一般に、製造される物品の最終的な物質的性質を少なくとも一部は決定し、単一ユニットポリマー前駆体、及び/又は単一ユニットポリマー前駆体の量が、塗布層の架橋速度を少なくとも一部は決定する、と考えられるが依拠しない。
【0037】
第1の液は所望により、少なくとも1種の溶媒を含んでもよい。実施形態では、この少なくとも1種の溶媒は有機溶媒である。一般に、この少なくとも1種の溶媒は、複数ユニットポリマー前駆体、及び第1の液のいかなる他の任意成分とも親和性があるように選ばれる。この少なくとも1種の溶媒はまた、少なくとも一部は、この溶媒を含有する塗布層を乾燥させる容易さに基づいて選ばれてもよい。当業者は一般に、用いられる特定の複数ユニットポリマー前駆体(及び第1の液に含まれる他の任意成分)を考慮して、含める適切な溶媒を決定することができる。この少なくとも1種の溶媒は、含まれるのであれば、別の1つの構成成分(例えば、複数ユニットポリマー前駆体、又は単一ユニットポリマー前駆体(含まれる場合))と共に溶液中にある溶媒であり得、別々に加える、又はそれらを混合して(その場合、溶媒は同じ溶媒又は異なる溶媒であり得る)加えることができる。
【0038】
本明細書で用いることができる例示的な溶媒には、酢酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテル(Dow Chemical Company,Inc.,Midland,MIからDOWANOL(商標)PMとして市販)、トルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキソラン、エタノール等の有機溶媒、又はそれらの混合が例として挙げられる。実施形態では、第2の液は、10重量%を超える水は含有していない。実施形態では、第1の液は、1重量%を超える水は含有していない。実施形態では、第1の液は、実質的に無水である。
【0039】
第1の液はまた、所望により光学的増強のための添加剤を含んでもよい。光学的増強のための添加剤は一般に、塗布をより良くしてそれによって光学的により優れた製品を作ることができる、又は塗布の光学特性を変えることができる構成成分である。そのような光学的増強のための添加剤はビーズである。例えばビーズは、艶消面を備えた塗布層を提供するために用いることができる。実施形態では、第1の液は所望により、アクリルビーズ等のポリマービーズが含まれてもよい。本明細書で所望により用いることができるポリマービーズの例には、綜研化学株式会社(東京都)からMXの商品名で入手可能な市販のポリメチルメタクリレートビーズ、積水化学工業株式会社からのMBX、Sunjin Chemical Company(韓国)からのLDXシリーズ等のアクリルビーズ、Esprix(Sarasota、FL)からのアクリルビーズ、又はそれらの混合が例として挙げられる。実施形態では、第2の液は所望により、例えば二酸化チタン又はシリカナノ粒子等のナノ粒子を含んでもよい。
【0040】
第1の液はまた、所望により少なくとも1種の反応開始剤を含んでもよい。有用になり得る反応開始剤は、フリーラジカルの熱反応開始剤、及び/又は光開始剤の両方が含まれる。有用なフリーラジカルの熱反応開始剤には、例えばアゾ化合物、過酸化物化合物、過硫酸塩化合物、レドックス系反反応開始剤、又はそれらの混合が挙げられる。有用なフリーラジカル光開始剤には、例えばアクリレートポリマーの紫外線硬化に有用であると知られているものが挙げられる。そのような反応開始剤には、例えばESACURE(登録商標)(LambertiS.p.A、Gallarate(VA)Italy)の商品名で販売される製品が挙げられる。2つ以上の光開始剤の組み合わせもまた使用されてもよい。更に、Pascagoula,MSのFirst Chemical Corporationから市販されている2−イソプロピルチオキサントンなどの増感剤を光開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0041】
当業者に既知であろう他の任意選択の向上のための添加剤、又は他の一般的な添加剤もまた、第1の液に含むことができる。他のそのような任意成分の例としては、例えばフッ素系界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。そのような任意成分の別の例としては、摩擦係数に影響を及ぼす機能をするスリップ剤が挙げられ、使用することができるスリップ剤の例としては、例えばシリコーンポリエーテルアクリレート(すなわちTegoRad、Goldschmidt Chemical Co.、Janesville、WI 2250)がある。
【0042】
第1の液に存在する複数ユニットポリマー前駆体の量は、少なくとも一部は、複数ユニットポリマー前駆体が何であるか、第1の液に含まれてもよい任意成分の有無及びそれが何であるか、及び塗装された物品の最終的用途及び最終的に所望する性質、に依存することが当業者に理解されるであろう。第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)最大約10重量%までの複数ユニットポリマー前駆体が含まれ得る。実施形態では、第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)最大約5重量%までの複数ユニットポリマー前駆体が含まれ得る。実施形態では、第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)約2重量%〜約3重量%の複数ユニットポリマー前駆体が含まれ得る。
【0043】
第1の液が任意選択の単一ユニットポリマー前駆体を含む実施形態では、第1の液に存在する単一ユニットポリマー前駆体の量は、少なくとも一部は、単一ユニットポリマー前駆体が何であるか、他の任意成分及び複数ユニットポリマー前駆体の有無及びそれらが何であるか、及び塗装された物品の最終的用途及び最終的に所望する性質、に依存し得る。第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)最大約90重量%までの単一ユニットポリマー前駆体が含まれ得る。実施形態では、第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)最大約50重量%までの単一ユニットポリマー前駆体が含まれ得る。実施形態では、第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)約20重量%〜約25重量%の単一ユニットポリマー前駆体が含まれ得る。
【0044】
第1の液が所望により少なくとも1種の溶媒を含んでいる実施形態では、第1の液に存在する溶媒の量は、少なくとも一部は、溶媒が何であるか、他の任意成分及び複数ユニットポリマー前駆体の有無及びそれらが何であるか、塗装された物品の最終的用途及び最終的に所望する性質、及び乾燥要件に依存し得る。第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)最大約99.5重量%までの少なくとも1種の溶媒が含まれ得る。実施形態では、第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)最大約50重量%までの少なくとも1種の溶媒が含まれ得る。実施形態では、第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)約15重量%〜約20重量%の少なくとも1種の溶媒が含まれ得る。
【0045】
上述したような第1の液に添加し得る他の任意成分は、任意成分が何であるか、及びそれらが添加される理由(すなわち、得ようとする最終的に所望する性質)に基づいて当業者に既知であろう量を添加し得る。第1の液にビーズが添加される実施形態では、ビーズは一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)約0.02重量%〜約40重量%が第1の液に存在し得る。第1の液に添加されてもよい任意成分のうちのいくつかは、性質においてポリマーであってもよい(例えば界面活性剤)。しかしながら、本明細書で用いられる例示的な第1の液は一般に、(塗布前の第1の液の全重量に基づいて)5重量%を超えるポリマー成分を含有していない。ビーズは、ポリマービーズであっても、ポリマー成分のこの下限値に含まれていないことに注目すべきである。任意のポリマー成分を全く含有していない実施形態では、第1の液は一般に、硬化する前に実質的にポリマーを含まない。第1の液中の任意のポリマー成分は第1の液を塗布するために必要でなく、一般に他の性質に影響を及ぼすためにのみ添加されることに注目すべきである。
【0046】
例示的な実施形態では、第1の液は一般に、少なくとも複数ユニットポリマー前駆体、単一ユニットポリマー前駆体、及び少なくとも1種の溶媒を含んでいる。例示的な実施形態では、第1の液は一般に、少なくとも複数ユニットポリマー前駆体、単一ユニットポリマー前駆体、少なくとも1種の溶媒、及び例えば光開始剤のような少なくとも1種の反応開始剤を含んでいる。例示的な実施形態では、第1の液は一般に、少なくとも複数ユニットポリマー前駆体、単一ユニットポリマー前駆体、少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の反応開始剤、及びポリマービーズを含んでいる。
【0047】
実施形態では、第1の液は、基材上にスライドして塗布されることを可能とする粘度を有する。一般に、第1の液の粘度は、塗布する能力(低粘度の液は一般に塗布し易い)と塗布層のまだらがない表面を得る要望との間の妥協である。実施形態では、第1の液の粘度は、約10センチポアズ(cps)以下である。実施形態では、第1の液の粘度は約5cps以下である。実施形態では、第1の液の粘度は約2cps以下である。第1の液の粘度は、少なくとも一部は、複数ユニットポリマー前駆体の粘度及び第1の液中の複数ユニットポリマー前駆体の量によって決定される。第1の液の粘度は、特定の複数ユニットポリマー前駆体をより少なく使用する、若しくは複数ユニットポリマー前駆体をより低い粘度で使用するのどちらかによって、又はそれらの組み合わせによって減少し得る。
【0048】
単一ユニットポリマー前駆体等の任意成分を含む第1の液を用いる実施形態では、第1の液の粘度は、少なくとも一部は、単一ユニットポリマー前駆体の粘度及び/又は第1の液中の単一ユニットポリマー前駆体の量に基づいて決定され得る。第1の液の粘度は、特定の単一ユニットポリマー前駆体をより少なく使用する、あるいは単一ユニットポリマー前駆体をより低い粘度で使用するのどちらかによって、又はそれらの組み合わせによって減少し得る。
【0049】
第1の液の粘度はまた、第1の液に含まれてもよい溶媒によって影響され得る。溶媒は、第1の液に含まれる場合、第1の液の粘度に重要な効果を与え得る。一般に、第1の液中の溶媒の量が増加するにつれて、第1の液の粘度は一般に減少する。同様に、より低い粘度を備える溶媒が用いられるについて、第1の液の粘度は減少する。粘度はまた、第1の液に含まれてもよい他の任意選択の添加剤によって影響され得る。当業者は、そのような任意選択の添加剤が液の粘度にどのように影響を及ぼし得るのかを知っているであろうし、所望の粘度を得るために成分の量及び内容を選択することができるであろう。
【0050】
第1の液の粘度は、塗布する方法、及び塗布を行う装置の設定に影響を及ぼす。例えば、第1の液の粘度が減少するにつれて、第1の液は一般に、より薄い厚さで塗布され得、及び/又は視覚的に条件を満たした塗布をまだ維持しながらも、より速い生産ライン速度で塗布され得る。これとは逆に、第1の液の粘度が上昇するにつれて、第1の液は一般に、より厚い厚さで塗布されなければならず、及び/又は視覚的に条件を満たした塗布を維持するために、より低速の生産ライン速度で塗布されなければならない。
【0051】
本明細書に開示される方法はまた、第1の液を第1のスライド表面に流下させる工程を含む。本明細書に開示される方法で用いることができるスライド塗布装置に関して上述したように、第1の液は、第1の液供給部と第1のマニホールドとを経由して、第1のスロットに分配されることができ、その後、第1の液はスロットを出て、第1のスライド表面に流れ落ちる。更に上述したように、これは一般に、スライド塗布装置自体の設計及び構造によって達成することができる。第1のスライド表面は一般に、基材に隣接して配置される。基材に対する第1のスライド表面の構成が図1に例示される。第1のスライド表面を流れ落ちる第1の液の速度及び量は、少なくとも一部は、第1のスロットのスロットの高さH、第1の液の粘度、及び基材上に得られることになる所望の塗り厚、によって決定づけられる。
【0052】
本明細書に開示される方法はまた、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことによって基材を第1の液で塗布する工程が含まれる。上述したように、第1のスライド表面は一般に、基材に隣接して配置され、第1の液は、第1のスライド表面から塗布ギャップを横切って基材まで流れて、基材上に第1の液の層を形成する。基材上の第1の液の層は一般に、第1の塗布層と呼ぶことができる。
【0053】
一般に、スライド塗布の方法は、第1の液の粘度とスライド塗布装置の塗布ギャップとの間でトレードオフを伴う。塗布工程をよりスムーズにすることができ、所望する性質(条件を満たした外観等)を有する塗布が得られるので、一般に塗布工程の間により大きい塗布ギャップを用いることが望まれる。一般に、粘度が上昇するにつれて、視覚的に条件を満たした層に塗布するためには、塗布ギャップはより小さくならなければならず、反対に、より低い粘度で液を塗布するには、より大きい塗布ギャップを使って実行され得る。一般に、本明細書に開示される塗布方法は、例えば、スロットダイ塗布のような他の塗布方法で可能な生産ライン速度より速い速度で、より大きい塗布ギャップを用いて塗布することができる。一般に、本明細書に開示される方法は、約0.05mm(2ミル)以上(0.002インチ、又は50μm)の塗布ギャップを用いて、液を塗布することができる。
【0054】
本明細書に開示される方法から形成された塗布層は一般に、Twと呼ばれる層の湿潤厚さによって特徴づけることができる。塗布層の湿潤厚さは、塗布されたビードから実質的に遠く離れているが、相当の乾燥が起こる前に十分近くにある基材上の箇所での基材上の第1の液の厚さである。実施形態では、湿潤厚さは、塗布されたビードから約10cm離れた基材上で測定することができる。
【0055】
一般に、スライド塗布の方法は、まだ視覚的に条件を満たした塗布(裏抜け及び他の同様の欠陥がないこと)が得られる塗布層の最小の湿潤厚さと塗布が実行され得る速度との間でトレードオフを伴う。一般に、本明細書に開示される方法は、スライド塗布の方法を用いて一般に塗布される湿潤厚さを塗布するために使用することができる。本明細書に開示されるスライド塗布の方法は一般に、他の塗布方法(例えばスロットダイ塗布等)より速い生産ライン速度で、より低い最小湿潤厚さを塗布することができる。一般に、より低い湿潤厚さは、まだら等の見かけ上の欠陥が少なくてより速く乾かすことができるので、有利になり得る。実施形態では、本明細書に開示される方法は、約6μm以上の湿潤厚さを塗布するために用いることができる。実施形態では、本明細書に開示される方法は、約10μm以上の湿潤厚さを塗布するために用いることができる。実施形態では、本明細書に開示される方法は、毎秒約5.08のメートル(1000フィート/分)の生産ライン速度であっても、約15μm以下の湿潤厚さを塗布するために用いることができる。
【0056】
本明細書に開示される方法はまた、基材を移動させる工程を含む。実施形態では、基材は、塗布バックアップローラを使用して移動される(図1に一例を見ることができる)。一般にバックアップローラは、基材を第1のスライド表面の隣接に移動させ、そこで基材が第1の液で塗布され、次に、第1のスライド表面から塗布された基材を運び去る。バックアップローラは一般に、方法の更なる工程が実行できるように、塗布された基材を第1のスライド表面から運び去るために、スライド塗布装置内に構成される。一般に、本明細書に開示される方法は、一般にスライド塗布で用いられる(生産ライン速度として本明細書で言及された)速度で(塗布するために)基材を第1のスライド表面を通過させて移動させることが含まれる。実施形態では、本明細書に開示される方法は、まだ視覚的に条件を満たした塗布を得ながらも、毎秒約0.508メートル(100フィート/分)以上の生産ライン速度を用いることを含むことができる。実施形態では、本明細書に開示される方法は、まだ視覚的に条件を満たした塗布を得ながらも、毎秒約1.016メートル(200フィート/分)以上の生産ライン速度を用いることを含むことができる。実施形態では、本明細書に開示される方法は、まだ視覚的に条件を満たした塗布を得ながらも、毎秒約5.08メートル(1000フィート/分)以上の生産ライン速度を用いることを含むことができる。
【0057】
本明細書に開示される方法は、一般に塗布される任意の基材、又は塗布されることが望まれる任意の基材を、既知の塗布方法で塗布するために用いることができる。実施例には、例えば、ポリエチレン(PET)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリプロピレン、セルローストリアセテート(TAC)、紙、及びポリカーボネートが挙げられる。基材の選択は、少なくとも一部は、物品の最終的用途及び最終的に所望する性質に基づいて決められる。
【0058】
本明細書に開示される方法はまた、塗布層を硬化させる工程を含む。塗布層の硬化には、第1の液の部分的硬化、又は第1の液の完全な硬化が含まれ得る。硬化は、当業者に一般に周知の、例えば、紫外線源、赤外線照射源、X線源、ガンマ線源、可視光源、マイクロ波源、電子線源、熱、又はそれらの組み合わせを含む使用で達成し得る。熱の利用による硬化が含まれる実施形態では、第1の液を熱で硬化させ得るオーブンが用いることができる。
【0059】
方法はまた、所望により、基材上の第1の液が硬化する前に少なくとも一部を乾燥させる工程を含み得る。第1の液を乾燥させる工程は一般に、第1の液中に存在してもよい溶媒の少なくとも一部の蒸発を含む。乾燥工程は、必須ではないが、塗布されると第1の液中に存在する溶媒をすべて蒸発させることができる。乾燥は、塗布方法が行われている場所に存在する周囲条件に全面的に基づいて達成し得る。あるいは、乾燥条件を(加速又は減速のどちらかで)制御することによって制御し得る。例えば、第1の液の乾燥を加速させるために、乾燥用オーブンを用いて温度を上げることができる。同様に、他の環境条件もまた、第1の液の乾燥を加速させる、及び/又は制御するために影響を及ぼし得る。そのような乾燥条件は、当業者に既知である。乾燥工程はまた、硬化工程の間に続行し得る。
【0060】
本明細書に開示される例示的な方法は、複数ユニットポリマー前駆体と単一ユニットポリマー前駆体とを含む第1の液を供給し、第1の液を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことによって基材を第1の液で塗布し、基材を移動させ、第1の液の少なくとも一部を乾燥させ、第1の液を硬化させる、ことを含む。
【0061】
本明細書に開示される別の例示的な方法は、複数ユニットポリマー前駆体と、単一ユニットポリマー前駆体と、1つ又はそれ以上の溶媒とを含む第1の液を供給し、第1の液を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、ローラを使用して基材を第1のスライド表面を通過させて移動させ、第1の液を第1のスライド表面から基材まで流すことにより基材を第1の液で塗布し、第1の液を乾燥させ、第1の液を硬化させる、ことを含む。
【0062】
本明細書に開示される方法はまた、第1の塗布層上に次の層を塗布することを含むことができる。当業者は本明細書を読んで、そのような次の層の塗布を実行する方法を知っているであろう。塗布される次の液は、第1の液と類似してもよく、又は異なってもよい。
【実施例】
【0063】
様々な塗布ギャップ及び生産ライン速度で良質の塗装品質を得ながらも、塗布することができる最小の湿潤厚さを測定するために、一連の試験を行った。塗布した液の内訳は、2.5重量%のPhotomer(登録商標)6210オリゴマー(Cognis Corporation,Cincinnati,OH)、17.0重量%のSR238 1,6ヘキサンジオールジアクリレートモノマー(Sartomer Company,Inc.,Exton,PA)、5.0重量%のSR355 ジトリメチロールプロパンテトラアクリラートモノマー(Sartomer Company,Inc.,Exton,PA)、0.25重量%のEsacure One(Lamberti S.p.A.,Gallarate(VA)Italy)、0.25重量%の3M(商標)NOVEC(商標)フッ素系界面活性剤FC−4432(3M Company,Inc.St.Paul,MN)、0.67重量%のMX300架橋アクリルビーズ(ポリメチルメタクリレート−粒径3.0±0.5μm、屈折率1.50)(綜研化学株式会社、東京都)、74.33重量%のメチルエチルケトン(MEK)である。液の粘度は1.3cpsであると測定された。
【0064】
先端が正方形のフロントリップと20度の収束エッジガイドとを有する実験用のスライドコータは、25度の迎え角、−10度の位置角、250μmのスロットの高さ、及び200μmの段の高さで設定された。上記の溶液は、0.05mm(2ミル)のMELINEX(登録商標)617 PETフィルム(DuPont Teijin Films U.S.Limited Partnership,Hopewell,VA)上に塗布された。
【0065】
塗布方法の有効性は、特定の塗布ギャップ及び塗布速度で最小の湿潤厚さ(Tw)を測定することにより特徴づけることができる。塗布ギャップを湿潤厚さで除算した値が、性能の評価基準としてしばしば使用される。下表Iは、このスライド塗布の実験をスロットダイコータと比較したものである。スロットダイコータの方法と比較して、スライド塗布は塗布速度が上昇するにつれて性能はより低速に減少することをデータが示しているギャップ対厚さの比率が高いことは一般に、より優れているとみなされる。
【0066】
【表1】

【0067】
このように、複数ユニットポリマー前駆体を含有しているスライド塗布液の方法の実施形態が開示される。本開示が、開示されたもの以外の実施形態で実施されうることは当業者に理解されるであろう。開示された実施形態は、例証するために提示されるもので、制限するためのものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド塗布の方法であって、
複数ユニットポリマー前駆体を含有する第1の流体を提供し、
前記第1の流体を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に下るように流し、
前記第1の流体を前記第1のスライド表面から前記基材まで流すことによって前記基材を前記第1の流体で塗布して、第1の塗布層を形成し、
前記基材を移動し、
前記第1の塗布層を硬化させる、ことを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の流体が更に、単一ユニットポリマー前駆体を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流体が更に、1つ以上の溶媒を含有する請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の流体が、約10重量%以下の水を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数ユニットポリマー前駆体が、アクリレートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数ユニットポリマー前駆体が、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、カルボン酸半エステル、ポリエステルアクリレート、アクリレート化アクリル、又はそれらの混合である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の流体の粘度が、約5センチポアズ以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の流体が更に、ビーズを含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の流体が、塗布前の前記第1の液の全重量に基づいて、約5重量%を越えるポリマーを含有していない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流体が、約6ミクロン以上の厚さで前記基材上に塗布される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
更に、前記基材上の前記第1の流体が硬化する前に少なくとも一部を乾燥させることを含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
硬化は、紫外線源、赤外線照射源、X線源、ガンマ線源、可視光源、マイクロ波源、電子線源、熱、又はそれらの組み合わせを用いて達成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記基材は、少なくとも毎秒約0.5メートルの速度で移動される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基材と前記第1のスライド表面との間に、約0.1mm(4ミル)以上の間にギャップがある、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
スライド塗布の方法であって、
複数ユニットポリマー前駆体と単一ユニットポリマー前駆体とを含有する第1の流体を供給し、
前記第1の流体を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に下るように流し、
前記第1の流体を前記第1のスライド表面から前記基材まで流すことによって前記基材を第1の流体で塗布して、第1の塗布層を形成し、
前記基材を移動させ、
前記第1の流体の少なくとも一部を乾燥させ、
前記第1の塗布層を硬化させる、ことを含む、方法。
【請求項16】
前記第1の流体が更に、少なくとも1種の溶媒を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の流体が、約10重量%以下の水を含有する、請求項15又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記複数ユニットポリマー前駆体と前記単一ユニットポリマー前駆体とが、アクリレートである請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数ユニットポリマー前駆体と前記単一ユニットポリマー前駆体とが、ウレタンアクリレートである、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の流体が、塗布前の前記第1の流体の全重量に基づいて、約5重量%を越えるポリマーを含有していない、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の流体の粘度が、約5センチポアズ以下である、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
スライド塗布の方法であって、
複数ユニットポリマー前駆体と、単一ユニットポリマー前駆体と、1種以上の溶媒とを含有する第1の流体を供給し、
前記第1の流体を、基材に隣接して配置される第1のスライド表面に流下させ、
ローラを使用して前記基材を前記第1のスライド表面を通過させて移動させ、
前記第1の流体を前記第1のスライド表面から前記基材まで流すことによって前記基材を第1の流体で塗布して、第1の塗布層を形成し、
前記第1の流体の少なくとも一部を乾燥させ、
前記第1の塗布層を硬化させる、ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−515218(P2011−515218A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501959(P2011−501959)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/038002
【国際公開番号】WO2009/120646
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】