褥瘡性潰瘍形成に対する危険性のモデリング手法
圧力暴露及び/又は圧迫潰瘍形成の危険性をモデル化するための方法は、圧力センサを用いて圧力暴露値又は危険性値を得る段階と、圧力暴露値又は危険性値をグラフィック方式でユーザに対して表示する段階とを含む。コンピュータ実装のシステムは、圧力感知接触部マットと方法段階を実施するための構成要素とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褥瘡性潰瘍形成の危険性を監視及び評価するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子の座席及び病院のベッド等の医療用支持面の評価において接触圧情報を提供するために、圧力画像生成システムが用いられてきた。これらの面評価を実施する主たる目的は、褥瘡性潰瘍の発症を予防することであった。
【0003】
褥瘡性潰瘍(圧迫潰瘍、褥瘡又は床ずれとしても知られる)は、一般的に圧力、せん断、又は摩擦によって引き起こされると考えられる皮膚及び皮下組織に対する局部的損傷部位である。骨突出により深部組織損傷が発生する恐れがあり、皮膚検査では初期病変が目視不能であることから、治療を受けることなくこれらの創傷が悪化する可能性はかなり高い。
【0004】
褥瘡性潰瘍は、病院内の患者のみならず、在宅の患者においても発生する。一般的にこれらの潰瘍は、高齢者並びに運動能力の低い患者及び栄養不足の患者に見られる。カナダ及び米国内の病院内での褥瘡性潰瘍の有病率は5〜33%の範囲にわたり、この有病率は、生活の質に対する大きな負担となるだけでなく、医療介護システムにおける財政上の負担となることを意味する。
【0005】
病院内では、介護者は、患者を規則的な転回スケジュールで、一般的には2時間毎に手動で転回させることによって褥瘡性潰瘍の有病率を低減しようと試みる。この試みは、長い時間間隔にわたって病院のベッドと接触していた身体部位における圧力を軽減しようとする試みである。クッション支持体及び特殊ベッドは、接触圧を軽減する上で用いることができる他の用具である。しかしながらこれらの用具のコストは大きく異なり、潰瘍の発生を実際に低減するこれらの用具の能力は、十分には理解されていない。
【0006】
臨床研究では、一貫して実施される転回スケジュールによって、褥瘡性潰瘍の発生を低減できることが示された(DeFloor他(2005年))。しかしながら、一般的に病院は褥瘡性潰瘍の予防のために病院の臨床経路に転回スケジュールを含むにも関わらず、院内罹患の褥瘡性潰瘍の有病率は高いままである。
【0007】
従って、圧力センサ情報に関する有用で有意な情報を提供し、臨床スタッフが患者転回実施計画をより効果的に確実に実施するのを支援する方法及びシステムに対する要求が当該技術分野においてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、圧力露出(pressure exposure)及び/又は褥瘡性潰瘍形成の危険性を有意で有用な方式でモデル化し、危険性評価をユーザに対して新規の情報に基づく方式で提示するための方法及びシステムに関する。本方法及びシステムはまた、上昇したベッド圧の存在、及び身体のうちで褥瘡性潰瘍を発症しやすい部位における圧力への長期暴露の作用についての介護者の認識度を高める情報を提供することができる。より的確な情報が与えられた臨床スタッフは、患者を体位変換させる上での判断においてより自信を持つことができ、転回スケジュールに効果的に従う見込みが高い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、患者が支持体面上に支持され、患者と支持体面との間に複数のセンセル(sensel; センサの全体的なアレイ内の個々の圧力センサ)を有する圧力感知接触部が配置される場合に、接触圧に対する患者の暴露を評価する方法であって、
(a)望ましい転回インターバルを特定する段階と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)段階と、
(c)複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを所定の時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))段階と、
(d)E(t)と、選択された転回インターバルと、センサの最大圧力範囲とから正規化圧力露出Enormを得る段階と、
(e)各センセルにおける正規化圧力露出値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(b)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、支持体面上に支持される患者についての圧力露出値を特定して表示するためのシステムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)ための構成要素と、複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを選択された時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))ための構成要素と、複数のセンセルの各々における選択された転回インターバル及びセンサの最大圧力範囲に基づいて正規化圧力露出Enormを得るための構成要素とを備え、圧力感知接触部に動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(c)Enorm値をユーザに対して示すために処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステムを備える。
【0011】
1つの実施形態では、処理手段は、複数のEnorm値からディスプレイ上に示される圧力露出分布図を生成するための構成要素を更に備える。
【0012】
別の態様において、本発明は、患者が支持体面上に支持され、患者と支持体面との間に複数のセンセルを有する圧力感知接触部が配置される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価する方法であって、
(a)複数のセンセルの各々から圧力値を取得して、圧力値から各々センセルにおける時間対高危険性(THR)値を得る段階と、
(b)少なくとも1つの修正要素を考慮することによってTHR値を調節する段階と、
(c)危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタに変換する段階と、
(d)危険性値を危険性デルタだけ調節する段階と、
(e)調節された危険性値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(a)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法を含む。
【0013】
1つの実施形態では、THR値は、圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は所定の数学式を圧力値に適用することによって特定される。
【0014】
別の態様において、本発明は、患者が支持体面上に支持される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価するための危険性評価システムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)少なくとも1つの危険性修正要素を考慮することによって危険性修正要素を受け入れるための入力デバイスと、
(c)複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素と、THR値を危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素と、危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を危険性デルタ分調節するための構成要素とを備え、圧力感知接触部及び入力デバイスに動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(d)調節された危険性値をユーザに対して表示するために処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステムを備える。
【0015】
複数のセンセルの各々におけるTHR値を特定するための構成要素は、センセルから圧力値を取得して、圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は数学式を圧力値に適用することによって特定を行うことができる。更にシステムは、複数のセンセルの各々における危険性値から、ディスプレイ上に示される危険性分布図を作成するための構成要素を備えることができる。
【0016】
別の態様において、本発明は、患者転回管理システムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部及び圧力接触部分布図を生成するための手段と、
(b)介護者が患者の転回又は体位変換をいつ開始したかを示すための入力デバイスと、
(c)介護者によって開始された最後の転回又は体位変換からの経過時間、又はスケジュールされた次の転回が期限を迎えるまでの残り時間を追跡するためのタイマと、
(d)コンピュータ実装の処理手段と、
を備え、コンピュータ実装の処理手段が、
(i)処理手段が圧力感知接触部に動作可能に接続されており、複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、特定された圧力値に基づいて圧力露出値を得るための構成要素か、
又は、
(ii)処理手段が圧力感知接触部及び入力デバイスに動作可能に接続されており、複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素、THR値を危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素、危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を危険性デルタ分調節するための構成要素か、
を含み、患者転回管理システムが更に、
(e)圧力露出値又は危険性値、圧力接触部分布図、及び介護者による最後の転回又は体位変換からの経過時間を表示するために処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステムを備えることができる。
【0017】
図面において、同様の要素に同様の参照番号が割り当てられている。図面は必ずしも正確な縮尺のものではなく、むしろ本発明の原理に重点が置かれている。これに加えて、図示の実施形態の各々は、本発明の基礎的概念を利用する数多くの実施可能な構成のうちの1つに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】圧力露出分布図、接触圧分布図、及び患者転回入力ボタンを有する経過時間転回タイマである、本発明の1つの実施形態の3つの機能の図である。
【図2】圧力露出の数学表現である。
【図3】正規化圧力露出に適用されたカラースケールの1つの可能な表現を含む、圧力と経過時間と圧力露出との間の関係を示す図である。
【図4】本発明を組み込んだ提案する患者転回ワークフローである。
【図5】本発明の1つの実施形態を示す図である。
【図6】2つの異なる体位の圧力分布図画像である。
【図7】圧力露出分布図の1つの例証的な表現である。
【図8】文献において公知の臨床的に得られた圧力対時間グラフである(従来技術)。
【図9】文献において公知の臨床的に得られた別の圧力対時間グラフである(従来技術)。
【図10】本発明の危険性アルゴリズムの1つの実施形態の概略図である。
【図11】危険性評価の1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図12】圧力分布図の1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図13】機械視覚を通じて2次元圧力分布図から得られた3次元危険性モデルである。
【図14】危険性調節入力インターフェースの1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図15】危険性分布図の1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図16】褥瘡性潰瘍形成を予防又は低減する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、褥瘡性潰瘍を形成する危険性に曝された被験者又は患者に携わる介護者又は医療保険業務従事者に対して、実時間圧力測定により有用な情報を得て表示するためのシステム及び方法に関する。本発明の説明に際して、本明細書内で定義されていない全ての用語は、当該技術分野で認識されている一般的な意味を有する。以下の説明は、本発明の特定の実施形態又は特定の用途についてのものである限り、例証に過ぎず、請求項に記載された本発明を限定するものではないものとする。以下の説明は、添付の請求項において定義された本発明の技術的思想及び範囲に含まれる全ての代替形態、修正形態、及び均等物を保護することを意図している。
【0020】
一態様では、本発明は、ベッド圧への患者の暴露を追跡し、患者の転回又は体位変換の実施計画の実行を新規の情報に基づく方式で管理するためのシステム及び方法に関する。1つの実施形態では、本発明は、ある期間にわたって測定される患者/ベッド接触圧を追跡し、この情報を圧力露出分布図の形態でユーザに提供する新規の方法を提供する。1つの実施形態では、接触圧分布図上に重ね合わせられる視覚インジケータを用いて最も高い暴露部位が位置特定される。別の実施形態では、本発明は、特定の因子及び因子の組み合わせを新規の方式で監視することによって全体的な褥瘡性潰瘍の危険性を評価し、この危険性評価をユーザに対して新規の情報を与える方式で提示するシステム及び方法を提供する。1つの実施形態では、危険性評価は、ユーザが、高い危険性及び低い危険性の部位を視覚的に判断可能にする危険性分布図として提示される。1つの実施形態では、最も高い危険性の部位は、接触圧分布図上に重ね合わせられる視覚インジケータを用いて位置特定される。
【0021】
更に本発明の実施形態は、提供される圧力露出情報又は危険性評価情報を用いて患者転回実施計画を管理するシステム及び方法を提供する。
【0022】
患者固有の危険性情報を継続的に提供することによって、圧力露出分布図及び危険性分布図のどちらか又は両方により、介護者が褥瘡性潰瘍の予防のために患者の体位変換に関してより的確な情報に基づく選択を行うのを支援することができる。
【0023】
1つの実施形態では、ある期間にわたる圧力露出は、測定された圧力並びにこれらの圧力に患者が暴露される時間に基づいて、圧力に対するより高い又は低い暴露を伴う身体部位をユーザが視覚的に識別できるようにする圧力露出分布図として提示される。
【0024】
圧力露出管理
別の実施形態では、圧力露出情報、接触圧情報、及び患者転回追跡情報を用いて、介護者に継続的なフィードバックを提供することによって患者転回管理の質及び一貫性が改善される。これらの3つの機能の表現を図1に概略的に示している。
【0025】
本発明の圧力露出分布図は、実時間接触圧入力を利用して、ある期間にわたる圧力露出を追跡して集計する。接触圧入力は、患者の支持体面に関連付けられた圧力センサによって取得され、該センサは、支持体面と患者との間にかかる圧力を報告する。一般的に2次元格子(グリッド)で配列される複数のセンセルを設けた圧力センサマットを用いることができる。センサセルとは、センサの全体的なアレイ内の個々の圧力センサである。かかるマットは当該技術分野で公知であり、市場で入手可能である。圧力露出の特定は、複数の場所及びある期間にわたって処理され、本明細書で説明される何れかの危険性因子と組み合わせられ、又はこれらとは独立して特定することができる。
【0026】
圧力露出は、ある時間間隔にわたって患者が受ける身体/支持体面接触圧の定量化である。概念的には圧力露出は、太陽光暴露、放射線暴露、又はスポーツダイバーの様々な深度において費やされた時間に基づく水圧への暴露と同様である。数学的には圧力露出は、図2に示すように計算される。圧力露出に対する測定単位は、圧力の標準単位に時間の標準単位を乗算したもの、例えば、mmHg、psi、Kpa、又はN/mである。
【0027】
所与の時間間隔にわたる圧力露出は、圧力デルタを合計することによって計算され、これらは、測定された接触圧に最後の圧力測定からの経過時間を乗算する(圧力露出デルタEΔ=P×Δt)ことによって計算される。圧力露出値は、所定の時間間隔にわたる圧力露出デルタの積算に基づいて特定され、すなわち、E(t)=ΣEΔ(t)。
【0028】
1つの実施形態では、絶対圧力露出は、スケジュールされた転回インターバル及びセンサの較正限界に関して正規化され、Enorm=E(t)/tturn interval/Pmax。例えば、2時間の転回インターバル及び200mmHgの最大較正圧に基づくと、測定圧力が一定の200mmHgである場合、正規化圧力露出は、2時間後に最大値に達することになる。表1は、200mmHgの最大センサ較正限界に基づく正規化圧力露出(Enorm)値の実施例を示しており、ここで最大Enorm=1である。
【表1】
【0029】
E(t)及びEnormは、圧力感知格子の各センセルについて計算される。
【0030】
別の実施形態では、正規化圧力露出値は、他の時間又は圧力基準値に基づく。臨床データ又は特定のユーザ要件に基づいて、より低い圧力を圧力露出を正規化する目的の基準値として用いることができる。同様に、推奨転回インターバルとは別の時間間隔を用いることができる。時間及び圧力の基準値を調節することによって、システムを異なる患者のタイプ又は異なる患者環境に潜在的に最適化することができる。
【0031】
正規化圧力露出Enormは、1つの実施形態ではEnorm=1である最大値に向かって積算されることになる。最大基準圧では、転回インターバル時間が経過すると、値1に達する。最大基準圧よりも低い圧力では、転回インターバル時間の間にはEnormは1に達せず、最大値まで積算され続けることになる。Enormは、圧力が軽減されるまで、或いは患者が転回又は体位変換されたという情報を介護者が提供されるまでは減少しないことになる。図3は、2時間の転回インターバル及び200mmHgの最大センサ圧限界に基づく正規化圧力露出の積算を例示している。200mmHg、100mmHg、及び50mmHgの一定測定圧力に対するEnormalized値がプロットされている。
【0032】
1つの実施形態では、正規化圧力露出Enormは、最大値1を超えて積算され続けることになる。これによって、最も高い積算Enormを有するセンセルの位置特定が可能にになる。Enormは、圧力が軽減されるまで、或いは患者が転回又は体位変換されたという情報を介護者が提供されるまでは増大し続けることになる。
【0033】
1つの実施形態では、正規化圧力露出は、圧力露出分布図として提示することができる。圧力露出分布図は、正規化圧力露出、絶対圧力露出、又は患者と支持体面との間に配置されたセンセル格子から取得された、ある期間にわたる圧力測定値の積算に基づく他の値の2次元表現である。
【0034】
1つの実施形態では、最も高い圧力露出の部位は、色、囲み円、矢印、ポインタ、又は他の幾何学的識別子等の視覚マーカを用いて圧力露出分布図又は2次元接触圧分布図上で強調表示される。視覚マーカはまた、限定ではないが、圧力露出、正規化圧力露出、平均圧、ピーク圧、圧力露出の継続時間、現在の圧力の継続時間、又はピーク圧の継続時間を含む、更なる吹き出し情報を提供することもできる。吹き出し情報は、テキスト又はグラフィック手段によって提示することができる。1つの実施形態では、圧力露出分布図は、高い圧力露出の部位が、圧力露出値に比例する高さを有するピークとして表示された、3次元のものとすることができる。
【0035】
継続的な患者固有の圧力露出情報を提供することによって、圧力露出分布図は、褥瘡性潰瘍の発症の身体的な兆候を探すべき場所、及び最も高い圧力露出を有する部位における圧力を軽減するために患者を最良に体位変換させる方法に関して介護者がより的確な情報に基づく選択を行うのを支援することができる。1つの実施形態では、可動患者は高いレベルの圧力露出を積算させる可能性が低いので、圧力露出情報は、患者の可動性レベルの指標を提供するのに用いることができる。可動性情報は、テキスト又はグラフィック手段によって提示することができる。
【0036】
高い圧力露出の部位を位置特定した後、介護者は、実時間圧力画像を参照することによって、患者の身体上の特定の部位から圧力露出が適切に軽減されたことを検証することができる。
【0037】
1つの実施形態では、本発明の圧力露出追跡処理は、物理的入力(接触圧及び接触圧の継続時間等)を、患者が最も高い圧力に最も長い継続時間にわたって暴露された場所を識別するのに用いられる値に変換する。圧力露出追跡の感度は、臨床機関によって実施される患者転回インターバル(例えば2時間毎)に基づいて、又は既知の臨床的危険性スケール等の他の修正要素によって、或いは、追加のセンサによって又は手動で取得することができる温度、湿気、又はせん断力等の他の物理的情報によって調節される。転回インターバルを調節すること、又は他の修正要因を適用することによって、圧力露出値は、より緩慢に、又はより迅速に積算されることになる。例えば、完全に不動であり、褥瘡性潰瘍を発症する危険性が極めて高い患者では、転回インターバルを1時間に短縮することができる。この場合、高いレベルの正規化圧力露出がより迅速に得られることになる。表2は、1時間及び2時間の転回インターバルに基づく圧力分布サンプルにおける正規化圧力露出の積算の実施例を示している(前の実施例と同様に、Enormは、200mmHgのセンサ圧限界に基づく)。
【表2】
【0038】
ベッド面センサに加えて、1つの実施形態では、補助的な支持体面の接触圧情報を提供するために、枕及び他の圧力軽減支持体面内に特殊センサを配置することができる。これらの補助センサは、主ベッドセンサと同じ方式で監視されることになる。
【0039】
接触圧が最低圧力閾値を下回る場合には、正規化圧力露出値は減少し始めることになる。最低圧力閾値は、圧力値の範囲にわたって選択することができる。例えば、30mmHgの毛細管圧が組織損傷の危険性を低減するのに十分な圧力軽減とすることができる臨床データがある。1つの実施形態では、最低圧力閾値は、30nmHgから、センサの較正範囲内の最低値(5mmHgとすることができる)までの間の何れかの値にユーザが設定することができる。1つの実施形態では、最低圧力値は、20mmHg等の臨床的に許容されるレベルに固定される。
【0040】
最近の研究(Makhous他(2007年))は、完全な組織灌流の回復には、接触圧を軽減し、200秒から300秒の回復期間にわたって軽減が維持されるべきであることを提案した。1つの実施形態では、回復期間は、最短3分から最長20分までの間の何れかの時間長とすることができる。1つの実施形態では、回復期間は、30秒等の臨床的に許容されるレベルに固定される。
【0041】
1つの実施形態では、圧力露出値又は正規化圧力露出値は、選択された回復期間が経過した後に値がゼロに達するような速度で低減されることになる。選択された回復期間の長さは、負の圧力露出デルタの大きさを決定付ける。1つの実施形態では、この処理は、以下の論理ステートメントを用いて実装することができる。
interface_pressure=IP
normalized_pressure_exposure=NEP
stored_normalized_pressure_exposure=SNEP(NEPが積算されるにつれて値が記憶される)
minimum_pressure_threshold=選択された毛細管圧又は軽減圧(例えば20mmHg)
recovery_period=選択された回復期間(例えば10分)
max_pressure=センサ較正範囲内の最高圧力(例えば200mmHg)
turn_interval=スケジュールされた転回インターバル(例えば2時間)
Δt=圧力露出デルタを計算するのに用いられる経過時間
IF (IP<minimum_pressure_threshold) THEN
IF NEP<>0 THEN
NEP=NEP−(SNEP/recovery_period)×Δt
END IF
ELSE
NEP=NEP+(IP/max_pressure)×(Δt/turn_interval)
SNEP=NEP
END IF
【0042】
1つの実施形態では、圧力露出分布図及びシステムは、全てのセンセルについて圧力露出値をゼロにリセットするリセットメカニズムを備える。ユーザは、例えば、患者が完全に反転される等、完全に体位変換される場合にリセットメカニズムを利用することができる。1つの実施形態では、入力ボタンは、押下されたときに全てのセンセルについて圧力露出分布図をゼロにリセットするリセットメカニズムである。
【0043】
1つの実施形態では、複数のセンセルからの圧力露出値により、患者の身体上の圧力露出のグラフィック表現である圧力露出分布図がもたらされる。システムは、全てのセンセルについて正規化圧力露出値を圧力露出分布図の形態で表示する。圧力露出分布図は、患者の身体にわたる圧力露出の場所及びレベルの指標を提供する。1つの実施形態では、ある特定の部位における圧力露出レベルがある一定のレベルを超えた場合、この圧力露出レベルを強調表示するか、又は介護者の注意を引くように修正することができる。例えば図7に示すように、圧力露出モニタは、カラースケール内で最も明確な色(例えば赤色)で示すように、患者が、右臀部の部位において最も長い時間間隔にわたって最高圧力を受けたことを示す。オレンジ色及び黄色の配色は、著しい圧力露出を有する他の部位を示す。灰色の配色は、低い圧力露出部位を示す。呈色のない部位は、有意な接触圧を有さず(例えば5mmHgを下回る)、一般的に患者と接触状態にないベッド面区域である。
【0044】
1つの実施形態では、最も高い接触圧を有する身体部位を識別するために、実時間接触圧分布図も利用可能である。接触圧は瞬間的であり、接触圧の継続時間についてどのような指標も提供しない点で圧力露出とは異なる。接触圧分布図は、新しい患者の体位の妥当性を確認できるようなワークフローを容易にする。ワークフローは反復的なものとすることができ、新しい高接触圧点が生じていないことを確実にするために体位変換の妥当性が確認され、必要に応じて更なる体位変換が行われる。
【0045】
一態様では、本発明は、所定の閾値を超える高い圧力露出値又は圧力露出値群に応じて患者の体位を調節する方法を含むことができる。調節方法は、介護者が手動で実施するか、又はシステムによって作動されるデバイスが自動的に実施することができる。
【0046】
(危険性分布図)
別の実施形態では、実時間圧力測定値を危険性評価に変換し、上記で説明した圧力露出分布図に類似した危険性分布図として表示することができる。本発明の危険性分布図は、物理的因子入力及び生理学的因子入力を利用して、入力値を所定の危険性レベルと相関付ける記憶データとこれらの入力データを比較することにより危険性レベルを割り当てる危険性アルゴリズムによって作成される。物理的因子入力及び生理学的因子入力は、センサによって、又はユーザの観察もしくは判断及び入力によって、或いはセンサと直接的なユーザ入力との組み合わせによって取得される。危険性レベルの特定は、複数の場所及びある期間にわたって処理される。
【0047】
重要な物理的危険性因子は接触圧である。高い圧力は軟部組織灌流の低減又は停止を生じることは明らかである。軟部組織上に高い圧力が長く加わる程、褥瘡性潰瘍の発症の可能性が高くなるので、時間も重要な因子である。接触圧センサは、静電容量圧力感知要素のアレイを利用して、患者/支持体面接触部の圧力分布図を作成する。1つの実施形態では、圧力は、5mmHから200mmHgの範囲にわたって測定される。
【0048】
褥瘡性潰瘍形成に対する他の重要な危険性因子は、物理的因子及び生理学的因子を含む。物理的因子は、以下のものを含む。
湿気/失調
・皮膚の自然の障壁保護性を変化させ、皮膚損傷の可能性を高める。
温度
・高い皮膚温度は発汗を生じさせ、湿気に起因する危険性因子を高める。
・低い皮膚温度は、循環不足を生じさせる。
せん断
・組織に対する歪みを高め、低い循環を生じる恐れがある。
【0049】
生理学的因子は以下のものを含むことができる。
年齢
・高齢者は、皮膚の変化、緩慢な代謝、栄養不足及び水分摂取不足、並びに呼吸機能の障害に起因して、褥瘡性潰瘍の発症の高い危険性に曝される。
・高齢者は、循環系障害及び糖尿病等の慢性的な健康状態の高い危険性にも曝される。
可動性
・可動性は、危険性に曝される可能性のある部位において圧力が軽減されることが多いので、褥瘡性潰瘍を発症する危険性を低減する。
・例外は、過度の運動から生じ且つ皮膚損傷に寄与する恐れがあるせん断及び摩擦である。
疾患
・末梢血管疾患(PVD)等の疾患は、危険性に曝されている組織への血液供給の欠乏を生じる急性又は慢性の虚血を引き起こす恐れがある。
・同様に心臓及び肺の疾患は、危険性に曝されている組織への血液又は酸素の供給を制限する恐れがある。
外科手術
・外科手術は、外科手術中又は術後のどちらかにおける患者の運動を制限することが多く、褥瘡性潰瘍を引き起こすより高い危険性を有する長期の圧力点に患者を暴露させる。
・回復中には、監視機器に接続されている患者を体位変換させるのがより困難となる恐れがある。
循環
・血液循環不足は、組織細胞への酸素、栄養素、及び血液細胞の不十分な送達を生じ、従って損傷の危険性を高める。
糖尿病
・血液循環不足
・糖尿病の人は、特に腕及び脚において重度の循環不足を有する恐れがある。多くの場合、糖尿病は、組織損傷に対する別個の危険性として挙げられる。
栄養
・ビタミン及びたんぱく質の欠乏は、組織損傷の危険性を高める。
・National Pressure Ulcer Long−term Care Study(全国褥瘡性潰瘍長期介護研究)(NPULS)は、不随意の体重減少を、褥瘡性潰瘍を発症する危険性の74%増大と関連付けた。
脱水
・NPULSは、脱水を褥瘡性潰瘍を発症する危険性の42%増大と関連付けた。
肥満
・脂肪組織内での血液流不足
・脂肪組織は、筋肉組織よりも強く圧迫する傾向にある。
・低い可動性
【0050】
危険性因子の数及びその相互関係によって、患者について全ての因子を考慮した評価を実施するのが困難になる。患者の危険性レベルを予測する上で最も重要度の高い因子に対処することを試みる危険性評価ツールが存在する。高レベルの危険性と関連付けられた患者は、より頻繁な転回スケジュール及び皮膚検査、特殊支持体面、摩擦低減クリーム、及び高い危険性の部位におけるマッサージを含む、高レベルの予防介護の候補である。
【0051】
例えば、ブレーデンスケールは、患者が1から4までのスケールに関連付けられて格付けされた6つのカテゴリを用いる。総合スコアが低い程、褥瘡性潰瘍を発症する危険性は高い。カテゴリは以下のとおりである。
・感覚認知
・湿気
・活動
・可動性
・栄養
・摩擦及びせん断
【0052】
ウォーターロー(Waterlow)予防/治療方針は、6つのカテゴリに加えて3つの更なる「特殊危険性」カテゴリに基づくスコア方式を用いる。総合スコアが高い程、褥瘡性潰瘍を発症する危険性は高い。6つの主カテゴリは以下のとおりである。
・体型及び体重
・皮膚状態
・性別及び年齢
・栄養
・抑制
・可動性
【0053】
3つの「特殊危険性」カテゴリは以下のとおりである。
・組織の栄養失調
・神経学的欠陥
・重大な外科手術又は創傷
【0054】
ノートンスケール(Norton Scale)は、患者が1から4までのスケールに関連付けられて格付けされた5つのカテゴリを用いる。総合スコアが低い程、褥瘡性潰瘍を発症する危険性は高い。カテゴリは以下のとおりである。
・一般的な体調
・精神状態
・活動
・可動性
・失調
【0055】
更なる危険性評価スケールは、修正ノートン危険性スケール、グラモーガン(Glamorgan)小児科危険性スケール、及び危険性評価圧力スコア(RAPS)スケールを含む。修正ノートン危険性スケールは、従来のノートンスケールに幾つかの更なるカテゴリを付加する。RAPSスケールは、修正ノートンスケール、ブレーデンスケールから引用した幾つかのカテゴリを利用して、研究結果から得られた3つの新しいカテゴリを付加する。グラモーガン危険性スケールは、最近になって開発されたものであり、小児に対する褥瘡性潰瘍危険性に焦点を当てている。
【0056】
1つの実施形態では、本発明の危険性モデル化処理は、物理的入力(接触圧及び接触圧の継続時間等)を、褥瘡性潰瘍を発症する危険性に患者がいつ曝されるかを識別するのに用いられる危険性値へ変換する。危険性モデルの感度は、危険性スケール評価、患者固有の生理学、及び介護者独自の患者評価を通じて取り込まれた生理学的因子に基づいて調節される。危険性モデルは、これらの情報を用いて、支持体面と接触する患者の身体上にマッピングすることができる危険性値を計算する。この生体計測危険性情報は、介護者が身体の特定の部位における患者の危険性レベルを監視及び評価するのに用いることができる。図10は、本発明の危険性モデルの概念のブロック図を提示している。
【0057】
危険性モデル内への主要臨床データ入力は、組織損傷の危険性を計算するための基礎として、Reswick & Rogers(1976年)又はLinder−Ganz他(2006年)等の圧力対時間曲線を含む。Reswick & Rogers(1976年)は、臨床データに基づいて組織許容範囲ガイドラインを考案し、彼らの研究の結果は、褥瘡性潰瘍が発症する可能性が高い閾値を強調表示する圧力対時間曲線に要約された。図8に、Reswick & Rogersの圧力対時間曲線を示している。
【0058】
これらの曲線は、接触圧の大きさと、継続的な圧力の時間と、褥瘡性潰瘍を発症する危険性との間に直接的な関係があることを示している。他の研究(Patterson and Fisher(1986年)、Peters他(2005年)、Gefen他(2008年))において得られたもの、或いは他の特化された又は専有の圧力対時間曲線を含む他の曲線を利用することができる。専有の圧力対時間曲線は、座り心地研究等の生体計測フィードバックの独立した臨床研究又は調査を通じて取得することができる。Linder−Ganz曲線は、圧力曲線の高端と低端とにおいてReswick & Rogers曲線とは異なる。図9では、Linder−Ganz曲線をReswick & Rogers曲線に対して比較している。
【0059】
例えば、図9に示す圧力対時間曲線に基づくと、およそ160mmHgの接触圧は、2時間弱しか許容可能ではない。この時間枠内で圧力が軽減されない場合には、患者は、褥瘡性潰瘍を発症する高い危険性に曝される。表3は、Linder−Ganz(2006年)曲線に基づく様々な圧力に対する高危険性時間インターバルを詳細に説明している。
【表3】
【0060】
本明細書では、接触圧に基づく時間対高危険性をTHRと示すものとし、褥瘡性潰瘍が形成し始めることができる前に、その時点で受けている圧力に対して患者を暴露させることができる継続時間の推定値として定義する。例えば、Linder−Ganz他(2006年)の研究は、240mmHgを過える圧力が、最短で15分から1時間以内に褥瘡性潰瘍を引き起こす恐れがあると結論付けている。従って、1つの実施形態では、233mmHgの圧力に対して、THRとして20分という控えめな推定値が適用される(図9のLinder−Ganz曲線に基づいて)。
【0061】
危険性モデルは、あらゆるサイズのものとすることができるセンサアレイのあらゆるセンサについての圧力対時間曲線に基づいてTHR値を計算する。1つの実施形態では、センサは、50×125(6250)個のセンサを含む。THR値は、参照テーブルから得られ、又は選択された圧力対時間曲線に当てはまる数学関数を用いることによって得ることができる。
【0062】
本発明は、圧力対時間関係の既知の臨床データを用いて例示したが、上記で引用した文献に提示されている臨床データ、又は図及び本明細書の表に提示されている臨床データに限定されない。新しい臨床データが利用可能になると、危険性モデルにおいて用いた圧力対時間曲線は、組織損傷を予測するためのより良好なモデルを反映するよう修正することができる。本発明の使用によって取得される現場データは、代替の圧力対時間曲線を構築するのにも用いることができる。
【0063】
(危険性の調節)
危険性スケール評価が完了した後、患者には、患者の皮膚状態によって、又は患者の病歴に基づいて特定される危険性レベルが割り当てられる。1つの実施形態では、危険性レベルは、ブレーデン評価及び皮膚状態についての臨床医の入力に基づいて調節され、又は危険性アルゴリズム内への入力としてウォーターロースケールも与えられる。図11は、ブレーデン危険性スケール評価を入力するための1つの可能なユーザインターフェースを例示している。
【0064】
ユーザが危険性評価を完了すると、患者には、危険性レベルを意味するスコアが割り当てられる。1つの実施形態では、3つの危険性レベル(低、中、及び高)が用いられる。その後、危険性モデルの感度は、割り当てられた危険性レベルに基づいて調節される。表4は、1つの実施形態におけるブレーデン危険性レベルとTHRとの間の関係を例示している。ブレーデン危険性レベルに基づいて、THR値が相応する安全因子によって低減される。1つの実施形態では、THR値は、表3に示すように、中程度の危険性では25%、高い危険性では50%だけ低減される。危険性モデルの調節において、より高い細分性が必要とされる場合には、より多くの危険性レベルを用いることができる。
【表4】
【0065】
一例として、「低い危険性」の患者は、身体上に接触圧が141mmHgと測定される部位を有する可能性がある。表1に基づくと、危険性モデルは、この部位に2時間のTHR値を割り当てることになる。同じ患者が「高い危険性」として格付けされた場合には、危険性モデルは、THRの50%のみ、すなわちこの場合は1時間の後にこの部位に最高危険性値を割り当てることになる。
【0066】
このようにして、他の危険性評価スケールを危険性モデル内に追加して又は代替として組み込むことができる。これに加えて、より最近の臨床研究からのデータを専有の危険性因子として組み込むことができる。代替の危険性スケールの一部として、新しい危険性因子又は新しい組み合わせ、危険性因子の相対的な重み付け(年齢、性別、最近の体重減少、筋肉劣化、又は肥満等)を用いることができる。
【0067】
好ましくは、異なる解剖学的領域には異なる危険性レベルが割り当てられる。仙骨の部位に以前の病歴又は褥瘡性潰瘍の初期兆候を有する患者は、「下腰部」身体領域内又はより具体的には仙骨身体部位において上昇した危険性レベルを有することができる。これによって、関連身体領域に対する危険性モデルの感度が高まることになる。図14は、身体部位における危険性レベルを調節するためのユーザインターフェースの1つの実施形態を例示している。別の皮膚状態インターフェースは、3D身体画像を用いて特定の身体部位の選択を可能にすることになる。
【0068】
(組織の変形)
最近の研究は、組織の相対変形とその組織の損傷の危険性との間に関係があることを提案した(ゲフェン(2009年))。すなわち、1つの実施形態では、危険性評価処理の一部として、骨突出の周囲で患者の組織が変形する可能性を測定することができる。患者の組織の変形は、既知の力が組織に加わった場合の圧痕の量を測定する圧子デバイスを用いて測定することができる。或いは組織の弾性を振動エラストグラフィを用いて測定することができる。その後、組織変形データ又は弾性データは、身体領域における危険性レベルを調節するのに適用される。組織変形特性に基づいて危険性レベルを骨突出の周囲の部位に合わせて調節することができるので、より詳細な機械視覚がより一層効果的なものとなる。
【0069】
(組織の健康)
危険性評価処理の一部として深部組織損傷を用いることができる。例えば、血流及び酸素化等の複数の深部組織特性を測定することができる非侵襲的センサは、患者の危険性部位の評価を可能にすることになる。危険性評価処理の一部として、骨突出の周囲の部位が組織の既存の健康不良の兆候を示すかどうかを判定する試験を行うことができる。これらの部位の危険性モデルの感度を高めるために、相応する身体領域に割り当てられた危険性レベルを引き上げることができる。
【0070】
(他のセンサデータ)
1つの実施形態では、危険性モデルは、センサデータを用いて危険性値を計算する。主要入力は接触圧であるが、他の重要な危険性因子も監視することができ、これらの因子は、計算された危険性値に対して影響を与える可能性がある。例えば、湿気は、褥瘡性潰瘍を発症する危険性に対する既知の寄与要素である。湿気センサは、患者/支持体面接触部にて湿気が検出された場合に、割り当てられた危険性レベルを自動的に上げることを可能にする。同様に、危険性モデルの感度を調節するのに温度及びせん断も用いることができる。
【0071】
ベッド面センサに加えて、1つの実施形態では、補助的な支持体面接触部圧力情報を提供するために、枕及び他の圧力軽減支持体面内に特殊センサを配置することができる。これらの補助センサは、主ベッドセンサと同じ方式で監視されることになる。各補助センサは、各々に割り当てられた危険性レベルを有することになり、危険性値は、主ベッドセンサによって用いられるものと同じ圧力対時間曲線に基づいて、その個々のセンサの各々について計算されることになる。
【0072】
(せん断)
1つの実施形態では、1つ又はそれ以上のせん断センサを用いて、患者/支持体面接触部のせん断分布図を作成する。せん断センサは、2つの導電性要素の印加されるせん断力の方向の変位を追跡する。2つの導電体の間には弾性材料又は圧電材料が接合され、これらの材料は、せん断に起因する変位に相応した弾性力を与える。これによって、導電性要素の変位に基づいてせん断力を計算することが可能になる。せん断力が大きい程、組織損傷の危険性が大きくなる。各せん断センサについての危険性値は、せん断力の強度に基づいて計算される。
【0073】
(湿気)
1つの実施形態では、1つ又はそれ以上の湿気センサが支持体面上の湿気の存在を検出する。湿気センサは、無視できる量を上回る湿気が検出されたかどうかを示す単純なYES/NOステータスを与える。単一のセンサが、支持体面全体の湿気ステータスを提供することができ、又は面上に複数の湿気センサを用いることによって、湿気情報をより局所化することができる。湿気センサは、吸収剤シートに接着された導電性繊維のストリップを用いて、センサ面上の体液の存在を検出する。最低でも2つの導電性帯が必要とされる。湿気センサは、2つの導電性帯を監視して、導電体の間のインピーダンスがいつ閾値レベルを下回ったかを特定する。2つの導電性繊維ストリップの間の綿に吸収された食塩水(体液)は、2つの繊維ストリップの間で電気を通し、従って、導電率が高くなるにつれて繊維ストリップ間のインピーダンスが減少することになる。閾値レベルを下回るインピーダンスは、褥瘡性潰瘍を発症する危険性を高めるのに十分な湿気の存在を示している。
【0074】
患者支持体面上で湿気が検出された区域を更に位置特定するために、複数の導電性繊維ストリップを格子配列で用いることができる。湿気の検出及び位置特定情報は、USB等の標準のシリアル通信プロトコルを用いてセンサからアプリケーションソフトウェアに通信される。
【0075】
(温度)
温度センサは、温度感知要素のアレイを利用して、患者/支持体面接触部の温度分布図を作成する。正常体温を上回る温度又は下回る温度は、褥瘡性潰瘍の危険性を上昇させる恐れがある。各温度センサにおける危険性値は、正常値からの温度偏差に基づいて計算される。高い温度には、低い温度よりもより高い危険性因子を割り当てることもできる。
【0076】
(身体領域)
本発明の1つの実施形態では、圧力センサ又は圧力センサ群を身体上の特定の場所に手動又は機械処理(機械視覚)の何れかによって相関付けることができる。2次元接触圧分布図を処理し、圧力露出分布図又は危険性分布図を視覚化して分析するのに用いることができる身体領域を特定することができる。圧力センサアレイが人体の載っている支持体面から接触圧入力を受け取る1つの実施形態では、アプリケーションソフトウェアは、図12及び図13に示す身体画像に相応する圧力分布図を作成する。機械視覚構成要素は、人体の解剖学的パターンを認識し、これによって2次元接触圧分布図上で明白な特徴部に解剖学的ラベルを正しく割り当てることができる。その後、解剖学的特徴部は、患者が体位変換されるまでセンサ又はセンサ群に割り当てられる。1つの実施形態では、機械視覚構成要素は、患者が側臥位、仰臥位、又は腹臥位のどれにあるかを識別することができる。例えば、患者の体位に基づいて、センサ群を、「左踵底部」、「左踵上部」、「左踵外側部」、又は「左踵内側部」に割り当てることができる。解剖学的特徴部を識別することによって、機械視覚処理は、身体の場所に基づいた危険性モデルを調節可能にする。例えば、「左踵外側部」で皮膚の発赤が認められた場合には、図12に示すユーザインターフェースを介してこの身体部位における危険性を上昇させることができる。次いで、機械視覚は、圧力画像上で「左踵外側部」の場所を追跡し、この部位において高い危険性レベルを維持することになる。
【0077】
1つの実施形態では、機械視覚構成要素は、単純に圧力分布図の画像処理に基づいて体位(左側臥位、仰臥位、右側臥位)を予測する。体位変化は、圧力露出分布図又は危険性分布図のリセットを生じさせる。
【0078】
1つの実施形態では、身体は、複数の領域、例えば3つの領域に分割される。身体領域の場所は、簡略化された機械視覚処理に基づいて計算され、各身体領域に対して別個に危険性モデルを調節することができる。
【0079】
身体領域は、頸部、腰部、又は同様のもの等の識別可能な特徴部によって横断面に沿って分割することができる。これに加えて、身体の矢状面に沿って左右の領域を作成することができる。
【0080】
1つの実施形態では、身体領域内で身体上の特定の関心部位を識別することができ(手動又は自動で)、圧力分布図と相関付けることができる。例えば、「足領域」内で左右の踵を識別することができる。
【0081】
(危険性アルゴリズム)
危険性アルゴリズムは、THRを危険性の定量化に変換する。1つの実施形態では、危険性は、0と1との間の値として定量化され、この場合、0が最も低い危険性であり、1が最も高い危険性である。1つの実施形態では、モデルは、異なる領域内の危険性を追跡し、個々のセンセルによって危険性を追跡することができる。センセルにおける危険性は、圧力が最低圧力閾値又はそれを上回るときに高くなる。最低圧力閾値は、組織回復を可能にするのに十分と見なされる接触圧である。一例では、この値は20mmHgに設定されるが、更なる試行及び性能テストの後で調節することができる。センセルにおける圧力が最低圧力閾値よりも低い場合には、危険性は時間と共に低下することになる。このことは、患者の体位変換によって圧力が十分に軽減されたことを示す。
【0082】
(危険性の積算)
初期データセットの取得後、センサデータは、例えば1フレーム毎秒(フレームは、アレイ内の全てのセンサからの接触圧サンプルの完全なセットである)で定期的にサンプリングされる。各フレームでは、あらゆるセンセルについて、割り当てられた危険性レベル、測定圧力、及びフレーム間の時間インターバル(サンプリング速度)の関数として危険性デルタが計算される。続いて現在の危険性値が危険性デルタによって更新される。その後、危険性値は、現在の危険性値に従って常に変動することになり、最高値1に達するか、又は最低値ゼロにまで減少するまで積算し続ける。従って、最低閾値を上回る一定の圧力では、危険性値は時間と共に線形に増大することになる。
【0083】
危険性デルタは、最高危険性値(例えば1である)を所与の圧力において高い危険性に到達するのに要する時間で除算することによって計算される危険性係数として計算することができる。1つの実施形態では、危険性係数は、危険性/ミリ秒として表され、THRが増大するにつれて小さくなる。最高危険性値が1である場合には、危険性係数は、ミリ秒を単位とするTHRの逆数によって計算される。表5は、表3に記載した危険性曲線が、どのように危険性係数に変換されるかを例示している。
【表5】
【0084】
例えば、所与のセンセルにおいて現在の危険性値が0.5であり、センセル上の接触圧が201mmHgである場合には、1つのフレームの後に(1フレーム毎秒において)危険性デルタは次式となる。
1000*2.08E−07=2.08E−04
この接触圧が維持された場合、危険性値が0.5から0.6まで線形に増大するのに1フレーム毎秒でおよそ480秒(8分)を要することになる。より高い圧力は、より高い危険性デルタを生じることになり、危険性値は、より迅速に増大することになる。より低い圧力は、より低い(又は負の)危険性デルタを生じることになり、危険性値はより緩慢に増大又は減少することになる。
【0085】
1つの実施形態では、THR値がまだ調節されていない場合には、各危険性評価レベル(すなわち、低い危険性、中程度の危険性、高い危険性)において危険性係数セットを調節することができる。従って、危険性デルタは、危険性評価レベル及び身体領域の危険性調節並びに接触圧による影響を受ける。例えば、所与の圧力において、高い危険性評価を有する患者は、低い危険性評価を有する患者に対する係数となるものの2倍の危険性係数を有することになる。身体領域の危険性調節では、危険性係数は、各身体領域について計算され、危険性が特定の身体部位において高かった場合、それに応じてスケール調整されることになる。
【0086】
接触圧が最低圧力閾値を下回ると、危険性値は、負の危険性デルタで減少し始めることになる。組織損傷の危険性を低減するのに50mmHgを十分な圧力軽減とすることができることを示す臨床データがある。最低圧力閾値は、40、30、25、20mmHg、又はそれ未満とすることができる。1つの実施形態では、控えめな開始点として、最低圧力閾値に20mmHgが用いられることになる。
【0087】
Makhous他による研究(2007年)は、完全な組織灌流の回復には、接触圧を軽減し、軽減が200秒から300秒にわたって維持されるべきであることを提案した。従って、危険性モデルの1つの実施形態において、臨床的に許容される回復期間を300秒と選択することができる。このことは、回復期間の継続時間にわたってセンセルにおける接触圧が最低圧力閾値よりも低い場合に、危険性モデルは、センセルの危険性値を最も高い危険性(1という値)から最も低い危険性(0という値)まで低下さえることになることを意味する。選択される完全な回復期間の長さは、負の危険性デルタの大きさ(危険性減少速度)を決定付ける。
【0088】
1つの実施形態では、危険性モニタは、全てのセンセルにおける危険性レベルをゼロにリセットするリセットメカニズムを有する。ユーザは、例えば、患者が反転される等、完全に体位変換される場合、又は新しい患者に対してシステムをリセットする時にリセットメカニズムを利用することができる。「リセット」又は「患者転回」操作が入力されて受け入れられると、全てのセンセルにおいて危険性レベルはゼロにリセットされることになる。1つの実施形態では、患者体位の変化は機械視覚処理によって検出され、全てのセンセルにおいて危険性レベルはゼロにリセットされる。
【0089】
1つの実施形態では、本明細書で説明される危険性アルゴリズムは、圧力センサ内の各センセルにおいて積算された危険性値のグラフィック表現を生じる。システムは、全てのセンセルにおける危険性値を危険性分布図の形態で表示し、この危険性分布図は、サンプリング速度又はフレーム速度で更新される。危険性分布図は、患者の身体にわたる危険性の場所及びレベルの指標を提示する。1つの実施形態では、ある特定の部位における危険性レベルがある一定のレベルを超える場合には、この部位を強調表示し、又は介護者の注意を引くように修正することができる。例えば、図15に示すように、危険性モニタは、配色の変化(例えば赤色)で示しているように、患者が右肩に高い危険性を有することを示している。他の情報を提示することもでき、例えば、高い危険性の部位にこの部位がどれ程の時間にわたって高い危険性に曝されているかを示すポップアップタイマを添付することができる。灰色の配色は、低い危険性の部位を示している。配色の伴わない部位は、有意な接触圧を有さない(例えば5mmHgを下回る)。
【0090】
1つの実施形態では、危険性分布図は、高い危険性値が危険性値の大きさに比例する高さを有するピークとして示される3次元表現として示すことができる。
【0091】
(患者転回管理の実施)
1つの実施形態では、危険性分布図又は圧力露出分布図、接触圧分布図、及び転回タイマの効果的な使用を通じて患者転回管理が達成される。転回タイマ及び危険性分布図又は圧力露出分布図は、患者がどれ程の頻度で転回又は体位変換されるかを追跡するのに用いられる。危険性分布図又は圧力露出分布図及び接触圧分布図は、最も高い危険性又は圧力露出及び最も高い接触圧をそれぞれ有する身体部位を識別するのに用いられる。実時間で圧力を示す接触圧分布図を用いて、圧力が軽減されてどのような新しい高圧力部位も生じていないことを示すことによって、患者の転回又は体位変換の有効性を確認することができる。
【0092】
1つの実施形態では、患者転回管理は、転回タイマ、接触圧分布図、及び接触圧分布図上で高い圧力露出の部位を強調表示するグラフィックインジケータの効果的な使用を通じて達成される。グラフィックインジケータは、吹き出し又はポップアップウィンドウを介して圧力露出の度合いについての情報を提供することができる。
【0093】
1つの実施形態では、介護者が、患者を転回又は体位変換したことを示すのを可能にするために、「患者転回」ボタン又は「転回タイマリセット」ボタン等の入力デバイスが用いられる。入力デバイスは、患者が転回され、その後、転回タイマ及び圧力露出値又は危険性値がリセットされることを示すために用いられる。入力デバイスは、「患者転回」、「転回クロックリセット」、「クロックリセット」、「タイマリセット」、又はこのボタンの機能の妥当な指示を提示する他のテキストとして適切に表記される。
【0094】
1つの実施形態では、圧力露出情報、接触圧分布図、及び転回タイマの使用を通じて、新しく効果的な患者転回ワークフローを実施することができる。このワークフローの1つの実施形態が図4に例示されている。
【0095】
患者の体位を識別することによって、機械視覚構成要素により、転回タイマが介護者が始動した転回に加えて患者始動の転回を監視することが可能になる。追加の転回情報に基づいて、転回タイマ及び圧力露出分布図又は危険性分布図は、患者始動の転回を考慮するよう修正することができる。例えば、機械視覚法が、患者が仰臥位から側臥位へと転回したことを識別した場合、介護者が「転回タイマリセット」ボタンを押下したときに圧力露出分布図がリセットされるのと同じ方式で圧力露出分布図をリセットすることができる。
【0096】
1つの実施形態では、図5に概略的に示すように、患者転回管理システムは、当該技術分野で公知の静電容量圧力マッピング格子を備え、更に湿気センサ(14)、せん断センサ(16)、及び温度センサ(18)も含むことができる接触圧マッピングシステム(12)を有する患者支持体面(10)を含む。圧力マッピングシステムは、患者が支持されることになる区域の全て、又は実質的に全てをカバーする格子を備える。圧力マッピングシステムは、上記で説明した本発明の方法を実施するように設計されたソフトウェアを動作させる汎用コンピュータに入力を供給する。ソフトウェアは、本明細書で説明される方法の様々な段階を実施する構成要素を備える。コンピュータ(20)は、当該技術分野で公知のグラフィックディスプレイ(22)及びユーザ入力デバイス(24)を含む。コンピュータは、プログラム命令セットを含む少なくとも1つのメモリと、メモリに動作可能に接続され且つ本明細書で説明される方法を実施するプログラム命令に応答性を有する構成要素を有するプロセッサと、を備えることができる。
【0097】
1つの実施形態では、本発明のシステムは、湿気センサ情報、せん断センサ情報、及び/又は温度センサ情報を利用して、スケジュールされた転回インターバル又は正規化圧力を計算するのに用いられる基準値を修正することができる。例えば、湿気センサによって湿気が検出された場合には、スケジュールされた転回インターバルを、例えば15分又は30分に自動的に低減することができる。
【0098】
危険性部位を現在の接触圧と相関付けるために、危険性分布図と関連して実時間接触圧分布図を提供することもできる。実時間圧力分布図と危険性分布図との組み合わせを用いて、図16に概略的に示すように、褥瘡性潰瘍の予防のための既存の臨床経路を改善することができる。一態様では、本発明は、所定の閾値を超える危険性値又は危険性値セットに応じて、患者の体位を調節する段階を含めることによって患者における褥瘡性潰瘍の形成を予防する方法を含むことができる。この調節段階は、ユーザが手動で、又はシステム作動のデバイスが自動で行うことができる。ワークフローは反復して行われ、危険性が高い圧力点の妥当性が確認されて、患者を定期的に体位変換させることによって軽減される。
【0099】
1つの実施形態では、本発明のシステムは、危険性又は圧力露出モニタに動作可能に接続された調節可能な支持体面を備えることができる。例えば、病院のベッドマットレス内に、上記で説明したとおりに生成される危険性値又は圧力露出値に反応するシステムの制御下で膨張又は収縮させることができる空気袋を配置することができる。従って、危険性分布図又は圧力露出分布図が、特定の領域内で上昇した危険性又は圧力露出のレベルを示す場合には、システムは、圧力修正要素又は危険性修正要素を低減する取り組みにおいて当該領域内で又はこの領域に隣接して空気袋を膨張又は収縮させることができる。システムは、危険性又は圧力露出の絶対レベルに加えて、危険性又は圧力露出の変化速度に応答し、積算速度を低下させるように反応することができる。
【0100】
図に示し又は上記で説明したシステム構成要素は、1つ又は複数のコンピュータとすることができ、又はこれらのコンピュータを含むことができる。構成要素は、コンピュータによって実行されるプログラムモジュール等のコンピュータ実行可能命令の一般的な状況で説明することができる。一般的にプログラムモジュールは、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。
【0101】
本発明が、移動電話又はPDA等のハンドヘルド無線デバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラミング可能な民生用電子機器、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、及び同様のものを含む、様々なコンピュータシステム構成を用いて実施できることを当業者であれば理解されるであろう。本発明はまた、通信ネットワークを通じてリンクされたリモート処理デバイスによってタスクが実行される分散コンピューティング環境で実施することもできる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカル及びリモートの両方におけるメモリ記憶デバイスを含むコンピュータ記憶媒体内に置くことができる。
【0102】
コンピュータシステムは、処理ユニットと、システムメモリと、システムメモリを含む様々なシステム構成要素を処理ユニットに結合するシステムバスと、を含むコンピュータの形態の汎用コンピューティングデバイスを含むことができる。
【0103】
コンピュータは通常、システムメモリの一部を形成し、処理ユニットによって読み取ることができる様々なコンピュータ読み取り可能媒体を含む。限定としてではなく一例として、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。システムメモリは、読み取り専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)等の揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリの形態のコンピュータ記憶媒体を含むことができる。ROM内には通常、起動中等に要素の間で情報を転送するのを支援する基本ルーチンを含む基本入力/出力システム(BIOS)が記憶される。通常RAMは、処理ユニットによって直にアクセス可能及び/又は現時点で動作されているデータ及び/又はプログラムモジュールを含む。データ又はプログラムモジュールは、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、及びプログラムデータを含むことができる。
【0104】
最低でも、メモリは、永続的又は一時的に記憶された少なくとも1つの命令セットを含む。プロセッサは、データを処理するために記憶された命令を実行する。命令セットは、添付のフロー線図に示すもの等の1つ又は複数の特定のタスクを実行する様々な命令を含むことができる。特定のタスクを実行するためのかかる命令セットは、プログラム、ソフトウェアプログラム、ソフトウェア、エンジン、モジュール、コンポーネント、メカニズム、又はツールとして特徴付けることができる。患者監視システムは、上記で説明したようにメモリ内に記憶されてプロセッサ上で本明細書で説明される方式で実行される複数のソフトウェア処理モジュールを含むことができる。プログラムモジュールは、1つ又は複数のプロセッサが命令を読み取ることを可能にするために、マシン言語又はオブジェクトコードに変換される何れかの適切なプログラミング言語の形態のものとすることができる。すなわち、特定のプログラミング言語で書かれたプログラミングコード又はソースコードの行をコンパイラ、アッセンブラ、又はインタープリタを用いてマシン言語に変換することができる。マシン言語は、特定のコンピュータに固有のバイナリ符号化マシン命令とすることができる。本発明の様々な実施形態に従って、何れかの適切なプログラミング言語又は言語の組み合わせを用いることができる。
【0105】
コマンド及び命令を実行する処理ユニットは、汎用コンピュータとすることができるが、専用コンピュータ、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、プログラミング済みマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺集積回路要素、CSIC(特定顧客向け集積回路)、ASIC(特定用途向け集積回路)、論理回路、デジタル信号プロセッサ、FPGA(現場プログラミング可能ゲートアレイ)、PLD(プログラミング可能論理デバイス)、PLA(プログラミング可能論理アレイ)等のプログラミング可能論理デバイス、RFIDプロセッサ、スマートチップ、或いは本発明の処理段階を実施することができる他の何れかのデバイス又はデバイス配列を含む様々な他の技術のうちの何れかを利用することができる。
【0106】
コンピュータシステムのプロセッサ及び/又はメモリは、物理的に同じ場所に存在する必要はないことを理解されたい。コンピュータシステムによって用いられるプロセッサの各々及びメモリの各々は、地理的に異なる場所に存在させ、何れかの適切な方式で互いに通信するように接続することができる。これに加えて、プロセッサ及び/又はメモリの各々は、機器の異なる物理的要素から構成することができることを理解されたい。
【0107】
ユーザは、キーボード、及び通常はマウス、トラックボール、又はタッチパッドと呼ばれるポインティングデバイス等の入力デバイスを含むユーザインターフェースを通じてコンピュータにコマンド及び情報を入力することができる。他の入力デバイスは、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、パラボラアンテナ、スキャナ、音声認識デバイス、キーボード、タッチスクリーン、トグルスイッチ、プッシュボタン、又は同様のものを含むことができる。多くの場合これら及び他の入力デバイスは、システムバスに結合されるが、パラレルポート、ゲームポート、又はユニバーサルシリアルバス(USB)等の他のインターフェース及びバス構造によって接続することができるユーザ入力インターフェースを通じて処理ユニットに接続される。
【0108】
システムバスにインターフェースを介して1つ又はそれ以上のモニタ又は表示デバイスを接続することもできる。表示デバイスに加えて、コンピュータは、出力周辺インターフェースを通じて接続することができる他の周辺出力デバイスを含むこともできる。本発明を実施するコンピュータは、上記で説明した要素のうちの多く又は全てを一般的に含む1つ又はそれ以上のリモートコンピュータへの論理接続を用いてネットワーク接続環境で動作することができる。
【0109】
有線又は無線のローカルエリアネットワーク(LAN)及び広域ネットワーク(WAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(PAN)、並びに他の種類のネットワークを含む様々なネットワークを本発明の実施形態に従って実装することができる。LANネットワーク接続環境内で用いられる場合には、コンピュータは、ネットワークインターフェース又はアダプタを通じてLANに接続することができる。WANネットワーク接続環境内で用いられる場合には、一般的にコンピュータは、モデム又は他の通信メカニズムを含む。モデムは、内部又は外部のものとすることができ、ユーザ入力インターフェース又は他の適切なメカニズムを介してシステムバスに接続することができる。コンピュータは、インターネット、イントラネット、エクストラネット、イーサネット(登録商標)、又は通信を可能にする他の何れかのシステムを介して接続することができる。幾つかの適切な通信プロトコルは、例えば、TCP/IP、UDP、又はOSIを含むことができる。無線通信では、通信プロトコルは、ブルートゥース、Zigbee(登録商標)、IrDa、又は他の適切なプロトコルを含むことができる。更にシステムの構成要素は、有線又は無線の経路の組み合わせを通じて通信を行うことができる。
【0110】
コンピュータの他の多くの内部構成要素が示されてないが、当業者であればかかる構成要素及び相互接続が公知であることを理解されるであろう。従って、本発明と関連して、コンピュータの内部構造に関わる更なる詳細事項は開示しない。
【0111】
当業者には理解されるように、請求項に記載された本発明の範囲から逸脱することなく前述の特定の開示内容の様々な修正、調整、及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
1 転回タイマ
2 実時間圧力モニタ
3 圧力露出モニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、褥瘡性潰瘍形成の危険性を監視及び評価するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子の座席及び病院のベッド等の医療用支持面の評価において接触圧情報を提供するために、圧力画像生成システムが用いられてきた。これらの面評価を実施する主たる目的は、褥瘡性潰瘍の発症を予防することであった。
【0003】
褥瘡性潰瘍(圧迫潰瘍、褥瘡又は床ずれとしても知られる)は、一般的に圧力、せん断、又は摩擦によって引き起こされると考えられる皮膚及び皮下組織に対する局部的損傷部位である。骨突出により深部組織損傷が発生する恐れがあり、皮膚検査では初期病変が目視不能であることから、治療を受けることなくこれらの創傷が悪化する可能性はかなり高い。
【0004】
褥瘡性潰瘍は、病院内の患者のみならず、在宅の患者においても発生する。一般的にこれらの潰瘍は、高齢者並びに運動能力の低い患者及び栄養不足の患者に見られる。カナダ及び米国内の病院内での褥瘡性潰瘍の有病率は5〜33%の範囲にわたり、この有病率は、生活の質に対する大きな負担となるだけでなく、医療介護システムにおける財政上の負担となることを意味する。
【0005】
病院内では、介護者は、患者を規則的な転回スケジュールで、一般的には2時間毎に手動で転回させることによって褥瘡性潰瘍の有病率を低減しようと試みる。この試みは、長い時間間隔にわたって病院のベッドと接触していた身体部位における圧力を軽減しようとする試みである。クッション支持体及び特殊ベッドは、接触圧を軽減する上で用いることができる他の用具である。しかしながらこれらの用具のコストは大きく異なり、潰瘍の発生を実際に低減するこれらの用具の能力は、十分には理解されていない。
【0006】
臨床研究では、一貫して実施される転回スケジュールによって、褥瘡性潰瘍の発生を低減できることが示された(DeFloor他(2005年))。しかしながら、一般的に病院は褥瘡性潰瘍の予防のために病院の臨床経路に転回スケジュールを含むにも関わらず、院内罹患の褥瘡性潰瘍の有病率は高いままである。
【0007】
従って、圧力センサ情報に関する有用で有意な情報を提供し、臨床スタッフが患者転回実施計画をより効果的に確実に実施するのを支援する方法及びシステムに対する要求が当該技術分野においてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、圧力露出(pressure exposure)及び/又は褥瘡性潰瘍形成の危険性を有意で有用な方式でモデル化し、危険性評価をユーザに対して新規の情報に基づく方式で提示するための方法及びシステムに関する。本方法及びシステムはまた、上昇したベッド圧の存在、及び身体のうちで褥瘡性潰瘍を発症しやすい部位における圧力への長期暴露の作用についての介護者の認識度を高める情報を提供することができる。より的確な情報が与えられた臨床スタッフは、患者を体位変換させる上での判断においてより自信を持つことができ、転回スケジュールに効果的に従う見込みが高い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、患者が支持体面上に支持され、患者と支持体面との間に複数のセンセル(sensel; センサの全体的なアレイ内の個々の圧力センサ)を有する圧力感知接触部が配置される場合に、接触圧に対する患者の暴露を評価する方法であって、
(a)望ましい転回インターバルを特定する段階と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)段階と、
(c)複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを所定の時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))段階と、
(d)E(t)と、選択された転回インターバルと、センサの最大圧力範囲とから正規化圧力露出Enormを得る段階と、
(e)各センセルにおける正規化圧力露出値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(b)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法を含む。
【0010】
別の態様において、本発明は、支持体面上に支持される患者についての圧力露出値を特定して表示するためのシステムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)ための構成要素と、複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを選択された時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))ための構成要素と、複数のセンセルの各々における選択された転回インターバル及びセンサの最大圧力範囲に基づいて正規化圧力露出Enormを得るための構成要素とを備え、圧力感知接触部に動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(c)Enorm値をユーザに対して示すために処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステムを備える。
【0011】
1つの実施形態では、処理手段は、複数のEnorm値からディスプレイ上に示される圧力露出分布図を生成するための構成要素を更に備える。
【0012】
別の態様において、本発明は、患者が支持体面上に支持され、患者と支持体面との間に複数のセンセルを有する圧力感知接触部が配置される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価する方法であって、
(a)複数のセンセルの各々から圧力値を取得して、圧力値から各々センセルにおける時間対高危険性(THR)値を得る段階と、
(b)少なくとも1つの修正要素を考慮することによってTHR値を調節する段階と、
(c)危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタに変換する段階と、
(d)危険性値を危険性デルタだけ調節する段階と、
(e)調節された危険性値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(a)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法を含む。
【0013】
1つの実施形態では、THR値は、圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は所定の数学式を圧力値に適用することによって特定される。
【0014】
別の態様において、本発明は、患者が支持体面上に支持される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価するための危険性評価システムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)少なくとも1つの危険性修正要素を考慮することによって危険性修正要素を受け入れるための入力デバイスと、
(c)複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素と、THR値を危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素と、危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を危険性デルタ分調節するための構成要素とを備え、圧力感知接触部及び入力デバイスに動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(d)調節された危険性値をユーザに対して表示するために処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステムを備える。
【0015】
複数のセンセルの各々におけるTHR値を特定するための構成要素は、センセルから圧力値を取得して、圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は数学式を圧力値に適用することによって特定を行うことができる。更にシステムは、複数のセンセルの各々における危険性値から、ディスプレイ上に示される危険性分布図を作成するための構成要素を備えることができる。
【0016】
別の態様において、本発明は、患者転回管理システムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部及び圧力接触部分布図を生成するための手段と、
(b)介護者が患者の転回又は体位変換をいつ開始したかを示すための入力デバイスと、
(c)介護者によって開始された最後の転回又は体位変換からの経過時間、又はスケジュールされた次の転回が期限を迎えるまでの残り時間を追跡するためのタイマと、
(d)コンピュータ実装の処理手段と、
を備え、コンピュータ実装の処理手段が、
(i)処理手段が圧力感知接触部に動作可能に接続されており、複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、特定された圧力値に基づいて圧力露出値を得るための構成要素か、
又は、
(ii)処理手段が圧力感知接触部及び入力デバイスに動作可能に接続されており、複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素、THR値を危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素、危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を危険性デルタ分調節するための構成要素か、
を含み、患者転回管理システムが更に、
(e)圧力露出値又は危険性値、圧力接触部分布図、及び介護者による最後の転回又は体位変換からの経過時間を表示するために処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステムを備えることができる。
【0017】
図面において、同様の要素に同様の参照番号が割り当てられている。図面は必ずしも正確な縮尺のものではなく、むしろ本発明の原理に重点が置かれている。これに加えて、図示の実施形態の各々は、本発明の基礎的概念を利用する数多くの実施可能な構成のうちの1つに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】圧力露出分布図、接触圧分布図、及び患者転回入力ボタンを有する経過時間転回タイマである、本発明の1つの実施形態の3つの機能の図である。
【図2】圧力露出の数学表現である。
【図3】正規化圧力露出に適用されたカラースケールの1つの可能な表現を含む、圧力と経過時間と圧力露出との間の関係を示す図である。
【図4】本発明を組み込んだ提案する患者転回ワークフローである。
【図5】本発明の1つの実施形態を示す図である。
【図6】2つの異なる体位の圧力分布図画像である。
【図7】圧力露出分布図の1つの例証的な表現である。
【図8】文献において公知の臨床的に得られた圧力対時間グラフである(従来技術)。
【図9】文献において公知の臨床的に得られた別の圧力対時間グラフである(従来技術)。
【図10】本発明の危険性アルゴリズムの1つの実施形態の概略図である。
【図11】危険性評価の1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図12】圧力分布図の1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図13】機械視覚を通じて2次元圧力分布図から得られた3次元危険性モデルである。
【図14】危険性調節入力インターフェースの1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図15】危険性分布図の1つの実施形態のスクリーンショットである。
【図16】褥瘡性潰瘍形成を予防又は低減する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、褥瘡性潰瘍を形成する危険性に曝された被験者又は患者に携わる介護者又は医療保険業務従事者に対して、実時間圧力測定により有用な情報を得て表示するためのシステム及び方法に関する。本発明の説明に際して、本明細書内で定義されていない全ての用語は、当該技術分野で認識されている一般的な意味を有する。以下の説明は、本発明の特定の実施形態又は特定の用途についてのものである限り、例証に過ぎず、請求項に記載された本発明を限定するものではないものとする。以下の説明は、添付の請求項において定義された本発明の技術的思想及び範囲に含まれる全ての代替形態、修正形態、及び均等物を保護することを意図している。
【0020】
一態様では、本発明は、ベッド圧への患者の暴露を追跡し、患者の転回又は体位変換の実施計画の実行を新規の情報に基づく方式で管理するためのシステム及び方法に関する。1つの実施形態では、本発明は、ある期間にわたって測定される患者/ベッド接触圧を追跡し、この情報を圧力露出分布図の形態でユーザに提供する新規の方法を提供する。1つの実施形態では、接触圧分布図上に重ね合わせられる視覚インジケータを用いて最も高い暴露部位が位置特定される。別の実施形態では、本発明は、特定の因子及び因子の組み合わせを新規の方式で監視することによって全体的な褥瘡性潰瘍の危険性を評価し、この危険性評価をユーザに対して新規の情報を与える方式で提示するシステム及び方法を提供する。1つの実施形態では、危険性評価は、ユーザが、高い危険性及び低い危険性の部位を視覚的に判断可能にする危険性分布図として提示される。1つの実施形態では、最も高い危険性の部位は、接触圧分布図上に重ね合わせられる視覚インジケータを用いて位置特定される。
【0021】
更に本発明の実施形態は、提供される圧力露出情報又は危険性評価情報を用いて患者転回実施計画を管理するシステム及び方法を提供する。
【0022】
患者固有の危険性情報を継続的に提供することによって、圧力露出分布図及び危険性分布図のどちらか又は両方により、介護者が褥瘡性潰瘍の予防のために患者の体位変換に関してより的確な情報に基づく選択を行うのを支援することができる。
【0023】
1つの実施形態では、ある期間にわたる圧力露出は、測定された圧力並びにこれらの圧力に患者が暴露される時間に基づいて、圧力に対するより高い又は低い暴露を伴う身体部位をユーザが視覚的に識別できるようにする圧力露出分布図として提示される。
【0024】
圧力露出管理
別の実施形態では、圧力露出情報、接触圧情報、及び患者転回追跡情報を用いて、介護者に継続的なフィードバックを提供することによって患者転回管理の質及び一貫性が改善される。これらの3つの機能の表現を図1に概略的に示している。
【0025】
本発明の圧力露出分布図は、実時間接触圧入力を利用して、ある期間にわたる圧力露出を追跡して集計する。接触圧入力は、患者の支持体面に関連付けられた圧力センサによって取得され、該センサは、支持体面と患者との間にかかる圧力を報告する。一般的に2次元格子(グリッド)で配列される複数のセンセルを設けた圧力センサマットを用いることができる。センサセルとは、センサの全体的なアレイ内の個々の圧力センサである。かかるマットは当該技術分野で公知であり、市場で入手可能である。圧力露出の特定は、複数の場所及びある期間にわたって処理され、本明細書で説明される何れかの危険性因子と組み合わせられ、又はこれらとは独立して特定することができる。
【0026】
圧力露出は、ある時間間隔にわたって患者が受ける身体/支持体面接触圧の定量化である。概念的には圧力露出は、太陽光暴露、放射線暴露、又はスポーツダイバーの様々な深度において費やされた時間に基づく水圧への暴露と同様である。数学的には圧力露出は、図2に示すように計算される。圧力露出に対する測定単位は、圧力の標準単位に時間の標準単位を乗算したもの、例えば、mmHg、psi、Kpa、又はN/mである。
【0027】
所与の時間間隔にわたる圧力露出は、圧力デルタを合計することによって計算され、これらは、測定された接触圧に最後の圧力測定からの経過時間を乗算する(圧力露出デルタEΔ=P×Δt)ことによって計算される。圧力露出値は、所定の時間間隔にわたる圧力露出デルタの積算に基づいて特定され、すなわち、E(t)=ΣEΔ(t)。
【0028】
1つの実施形態では、絶対圧力露出は、スケジュールされた転回インターバル及びセンサの較正限界に関して正規化され、Enorm=E(t)/tturn interval/Pmax。例えば、2時間の転回インターバル及び200mmHgの最大較正圧に基づくと、測定圧力が一定の200mmHgである場合、正規化圧力露出は、2時間後に最大値に達することになる。表1は、200mmHgの最大センサ較正限界に基づく正規化圧力露出(Enorm)値の実施例を示しており、ここで最大Enorm=1である。
【表1】
【0029】
E(t)及びEnormは、圧力感知格子の各センセルについて計算される。
【0030】
別の実施形態では、正規化圧力露出値は、他の時間又は圧力基準値に基づく。臨床データ又は特定のユーザ要件に基づいて、より低い圧力を圧力露出を正規化する目的の基準値として用いることができる。同様に、推奨転回インターバルとは別の時間間隔を用いることができる。時間及び圧力の基準値を調節することによって、システムを異なる患者のタイプ又は異なる患者環境に潜在的に最適化することができる。
【0031】
正規化圧力露出Enormは、1つの実施形態ではEnorm=1である最大値に向かって積算されることになる。最大基準圧では、転回インターバル時間が経過すると、値1に達する。最大基準圧よりも低い圧力では、転回インターバル時間の間にはEnormは1に達せず、最大値まで積算され続けることになる。Enormは、圧力が軽減されるまで、或いは患者が転回又は体位変換されたという情報を介護者が提供されるまでは減少しないことになる。図3は、2時間の転回インターバル及び200mmHgの最大センサ圧限界に基づく正規化圧力露出の積算を例示している。200mmHg、100mmHg、及び50mmHgの一定測定圧力に対するEnormalized値がプロットされている。
【0032】
1つの実施形態では、正規化圧力露出Enormは、最大値1を超えて積算され続けることになる。これによって、最も高い積算Enormを有するセンセルの位置特定が可能にになる。Enormは、圧力が軽減されるまで、或いは患者が転回又は体位変換されたという情報を介護者が提供されるまでは増大し続けることになる。
【0033】
1つの実施形態では、正規化圧力露出は、圧力露出分布図として提示することができる。圧力露出分布図は、正規化圧力露出、絶対圧力露出、又は患者と支持体面との間に配置されたセンセル格子から取得された、ある期間にわたる圧力測定値の積算に基づく他の値の2次元表現である。
【0034】
1つの実施形態では、最も高い圧力露出の部位は、色、囲み円、矢印、ポインタ、又は他の幾何学的識別子等の視覚マーカを用いて圧力露出分布図又は2次元接触圧分布図上で強調表示される。視覚マーカはまた、限定ではないが、圧力露出、正規化圧力露出、平均圧、ピーク圧、圧力露出の継続時間、現在の圧力の継続時間、又はピーク圧の継続時間を含む、更なる吹き出し情報を提供することもできる。吹き出し情報は、テキスト又はグラフィック手段によって提示することができる。1つの実施形態では、圧力露出分布図は、高い圧力露出の部位が、圧力露出値に比例する高さを有するピークとして表示された、3次元のものとすることができる。
【0035】
継続的な患者固有の圧力露出情報を提供することによって、圧力露出分布図は、褥瘡性潰瘍の発症の身体的な兆候を探すべき場所、及び最も高い圧力露出を有する部位における圧力を軽減するために患者を最良に体位変換させる方法に関して介護者がより的確な情報に基づく選択を行うのを支援することができる。1つの実施形態では、可動患者は高いレベルの圧力露出を積算させる可能性が低いので、圧力露出情報は、患者の可動性レベルの指標を提供するのに用いることができる。可動性情報は、テキスト又はグラフィック手段によって提示することができる。
【0036】
高い圧力露出の部位を位置特定した後、介護者は、実時間圧力画像を参照することによって、患者の身体上の特定の部位から圧力露出が適切に軽減されたことを検証することができる。
【0037】
1つの実施形態では、本発明の圧力露出追跡処理は、物理的入力(接触圧及び接触圧の継続時間等)を、患者が最も高い圧力に最も長い継続時間にわたって暴露された場所を識別するのに用いられる値に変換する。圧力露出追跡の感度は、臨床機関によって実施される患者転回インターバル(例えば2時間毎)に基づいて、又は既知の臨床的危険性スケール等の他の修正要素によって、或いは、追加のセンサによって又は手動で取得することができる温度、湿気、又はせん断力等の他の物理的情報によって調節される。転回インターバルを調節すること、又は他の修正要因を適用することによって、圧力露出値は、より緩慢に、又はより迅速に積算されることになる。例えば、完全に不動であり、褥瘡性潰瘍を発症する危険性が極めて高い患者では、転回インターバルを1時間に短縮することができる。この場合、高いレベルの正規化圧力露出がより迅速に得られることになる。表2は、1時間及び2時間の転回インターバルに基づく圧力分布サンプルにおける正規化圧力露出の積算の実施例を示している(前の実施例と同様に、Enormは、200mmHgのセンサ圧限界に基づく)。
【表2】
【0038】
ベッド面センサに加えて、1つの実施形態では、補助的な支持体面の接触圧情報を提供するために、枕及び他の圧力軽減支持体面内に特殊センサを配置することができる。これらの補助センサは、主ベッドセンサと同じ方式で監視されることになる。
【0039】
接触圧が最低圧力閾値を下回る場合には、正規化圧力露出値は減少し始めることになる。最低圧力閾値は、圧力値の範囲にわたって選択することができる。例えば、30mmHgの毛細管圧が組織損傷の危険性を低減するのに十分な圧力軽減とすることができる臨床データがある。1つの実施形態では、最低圧力閾値は、30nmHgから、センサの較正範囲内の最低値(5mmHgとすることができる)までの間の何れかの値にユーザが設定することができる。1つの実施形態では、最低圧力値は、20mmHg等の臨床的に許容されるレベルに固定される。
【0040】
最近の研究(Makhous他(2007年))は、完全な組織灌流の回復には、接触圧を軽減し、200秒から300秒の回復期間にわたって軽減が維持されるべきであることを提案した。1つの実施形態では、回復期間は、最短3分から最長20分までの間の何れかの時間長とすることができる。1つの実施形態では、回復期間は、30秒等の臨床的に許容されるレベルに固定される。
【0041】
1つの実施形態では、圧力露出値又は正規化圧力露出値は、選択された回復期間が経過した後に値がゼロに達するような速度で低減されることになる。選択された回復期間の長さは、負の圧力露出デルタの大きさを決定付ける。1つの実施形態では、この処理は、以下の論理ステートメントを用いて実装することができる。
interface_pressure=IP
normalized_pressure_exposure=NEP
stored_normalized_pressure_exposure=SNEP(NEPが積算されるにつれて値が記憶される)
minimum_pressure_threshold=選択された毛細管圧又は軽減圧(例えば20mmHg)
recovery_period=選択された回復期間(例えば10分)
max_pressure=センサ較正範囲内の最高圧力(例えば200mmHg)
turn_interval=スケジュールされた転回インターバル(例えば2時間)
Δt=圧力露出デルタを計算するのに用いられる経過時間
IF (IP<minimum_pressure_threshold) THEN
IF NEP<>0 THEN
NEP=NEP−(SNEP/recovery_period)×Δt
END IF
ELSE
NEP=NEP+(IP/max_pressure)×(Δt/turn_interval)
SNEP=NEP
END IF
【0042】
1つの実施形態では、圧力露出分布図及びシステムは、全てのセンセルについて圧力露出値をゼロにリセットするリセットメカニズムを備える。ユーザは、例えば、患者が完全に反転される等、完全に体位変換される場合にリセットメカニズムを利用することができる。1つの実施形態では、入力ボタンは、押下されたときに全てのセンセルについて圧力露出分布図をゼロにリセットするリセットメカニズムである。
【0043】
1つの実施形態では、複数のセンセルからの圧力露出値により、患者の身体上の圧力露出のグラフィック表現である圧力露出分布図がもたらされる。システムは、全てのセンセルについて正規化圧力露出値を圧力露出分布図の形態で表示する。圧力露出分布図は、患者の身体にわたる圧力露出の場所及びレベルの指標を提供する。1つの実施形態では、ある特定の部位における圧力露出レベルがある一定のレベルを超えた場合、この圧力露出レベルを強調表示するか、又は介護者の注意を引くように修正することができる。例えば図7に示すように、圧力露出モニタは、カラースケール内で最も明確な色(例えば赤色)で示すように、患者が、右臀部の部位において最も長い時間間隔にわたって最高圧力を受けたことを示す。オレンジ色及び黄色の配色は、著しい圧力露出を有する他の部位を示す。灰色の配色は、低い圧力露出部位を示す。呈色のない部位は、有意な接触圧を有さず(例えば5mmHgを下回る)、一般的に患者と接触状態にないベッド面区域である。
【0044】
1つの実施形態では、最も高い接触圧を有する身体部位を識別するために、実時間接触圧分布図も利用可能である。接触圧は瞬間的であり、接触圧の継続時間についてどのような指標も提供しない点で圧力露出とは異なる。接触圧分布図は、新しい患者の体位の妥当性を確認できるようなワークフローを容易にする。ワークフローは反復的なものとすることができ、新しい高接触圧点が生じていないことを確実にするために体位変換の妥当性が確認され、必要に応じて更なる体位変換が行われる。
【0045】
一態様では、本発明は、所定の閾値を超える高い圧力露出値又は圧力露出値群に応じて患者の体位を調節する方法を含むことができる。調節方法は、介護者が手動で実施するか、又はシステムによって作動されるデバイスが自動的に実施することができる。
【0046】
(危険性分布図)
別の実施形態では、実時間圧力測定値を危険性評価に変換し、上記で説明した圧力露出分布図に類似した危険性分布図として表示することができる。本発明の危険性分布図は、物理的因子入力及び生理学的因子入力を利用して、入力値を所定の危険性レベルと相関付ける記憶データとこれらの入力データを比較することにより危険性レベルを割り当てる危険性アルゴリズムによって作成される。物理的因子入力及び生理学的因子入力は、センサによって、又はユーザの観察もしくは判断及び入力によって、或いはセンサと直接的なユーザ入力との組み合わせによって取得される。危険性レベルの特定は、複数の場所及びある期間にわたって処理される。
【0047】
重要な物理的危険性因子は接触圧である。高い圧力は軟部組織灌流の低減又は停止を生じることは明らかである。軟部組織上に高い圧力が長く加わる程、褥瘡性潰瘍の発症の可能性が高くなるので、時間も重要な因子である。接触圧センサは、静電容量圧力感知要素のアレイを利用して、患者/支持体面接触部の圧力分布図を作成する。1つの実施形態では、圧力は、5mmHから200mmHgの範囲にわたって測定される。
【0048】
褥瘡性潰瘍形成に対する他の重要な危険性因子は、物理的因子及び生理学的因子を含む。物理的因子は、以下のものを含む。
湿気/失調
・皮膚の自然の障壁保護性を変化させ、皮膚損傷の可能性を高める。
温度
・高い皮膚温度は発汗を生じさせ、湿気に起因する危険性因子を高める。
・低い皮膚温度は、循環不足を生じさせる。
せん断
・組織に対する歪みを高め、低い循環を生じる恐れがある。
【0049】
生理学的因子は以下のものを含むことができる。
年齢
・高齢者は、皮膚の変化、緩慢な代謝、栄養不足及び水分摂取不足、並びに呼吸機能の障害に起因して、褥瘡性潰瘍の発症の高い危険性に曝される。
・高齢者は、循環系障害及び糖尿病等の慢性的な健康状態の高い危険性にも曝される。
可動性
・可動性は、危険性に曝される可能性のある部位において圧力が軽減されることが多いので、褥瘡性潰瘍を発症する危険性を低減する。
・例外は、過度の運動から生じ且つ皮膚損傷に寄与する恐れがあるせん断及び摩擦である。
疾患
・末梢血管疾患(PVD)等の疾患は、危険性に曝されている組織への血液供給の欠乏を生じる急性又は慢性の虚血を引き起こす恐れがある。
・同様に心臓及び肺の疾患は、危険性に曝されている組織への血液又は酸素の供給を制限する恐れがある。
外科手術
・外科手術は、外科手術中又は術後のどちらかにおける患者の運動を制限することが多く、褥瘡性潰瘍を引き起こすより高い危険性を有する長期の圧力点に患者を暴露させる。
・回復中には、監視機器に接続されている患者を体位変換させるのがより困難となる恐れがある。
循環
・血液循環不足は、組織細胞への酸素、栄養素、及び血液細胞の不十分な送達を生じ、従って損傷の危険性を高める。
糖尿病
・血液循環不足
・糖尿病の人は、特に腕及び脚において重度の循環不足を有する恐れがある。多くの場合、糖尿病は、組織損傷に対する別個の危険性として挙げられる。
栄養
・ビタミン及びたんぱく質の欠乏は、組織損傷の危険性を高める。
・National Pressure Ulcer Long−term Care Study(全国褥瘡性潰瘍長期介護研究)(NPULS)は、不随意の体重減少を、褥瘡性潰瘍を発症する危険性の74%増大と関連付けた。
脱水
・NPULSは、脱水を褥瘡性潰瘍を発症する危険性の42%増大と関連付けた。
肥満
・脂肪組織内での血液流不足
・脂肪組織は、筋肉組織よりも強く圧迫する傾向にある。
・低い可動性
【0050】
危険性因子の数及びその相互関係によって、患者について全ての因子を考慮した評価を実施するのが困難になる。患者の危険性レベルを予測する上で最も重要度の高い因子に対処することを試みる危険性評価ツールが存在する。高レベルの危険性と関連付けられた患者は、より頻繁な転回スケジュール及び皮膚検査、特殊支持体面、摩擦低減クリーム、及び高い危険性の部位におけるマッサージを含む、高レベルの予防介護の候補である。
【0051】
例えば、ブレーデンスケールは、患者が1から4までのスケールに関連付けられて格付けされた6つのカテゴリを用いる。総合スコアが低い程、褥瘡性潰瘍を発症する危険性は高い。カテゴリは以下のとおりである。
・感覚認知
・湿気
・活動
・可動性
・栄養
・摩擦及びせん断
【0052】
ウォーターロー(Waterlow)予防/治療方針は、6つのカテゴリに加えて3つの更なる「特殊危険性」カテゴリに基づくスコア方式を用いる。総合スコアが高い程、褥瘡性潰瘍を発症する危険性は高い。6つの主カテゴリは以下のとおりである。
・体型及び体重
・皮膚状態
・性別及び年齢
・栄養
・抑制
・可動性
【0053】
3つの「特殊危険性」カテゴリは以下のとおりである。
・組織の栄養失調
・神経学的欠陥
・重大な外科手術又は創傷
【0054】
ノートンスケール(Norton Scale)は、患者が1から4までのスケールに関連付けられて格付けされた5つのカテゴリを用いる。総合スコアが低い程、褥瘡性潰瘍を発症する危険性は高い。カテゴリは以下のとおりである。
・一般的な体調
・精神状態
・活動
・可動性
・失調
【0055】
更なる危険性評価スケールは、修正ノートン危険性スケール、グラモーガン(Glamorgan)小児科危険性スケール、及び危険性評価圧力スコア(RAPS)スケールを含む。修正ノートン危険性スケールは、従来のノートンスケールに幾つかの更なるカテゴリを付加する。RAPSスケールは、修正ノートンスケール、ブレーデンスケールから引用した幾つかのカテゴリを利用して、研究結果から得られた3つの新しいカテゴリを付加する。グラモーガン危険性スケールは、最近になって開発されたものであり、小児に対する褥瘡性潰瘍危険性に焦点を当てている。
【0056】
1つの実施形態では、本発明の危険性モデル化処理は、物理的入力(接触圧及び接触圧の継続時間等)を、褥瘡性潰瘍を発症する危険性に患者がいつ曝されるかを識別するのに用いられる危険性値へ変換する。危険性モデルの感度は、危険性スケール評価、患者固有の生理学、及び介護者独自の患者評価を通じて取り込まれた生理学的因子に基づいて調節される。危険性モデルは、これらの情報を用いて、支持体面と接触する患者の身体上にマッピングすることができる危険性値を計算する。この生体計測危険性情報は、介護者が身体の特定の部位における患者の危険性レベルを監視及び評価するのに用いることができる。図10は、本発明の危険性モデルの概念のブロック図を提示している。
【0057】
危険性モデル内への主要臨床データ入力は、組織損傷の危険性を計算するための基礎として、Reswick & Rogers(1976年)又はLinder−Ganz他(2006年)等の圧力対時間曲線を含む。Reswick & Rogers(1976年)は、臨床データに基づいて組織許容範囲ガイドラインを考案し、彼らの研究の結果は、褥瘡性潰瘍が発症する可能性が高い閾値を強調表示する圧力対時間曲線に要約された。図8に、Reswick & Rogersの圧力対時間曲線を示している。
【0058】
これらの曲線は、接触圧の大きさと、継続的な圧力の時間と、褥瘡性潰瘍を発症する危険性との間に直接的な関係があることを示している。他の研究(Patterson and Fisher(1986年)、Peters他(2005年)、Gefen他(2008年))において得られたもの、或いは他の特化された又は専有の圧力対時間曲線を含む他の曲線を利用することができる。専有の圧力対時間曲線は、座り心地研究等の生体計測フィードバックの独立した臨床研究又は調査を通じて取得することができる。Linder−Ganz曲線は、圧力曲線の高端と低端とにおいてReswick & Rogers曲線とは異なる。図9では、Linder−Ganz曲線をReswick & Rogers曲線に対して比較している。
【0059】
例えば、図9に示す圧力対時間曲線に基づくと、およそ160mmHgの接触圧は、2時間弱しか許容可能ではない。この時間枠内で圧力が軽減されない場合には、患者は、褥瘡性潰瘍を発症する高い危険性に曝される。表3は、Linder−Ganz(2006年)曲線に基づく様々な圧力に対する高危険性時間インターバルを詳細に説明している。
【表3】
【0060】
本明細書では、接触圧に基づく時間対高危険性をTHRと示すものとし、褥瘡性潰瘍が形成し始めることができる前に、その時点で受けている圧力に対して患者を暴露させることができる継続時間の推定値として定義する。例えば、Linder−Ganz他(2006年)の研究は、240mmHgを過える圧力が、最短で15分から1時間以内に褥瘡性潰瘍を引き起こす恐れがあると結論付けている。従って、1つの実施形態では、233mmHgの圧力に対して、THRとして20分という控えめな推定値が適用される(図9のLinder−Ganz曲線に基づいて)。
【0061】
危険性モデルは、あらゆるサイズのものとすることができるセンサアレイのあらゆるセンサについての圧力対時間曲線に基づいてTHR値を計算する。1つの実施形態では、センサは、50×125(6250)個のセンサを含む。THR値は、参照テーブルから得られ、又は選択された圧力対時間曲線に当てはまる数学関数を用いることによって得ることができる。
【0062】
本発明は、圧力対時間関係の既知の臨床データを用いて例示したが、上記で引用した文献に提示されている臨床データ、又は図及び本明細書の表に提示されている臨床データに限定されない。新しい臨床データが利用可能になると、危険性モデルにおいて用いた圧力対時間曲線は、組織損傷を予測するためのより良好なモデルを反映するよう修正することができる。本発明の使用によって取得される現場データは、代替の圧力対時間曲線を構築するのにも用いることができる。
【0063】
(危険性の調節)
危険性スケール評価が完了した後、患者には、患者の皮膚状態によって、又は患者の病歴に基づいて特定される危険性レベルが割り当てられる。1つの実施形態では、危険性レベルは、ブレーデン評価及び皮膚状態についての臨床医の入力に基づいて調節され、又は危険性アルゴリズム内への入力としてウォーターロースケールも与えられる。図11は、ブレーデン危険性スケール評価を入力するための1つの可能なユーザインターフェースを例示している。
【0064】
ユーザが危険性評価を完了すると、患者には、危険性レベルを意味するスコアが割り当てられる。1つの実施形態では、3つの危険性レベル(低、中、及び高)が用いられる。その後、危険性モデルの感度は、割り当てられた危険性レベルに基づいて調節される。表4は、1つの実施形態におけるブレーデン危険性レベルとTHRとの間の関係を例示している。ブレーデン危険性レベルに基づいて、THR値が相応する安全因子によって低減される。1つの実施形態では、THR値は、表3に示すように、中程度の危険性では25%、高い危険性では50%だけ低減される。危険性モデルの調節において、より高い細分性が必要とされる場合には、より多くの危険性レベルを用いることができる。
【表4】
【0065】
一例として、「低い危険性」の患者は、身体上に接触圧が141mmHgと測定される部位を有する可能性がある。表1に基づくと、危険性モデルは、この部位に2時間のTHR値を割り当てることになる。同じ患者が「高い危険性」として格付けされた場合には、危険性モデルは、THRの50%のみ、すなわちこの場合は1時間の後にこの部位に最高危険性値を割り当てることになる。
【0066】
このようにして、他の危険性評価スケールを危険性モデル内に追加して又は代替として組み込むことができる。これに加えて、より最近の臨床研究からのデータを専有の危険性因子として組み込むことができる。代替の危険性スケールの一部として、新しい危険性因子又は新しい組み合わせ、危険性因子の相対的な重み付け(年齢、性別、最近の体重減少、筋肉劣化、又は肥満等)を用いることができる。
【0067】
好ましくは、異なる解剖学的領域には異なる危険性レベルが割り当てられる。仙骨の部位に以前の病歴又は褥瘡性潰瘍の初期兆候を有する患者は、「下腰部」身体領域内又はより具体的には仙骨身体部位において上昇した危険性レベルを有することができる。これによって、関連身体領域に対する危険性モデルの感度が高まることになる。図14は、身体部位における危険性レベルを調節するためのユーザインターフェースの1つの実施形態を例示している。別の皮膚状態インターフェースは、3D身体画像を用いて特定の身体部位の選択を可能にすることになる。
【0068】
(組織の変形)
最近の研究は、組織の相対変形とその組織の損傷の危険性との間に関係があることを提案した(ゲフェン(2009年))。すなわち、1つの実施形態では、危険性評価処理の一部として、骨突出の周囲で患者の組織が変形する可能性を測定することができる。患者の組織の変形は、既知の力が組織に加わった場合の圧痕の量を測定する圧子デバイスを用いて測定することができる。或いは組織の弾性を振動エラストグラフィを用いて測定することができる。その後、組織変形データ又は弾性データは、身体領域における危険性レベルを調節するのに適用される。組織変形特性に基づいて危険性レベルを骨突出の周囲の部位に合わせて調節することができるので、より詳細な機械視覚がより一層効果的なものとなる。
【0069】
(組織の健康)
危険性評価処理の一部として深部組織損傷を用いることができる。例えば、血流及び酸素化等の複数の深部組織特性を測定することができる非侵襲的センサは、患者の危険性部位の評価を可能にすることになる。危険性評価処理の一部として、骨突出の周囲の部位が組織の既存の健康不良の兆候を示すかどうかを判定する試験を行うことができる。これらの部位の危険性モデルの感度を高めるために、相応する身体領域に割り当てられた危険性レベルを引き上げることができる。
【0070】
(他のセンサデータ)
1つの実施形態では、危険性モデルは、センサデータを用いて危険性値を計算する。主要入力は接触圧であるが、他の重要な危険性因子も監視することができ、これらの因子は、計算された危険性値に対して影響を与える可能性がある。例えば、湿気は、褥瘡性潰瘍を発症する危険性に対する既知の寄与要素である。湿気センサは、患者/支持体面接触部にて湿気が検出された場合に、割り当てられた危険性レベルを自動的に上げることを可能にする。同様に、危険性モデルの感度を調節するのに温度及びせん断も用いることができる。
【0071】
ベッド面センサに加えて、1つの実施形態では、補助的な支持体面接触部圧力情報を提供するために、枕及び他の圧力軽減支持体面内に特殊センサを配置することができる。これらの補助センサは、主ベッドセンサと同じ方式で監視されることになる。各補助センサは、各々に割り当てられた危険性レベルを有することになり、危険性値は、主ベッドセンサによって用いられるものと同じ圧力対時間曲線に基づいて、その個々のセンサの各々について計算されることになる。
【0072】
(せん断)
1つの実施形態では、1つ又はそれ以上のせん断センサを用いて、患者/支持体面接触部のせん断分布図を作成する。せん断センサは、2つの導電性要素の印加されるせん断力の方向の変位を追跡する。2つの導電体の間には弾性材料又は圧電材料が接合され、これらの材料は、せん断に起因する変位に相応した弾性力を与える。これによって、導電性要素の変位に基づいてせん断力を計算することが可能になる。せん断力が大きい程、組織損傷の危険性が大きくなる。各せん断センサについての危険性値は、せん断力の強度に基づいて計算される。
【0073】
(湿気)
1つの実施形態では、1つ又はそれ以上の湿気センサが支持体面上の湿気の存在を検出する。湿気センサは、無視できる量を上回る湿気が検出されたかどうかを示す単純なYES/NOステータスを与える。単一のセンサが、支持体面全体の湿気ステータスを提供することができ、又は面上に複数の湿気センサを用いることによって、湿気情報をより局所化することができる。湿気センサは、吸収剤シートに接着された導電性繊維のストリップを用いて、センサ面上の体液の存在を検出する。最低でも2つの導電性帯が必要とされる。湿気センサは、2つの導電性帯を監視して、導電体の間のインピーダンスがいつ閾値レベルを下回ったかを特定する。2つの導電性繊維ストリップの間の綿に吸収された食塩水(体液)は、2つの繊維ストリップの間で電気を通し、従って、導電率が高くなるにつれて繊維ストリップ間のインピーダンスが減少することになる。閾値レベルを下回るインピーダンスは、褥瘡性潰瘍を発症する危険性を高めるのに十分な湿気の存在を示している。
【0074】
患者支持体面上で湿気が検出された区域を更に位置特定するために、複数の導電性繊維ストリップを格子配列で用いることができる。湿気の検出及び位置特定情報は、USB等の標準のシリアル通信プロトコルを用いてセンサからアプリケーションソフトウェアに通信される。
【0075】
(温度)
温度センサは、温度感知要素のアレイを利用して、患者/支持体面接触部の温度分布図を作成する。正常体温を上回る温度又は下回る温度は、褥瘡性潰瘍の危険性を上昇させる恐れがある。各温度センサにおける危険性値は、正常値からの温度偏差に基づいて計算される。高い温度には、低い温度よりもより高い危険性因子を割り当てることもできる。
【0076】
(身体領域)
本発明の1つの実施形態では、圧力センサ又は圧力センサ群を身体上の特定の場所に手動又は機械処理(機械視覚)の何れかによって相関付けることができる。2次元接触圧分布図を処理し、圧力露出分布図又は危険性分布図を視覚化して分析するのに用いることができる身体領域を特定することができる。圧力センサアレイが人体の載っている支持体面から接触圧入力を受け取る1つの実施形態では、アプリケーションソフトウェアは、図12及び図13に示す身体画像に相応する圧力分布図を作成する。機械視覚構成要素は、人体の解剖学的パターンを認識し、これによって2次元接触圧分布図上で明白な特徴部に解剖学的ラベルを正しく割り当てることができる。その後、解剖学的特徴部は、患者が体位変換されるまでセンサ又はセンサ群に割り当てられる。1つの実施形態では、機械視覚構成要素は、患者が側臥位、仰臥位、又は腹臥位のどれにあるかを識別することができる。例えば、患者の体位に基づいて、センサ群を、「左踵底部」、「左踵上部」、「左踵外側部」、又は「左踵内側部」に割り当てることができる。解剖学的特徴部を識別することによって、機械視覚処理は、身体の場所に基づいた危険性モデルを調節可能にする。例えば、「左踵外側部」で皮膚の発赤が認められた場合には、図12に示すユーザインターフェースを介してこの身体部位における危険性を上昇させることができる。次いで、機械視覚は、圧力画像上で「左踵外側部」の場所を追跡し、この部位において高い危険性レベルを維持することになる。
【0077】
1つの実施形態では、機械視覚構成要素は、単純に圧力分布図の画像処理に基づいて体位(左側臥位、仰臥位、右側臥位)を予測する。体位変化は、圧力露出分布図又は危険性分布図のリセットを生じさせる。
【0078】
1つの実施形態では、身体は、複数の領域、例えば3つの領域に分割される。身体領域の場所は、簡略化された機械視覚処理に基づいて計算され、各身体領域に対して別個に危険性モデルを調節することができる。
【0079】
身体領域は、頸部、腰部、又は同様のもの等の識別可能な特徴部によって横断面に沿って分割することができる。これに加えて、身体の矢状面に沿って左右の領域を作成することができる。
【0080】
1つの実施形態では、身体領域内で身体上の特定の関心部位を識別することができ(手動又は自動で)、圧力分布図と相関付けることができる。例えば、「足領域」内で左右の踵を識別することができる。
【0081】
(危険性アルゴリズム)
危険性アルゴリズムは、THRを危険性の定量化に変換する。1つの実施形態では、危険性は、0と1との間の値として定量化され、この場合、0が最も低い危険性であり、1が最も高い危険性である。1つの実施形態では、モデルは、異なる領域内の危険性を追跡し、個々のセンセルによって危険性を追跡することができる。センセルにおける危険性は、圧力が最低圧力閾値又はそれを上回るときに高くなる。最低圧力閾値は、組織回復を可能にするのに十分と見なされる接触圧である。一例では、この値は20mmHgに設定されるが、更なる試行及び性能テストの後で調節することができる。センセルにおける圧力が最低圧力閾値よりも低い場合には、危険性は時間と共に低下することになる。このことは、患者の体位変換によって圧力が十分に軽減されたことを示す。
【0082】
(危険性の積算)
初期データセットの取得後、センサデータは、例えば1フレーム毎秒(フレームは、アレイ内の全てのセンサからの接触圧サンプルの完全なセットである)で定期的にサンプリングされる。各フレームでは、あらゆるセンセルについて、割り当てられた危険性レベル、測定圧力、及びフレーム間の時間インターバル(サンプリング速度)の関数として危険性デルタが計算される。続いて現在の危険性値が危険性デルタによって更新される。その後、危険性値は、現在の危険性値に従って常に変動することになり、最高値1に達するか、又は最低値ゼロにまで減少するまで積算し続ける。従って、最低閾値を上回る一定の圧力では、危険性値は時間と共に線形に増大することになる。
【0083】
危険性デルタは、最高危険性値(例えば1である)を所与の圧力において高い危険性に到達するのに要する時間で除算することによって計算される危険性係数として計算することができる。1つの実施形態では、危険性係数は、危険性/ミリ秒として表され、THRが増大するにつれて小さくなる。最高危険性値が1である場合には、危険性係数は、ミリ秒を単位とするTHRの逆数によって計算される。表5は、表3に記載した危険性曲線が、どのように危険性係数に変換されるかを例示している。
【表5】
【0084】
例えば、所与のセンセルにおいて現在の危険性値が0.5であり、センセル上の接触圧が201mmHgである場合には、1つのフレームの後に(1フレーム毎秒において)危険性デルタは次式となる。
1000*2.08E−07=2.08E−04
この接触圧が維持された場合、危険性値が0.5から0.6まで線形に増大するのに1フレーム毎秒でおよそ480秒(8分)を要することになる。より高い圧力は、より高い危険性デルタを生じることになり、危険性値は、より迅速に増大することになる。より低い圧力は、より低い(又は負の)危険性デルタを生じることになり、危険性値はより緩慢に増大又は減少することになる。
【0085】
1つの実施形態では、THR値がまだ調節されていない場合には、各危険性評価レベル(すなわち、低い危険性、中程度の危険性、高い危険性)において危険性係数セットを調節することができる。従って、危険性デルタは、危険性評価レベル及び身体領域の危険性調節並びに接触圧による影響を受ける。例えば、所与の圧力において、高い危険性評価を有する患者は、低い危険性評価を有する患者に対する係数となるものの2倍の危険性係数を有することになる。身体領域の危険性調節では、危険性係数は、各身体領域について計算され、危険性が特定の身体部位において高かった場合、それに応じてスケール調整されることになる。
【0086】
接触圧が最低圧力閾値を下回ると、危険性値は、負の危険性デルタで減少し始めることになる。組織損傷の危険性を低減するのに50mmHgを十分な圧力軽減とすることができることを示す臨床データがある。最低圧力閾値は、40、30、25、20mmHg、又はそれ未満とすることができる。1つの実施形態では、控えめな開始点として、最低圧力閾値に20mmHgが用いられることになる。
【0087】
Makhous他による研究(2007年)は、完全な組織灌流の回復には、接触圧を軽減し、軽減が200秒から300秒にわたって維持されるべきであることを提案した。従って、危険性モデルの1つの実施形態において、臨床的に許容される回復期間を300秒と選択することができる。このことは、回復期間の継続時間にわたってセンセルにおける接触圧が最低圧力閾値よりも低い場合に、危険性モデルは、センセルの危険性値を最も高い危険性(1という値)から最も低い危険性(0という値)まで低下さえることになることを意味する。選択される完全な回復期間の長さは、負の危険性デルタの大きさ(危険性減少速度)を決定付ける。
【0088】
1つの実施形態では、危険性モニタは、全てのセンセルにおける危険性レベルをゼロにリセットするリセットメカニズムを有する。ユーザは、例えば、患者が反転される等、完全に体位変換される場合、又は新しい患者に対してシステムをリセットする時にリセットメカニズムを利用することができる。「リセット」又は「患者転回」操作が入力されて受け入れられると、全てのセンセルにおいて危険性レベルはゼロにリセットされることになる。1つの実施形態では、患者体位の変化は機械視覚処理によって検出され、全てのセンセルにおいて危険性レベルはゼロにリセットされる。
【0089】
1つの実施形態では、本明細書で説明される危険性アルゴリズムは、圧力センサ内の各センセルにおいて積算された危険性値のグラフィック表現を生じる。システムは、全てのセンセルにおける危険性値を危険性分布図の形態で表示し、この危険性分布図は、サンプリング速度又はフレーム速度で更新される。危険性分布図は、患者の身体にわたる危険性の場所及びレベルの指標を提示する。1つの実施形態では、ある特定の部位における危険性レベルがある一定のレベルを超える場合には、この部位を強調表示し、又は介護者の注意を引くように修正することができる。例えば、図15に示すように、危険性モニタは、配色の変化(例えば赤色)で示しているように、患者が右肩に高い危険性を有することを示している。他の情報を提示することもでき、例えば、高い危険性の部位にこの部位がどれ程の時間にわたって高い危険性に曝されているかを示すポップアップタイマを添付することができる。灰色の配色は、低い危険性の部位を示している。配色の伴わない部位は、有意な接触圧を有さない(例えば5mmHgを下回る)。
【0090】
1つの実施形態では、危険性分布図は、高い危険性値が危険性値の大きさに比例する高さを有するピークとして示される3次元表現として示すことができる。
【0091】
(患者転回管理の実施)
1つの実施形態では、危険性分布図又は圧力露出分布図、接触圧分布図、及び転回タイマの効果的な使用を通じて患者転回管理が達成される。転回タイマ及び危険性分布図又は圧力露出分布図は、患者がどれ程の頻度で転回又は体位変換されるかを追跡するのに用いられる。危険性分布図又は圧力露出分布図及び接触圧分布図は、最も高い危険性又は圧力露出及び最も高い接触圧をそれぞれ有する身体部位を識別するのに用いられる。実時間で圧力を示す接触圧分布図を用いて、圧力が軽減されてどのような新しい高圧力部位も生じていないことを示すことによって、患者の転回又は体位変換の有効性を確認することができる。
【0092】
1つの実施形態では、患者転回管理は、転回タイマ、接触圧分布図、及び接触圧分布図上で高い圧力露出の部位を強調表示するグラフィックインジケータの効果的な使用を通じて達成される。グラフィックインジケータは、吹き出し又はポップアップウィンドウを介して圧力露出の度合いについての情報を提供することができる。
【0093】
1つの実施形態では、介護者が、患者を転回又は体位変換したことを示すのを可能にするために、「患者転回」ボタン又は「転回タイマリセット」ボタン等の入力デバイスが用いられる。入力デバイスは、患者が転回され、その後、転回タイマ及び圧力露出値又は危険性値がリセットされることを示すために用いられる。入力デバイスは、「患者転回」、「転回クロックリセット」、「クロックリセット」、「タイマリセット」、又はこのボタンの機能の妥当な指示を提示する他のテキストとして適切に表記される。
【0094】
1つの実施形態では、圧力露出情報、接触圧分布図、及び転回タイマの使用を通じて、新しく効果的な患者転回ワークフローを実施することができる。このワークフローの1つの実施形態が図4に例示されている。
【0095】
患者の体位を識別することによって、機械視覚構成要素により、転回タイマが介護者が始動した転回に加えて患者始動の転回を監視することが可能になる。追加の転回情報に基づいて、転回タイマ及び圧力露出分布図又は危険性分布図は、患者始動の転回を考慮するよう修正することができる。例えば、機械視覚法が、患者が仰臥位から側臥位へと転回したことを識別した場合、介護者が「転回タイマリセット」ボタンを押下したときに圧力露出分布図がリセットされるのと同じ方式で圧力露出分布図をリセットすることができる。
【0096】
1つの実施形態では、図5に概略的に示すように、患者転回管理システムは、当該技術分野で公知の静電容量圧力マッピング格子を備え、更に湿気センサ(14)、せん断センサ(16)、及び温度センサ(18)も含むことができる接触圧マッピングシステム(12)を有する患者支持体面(10)を含む。圧力マッピングシステムは、患者が支持されることになる区域の全て、又は実質的に全てをカバーする格子を備える。圧力マッピングシステムは、上記で説明した本発明の方法を実施するように設計されたソフトウェアを動作させる汎用コンピュータに入力を供給する。ソフトウェアは、本明細書で説明される方法の様々な段階を実施する構成要素を備える。コンピュータ(20)は、当該技術分野で公知のグラフィックディスプレイ(22)及びユーザ入力デバイス(24)を含む。コンピュータは、プログラム命令セットを含む少なくとも1つのメモリと、メモリに動作可能に接続され且つ本明細書で説明される方法を実施するプログラム命令に応答性を有する構成要素を有するプロセッサと、を備えることができる。
【0097】
1つの実施形態では、本発明のシステムは、湿気センサ情報、せん断センサ情報、及び/又は温度センサ情報を利用して、スケジュールされた転回インターバル又は正規化圧力を計算するのに用いられる基準値を修正することができる。例えば、湿気センサによって湿気が検出された場合には、スケジュールされた転回インターバルを、例えば15分又は30分に自動的に低減することができる。
【0098】
危険性部位を現在の接触圧と相関付けるために、危険性分布図と関連して実時間接触圧分布図を提供することもできる。実時間圧力分布図と危険性分布図との組み合わせを用いて、図16に概略的に示すように、褥瘡性潰瘍の予防のための既存の臨床経路を改善することができる。一態様では、本発明は、所定の閾値を超える危険性値又は危険性値セットに応じて、患者の体位を調節する段階を含めることによって患者における褥瘡性潰瘍の形成を予防する方法を含むことができる。この調節段階は、ユーザが手動で、又はシステム作動のデバイスが自動で行うことができる。ワークフローは反復して行われ、危険性が高い圧力点の妥当性が確認されて、患者を定期的に体位変換させることによって軽減される。
【0099】
1つの実施形態では、本発明のシステムは、危険性又は圧力露出モニタに動作可能に接続された調節可能な支持体面を備えることができる。例えば、病院のベッドマットレス内に、上記で説明したとおりに生成される危険性値又は圧力露出値に反応するシステムの制御下で膨張又は収縮させることができる空気袋を配置することができる。従って、危険性分布図又は圧力露出分布図が、特定の領域内で上昇した危険性又は圧力露出のレベルを示す場合には、システムは、圧力修正要素又は危険性修正要素を低減する取り組みにおいて当該領域内で又はこの領域に隣接して空気袋を膨張又は収縮させることができる。システムは、危険性又は圧力露出の絶対レベルに加えて、危険性又は圧力露出の変化速度に応答し、積算速度を低下させるように反応することができる。
【0100】
図に示し又は上記で説明したシステム構成要素は、1つ又は複数のコンピュータとすることができ、又はこれらのコンピュータを含むことができる。構成要素は、コンピュータによって実行されるプログラムモジュール等のコンピュータ実行可能命令の一般的な状況で説明することができる。一般的にプログラムモジュールは、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。
【0101】
本発明が、移動電話又はPDA等のハンドヘルド無線デバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベース又はプログラミング可能な民生用電子機器、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、及び同様のものを含む、様々なコンピュータシステム構成を用いて実施できることを当業者であれば理解されるであろう。本発明はまた、通信ネットワークを通じてリンクされたリモート処理デバイスによってタスクが実行される分散コンピューティング環境で実施することもできる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカル及びリモートの両方におけるメモリ記憶デバイスを含むコンピュータ記憶媒体内に置くことができる。
【0102】
コンピュータシステムは、処理ユニットと、システムメモリと、システムメモリを含む様々なシステム構成要素を処理ユニットに結合するシステムバスと、を含むコンピュータの形態の汎用コンピューティングデバイスを含むことができる。
【0103】
コンピュータは通常、システムメモリの一部を形成し、処理ユニットによって読み取ることができる様々なコンピュータ読み取り可能媒体を含む。限定としてではなく一例として、コンピュータ読み取り可能媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。システムメモリは、読み取り専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)等の揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリの形態のコンピュータ記憶媒体を含むことができる。ROM内には通常、起動中等に要素の間で情報を転送するのを支援する基本ルーチンを含む基本入力/出力システム(BIOS)が記憶される。通常RAMは、処理ユニットによって直にアクセス可能及び/又は現時点で動作されているデータ及び/又はプログラムモジュールを含む。データ又はプログラムモジュールは、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、他のプログラムモジュール、及びプログラムデータを含むことができる。
【0104】
最低でも、メモリは、永続的又は一時的に記憶された少なくとも1つの命令セットを含む。プロセッサは、データを処理するために記憶された命令を実行する。命令セットは、添付のフロー線図に示すもの等の1つ又は複数の特定のタスクを実行する様々な命令を含むことができる。特定のタスクを実行するためのかかる命令セットは、プログラム、ソフトウェアプログラム、ソフトウェア、エンジン、モジュール、コンポーネント、メカニズム、又はツールとして特徴付けることができる。患者監視システムは、上記で説明したようにメモリ内に記憶されてプロセッサ上で本明細書で説明される方式で実行される複数のソフトウェア処理モジュールを含むことができる。プログラムモジュールは、1つ又は複数のプロセッサが命令を読み取ることを可能にするために、マシン言語又はオブジェクトコードに変換される何れかの適切なプログラミング言語の形態のものとすることができる。すなわち、特定のプログラミング言語で書かれたプログラミングコード又はソースコードの行をコンパイラ、アッセンブラ、又はインタープリタを用いてマシン言語に変換することができる。マシン言語は、特定のコンピュータに固有のバイナリ符号化マシン命令とすることができる。本発明の様々な実施形態に従って、何れかの適切なプログラミング言語又は言語の組み合わせを用いることができる。
【0105】
コマンド及び命令を実行する処理ユニットは、汎用コンピュータとすることができるが、専用コンピュータ、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、プログラミング済みマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺集積回路要素、CSIC(特定顧客向け集積回路)、ASIC(特定用途向け集積回路)、論理回路、デジタル信号プロセッサ、FPGA(現場プログラミング可能ゲートアレイ)、PLD(プログラミング可能論理デバイス)、PLA(プログラミング可能論理アレイ)等のプログラミング可能論理デバイス、RFIDプロセッサ、スマートチップ、或いは本発明の処理段階を実施することができる他の何れかのデバイス又はデバイス配列を含む様々な他の技術のうちの何れかを利用することができる。
【0106】
コンピュータシステムのプロセッサ及び/又はメモリは、物理的に同じ場所に存在する必要はないことを理解されたい。コンピュータシステムによって用いられるプロセッサの各々及びメモリの各々は、地理的に異なる場所に存在させ、何れかの適切な方式で互いに通信するように接続することができる。これに加えて、プロセッサ及び/又はメモリの各々は、機器の異なる物理的要素から構成することができることを理解されたい。
【0107】
ユーザは、キーボード、及び通常はマウス、トラックボール、又はタッチパッドと呼ばれるポインティングデバイス等の入力デバイスを含むユーザインターフェースを通じてコンピュータにコマンド及び情報を入力することができる。他の入力デバイスは、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、パラボラアンテナ、スキャナ、音声認識デバイス、キーボード、タッチスクリーン、トグルスイッチ、プッシュボタン、又は同様のものを含むことができる。多くの場合これら及び他の入力デバイスは、システムバスに結合されるが、パラレルポート、ゲームポート、又はユニバーサルシリアルバス(USB)等の他のインターフェース及びバス構造によって接続することができるユーザ入力インターフェースを通じて処理ユニットに接続される。
【0108】
システムバスにインターフェースを介して1つ又はそれ以上のモニタ又は表示デバイスを接続することもできる。表示デバイスに加えて、コンピュータは、出力周辺インターフェースを通じて接続することができる他の周辺出力デバイスを含むこともできる。本発明を実施するコンピュータは、上記で説明した要素のうちの多く又は全てを一般的に含む1つ又はそれ以上のリモートコンピュータへの論理接続を用いてネットワーク接続環境で動作することができる。
【0109】
有線又は無線のローカルエリアネットワーク(LAN)及び広域ネットワーク(WAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(PAN)、並びに他の種類のネットワークを含む様々なネットワークを本発明の実施形態に従って実装することができる。LANネットワーク接続環境内で用いられる場合には、コンピュータは、ネットワークインターフェース又はアダプタを通じてLANに接続することができる。WANネットワーク接続環境内で用いられる場合には、一般的にコンピュータは、モデム又は他の通信メカニズムを含む。モデムは、内部又は外部のものとすることができ、ユーザ入力インターフェース又は他の適切なメカニズムを介してシステムバスに接続することができる。コンピュータは、インターネット、イントラネット、エクストラネット、イーサネット(登録商標)、又は通信を可能にする他の何れかのシステムを介して接続することができる。幾つかの適切な通信プロトコルは、例えば、TCP/IP、UDP、又はOSIを含むことができる。無線通信では、通信プロトコルは、ブルートゥース、Zigbee(登録商標)、IrDa、又は他の適切なプロトコルを含むことができる。更にシステムの構成要素は、有線又は無線の経路の組み合わせを通じて通信を行うことができる。
【0110】
コンピュータの他の多くの内部構成要素が示されてないが、当業者であればかかる構成要素及び相互接続が公知であることを理解されるであろう。従って、本発明と関連して、コンピュータの内部構造に関わる更なる詳細事項は開示しない。
【0111】
当業者には理解されるように、請求項に記載された本発明の範囲から逸脱することなく前述の特定の開示内容の様々な修正、調整、及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0112】
1 転回タイマ
2 実時間圧力モニタ
3 圧力露出モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が支持体面上に支持され、患者と前記支持体面との間に複数のセンセルを有する圧力感知接触部が配置される場合に、接触圧に対する患者の暴露を評価する方法であって、
(a)望ましい転回インターバルを特定する段階と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)段階と、
(c)複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを所定の時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))段階と、
(d)E(t)と、前記選択された転回インターバルと、前記センサの最大圧力範囲とから正規化圧力露出Enormを得る段階と、
(e)各センセルにおける前記正規化圧力露出値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(b)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記望ましい転回インターバルは、危険性評価スコア、せん断、湿気、温度、組織の健康、組織の偏り、又は臨床観察、或いはこれらの組み合わせを表す少なくとも1つのデータ入力を含む少なくとも1つの所定のインターバル修正要素を用いて特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定圧力値が最低圧力閾値よりも低い場合には、前記圧力露出デルタは負であり、前記正規化圧力露出値は低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ユーザリセット入力又は患者の体位変換の自動識別に応じて、前記複数のセンセルのうちの少なくとも一部分における前記正規化圧力露出を低減する段階を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のセンセルの各々における前記圧力露出値又は正規化圧力露出値は、圧力露出分布図としてユーザに対してグラフィック表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記正規化圧力露出分布図は、2次元又は3次元のどちらかである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記正規化圧力露出分布図は、接触圧分布図上に重ね合わせられ、最も高い圧力露出の部位のみに注意を引く1つ又は複数のグラフィックインジケータを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
所定の閾値を超える正規化圧力露出値又はその値の群に応じて、患者の転回又は体位変換を開始する更なる段階を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
支持体面上に支持される患者についての圧力露出値を特定して表示するためのシステムであって、
(a)前記患者と前記支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)ための構成要素と、複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを選択された時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))ための構成要素と、前記複数のセンセルの各々における選択された転回インターバル及びセンサの最大圧力範囲に基づいて正規化圧力露出Enormを得るための構成要素とを備え、前記圧力感知接触部に動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(c)前記Enorm値をユーザに対して示すために前記処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項10】
前記処理手段が、前記複数のEnorm値から、前記ディスプレイ上に示される圧力露出分布図を生成するための構成要素を更に備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理手段が、患者の転回の検出のための機械視覚構成要素を更に備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記機械視覚構成要素が患者の体位を検出する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
患者が支持体面上に支持され、患者と前記支持体面との間に複数のセンセルを有する圧力感知接触部が配置される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価する方法であって、
(a)複数のセンセルの各々から圧力値を取得して、該圧力値から各々センセルにおける時間対高危険性(THR)値を得る段階と、
(b)少なくとも1つの修正要素を考慮することによって前記THR値を調節する段階と、
(c)前記危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタに変換する段階と、
(d)危険性値を前記危険性デルタだけ調節する段階と、
(e)前記調節された危険性値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(a)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記THR値は、前記圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は所定の数学式を該圧力値に適用することによって特定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの危険性修正要素は、危険性評価モデル、せん断、湿気、温度、組織の健康、組織の偏り、又は臨床観察、或いはこれらの組み合わせを表す少なくとも1つのデータ入力を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記危険性デルタは、前記THR値を危険性係数に変換することによって特定される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のセンセルの各々における前記調節された危険性値は、前記接触圧分布図に相関付けられた危険性の表現を含む危険性分布図画像としてユーザに対してグラフィック表示される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記危険性分布図は、2次元又は3次元のどちらかの画像である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触圧分布図は、患者の解剖学的特徴部に相応する複数の身体領域に分割される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記身体領域の各々について、危険性修正要素レベルが独立して特定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
各身体領域のサイズ及び場所は、前記接触圧分布図からの解剖学的特徴部の自動識別によって前記接触圧分布図から自動的に得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
患者が支持体面上に支持される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価するための危険性評価システムであって、
(a)前記患者と前記支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)少なくとも1つの危険性修正要素を考慮することによって危険性修正要素を受け入れるための入力デバイスと、
(c)前記複数のセンセルの各々における圧力値を特定して各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素と、THR値を前記危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素と、危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を該危険性デルタ分調節するための構成要素と、を備え、前記圧力感知接触部及び前記入力デバイスに動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(d)前記調節された危険性値をユーザに対して表示するために前記処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項23】
前記複数のセンセルの各々におけるTHR値を特定するための前記構成要素は、前記センセルから圧力値を取得して、該圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は数学式を該圧力値に適用することによって該特定を行う、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記処理手段は、前記複数のセンセルの各々における前記危険性値から前記ディスプレイ上に示される危険性分布図を作成するための構成要素を更に備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記危険性分布図は、2次元又は3次元のグラフィック画像を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記処理手段は、前記圧力接触部分布図を複数の身体領域に分割するか、前記患者の体位を検出するか、又は患者の転回又は体位変換を検出するか、或いはこれらの組み合わせのための機械視覚構成要素を更に備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
患者転回管理システムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部及び圧力接触部分布図を生成する手段と、
(b)介護者が患者の転回又は体位変換をいつ開始したかを示すための入力デバイスと、
(c)介護者によって開始された最後の転回又は体位変換からの経過時間、又はスケジュールされた次の転回をするまでの残り時間を追跡するためのタイマと、
(d)コンピュータ実装の処理手段と、
を備え、該コンピュータ実装の処理手段が、
(i)前記処理手段が前記圧力感知接触部に動作可能に接続されており、前記複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、該特定された圧力値に基づいて圧力露出値を得るための構成要素か、
又は、
(ii)前記処理手段が前記圧力感知接触部及び前記入力デバイスに動作可能に接続されており、前記複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素、THR値を危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素、前記危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を該危険性デルタ分調節するための構成要素か、
を含み、前記システムが更に、
(e)前記圧力露出値又は危険性値、前記圧力接触部分布図、及び介護者による前記最後の転回又は体位変換からの前記経過時間を表示するため前記処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項1】
患者が支持体面上に支持され、患者と前記支持体面との間に複数のセンセルを有する圧力感知接触部が配置される場合に、接触圧に対する患者の暴露を評価する方法であって、
(a)望ましい転回インターバルを特定する段階と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)段階と、
(c)複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを所定の時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))段階と、
(d)E(t)と、前記選択された転回インターバルと、前記センサの最大圧力範囲とから正規化圧力露出Enormを得る段階と、
(e)各センセルにおける前記正規化圧力露出値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(b)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記望ましい転回インターバルは、危険性評価スコア、せん断、湿気、温度、組織の健康、組織の偏り、又は臨床観察、或いはこれらの組み合わせを表す少なくとも1つのデータ入力を含む少なくとも1つの所定のインターバル修正要素を用いて特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定圧力値が最低圧力閾値よりも低い場合には、前記圧力露出デルタは負であり、前記正規化圧力露出値は低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ユーザリセット入力又は患者の体位変換の自動識別に応じて、前記複数のセンセルのうちの少なくとも一部分における前記正規化圧力露出を低減する段階を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のセンセルの各々における前記圧力露出値又は正規化圧力露出値は、圧力露出分布図としてユーザに対してグラフィック表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記正規化圧力露出分布図は、2次元又は3次元のどちらかである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記正規化圧力露出分布図は、接触圧分布図上に重ね合わせられ、最も高い圧力露出の部位のみに注意を引く1つ又は複数のグラフィックインジケータを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
所定の閾値を超える正規化圧力露出値又はその値の群に応じて、患者の転回又は体位変換を開始する更なる段階を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
支持体面上に支持される患者についての圧力露出値を特定して表示するためのシステムであって、
(a)前記患者と前記支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)複数のセンセルの各々について、測定圧力値Pに時間インターバルを乗じたものに基づいて圧力露出デルタEΔを計算する(EΔ=P×Δt)ための構成要素と、複数のセンセルの各々について、圧力露出デルタを選択された時間間隔にわたって積算することによって圧力露出値E(t)を特定する(E(t)=ΣEΔ(t))ための構成要素と、前記複数のセンセルの各々における選択された転回インターバル及びセンサの最大圧力範囲に基づいて正規化圧力露出Enormを得るための構成要素とを備え、前記圧力感知接触部に動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(c)前記Enorm値をユーザに対して示すために前記処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項10】
前記処理手段が、前記複数のEnorm値から、前記ディスプレイ上に示される圧力露出分布図を生成するための構成要素を更に備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記処理手段が、患者の転回の検出のための機械視覚構成要素を更に備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記機械視覚構成要素が患者の体位を検出する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
患者が支持体面上に支持され、患者と前記支持体面との間に複数のセンセルを有する圧力感知接触部が配置される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価する方法であって、
(a)複数のセンセルの各々から圧力値を取得して、該圧力値から各々センセルにおける時間対高危険性(THR)値を得る段階と、
(b)少なくとも1つの修正要素を考慮することによって前記THR値を調節する段階と、
(c)前記危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタに変換する段階と、
(d)危険性値を前記危険性デルタだけ調節する段階と、
(e)前記調節された危険性値をユーザに対して表示する段階と、
(f)段階(a)から(e)までを周期的に繰り返す段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記THR値は、前記圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は所定の数学式を該圧力値に適用することによって特定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの危険性修正要素は、危険性評価モデル、せん断、湿気、温度、組織の健康、組織の偏り、又は臨床観察、或いはこれらの組み合わせを表す少なくとも1つのデータ入力を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記危険性デルタは、前記THR値を危険性係数に変換することによって特定される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のセンセルの各々における前記調節された危険性値は、前記接触圧分布図に相関付けられた危険性の表現を含む危険性分布図画像としてユーザに対してグラフィック表示される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記危険性分布図は、2次元又は3次元のどちらかの画像である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触圧分布図は、患者の解剖学的特徴部に相応する複数の身体領域に分割される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記身体領域の各々について、危険性修正要素レベルが独立して特定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
各身体領域のサイズ及び場所は、前記接触圧分布図からの解剖学的特徴部の自動識別によって前記接触圧分布図から自動的に得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
患者が支持体面上に支持される場合に、患者が褥瘡性潰瘍を発症する危険性を評価するための危険性評価システムであって、
(a)前記患者と前記支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部と、
(b)少なくとも1つの危険性修正要素を考慮することによって危険性修正要素を受け入れるための入力デバイスと、
(c)前記複数のセンセルの各々における圧力値を特定して各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素と、THR値を前記危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素と、危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を該危険性デルタ分調節するための構成要素と、を備え、前記圧力感知接触部及び前記入力デバイスに動作可能に接続されたコンピュータ実装の処理手段と、
(d)前記調節された危険性値をユーザに対して表示するために前記処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステム。
【請求項23】
前記複数のセンセルの各々におけるTHR値を特定するための前記構成要素は、前記センセルから圧力値を取得して、該圧力値を所与の圧力値に対するTHR値を含む記憶された圧力対時間データと比較すること、又は数学式を該圧力値に適用することによって該特定を行う、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記処理手段は、前記複数のセンセルの各々における前記危険性値から前記ディスプレイ上に示される危険性分布図を作成するための構成要素を更に備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記危険性分布図は、2次元又は3次元のグラフィック画像を含む、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記処理手段は、前記圧力接触部分布図を複数の身体領域に分割するか、前記患者の体位を検出するか、又は患者の転回又は体位変換を検出するか、或いはこれらの組み合わせのための機械視覚構成要素を更に備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項27】
患者転回管理システムであって、
(a)患者と支持体面との間に配置された複数のセンセルを有する圧力感知接触部及び圧力接触部分布図を生成する手段と、
(b)介護者が患者の転回又は体位変換をいつ開始したかを示すための入力デバイスと、
(c)介護者によって開始された最後の転回又は体位変換からの経過時間、又はスケジュールされた次の転回をするまでの残り時間を追跡するためのタイマと、
(d)コンピュータ実装の処理手段と、
を備え、該コンピュータ実装の処理手段が、
(i)前記処理手段が前記圧力感知接触部に動作可能に接続されており、前記複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、該特定された圧力値に基づいて圧力露出値を得るための構成要素か、
又は、
(ii)前記処理手段が前記圧力感知接触部及び前記入力デバイスに動作可能に接続されており、前記複数のセンセルの各々における圧力値を特定して、各圧力値に対するTHR値を得るための構成要素、THR値を危険性修正要素のレベルに対して調節するための構成要素、前記危険性調節済みTHR値を単位時間当たりの危険性変化を含む危険性デルタへと変換して、危険性値を該危険性デルタ分調節するための構成要素か、
を含み、前記システムが更に、
(e)前記圧力露出値又は危険性値、前記圧力接触部分布図、及び介護者による前記最後の転回又は体位変換からの前記経過時間を表示するため前記処理手段に接続されたディスプレイと、
を備えるシステム。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図14】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図14】
【公表番号】特表2013−517850(P2013−517850A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550276(P2012−550276)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000098
【国際公開番号】WO2011/091517
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512196574)エックスセンサー テクノロジー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/CA2011/000098
【国際公開番号】WO2011/091517
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512196574)エックスセンサー テクノロジー コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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