説明

規則充填物の制作方法及び充填方法

【課題】規則充填物の構成部材である複数の気液接触板を変形させることなく、容易かつ確実に組み立てることができる規則充填物の制作方法を提供するとともに、規則充填物を塔内の所定位置に容易に充填することができる規則充填物の充填方法を提供する。
【解決手段】規則充填物14の構成部材である複数の気液接触板12の一端を、有底容器からなる型枠内に挿入するとともに、該型枠内に冷却することで固化する液状物質、例えば水を注入した後、冷却固化して固形物質である氷13とし、この氷13によって気液接触板12を規則充填物14の状態に保持させる。前記氷13によって保持された状態の規則充填物14を蒸留塔胴部15内に挿入した後、氷を溶解して水とし、蒸留塔胴部内から除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規則充填物の制作方法及び充填方法に関し、詳しくは、深冷空気分離装置の充填塔に充填する規則充填物の制作方法及び充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、深冷空気分離装置の蒸留塔として、規則充填物(構造化充填材)を用いた充填塔が採用されている。例えば図4に示すように、規則充填物は、様々な細部構造を有するものが知られているが、基本的には、例えば図4及び図5に示すように、規則充填物1は、薄い有孔板をジグザグに折り曲げた気液接触板2を鉛直方向に向けて多数枚を並列に組み合わせた構造となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−238101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
規則充填物を塔内に充填する方法としては、規則充填物の構成部材である複数の気液接触板を、塔の直径に合わせた円柱状に組み立て、これを塔の高さ方法に充填する方法(一体型)や、複数の気液接触板をブリックと呼ばれる塊に組み立て、複数のブリックを塔に組み込んで組み合わせて充填する方法(分割型)が知られているが、これらの方法では、複数の気液接触板を円柱状又はブリックの所定形状に組み立てる際に、形状を保つために各気液接触板をピンなどで固定するようにしているので、気液接触板が変形することがある。気液接触板が変形すると規則充填物の間に隙間ができ、蒸留の際に気液の流れが乱れることで、蒸留性能が低下することがある。また、気液接触板を1枚あるいは複数枚ずつ順番に塔内へ充填することも可能であるが、塔長が長い場合には、塔の一端開口から塔内の所定位置まで気液接触板を運ぶのに手間が掛かり、塔径が小さい場合には、人手では作業することができない。
【0005】
そこで本発明は、規則充填物の構成部材である複数の気液接触板を変形させることなく、容易かつ確実に組み立てることができる規則充填物の制作方法を提供するとともに、規則充填物を塔内の所定位置に容易に充填することができる規則充填物の充填方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の規則充填物の制作方法は、規則充填物の構成部材である複数の気液接触板の一端を、有底容器からなる型枠内に挿入するとともに、該型枠内に冷却することで固化する液状物質を注入した後、該液状物質を冷却固化して固形物質とし、該固形物質によって前記気液接触板を前記規則充填物の状態に保持することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の規則充填物の充填方法は、規則充填物の構成部材である複数の気液接触板の一端を、有底容器からなる型枠内に挿入するとともに、該型枠内に冷却することで固化する液状物質を注入した後、該液状物質を冷却固化して固形物質とし、該固形物質によって前記気液接触板を前記規則充填物の状態に保持し、前記固形物質によって保持された状態の前記規則充填物を蒸留塔胴部内に挿入した後、前記固形物質を加熱溶解して液状物質とし、該液状物質を前記蒸留塔胴部内から除去することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の規則充填物の制作方法及び充填方法によれば、ピンなどを使用せずに複数の気液接触板を組み立てることができるので、気液接触板が変形して規則充填物の間に隙間が発生することを防止できる。また、型枠で形状を固定できるため、寸法精度の高い規則充填物を得ることができる。また、組立後の規則充填物を塔内へ充填する際も、気液接触板の変形や破損を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の規則充填物の制作方法の一形態例を示す斜視図である。
【図2】本発明の規則充填物の充填方法の一形態例を示す斜視図である。
【図3】塔内に規則充填物を充填した状態の一例を示す正面図である。
【図4】規則充填物の一例を示す斜視図である。
【図5】気液接触板の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
円柱形の規則充填物の制作は、有底円筒状容器からなる型枠11を使用し、該型枠11内に、あらかじめ所定の寸法に形成した複数の気液接触板12の一端を所定の順序で挿入するとともに、低温で固化する液状物質、例えば、常温、室温で液状物質であり、0℃以下の低温に冷却することにより固形物質の氷となる水を型枠11内に注入し、全ての気液接触板12を挿入した後に冷却し、水を凍結させて複数の気液接触板12の間に氷13が形成された状態とする。これにより、複数の気液接触板12の一端部が固形物質である氷13によって保持された状態の規則充填物14を得ることができる。
【0011】
前記型枠11の内径は、規則充填物14を充填する塔の内径より僅かに小さな内径に設定されており、一方、型枠11の高さは、前記気液接触板12の大きさや枚数などに応じて設定されるもので、前記気液接触板12を規則充填物14の形状に保持可能な氷13を形成できる水深が得られる高さに設定されている。通常は、規則充填物14の高さの1/3〜2/3に設定されるが、規則充填物14の全体が型枠11内に入ってしまう高さにすることもできる。また、氷13によって気液接触板12を保持した規則充填物14を型枠11から取り出す作業を容易にするため、型枠11の周壁を複数の円弧状部材に分割形成しておくことができる。なお、円柱形の規則充填物ではなく、様々な形状のブリックを制作する場合は、各ブリックの外形状に対応した内面形状を有する型枠を使用する。
【0012】
氷13で保持した規則充填物14の塔内への充填は、あらかじめ円筒形状に形成した蒸留塔胴部15を横倒しの状態で固定しておき、胴部15の一端開口から氷13で保持した規則充填物14を内部の所定位置に挿入することによって行うことができる。胴部15内に所定の数の規則充填物14を充填した後、氷13は、作業雰囲気温度で加熱されることによって自然に溶けて水となり、胴部15内から外部に流出する。これにより、規則充填物14は、胴部15の内部所定位置に充填され、胴部15の内周面によって保持された状態になる。
【0013】
胴部15内に規則充填物14を充填した後、必要に応じて加熱したり、洗浄したりすることにより、規則充填物14を充填した胴部15内から水を略完全に除去することができる。
【0014】
また、塔壁近傍に位置する気液接触板12にワイパーと呼ばれる構造物を設ける場合も、ワイパーが水中に没するような型枠11を用いることにより、ワイパーを一体形成することができる。
【0015】
このようにして規則充填物14を制作することにより、気液接触板12を固定するためのピンなどが不要となり、ピンなどによって気液接触板が変形することはなく、したがって、規則充填物14の間に隙間ができることもなく、蒸留の際に気液の流れが乱れることがなくなるので、所定の蒸留性能を発揮することができる。
【0016】
また、氷13によって保持された状態の規則充填物14を、蒸留塔胴部15内に所定の順番に挿入するだけで、蒸留塔の所定位置に所定の規則充填物14を配置することができるので、胴部15内への規則充填物14の充填作業も容易となり、作業時間の短縮やコストの低減を図ることができる。また、塔長が長かったり、塔径が小さかったりしても対応できる。
【0017】
なお、各図においては、規則充填物の構成部材である気液接触板の詳細な構造は省略し、外形のみを図示している。気液接触板同士の間隔は、気液接触板に形成した間隔保持部で保持したり、別のスペーサを用いることによって保持したりすることができる。また、型枠内に注入する液状物質は水が最適であるが、注入時に加熱溶解することで液状物質となり、室温付近で固形物質となるものを用いることもできる。
【符号の説明】
【0018】
11…型枠、12…気液接触板、13…氷、14…規則充填物、15…蒸留塔胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則充填物の構成部材である複数の気液接触板の一端を、有底容器からなる型枠内に挿入するとともに、該型枠内に冷却することで固化する液状物質を注入した後、該液状物質を冷却固化して固形物質とし、該固形物質によって前記気液接触板を前記規則充填物の状態に保持することを特徴とする規則充填物の制作方法。
【請求項2】
規則充填物の構成部材である複数の気液接触板の一端を、有底容器からなる型枠内に挿入するとともに、該型枠内に冷却することで固化する液状物質を注入した後、該液状物質を冷却固化して固形物質とし、該固形物質によって前記気液接触板を前記規則充填物の状態に保持し、前記固形物質によって保持された状態の前記規則充填物を蒸留塔胴部内に挿入した後、前記固形物質を加熱溶解して液状物質とし、該液状物質を前記蒸留塔胴部内から除去することを特徴とする規則充填物の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−234282(P2010−234282A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85652(P2009−85652)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】