説明

視差表示板及び視差表示板を備える計器装置

【課題】視認性が良好な視差表示板及び視差表示板を備える計器装置を提供する。
【解決手段】計器装置100に搭載される視差表示板30は、複数のラインレンズを有することで表面に凹凸が形成されたレンチキュラレンズと、レンチキュラレンズの裏面に形成された目盛り又は記号である指標と、レンチキュラレンズの表面であって指標に対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めてレンチキュラレンズの表面を実質的に平坦化する平坦化層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差表示板及び視差表示板を備える計器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体感のある画像を表示する視差表示板として、両眼視差を与えるレンズを用いたものが知られている。例えば、特許文献1には、レンチキュラレンズと右眼用画素及び左眼用画素とにより、突出感または奥行き感を付与した所定の表示を可能とする視差表示板及びこれを有する計器装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−59228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、レンチキュラレンズを構成する複数のラインレンズの凹凸により、明確に視認させたい表示(例えば、目盛り又は記号からなる指標)までギザギザに視認されてしまうため、視認性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、視認性が良好な視差表示板及び視差表示板を備える計器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る視差表示板は、
計器装置に搭載される視差表示板であって、
複数のレンズを有することで表面に凹凸が形成され、所定方向の視差を発生させる視差レンズ板と、
前記視差レンズ板の裏側に位置し、目盛り又は記号であって前記計器装置が計測値を表示する際の指標と、
前記視差レンズ板の表面であって前記指標に対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めて前記視差レンズ板の表面を実質的に平坦化する平坦化層と、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
前記平坦化層の形成領域の外形は、前記指標の外形より大きくてもよい。
【0008】
前記指標は、前記視差レンズ板の裏面に形成された塗料層の一部により表現されていてもよい。
【0009】
前記塗料層は、前記指標以外の領域で、前記視差レンズ板を表側から見た場合に立体視される装飾表示部を表現するようにしてもよい。
【0010】
前記計器装置は、前記視差表示板の裏側に位置し、所定の画像を表示するディスプレイ装置を備え、
前記視差レンズ板の裏面であって前記ディスプレイ装置の表示領域と対向する領域には、前記塗料層が形成されてないことで開口部が形成され、
前記視差レンズ板の表面であって前記開口部と対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めて前記視差レンズ板の表面を実質的に平坦化し、前記画像を表す光を透過する透光層をさらに備える、
ようにしてもよい。
【0011】
前記透光層の形成領域の外形は、前記開口部の外形より大きくてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る視差表示板は、
計器装置に搭載される視差表示板であって、
複数のレンズを有することで表面に凹凸が形成され、所定方向の視差を発生させる視差レンズ板と、
前記視差レンズ板の表面に形成され、この形成領域における凹凸を埋めて前記視差レンズ板の表面を実質的に平坦化する平坦化層と、を備え、
前記平坦化層によって、目盛り又は記号であって前記計器装置が計測値を表示する際の指標を表現する、
ことを特徴とする。
【0013】
前記視差レンズ板は、レンチキュラレンズであってもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る計器装置は、
前記第1又は第2の観点に係る視差表示板を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、視認性が良好な視差表示板及び視差表示板を備える計器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る計器装置の概略平面図である。(b)は、図1(a)に示すA−A線で切った計器装置の概略断面図である。
【図2】(a)は、図1(b)に示すB部の拡大図であり、両眼視差を説明するための図である。(b)は、図1(a)に示すC−C線で切った視差表示板の断面図である。
【図3】(a)は、第1実施形態に係る視差表示板の塗料層を説明するための図である。(b)は、第1実施形態に係る視差表示板の平坦化層を説明するための図である。
【図4】(a)及び(b)は、第1指標部のうち図1(a)に示すE部に位置する記号に対応して形成される平坦化層を説明するための図である。
【図5】(a)は、本発明の第2実施形態に係る計器装置の概略平面図である。(b)は、図5(a)に示すF−F線で切った計器装置の概略断面図である。
【図6】(a)は、第2実施形態に係る視差表示板の塗料層を説明するための図である。(b)は、第2実施形態に係る視差表示板の平坦化層及び透光層を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る計器装置100は、図1(a)に示す車両用の複合計器であり、速度計1、回転計2、及び燃料−油温計3としての機能を有する。
【0019】
計器装置100は、図1(a)、(b)に示すように、回路基板10と、中ケース20と、指標部4及び装飾表示部5を有する視差表示板30と、これらを収納するハウジング(図示せず)と、を備える。指標部4は、速度計1用の第1指標部41と、回転計2用の第2指標部42と、燃料−油温計3用の第3指標部43と、を有し、これらの各々は目盛り4a又は記号4bである指標から構成されている。ここで、記号とは、文字、数字、及び図形を含む概念である。計器装置100は、指標と後述する指針1a,2a,3a,3bにより所定の計測値(車速等)を表示する。
【0020】
なお、図1(b)は、計器装置100の速度計1部分の概略断面図である。回転計2と燃料−油温計3は、速度計1と同様にして構成されるため、以下では、速度計1を中心に説明する。また、以下では計器装置100を各構成要素に対して計器装置100を正視する視認者側の方向を「表」とし、その逆方向を「裏」として説明する。さらに、前記視認者が見て上方向を「上」とし、その逆方向を「下」として説明する。
【0021】
回路基板10は、速度計1、回転計2、及び燃料−油温計3に共通のものであり、図1(b)に示すように、板状の基材11及び基材11に実装された制御回路(図示せず)と、速度計1用の駆動本体12及び発光素子13と、を備える。
【0022】
基材11は、例えばガラスエポキシ基板であり、前記ハウジングに固定保持される。駆動本体12は、ステッピングモータであり、基材11の裏面に実装されている。駆動本体12の回転軸12aは、基材11に形成された孔11a及び視差表示板30に形成された孔o1(図3(a)、(b)参照)を通過し、その先端が視差表示板30の表側に突き出る。回転軸12aの先端には、速度計1用の指針1aが取り付けられている。発光素子13は、視差表示板30に向けて光を出射するLED(Light Emitting Diode)であり、基材11の表面に実装されている。発光素子13は、制御回路の制御の下、適宜のタイミングで発光する。制御回路は、外部から供給される車両速度に応じた制御信号に基づき駆動本体12を駆動し、回転軸12aを車両速度に応じた角度で回転させる。このようにして回転する指針1aと指針1aに指示される第1指標部41とが協働することで、速度計1は、現在の車速を表示する。
【0023】
速度計1用の第1指標部41は、図3(a)に示すように、円弧形状に沿って配列される複数の目盛り4aと、目盛り4aに対応するように円弧形状に沿って配列される「0、20、・・・、220」の数字や、「km/h」という車速(計測値)の単位を示す文字である複数の記号4bと、から構成されている。
【0024】
中ケース20は、速度計1、回転計2、及び燃料−油温計3に共通のものであり、基材11の表面上に載置されている。中ケース20は、その表側に位置する視差表示板30を保持する。中ケース20は、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂の射出成形で形成され、発光素子13が出射した光を視差表示板30の第1指標部41に効率良く導くために設けられた照明室21を有する。照明室21は、円弧形状の第1指標部41に対応するように円弧形状に形成される空間部である。発光素子13が出射した光は、照明室21を通って第1指標部41を照らす。
後述するように本実施形態では、第1指標部41は、塗料層32のうち透光性のある部分で形成されており、また、第1指標部41を構成する指標(目盛り4a、記号4b)を覆うように形成された平坦化層33も透光性を有するため、このように照らされることで、速度計1の第1指標部41を構成する指標は、発光する。
【0025】
計器装置100において、回転計2、燃料−油温計3も、速度計1と同様にして実現される。
例えば、基材11には、速度計1用の駆動本体12のみならず、回転計2及び燃料−油温計3用の図示しない複数の駆動本体が実装され、各々の回転軸が適宜制御回路に制御されることによって、図1(b)に示す回転計2用の指針2a及び燃料−油温計3用の指針3a,3bは回転する。このようにして回転する指針2aと指針2aに指示される第2指標部42とが協働することで、回転計2は、現在のエンジンの回転数を表示する。同様に、燃料−油温計3は、第3指標部43を指示する指針3aで現在の燃料の残量を表示し、指針3bで現在の油温を表示する。
また、基材11には回転計2及び燃料−油温計3用の図示しない複数の発光素子が実装され、中ケース20には図示しない第2指標部42及び第3指標部43用の照明室が設けられる。これにより、回転計2用の第2指標部42、燃料−油温計3用の第3指標部43は、第1指標部41と同様に適宜発光する。
【0026】
回転計2用の第2指標部42は、図3(a)に示すように、円弧形状に沿って配列される複数の目盛り4aと、目盛り4aに対応するように円弧形状に沿って配列される「0、1、・・・、9」の数字や、「×1000/min」という回転速度(計測値)の単位を示す文字である複数の記号4bと、から構成されている。
燃料−油温計3の第3指標部43は、図3(a)に示すように、円弧形状に沿って配列される複数の目盛り4aと、目盛り4aに対応するように配列されており、燃料が空(Empty)であることを示す「E」、燃料が満タン(Full)であることを示す「F」、油温が低い(Low)ことを示す「L」、及び油温が高い(Hi)ことを示す「H」という文字や、「F」と「E」の間で燃料に係る表示であることを示す図形及び「H」と「L」の間で油温に係る表示であることを示す図形である複数の記号4bと、から構成されている。
【0027】
視差表示板30は、図2(a)、(b)に示すように、レンチキュラレンズ31と、レンチキュラレンズ31の裏面に形成された塗料層32と、レンチキュラレンズ31の表面に形成された平坦化層33と、を備える。
視差表示板30には、前述の孔o1の他、図3(a)、(b)に示すように、回転計2の指針2a用の回転軸(図示せず)を通すための孔o2、燃料−油温計3のうち燃料表示に係る指針3a用の回転軸(図示せず)を通すための孔o3、油温表示に係る指針3b用の回転軸を通すための孔o4が形成されている。
【0028】
レンチキュラレンズ31は、透光性樹脂(例えば耐熱性のポリエチレンテレフタラート(PET))からなり、その表側には半円筒形のラインレンズ31aが複数形成されている。レンチキュラレンズ31は、中ケース20に保持されている。レンチキュラレンズ31は、隣り合うラインレンズ31a間に生じる溝が計器装置100の視認者から見て上下方向に延びるようにして配置され、両眼視差を発生させる。レンチキュラレンズ31の溝の深さDは、例えば50μmに設定されている。レンチキュラレンズ31は、視差発生レンズ板の一例である。
【0029】
塗料層32は、高精細オフセット印刷により、レンチキュラレンズ31の裏面全体に渡って形成された層である。図3(a)は、塗料層32のみが形成されている状態の視差表示板30を示した図である。この図からわかるように、塗料層32により、指標部4と装飾表示部5とが描画され、表現されている。
【0030】
指標部4は、前述のように第1指標部41、第2指標部42、第3指標部43を有し、その各々は、図3(a)に黒塗りで示すように、目盛り4a又は記号4bである指標が複数配置されることにより構成される。
装飾表示部5は、各計器の輪郭を表すリング部5a及び背景部5bから構成される。図3(a)では、リング部5aを斜線のハッチングを付して表し、背景部5bをドットを付して表した。
例えば、指標部4は透光性のある色(透明、有色透明)、背景部5bは指標部4に対してはっきりと区別できる色(青色、黒色等)をもって塗料層32により形成されている。逆に、指標部4の色が濃く、背景部5bの色が淡いという関係でもよい。例えば、リング部5aは銀色で金属調に描画されている。
【0031】
塗料層32は、図2(a)に示すように、レンチキュラレンズ31の複数のラインレンズ31aの各々に対応した右眼用画素R及び左眼用画素Lから構成される。右眼用画素Rと左眼用画素Lとは互いに交互に配置され、上下方向に延びる微細なストライプ状になる。レンチキュラレンズ31により、右眼用画素Rは右眼6によって視認され、左眼用画素Lは左眼7によって視認される。このように両眼視差が発生することで、塗料層32により描画された画像は、立体的に(例えば、奥行き感があるように)視認される。
ただ、本実施形態では、装飾表示部5は立体視されるが、指標部4についてはほぼ立体視されない。これは、次に述べるように、指標部4の視認性を向上させるため、指標部4に対応するように平坦化層33が形成されており、レンチキュラレンズ31の溝が覆われるためである。
【0032】
平坦化層33は、図2(b)に示すように、レンチキュラレンズ31の表面の一部に形成された層であり、レンチキュラレンズ31の溝を埋め、レンチキュラレンズ31の表面を実質的に平坦にするものである(図2(b)では、塗料層32が描く第1指標部41のうち、目盛り4aに対応する箇所を示した)。具体的には、レンチキュラレンズ31の溝を完全に埋め完全に表面を平坦にする必要はなく、1回の印刷で10μm程度の印刷層を形成するスクリーン印刷を複数回(例えば、2、3回)施すことにより、平坦化層33を形成すればよい。このように施せば、平坦化層33が形成された領域では、目視で、レンチキュラレンズ31表面の凹凸がギザギザとなって視認されない程度にラインレンズ31a間の溝を埋めることができる。本実施形態では、平坦化層33は、透光性のある色(透明、有色透明)をもって形成されている。
【0033】
図3(b)は、平坦化層33のみが形成されている状態の視差表示板30を示した図である。平坦化層33は、図3(b)に黒塗りで示すように、指標部4に対応して、指標部4を構成する指標(目盛り4a、記号4b)の外形とほぼ同一な形状で形成されている。具体的には、平坦化層33は、レンキュラレンズ31を挟んで、指標部4を構成する複数の指標の各々と対向する領域に形成されている(図2(b)参照)。
【0034】
図4(a)は、図1(a)のE部における塗料層32が表示する記号4bと平坦化層33との関係を示す図である。この図では、レンチキュラレンズ31の表面に形成されている平坦化層33を点線で示している。
このように、平坦化層33は、塗料層32により描画された「2」と「0」という2つの記号4b各々の外形より一回り大きく形成されている。この大きさは、少なくとも印刷ズレの誤差ぶんのマージンを考慮した大きさである。このように平坦化層33を形成すれば、この形成領域においては、多少の斜め視野においても(つまり、視差表示板30の法線方向から多少ずれた位置から視認しても)、レンチキュラレンズ31の溝によるギザギザを目立たなくすることができる。目盛り4aに対応する平坦化層33も、これと同様にして、目盛り4aの外形より一回り大きく形成される。
【0035】
平坦化層33を必ずしも図4(a)のように形成する必要はなく、図4(b)に示すように、「20」を、1まとまりの指標として、この外形よりも一回り大きく平坦化層33を形成してもよい。例えば、隣り合う記号4b間の間隔が狭い場合や、記号4bの形状が複雑である場合には、このように形成するとよい。隣り合う目盛り4a間の間隔が狭い場合も同様である。
【0036】
以上の構成からなる計器装置100に搭載される視差表示板30は、複数のラインレンズ31aを有することで表面に凹凸が形成され、左右方向の視差を発生させるレンチキュラレンズ31と、レンチキュラレンズ31の裏側に位置し、目盛り4a又は記号4bであって計器装置100が計測値を表示する際の指標と、レンチキュラレンズ31の表面であって指標に対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めてレンチキュラレンズ31の表面を実質的に平坦化する平坦化層33と、を備える。
この視差表示板30では、目盛り4a又は記号4bである指標を覆うように、レンチキュラレンズ31の表面の凹凸を実質的に平坦化する平坦化層33が形成されているため、指標の形成領域における表面の凹凸が軽減され、表示のギザギザがほとんど視認されなくなる。よって、主に安全面から明確に表示させたい場合が多い、計測値を表示する際の指標が見易いものとなる。このように、視差表示板30によれば、視認性が良好である。
【0037】
また、平坦化層33の形成領域の外形は、指標の外形より大きい。このため、多少の斜め視野においても、レンチキュラレンズ31の溝によるギザギザを目立たなくすることができる。
【0038】
また、指標は、レンチキュラレンズ31の裏面に形成された塗料層32の一部により表現される。本実施形態では、指標は、装飾表示部5とともに塗料層32により形成されるため、その形成が容易であり、工数を減らすこともできる。
【0039】
また、塗料層32は、レンチキュラレンズ31を表側から見た場合に立体視される装飾表示部5を表現する。そのため、指標の視認性を確保しつつも、斬新で飽きのこない表示を行うことができる。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る計器装置200は、図5(a)に示す車両用の複合計器であり、第1実施形態のように実体指針1aではなく、ディスプレイ装置50に表示されるデジタル指針(図示せず)により、現在の速度を表示するものである。
以下では、第1実施形態と同様の構成については同一又は対応する符号を用いて説明し、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0041】
計器装置200は、図5(a)に示すように、その表示領域中央部に速度計201を備える。
また、計器装置200は、ディスプレイ装置50と、視差表示板230と、を備える。
【0042】
ディスプレイ装置50は、液晶ディスプレイ装置、有機エレクトロルミネッサンス(有機EL)ディスプレイ装置等から構成されている。ディスプレイ装置50は、図5(b)に示すように、基材11の表面に実装され、前記制御回路の制御の下、デジタル指針(図示せず)等の所定の画像を表示する。また、ディスプレイ装置50は、中ケース20の第1指標部41に対応して円弧状に形成された照明室21に囲まれる収納領域22に収納されている。
計器装置200では、ディスプレイ装置50が表示するデジタル指針とこれに指示される第1指標部41とが協働することで、速度計201は、現在の車速を表示する。
【0043】
第2実施形態に係る視差表示板230は、前述のレンチキュラレンズ31、塗料層32、平坦化層33に加えて、透光層34(図6(b)の斜線領域参照)と、を備える。なお、視差表示板230には、図6(a)、(b)に示すように、第1実施形態のような孔o1は形成されていない。
【0044】
図6(a)は、塗料層32のみが形成されている状態の視差表示板230を示した図である。塗料層32は、第1実施形態とほぼ同様であるが、ディスプレイ装置50の表示領域と対向する領域には、塗料層32が形成されておらず(印刷されておらず)、これにより抜き印刷部となる開口部8が形成されている点が異なる(図6(a)で、塗料層32が形成されていない領域を白抜きで表した(但し、孔o2〜o4の形成領域を除く))。ディスプレイ装置50の表示画像は、この開口部8を臨んで表示される。
【0045】
図6(b)は、平坦化層33及び透光層34のみが形成されている状態の視差表示板230を示した図である。平坦化層33については第1実施形態と同様である。
【0046】
図6(b)に斜線を付して示した透光層34は、レンチキュラレンズ31の裏面に形成された開口部8と、レンチキュラレンズ31を挟んで対向する領域に形成されている。透光層34は、平坦化層33と同様、レンチキュラレンズ31の溝を埋め、レンチキュラレンズ31の表面を実質的に平坦にするものである。透光層34は、透明または有色透明の透光性のある層であり、平坦化層33と共に複数回(例えば、2、3回)のスクリーン印刷によって形成される。
また、透光層34の形成領域の外形は、開口部8の外形より一回り大きく形成されている。この大きさも、少なくとも印刷ズレの誤差ぶんのマージンを考慮した大きさである。このように透光層34を形成すれば、この形成領域においては、多少の斜め視野においても(つまり、視差表示板30の法線方向から多少ずれた位置から視認しても)、レンチキュラレンズ31の溝によるギザギザを目立たなくすることができる。
【0047】
以上の構成からなる計器装置200は、視差表示板30の裏側に位置し、所定の画像を表示するディスプレイ装置50を備え、レンチキュラレンズ31の裏面であってディスプレイ装置50の表示領域と対向する領域には、塗料層32が形成されてないことで開口部8が形成され、レンチキュラレンズ31の表面であって開口部8と対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めてレンチキュラレンズ31の表面を実質的に平坦化し、前記画像を表す光を透過する透光層34をさらに備える。
これによれば、ディスプレイ装置50の表示画像を、レンチキュラレンズ31によるギザギザをほとんど視認させずに、明確に表示できる。
【0048】
また、透光層34の形成領域の外形は、開口部8の外形より大きい。このため、多少の斜め視野においても、レンチキュラレンズ31の溝によるギザギザを目立たなくすることができる。
【0049】
(変形例)
なお、本発明は以上の実施形態によって限定されるものではない。以上の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。
【0050】
以上では、塗料層32により表示される指標部4が透光性のある色で形成されている例を示したが、不透過の層として形成してもよい。また、指標部4を印刷されていない領域にし、所謂抜き文字状態にすることで、指標部4を構成する目盛り4a、記号4bを描いてもよい。
【0051】
さらには、以上のように塗料層32によって指標を形成せず、平坦化層33によって指標を形成してもよい。
つまり、レンチキュラレンズ31の表面に形成され、この形成領域における凹凸を埋めてレンチキュラレンズ31の表面を実質的に平坦化する平坦化層33によって、目盛り又は記号である指標を表現する、ようにしてもよい。
【0052】
以上では、塗料層32をレンチキュラレンズ31の裏面に直接形成したが、これに限られない。このように形成する代わりに、レンチキュラレンズ31の裏面側に、指標部4及び装飾表示部5と同様な画像が描画又は形成された他の表示板を配置してもよい。
【0053】
以上では、レンチキュラレンズ31の溝方向を視認者から見て上下方向となるように配置したが、視認者の安全や視認性が保たれる限度においては、左右方向となるように配置し、視覚によって画像が変わる所謂チェンジングを実現してもよい。
【0054】
また、以上では、視差表示板30にレンチキュラレンズ31を用いた例を説明したが、これに限られない。レンチキュラレンズ31の代わりに複数のマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイ(視差発生レンズ板の一例)を用いてもよい。この場合、塗料層32に対応する塗料層は、マイクロレンズアレイが有する複数のマイクロレンズに対応するようにドット状の画素により構成される。これにより、左右方向のみならず上下方向の視差を利用して、立体感のある画像を表示させてもよい。
そして、マイクロレンズアレイの表面の凹凸を実質的に平坦化する平坦化層を形成すれば、指標の形成領域における表面の凹凸が軽減され、表示のギザギザがほとんど視認されなくなる。このように、マイクロレンズアレイを用いた視差表示板によっても、視認性を良好にすることができる。
【0055】
また、例えば、視差表示板30の可視領域を定める見返し部材(図示せず)を視差表示板30と当接するように視差表示板30上に配置する構成にあっては、必要に応じて視差表示板30と前記見返し部材との当接箇所にも平坦化層33を設けてもよい。このようにすれば、前記可視領域外となるレンチキュラレンズ31の表面箇所が、振動等によって摩耗する(あるいは欠ける)のを抑制することができる。
【0056】
以上では、計器装置100、200を車両用計器として説明したが、これに限られない。計器装置は、航空用計器、船舶用計器等であってもよい。
【0057】
なお、以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0058】
100、200…計器装置
1、201…速度計
2…回転計
3…燃料−油温計
10…回路基板
20…中ケース
30、230…視差表示板
31…レンチキュラレンズ
32…塗料層
4…指標部
5…装飾表示部
33…平坦化層
34…透光層
8…開口部
50…ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器装置に搭載される視差表示板であって、
複数のレンズを有することで表面に凹凸が形成され、所定方向の視差を発生させる視差レンズ板と、
前記視差レンズ板の裏側に位置し、目盛り又は記号であって前記計器装置が計測値を表示する際の指標と、
前記視差レンズ板の表面であって前記指標に対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めて前記視差レンズ板の表面を実質的に平坦化する平坦化層と、を備える、
ことを特徴とする視差表示板。
【請求項2】
前記平坦化層の形成領域の外形は、前記指標の外形より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の視差表示板。
【請求項3】
前記指標は、前記視差レンズ板の裏面に形成された塗料層の一部により表現される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の視差表示板。
【請求項4】
前記塗料層は、前記指標以外の領域で、前記視差レンズ板を表側から見た場合に立体視される装飾表示部を表現する、
ことを特徴とする請求項3に記載の視差表示板。
【請求項5】
前記計器装置は、前記視差表示板の裏側に位置し、所定の画像を表示するディスプレイ装置を備え、
前記視差レンズ板の裏面であって前記ディスプレイ装置の表示領域と対向する領域には、前記塗料層が形成されてないことで開口部が形成され、
前記視差レンズ板の表面であって前記開口部と対向する位置に形成され、この形成領域における凹凸を埋めて前記視差レンズ板の表面を実質的に平坦化し、前記画像を表す光を透過する透光層をさらに備える、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の視差表示板。
【請求項6】
前記透光層の形成領域の外形は、前記開口部の外形より大きい、
ことを特徴とする請求項5に記載の視差表示板。
【請求項7】
計器装置に搭載される視差表示板であって、
複数のレンズを有することで表面に凹凸が形成され、所定方向の視差を発生させる視差レンズ板と、
前記視差レンズ板の表面に形成され、この形成領域における凹凸を埋めて前記視差レンズ板の表面を実質的に平坦化する平坦化層と、を備え、
前記平坦化層によって、目盛り又は記号であって前記計器装置が計測値を表示する際の指標を表現する、
ことを特徴とする視差表示板。
【請求項8】
前記視差レンズ板は、レンチキュラレンズである、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の視差表示板。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の視差表示板を備える、
ことを特徴とする計器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96719(P2013−96719A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236913(P2011−236913)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】