視線誘導標支持器材
【課題】 設置する支柱等の構造物の形状,反射材の形状等にも広い適応範囲があり,視線誘導標を貼着して設置する場合も,外力が加わっても破損し難く,かつ,視線誘導標が剥がれ難い視線誘導標支持器材を提供することを目的とする。
【解決手段】 視線誘導標支持器材1は,底面が被着体構造物5に当接して固定される板状の構造物取付部12と,構造物取付部12の上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がり,視線誘導標2を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔で対向する2枚の板状部分を有する誘導標支持部11とが,熱可塑性エラストマーを主体成形材料として形成され,かつ,構造物取付部12の上面側で,誘導標支持部11の配置方向に平行に山部121と谷部122とが交互に形成されるように構造物取付部12の肉厚が変化する形状を有する。
【解決手段】 視線誘導標支持器材1は,底面が被着体構造物5に当接して固定される板状の構造物取付部12と,構造物取付部12の上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がり,視線誘導標2を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔で対向する2枚の板状部分を有する誘導標支持部11とが,熱可塑性エラストマーを主体成形材料として形成され,かつ,構造物取付部12の上面側で,誘導標支持部11の配置方向に平行に山部121と谷部122とが交互に形成されるように構造物取付部12の肉厚が変化する形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,視線誘導標をコンクリートの壁面,ガードレールの支柱等に取り付けて支持するための視線誘導標支持器材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,ガードパイプ,ガードレール,電柱等の支柱に設置する視線誘導標の多くは,主に丸型の硬質樹脂(ポリカーボネイドまたはアクリル)のレンズと,同じく硬質樹脂のハウジング(ケース)で構成されている。設置については,バンドや支柱など金具を用いた取付が一般的である。一方,破損し難く,安価に簡単に取り付けられる視線誘導標として,反射シートを,ガードレール等の支柱に巻きつける方法が採用される場合もある。また,反射シート(又は反射材)をゴム基材の視線誘導標支持器材に貼り付ける視線誘導標もあるが,予め定められた形状の反射シートを視線誘導標支持器材に埋め込むタイプのものや,視線誘導標支持器材の形状も予め定められた形状とするものである。
【0003】
なお,視線誘導標及び視線誘導標取付金具において,取付金具の傾斜板部を傾斜面に取り付けて反射体を設け,本体の傾斜板部が傾斜面に沿わされ,反射体が設けられた支持体を二体の本体の挟持部間に挟着部を用いて挟着することで反射体を設けることができ,支柱上面が傾斜面であっても後付けが可能な手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−190269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,視線誘導標をガードパイプ,ガードレール,電柱等の支柱に設置するための視線誘導標支持器材は,設置対象の支柱等の柱状体の径に応じて貼着面を柱状物に適応させるために予め所定の径を有する形状に成形するか,または,専用の取付金具等を製作する必要があった。
【0006】
例えば,このような設置対象となる支柱等の径は,国や各地方自治体が管理する道路,その他事業者が管理する道路等により様々な径の規格があり,製作者は,それらの規格に応じて視線誘導標支持器材を製作している。さらに,視線誘導標に用いられる反射機材(反射材も含む)においても,様々な大きさ,形状が存在する。このような柱状体に取り付ける視線誘導標支持器材は金属製がほとんどであり,雪圧・衝撃等の外力により当該器材が曲がる。器材が曲がると自己復元性がないため,再帰反射性能が失われる。また,視線誘導標に用いられる反射機材が硬質プラスチックレンズの場合には,外力を受けて割れ・破損等が発生し易すく,割れ・破損等により再帰反射性能が失われる。
【0007】
一方,視線誘導標支持器材を樹脂等で一体成形で製作するものもあるが,反射材を視線誘導標支持器材に埋め込むタイプのものや,視線誘導標支持器材の形状も予め定められた形状とするものである。このような視線誘導標支持器材は,視線誘導標の形状,大きさ,あるいは,設置対象のガードパイプ,ガードレール,電柱等の支柱の形状に合わせて設計される。
【0008】
なお,破損し難く,安価に簡単に取り付けられる視線誘導標として,反射シートを,ガードレール等の支柱に巻きつける方法もあるが,ガードレールのビーム(横の梁)等に隠れて見にくくなるなどの視認性の問題を生ずる場合がある。また,歩行者側からもガードレール等の支柱に巻きつけられた状態が見えるため,歩行者が多い通り,観光地等の場合には,景観上の問題もある。
【0009】
前述した視線誘導標支持器材では,設置対象の支柱等の大きさ,反射材の形状又はその板厚の違いに対応するために,個別対応にて製作する必要があった。例えば,視線誘導標支持器材を樹脂等で一体成形で製作する場合には,金型を個別対応で製作する必要がある。その結果,製作者側にとって,それぞれに対応したものを製作するために,設計コスト,製造コスト等の製作コストを押し上げていた。一方,設置工事の施工者にとっても,反射材の様々な形状,設置対象などにより多くの種類の視線誘導標に対応しなければならず,施工コストを押し上げていた。また,保守管理する保守者等にとっても,保守品として複数の種類の在庫を持たなければならず,そのために保守コストを押し上げていた。
【0010】
本発明は,上記従来技術の課題に鑑みて,設置する支柱等の構造物の形状,反射材の形状等にも広い適応範囲があり,視線誘導標を貼着して設置する場合も,外力が加わっても破損し難く,かつ,視線誘導標が剥がれ難い視線誘導標支持器材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の視線誘導標支持器材は,視線誘導標を被着体構造物に取り付ける視線誘導標支持器材である。前記視線誘導標支持器材は,底面が前記被着体構造物に当接して固定される板状の構造物取付部と,構造物取付部の底面と反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がり,前記視線誘導標を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔で対向する2枚の板状部分を有する誘導標支持部とが,熱可塑性エラストマーを主体成形材料として形成され,かつ,構造物取付部の上面側で,誘導標支持部の配置方向に平行に山部と谷部とが交互に形成されるように構造物取付部の肉厚が変化する形状を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の視線誘導標支持器材によれば,貼付けられる視線誘導標の形状,大きさ等について幅を持たせて対応できる構造であると共に,構造物取付部の肉厚に変化をもたせ,その底面が被着体構造物の取付面に沿うように曲がりやすく形成されているため,設置対象として取り付けられるガードレール,電柱等の幅広い範囲の支柱の径およびコンクリート高欄等の壁面にも対応できる構造である。これにより,視線誘導標支持器材の製作種類数を減らすことができ,製作コスト,在庫コスト等を低減することができる。また,視線誘導標に用いる視線誘導標支持器材の種類を減らすことができるため,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0013】
また,本発明の視線誘導標支持器材によれば,設置対象のガードレール等の支柱等に簡易な作業で取り付けることができるため,設置作業にかかる労力を低減することができる。これにより,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0014】
また,本発明の視線誘導標支持器材によれば,主体材料が可撓性のある熱可塑性エラストマーから製作されるため,柔軟かつ復元性がある。これにより,視線誘導標がガードレール,電柱等の支柱に設置された場合に,車両の衝突等による外力を受け流すため,破損等を回避することができる。さらに,車両の衝突等による外力を受けて変形し,その外力が解放されると元の状態に自立的に戻るため,保守作業等の労力を低減することができる。
【0015】
以上のように,本発明の視線誘導標支持器材は,製作,施工及び保守のいずれの観点においても,各々のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の視線誘導標支持器材の実施例を示す図である。
【図2】視線誘導標支持器材の構造を示す図である。
【図3】視線誘導標支持器材の構造を説明する図である。
【図4】視線誘導標支持器材への反射材の貼付の一例を示す図である。
【図5】視線誘導標が貼付された視線誘導標支持器材の他の一例を示す図である。
【図6】視線誘導標支持器材の設置対象となる被着体構造物を説明する図である。
【図7】視線誘導標支持器材の取付の一例を示す図である。
【図8】視線誘導標支持器材の他の実施例の構造を示す図である。
【図9】視線誘導標支持器材を被着体構造物へ設置した一例を示す図である。
【図10】視線誘導標支持器材を被着体構造物へ設置した一例を示す図である。
【図11】視線誘導標支持器材を設置した他の一例を説明する図である。
【図12】視線誘導標支持器材を設置した他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の視線誘導標支持器材1の実施例を示す図であり,特に図1(A)には斜視図,図1(B)には側面図を示す。図2は,図1に示す視線誘導標支持器材1の構造を示す図であり,特に図2(A)には上面図,図2(B)には側面図,図2(C)には正面図を示す。図3は,図1に示す視線誘導標支持器材1の構造を説明する図であり,特に図3(A)には図2(B)に示す側面図を詳細に説明する図を示し,図3(B)には図2(B)に示す形状を説明する図を示す。以下,主に図1乃至図3を用いて視線誘導標支持器材1について説明する。
【0018】
視線誘導標支持器材1は,図1(A)及び図1(B)に示すように,視線誘導標2を被着体構造物5(図6に示す)に取り付ける器材である。取り付けられる視線誘導標2は,反射機材(デリニエータ)であり,道路を通行する車両等のドライバーの視線誘導のための標識である。被着体構造物5は,例えばガードパイプ,ガードレール,防護柵,電柱等の支柱,コンクリート高欄の壁面等である。ドライバーが車両進行方向の正対方向X#1又はX#2に向かって進行している場合に,ヘッドライト等の光が視線誘導標2に再帰反射することにより,ドライバーにガードレール等の存在を注意喚起することができる。
【0019】
視線誘導標支持器材1は,図2に示すように,誘導標支持部11と構造物取付部12とを備える。構造物取付部12に対する誘導標支持部11の配置方向Zは,図1(A)に示すように,方向X#1,X#2に垂直な方向である。
【0020】
誘導標支持部11は,さらに,視線誘導標2を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔(U#1)で対向する2枚の板状部分を有する挟着部111と,構造物取付部12の底面とその反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がる接続支持部112とを備える。
【0021】
誘導標支持部11の挟着部111は,図3(A)及び図3(B)に示すように,視線誘導標2を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔U#1で対向する2枚の板状部分を有するように形成される。挟着部111のコの字状部分の幅W#2は,所定の間隔U#1よりも大きいとされる。なお,図3(B)に示すように,挟着部111のコの字状部分の溝の深さU#2であり,挟着部111のコの字状部分の高さH#2である。
【0022】
後述するように,視線誘導標支持器材1の主体成形材料は,熱可塑性エラストマーであるため,挟着部111がコの字状部分により容易に拡開でき,所定の視線誘導標2の厚さ(板厚)の範囲において,柔軟に変形することができる。これにより,視線誘導標2を容易に挟着できると共に,接着材等を接着する方向に弾性力が加わるように作用するため,安定して貼着することができ,貼着後も視線誘導標2が剥がれ難い。また,コの字状部分の拡開容易であるため,視線誘導標2の板厚についても幅広い厚さについて挟着させることが可能である。
【0023】
接続支持部112は,誘導標支持部11と構造物取付部12とを接続する構造部分である。接続支持部112は,構造物取付部12の底面と反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がるように形成される。図3(B)に示すように,誘導標支持部11の逆T字状を形成する部分の高さH#1である。
【0024】
なお,本実施例では,所定の支持角度は90度前後である。この場合における所定の支持角度=90度前後は,車両進行方向の正対方向X#1及びX#2において,取り付けられた視線誘導標2が充分な反射性能を得るための角度である。図1(A)に示すように,反射材を有する視線誘導標2が正対方向X#1及びX#2に対向するように視線誘導標支持器材1に貼付けられる。本実施例の他に,一方向(X#1又はX#2)からの車両通行の用途には,一方向のみに反射材を貼付けるように用いても良い。また,このような用途の視線誘導標支持器材1においては,所定の支持角度を,予め60度〜90度の範囲に形成されるようにしても良い。
【0025】
接続支持部112は,図3(A)及び図3(B)に示すように,例えば誘導標支持部11の幅W#2よりも薄い肉厚となるように湾曲状に形成される。なお,以下では,図3(A)に示す接続支持部112における湾曲状の構造S#1をヒンジ構造と呼ぶ。
【0026】
視線誘導標支持器材1は,上記ヒンジ構造により,車両の接触・衝撃等の外力を受けて接続支持部112が屈曲した際に,接続支持部112の肉厚を誘導標支持部11の幅W#2と同程度になるように形成する場合に比べて,その外力をより分散させることができる。この結果,接続支持部112の肉厚が誘導標支持部11の幅W#2と同程度に形成する場合と比べて,視線誘導標支持器材1が屈曲しやすくなることにより他の部分の応力(引張り力)が小さくなるため,貼着設置された場合において構造物取付部12にかかる剥離力(引き剥がし力)も小さくなる。
【0027】
図2において,構造物取付部12の上面は,図2(A)に示す誘導標支持部11が突出する側の面であり,構造物取付部12の底面は,その反対側の面である。また,図1(A)に示す配置方向Zは,図2(C)に示す横方向に対応し,配置方向Zに垂直方向の断面は,図2(B)に示す断面に対応する。
【0028】
構造物取付部12は,底面が被着体構造物5に当接して固定される板状の構造を有する。構造物取付部12は,さらに,複数の山(凸)部121及び谷(凹)部122からなる凹凸構造を有する。この凹凸構造は,図2(B)に示すように,構造物取付部12の上面側で,誘導標支持部11の配置方向Zに平行に山部121と谷部122とが交互に形成されるように構造物取付部12の肉厚が変化する形状の構造である。なお,図2(B)に示す山部121(の中心)は,図2(A)の対応する位置に実線で示し,図2(B)に示す谷部122(の中心)は,図2(A)の対応する位置に一点鎖線で示す。
【0029】
図2に示す凹凸構造は,具体的には,図3(A)及び図3(B)に示すように,山部121の肉厚t#1は,谷部122の肉厚t#2よりも厚く形成される。また,構造物取付部12の幅W#1の両端側は,谷部122とされ,谷部122と山部121とが交互に中央側に向かって繰り返されるように配置され,かつ,中央側の接続支持部112の接続部分(根元部分)において,谷部122となるように配置されて,誘導標支持部11の配置方向Zに平行に形成される。
【0030】
構造物取付部12の上面には,図1乃至図3に示すように,波型形状の複数の山部121及び谷部122が設けられるが,実施態様は波型形状に限定されるものでなく,肉厚の凹凸型(肉厚部分と肉薄部分)を交互に配置すれば,波型形状でなくても良い。また,複数の山部121及び谷部122の数においても,図示される数に限定されるものではない。
【0031】
複数の山部121と谷部122との凹凸構造により,図3(A)に示すように,例えば複数の屈曲部分P#1〜P#6を有することができる。これにより,構造物取付部12の板状部分は,優れた屈曲性を有する。
【0032】
仮に,構造物取付部12が,図3(A)に示すような山部121と谷部122とを備えないとした場合には,貼着設置による構造物取付部12が屈曲した際の応力において,構造物取付部12と接続支持部112との接続部分(根元部分)の屈曲度合いが最も高く,当該部分に応力が集中する。一方,図3(A)に示す複数の山部121と谷部122とを備えることにより,構造物取付部12の屈曲部分P#1〜P#6の各々の部分において,支柱の径に沿って屈曲する。これにより,貼着設置による構造物取付部12が屈曲した際の応力を複数に分散させることができる。したがって,中央側の接続支持部112の根元部分にかかる負担が軽減される。
【0033】
また,このような複数の山部121と谷部122とによる優れた屈曲性により,後述するように,設置対象の被着体構造物5の貼着面が平面や,幅広い範囲の支柱径の曲面でも柔軟に屈曲し,設置対象の被着体構造物5の貼着面に貼着することができる。また,凹凸構造による屈曲部分P#1〜P#6により,構造物取付部12に作用するせん断力,引き剥がし力等の応力も分散させることができる。
【0034】
さらに,誘導標支持部11の配置方向Zに垂直方向の断面において,好ましくは,構造物取付部12の底面が,図3(B)に示すように,下側に中心を有する所定の径Rsの円弧状に形成される。これにより,さらに構造物取付部12の板状部分の屈曲性を良くすることができる。したがって,この優れた屈曲性により,設置対象の被着体構造物5の貼着面が支柱等の曲面である場合に,より幅広い範囲の支柱の径に対して,構造物取付部12の円弧状に沿った底面を馴染ませて貼着することができる。一方,設置対象の被着体構造物5の貼着面が平面である場合においても,適度な押し圧により構造物取付部12の円弧状に沿った底面が柔軟に屈曲して密着するため,容易に貼着することができる。なお,所定の径Rsは,設置対象の支柱の径等の適用範囲を考慮して定めれば良い。
【0035】
(主体成形材料)
視線誘導標支持器材1は,前述したような構造を有して,熱可塑性エラストマーを主体成形材料として,例えば押し出し成形により形成される。
【0036】
視線誘導標支持器材1は,主体成形材料として熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomers)が用いられ,上記構造を有するように押し出し成形等により形成される。例えば,熱可塑性エラストマーの主体成形材料は,オレフィン系TPE/スチレン系TPE/塩化ビニル系TPE/ウレタン系TPE/ポリエステル系TPE/ポリアミド系TPE等である。
【0037】
視線誘導標支持器材1によれば,前述したような構造を有するように,可撓性・弾性力のある熱可塑性ポリウレタンエラストマーで形成されるため,柔軟かつ復元性がある。このため,視線誘導標支持器材1は,挟着部111がコの字状部分により容易に拡開でき,所定の視線誘導標2の厚さ(板厚)の範囲において,柔軟に変形することができる。これにより,視線誘導標2を容易に挟着できると共に,接着材等を接着する方向に弾性力が加わるように作用するため,安定して貼着することができ,貼着後も剥がれ難い。なお,コの字状部分の拡開容易であるため,視線誘導標2の板厚についても幅広い範囲の厚さについて挟着させることが可能である。
【0038】
また,視線誘導標支持器材1が被着体構造物5に設置され,車両の衝突等による外力を受けた場合にも,その外力を受け流すため,脱落,破損等を回避することができる。また,視線誘導標支持器材1は,誘導標支持部11の視線誘導標2が貼付された平面に加わる圧力に対して,構造物取付部12と誘導標支持部11とのなす角度が支持角度より小となるように接続支持部112が屈曲し,加圧が解放されたときに,元の支持角度に復元する。この結果,補修・施工作業等の労力を低減することができる。
【0039】
以下,図面に従って具体例を説明する。
【0040】
(例1)
図4は,視線誘導標支持器材1への反射材の貼付の一例を示す図である。図4において,破線部M#1は,誘導標支持部11の挟着部111を拡大して示すものである。
【0041】
視線誘導標2を挟着部111に挟着させる場合に,挟着部111の左右1対の平板がコの字状に形成されているため,当該コの字状部分を容易に拡開でき,所定の厚さの範囲にある視線誘導標2を挟着させることができる。この際,図4に示すように,挟着部111に接着材3等を塗布して,視線誘導標2を容易に挟着できると共に,接着材3等を接着する方向に弾性力が加わるように作用するため,安定して貼着することができる。また,挟着部111の左右の平板により貼着されるため,貼着後も視線誘導標2が剥がれ難い。
【0042】
以上説明したように,挟着部111は,コの字状部分の拡開容易であるため,視線誘導標2の板厚についても幅広い範囲の厚さに対応して挟着させることができる。また,視線誘導標2を挟着させて,強固に貼着することができる。
【0043】
次に,図4に示す視線誘導標2の反射材の一例について説明する。
【0044】
視線誘導標支持器材1には,視線誘導標2の反射材(反射シート22)として,例えばマイクロプリズム層の背面側に金属蒸着層が配置した構造のマイクロプリズムシートが用いられる。マイクロプリズムシートは,薄く,柔軟性があり,再帰反射率が高い。一般に,ガラスビーズを利用したシートやプラスチックスレンズは,上記のマイクロプリズムシートに比して厚く,屈曲時に割れが発生し易く,また,視線誘導性が劣る。なお,複層構造に比して単層構造のマイクロプリズムシートは,屈曲時の割れが発生し難い。
【0045】
図4は,単層構造の反射シート22(マイクロプリズムシート)の一例を示す図であり,また,視線誘導標2の視線誘導標支持器材1(図1に示す)への貼付の説明図である。
【0046】
視線誘導標2は,例えば反射シート22を所望の大きさ,形状にしたものが用いられる。反射シート22は,視認性を有するように光が反射する再帰性反射材からなり,例えば単層構造のマイクロプリズムシートである。
【0047】
例えば,マイクロプリズムシートの代表的なものは,反射シート22としてマイクロプリズム層の片面に金属蒸着層を配置し,そのマイクロプリズム層の他面に着色層(又は非着色)と基材層との樹脂層を位置させたものである。この着色層は,マイクロプリズム層形成のためのキャスティングを厚めに行うことによりマイクロプリズム層と一体になっていてもよく,マイクロプリズム層とは別に樹脂の保護コーティング(又は樹脂フィルム)の貼着により設けてもよい。
【0048】
樹脂層はマイクロプリズム層の保護の役割を果たすと共に,この樹脂層を着色または非着色とすることにより金属蒸着層による色調を金色や銀色にすることができる。なお,マイクロプリズム層と金属蒸着層との間には密着性を確保するために蒸着下地層を設けてもよい。樹脂層の上にはさらに反射材の表面を保護する保護コーティング層が設けられる。
【0049】
反射シート22の厚みに特に限定はないが,例えば,通常は0.1〜2mm程度とする。反射シート22は,上記の範囲内で薄目の方が,屈曲性能,衝撃性能の点で好ましい。反射シート22として,粘着剤層を有する場合には,反射シート22の離型紙を剥離除去してから,図4に示すプレート21の外面に圧着されて,貼付される。プレート21は,例えばポリカーボネードである。プレート21の厚みに特に限定はないが,図4に示す例では,挟着部111の板状の間隔U#1と同程度かもしくはそれより薄い厚みのものが好ましい。
【0050】
このように反射シート22をプレート21の両面に予め貼付し,そのプレート21を視線誘導標2として,視線誘導標支持器材1における挟着部111の面に接着剤3(又は粘着剤)等で貼付する。プレート21と反射シート22とあわせた視線誘導標2の厚みが,挟着部111の板状の間隔U#1よりも大きい場合にも,挟着部111のコの字状部分の柔軟性により視線誘導標2を挟着させることができる。
【0051】
前述したように,視線誘導標支持器材1の誘導標支持部11に外部からの物理的な力が作用しても,ヒンジ構造を有するため,誘導標支持部11が柔軟に変形して,プレート21に貼付された反射シート22が破損するおそれがない。さらに,視線誘導標2に,単層構造のマイクロプリズムシートの反射シート22等を用いることにより,水の進入/割れ/破れ等に強く,衝撃にも強い。従って,視線誘導標2が貼付された視線誘導標支持器材1をガードレール等へ設置した場合に,例えば雪圧・車両接触時の衝撃による割れ,破損等を回避することができる。
【0052】
(例2)
図5は,視線誘導標支持器材1に視線誘導標2を貼付した他の一例を示す図である。
【0053】
図5(A)には視線誘導標2Aを貼付した長さL#1の視線誘導標支持器材1Aの正面図を示し,図5(B)には視線誘導標2Bを貼付した長さL#2の視線誘導標支持器材1Bの正面図を示す。なお,図5(A)及び図5(B)において,山部121と谷部122との凹凸構造等は図示省略して示す。また,視線誘導標2Aの長さL#1は,視線誘導標2Bの長さL#2より数倍程度長く,互いの高さH#1は同じとされる。
【0054】
図5(A)において,視線誘導標2Aの形状は台形とされ,台形の下底の長さがL#1と同程度であり,台形の上底の長さがL#1よりも短い。視線誘導標2Aには,当該寸法に応じた台形のプレート21の両面に台形の反射シート22が貼付される。
【0055】
また,図5(B)において,視線誘導標2Bの形状は長方形とされ,長方形の1辺はL#2と同程度であり,例えば他の1辺はL#2よりも長い。視線誘導標2Bには,当該寸法に応じた長方形のプレート21の両面に長方形の反射シート22が貼付される。
【0056】
視線誘導標支持器材1は,押し出し成形で製作できるため,図5(A)及び図5(B)に示すような視線誘導標2A及び2Bに応じて,視線誘導標支持器材1の長さL#1及びL#2に対応する視線誘導標支持器材1A及び1Bを押し出し成形品からの切断により製作できる。即ち,1つの種類の視線誘導標支持器材1の成形品から,切断,溶断する等の簡易な加工処理で様々な形状,大きさの視線誘導標2に対応する視線誘導標支持器材1A,1B等を製作することができる。
【0057】
なお,図5(A)及び図5(B)は一例であり,図5に示す視線誘導標2の形状,大きさ,視線誘導標支持器材1の長さ,高さ等が限定されるものではない。
【0058】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1(1A,1B)は,貼付けられる視線誘導標2(2A,2B)の形状,大きさについて幅を持たせて対応できる構造を有するため,器材の製作種類数を減らすことができ,製作コスト,在庫コスト等を大幅に低減することができる。
【0059】
(例3)
図6は,視線誘導標支持器材1(1C)の設置対象となる被着体構造物5を説明する図である。特に,図6(A)には被着体構造物5が支柱の径R#1である断面を示し,同様に,図6(B)には支柱の径R#2の断面を示し,図6(C)には支柱の径R#3の断面を示し,図6(D)には被着体構造物5がコンクリート構造物の側壁の断面を示す。なお,支柱の径は,R#1>R#2>R#3の大小順に大きさが異なるものとする。
【0060】
ここで,具体的には,一例として,図3(B)に示す視線誘導標支持器材1の形状において,誘導標支持部11の高さH#1=12.5mm,挟着部111の幅W#2=8mm,挟着部111の左右の板の間隔U#1=2mm,挟着部111のコの字状部分の溝の深さU#2=5mm,挟着部111のコの字状部分の高さH#2=6mmとする。また,構造物取付部12の幅W#1=40mm,山部121の肉厚t#1=3mm,谷部122の肉厚t#2=1.7mmとし,構造物取付部12の所定の径Rs=95mmとする。
【0061】
視線誘導標支持器材1Cの設置対象の一例として,図6(A)に示す支柱5Aの径R#1=114.3mm,図6(B)に示す支柱5Bの径R#2=89.1mm,図6(C)に示す支柱5Cの径R#3=60.5mmとする。なお,視線誘導標支持器材1Cの具体的な寸法や,図6に示す支柱の径の例は一例であり,本例に限定されるものではない。
【0062】
構造物取付部12において,曲げが生じる部位は屈曲が容易な凹凸構造であるため,視線誘導標支持器材1をあらゆる設置対象の被着体構造物5に取り付けることができる。
【0063】
具体的には,視線誘導標支持器材1Cにおいて,図6(A)〜図6(C)に示すように,例えば所定の径Rs=95mmとすることにより,ガードパイプ,ガードレール等の支柱で,支柱5Aの径R#1=114.3(mm),支柱5Bの径R#2=89.1(mm),支柱5Cの径R#3=60.5(mm)等の幅広い範囲の支柱の径に,構造物取付部12の円弧状に沿った底面が馴染んで貼着することができる。
【0064】
また,視線誘導標支持器材1Cは,図6(D)に示すように,例えばコンクリート高欄5Dの側壁等の壁面に適度な押し圧により構造物取付部12の円弧状に沿った底面が柔軟に屈曲して密着するため,容易に貼着することができる。なお,ガードレールのビーム部分等が設置対象の場合には,取付(貼着)面がほぼ平面であり,図6(D)に対応すると考えてよい。
【0065】
図6(A)乃至図6(D)では,比較のために視線誘導標2を貼付する前および視線誘導標支持器材1Cを貼着させる前の状態で示している。実際に設置される場合には,施工者等が構造物取付部12の上面に適度な力を加えることにより,構造物取付部12の底面が被着体構造物5の貼着面に沿って変形され,貼着されるため,構造物取付部12の底面は被着体構造物5の貼着面に密着する。
【0066】
以上説明したように,誘導標支持部11の配置方向Zに垂直方向の断面(図6に示す)において,構造物取付部12の上面の凹凸構造と共に,構造物取付部12の底面が下側に中心を有する所定の径Rsの円弧状に形成されるため,その底面が被着体構造物5の面に柔軟に馴染みやすく,幅広い範囲の支柱の径および平面であるコンクリート高欄の壁面等に視線誘導標支持器材1(1C)を取り付ける(貼着させる)ことができる。これにより,1つの種類の視線誘導標支持器材1(1C)で,幅広い設置対象をカバーすることができる。
【0067】
(例4)
図7は,視線誘導標支持器材1の取付の一例を示す図である。
【0068】
貼着設置の例において,視線誘導標支持器材1の構造物取付部12を底面とし,固定手段を用いて,その底面が被着体構造物5に当接して固定されるように貼着する。
【0069】
具体的には,視線誘導標支持器材1に視線誘導標2が貼付された状態で,施工者・保守者等が,図7の破線矢印の方向から,構造体取付部12の底面を例えば両面粘着テープ4等により視線誘導標支持器材1を被着体構造物5に貼着する。好ましくは脱落をさらに防止するために,その両面粘着テープ4の周辺領域に接着剤等が塗布される。なお,図7に示す例では,被着体構造物5を支柱とし,その支柱の径R#4としている。
【0070】
貼着設置において,前述したような視線誘導標支持器材1の構造物取付部12における優れた屈曲性により,構造物取付部12の底面が被着体構造物5の貼着面に柔軟に馴染むことができ,容易に視線誘導標支持器材1を被着体構造物5に貼着させることができる。これにより,施工者,保守者等が簡易な作業で,容易に設置(取付)を行うことができる。
【0071】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1を設置対象の被着体構造物5に簡易な作業で取り付けることができるため,設置作業にかかる労力を低減することができる。この結果,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0072】
なお,前述の貼着設置の場合において,貼着設置の固定手段は,例えば構造物取付部12の底面に塗布もしくは貼布等できる粘着剤または/および接着剤であることが好ましい。粘着剤を用いる場合は,両面粘着テープ4の形で設置することが多く,この場合には予め構造物取付部12の底面に両面粘着テープ4を貼着しておくか(離型紙などの剥離シートで覆っておく),現場で両面粘着テープ4を貼着することができる。
【0073】
粘着剤としては,例えばブチルゴム系の粘着剤,アクリル系の粘着剤等である。接着剤としては,エポキシ系,合成ゴム系,エポキシ変性シリコーン系接着剤等である。粘着剤または接着剤による密着力を向上させるため,構造物取付部12の底面に,ウレタン系,その他のプライマーで処理しておいても良い。プライマー処理を施しておくと,風圧,強風,雨圧などによる振動が少なくなり,熱による膨張,収縮に対しても強固な固着が図られる。また,粘着剤と接着剤とを組み合わせて用いても良い。
【0074】
(例5)
図8は,視線誘導標支持器材1の他の実施例の構造を示す図である。
【0075】
視線誘導標支持器材1Dは,誘導標支持部11における対向する2枚の板状部分である挟着部111の下部に,挟着部111の間隔U#1より大きい間隔U#3を有する空隙部113を備える。空隙部113は,図8に示すように,断面が丸状となるように空隙が形成される。なお,その他の形状や寸法の定義(図示しない)については,図3(B)と同様であるため,ここではこれらの説明を省くものとする。
【0076】
図8に示す視線誘導標支持器材1Dは,図3に示す実施例の視線誘導標支持器材1に比べて,空隙部113によりコの字状の部分の拡開がさらに容易となる。これにより,図3に示す実施例の視線誘導標支持器材1に比べて,より板厚が厚い視線誘導標2を挟着することができる。例えば図4に示す反射シート22のような反射材で,反射シート22の板厚が異なるタイプのものを貼付ける場合に,さらに厚い反射材等を用いることができる。
【0077】
(例6)
図9及び図10は,視線誘導標支持器材1を被着体構造物5へ設置した一例を示す図である。特に,図9(A)には,ガードパイプ52を支える支柱51に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示し,図9(B)には,ガードレール54の支柱53に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示す。また,図10(A)には,防護柵55を支える支柱に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示し,図10(B)には,コンクリート高欄56の壁に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示す。なお,視線誘導標支持器材1の長さは,図9及び図10に示す例においては,異なるものとする。
【0078】
図9(A)に示すように,視線誘導標2を貼付された視線誘導標支持器材1が,2本のガードパイプ52の間の支柱51に貼着される設置形態に対応できる。なお,車両のドライバー等から見て,視線誘導標2が支柱51やガードパイプ52に隠れる等の視認性の問題とならないような視線誘導標2の形状,大きさとされる。その他の図9,図10の例についても同様である。
【0079】
また,図9(B)に示すように,視線誘導標2を貼付された視線誘導標支持器材1が,ガードレール54を支える支柱53に貼着される設置形態に対応できる。
【0080】
同様に,図10(A)に示すように,視線誘導標2を貼付された視線誘導標支持器材1が,防護柵55の支柱に貼着される設置形態に対応できる。
【0081】
図10(B)に示すコンクリート高欄56の壁面561の設置形態では,視線誘導標支持器材1における構造物取付部12の貼着面は平面であるが,前述したように視線誘導標支持器材1の屈曲性を有する凹凸構造のため,適度な押し圧により構造物取付部12の円弧状に沿った底面が柔軟に屈曲し,コンクリート高欄56の壁面561に密着させて貼着させることができる。また,貼着後も引き剥がし力に対して耐久性がある。
【0082】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1は,設置対象として取り付けられるガードパイプ52の支柱51,ガードレール54の支柱53,防護柵55の支柱等の径によらず幅広く対応することができ,また,貼着面が平面に近いコンクリート高欄56の壁面561等にも対応することができる。
【0083】
(例7)
図11は,視線誘導標支持器材1を設置した他の一例を説明する図であり,図12は,視線誘導標支持器材1を設置した他の一例を示す図である。
【0084】
図11において,方向X#4へ進行する車両のための本線側道路と,本線側道路に合流する方向X#3から進行する車両のためのランプ側道路が合流する合流地点とを示し,当該地点付近における複数の車線分離標571の一群57が設置されている状況を示す。
【0085】
車線分離標571は,本線側道路を通行する車両のドライバー,及び,ランプ側道路を通行する車両のドライバーに対して,誤進入を防止や逆方向への進行(逆走)等を注意喚起するために用いられる円柱状の標識である。複数の車線分離標571は,図11に示すように,本線側道路とランプ側道路との境界付近に所定の間隔で設置され,一群57となるようにされる。
【0086】
このような車線分離標571は,例えば既設の器材として全国各地の箇所で設けられており,新設する場合においても採用されることが多い。例えば,既設の車線分離標571では,ポールの径Φ=80mm程度が一般的に用いられており,視線誘導性能を向上させるために,従来から円柱状のパイプに反射シートを巻く方法や,ガラスビーズを含める塗装を施した方法が用いられている。また,汚れたり,又は,老朽化等して,反射性能が著しく低下した車線分離標571には,新たに筒状のキャップを古い本体の上から被せて用いる方法もある。
【0087】
このような車線分離標571において,既設の車線分離標571の視線誘導性能を向上させるために,視線誘導標支持器材1を既設の車線分離標571に用いることができる。即ち,反射体としてドライバーに車両進入方向を認識させ易く,視線誘導性能が高いものを採用し,それを視線誘導標2(2H)として視線誘導標支持器材1(1H)に貼付して,車線分離標571に取り付けることができる。
【0088】
以下に,その具体例について,図12を用いて説明する。図12において,特に図12(A)には既設の車線分離標571に設置された視線誘導標セット10Hを示し,図12(B)には複数の設置された視線誘導標セット10Hの視線誘導効果を説明する図である。
【0089】
視線誘導標セット10Hは,視線誘導標支持器材1Hと視線誘導標2Hとからなる。視線誘導標セット10Hは,視線誘導標支持器材1Hに視線誘導標2Hが前述したように貼付されたものであり,図12(A)に示すように,この視線誘導標セット10Hが車線分離標571に設置される。
【0090】
例えば,ランプ側道路を進行している車両のドライバーに進行方向X#3をより強く認識させるために,図12(A)に示すように,車線分離標571の一群57に設置された視線誘導標セット10Hによって矢印(シェブロン等)のように視認させる。具体的には,図12(B)に示すように,複数の視線誘導標2Hに矢印のレイアウトを分割し,その各々が視線誘導標支持器材1Hに貼付され,視線誘導標セット10Hとされる。
この視線誘導標セット10Hが,図12(A)に示すように,各々の車線分離標571に方向X#3に対する角度が調整されて貼着される。
【0091】
なお,図11に示すような自動車専用道路の合流部において,ランプ側道路(方向X#3)より本線側道路(方向X#4)に流入する車両が,合流時に誤って転回(Uターン)し,逆走することによる事故を防ぐために車線分離標571が設置されている。この場合,ランプ側から本線側道路に進入する車両に対して,図12(A)に示すようなシェブロン等により本線側道路への進入方向を明示することが有効である。逆に,本線側道路からもこれが視認できる状態であると,ドライバーが混同する可能性がある。このため,本線側からシェブロン等が視認し難い視線誘導標セット10Hの角度の設置が望ましい。
【0092】
本発明の視線誘導標支持器材1(1H)によれば,視線誘導標2Hの長さに対応可能に合わせることができる。また,前述したように,誘導標支持部11の挟着部111に十分な強度を持って挟着できるように貼付でき,さらに,構造物取付部12の優れた屈曲性により,設置対象の車線分離標571の曲面に屈曲し,その貼着面に強固に貼着することができる。設置後においても,視線誘導標支持器材1の凹凸構造により,構造物取付部12に作用するせん断力,引き剥がし力等の応力も分散させることができる。
【0093】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1(1H)は,車線分離標571等の支柱に視線誘導機能効果を高めるための視線誘導標2Hを取り付けるために,容易に貼着することができる。これにより,視線誘導標支持器材1(1H)を用いた視線誘導標セット10Hは,既設及び新設の車線分離標571等に容易に設置できるため,施工コストを低減できる。
【0094】
また,既設の車線分離標571を新たな視線誘導標機能を備える新たな器材等に交換することなくできるため,新たな器材の設置にかかわる施工等が不要であり,既設の車線分離標571に容易に設置できるため,導入コストを低減できる。
【0095】
さらに,車両衝突・踏付け等の場合において,前述したように視線誘導標支持機材1Hが外力を受け流すため,破損等を回避することができ,保守コストを低減できる。
【0096】
なお,図11においては,ランプ側道路の進行方向X#3に対して視線誘導標セット10Hが車線分離標571に設置された例を示したが,本線側道路の進行方向X#4に対して設置されても良い。また,視線誘導標支持機材1が設置される対象は,車線分離標571に限定されず,点架タイプの視線誘導標,スノーポール等であっても良い。
【0097】
以上の例で説明したこれらの視線誘導標支持器材1は,わずかな種類の押し出し成形品から,対応する長さに切断,溶断する等の簡易な加工処理により製作することができる。これにより,製作者等は,器材数の種類を削減できるため,製作コスト,在庫コスト等を低減することができる。また,施工者,保守者等にとっても,器材数の種類が少なく,簡便な作業で設置できるため,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0098】
なお,景観上の観点においても,省スペースで,歩行者等の側からあまり目立たないように設置可能であり,景観等を考慮する場合には有効である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B,1C,1D 視線誘導標支持器材
2,2A,2B 視線誘導標
3 接着材
4 両面粘着テープ
5,5A,5B,5C,5D 被着体構造物
10H 視線誘導標セット
11 誘導標支持部
12 構造物取付部
21 プレート
22 反射シート
111 挟着部
112 接続支持部
113 空隙部
121 山部
122 谷部
【技術分野】
【0001】
本発明は,視線誘導標をコンクリートの壁面,ガードレールの支柱等に取り付けて支持するための視線誘導標支持器材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,ガードパイプ,ガードレール,電柱等の支柱に設置する視線誘導標の多くは,主に丸型の硬質樹脂(ポリカーボネイドまたはアクリル)のレンズと,同じく硬質樹脂のハウジング(ケース)で構成されている。設置については,バンドや支柱など金具を用いた取付が一般的である。一方,破損し難く,安価に簡単に取り付けられる視線誘導標として,反射シートを,ガードレール等の支柱に巻きつける方法が採用される場合もある。また,反射シート(又は反射材)をゴム基材の視線誘導標支持器材に貼り付ける視線誘導標もあるが,予め定められた形状の反射シートを視線誘導標支持器材に埋め込むタイプのものや,視線誘導標支持器材の形状も予め定められた形状とするものである。
【0003】
なお,視線誘導標及び視線誘導標取付金具において,取付金具の傾斜板部を傾斜面に取り付けて反射体を設け,本体の傾斜板部が傾斜面に沿わされ,反射体が設けられた支持体を二体の本体の挟持部間に挟着部を用いて挟着することで反射体を設けることができ,支柱上面が傾斜面であっても後付けが可能な手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−190269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,視線誘導標をガードパイプ,ガードレール,電柱等の支柱に設置するための視線誘導標支持器材は,設置対象の支柱等の柱状体の径に応じて貼着面を柱状物に適応させるために予め所定の径を有する形状に成形するか,または,専用の取付金具等を製作する必要があった。
【0006】
例えば,このような設置対象となる支柱等の径は,国や各地方自治体が管理する道路,その他事業者が管理する道路等により様々な径の規格があり,製作者は,それらの規格に応じて視線誘導標支持器材を製作している。さらに,視線誘導標に用いられる反射機材(反射材も含む)においても,様々な大きさ,形状が存在する。このような柱状体に取り付ける視線誘導標支持器材は金属製がほとんどであり,雪圧・衝撃等の外力により当該器材が曲がる。器材が曲がると自己復元性がないため,再帰反射性能が失われる。また,視線誘導標に用いられる反射機材が硬質プラスチックレンズの場合には,外力を受けて割れ・破損等が発生し易すく,割れ・破損等により再帰反射性能が失われる。
【0007】
一方,視線誘導標支持器材を樹脂等で一体成形で製作するものもあるが,反射材を視線誘導標支持器材に埋め込むタイプのものや,視線誘導標支持器材の形状も予め定められた形状とするものである。このような視線誘導標支持器材は,視線誘導標の形状,大きさ,あるいは,設置対象のガードパイプ,ガードレール,電柱等の支柱の形状に合わせて設計される。
【0008】
なお,破損し難く,安価に簡単に取り付けられる視線誘導標として,反射シートを,ガードレール等の支柱に巻きつける方法もあるが,ガードレールのビーム(横の梁)等に隠れて見にくくなるなどの視認性の問題を生ずる場合がある。また,歩行者側からもガードレール等の支柱に巻きつけられた状態が見えるため,歩行者が多い通り,観光地等の場合には,景観上の問題もある。
【0009】
前述した視線誘導標支持器材では,設置対象の支柱等の大きさ,反射材の形状又はその板厚の違いに対応するために,個別対応にて製作する必要があった。例えば,視線誘導標支持器材を樹脂等で一体成形で製作する場合には,金型を個別対応で製作する必要がある。その結果,製作者側にとって,それぞれに対応したものを製作するために,設計コスト,製造コスト等の製作コストを押し上げていた。一方,設置工事の施工者にとっても,反射材の様々な形状,設置対象などにより多くの種類の視線誘導標に対応しなければならず,施工コストを押し上げていた。また,保守管理する保守者等にとっても,保守品として複数の種類の在庫を持たなければならず,そのために保守コストを押し上げていた。
【0010】
本発明は,上記従来技術の課題に鑑みて,設置する支柱等の構造物の形状,反射材の形状等にも広い適応範囲があり,視線誘導標を貼着して設置する場合も,外力が加わっても破損し難く,かつ,視線誘導標が剥がれ難い視線誘導標支持器材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の視線誘導標支持器材は,視線誘導標を被着体構造物に取り付ける視線誘導標支持器材である。前記視線誘導標支持器材は,底面が前記被着体構造物に当接して固定される板状の構造物取付部と,構造物取付部の底面と反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がり,前記視線誘導標を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔で対向する2枚の板状部分を有する誘導標支持部とが,熱可塑性エラストマーを主体成形材料として形成され,かつ,構造物取付部の上面側で,誘導標支持部の配置方向に平行に山部と谷部とが交互に形成されるように構造物取付部の肉厚が変化する形状を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の視線誘導標支持器材によれば,貼付けられる視線誘導標の形状,大きさ等について幅を持たせて対応できる構造であると共に,構造物取付部の肉厚に変化をもたせ,その底面が被着体構造物の取付面に沿うように曲がりやすく形成されているため,設置対象として取り付けられるガードレール,電柱等の幅広い範囲の支柱の径およびコンクリート高欄等の壁面にも対応できる構造である。これにより,視線誘導標支持器材の製作種類数を減らすことができ,製作コスト,在庫コスト等を低減することができる。また,視線誘導標に用いる視線誘導標支持器材の種類を減らすことができるため,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0013】
また,本発明の視線誘導標支持器材によれば,設置対象のガードレール等の支柱等に簡易な作業で取り付けることができるため,設置作業にかかる労力を低減することができる。これにより,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0014】
また,本発明の視線誘導標支持器材によれば,主体材料が可撓性のある熱可塑性エラストマーから製作されるため,柔軟かつ復元性がある。これにより,視線誘導標がガードレール,電柱等の支柱に設置された場合に,車両の衝突等による外力を受け流すため,破損等を回避することができる。さらに,車両の衝突等による外力を受けて変形し,その外力が解放されると元の状態に自立的に戻るため,保守作業等の労力を低減することができる。
【0015】
以上のように,本発明の視線誘導標支持器材は,製作,施工及び保守のいずれの観点においても,各々のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の視線誘導標支持器材の実施例を示す図である。
【図2】視線誘導標支持器材の構造を示す図である。
【図3】視線誘導標支持器材の構造を説明する図である。
【図4】視線誘導標支持器材への反射材の貼付の一例を示す図である。
【図5】視線誘導標が貼付された視線誘導標支持器材の他の一例を示す図である。
【図6】視線誘導標支持器材の設置対象となる被着体構造物を説明する図である。
【図7】視線誘導標支持器材の取付の一例を示す図である。
【図8】視線誘導標支持器材の他の実施例の構造を示す図である。
【図9】視線誘導標支持器材を被着体構造物へ設置した一例を示す図である。
【図10】視線誘導標支持器材を被着体構造物へ設置した一例を示す図である。
【図11】視線誘導標支持器材を設置した他の一例を説明する図である。
【図12】視線誘導標支持器材を設置した他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の視線誘導標支持器材1の実施例を示す図であり,特に図1(A)には斜視図,図1(B)には側面図を示す。図2は,図1に示す視線誘導標支持器材1の構造を示す図であり,特に図2(A)には上面図,図2(B)には側面図,図2(C)には正面図を示す。図3は,図1に示す視線誘導標支持器材1の構造を説明する図であり,特に図3(A)には図2(B)に示す側面図を詳細に説明する図を示し,図3(B)には図2(B)に示す形状を説明する図を示す。以下,主に図1乃至図3を用いて視線誘導標支持器材1について説明する。
【0018】
視線誘導標支持器材1は,図1(A)及び図1(B)に示すように,視線誘導標2を被着体構造物5(図6に示す)に取り付ける器材である。取り付けられる視線誘導標2は,反射機材(デリニエータ)であり,道路を通行する車両等のドライバーの視線誘導のための標識である。被着体構造物5は,例えばガードパイプ,ガードレール,防護柵,電柱等の支柱,コンクリート高欄の壁面等である。ドライバーが車両進行方向の正対方向X#1又はX#2に向かって進行している場合に,ヘッドライト等の光が視線誘導標2に再帰反射することにより,ドライバーにガードレール等の存在を注意喚起することができる。
【0019】
視線誘導標支持器材1は,図2に示すように,誘導標支持部11と構造物取付部12とを備える。構造物取付部12に対する誘導標支持部11の配置方向Zは,図1(A)に示すように,方向X#1,X#2に垂直な方向である。
【0020】
誘導標支持部11は,さらに,視線誘導標2を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔(U#1)で対向する2枚の板状部分を有する挟着部111と,構造物取付部12の底面とその反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がる接続支持部112とを備える。
【0021】
誘導標支持部11の挟着部111は,図3(A)及び図3(B)に示すように,視線誘導標2を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔U#1で対向する2枚の板状部分を有するように形成される。挟着部111のコの字状部分の幅W#2は,所定の間隔U#1よりも大きいとされる。なお,図3(B)に示すように,挟着部111のコの字状部分の溝の深さU#2であり,挟着部111のコの字状部分の高さH#2である。
【0022】
後述するように,視線誘導標支持器材1の主体成形材料は,熱可塑性エラストマーであるため,挟着部111がコの字状部分により容易に拡開でき,所定の視線誘導標2の厚さ(板厚)の範囲において,柔軟に変形することができる。これにより,視線誘導標2を容易に挟着できると共に,接着材等を接着する方向に弾性力が加わるように作用するため,安定して貼着することができ,貼着後も視線誘導標2が剥がれ難い。また,コの字状部分の拡開容易であるため,視線誘導標2の板厚についても幅広い厚さについて挟着させることが可能である。
【0023】
接続支持部112は,誘導標支持部11と構造物取付部12とを接続する構造部分である。接続支持部112は,構造物取付部12の底面と反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がるように形成される。図3(B)に示すように,誘導標支持部11の逆T字状を形成する部分の高さH#1である。
【0024】
なお,本実施例では,所定の支持角度は90度前後である。この場合における所定の支持角度=90度前後は,車両進行方向の正対方向X#1及びX#2において,取り付けられた視線誘導標2が充分な反射性能を得るための角度である。図1(A)に示すように,反射材を有する視線誘導標2が正対方向X#1及びX#2に対向するように視線誘導標支持器材1に貼付けられる。本実施例の他に,一方向(X#1又はX#2)からの車両通行の用途には,一方向のみに反射材を貼付けるように用いても良い。また,このような用途の視線誘導標支持器材1においては,所定の支持角度を,予め60度〜90度の範囲に形成されるようにしても良い。
【0025】
接続支持部112は,図3(A)及び図3(B)に示すように,例えば誘導標支持部11の幅W#2よりも薄い肉厚となるように湾曲状に形成される。なお,以下では,図3(A)に示す接続支持部112における湾曲状の構造S#1をヒンジ構造と呼ぶ。
【0026】
視線誘導標支持器材1は,上記ヒンジ構造により,車両の接触・衝撃等の外力を受けて接続支持部112が屈曲した際に,接続支持部112の肉厚を誘導標支持部11の幅W#2と同程度になるように形成する場合に比べて,その外力をより分散させることができる。この結果,接続支持部112の肉厚が誘導標支持部11の幅W#2と同程度に形成する場合と比べて,視線誘導標支持器材1が屈曲しやすくなることにより他の部分の応力(引張り力)が小さくなるため,貼着設置された場合において構造物取付部12にかかる剥離力(引き剥がし力)も小さくなる。
【0027】
図2において,構造物取付部12の上面は,図2(A)に示す誘導標支持部11が突出する側の面であり,構造物取付部12の底面は,その反対側の面である。また,図1(A)に示す配置方向Zは,図2(C)に示す横方向に対応し,配置方向Zに垂直方向の断面は,図2(B)に示す断面に対応する。
【0028】
構造物取付部12は,底面が被着体構造物5に当接して固定される板状の構造を有する。構造物取付部12は,さらに,複数の山(凸)部121及び谷(凹)部122からなる凹凸構造を有する。この凹凸構造は,図2(B)に示すように,構造物取付部12の上面側で,誘導標支持部11の配置方向Zに平行に山部121と谷部122とが交互に形成されるように構造物取付部12の肉厚が変化する形状の構造である。なお,図2(B)に示す山部121(の中心)は,図2(A)の対応する位置に実線で示し,図2(B)に示す谷部122(の中心)は,図2(A)の対応する位置に一点鎖線で示す。
【0029】
図2に示す凹凸構造は,具体的には,図3(A)及び図3(B)に示すように,山部121の肉厚t#1は,谷部122の肉厚t#2よりも厚く形成される。また,構造物取付部12の幅W#1の両端側は,谷部122とされ,谷部122と山部121とが交互に中央側に向かって繰り返されるように配置され,かつ,中央側の接続支持部112の接続部分(根元部分)において,谷部122となるように配置されて,誘導標支持部11の配置方向Zに平行に形成される。
【0030】
構造物取付部12の上面には,図1乃至図3に示すように,波型形状の複数の山部121及び谷部122が設けられるが,実施態様は波型形状に限定されるものでなく,肉厚の凹凸型(肉厚部分と肉薄部分)を交互に配置すれば,波型形状でなくても良い。また,複数の山部121及び谷部122の数においても,図示される数に限定されるものではない。
【0031】
複数の山部121と谷部122との凹凸構造により,図3(A)に示すように,例えば複数の屈曲部分P#1〜P#6を有することができる。これにより,構造物取付部12の板状部分は,優れた屈曲性を有する。
【0032】
仮に,構造物取付部12が,図3(A)に示すような山部121と谷部122とを備えないとした場合には,貼着設置による構造物取付部12が屈曲した際の応力において,構造物取付部12と接続支持部112との接続部分(根元部分)の屈曲度合いが最も高く,当該部分に応力が集中する。一方,図3(A)に示す複数の山部121と谷部122とを備えることにより,構造物取付部12の屈曲部分P#1〜P#6の各々の部分において,支柱の径に沿って屈曲する。これにより,貼着設置による構造物取付部12が屈曲した際の応力を複数に分散させることができる。したがって,中央側の接続支持部112の根元部分にかかる負担が軽減される。
【0033】
また,このような複数の山部121と谷部122とによる優れた屈曲性により,後述するように,設置対象の被着体構造物5の貼着面が平面や,幅広い範囲の支柱径の曲面でも柔軟に屈曲し,設置対象の被着体構造物5の貼着面に貼着することができる。また,凹凸構造による屈曲部分P#1〜P#6により,構造物取付部12に作用するせん断力,引き剥がし力等の応力も分散させることができる。
【0034】
さらに,誘導標支持部11の配置方向Zに垂直方向の断面において,好ましくは,構造物取付部12の底面が,図3(B)に示すように,下側に中心を有する所定の径Rsの円弧状に形成される。これにより,さらに構造物取付部12の板状部分の屈曲性を良くすることができる。したがって,この優れた屈曲性により,設置対象の被着体構造物5の貼着面が支柱等の曲面である場合に,より幅広い範囲の支柱の径に対して,構造物取付部12の円弧状に沿った底面を馴染ませて貼着することができる。一方,設置対象の被着体構造物5の貼着面が平面である場合においても,適度な押し圧により構造物取付部12の円弧状に沿った底面が柔軟に屈曲して密着するため,容易に貼着することができる。なお,所定の径Rsは,設置対象の支柱の径等の適用範囲を考慮して定めれば良い。
【0035】
(主体成形材料)
視線誘導標支持器材1は,前述したような構造を有して,熱可塑性エラストマーを主体成形材料として,例えば押し出し成形により形成される。
【0036】
視線誘導標支持器材1は,主体成形材料として熱可塑性エラストマー(TPE:Thermoplastic Elastomers)が用いられ,上記構造を有するように押し出し成形等により形成される。例えば,熱可塑性エラストマーの主体成形材料は,オレフィン系TPE/スチレン系TPE/塩化ビニル系TPE/ウレタン系TPE/ポリエステル系TPE/ポリアミド系TPE等である。
【0037】
視線誘導標支持器材1によれば,前述したような構造を有するように,可撓性・弾性力のある熱可塑性ポリウレタンエラストマーで形成されるため,柔軟かつ復元性がある。このため,視線誘導標支持器材1は,挟着部111がコの字状部分により容易に拡開でき,所定の視線誘導標2の厚さ(板厚)の範囲において,柔軟に変形することができる。これにより,視線誘導標2を容易に挟着できると共に,接着材等を接着する方向に弾性力が加わるように作用するため,安定して貼着することができ,貼着後も剥がれ難い。なお,コの字状部分の拡開容易であるため,視線誘導標2の板厚についても幅広い範囲の厚さについて挟着させることが可能である。
【0038】
また,視線誘導標支持器材1が被着体構造物5に設置され,車両の衝突等による外力を受けた場合にも,その外力を受け流すため,脱落,破損等を回避することができる。また,視線誘導標支持器材1は,誘導標支持部11の視線誘導標2が貼付された平面に加わる圧力に対して,構造物取付部12と誘導標支持部11とのなす角度が支持角度より小となるように接続支持部112が屈曲し,加圧が解放されたときに,元の支持角度に復元する。この結果,補修・施工作業等の労力を低減することができる。
【0039】
以下,図面に従って具体例を説明する。
【0040】
(例1)
図4は,視線誘導標支持器材1への反射材の貼付の一例を示す図である。図4において,破線部M#1は,誘導標支持部11の挟着部111を拡大して示すものである。
【0041】
視線誘導標2を挟着部111に挟着させる場合に,挟着部111の左右1対の平板がコの字状に形成されているため,当該コの字状部分を容易に拡開でき,所定の厚さの範囲にある視線誘導標2を挟着させることができる。この際,図4に示すように,挟着部111に接着材3等を塗布して,視線誘導標2を容易に挟着できると共に,接着材3等を接着する方向に弾性力が加わるように作用するため,安定して貼着することができる。また,挟着部111の左右の平板により貼着されるため,貼着後も視線誘導標2が剥がれ難い。
【0042】
以上説明したように,挟着部111は,コの字状部分の拡開容易であるため,視線誘導標2の板厚についても幅広い範囲の厚さに対応して挟着させることができる。また,視線誘導標2を挟着させて,強固に貼着することができる。
【0043】
次に,図4に示す視線誘導標2の反射材の一例について説明する。
【0044】
視線誘導標支持器材1には,視線誘導標2の反射材(反射シート22)として,例えばマイクロプリズム層の背面側に金属蒸着層が配置した構造のマイクロプリズムシートが用いられる。マイクロプリズムシートは,薄く,柔軟性があり,再帰反射率が高い。一般に,ガラスビーズを利用したシートやプラスチックスレンズは,上記のマイクロプリズムシートに比して厚く,屈曲時に割れが発生し易く,また,視線誘導性が劣る。なお,複層構造に比して単層構造のマイクロプリズムシートは,屈曲時の割れが発生し難い。
【0045】
図4は,単層構造の反射シート22(マイクロプリズムシート)の一例を示す図であり,また,視線誘導標2の視線誘導標支持器材1(図1に示す)への貼付の説明図である。
【0046】
視線誘導標2は,例えば反射シート22を所望の大きさ,形状にしたものが用いられる。反射シート22は,視認性を有するように光が反射する再帰性反射材からなり,例えば単層構造のマイクロプリズムシートである。
【0047】
例えば,マイクロプリズムシートの代表的なものは,反射シート22としてマイクロプリズム層の片面に金属蒸着層を配置し,そのマイクロプリズム層の他面に着色層(又は非着色)と基材層との樹脂層を位置させたものである。この着色層は,マイクロプリズム層形成のためのキャスティングを厚めに行うことによりマイクロプリズム層と一体になっていてもよく,マイクロプリズム層とは別に樹脂の保護コーティング(又は樹脂フィルム)の貼着により設けてもよい。
【0048】
樹脂層はマイクロプリズム層の保護の役割を果たすと共に,この樹脂層を着色または非着色とすることにより金属蒸着層による色調を金色や銀色にすることができる。なお,マイクロプリズム層と金属蒸着層との間には密着性を確保するために蒸着下地層を設けてもよい。樹脂層の上にはさらに反射材の表面を保護する保護コーティング層が設けられる。
【0049】
反射シート22の厚みに特に限定はないが,例えば,通常は0.1〜2mm程度とする。反射シート22は,上記の範囲内で薄目の方が,屈曲性能,衝撃性能の点で好ましい。反射シート22として,粘着剤層を有する場合には,反射シート22の離型紙を剥離除去してから,図4に示すプレート21の外面に圧着されて,貼付される。プレート21は,例えばポリカーボネードである。プレート21の厚みに特に限定はないが,図4に示す例では,挟着部111の板状の間隔U#1と同程度かもしくはそれより薄い厚みのものが好ましい。
【0050】
このように反射シート22をプレート21の両面に予め貼付し,そのプレート21を視線誘導標2として,視線誘導標支持器材1における挟着部111の面に接着剤3(又は粘着剤)等で貼付する。プレート21と反射シート22とあわせた視線誘導標2の厚みが,挟着部111の板状の間隔U#1よりも大きい場合にも,挟着部111のコの字状部分の柔軟性により視線誘導標2を挟着させることができる。
【0051】
前述したように,視線誘導標支持器材1の誘導標支持部11に外部からの物理的な力が作用しても,ヒンジ構造を有するため,誘導標支持部11が柔軟に変形して,プレート21に貼付された反射シート22が破損するおそれがない。さらに,視線誘導標2に,単層構造のマイクロプリズムシートの反射シート22等を用いることにより,水の進入/割れ/破れ等に強く,衝撃にも強い。従って,視線誘導標2が貼付された視線誘導標支持器材1をガードレール等へ設置した場合に,例えば雪圧・車両接触時の衝撃による割れ,破損等を回避することができる。
【0052】
(例2)
図5は,視線誘導標支持器材1に視線誘導標2を貼付した他の一例を示す図である。
【0053】
図5(A)には視線誘導標2Aを貼付した長さL#1の視線誘導標支持器材1Aの正面図を示し,図5(B)には視線誘導標2Bを貼付した長さL#2の視線誘導標支持器材1Bの正面図を示す。なお,図5(A)及び図5(B)において,山部121と谷部122との凹凸構造等は図示省略して示す。また,視線誘導標2Aの長さL#1は,視線誘導標2Bの長さL#2より数倍程度長く,互いの高さH#1は同じとされる。
【0054】
図5(A)において,視線誘導標2Aの形状は台形とされ,台形の下底の長さがL#1と同程度であり,台形の上底の長さがL#1よりも短い。視線誘導標2Aには,当該寸法に応じた台形のプレート21の両面に台形の反射シート22が貼付される。
【0055】
また,図5(B)において,視線誘導標2Bの形状は長方形とされ,長方形の1辺はL#2と同程度であり,例えば他の1辺はL#2よりも長い。視線誘導標2Bには,当該寸法に応じた長方形のプレート21の両面に長方形の反射シート22が貼付される。
【0056】
視線誘導標支持器材1は,押し出し成形で製作できるため,図5(A)及び図5(B)に示すような視線誘導標2A及び2Bに応じて,視線誘導標支持器材1の長さL#1及びL#2に対応する視線誘導標支持器材1A及び1Bを押し出し成形品からの切断により製作できる。即ち,1つの種類の視線誘導標支持器材1の成形品から,切断,溶断する等の簡易な加工処理で様々な形状,大きさの視線誘導標2に対応する視線誘導標支持器材1A,1B等を製作することができる。
【0057】
なお,図5(A)及び図5(B)は一例であり,図5に示す視線誘導標2の形状,大きさ,視線誘導標支持器材1の長さ,高さ等が限定されるものではない。
【0058】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1(1A,1B)は,貼付けられる視線誘導標2(2A,2B)の形状,大きさについて幅を持たせて対応できる構造を有するため,器材の製作種類数を減らすことができ,製作コスト,在庫コスト等を大幅に低減することができる。
【0059】
(例3)
図6は,視線誘導標支持器材1(1C)の設置対象となる被着体構造物5を説明する図である。特に,図6(A)には被着体構造物5が支柱の径R#1である断面を示し,同様に,図6(B)には支柱の径R#2の断面を示し,図6(C)には支柱の径R#3の断面を示し,図6(D)には被着体構造物5がコンクリート構造物の側壁の断面を示す。なお,支柱の径は,R#1>R#2>R#3の大小順に大きさが異なるものとする。
【0060】
ここで,具体的には,一例として,図3(B)に示す視線誘導標支持器材1の形状において,誘導標支持部11の高さH#1=12.5mm,挟着部111の幅W#2=8mm,挟着部111の左右の板の間隔U#1=2mm,挟着部111のコの字状部分の溝の深さU#2=5mm,挟着部111のコの字状部分の高さH#2=6mmとする。また,構造物取付部12の幅W#1=40mm,山部121の肉厚t#1=3mm,谷部122の肉厚t#2=1.7mmとし,構造物取付部12の所定の径Rs=95mmとする。
【0061】
視線誘導標支持器材1Cの設置対象の一例として,図6(A)に示す支柱5Aの径R#1=114.3mm,図6(B)に示す支柱5Bの径R#2=89.1mm,図6(C)に示す支柱5Cの径R#3=60.5mmとする。なお,視線誘導標支持器材1Cの具体的な寸法や,図6に示す支柱の径の例は一例であり,本例に限定されるものではない。
【0062】
構造物取付部12において,曲げが生じる部位は屈曲が容易な凹凸構造であるため,視線誘導標支持器材1をあらゆる設置対象の被着体構造物5に取り付けることができる。
【0063】
具体的には,視線誘導標支持器材1Cにおいて,図6(A)〜図6(C)に示すように,例えば所定の径Rs=95mmとすることにより,ガードパイプ,ガードレール等の支柱で,支柱5Aの径R#1=114.3(mm),支柱5Bの径R#2=89.1(mm),支柱5Cの径R#3=60.5(mm)等の幅広い範囲の支柱の径に,構造物取付部12の円弧状に沿った底面が馴染んで貼着することができる。
【0064】
また,視線誘導標支持器材1Cは,図6(D)に示すように,例えばコンクリート高欄5Dの側壁等の壁面に適度な押し圧により構造物取付部12の円弧状に沿った底面が柔軟に屈曲して密着するため,容易に貼着することができる。なお,ガードレールのビーム部分等が設置対象の場合には,取付(貼着)面がほぼ平面であり,図6(D)に対応すると考えてよい。
【0065】
図6(A)乃至図6(D)では,比較のために視線誘導標2を貼付する前および視線誘導標支持器材1Cを貼着させる前の状態で示している。実際に設置される場合には,施工者等が構造物取付部12の上面に適度な力を加えることにより,構造物取付部12の底面が被着体構造物5の貼着面に沿って変形され,貼着されるため,構造物取付部12の底面は被着体構造物5の貼着面に密着する。
【0066】
以上説明したように,誘導標支持部11の配置方向Zに垂直方向の断面(図6に示す)において,構造物取付部12の上面の凹凸構造と共に,構造物取付部12の底面が下側に中心を有する所定の径Rsの円弧状に形成されるため,その底面が被着体構造物5の面に柔軟に馴染みやすく,幅広い範囲の支柱の径および平面であるコンクリート高欄の壁面等に視線誘導標支持器材1(1C)を取り付ける(貼着させる)ことができる。これにより,1つの種類の視線誘導標支持器材1(1C)で,幅広い設置対象をカバーすることができる。
【0067】
(例4)
図7は,視線誘導標支持器材1の取付の一例を示す図である。
【0068】
貼着設置の例において,視線誘導標支持器材1の構造物取付部12を底面とし,固定手段を用いて,その底面が被着体構造物5に当接して固定されるように貼着する。
【0069】
具体的には,視線誘導標支持器材1に視線誘導標2が貼付された状態で,施工者・保守者等が,図7の破線矢印の方向から,構造体取付部12の底面を例えば両面粘着テープ4等により視線誘導標支持器材1を被着体構造物5に貼着する。好ましくは脱落をさらに防止するために,その両面粘着テープ4の周辺領域に接着剤等が塗布される。なお,図7に示す例では,被着体構造物5を支柱とし,その支柱の径R#4としている。
【0070】
貼着設置において,前述したような視線誘導標支持器材1の構造物取付部12における優れた屈曲性により,構造物取付部12の底面が被着体構造物5の貼着面に柔軟に馴染むことができ,容易に視線誘導標支持器材1を被着体構造物5に貼着させることができる。これにより,施工者,保守者等が簡易な作業で,容易に設置(取付)を行うことができる。
【0071】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1を設置対象の被着体構造物5に簡易な作業で取り付けることができるため,設置作業にかかる労力を低減することができる。この結果,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0072】
なお,前述の貼着設置の場合において,貼着設置の固定手段は,例えば構造物取付部12の底面に塗布もしくは貼布等できる粘着剤または/および接着剤であることが好ましい。粘着剤を用いる場合は,両面粘着テープ4の形で設置することが多く,この場合には予め構造物取付部12の底面に両面粘着テープ4を貼着しておくか(離型紙などの剥離シートで覆っておく),現場で両面粘着テープ4を貼着することができる。
【0073】
粘着剤としては,例えばブチルゴム系の粘着剤,アクリル系の粘着剤等である。接着剤としては,エポキシ系,合成ゴム系,エポキシ変性シリコーン系接着剤等である。粘着剤または接着剤による密着力を向上させるため,構造物取付部12の底面に,ウレタン系,その他のプライマーで処理しておいても良い。プライマー処理を施しておくと,風圧,強風,雨圧などによる振動が少なくなり,熱による膨張,収縮に対しても強固な固着が図られる。また,粘着剤と接着剤とを組み合わせて用いても良い。
【0074】
(例5)
図8は,視線誘導標支持器材1の他の実施例の構造を示す図である。
【0075】
視線誘導標支持器材1Dは,誘導標支持部11における対向する2枚の板状部分である挟着部111の下部に,挟着部111の間隔U#1より大きい間隔U#3を有する空隙部113を備える。空隙部113は,図8に示すように,断面が丸状となるように空隙が形成される。なお,その他の形状や寸法の定義(図示しない)については,図3(B)と同様であるため,ここではこれらの説明を省くものとする。
【0076】
図8に示す視線誘導標支持器材1Dは,図3に示す実施例の視線誘導標支持器材1に比べて,空隙部113によりコの字状の部分の拡開がさらに容易となる。これにより,図3に示す実施例の視線誘導標支持器材1に比べて,より板厚が厚い視線誘導標2を挟着することができる。例えば図4に示す反射シート22のような反射材で,反射シート22の板厚が異なるタイプのものを貼付ける場合に,さらに厚い反射材等を用いることができる。
【0077】
(例6)
図9及び図10は,視線誘導標支持器材1を被着体構造物5へ設置した一例を示す図である。特に,図9(A)には,ガードパイプ52を支える支柱51に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示し,図9(B)には,ガードレール54の支柱53に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示す。また,図10(A)には,防護柵55を支える支柱に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示し,図10(B)には,コンクリート高欄56の壁に視線誘導標支持器材1を貼着した設置例を示す。なお,視線誘導標支持器材1の長さは,図9及び図10に示す例においては,異なるものとする。
【0078】
図9(A)に示すように,視線誘導標2を貼付された視線誘導標支持器材1が,2本のガードパイプ52の間の支柱51に貼着される設置形態に対応できる。なお,車両のドライバー等から見て,視線誘導標2が支柱51やガードパイプ52に隠れる等の視認性の問題とならないような視線誘導標2の形状,大きさとされる。その他の図9,図10の例についても同様である。
【0079】
また,図9(B)に示すように,視線誘導標2を貼付された視線誘導標支持器材1が,ガードレール54を支える支柱53に貼着される設置形態に対応できる。
【0080】
同様に,図10(A)に示すように,視線誘導標2を貼付された視線誘導標支持器材1が,防護柵55の支柱に貼着される設置形態に対応できる。
【0081】
図10(B)に示すコンクリート高欄56の壁面561の設置形態では,視線誘導標支持器材1における構造物取付部12の貼着面は平面であるが,前述したように視線誘導標支持器材1の屈曲性を有する凹凸構造のため,適度な押し圧により構造物取付部12の円弧状に沿った底面が柔軟に屈曲し,コンクリート高欄56の壁面561に密着させて貼着させることができる。また,貼着後も引き剥がし力に対して耐久性がある。
【0082】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1は,設置対象として取り付けられるガードパイプ52の支柱51,ガードレール54の支柱53,防護柵55の支柱等の径によらず幅広く対応することができ,また,貼着面が平面に近いコンクリート高欄56の壁面561等にも対応することができる。
【0083】
(例7)
図11は,視線誘導標支持器材1を設置した他の一例を説明する図であり,図12は,視線誘導標支持器材1を設置した他の一例を示す図である。
【0084】
図11において,方向X#4へ進行する車両のための本線側道路と,本線側道路に合流する方向X#3から進行する車両のためのランプ側道路が合流する合流地点とを示し,当該地点付近における複数の車線分離標571の一群57が設置されている状況を示す。
【0085】
車線分離標571は,本線側道路を通行する車両のドライバー,及び,ランプ側道路を通行する車両のドライバーに対して,誤進入を防止や逆方向への進行(逆走)等を注意喚起するために用いられる円柱状の標識である。複数の車線分離標571は,図11に示すように,本線側道路とランプ側道路との境界付近に所定の間隔で設置され,一群57となるようにされる。
【0086】
このような車線分離標571は,例えば既設の器材として全国各地の箇所で設けられており,新設する場合においても採用されることが多い。例えば,既設の車線分離標571では,ポールの径Φ=80mm程度が一般的に用いられており,視線誘導性能を向上させるために,従来から円柱状のパイプに反射シートを巻く方法や,ガラスビーズを含める塗装を施した方法が用いられている。また,汚れたり,又は,老朽化等して,反射性能が著しく低下した車線分離標571には,新たに筒状のキャップを古い本体の上から被せて用いる方法もある。
【0087】
このような車線分離標571において,既設の車線分離標571の視線誘導性能を向上させるために,視線誘導標支持器材1を既設の車線分離標571に用いることができる。即ち,反射体としてドライバーに車両進入方向を認識させ易く,視線誘導性能が高いものを採用し,それを視線誘導標2(2H)として視線誘導標支持器材1(1H)に貼付して,車線分離標571に取り付けることができる。
【0088】
以下に,その具体例について,図12を用いて説明する。図12において,特に図12(A)には既設の車線分離標571に設置された視線誘導標セット10Hを示し,図12(B)には複数の設置された視線誘導標セット10Hの視線誘導効果を説明する図である。
【0089】
視線誘導標セット10Hは,視線誘導標支持器材1Hと視線誘導標2Hとからなる。視線誘導標セット10Hは,視線誘導標支持器材1Hに視線誘導標2Hが前述したように貼付されたものであり,図12(A)に示すように,この視線誘導標セット10Hが車線分離標571に設置される。
【0090】
例えば,ランプ側道路を進行している車両のドライバーに進行方向X#3をより強く認識させるために,図12(A)に示すように,車線分離標571の一群57に設置された視線誘導標セット10Hによって矢印(シェブロン等)のように視認させる。具体的には,図12(B)に示すように,複数の視線誘導標2Hに矢印のレイアウトを分割し,その各々が視線誘導標支持器材1Hに貼付され,視線誘導標セット10Hとされる。
この視線誘導標セット10Hが,図12(A)に示すように,各々の車線分離標571に方向X#3に対する角度が調整されて貼着される。
【0091】
なお,図11に示すような自動車専用道路の合流部において,ランプ側道路(方向X#3)より本線側道路(方向X#4)に流入する車両が,合流時に誤って転回(Uターン)し,逆走することによる事故を防ぐために車線分離標571が設置されている。この場合,ランプ側から本線側道路に進入する車両に対して,図12(A)に示すようなシェブロン等により本線側道路への進入方向を明示することが有効である。逆に,本線側道路からもこれが視認できる状態であると,ドライバーが混同する可能性がある。このため,本線側からシェブロン等が視認し難い視線誘導標セット10Hの角度の設置が望ましい。
【0092】
本発明の視線誘導標支持器材1(1H)によれば,視線誘導標2Hの長さに対応可能に合わせることができる。また,前述したように,誘導標支持部11の挟着部111に十分な強度を持って挟着できるように貼付でき,さらに,構造物取付部12の優れた屈曲性により,設置対象の車線分離標571の曲面に屈曲し,その貼着面に強固に貼着することができる。設置後においても,視線誘導標支持器材1の凹凸構造により,構造物取付部12に作用するせん断力,引き剥がし力等の応力も分散させることができる。
【0093】
以上説明したように,視線誘導標支持器材1(1H)は,車線分離標571等の支柱に視線誘導機能効果を高めるための視線誘導標2Hを取り付けるために,容易に貼着することができる。これにより,視線誘導標支持器材1(1H)を用いた視線誘導標セット10Hは,既設及び新設の車線分離標571等に容易に設置できるため,施工コストを低減できる。
【0094】
また,既設の車線分離標571を新たな視線誘導標機能を備える新たな器材等に交換することなくできるため,新たな器材の設置にかかわる施工等が不要であり,既設の車線分離標571に容易に設置できるため,導入コストを低減できる。
【0095】
さらに,車両衝突・踏付け等の場合において,前述したように視線誘導標支持機材1Hが外力を受け流すため,破損等を回避することができ,保守コストを低減できる。
【0096】
なお,図11においては,ランプ側道路の進行方向X#3に対して視線誘導標セット10Hが車線分離標571に設置された例を示したが,本線側道路の進行方向X#4に対して設置されても良い。また,視線誘導標支持機材1が設置される対象は,車線分離標571に限定されず,点架タイプの視線誘導標,スノーポール等であっても良い。
【0097】
以上の例で説明したこれらの視線誘導標支持器材1は,わずかな種類の押し出し成形品から,対応する長さに切断,溶断する等の簡易な加工処理により製作することができる。これにより,製作者等は,器材数の種類を削減できるため,製作コスト,在庫コスト等を低減することができる。また,施工者,保守者等にとっても,器材数の種類が少なく,簡便な作業で設置できるため,施工コスト,保守コスト等を低減することができる。
【0098】
なお,景観上の観点においても,省スペースで,歩行者等の側からあまり目立たないように設置可能であり,景観等を考慮する場合には有効である。
【符号の説明】
【0099】
1,1A,1B,1C,1D 視線誘導標支持器材
2,2A,2B 視線誘導標
3 接着材
4 両面粘着テープ
5,5A,5B,5C,5D 被着体構造物
10H 視線誘導標セット
11 誘導標支持部
12 構造物取付部
21 プレート
22 反射シート
111 挟着部
112 接続支持部
113 空隙部
121 山部
122 谷部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視線誘導標を被着体構造物に取り付ける視線誘導標支持器材であって,
底面が前記被着体構造物に当接して固定される板状の構造物取付部と,
前記構造物取付部の底面と反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がり,前記視線誘導標を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔で対向する2枚の板状部分を有する誘導標支持部とが,
熱可塑性エラストマーを主体成形材料として形成され,
かつ,前記構造物取付部の上面側で,前記誘導標支持部の配置方向に平行に山部と谷部とが交互に形成されるように前記構造物取付部の肉厚が変化する形状を有する
ことを特徴とする視線誘導標支持器材。
【請求項2】
前記誘導標支持部の配置方向に垂直方向の断面において,前記構造物取付部の底面が,下側に中心を有する所定の径の円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の視線誘導標支持器材。
【請求項3】
前記誘導標支持部における対向する2枚の板状部分の下部に,前記2枚の板状部分の間隔より大きい空隙部を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の視線誘導標支持器材。
【請求項1】
視線誘導標を被着体構造物に取り付ける視線誘導標支持器材であって,
底面が前記被着体構造物に当接して固定される板状の構造物取付部と,
前記構造物取付部の底面と反対側となる上面の中央の部分から所定の支持角度で逆T字状に立ち上がり,前記視線誘導標を上側から差し挟んで挟着させる所定の間隔で対向する2枚の板状部分を有する誘導標支持部とが,
熱可塑性エラストマーを主体成形材料として形成され,
かつ,前記構造物取付部の上面側で,前記誘導標支持部の配置方向に平行に山部と谷部とが交互に形成されるように前記構造物取付部の肉厚が変化する形状を有する
ことを特徴とする視線誘導標支持器材。
【請求項2】
前記誘導標支持部の配置方向に垂直方向の断面において,前記構造物取付部の底面が,下側に中心を有する所定の径の円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の視線誘導標支持器材。
【請求項3】
前記誘導標支持部における対向する2枚の板状部分の下部に,前記2枚の板状部分の間隔より大きい空隙部を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の視線誘導標支持器材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−202426(P2011−202426A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71340(P2010−71340)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(599043781)エヌティーダブリュー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(599043781)エヌティーダブリュー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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