説明

親水化された微多孔膜の製造方法

【課題】高分子微多孔膜の表面の平面方向に均一な親水化膜を得る方法を提供する。
【解決手段】高分子微多孔膜1を親水化処理する工程において、高分子微多孔膜と親水化剤を包含し得るスペーサー2を積層する工程、および該スペーサー中に親水化剤を包含させ、親水性を付与する工程を含むことにより、過剰な反応溶液を除き、膜表面の過剰な親水化を制御できる。また、膜間の反応溶液が一定量なため、平面方向に均一な親水化膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微多孔膜に親水性を付与させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶液中から微小な粒子を取り除ける高分子微多孔膜(以下、微多孔膜、また単に膜ともいう)の需要が高まっている。主な用途のひとつとして、血漿分画製剤や、バイオ医薬品等の製剤を人体に投与する際に、製剤中に含まれている可能性のあるウイルス、および病原性タンパク質等の病原体を除去する用途が考えられる。一般的に、このような用途に用いられる微多孔膜には、親水性高分子からなる微多孔膜もしくは、疎水性高分子からなる微多孔膜を親水化処理したものが用いられる。
【0003】
親水性高分子からなる微多孔膜は、水中で含水して膨張するため、高い濾過圧に耐えうるだけの物理的強度をもたないといった欠点がある。一方、物理的強度に優れた疎水性樹脂からなる微多孔膜は、タンパク質の吸着による閉塞を防ぐために、親水化処理を施す必要がある。
【0004】
疎水性樹脂からなる微多孔膜の親水化処理のひとつとして、電子線やγ線等の放射線を照射することによって、微多孔膜の細孔表面に親水性のアクリル系モノマーやメタクリル系モノマー等をグラフトする、放射線グラフト法が広く知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、グラフトが不足していると、タンパク質の吸着による細孔の閉塞の原因となり、過剰なグラフトは、濾過抵抗を増大させ、濾過量の低下を引き起こすため、グラフト反応の制御は非常に重要である。
【0005】
このような固体表面上からの重合反応の制御には、系内全体のモノマーの物質量よりむしろモノマー溶液の濃度を制御することが有効であることは、一般化学分野において周知のことである。
しかしながら、細孔内の親水化に十分有効なモノマー濃度にした場合、系内には大過剰のモノマーが存在することになり、特に膜表面において過剰なグラフトが起きやすい状態である。過剰なグラフトは、濾過抵抗を増大させ、濾過量の低下に繋がるため、膜表面の過剰なグラフトを防ぐために、過剰なモノマー溶液を取り除く必要がある。
例えば反応溶液に浸漬後、軟質ゴムワイパー、もしくはニップロール等に通す工程を連続工程中に組み込むことで、任意の過剰な反応溶液を膜の表面から除去し、膜表面の細孔が親水性被覆で覆われないようにしている(例えば、特許文献2)。
【0006】
しかしながら、放射線グラフト法では、放射線により活性化した反応開始部位の失活を防ぐため、不活性ガス雰囲気下で行うことが必須であり、前述の方法では、電子線もしくは放射線を照射する工程、反応溶液に膜を浸漬する工程、反応溶液を拭き取るもしくは膜を巻き取る工程の全てを不活性ガス雰囲気下で行うための連続設備が必要であり、大型設備の導入は避けられない。
また同時に、膜に反応溶液を含ませた後に取り除く方法では、膜の表面に残る液量の制御は難しく、溶液の粘性や表面張力に依存するところが大きい。さらには、膜表面に均一に溶液を残すような拭き取り、巻き取りの調整も容易ではなく、得られる親水性膜の平面方向の均一性にも問題が残る。特に巻き取る際の張力により、膜表面に残る反応溶液の量は変化するが、張力を一定に巻き取っても、巻き始め部分ほど巻き終わり部分に比べ、締め付けられる傾向は避けられないため、これが均一性低下の原因になる。
【特許文献1】特開平11−106552号公報
【特許文献2】特表平4−505579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高分子微多孔膜の表面の平面方向に均一な親水化膜を制御可能な方法で得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の通りである。
(1)(I)高分子微多孔膜と親水化剤を包含し得るスペーサーとを積層する工程、および(II)該スペーサー中に親水化剤を包含させ、高分子微多孔膜に親水性を付与する工程、を含むことを特徴とする、親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
(2)該スペーサーが、開口率20〜95%、1μm〜1mmの厚みで、且つ、透水平均孔径が1μm〜10mmであることを特徴とする上記(1)記載の親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
(3)該親水化剤が一個以上のビニル基を有する親水性モノマーであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高分子微多孔膜の製造方法。
(4)親水性を付与する工程が放射線グラフト反応であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高分子微多孔膜の製造方法。
(5)該高分子微多孔膜の材質が、ポリオレフィン、またはポリフッ化ビニリデンである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
(6)該高分子微多孔膜が、バブルポイント法で求めた最大孔径が10〜120nmであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法によって得られた親水化された高分子微多孔膜。
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法によって得られた親水化された高分子微多孔膜を用いることを特徴とする生理活性物質を含有する液体中のウイルスの除去方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により、高分子微多孔膜の表面の平面方向に均一な親水性の制御された親水化膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いる高分子微多孔膜を構成する高分子は、通常の圧縮、押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用する高分子であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル1−ペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46等のポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、エチレン/テトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、及びポリアセタール等が使用できる。
これらの中で、ポリオレフィン及びポリハロゲン化ビニリデンが好ましく、特にポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリフッ化ビニリデンは、グラフト反応性が良く好ましい。
【0011】
本発明に用いる微多孔膜の形態は、平膜形状であり、平膜形状とは、シート状、フィルム状および平板状などの形状を指し、エンボス加工などの模様を付与したり、不織布や織布などを積層することも可能である。
【0012】
本発明に用いる微多孔膜の膜厚は、好ましくは1μm〜10mm、さらに好ましくは5μm〜5mm、そして最も好ましくは10μm〜1mmである。微粒子除去の確実性を維持する点から、膜厚が1μm以上であることが好ましく、また微多孔膜の強度を得、透過性能を向上させる点から10mm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明に用いる高分子微多孔膜の代表的な製造方法について説明する。本発明に用いる高分子微多孔膜の代表的な製造方法は、下記(a)〜(c)の3工程からなる。
(a)上記の高分子材料および可塑剤を含む組成物を該高分子の結晶融点以上に加熱して均一溶解する工程、
(b)溶融した組成物を膜状に成型する工程、
(c)膜中に含有する可塑剤を膜中から除去する工程。
【0014】
以下により具体的に高分子微多孔膜の製造方法を説明する。
上記工程において用いる可塑剤は、膜素材として用いる高分子と混合して加熱した際、高分子の結晶融点以上の温度で均一溶融し得るものであって、その均一溶融物を冷却した際に、常温以上の温度で熱誘起型相分離点を有するものを用いる。
高分子材料と可塑剤を均一に溶解させる方法は、特に限定されないが、例えばスクリュー式押出機等の連続式樹脂混錬装置に投入して均一溶解することができる(工程(a))。
【0015】
そして、均一に溶融された組成物は、引き続き成型される。具体的には、加熱・混錬しながら均一に溶融させた後、押出用金型(ダイス)から押出され、巻き取り機で巻き取られる。この場合、ダイスから押し出されたシート状物は、通常、キャスト装置と呼ばれる冷却及び圧延可能な装置のロール部で、溶融押出しシートの冷却を行いながら、適度な巻き取り張力となるように巻き取り速度を調整した巻き取り機で巻き取られる(工程(b))。
【0016】
以上の方法によって得られたシート状成型物は、膜中に可塑剤を含有するため、引き続き、可塑剤を膜中から除去する必要がある。可塑剤を抽出するための抽出溶剤としては、膜素材として用いる高分子に対して貧溶媒であり、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点が膜素材として用いる高分子の融点より低いことが望ましい。可塑剤を抽出する場合、室温より高い温度で浸漬処理をするとより効果的に抽出を行うことができる(工程(c))。以上の工程により、高分子微多孔膜が得られる。可塑剤と抽出溶剤の組み合わせ、膜の成型の詳細およびパラメーターは当該分野で周知である。
【0017】
本発明の親水化方法に用いる高分子微多孔膜の最大孔径は、0.1nm〜500nmが好ましい。親水層により、細孔が塞がるのを防ぎ、濾過膜としての機能を維持するという点から0.1nm以上であることが好ましく、膜表面のグラフト率を制御する利点が得られるという点で500nm以下が好ましい。また、高分子微多孔膜の孔径は、その用途によっても異なるが、生理活性物質を含有する液体中からウイルスを除去する目的で使用する場合には、最大孔径10〜120nmが好ましく、さらに好ましくは20〜70nmである。グロブリン等の生理活性物質の透過性および濾過速度を維持する点から、最大孔径が10nm以上であることが好ましく、また、重篤な感染症を引き起こすウイルスの除去性能を維持する点から120nm以下であることが好ましい。
【0018】
ここで言う最大孔径は、ASTM F316−86に準拠したバブルポイント法で測定した値であり、バブルポイント法とは、膜を液体で満たした状態で気体の透過挙動を測定し、膜にある最も大きな孔の大きさを評価する方法である。具体的には、フィルターホルダーにセットした評価膜を試験液に浸漬して湿潤し、フィルターの片側を空気でゆっくりと加圧していく。フィルターのガス透過側に設置した流量計が安定した流れの泡の上昇を検知する最低の圧力をバブルポイントとして記録し、後で述べる式を用いて最大孔径として換算した(段落[0037]参照)。
【0019】
本発明に用いる高分子微多孔膜の気孔率は、20〜90%であり、好ましくは25〜85%、そしてより好ましくは30〜70%である。濾過速度を速くする点から、気孔率が20%以上であることが好ましく、また、微粒子除去の確実性を維持し、かつ微多孔膜の強度も維持する点から90%以下であることが好ましい。ここで言う気孔率とは、以下の式で定義される値である。
気孔率(%)=(1−重量/(樹脂の密度×体積))×100
【0020】
上記の方法にて得られた高分子微多孔膜は疎水性であるため、タンパク質の吸着を嫌う医用分離膜や、水溶液系電池セパレータ、水処理膜等に用いる場合、親水性を付与する必要がある。
親水性を付与する方法としては、例えば、化学反応により表面改質する方法、界面活性剤を含む溶液に浸漬した後、乾燥して膜中に界面活性剤を残留させる方法、膜に物理的または化学的処理を施して膜を活性化し、表面に親水性モノマーをグラフトする方法、親水性高分子で被覆する方法等が挙げられる。中でも、親水性の永続性や親水性添加物の漏洩の可能性を考慮すると、グラフト法が好ましい。
グラフト法とは、電離性放射線や化学反応等の手段によって高分子微多孔膜にラジカルを生成させ、そのラジカルを開始点として、膜に親水性モノマーをグラフト重合させる反応である。本発明において、高分子微多孔膜にラジカルを生成させるためにはいかなる手段も採用しうるが、膜全体に均一なラジカルを生成させるためには、電離性放射線の照射による放射線グラフト法が好ましい。
【0021】
電離性放射線の種類としては、γ線、電子線、β線、および中性子線等が利用できるが、工業規模での実施には電子線またはγ線が最も好ましい。電離性放射線はコバルト60、ストロンチウム90、およびセシウム137などの放射性同位体から、またはX線撮影装置、電子線加速器および紫外線照射装置等により得られる。電離性放射線の照射線量は、1kGyから1000kGyまでが好ましい。ラジカルを均一に生成する点から1kGy以上であることが好ましく、また膜強度を維持する点から1000kGy以下であることが好ましい。 放射線グラフト法は一般に膜にラジカルを生成した後、ついでそれを反応性化合物と接触させる前照射法と、膜を反応性化合物と接触させた状態で膜にラジカルを生成させる同時照射法に大別される。
本発明においては、いずれの方法も適用しうるが、オリゴマーの生成が少ない前照射法が最も好ましい。電離性放射線照射およびグラフト反応は酸素の不在下で、例えば不活性ガス雰囲気下で行うべきである。酸素は放射線により形成されたラジカルと反応し、これにより目的とするポリマー結合に利用し得る部位の数が減少するからである。また、照射時の温度が0℃を超えると、膜中に生成したラジカルが急速に失活するため、照射時の温度は、0℃以下であることが必要である。好ましくは−30℃〜−100℃である。
【0022】
ラジカルを生成した高分子微多孔膜と、親水性モノマーとの接触は、気相でも液相でも達成されるが、本発明においては、グラフト反応が均一にすすむ液相で接触させる方法が好ましい方法である。グラフト反応をさらに均一に進めるために、親水性モノマーおよび架橋剤はあらかじめ溶媒中に溶解させてから、高分子微多孔膜と接触させることが望ましい。 親水性モノマーおよび架橋剤を溶解する溶媒としては、ラジカルを失活させず均一溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒として、例えば、エタノールやイソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類、水、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
放射線グラフト重合は、反応溶液中のモノマー濃度が低ければ、グラフト率の低い膜が得られ、モノマー濃度が高ければ、グラフト率の高い膜が得られる。親水性モノマーと架橋剤を合わせた濃度で0.3容量%〜50容量%の反応溶液で反応を行うことが望ましい。
十分な親水性を得るという点から、0.3容量%以上であることが好ましく、また細孔が塞がるのを防ぎ、濾過膜としての機能を維持するという点から50容量%以下であることが好ましい。
グラフト重合時の反応温度は、一般的に20℃から80℃までで行われるが、特に限定されるものではない。
【0024】
本発明の親水化剤として用いられる親水性モノマーは、1個以上のビニル基を有する親水性モノマーであれば特に限定されるものではない。
本発明における親水性モノマーとは、大気圧下で、25℃の純水に1容量%混合させた時に均一溶解するモノマーである。例えば、ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシル基を有する、もしくはその前駆体となる官能基を有するビニルモノマー、メタクリル酸トリエチルアンモニウムエチル等のアニオン交換基を有するビニルモノマー、メタクリル酸スルホプロピル等のカチオン交換基を有するビニルモノマー、およびビニルピロリドン等のアミド結合を有するビニルモノマー等が挙げられる。中でも、1個以上のヒドロキシル基、あるいはその前駆体となる官能基を有するビニルモノマーが、タンパク質溶液の透過性が最も高いため、好ましい。具体的には、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸と多価アルコールのエステル類、アリルアルコール等の不飽和結合を有するアルコール類、および酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のエノールエステル類等が挙げられる。
【0025】
また、親水層に強度をもたせるために架橋剤を用いても良い。その場合、使用する架橋剤は、上記親水性モノマーと共重合しうる2個以上のビニル基を有する架橋剤であり、親水性モノマーと同時に膜に接触させることにより導入する。本発明において使用する架橋剤は、数平均分子量200以上、2000以下であることが好ましく、より好ましくは数平均分子量250以上、1000以下、最も好ましくは数平均分子量300以上、600以下である。架橋剤の数平均分子量が200以上、2000以下であると、タンパク質溶液の高い濾過速度が得られ好ましい。
本発明においては、2個以上のビニル基をする架橋剤であれば、いかなる架橋剤も使用できるが、親水性の架橋剤が好ましい。ここで親水性の架橋剤とは、大気圧下で、25℃の純水に1容量%混合させた時に均一溶解する架橋剤である。
本発明で用いられる架橋剤の具体例としては、芳香族系ではジビニルベンゼン誘導体、脂肪族系ではエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のようなメタクリル酸系の架橋剤、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等のようなアクリル酸系の架橋剤等が挙げられる。また、トリメチロールプロパントリメタクリレートのような3個の反応性基を有する架橋剤も用いることが出来る。また、架橋剤は2種類以上の混合物も用いることが出来る。本発明において、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、またはそれらの混合物を用いることが、タンパク質透過性と微粒子除去性能の観点から最も好ましい。
【0026】
本発明の親水化反応には、親水化剤の導入路かつ、余剰な溶液を抑制するのに最適な空間を与えるためにスペーサーを用いる。このためスペーサーは、一定の厚みをもち、厚み方向と厚み方向に対して垂直方向の両方に溶液透過性が高いことが好ましい。例えば、メッシュ状もしくはスポンジ状のものが挙げられる。膜の上下にスペーサーを重ね合わせ、その上から、それらが過剰な反応溶液と接触するのを防ぐため、親水化剤を通さないシートを置く。親水化剤を通さないシートとは、具体的には、アルミ箔、樹脂製フイルム等が挙げられる。また、膜は1段でもよいし(例えば図1)、生産性を高めるために、膜を多段に積層し、膜と膜の間にスペーサーを挟んだ形状にしてもよい(例えば図2)。また、シート、スペーサー、膜、スペーサーの順に重ね合わせたものを1ユニットとして、それを積層した形状も考えられる(例えば図3)。最も好ましくは長尺の膜と長尺のスペーサーを重ね合わせ、円筒状の芯に巻きつけ、その最外層に親水化剤を通さないシートを1周巻いたロール形状が、生産性が高く好ましい(例えば図4)。親水化剤は、ロールの両端側からスペーサーが作り出した空間を通って膜の細孔内部まで供給される。
【0027】
膜に親水化剤を供給する際、溶液を細孔内まで速やかに行き渡らせるため、スペーサーは、厚み方向、および厚み方向に対して垂直方向の両方に溶液透過性が高いものが好ましい。具体的には、透水平均孔径が1μm〜10mmであることが好ましい。透過性を向上し、細孔の場所によって、溶液の到達の差による親水化の均一性の低下を防ぐ点から、透水平均孔径が1μm以上であることが好ましい。また、膜と膜の間を一定に保ち、親水化の均一性を維持する点から、透水平均孔径が10mm以下であることが好ましい。ここで言う透水平均孔径とは、多孔膜の孔に流体が流れるときの個々の流路を円筒管と考え、円筒管内で流体が定常流をなして流れているときに成り立つHagen−Poiseuilleの法則をもとに、開口率と後に述べる純水透水量から以下の式で定義される値である。
透水平均孔径(nm)=
2×√{(純水透水量×スペーサー厚み×純水の粘度)/(膜間差圧×気孔率)}
【0028】
本発明で用いるスペーサーの厚みは、1μm〜1mmであり、反応制御の面から、10〜500μmがより好ましい。モノマー溶液の量を増やし、グラフとの不足を抑えるという点から、スペーサー厚みが1μm以上であることが好ましく、また、膜と膜の間のモノマー溶液の量が過剰になることを防ぐ点から、1mm以下であることが好ましい。
【0029】
本発明に用いるスペーサーの開口率は、20〜95%であり、好ましくは25〜90%、そしてより好ましくは30〜85%である。溶液の量を保持する点から開口率が20%以上であることが好ましく、また、スペーサーの強度を十分に維持し、膜と膜の間に適度な空間を与えるという点から、95%以下であることが好ましい。ここで言う開口率とは、以下の式で定義される値である。
開口率(%)=(1−重量/(体積×スペーサー素材の密度))×100
【0030】
本発明に用いるスペーサーの材質は、電離性放射線を遮蔽することがなく、また反応溶液によって侵されない、いかなる材質も用いられるが、入手のし易さから、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ナイロン製、ポリエステル製、およびテフロン(登録商標)製等が挙げられる。本発明では、スペーサー自体も同時に親水化対象となりえるが、スペーサーの表面積は、微多孔膜と比較して小さいため、モノマー消費等の影響は小さい。また、それらを考慮してモノマー濃度を最適化してもよい。さらには、ナイロン製、ポリエステル製のスペーサーは、放射線グラフト反応性が低く、その影響を受け難いことからより好ましい。
【0031】
スペーサーを使った放射線グラフト反応の代表的な例を説明する。前述の溶融成膜法により得られた膜に、幅が同じかそれ以上のスペーサーを同じ長さにして重ね合わせ、円筒状の芯に巻きつけ、その最外層に親水化剤を通さないシートを1周巻く。スペーサーを挟んで巻いた場合、巻き取る際の張力に変動があっても、膜間の反応溶液の量は一定になる。したがって、巻き始め部分から巻き終わり部分まで、均一に親水化することができる。膜を巻いたロールを窒素雰囲気下、温度条件は0℃以下で電子線またはγ線を照射する。
次いで密閉可能な反応容器に充填し、反応容器内を減圧する。減圧は、後にグラフト反応溶液を容器内に導入する際、膜の細孔内部まで溶液を行き渡らせるためである。また反応容器は、密閉可能であり、かつ不活性ガス雰囲気下を作り出すための減圧に耐え得る設計であれば、一般によく知られたものでよい。
【0032】
続いて、親水性モノマーと架橋剤を含む溶液を調製し、溶液内の溶存酸素を取り除くため、窒素バブリングを行い、これを、脱気した反応容器に吸引導入し、反応させる。反応終了後、モノマーおよび遊離のポリマーを洗浄液で洗浄し、膜を乾燥させたのち親水性微多孔膜を得る。
【0033】
従来技術では、電子線やγ線等の照射から、反応終了までの工程が連続工程であったため、それら全てを不活性ガス雰囲気下で実施できる設備が必要であったが、本発明においては、膜とスペーサーを巻きつける工程は、大気下で行なえ、その後はグラフト反応終了まで膜を広げたり、再び巻き取ったりする必要がないため、不活性ガス雰囲気下での連続工程設備を必要としない。
【0034】
本発明の方法により得られた親水性膜をタンパク溶液の濾過に用いれば、高い透過性を実現する。そのために、微多孔膜にグラフトされるグラフト率は、好ましくは3%以上、50%以下、さらに好ましくは4%以上、40%以下、最も好ましくは5%以上、30%以下である。膜の親水性を維持し、タンパク質吸着にともなう濾過速度の急激な低下を抑えるという点から、グラフト率が3%以上であることが好ましく、また、比較的小さな孔が親水化層によって埋まることを防ぎ、十分な濾過速度を得るという点から、50%以下であることが好ましい。ここで言うグラフト率とは、以下の式で定義される値である。
グラフト率(%)=
(グラフト後の膜重量−グラフト前の膜重量)/グラフト前の膜重量×100
【0035】
本発明の親水性膜は、特にウイルスおよびこれに類する大きさの微粒子に対する阻止性能が高く、該微粒子が潜在的に混入している恐れのある生理活性物質等の精製に有用である。そのような生理活性物質としては、血漿分画製剤の原料に有用な血漿中のタンパクやバイオ医薬として用いられるタンパク等が挙げられ、例として、アルブミン、免疫グロブリン、フィブリノーゲン、血液凝固因子、アンチトロンビンIII、フィブリン糊、ハプトグロビン、活性化プロテインC、又はC1−インアクチベーター等が挙げられるが、これらに限定されない。生理活性物質に潜在的に混入している恐れのある不要物としては、細菌、真菌、ウイルス、病原性プリオン、白血球、及び細胞由来粒子が挙げられる。本発明により得られた親水性膜は、少なくとも有用物と不要物とを含有する液体を濾過することにより、不要物を除去して精製された有用物含有液体を得ることに使用できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。実施例において示される試験方法は次の通りである。
【0037】
(1)最大孔径
ASTM F316−86に準拠したバブルポイント法より求められるバブルポイント(MPa)を、次式を用いて、最大孔径(nm)に換算した。多孔膜を浸漬する試験液は、表面張力が12mN/mのフッ化炭化水素液体(パーフルオロカーボンクーラントFX−3250(住友スリーエム社製))を用いた。
最大孔径(nm)=2.86×表面張力/バブルポイント
【0038】
(2)気孔率
高分子微多孔膜の体積と重量を測定し、得られた結果から次式を用いて、気孔率を計算した。
気孔率(%)=(1−重量/(体積×樹脂の密度))×100
【0039】
(3)開口率
スペーサーの体積と重量を測定し、得られた結果から次式を用いて、開口率を計算した。
開口率(%)=(1−重量/(体積×スペーサー素材の密度))×100
【0040】
(4)透水平均孔径
Hagen−Poiseuilleの法則をもとに、開口率と純水透水量から次式を用いて計算した。
透水平均孔径(nm)=2×√{(純水透水量×スペーサー厚み×純水の粘度)/(膜間差圧×気孔率)}
【0041】
(5)グラフト率
膜のグラフト前後の重量変化より、次式の通りに計算してグラフト率とした。
グラフト率(%)=(グラフト後の膜重量−グラフト前の膜重量)/グラフト前の膜重量×100
【0042】
(6)純水透水量
親水化膜を25mmφのカートリッジに取り付け、フィルターを作製して評価を行った。温度23℃の純水を空気圧0.2MPaで加圧して一定時間透過させ、その透過量を測定した。膜面積、及び濾過時間より、次式の通りに計算して純水透水量とした。
純水透水量(L/m・hr)=透過量/(膜面積×濾過時間)
【0043】
(7)タンパク溶液透過量
親水化膜を25mmφのカートリッジに取り付け、フィルターを作製して評価を行った。温度23℃のタンパク溶液を空気圧0.2MPaで加圧して一定時間透過させ、その透過量を測定した。膜面積、及び濾過時間より、次式の通りに計算してタンパク溶液透過量とした。
タンパク溶液透過量(L/m・hr)=透過量/(膜面積×濾過時間)
【0044】
(8)ウイルス除去性(LRV)
ウイルス除去性は、濾液中のウイルス濃度と濾過前の元液中のウイルス濃度を測定し、次式の通りに計算してLRVとした。
LRV=Log(濾過前の元液中のウイルス濃度/濾液中のウイルス濃度)
【0045】
[製造例]
ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製 KFポリマーW#7200(製品名))40.0重量%と可塑剤(大阪有機化学工業株式会社製 フタル酸ジシクロヘキシル(工業品))60.0重量%を混合し、ミキサー(カワタ製スーパーミキサー 容量100L)を用いて室温で10分間撹拌混合した。
混合原料を250℃に昇温した押出機(株式会社プラスチック工学研究所製 BTN−25−S2−45−L型 同方向2軸押出機(特注品))に投入し、250℃の平膜押出し用ダイスからシート状に押し出し、キャストロールの温度を30℃としたキャスト装置(大機工業株式会社製(特注品))により、毎分2.35mの速度で巻き取った。
得られたシートをイソプロピルアルコール(和光純薬(株)社製、試薬特級)に30℃で30分浸漬する操作を4回繰り返して可塑剤を抽出し、室温で一晩乾燥することにより、平膜形状の高分子微多孔膜を得た。ASTM F316−86に準拠したバブルポイント法から最大孔径を、膜の体積から気孔率を計算した。
【0046】
[実施例1]
上記製造例で示した方法により得られた、最大孔径29.5nm、気孔率60.0%のポリフッ化ビニリデン微多孔膜を、放射線グラフト法により親水化処理を行った。厚さ266μm、開口率71.3%、透水平均孔径243μmのポリエステル製メッシュ(NBC INDUSTRES社製)をスペーサーとし、微多孔膜とスペーサーを同じ大きさ(長さ22cm、幅7cmに裁断し重ね、外径20φmmのアクリル製パイプに巻きつけ、最外層をアルミ箔で覆った。
その膜を窒素雰囲気下でコバルト60を線源として、−60℃の温度で、照射量100kGyでγ線照射した後、容量400mLの反応容器に入れた。充填後、反応容器内を油回転ポンプで76mmHg以下まで真空に引き、室温で3分間保持した。親水性モノマー、および溶媒を混合し、グラフト反応溶液とした。具体的には、6.0容量%のヒドロキシプロピルアクリレート(東京化成(株)社製、試薬特級)、23.5容量%のt−ブチルアルコール(和光純薬(株)社製、試薬特級)、および70.5容量%の蒸留水を含むモノマー溶液を調製し、30分間窒素バブリングを行い、モノマー溶液から溶存酸素を取り除いた。
そして、このグラフト反応溶液を、脱気した反応容器に吸引導入し、反応温度40℃で20分間反応させた。反応終了後、50容量%のイソプロピルアルコール(和光純薬(株)社製、試薬特級)と50容量%の蒸留水からなる洗浄液で繰り返し洗浄し、室温で膜を乾燥後、親水性微多孔膜を得た。モノマー濃度を変化させ同様の手順で実施した。得られた膜のグラフト率の結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例1において用いたポリエステル製メッシュの代わりに厚さ133μm、開口率71.3%、透水平均孔径226μmのポリエステル製メッシュ(NBC INDUSTRES社製)を用いる以外は実施例1と同様にして親水化を行った。モノマー濃度を変化させ同様の手順で実施した。得られた膜のグラフト率の結果を表2に示す。
【0048】
[実施例3]
実施例1において用いたポリエステル製メッシュの代わりに厚さ46μm、開口率59.9%、透水平均孔径42μmのポリエステル製メッシュ(NBC INDUSTRES社製)を用いる以外は実施例1と同様にして親水化を行った。モノマー濃度を変化させ同様の手順で実施した。得られた膜のグラフト率の結果を表3に示す。
実施例1および2と比較して、スペーサーが薄い方が、同じモノマー濃度でも得られる膜のグラフト率が低い。過剰なモノマー溶液を取り除くことにより、過剰なグラフト反応を抑制できたと考えられる。また、スペーサーが薄い方が、モノマー溶液の濃度変化に対するグラフト率の変化が小さいことからも、より反応の制御がしやすいといえる。
【0049】
[比較例1]
スペーサーを使用しないこと、アクリル製パイプに巻き付けないこと、アルミ箔で覆わないこと以外は実施例1と同様にして親水化処理を行った。モノマー濃度を変化させ同様の手順で実施した。得られた膜のグラフト率の結果を表4に示す。スペーサーを用いない場合、用いた場合と比較して、グラフト率は高い。また僅かなモノマー濃度の変化でも、得られる膜のグラフト率の変化が大きく、グラフト反応の制御が難しい。
なお、表1〜4の結果をまとめて図5に図示した。
【0050】
[実施例4]
上記製造例で示した方法により得られた、最大孔径29.5nm、気孔率60.0%のポリフッ化ビニリデン微多孔膜を、長さ10m、幅10cmに裁断し、長尺膜の親水化処理を行った。
容量1Lの反応容器を使用し、長さ10m、幅10cmの大きさのポリフッ化ビニリデン微多孔膜とスペーサーを、用いたこと以外は実施例2と同様の方法にして、長さ10mの親水化膜を得た。モノマー溶液の組成が6.0容量%のヒドロキシプロピルアクリレート、23.5容量%のt−ブチルアルコール、および70.5容量%の蒸留水のとき、全体のグラフト率は16.9%であった。アクリル製パイプに巻きつけた点を開始点とし、開始点から2m地点、5m地点、と8m地点の3箇所のグラフト率と純水透水量を測定した。グラフト率と純水透水量の結果を表5に示す。
3箇所のグラフト率および純水透水量のバラツキは小さく、本発明により平面方向に均一な親水性膜を得ることができた。
【0051】
[比較例2]
上記製造例で示した方法により得られた、最大孔径29.5nm、気孔率60.0%のポリフッ化ビニリデン微多孔膜を、長さ10m、幅10cmに裁断し、特許文献2を参考に、反応溶液に浸漬後、ゴムワイパーに通す工程を含む連続工程による親水化処理を行った。孔径29.5nm、気孔率60.0%のポリフッ化ビニリデン微多孔膜を、放射線グラフト法により親水化処理を行った。
膜を窒素雰囲気下でコバルト60を線源として、−60℃の温度で、照射量100kGyでγ線照射した後、実施例4の記述と同組成のモノマー溶液に漬けたあと、引き上げた。引き上げる際、固定したゴムワイパー(アズマ工業株式会社製 ガラスワイパー水切り(商品名))で溶液を切りながら、1m/分の速度で外径20φmmのアクリルパイプに巻き取り、密閉可能な袋に入れて40℃の恒温層に沈め、20分間反応させた。反応終了後、50容量%のイソプロピルアルコールと50容量%の蒸留水からなる洗浄液で繰り返し洗浄し、室温で膜を乾燥後、親水性微多孔膜を得た。全体のグラフト率は16.2%であった。アクリル製パイプに巻きつけた点を開始点とし、開始点から2m地点、5m地点、8m地点の3箇所のグラフト率と純水透水量を測定した。グラフト率と純水透水量の結果を表5に示す。
3箇所のグラフト率および純水透水量のバラツキが大きかったことから、この方法では、平面方向に均一な膜を得ることは難しいと考えられる。
【0052】
[実施例5]
実施例4および比較例2において得られた親水化膜を25mmφのカートリッジに取り付け、膜面積0.00035mのフィルターを作製した。次に、指標ウイルスとしてブタパルボウイルスを使用し、ウイルス除去性を評価した。0.5wt%のヒトグロブリン(三菱ウェルファーマ製 ヴェノグロブリン)を含んだD−MEM中に10TCID50/mLとなるようウイルス溶液を調製した。この溶液を、0.2MPaで1時間、濾過を行い、透過したタンパク溶液量とブタパルボウイルス除去性を測定した。得られたタンパク溶液透過量とウイルス除去性の結果を表5に示す。
いずれの膜もブタパルボウイルスを有効に除去したことから、本発明により得られた親水性微多孔膜は、生理活性物質を含有する液体中のウイルスを除去する性能を有する。また、本発明の親水化方法で作製した膜は、既存の親水化方法で作製した膜と同等のウイルス除去性を有していながら、タンパク溶液透過量のバラツキが小さいことがわかった。
【0053】
[実施例6]
実施例2において照射量100kGyでγ線照射する代わりに、照射量25kGyでγ線照射する以外は実施例2と同様にして親水化を行った。モノマー濃度10容量%と14容量%にて実施した。得られた膜のグラフト率の結果を実施例2と比較して表6に示す。γ線照射量を変化させても親水性微多孔膜を得ることができた。また、γ線照射量が多い方がグラフト率の高い親水化膜が得られた。これは基材膜中に発生するラジカルの量が増えたことにより、親水鎖の数が増えたためと考えられる。さらには、γ線照射量を変化させた場合でも、モノマー濃度の調整によって、グラフト率を制御することが可能であった。
【0054】
[実施例7]
実施例2において用いたヒドロキシプロピルアクリレート(東京化成(株)社製、試薬特級)の代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬工業(株)社製、試薬1級)を用いる以外は実施例2と同様にして親水化を行った。モノマー濃度6容量%、10容量%、および14容量%にて実施した。得られた膜のグラフト率の結果を表7に示す。ヒドロキシプロピルアクリレートを用いたときと同様に、2−ヒドロキシエチルメタクリレートをモノマーに用いても、親水化された微多孔膜を得られることがわかった。得られる膜のグラフト率は、モノマー種によって異なるが、いずれもモノマー濃度の調整によりグラフト率の制御が可能であった。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、生理活性物質を含有する液体からのウイルス除去に用いる親水性微多孔膜の製造、タンパク質製剤や水中の細菌等の除去、濃縮、または培地等に利用できる医用分離膜の製造、薬液や処理水等から微粒子を除去する産業プロセスフィルターの製造、油水分離や液ガス分離用の分離膜の製造、上下水の浄化を目的とする分離膜の製造、リチウムイオン電池等のセパレータ、及びポリマー電池用の固体電解質支持体の製造等、微多孔膜に親水性を付与させるための反応全般に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】高分子微多孔膜とスペーサーおよび親水化剤を通さないシートの位置関係の一例を示す概略図である。
【図2】高分子微多孔膜とスペーサーおよび親水化剤を通さないシートの位置関係の一例を示す概略図である。
【図3】高分子微多孔膜とスペーサーおよび親水化剤を通さないシートの位置関係の一例を示す概略図である。
【図4】高分子微多孔膜、スペーサー、親水化剤を通さないシートおよび円筒状の芯の位置関係の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例及び比較例における、反応溶液中のモノマー濃度と、得られる親水性膜のグラフト率の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1高分子微多孔膜
2スペーサー
3親水化剤を通さないシート
4円筒状の芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)高分子微多孔膜と親水化剤を包含し得るスペーサーとを積層する工程、および(II)該スペーサー中に親水化剤を包含させ、高分子微多孔膜に親水性を付与する工程、を含むことを特徴とする、親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
【請求項2】
該スペーサーが、開口率20〜95%、1μm〜1mmの厚みで、且つ、透水平均孔径が1μm〜10mmであることを特徴とする請求項1記載の親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
【請求項3】
該親水化剤が一個以上のビニル基を有する親水性モノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子微多孔膜の製造方法。
【請求項4】
親水性を付与する工程が放射線グラフト反応であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子微多孔膜の製造方法。
【請求項5】
該高分子微多孔膜の材質が、ポリオレフィン、またはポリフッ化ビニリデンである請求項1〜4のいずれかに記載の親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
【請求項6】
該高分子微多孔膜が、バブルポイント法で求めた最大孔径が10〜120nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水化された高分子微多孔膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られた親水化された高分子微多孔膜。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られた親水化された高分子微多孔膜を用いることを特徴とする生理活性物質を含有する液体中のウイルスの除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−183804(P2009−183804A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23142(P2008−23142)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】