説明

親水性ポリマー及び電気化学セルにおけるその使用

【課題】本発明は、親水性ポリマーをベースとするイオン交換膜(IEM)材料特にプロトン交換膜(PEM)材料の製造を対象とする。
【解決手段】重合時に架橋した親水性ポリマーを提供する親水性モノマー及び疎水性モノマー、強イオン性基を含むモノマー及び水から共重合により得られる親水性の架橋したポリマーは電気分解装置及び燃料電池中で使用されうるアセンブリーにおける膜として有用である。より一般には、膜電極アセンブリーは、強イオン性基を含む親水性ポリマーを含むイオン交換膜と電極とを含む。イオン交換膜と電極を含む膜電極アセンブリーを製造するための方法は膜を形成しうる材料を電極間に導入し、そしてその場で膜を形成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気伝導性である親水性ポリマー及び、電気分解装置及び電気化学セル、例えば、燃料電池におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分解セルにおいて、電気エネルギーの導入は正味の化学変化をもたらす。従来の電気分解セルの共通の特徴は、十分な速度で電気分解反応を行なわせるために多大な量の電気エネルギーの導入が要求されることである。この電気エネルギーの出費がセルの効率を抑制している。
【0003】
電気化学セル、特に燃料電池は膜電極アセンブリー(MEA)の形態であることができる。固体ポリマー電解質燃料電池MEAは、通常、(i)プロトン交換膜(PEM)、(ii)電流回収電極及び(iii)エレクトロ触媒層を各側に含む多層構造を有する。PEMは埋め込まれたカチオンサイトを含むことで動作し、アニオンの透過を可能にする。同様に、固体ポリマー電解質は固定化されたアニオンサイトを含むことができ、それは優先的にカチオンを透過させることができる。限定するわけではないが、PEMについて下記を記載する。
【0004】
上記の構造は別個の要素から組み立てられ、熱及び圧力を用いてMEAへと結合され、その後に、ガスマニホールド間で組み立てられ、全体の構造がガスリーク(及びクロスオーバー)に対してシールされ、1つのセルが形成される。この方法は複雑であり、また、PEM本来のコストとともに、項目(ii)及び(iii)として通常に使用される触媒コートされた炭素紙は燃料電池の製造の主な出費となる。
【0005】
PEM燃料電池の性能に対する制約は、PEM膜が使用の間に十分に水和された状態を維持する水管理である。水素と酸素の電気への変換で生成物の水を生じ、それは酸素電極に現れる。もし、膜が動作しつづけようとするならば、膜は、生成物の水を再分散させそして膜の局所ドライアウトを防止するように十分な水透過性を有しなければならない。ドライアウトはオーバーヒート及び壊滅的破損をもたらす(水素/酸素クロスオーバーさえ起こることがあり、爆発破損の可能性もある)。
【0006】
PEM装置は膜に組み込まれた特性のみで動作する。電気分解装置として使用するときに、水と電気の導入により、酸素と水素が生じ、燃料電池として使用するときに、水素と酸素(又は空気)が用いられ、電気が生じる。
【0007】
既存のPEM材料、例えば、Nafionは無架橋フッ素化ポリマー(本質的にPTFE)であってイオン活性サイト(通常、SO3)を含む側鎖を有するものからなる。SO3サイトによって親水性が付与される。これらの材料は動作するためには追加の水(水和された燃料ガスから供給される)で水和された状態を維持せねばならない。その材料はセル(1ボルト)へのアセンブリー用に、また、セルスタック(通常、100ユニット)へのアセンブリー用に10〜30μmの厚さの薄いシートとして供給可能である。
【0008】
スタックは個々のMEAから製造されることができる。各MEAは別々に製造され、そしてスタックはシリーズで積み上げねばならないので、スタックの製造は労力を要する。
【0009】
高い水含有分を有することができる親水性ポリマーは知られている。水含有分のレベルはその性質を決定する。その電気特性は水和溶液の性質によって規定される。例えば、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)及びMMA−VP(メチルメタクリレート−ビニルピロリドン)などの特定の親水性材料はコンタクトレンズ材料として生体医療分野においてよく知られているが、生来の電気特性を有するものでない。このため、脱イオンされた蒸留された(DD)水中で水和されるならば、得られるポリマーは良好な電気抵抗体であるが、酸もしくはアルカリ溶液中で水和されるならば、電気活性溶液がウォシュアウトし、水和されたポリマーが非導電性系に戻るまでは、材料は良好な導電体である。
【0010】
米国特許第4,036,788号明細書は複素環式N−ビニルモノマーと、スルホン酸含有モノマーと、架橋剤との共重合により得られるアニオン性ヒドロゲルを開示している。モノマーが可溶性である水溶性溶剤の存在下で重合を行なうことができ、ポリマーはオルガノゲルの形態で得られ、そのゲルから非水性溶剤が蒸留、蒸発又は水での洗浄により除去される。水中の浸漬により膨潤を生じ、軟質で可撓性の材料を提供し、それは水性媒体から塩基性又はカチオン性材料を回収するために使用することができ、又は、このような材料の除放のために使用することができる。
【0011】
国際公開WO−A−01/49824明細書はスルホ基を含まないモノマーと、スルホ基を含有するモノマーと、場合により、架橋剤とを重合することで得ることができるポリマーを開示している。ポリマーは細胞の結合及び成長並びに生体医療装置及び人工器官のために有用である。それは高い膨張比を有する。
【0012】
本明細書の要素はその優先日の前に公開されたものである。例えば、Delegate Manual of the Fifth Grove Fuel Cell Symposium, 1997年9月22〜25日、を参照されたい。これらの要素は当業者が下記の本発明を実施するために十分な情報を与えていない。
【発明の開示】
【0013】
本発明はイオン交換膜(IEM)材料、特に、PEM材料(ただし、上記のようなカチオン性材料を含む)は親水性ポリマー(すなわち、分子構造全体にわたって水を吸収しそして透過させることが生来的に可能であるポリマー)をベースとして製造されうることの発見を少なくとも部分的に基礎としている。スルホン酸又は他の強イオン性部分を含むように変性された、このような材料は、放射線重合又は熱重合によって初期モノマー又はプレポリマー系からバルク重合で製造され得る。重合は系が均質になるように水又は別の液体の存在下に行なわれるべきである。
【0014】
本発明の第一の態様によると、水でさらに水和することができる、予備伸長された親水性ポリマーは、強イオン性基を含むモノマー及び溶剤、例えば、極性液体を含むモノマーの共重合により得ることができる。得られるポリマーは好ましくは架橋されている。水で水和されていない、本発明のポリマー又はIEM材料は、使用時に、例えば、水が製造される燃料電池で水和されることができる(本明細書の目的で、最大水和度を含むどの水和度も含むものとする)。
【0015】
本発明は、また、親水性ポリマーのマトリックスと、このマトリックス中に保持された、強イオン性基含有分子を含む親水性IEM材料に関する。イオン活性分子は立体障害及び/又は化学結合によってマトリックス中に保持されうる。ポリマーは架橋されていてよい。
【0016】
電気活性サイトの制御された導入は、純水中で自己水和性でかつ電気伝導性である材料をもたらす。このような材料は電気化学膜として使用されることでき、また、バイオセンサー及びエレクトロオプティカルデバイスにおける使用に適切となる特性を有する。
【0017】
IEM材料をその場での重合により製造することができる能力により、スタックの製造のための一工程経路が可能になる。さらに、ポリマーセパレータが電極もしくは電極触媒系の活性表面領域に侵入しそして広がっている複合材ポリマー−電極系を製造することが可能である。
【0018】
本発明の第二の態様によると、電気化学反応のためのMEAは電極及びIEM、例えばPEMを含み、そのアセンブリーは電極へ及び/又は電極からの液体又は気体反応成分の透過のための画定されたチャンネルを含む。アセンブリーは、また、反応の触媒を含み、それは好ましくはチャンネルと接触している。
【0019】
二つ以上の反応体の各々が液体又は気体であるならば、さらなるチャンネルが備えられてもよい。各チャンネルは完全に又は部分的に膜内にあることができる。例えば、それは膜及び周囲マトリックスもしくは支持材料で画定されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
親水性コポリマーは、(a)MMA、AN(アクリロニトリル)、ポリアミド又はTRISなどの疎水性/構造コモノマー、及び、
(b)VP,HEMAなどの親水性であるが、必ずしも電気活性でないコモノマー、を通常に含むモノマー混合物の溶液からの重合により形成されうる。
【0021】
親水性モノマーと疎水性モノマーの両方の存在により、膜及び膜/触媒/電極界面の別の要求に適するようなハイドローリック特性とは別に電気特性の制御を行なうことが可能になる。これらのモノマーの相対量は制御された膨潤性を可能にし、そして製品を剛性にし又は固体で弾性であることを可能にする。
【0022】
架橋した材料はγ−線照射又は熱照射によって形成されうる。例えば、イオン化線、例えば、コバルト60源からの90MeVγ線を使用することができ、その場合には、架橋剤を添加する必要がない。それでも、下記のものを添加することで最終の材料の特性を制御することができる。
(c)アリルメタクリレート又はエチレングリコールジメタクリレートなどの化学架橋剤、及び、
(d)AIBN(アゾイソブチロニトリル)又はアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどの化学開始剤。
【0023】
もし材料を熱開始しそして架橋するならば、上記の成分(c)及び(d)はプロセスに必須になる。
【0024】
本発明は下記のものを添加することでこのような親水性材料をカチオン又はアニオン性の電気活性系へ転化させることに関する。
(e)親水性ポリマーのマトリックス内に保持された電気活性分子、又は、
(f)電気活性コモノマー。
【0025】
電気活性成分は酸、例えば、スルホン酸(SO3)、リン酸もしくはホスホン酸、又は、塩基もしくはアルカリ、例えば、OHイオンを提供する化合物、例えば、KOH、NaOH又は水酸化アンモニウム又はビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドであることができる。好ましいモノマーは2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPS)、スチレンスルホン酸(SA)、ビニルスルホン酸(VA)又はSOMAである。成分(a)又は(b)が成分(f)としても機能するように、成分(a)又は(b)が変性されることもできる。
【0026】
電気活性分子(e)は、化学結合の代わりに又はそれに加えて立体障害によってマトリックス中に保持されうる。親水性ポリマーへの膨潤性液体(例えば、エチルアルコール)の添加は水でよりも大きな膨潤を生じさせうる。膨潤液体中に溶解したイオン活性分子は拡散により水を交換し、そしてポリマーは収縮し、それによりマトリックス中に分子を捕獲する。このような効果は50:50MMVA−VPコポリマー及びエチルアルコール中に溶解したイオン性分子で観測される。
【0027】
1種以上のタイプのイオン活性分子はこの方法を用いてマトリックス中に導入されうる。γ−線によって続いて起こる材料の活性化は導入された分子の間の反応を生じさせ、立体障害により捕獲されていたよりも大きな分子を形成し、及び/又はポリマーマトリックスと導入された分子との結合反応を生じさせることができる。
【0028】
PEM系の形態で使用される固体ポリマー電解質では、イオン伝導率(Ci)は電子伝導率(Ce)よりもずっと大きいべきである。0.1未満のCe/Ci比は上手く運転するために望ましい。
【0029】
本発明の製品はモノマーと水もしくは成分(f)が可溶性でかつ他の成分が混和性である別の液体の重合により製造され得る。水の関わりは完全には理解されていないが、酸性もしくはアルカリ性溶液として、水はコモノマーとして明らかに作用し、そして架橋ポリマー構造中への酸又はアルカリ部分の導入に関与する。重合の後に、水の一部又は全部は除去されることができるが、再水和は乾燥前の製品を必ずしも与えるものではない。
【0030】
材料に向けられる考慮点として、電気特性とは無関係の水及び気体透過性の制御のための親水性、及び、安定性のための架橋、スルホン酸、リン酸などの使用、アルカリ燃料電池のためのアルカリ側鎖の使用、及び、ポリマー中への電気活性部分の輸送のための水又はアルコールの使用、コモノマーとして作用する(予期せずに)極性溶液が挙げられる。AN−VP+AMPSは好ましいが、他の適切なモノマーの組み合わせはMMA−VP、MMA−HEMA、AMPS<VSA<SSA<TSAとパーム(perm)などを含む。
【0031】
一貫した均質の等方性のポリマーを製造するために、個々の成分は互いに可溶性であり又は相互に混和性であるべきである。例として、スルホン酸含有部分は一般に他の好ましいコモノマー中に可溶性でない。スルホン酸成分を最終のモノマー混合物中に有するための有効な経路は水(又はアルコール又は他の適切な極性液体)中に酸を溶解させそしてその溶液をモノマー混合物中に取り込むことであることがわかった。最終のSO3含有分(及びそれ故、電気特性)は、とりわけ、スルホン酸部分の水中での溶解度、所定の体積分率の酸溶液と他のコモノマーが混和することができる能力、及び、得られた混合物の安定性及びそれが重合される能力による。
【0032】
AN−VP系は有意な体積分率の水性酸と混和可能であることがわかった。50%以下の最終のモノマーを含む水溶液をコモノマーとして有効に使用できる。
【0033】
γ線への暴露時に、モノマー混合物は粘性になり、その後、固体であるが弾性の架橋された物質を形成し、例えば、合計照射量は0.1〜3.0Mradである。
【0034】
所望のポリマーへ直接的にモノマーを重合するのに代わる別法として、プレポリマーを最初に形成し、例えば、(i)低い合計照射量(通常、<0.05Mrad&照射速度〜0.01Mrad/時)を用いたγ線照射によるか、又は、(ii)適切なUV開始剤、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンの存在下にUV照射によりプレポリマーは形成される。プレポリマー(比較的に取り扱いが容易である)を、その後、例えば、合計照射量1.0〜3.0Mradまでのさらなるガンマ線照射、又は、(v)適切な開始剤、例えば、AIBNまたはアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルの存在下における熱重合により、最終の固体の架橋された形態に転化されうる。
【0035】
最終の材料は、通常、当初のコモノマーとして有意な水を含む既に部分的に予備水和されたものであり、そのため、完全な水和までの膨張はIEM材料に通常にかかわる追加の膨張度をもたらさない。これは水和応力を抑制し、そして、ナフィオンベースのMEAと通常にかかわる触媒/電極構造とIEMとの間での離層を結果的に有意に抑制する。
【0036】
重合方法に払われるべき幾つかの考慮点として以下のものが挙げられる。
(a)重合に対する温度の効果、例えば、発泡を抑制するための化学開始剤の使用及びモノマーの冷却がレオロジーの制御及び隣接材料の可溶性をもたらすときのγ線照射の使用、
(b)熱、UV又はγ線を使用した一工程の使用、又は、熱/熱、γ/γ、熱/γ、γ/熱又はUVなどを用いたプレポリマーを介した二工程の使用、及び、
(c)充填プロセスを改良し、使用時の触媒又は電極紙の湿潤/侵入性を制御するためのモノマー混合物又はプレポリマーの特性のレオロジー制御。
【0037】
膜/MEA/セルスタックの転化/製造になされることができる考慮点として以下のものが挙げられる。
(a)モノマーからの一工程でのγ線の使用、
(b)バブルを回避するためのモノマーからの一工程での熱開始剤の使用、
(c)レオロジー制御又は特殊界面特性のためのプレポリマーを介した二工程の使用。
【0038】
「ロストワックス法」(氷の使用を含む)は、例えば、マニホールドのフラッディングを回避するために使用されてよい。形状回復性ポリマーはマニホールド又はMEAのために使用されてよい。電極メッシュ上のピールオフコーティングは「膜」を画定するために提供されてよい。
【0039】
本発明で使用されるポリマーは所定の水吸収率でコンダクタンス及びIECの最大値を示すことが望ましい。平衡での水吸収率は水和時の体積膨張率を決定し、そのため、機械特性を決定し、そして得られる複合材MEAが水和時又は水和度の変化時に離層により破損しそうであるかどうかを決定する。
【0040】
ポリマーの別の望ましい特性は、水吸収率、電気特性及び機械/ハイドローリック特性が独立に制御されうることである。好ましい材料では、IEC及び導電率値を制御可能に、例えば、2倍程度で変化させ、一方、同時に、水吸収率を3倍の範囲で(30%〜85%湿潤重量分率)制御することが可能である。
【0041】
第一のモノマー選択の適切な手順の例は2つのスルホン酸濃厚物の各々の中に(AN又はMMA又はPA)+VP+(AMPS,VS,SA及びSOMAの各々)を用いてサンプルを配合することを含む。これらのサンプルは架橋剤としてアリルメタアクリレートを用いて調製されそしてγ照射により重合される。サンプルはDD水中でのコンダクタンス、機械特性及び水吸収率のためにスクリーニングされる。このプロセスにより、可能な配合物(全てで24)の初期スペクトルはAN+VP+AMPSをベースとする最も好ましい系へと減じられ、それが例示の目的で下記において使用される。AN+VP+AMPSの選択の主な理由は、第一には、おそらくスルホン酸の水性溶液とモノマーとの優れた混和性限界のために他のモノマーの組み合わせよりも高い導電性値を系が示したためであり、そして第二には、機械特性のためであった。全ての場合に、機械特性(引張強さ及び引裂強さ)はポリマーの平衡水吸収率の関数であるが(水吸収率が増加すると、弾性率が増加し、引張強さは減少する)、ANの使用は、水含有率の関数として最も高い引張強さ及び引裂強さを与えることが判った。
【0042】
予期されるとおり、DD水中で水和されたときの電気特性はポリマー中のSO3サイトの濃度に直接的に依存することが判った。実際、スルホン酸部分は主要なモノマーのいずれの中にも可溶性でなく、水中に材料を溶解させそしてそれをAN+VP混合物に添加することで系に導入された。SO3の濃度の最大限度は、それ故、成分の分離又は付着が生じる前の水+SO3+モノマーの混和性限界によって決まった。ANを使用したときに満足できる限界が得られた。
【0043】
平衡水吸収率(DD水中)は3つのパラメータに依存することがわかった((a)主要な親水性部分VPの濃度、(b)VPに加えて親水性部分として又はVPとともに添加剤として作用するSO3の濃度、及び(c)架橋剤としてのアリルメタクリレート(AMA)の濃度。VPの濃度が増加し、SO3濃度が増加しそして架橋剤濃度が低下すると、平衡水吸収率は高くなる。
【0044】
電極/触媒/膜界面を改良するために考えられる考慮点は以下に挙げられる。
(a)重合の際の触媒の包含(一体化触媒)
(b)重合の際の炭素繊維の包含(一体化電極)
(c)膜中への複合材の触媒/電極の包含
(d)燃料電池又は電気分解器の各側で異なって触媒/電極/イオノマー表面を最適化することが可能である、延在表面(extended surface)の使用。
【0045】
上記のとおり、本発明は一工程法による複合材構造(電極−触媒−膜−触媒−電極を含む)の製造が可能になる。このことは、既存の製造経路からみて有意義な発展である。もし既存の炭素紙電極−触媒を使用すると、モノマー又はプレポリマー系はその中に染み込み、そして触媒層に対するガス透過性を低下させることになりうる。いかなる悪影響をも低減するために、紙をベースとする材料はなるべく薄くすべきであり、例えば、0.35mg/cm2白金を含むETEK TPGH−030炭素紙である。
【0046】
1つの複合材燃料電池ユニットの製造は、好ましくは、「モールド」として触媒を被覆した2つの電極系アセンブリーで膜のための隙間を残してあるアセンブリーを製造し、ポリマー/プレポリマーとして「膜」を導入することを含み、その後、単一の照射工程で製造プロセスを完了する。これを図式的に図1Bに示し、それは、順に、壁12として触媒−電極の間にキャビティー11、親水性モノマー液体13でのキャビティーの充填及び照射、並びに得られた重合した「膜」14を示し、1つの段階で一体のセルを形成する。これを図1Aに示す従来の手順と比較すべきである。図1Aは、順に、別に得られる触媒/電極15とPEM材料16、材料の組み立て及び位置合わせ、並びに、密封、加熱及び圧縮での触媒−電極接触の製造を含む。
【0047】
材料は溶液(又はプレポリマー)から重合されるので、多くの変型製造経路が与えられる。最終の膜のためには、
(a)最終の水和時の1D又は2D膨張を抑制するために繊維補強(1D又は2D)を用いる、
(b)触媒/電極構造と接触して組み立てられたときに膨張を制御しそして離層を抑制するために、補強材を入れないが、二軸プレ応力負荷を用いる、
(c)触媒及び/又は炭素繊維を表面層に取り込み、化学活性でかつ電気伝導性ガス界面を形成し、従来の触媒/電極構造に依らない、有効な最終のMEAとする、
(d)「構造付き」表面に対してポリマー表面をキャスティングし、広い表面積のポリマー/触媒反応体表面を製造し、そして向上した性能となりうる。
【0048】
図2を参照すると、図2Aは本発明の単純なポリマー21を示している。図2B及び2Cは片側及び両側に分配された触媒22を含むポリマーを示している。図2Dは追加的に電極23を示している。電極は親水性材料で完全に又は部分的に含浸されていてよい。
【0049】
従来の触媒電極紙を用いた最終のMEAでは、経路は以下のものが挙げられる。
(a)図1に示すように、γ照射を用いたモノマーからの一工程法、
(b)熱開始剤を用いたモノマーからの一工程法、及び、
(c)レオロジー制御又は特殊界面特性のためのプレポリマー段階。
【0050】
膜が触媒−電極要素間の空間で(接触して)その場で形成される複合材MEAでは、一工程経路は以下のものが挙げられる。
(a)液体モノマー又はプレポリマーの重合、
(b)適切なキャリア中での溶液でのモノマー又はプレポリマーの重合、
(c)溶液重合法、
(d)溶液中の液体ポリマーをキャスティングし、溶剤を抽出してポリマーを堆積させること、
(e)粉末としての適切なポリマーの導入で、粉末は圧縮され又は焼結される、及び、
(f)溶融状態での適切なポリマーの導入で、MEAが通常の操作温度に戻るときに材料が固化する。
【0051】
MEAを製造するためのこれらの方法は平面の平行な系に限定されない。方法(e)により形成される複合材膜材料はイオン輸送及び/又はハイドローリック特性を提供し又は改良する材料で含浸されうる。含浸材は導入された状態で有効であることがあり、又は、膜材料とともに重合され、架橋され又はゲル化された後に有効であることがある。複合材MEAは膜の厚さ内の2つの片側「半」セルを組み合わせることでも製造され得る。このことは追加の重合プロセスを用いて実現できる。
(a)図1に示すように、γ線照射を用いたモノマーからの一工程法、
(b)熱開始剤を用いたモノマーからの一工程法、
(c)レオロジー制御又は特殊界面特性のためのプレポリマー経由での二工程法。
【0052】
ここでも、方法は平面平行系に限定されない。
マルチセルスタックを製造するときに、モノマーがガスマニホールド構造をフラッディングすること(セルスタックの操作を妨げる)を防止することが望ましいことがある。従来のブロッキング材料の使用の代わりとして、プレ応力負荷された親水性材料はマニホールド通路をブロックするために使用されうる。マニホールド通路の材料は取り外すことができる、もとの形状に回復するものである(焼結された粉末又は形状変化)。または、「スマート」回復材料金属又はプラスティックを用いてマニホールド自体を製造することができる。セルは製造されそしてモノマーで充填されそして重合されて膜を形成し、その後に、マニホールド材料は活性化されてガス通路を再生することができる。
【0053】
MEA装置の膜は親水性ポリマーのマトリックスを含み、それは電気的に不活性であるが、マトリックス中に保持された強イオン性種を含み、このことは膜材料に全体としての電気活性を与える。
【0054】
例示の目的で、複合材のMEAは2つの滑らかなPTFEプレートの間で形成され、使用されるモノマーに対して不活性であるように選択される、織物又は不織布形態の多孔性ポリエステル中間層を用いて電極間の分離が維持される。その後、モノマー混合物は隙間に導入され(窒素雰囲気下)、セパレータ材料を充填し、セルは構造体の厚さになるように圧縮される。モールドを過剰のモノマー中に配置し、そして例えば、2段階工程(低照射/照射速度、その後、高照射速度で完了)照射する。
【0055】
ポリエステル層は充填及び重合の間に2枚の紙電極の分離を維持する。さらに、通常の親水性材料は水和時に等方的に膨張するので、このような強化剤の導入は親水性ポリマー膜の水和時の面積膨張を抑制するために極端に有効である。このように、材料は膨張するが、強化された膜の面積でなく、厚さを増加させることになる。このことは、燃料電池試験装置のプレート間のクランピング及び拘束の前の水和の間の複合材系の離層を防止するのに有効である。
【0056】
この製造経路は、膜材料が相互侵入した複合材の電極−膜−電極構造を提供し、その膜材料は電極の領域を超えて延在している場合には、燃料電池試験装置のマニホールドの間でクランプされたときに、有効なガスシールを形成する。
【0057】
複合材内部にバブルが形成することがある(通常、ポリエステル補強材内に)。この問題は、充填後にモールドを超音波処理し、そして重合の間の温度上昇を最少化するように機能する二工程重合法を使用することにより最少化されうる。ガスクロスオーバーの可能性がないことを保証するために窒素を使用して、燃料電池中での設置前にMEAを完全に水和しそして試験することができる。
【0058】
本発明の第二の態様において、アセンブリーに透過通路が存在することにより、反応成分が電極及び触媒とより有効な接触をするようになる。通路は膜中へキャストされる「ロストワックス」又は「スマート材料」挿入物により形成されることができ、そして好ましくは円形の断面である。アセンブリーは、また、物理的境界を画定する個別のマニホールド構造を含んでもよく、そして通路は膜内及びアセンブリーの物理的境界内の両方に入っていてもよい。電極及び触媒材料は反応体通路内にその形成後に被覆され、又は、「ロストワックス」又は「スマート材料」法の間に通路表面にキャストされてもよい。
【0059】
プラスティック材料などの可撓性材料はMEAの縁を画定しそして電気及び/又はガス分離を提供するために使用されてよい。炭素布帛は電極として使用でき、そして布帛は触媒の層で含浸されていてよい。反応体が水素又は酸素である燃料電池では、触媒は通常、白金である。同様に、水の電気分解のための電気分解装置は一般に白金電極を含む。電極が自立性であるか又は「ロストワックス」構造で支持される場合には、複数のセルをキャストすることができ、というのは、セルが形成される構造を膜自体が形成するからである。
【0060】
膜材料は好ましくは、上記のとおり、強イオン性基を含むポリマーを含む。
【0061】
チャンネルを含む本発明の態様は図3〜5に示されている。これらの態様の各々に共通の特徴は、電極32(通常、触媒の層で含浸された炭素布帛からなる)及びキャストイオン交換膜36である。
【0062】
図3は、可撓性プラスティック材料31(例えば、ポリエチレン)がアセンブリーの縁を画定するために使用され、分離は、向かい合った境界において1つの境界の突起34が対応するへこみ35に入ることで画定される。反応体はチャンネル33a及び33bを通して別々に通過し、1つの反応体はチャンネル33aを通してフィードされ、もう1つの反応体はチャンネル33bを通してフィードされる。チャンネル33a及びチャンネル33bの対のずれた配置によって、従来のフラット電極アセンブリーよりも高い電極面積となる。
【0063】
図4は反応体が雰囲気41中の酸素であるアセンブリーを示す。この場合、図3に示す境界部材の1つはガス透過性材料42により置き換えられており、反応界面への酸素の透過性を向上させている。他の反応体はチャンネル43を通して透過される。
【0064】
図5は「ロストワックス」構造により支持されている電極32を示す。反応体は図3に示すように、チャンネル33a及びチャンネル33bを通してフィードされる。この例では、4つの個々のセルが膜中にキャストされており、個々のセルの間にある膜の領域は3つの追加のセルを画定している。アセンブリーが燃料電池であるならば、セルコネクション51からのアウトプット電流は7つの個々のセルと等しくなる。
【0065】
以下の実施例は本発明を説明する。個々で用いる略語及び材料は以下のとおりである。
疎水性モノマー:
メチルメタクリレート(MMA)、
アクリロニトリル(AN)、
メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(TRIS)、
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(TRIF)、
親水性モノマー:
メタクリル酸(MA)、
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)
エチルアクリレート(EA)、
1−ビニル−2−ピロリジノン(VP)、
プロペノン酸2−メチルエステル(PAM)
モノメタクリロイルオキシエチルフタレート(EMP)、
アンモニウムスルファトエチルメタクリレート(SEM)
−SO3H部分:
トルエンスルホン酸(TSA)、
1−メチル−1−ベンズイミダゾール−2−スルホン酸、
イセチオン酸Na塩、
ヒドロキシレン−O−スルホン酸、
共重合のためのスルホン酸サイト含有モノマー:
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AMPSA)、
ビニルスルホン酸(VSA)、
スチレンスルホン酸(SSA)、
2−スルホエチルメタクリレート(SOMA)、
3−スルホプロピルメタクリレートNa塩(SPM)
【0066】
例1
アクリロニトリル−ビニルピロリドン(AN−VP;1:1)混合物モノマーを購入し、購入したものを精製しそして使用した。
メチルメタクリレート(MA)(99% Aldrich)を使用前に蒸留した。
1−ビニル−2−ピロリジノン(VP)(99% Aldrich)を凍結し、そして解凍して使用した。
使用した架橋剤はアリルメタクリレート(AMA)(98% Acros)であった。
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸(AM)(99%)、ビニルスルホン酸(ナトリウム塩、25wt%水溶液)(VSA)及び4−スチレンスルホン酸(SSA)ナトリウム塩水和物を全てAldrichから購入した。
ナトリウムスルホプロピルメタクリレートを米国特許第1299155号明細書にしたがって合成した。
【0067】
配合物
脱イオン水(DDW)中のAM,AMA及びAN−VPの種々の組成の8つの異なる溶液を表1に示すように製造した。
【0068】
【表1】

【0069】
放射線重合のためのモノマーの調製
種々のスルホン酸を蒸留水中に溶解してから、AN−VPに加えた(1:1)。その後、混合物にAMAを添加し、そして攪拌した。溶液をPTFEでライニングされたアルミニウムセルに入れてそしてシールするか又はプラスティックプレートを備えた容器に入れた。
【0070】
表面上に平らなボトムプレートを有するセルにモノマーを入れそしてモノマーが上に到達するまで上から充填した。その後、充填されたボトムプレートの上にトッププレートを配置し、Gクランプを用いて2つのプレートを固定した。その後、直立姿勢でγ線に暴露する前に、プレートを超音波浴内に直立に配置し、系内の泡を30分間除去した。照射の前に、2つのプレートの間の2つの電極の間にモノマーで含浸した不織布材料片を配置することでMEAをその場で製造した。
【0071】
照射の詳細
単一工程照射を0.125Mrad/hrの照射速度で20時間行い、合計で2.50Mradの照射を行った。
2工程照射も用いた。配合物がORである場合には、初期照射は0.01Mrad/hrで29時間(=0.29Mrad)であり、次いで、第二の照射は0.03Mrad/hrで80時間(=0.24Mrad)であった。配合物が1.5ORである場合には、最初の照射は0.01Mrad/hrで20時間(=0.25Mrad)であり、次いで、第二の照射は0.03Mrad/hrで6.83時間(=1.7075Mrad)であった。
【0072】
この照射の間に、サンプルはその源に非常に近かったので、容器は約180°半回転だけ回転した。この照射は前のサンプルに約2.5Mradで通常に与えた照射より若干少量であった。
【0073】
水吸収性
膜の一部を室温で24時間脱イオン水に浸漬し、拭き取り紙で乾燥して表面の水を除去し、計量した。その後、膜を60℃で一定重量になるまで真空炉内で乾燥した。水の吸収量は[(Mh−Md)/Mh]×100%(式中、Mh及びMdは水和された膜の重量及び乾燥された膜の重量である。)
【0074】
イオン交換能力測定
膜のサンプルを24時間、周囲温度でHCl(0.1M)(50ml)中で水和させた。その後、サンプルをティシューで拭き取り乾燥し、NaOH(0.1M)(50ml)中に入れて、24時間、交換を行なう。このNaOH溶液の3つのアリコート(10ml)を、その後、HCl(0.1M)で滴定した。指示薬としてフェノールフタレインを使用した。その後、サンプルをティシューで乾燥し、そしてHCl(0.1M)(50ml)に一晩戻し、その後、サンプルを110℃の真空炉に8時間入れ、デシケータ中で冷却した。
IECを以下のとおりに計算した。
交換後のNaOHのモル濃度=[HClのモル濃度×平均力価]÷10
モル濃度の変化(X)=(交換前のNaOHのモル濃度)−(交換後のNaOHのモル濃度)
100mlは(X)モルのNa+を含み、
50mlは(X/1000)×50モルNa+=Yを含む。
YモルのNa+イオンはZグラムの乾燥膜で交換された。
Y/Z=モルNa+/グラム
=Y/(Z×1000)ミリ当量/グラム乾燥膜。
【0075】
異なる条件下での抵抗測定及び導電率
水和された膜の抵抗をPhillips Model PM6303RCL抵抗計を用いて室温でセル内で測定した。サンプルをティシュー乾燥し、電極ゲルの薄い層で被覆し、同様に電極ゲルの薄い層で被覆された乾燥電極の間に配置した。その後、その厚さ及び面積(1cm×1cm)からその導電率を計算した。
【0076】
水和されたサンプルの抵抗(1.8cm直径円盤;2.54cm2)もSolarton SI 1260インピーダンスアナライザーを用いて測定した。
本発明を具現化する材料を以下に関して試験した。
(a)重量手段により及びサンプルの既知の乾燥サイズの線膨張比を測定することにより平衡時の水吸収性。
(b)生体医学膜での使用のために設計された同軸酸素プローブを用いたガス透過性(ISO9913 Part1)。従来の親水性材料に対してはよく確立された方法であるが、スルホン酸含有材料は正確な測定を困難にする。しかしながら、同等の水吸収性の従来の親水性材料の値の15%以内のガス透過率値は確立されており、測定の困難さを考えると合理的である。
(c)ERA Report 5231(1969), G. Moleに記載された急速過渡熱伝導性測定装置を用いた、完全に水和された状態で測定される熱伝導率。伝導率値は水吸収性の関数であることが判った。55%水吸収率の材料についての0.45W/m.K(水の伝導率の78%に相当する)から85%水吸収率の材料についての0.58W/m.K(純水の伝導率の95%に相当する)に増加した。
(d)(i)ブロックとして製造されそして膜材料と並べて照射された材料のサンプル及び(ii)MEAプロパー(下記参照)を超える「過剰」の材料から取られた膜材料のサンプルで行うイオン交換能。材料のサンプルをHCl(0.1M)溶液中で24時間水和する。その後、サンプルをNaOH(0.1M)にさらに24時間入れて交換し、得られたNaOH溶液をHClに対して滴定する。
(e)熱重量分析(TGA)及び水和時のウォッシュアウトを用いた熱安定性。材料はNafionと比較したときに加熱に対して顕著に安定であることが判った。AN−VP−AMPSコポリマーは150℃で質量が4%しか失わず(Nafionと同等)、800℃でさえ42%も保持した(Nafionでは500℃を超える温度で残留物0)。
【0077】
コンダクタンス及びIEC値を評価するために、MEAにおいて使用したモノマー混合物の追加のサンプルをMEAの製造の間に照射した。AN−VP−AMPS材料は2〜3の範囲のIECを有することが判り、それは正確な製造経路に依存し、300〜400の範囲の当量に相当する。これは非常によくNafionと比較することができ、そのIECは0.91であり、1100の当量に相当する。
【0078】
MEAはDD水中で完全に水和され、そして膜の周囲自体を圧力シールとして用いてセル中に設置された。このように、MEAの設置は著しく簡単でありそしてワーキングガスの施用の30秒以内に安定な開回路電圧(OCV)が得られた。試験手順は電流を設定し(電子的負荷により)、そして得られるセル電圧を測定することを含んだ。MEAが試験の間に脱離又は分解の重大な問題が生じなかったことを確認するために、OCVは各試験手順の最後に再測定された。
【0079】
要約すると、ビニル−SA、スチレン−SA及び最も重要には2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン−SAを用いて材料を配合し、導電率は図6に示すようにNafionと同等以上であった。さらに、架橋剤の使用により、最終の水吸収性は図7に示されたとおりの電気特性とは別個に制御できた。
【0080】
膨張比並びに機械及びハイドローリック特性は全て水和時の水吸収性に大きく依存するので、上記のパラメータの制御は得られる材料の特性を決定しそして再現性よく制御することができる点で非常に有効であることが示された。このことは図7に示され、AN+VP+AMPSをベースとするポリマー配合物のIEC値を平衡水含分及び使用するAMA量の関数としてプロットする。もしある特定の用途で要求されるならば、広い範囲の水吸収性(それ故、膨張比、機械特性及び水透過性)にわたり所定のIEC値の材料を提供することが可能であることが明らかである。
【0081】
図8は、乾燥状態の複合材MEAの縁にわたる断面のSEM写真であり、強化材81を示し、2つの電極紙82、触媒83及び電極を越えて広がっている膜材料84を示し、一体のガスシールを提供している。
【0082】
図9(不織布セパレータを用いる)及び図10(織物セパレータを用いる)に示される結果は単一工程製造方法で製造される複合材MEAはPEMシステムと同様に有効に操作されたことを明らかに示す。各場合の点線は従来のものであるがAN−VP−AMPS膜を用いた構成であり、すなわち、電極紙の間の平らな膜を単に圧縮することで製造されたMEAの結果を示す。実線は一体化MEAとして製造された同一の膜材料について測定された特性である。改良された性能はPEM材料と触媒との間に作られる、優れた接触を明らかに示す。OCVは繰り返しのサイクルの後に(完全に水和される間に)その初期の値を回復することが判り、そのプロセスはポリマーが触媒層及び炭素紙電極材料から離層するのをうまく防止したことを示している。膜抵抗の増加は乾燥とともに観測されたが、これは再水和時に可逆的であった。
【0083】
例2
材料
アクリロニトリル(蒸留された) 75g(35.38%)
ビニルピロリドン 75g(35.38%)
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸 30g(14.15%)
水(HPLCグレード) 30g(14.15%)
アリルメタクリレート 2g(0.94%)
【0084】
混合
1.アクリロニトリル及びビニルピロリドンを一緒に混合してシールされた容器内に貯蔵する。
2.酸をゆっくりと水に添加する。酸の完全な溶解を確保するために混合物を連続攪拌する必要がある。このプロセスは20分までかかることがある。
3.工程2から得られた混合物を工程1から得られた混合物にゆっくりと添加する。このプロセスの間に冷水中でアクリロニトリル−ビニルピロリドン混合物を冷却することが重要である。というのは、ある程度の熱が酸−混合物の初期添加とともに発生されうるからである。突然の発熱を回避するために、このプロセスの間に混合物を連続的に攪拌することも重要である。
4.アリルメタクリレートを工程3から得られた混合物に添加し、そしてよく攪拌する。
【0085】
重合することができる能力に検知可能な効果を与えることなく3週間まで最終の混合物をフリーザーに貯蔵することができる。
【0086】
アセンブリー
各cMEAでは、2つの適切なサイズの炭素紙電極片を薄い不織布ポリエステルシートの両側に配置する。炭素紙片は完全に重なり、ポリエステルシートに対して白金化面を有しなければならない。ポリエステルシートの役割は2つある。第一に、炭素紙電極どうしの接触及び短絡を防止し、第二に、得られるcMEAの水和時の膨潤挙動を抑制する。薄いポリエチレンシートを両面のパーティションとして用い、多重cMEAを1ショットで製造することが可能である。単一又は多重cMEAをシール可能なポリエチレンバッグに入れる。
【0087】
末端がバッグの底に配置された薄いポリエチレンチューブに結合されたシリンジからバッグ内にモノマー混合物を導入する。充填の前に、全体のアセンブリーを脱気し、そして窒素で満たして系から雰囲気酸素を除去する。バッグの底に直接的にモノマー混合物を導入すると、バブルの除去が補助される。充填チューブを取り除き、バッグを5分間放置し、モノマー混合物をセパレータ材料に進入させる。最終的に、バッグをゆっくりと絞り、液体から掃去することで空気バブルをなくす。この時点でバッグをシールする。
【0088】
ともに固く固定された2枚の剛性ポリエチレン板を介してバッグに外部圧力をかける。これはアセンブリーを潰し、炭素紙電極を固定し、得られるcMEAをできるだけ薄くかつ均一の厚さにすることを確保する。cMEAから押出された過剰のモノマー混合物はバッグの上部でリザーバーを形成し、それはある程度の正圧下にある。
【0089】
重合
アセンブリーを表2に示す2段階γ照射に付す。
【0090】
【表2】

【0091】
過剰のモノマーを含むバッグの「上部」を源から最も遠くなるようにしてアセンブリーを垂直に配置する。γ源からのアセンブリーの中心の距離は照射速度により決定される。照射速度を増加させる場合には、アセンブリーを源により近くなるように動かし、その向きを変更しない。
【0092】
重合は発熱プロセスであり、それは約4%の体積減少をもたらす。最初の低い照射速度はオーバーヒーティングすることなくモノマー混合物をゆっくりと重合するように最適化される。第二のより高い照射で完全な重合を確保する。
【0093】
γ源に最も近いcMEAの部分は上記の過剰のモノマーよりも高い照射速度を受けるであろう。このようにして重合は一端から始まり、過剰のモノマー混合物はこのプロセスに関係する体積の減少を補うためのメークアップリザーバーとして作用することができることが意図される。この方法は重合の間のcMEA内のボイド形成の起こりやすさを低減するものと信じられる。
【0094】
重合は熱的に開始されてもよい。このことはモノマー混合物に適切な開始剤(AIBN)を添加することを要求する。要求される開始剤の量は、通常、AN−VP混合物の重量の2%である(すなわち、上記の量に対しては3g)。
【0095】
このような混合物は室温で何日も重合するであろう。系の温度を高めると、この時間を短縮化することができる。アセンブリーの中心での重合の開始は重合時の体積収縮による重要な領域でのボイド形成の起こりやすさを低減することができる。このことはアセンブリーの上部の中心にポイント熱源を適用することで達成されうる。
【0096】
cMEAの分離及び水和
ポリエチレンバッグを切って開き、cMEAのアセンブリーを取り出す。cMEAはポリエチレンパーティションから容易に剥離されうる。しかしながら、モノマー混合物がパーティションの縁周囲にしみでて重合して、それらを結合することがある。この場合には、縁から離れたこの領域を切断することで分離がずっと容易になる。炭素紙電極が非常に脆いので、取り外し時にcMEAを曲げないように注意をしなければならない。
【0097】
一度分離されると、cMEAをある量の脱イオン水とともに別個のシール可能なポリエチレンバッグに入れることができる。バッグは水和の間にcMEAの膨張を可能にするために十分に大きくなければならない。
【0098】
ポリエステルセパレータ材料は水和の際のcMEAの横方向の膨張を抑制し、体積増加の殆どは厚さの増加になる。このことは炭素紙−膜界面での応力を低減するという利点を有し、それにより、離層の可能性を最小化する。
【0099】
燃料電池としてのcMEAの試験
単一MEAに適切な装置においてcMEAを燃料電池として評価することができる。この場合に使用されるこのような装置の基本的な部品は以下のとおりである。
1.cMEAの面積よりも大きい面積の2つのグラファイトマニホールド。両方のマニホールドは片側に機械加工された複数のガスチャンネルを有し、それらが覆う面積はcMEA上の炭素紙の面積に等しい。マニホールド間にはさまれたMEAであり、アセンブリーは燃料電池と呼ばれる。
2.制御可能な圧力の水素及び酸素をそれぞれのマニホールドのガスチャンネルに連結する適切なパイプ。
3.燃料電池に並列の電圧計
4.ユーザー規定電流(user-defined current)を引き出すことができる燃料電池に並列の電子的負荷。
【0100】
両方のマニホールドにあるガスチャンネルが炭素紙を覆うようにマニホールド間にcMEAが適切に配置されることが重要である。各コーナーでボルトでマニホールドをクランプする。cMEAは均一な厚さなので、炭素紙を超えて広がっている膜はマニホールドとともにガスシールを形成する(追加のシール機構を必要とする従来のMEAとは対照的である)。
【0101】
水素及び酸素がcMEAのそれぞれ対向側に供給されるときに、電圧は観測される。電子的負荷を活性化させると、増加電流を燃料電池から引き出し、電池電圧に対してプロットし、cMEAの分極特性を決定することができる。結果を図11に示す。図12はさらなる結果を示す。
【0102】
cMEAの電気分解装置としての試験
燃料電池として試験したのと同様にcMEAを2つのマニホールドに固定し、ガスチャンネルをとおして窒素をフラッシュし、残りの水素及び酸素を除去した。キャピラリーチューブを両方のマニホールドにあるガスインレット及びアウトレットポートに連結し、水を導入してガスチャンネルをフラッディングさせた。マニホールドを横切る電圧(2.5V)の印加時に、両方のマニホールドのガスチャンネルからキャピラリーチューブをガスが上がってくるのが見えた。電力供給源の負極側に連結されたマニホールドから、より多量のガスが発生したように観測された。このことは、化学量論による負電極での水素の発生及び正電極での酸素の発生と一貫したものである。
【0103】
負電極で発生したガスのサンプルをシリンジで回収し、水素の同定のために設計されたDragerチューブを通過させた。結果は陽性であり、cMEAは電圧を受けたときに、水素及び酸素を発生する電気分解装置として機能することができることが証明された。
【0104】
その後、cMEAを燃料電池試験リグに戻し、そしてさらに15時間操作した。評価はcMEAの燃料電池としての操作が電気分解装置としての予備処理により向上され得ることを示唆した。
【0105】
例3
上記の手順を繰り返したが、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(BV)をAMPSAの代わりに用い、カチオンサイトを導入した。
【0106】
この材料を試験し、そして同一の試験装置で同一の条件下に測定したときに、Nafionよりも有意に高い導電性を有することが判った(30%増)。
【0107】
材料成分を表3に示す。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1A】複合材MEAを製造するための既知の工程を示す。
【図1B】複合材MEAを製造するための新規の手順を示す。
【図2A】制御可能な系のパラメータを有する本発明の製品を示す。
【図2B】制御可能な系のパラメータを有する本発明の製品を示す。
【図2C】制御可能な系のパラメータを有する本発明の製品を示す。
【図2D】制御可能な系のパラメータを有する本発明の製品を示す。
【図3】本発明の第二の態様の模式的な実施形態を示す。
【図4】本発明の第二の態様の模式的な実施形態を示す。
【図5】本発明の第二の態様の模式的な実施形態を示す。
【図6】ポリマー組成の関数としてのコンダクタンス及びIECのプロットである。
【図7】架橋密度の関数としてのIEC及び水吸収率のプロットである。
【図8】本発明の態様の製品断面図である。
【図9】本発明の態様の製品のセル電圧対電流のプロットである。
【図10】本発明の態様の製品のセル電圧対電流のプロットである。
【図11】本発明の態様で、燃料電池として操作されるcMEAの分極挙動を示す。
【図12】本発明の態様で、一定電流10mAでの燃料電池として運転しているcMEAの電圧対運転時間のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、強イオン性基を含む親水性ポリマーを含むイオン交換膜とを含む膜電極アセンブリー。
【請求項2】
電極とイオン交換膜を含む電気化学反応のための膜電極アセンブリーであって、少なくとも1つの電極へ及び/又は電極からの液体もしくは気体反応成分の透過のための少なくとも1つの画定されたチャンネルを含む、膜電極アセンブリー。
【請求項3】
イオン交換材料は強イオン性基を含むポリマーを含む、請求項2記載のアセンブリー。
【請求項4】
イオン性基を有する分子はポリマー中に物理的に捕獲されている、請求項1又は3記載のアセンブリー。
【請求項5】
触媒を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のアセンブリー。
【請求項6】
請求項2記載のとおりの少なくとも1つのチャンネルを含み、前記少なくとも1つのチャンネルは反応成分を触媒へと透過させる、請求項5記載のアセンブリー。
【請求項7】
重合時に架橋親水性ポリマーを提供する疎水性モノマー及び親水性モノマー、強イオン性基を含むモノマー及び水の共重合により得ることができる親水性架橋ポリマー。
【請求項8】
カチオン性サイトを有する、請求項7記載のポリマー。
【請求項9】
アニオン性サイトを有する、請求項7記載のポリマー。
【請求項10】
水吸収率が85%以下である、請求項7〜9のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項11】
前記疎水性モノマーはアクリロニトリルである、請求項7〜10のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項12】
前記親水性モノマーはビニルピロリドンである、請求項7〜11のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項13】
架橋した、請求項7〜12のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項14】
前記モノマーは別個の架橋剤を含む、請求項13記載のポリマー。
【請求項15】
重合はγ線照射又は熱開始を含む、請求項7〜14のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項16】
前記ポリマーは請求項7〜15のいずれか1項記載のものである、請求項1〜6のいずれか1項記載のアセンブリー。
【請求項17】
燃料電池の形態である、請求項1〜6及び16のいずれか1項記載のアセンブリー。
【請求項18】
電気分解装置の形態である、請求項1〜6及び16のいずれか1項記載のアセンブリー。
【請求項19】
スタックの形態である、請求項1〜6及び16〜18のいずれか1項記載のアセンブリー。
【請求項20】
電極の間にイオン交換膜を形成することができる材料を導入し、その場で膜を形成することを含む、電極とイオン交換膜を含む膜電極アセンブリーの製造方法。
【請求項21】
前記膜はポリマーであり、膜の形成はその場での成分モノマーもしくはプレポリマーの重合を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記膜アセンブリーは請求項1〜6及び16のいずれか1項記載のものである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記膜アセンブリーは請求項17〜19のいずれか1項記載のものである、請求項20〜22のいずれか1項記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−84694(P2009−84694A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−262165(P2008−262165)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願2003−527827(P2003−527827)の分割
【原出願日】平成14年9月9日(2002.9.9)
【出願人】(504089677)アイティーエム パワー リミティド (2)
【Fターム(参考)】