説明

親水性粒子と疎水性粒子を含有する皺クリーム

【課題】皮膚の外観を改善し且つ皮膚の皺を減少させるために使用されるエマルジョンの提供。
【解決手段】水と、極性ラジカルで覆われている表面を有する酸化物粒子からなる親水性粒子と、無極性ラジカルで覆われている表面を有する酸化物粒子からなる疎水性粒子からなり、親水性粒子と疎水性粒子が水中を浮遊する気体を包み込むシェルを形成し、前記シェルが親水性粒子の外側層と、その外側層に隣接する疎水性粒子の内側層からなるエマルジョンであり、前記極性ラジカルが、OH、Ca2CO3、CuSO4、及びCaSO4からなる一群から選択されたものであり、前記無極性ラジカルがメチルラジカル(CH3)であるエマルジョン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧用原料に関し、特に、皮膚の外観を改善し且つ皮膚の皺を減少させるために使用される化粧用原料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皺を処置または隠蔽するために数多くの化粧品が存在している。如何にして皺を解消し皺の寄った皮膚の健康状態と外観を改善するかという問題はどこにでもあり、皺を処置するための化粧方法が熱心に研究されている。
【0003】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許6,156,804には、局所成分内の微細分散ワックスで皮膚を局所的に処置することによって、皮膚上の皺と微細な線を処置する方法が記載されている。その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,185,155には、疎水性原料をカプセルに入れて、化粧用品に使用する際のマイクロカプセル分散を形成させることが記載されている。
【発明の開示】
【0004】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、皺の発生を減少させ且つ皮膚の外観を改善するために皮膚に塗布する化粧用原料を提供することに関する。
【0005】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、皮膚への適用時に皮膚上でフィラメントの網様構造を形成する化粧用物質を提供することに関する。その網様構造は自身を皮膚と皮膚中の皺の溝に定着させる。フィラメントを形成する化粧用原料の成分間引力のために、フィラメントは相当な力で収縮する傾向がある。その結果網様構造全体として収縮する傾向がある。網様構造のフィラメントが皮膚と皺の溝に定着されるので、その網様構造は皺の溝を皮膚から機械的に「引き出す」べく機能し、その結果として皮膚が滑らかになり、張りがでる。
【0006】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、皮膚への適用時に、水分を皮膚中の血管、間質液、細胞へ浸透させることによって拡散させ、これにより皮膚組織を膨張拡大させる化粧用物質を提供することに関する。この膨張は、皺を平滑にし、皮膚内の血行と、栄養分とともに皮膚を潤し且つ代謝により皮膚から老廃物を取り去る効果のある間質液の流れとを改善する。
【0007】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、表皮の表面から死んだ皮膚細胞を取り除く剥皮効果を備えている化粧用物質を提供することに関する。化粧用物質が皮膚から除去されるとき、剥がれて死んだ皮膚細胞が化粧用物質と共に除去される。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態では、2つ或いは3つの側面がある。
【0009】
本発明の実施形態の一つでは、化粧用物質は、水、親水性シリカ粒子、疎水性シリカ粒子からなる構成物質を有する。本発明の幾つかの実施形態では、構成物質中の親水性シリカ粒子の質量は疎水性シリカ粒子の質量よりも十分大きい。例えば、本発明の幾つかの実施形態では、典型的には、疎水性粒子に対する親水性粒子の質量比を6から20の範囲とすることができる。幾つかの実施形態では、典型的には、その質量比を3から10の範囲とすることができる。また、本発明の実施形態によれば、その他の質量範囲でも可能である。本発明の幾つかの実施形態では、この構成物質はエマルジョンの形状をとる。エマルジョン中の親水性粒子の大部分は水溶液中で残存し、水分子が吸着する比較的長い親水性粒子のフィラメントからなるゲル状組織を水と共に形成する傾向がある。疎水性粒子と、親水性粒子のうち比較的小さな粒子は、凝集して、水中に浮遊している空気ポケットを包み込む2層シェルを形成する。空気ポケットを包んでいるシェル中の疎水性粒子はシェルの内側層に凝集し、その内側層は空気ポケット内の空気に接している。シェル中の親水性粒子はシェルの外側層に凝集し、この外側層は水に接している。選択的には、追加される親水性粒子は水中に分散される。
【0010】
本発明の幾つかの実施形態では、化粧用物質は粉末状であり、以下、パウダーと称す。パウダーを形成している粒子は、親水性粒子が溶け込んだ水の液滴であり、それぞれの液滴は親水性粒子からなる内側層と疎水性粒子からなる外側層を有する2層シェルに包まれている。パウダー中の親水性粒子の殆どはカプセル内の液滴中の水に分散されているが、構成物質がエマルジョンの形状である時は、水分子が吸着した親水性粒子のフィラメントからなるゲル状の組織が水と共に形成される傾向がある。
【0011】
エマルジョン或いはパウダーの形状のいずれにおいても、化粧用物質が皮膚にすり込まれたとき、その皮膚の表面に化粧用物質の層が形成される。層中の親水性粒子の一部はその皮膚領域中にある汗腺管に移動して入り込み、その管内に差し込まれる親水性粒子の巻きひげ(tendril)を形成する。疎水性粒子の一部はその皮膚領域中の毛嚢内にある皮脂腺の管に移動して入り込み、毛嚢とその皮脂腺の管の中へ差し込まれる疎水性粒子の巻きひげを形成する。特に、親水性粒子と疎水性粒子の巻きひげはその皮膚領域中の皺の溝内にある毛嚢と汗腺管、皮脂腺管へと差し込まれる。化粧用原料中の水はその皮膚中の間質液と細胞の中へ浸透することによって拡散する。
【0012】
化粧用物質から水分が奪われるにつれて、化粧用物質の体積は収縮し、その化粧用物質の層も収縮して皮膚上でフィラメントの網様構造の形状へと変化していく。それぞれのフィラメントは水中の親水性粒子と疎水性粒子のスラリーで形成されている。親水性巻きひげと疎水性巻きひげはフィラメントをその皮膚領域と皺の溝とにしっかりと固定している。
【0013】
親水性粒子が持つ水に対する引力と疎水性粒子が持つ親水性粒子と水に対する引力の結果として、フィラメントは激しく収縮する傾向がある。疎水性分子は一般的に水を弾かず、しばしば疎水性粒子同士の引力よりも大きな力で水に引き付けられることがわかっている。疎水性分子により実証されている疎水性効果は、一般に、水が疎水性分子へ及ぼす引力よりも、水分子が水分子同士に及ぼす引力のほうが大きいことに起因する。その結果、化粧用のフィラメントの網様構造は激しく収縮するようになり、皮膚中の皺の溝を引き出し、皮膚をなめらかにする。
【0014】
また、選択的に、化粧用物質は表皮から死んだ皮膚細胞を剥がす剥皮剤として機能する。毛管現象と、化粧用物質中の親水性粒子と疎水性粒子それぞれが有する皮膚中の水分と脂質(natural oil)への誘引力の結果として、水と親水性粒子及び/又は疎水性粒子は死んだ皮膚細胞と表皮の表面の間に入り込むようになる。もし皮膚が濡れて、或いは湿っていれば、水と、水分に優勢な親水性粒子とが死んだ皮膚細胞と表皮の表面の間に入り込み、凝集するようになる。もし、皮膚が脂性であれば、水と、油分に優勢な疎水性粒子とが死んだ皮膚細胞と表皮の表面の間に入り込み、凝集するようになる。もし、死んだ皮膚細胞が乾燥していれば、化粧用物質中の水が死んだ皮膚細胞に吸収されるようになり、結果としてその皮膚細胞は膨張する。そして、死んだ皮膚細胞と表皮の間に疎水性粒子及び/又は親水性粒子が浸透して凝集すると、表皮から死んだ皮膚細胞を引き離して取り除くようになる。また、乾燥した死んだ皮膚細胞を膨張させることによって、表皮から死んだ皮膚細胞を機械的に取り除くことができる。つまり、皮膚から化粧用物質を取り去るとき、その死んだ皮膚細胞は化粧用物質と一緒に取り去られる。
【0015】
それ故、本発明の実施形態の一つでは、水、親水性粒子、及び疎水性粒子からなり、親水性粒子と疎水性粒子が水中を浮遊する気体を包み込むシェルを形成し、前記シェルが親水性粒子の外側層と、その外側層に隣接する疎水性粒子の内側層からなる、エマルジョンが提供される。選択的には、親水性粒子が水中に分散されており、水分子が吸着した親水性粒子のフィラメントを有するゲル状の組織を水と共に形成する。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態では、前記シェルの直径が約1μmから約20μmの範囲である。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態では、エマルジョン中の疎水性粒子の相対重量濃度は、そのエマルジョンがパウダーにならない程のものである。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態では、疎水性粒子の重量濃度が0.5%から1.8%の間である。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態では、疎水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態では、Sphilが親水性粒子の比表面積で、Kphilの値が約20m2/gから約50m2/gの間となる定数であり、親水性粒子の相対重量濃度がKphil/Sphilに等しい。選択的には、Kphilの値が約30m2/gから約40m2/gの間である。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態では、親水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態では、親水性粒子の直径が約5nmから約150nmの間である。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態では、親水性粒子が、極性基で覆われている表面を有する酸化物粒子からなる。選択的には、親水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる親水性粒子の混合物である。選択的には、極性基がOH、Ca2CO3、CuSO4、及びCaSO4からなる一群から選ばれる。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態では、疎水性粒子が、無極性基で覆われている表面を有する酸化物粒子からなる。選択的には、疎水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる疎水性粒子の混合物であるエマルジョンである。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態では、酸化物粒子がSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、及びMnO粒子からなる一群から選ばれる。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態では、前記気体が空気である。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態では、前記気体がオゾンである。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態では、スキンケアのために有益な物質が水中に存在する。選択的には、前記物質が油である。選択的には、前記物質がビタミンAである。選択的には、前記物質がベータカロチンである。
【0029】
さらに、本発明の実施形態の一つによれば、水、親水性粒子、及び疎水性粒子からなり、前記水が疎水性粒子の外側層とその外側層に隣接する親水性粒子の内側層からなるシェルに包含されている、パウダーが提供される。選択的には、親水性粒子が、シェルに包含されている水溶液中に分散されており、水分子が吸着した親水性粒子のフィラメントを有するゲル状の組織を水と共に形成する。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態では、疎水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態では、Sphilが親水性粒子の比表面積で、Kphilの値が約20m2/gから約50m2/gの間となる定数であり、パウダー中の親水性粒子の相対重量濃度Cphilが式Cphil=Kphil/Sphilを満たす。選択的には、Kphilの値が約30m2/gから約40m2/gの間である。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態では、親水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態では、親水性粒子の直径が約5nmから約150nmの間である。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態では、前記シェルの平均直径が約1μmから約20μmである。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態では、親水性粒子が、無極性基で覆われている表面を有する酸化物粒子からなる。選択的には、親水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる親水性粒子の混合物である。選択的には、極性基がOH、Ca2CO3、CuSO4、及びCaSO4からなる一群から選ばれる。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態では、疎水性粒子が、無極性基で覆われている表面を有する酸化物粒子からなる。選択的には、疎水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる疎水性粒子の混合物である。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態では、酸化物粒子がSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、及びMnO粒子からなる一群から選ばれる。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態では、スキンケアのために有益な物質が水中に存在する。選択的には、前記物質が油である。選択的には、前記物質がビタミンAである。選択的には、前記物質がベータカロチンである。
【0039】
また、本発明の実施形態の一つによれば、皮膚の一領域に本発明の実施形態によるエマルジョンの層を形成すること、且つ、エマルジョンの水分の一部が前記領域に吸収され及び前記層の体積が収縮するように、前記層が、親水性粒子と疎水性粒子が有する皮膚に対する親和力によって皮膚に固定され及びエマルジョンの水分が前記領域に吸収されるにつれて収縮する傾向がある、前記領域上の糸状体の網様構造に変化するために、十分な時間待つこと、からなる、皮膚の一領域における皺の発生を減らす方法が提供される。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態では、上記方法は、網様構造が、水を吸収し、膨張し、その後皮膚へ水を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ水を供給することを含む。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態では、上記方法は、網様構造が網様構造と皮膚に吸収される成分を吸収し、膨張し、その後皮膚へ前記成分を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ前記成分を有する物質を供給することを含む。選択的には、前記成分が油である。選択的には、前記成分がビタミンAである。選択的には、前記成分がベータカロチンである。
【0042】
さらに、本発明の実施形態の一つでは、パウダー中のシェルが破裂してその水内容物を解放し、破裂セル中の解放された水と親水性粒子と疎水性粒子が皮膚の一領上に層を形成するために、その領域に本発明の実施形態によるパウダーを前記領域に塗布すること、且つ、前記層中の水分の少なくとも一部が前記領域に吸収され且つ前記層の体積が収縮するために、前記層が、親水性粒子と疎水性粒子が有する皮膚に対する親和力によって皮膚に固定され及び網様構造中の水分が前記領域に吸収されるにつれて収縮する傾向がある、前記領域上の糸状体の網様構造に変化するために、十分な時間待つこと、からなる、皮膚の一領域における皺の発生を減らす方法を提供する。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態では、上記方法は、網様構造が、水を吸収し、膨張し、その後皮膚へ水を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ水を供給することを含む。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態では、その方法は、網様構造が、網様構造と皮膚に吸収される成分を吸収し、膨張し、その後皮膚へ前記成分を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ前記成分を有する物質を供給することを含む。選択的には、前記成分が油である。選択的には、前記成分がビタミンAである。選択的には、前記成分がベータカロチンである。
【0045】
さらに、本発明の実施形態の一つでは、水と親水性粒子の溶液を作成すること、混合物を作るためにその溶液に若干の疎水性粒子を加えること、混合物中に気泡が発生するように気体で空洞を作って混合物中に気体を存在させること、その混合物に加えられている疎水性粒子の量が、その混合物がパウダーを形成するには十分でないこと、からなる、水中に浮遊する気泡を包み込むエマルジョンを作成する方法を提供する。
【0046】
さらに、本発明の実施形態の一つでは、水と親水性粒子の溶液を作成すること、混合物を作るためにその溶液に若干の疎水性粒子を加えること、水の液滴を親水性粒子と疎水性粒子のシェルで包み込むために気体で空洞を作らせること、その混合物中の疎水性粒子と親水性粒子の量が、混合物中の全ての水を液滴として包み込むことができるほど十分な数のシェルを形成するために必要なだけ存在すること、からなる、水を含むパウダーを作成する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1Aは本発明の実施形態の一つによる化粧用エマルジョン20の概略図である。エマルジョン20は、水26中を浮遊する影付き円22で示される親水性粒子と影無し円24で示される疎水性粒子とからなる。選択的には、エマルジョン20中の親水性粒子22の数は、疎水性粒子24の数よりも十分に多い。
【0048】
本発明の実施形態の一つによれば、親水性粒子22は、極性基でその表面が覆われている酸化物粒子で形成されている。親水性粒子を形成するために様々な種類の酸化物を使用することが可能であり、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタン酸化物TiO2、Fe2O3、或いはMnO粒子の表面を、極性基で覆って形成することができる。極性基は好ましくは水酸基のラジカル(すなわち、OH)であるが、他の極性基、例えばCa2CO3、CuSO4、CaSO4等も使用することができる。本発明の実施形態の一つによれば、疎水性粒子24は、例えばメチル基(すなわち、CH3)のような無極性基でその表面が覆われている酸化物粒子で形成されている。親水性粒子22の場合と同様に、疎水性粒子24は、様々な種類の酸化物粒子のうち任意の一種を核とすることができる。
【0049】
本発明の実施形態の一つによれば、エマルジョン20中の親水性粒子22は、同種の酸化物粒子を核とする単一種類の親水性粒子でもよく、或いは親水性粒子の種類ごとに異なる種類の酸化物粒子を核とする複数種の親水性粒子の混合物であってもよい。同様に、エマルジョン20中の疎水性粒子24も、同種の酸化物粒子を核とした単一種類の疎水性粒子でもよく、或いは複数種の疎水性粒子の混合物でもあってもよい。
【0050】
疎水性粒子24と、親水性粒子22のうち比較的小さな粒子は、空気ポケット30を包み込む、水26中を浮遊する2層シェル28を形成するために凝集する。多くの親水性粒子22は、図1Aに概略的に示すように、水26中に分散したままである。空気ポケット30を包み込んでいるシェル28の構造の詳細な説明を、図1Bに拡大した部分的な破断図で示した。シェル28の内側層32は疎水性粒子24からなり、外側層34は親水性粒子22からなる。表示を明快にするために疎水性粒子24からなる内側層32は単層として示したが、実際には幾枚かの疎水性粒子の層で形成されていてもよい。同様に、親水性粒子22の単層として示されている外側層34も、親水性粒子の複数枚の層で形成されていてもよい。疎水性粒子24と同程度の大きさを持つ親水性粒子22は、シェル28内での数が疎水性粒子の数とおおよそ等しくなる。
【0051】
親水性粒子22と疎水性粒子24それぞれの比表面積(すなわち、表面積対質量比)は約100m2/gよりも大きいことが好ましく、さらにより十分に大きいことが好ましい。粒子の比表面積が大きいほど粒子サイズが小さくなる限りにおいては、親水性粒子22と疎水性粒子24はできる限り小さいほうが良い。粒子が小さくなるほど、空気ポケット30が小さくなる傾向にあり、エマルジョン20を皮膚に塗布したときに、空気ポケット30を包むシェル28の全表面領域中のより多くの部分が直接的に皮膚に接触し、作用する。空気ポケット30を包むシェル28が皮膚に接触するとシェルが破裂するため、親水性粒子22と疎水性粒子24がシェルから離散して皮膚に接触して作用する。さらに、以下に説明するように、親水性粒子22と疎水性粒子24が小さければ小さいほど、それらが皮膚中の汗腺や皮脂腺の管の中に流れ込みやすくなる。
【0052】
しかし、親水性粒子22と疎水性粒子24が小さすぎてはならないことに気を付けなければならない。親水性粒子22と疎水性粒子24の径が減少し、空気ポケット30もより小さくなるにつれて、空気ポケットを包むシェル28中の親水性粒子22と疎水性粒子24はお互いをより強く束縛する。それ故、シェル28を破裂させ、その内容物である親水性粒子22と疎水性粒子24を離散させることが難くなる。結果として、エマルジョン20の活性が抑制され、その効能が弱まる。都合のよいことに、空気ポケット30の直径は約1μmから約20μmの範囲である。直径約1μmよりもずっと小さい空気ポケット30では、空気ポケットを包むシェル28は通常、容易には破裂しない。直径約20μmよりも大きな空気ポケット30ではシェルは通常、機械的に不安定である。親水性粒子22と疎水性粒子24の直径はともに約5nmから約150nmの範囲である。
【0053】
親水性シリカ粒子と疎水性シリカ粒子は現在工業的に利用されており、平均比表面積はそれぞれ約100m2/gから約400m2/g、約100m2/gから約280m2/gの範囲である。例えば、ドイツのDegussa社は、商標名を「AEROSIL」として上記の比表面積を有する親水性シリカ粒子と疎水性シリカ粒子を販売している。また、米国のCabot社も、商標名を「CAB-O-SIL」として上記の比表面積を有する親水性シリカ粒子と疎水性シリカ粒子を販売している。上記のような比表面積を有する工業製品の親水性粒子や疎水性粒子の直径は約5nmから約150nmの範囲である。
【0054】
エマルジョン20中の疎水性粒子24の濃度は、エマルジョン中に包含される空気の量をコントロールし、それによってエマルジョン20中の単位体積当りの水26の量をコントロールしている。エマルジョン20中の疎水性粒子24の量が増加するにつれて、エマルジョン中に閉じ込められる空気の量が増加し、エマルジョン中の1立方センチメートル当りの水26の量が減少する。発明者は、エマルジョン20の好ましい水含有率をエマルジョンの体積の約40%から約70%としている。エマルジョン20の水含有率が40%よりも低く70%よりも高いとすれば、40%より低いときはエマルジョンが乾きすぎ、70%より高いときは水気が多くなりすぎる傾向がある。この好ましい水含有率の範囲は、エマルジョン20中の疎水性粒子24の約0.5重量%から約1.5重量%の範囲での濃度変化に相当する。
【0055】
エマルジョン20中の疎水性粒子24の濃度は、通常、以下に「パウダー臨界値(powder threshold)」と称する限界値よりも低くなければならない。パウダー臨界値よりも高い疎水性粒子の濃度は、本発明の実施形態による化粧用物質のエマルジョン形状には一般的に可能ではなく、本発明の実施形態による化粧用物質のパウダー形状の特性である。エマルジョン20中の疎水性粒子24の相対重量濃度(パーセンテージではない)をCphobと表わすことにする。ここで発明者は、乳液状のエマルジョン20の集結性と安定性を維持するためには、濃度CphobがCphob≦Kphob/Sphobの関係を満たす必要があることを見出している。関係式中のSphobは疎水性粒子の比表面積であり、Kphobは定数である。本発明の実施形態の一つであるエマルジョン20と同様な構成のエマルジョンでは、親水性粒子22と疎水性粒子24がシリカ粒子であって、Sphob≒260m2/gであり、水が純粋な水である場合のKphobの値は約4m2/gから約5m2/gの間である。
【0056】
エマルジョン20中の親水性粒子の濃度は、その構成物質の相分離による変質に対向するエマルジョンの粘度と安定性を決める。本発明の実施形態の一つでは、発明者は、親水性粒子の相対重量濃度「Cphil」が、好ましくは式Cphil=Kphil/Sphilを満たすとしている。Cphilに関する式では、Sphilは親水性粒子22の比表面積であり、Kphilは定数である。Sphil≒380m2/gである親水性シリカ粒子において、Kphilが約20m2/gよりも小さいとエマルジョン20は水分が多すぎ、その一方でKphilが約40m2/gよりも大きいエマルジョンは粘性が強く、ペースト状になると発明者は結論づけている。ところが実際は、エマルジョン20が水分の多いものであってもペースト状のものであっても不都合ではないため、Kphilの値が約20m2/gから約40m2/gの辺りであることが望ましい。Kphilの値が約20m2/gから約40m2/gの間の範囲では、エマルジョン20中の親水性粒子22の重量濃度は約7%から約11%の範囲である。
【0057】
発明者は、エマルジョン20と同様な構成であってpHの異なるエマルジョンを皮膚の種類に応じて使い分けることができるとしている。例えば、脂性でも乾性でもない通常の皮膚に対しては、pHが5.2から5.5のエマルジョンを利用することがきる。脂性の皮膚に対してはpHが4程度の乳液を利用することができる。エマルジョン20のpHは親水性粒子22と疎水性粒子24の相対濃度及び/又は銀イオン等の適切なイオンの添加によって決定される。通常、もしエマルジョン20にイオンが添加されると、そのイオン濃度がエマルジョンのpHを決める主要な因子となる。
【0058】
エマルジョン20と同様な構成である本発明の実施形態の一つによるエマルジョンの作成方法の実施例を提供するために、エマルジョンを1kg作成すると仮定し、また、親水性粒子22と疎水性粒子24がそれぞれシリカ粒子であると想定する。親水性粒子22の比表面積を380m2/g、Kphil=38m2/gとすると、親水性粒子の重量濃度Cphilは約0.1となる。また、Sphob≒380m2/gとすると、エマルジョン20中の水26の望ましい濃度により、疎水性粒子24の濃度Cphobは約0.01となる。その結果、1kgのエマルジョン20は約10gの疎水性粒子24と約100gの親水性粒子22を含むこととなる。エマルジョン20のその他の成分約890gは、皮膚に有益をもたらすために、選択的に例えばビタミン或いは防腐剤等をその中に溶解させ或いは分散させた高純度の精製水である。
【0059】
エマルジョン20を作成するために水890gと親水性粒子22 100gを50mmのプロペラを有するShiangtai Machinery Industry of Japan(日本Shiangtai機械工業)社製のDS-CH4000RM混合機を用いて回転速度約500rpmで5分から10分間混合した。500rpmで混合を行った後、約1000rpmで10分から15分間混合を続け、その後約2500rpmで付加的に75分から80分間混合した。75分から80分間の付加的な混合の最後に、疎水性粒子24 10gを混合物に加えて、混合速度約1000rpmから約1500rpmで約30分間混合した。その後混合を止め、親水性粒子22と疎水性粒子24と水からなる混合物を約24時間、約20℃の一定温度で且つ機械的な振動や衝撃から隔離して安置した。この「静穏(quiet)」の間、混合物の中に外部から取り込まれた気泡が混合物中で分散し、混合物がゲル化し熟成してエマルジョンへと変化した。
【0060】
図1はエマルジョン20中で空気ポケット30を包含するシェル28を示すが、本発明の実施形態の一つによれば、シェル28が空気とは異なる単一気体或いは混合気体を包み込んでいる、エマルジョン20と同様な構成のエマルジョンを作ることができることに注目する。例えば、本発明の実施形態の一つによれば、スキンケアに有益なオゾンやその他の単一気体或いは混合気体を包み込んでいるシェル28を有するエマルジョンを作ることができる。本発明の実施形態の一つによれば、そのエマルジョンの作成時に、泡立て、或いはその気体とともに作成された水と粒子の混合物での密封により、所望の単一気体或いは混合気体がエマルジョン中に包み込まれる。
【0061】
図2Aは本発明の実施形態の一つによる化粧用パウダー50の概略図である。パウダー50は粉末粒子52からなり、それぞれの粒子は親水性シリカ粒子22と疎水性シリカ粒子24の2層シェル56に包み込まれた水の液滴54からなる。親水性粒子22はシェル56の内側層58を形成し、疎水性粒子24はシェルの外側層60を形成している。液滴54に溶け込んでいる親水性粒子22は選択的に、水分子が親密に吸着している親水性粒子の比較的長いフィラメント(図示せず)からなるゲル組織を液滴中の水とともに形成する。粉末粒子52の構造の詳細は、図2Bに拡大した部分的な破断図で示されている。
【0062】
パウダー50は、エマルジョン20が親水性粒子22と疎水性粒子24を水に加えて混合して作成される方法と同様な方法で作成される。混合物がエマルジョンになるかパウダーになるかを決定する主要な因子は、本発明の実施形態の一つによれば、混合物を作るときに水に加えられる疎水性粒子24の量である。上述したように、疎水性粒子24の濃度がその混合物が持つ疎水性パウダー臨界値よりも大きければ、混合物はパウダーとなる。例えば、親水性粒子22と疎水性粒子24がシリカ粒子であり、その比表面積が上記例のエマルジョンで用いたそれぞれの比表面積と同様な比表面積を有すると想定する。そのとき、もしCphob≧Kphob/Sphobであれば、その混合物はパウダーを形成する傾向がある。ここでのKphobの値は約4m2/gから約5m2/gの間である。このような疎水性粒子の濃度では、混合物が十分な数のシェル56表面を形成するだけの疎水性粒子を有するので、混合物中の水の全てが液滴54として包含される。
【0063】
実施例として、パウダー50と同様な構成のパウダー1kgを本発明の実施形態の一つによる親水性粒子と疎水性粒子から作成すると仮定する。その親水性粒子と疎水性粒子はエマルジョン20を作成したときの上記実施例に示された比表面積を有する。また、Kphobは約4.5m2/gとする。パウダーを作成するために、水882gと親水性粒子22約100gを50mmのプロペラを有するDS-CH4000RM混合機を使用して約500rpmで5分から10分間混合した。500rpmで混合した後に、約1000rpmで10分から15分間混合を続け、その後約2500rpmで75分から80分間付加的に混合した。75分から80分間の付加的な混合の最後に、疎水性粒子18gを溶液に加えた。加えた疎水性シリカの量は、関係式Cphob≧Kphob/Sphobより、すなわち18g>1000g(4.5m2/g)/(280m2/g)≒16とした。結果として、混合物はエマルジョンよりもパウダーをつくることができるプロセスとなる。疎水性粒子を加えた後、混合物を約3000rpmで約30分間混合した(パウダーに対する混合回転速度は、作成過程のこの段階では、選択的にエマルジョンの混合回転速度よりも十分に大きい)。その後、混合を止め、親水性シリカ粒子22と疎水性シリカ粒子24と水からなる混合物を約24時間、約20℃の一定温度で且つ機械的な振動や衝撃から隔離して安置した。この24時間で混合物がパウダーとなった。
【0064】
本発明の実施形態の一つによると、スキンケアに有益なビタミンや老化防止のための配合物等の望まれる物質を含有する水を包み込んだシェル58を有する、パウダー50と同様な構成のパウダーをつくることができることに注目する。それらの物質は、パウダーを作成する過程において、水に親水性粒子を加える前にその水に加えられる。その加えられた物質は、本発明の実施形態の一つによる安定した粉末を作るために要求される疎水性粒子濃度であるパウダー臨界値を変化させる。
【0065】
本発明の実施形態の一つによれば、親水性シリカ粒子と疎水性シリカ粒子を有するエマルジョン或いはパウダーと同様な構成のエマルジョン或いはパウダーは、上述のように、シリカとは異なる酸化物或いは複数種の酸化物の混合物を核とした親水性粒子や疎水性粒子で構成することができる。そのエマルジョン或いはパウダー中の「シリカとは異なる酸化物或いは複数種の酸化物の混合物」からなる親水性、疎水性粒子の量は、エマルジョン或いはパウダー中の酸化物がシリカである場合の親水性粒子と疎水性粒子とによってそれぞれ与えられる全表面積と同様の全表面積を与えることができる粒子の量である。また、本発明の他の実施形態においては、シリカとは異なる酸化物或いは複数種の酸化物の混合物である親水性、疎水性粒子の全表面積がシリカを基礎とした親水性、疎水性粒子の全表面積とは異なるエマルジョン及びパウダーが形成されてもよい。
【0066】
図3Aから3Dは、本発明の実施形態の一つによれば、エマルジョン20が塗布された皮膚領域70の外観を改善し皺を軽減するエマルジョン20の作用を概略的に示したものである。
【0067】
図3Aはエマルジョン20が皮膚に塗られた当初の、エマルジョン20と皮膚70を示す平面概略図である。皮膚70の領域には、影付の帯で示される皺溝部74、汗腺管76、毛髪80が位置する毛嚢78がある。エマルジョン20は皮膚領域70に塗布され、影部19で示される領域上に薄い層を形成する。本発明の実施形態の一つによれば、エマルジョン20の層19は適用時間である約3分から約10分間は皮膚上で放置しておく。
【0068】
図3Bはエマルジョン20が図3Aで示されるように塗布されているときの線分A-Aに沿った領域のエマルジョン20の層19と皮膚70上の横断面図である。この断面図は皮膚70の表面72とその表面の皺溝部74を示し、その皺溝部中に汗腺管76と毛嚢78が位置している。毛髪80は毛嚢78内に位置しており、毛嚢78は管84を有する皮脂腺83を有する。汗腺管76の右方向にある死んだ皮膚細胞86は皮膚70の表面72に付着している。
【0069】
エマルジョン20中の親水性粒子22は汗腺管76へと移動して中へ入り込む。そして汗腺管76中の水分濃度が比較的高いため、管中に親水性粒子22の巻きひげ77を形成する。疎水性粒子24は毛嚢78へと移動して中へ入り込む。そして皮脂腺管84と毛嚢78中では脂質の濃度が比較的高いため、毛嚢78と皮脂腺管84中に疎水性粒子24の巻きひげ85を形成する。親水性巻きひげ77と疎水性巻きひげ85と皮膚70中の他の領域の同様な巻きひげ(図示せず)は、化粧層19を皮膚に取り付ける役目を果たす。
【0070】
また、水と疎水性粒子24は、毛管現象及び死んだ皮膚細胞86を覆っている比較的高濃度の脂質の結果として、死んだ皮膚細胞86と皮膚70の表面72との間に凝集する傾向がある。死んだ皮膚細胞86と皮膚表面72との間の疎水性粒子24は、皮膚表面から死んだ皮膚細胞を「引き放し(pry up)」、取り除く傾向がある。エマルジョン20中の皮膚70に接している水26は、皮膚中の細胞、血管、間質液(図示せず)中へ拡散し、細胞と血管を膨張させ、間質液の体積を増加させる傾向がある。細胞と血管の膨張と間質液体積の増加は、結果として皺溝部74を引き出す傾向がある。しかし、化粧層19から皮膚70へと水が奪われる結果として、化粧層19の体積は収縮する。
【0071】
図3Cは、水の消失により体積が収縮した後の化粧層19の平面概略図を示している。収縮の結果として、化粧層19中に隙間87が形成され、化粧層19は、皮膚70を絶え間なく覆っていた比較的均質な層から、糸状体88の網様構造82へと変形する。網様構造82は、皮膚70中の汗腺管76と毛嚢78内部へと差し込まれた親水性と疎水性それぞれの巻きひげ77、85(図3B)によって皮膚70に定着されている。糸状体88は、親水性粒子22と、吸着した水分子と、疎水性粒子24とからなるフィラメントの水性スラリーを含む。スラリー中の粒子同士と或いは粒子と水との間の引力の結果として、糸状体88は水が消失するにつれて強くなる引力によってその長さ方向に沿って収縮する傾向がある。網様構造82中の糸状体88によって生じる収縮力は、皮膚70の皺溝部74に作用し、皺溝部74を引き出して平滑にする傾向がある。
【0072】
図3Dは、図3C中の線分A-Aに沿った皮膚70と網様構造82の横断面概略図であり、これは図3Bの断面図を示すために図3Aに引かれた線分と全く同じ位置である。この断面図は、エマルジョン20を皮膚70へ塗布してから適用時間経過後の、皮膚の皺が改善した効果を示している。図3Bで示された皺溝部74は、図3Dでは実質上平面になっている。発明者によって行われた実験では、被験者の皮膚の比較的深い皺溝部の深さが、エマルジョン20と同様な構成のエマルジョンを塗布してから適用時間経過後には最大約2mm程度減少したことが分かっている。
【0073】
また、図3Dで示すように、エマルジョンを塗布してから適用時間経過後には、死んだ皮膚細胞86が皮膚70の表面72から除去されるために十分な量の疎水性粒子24と水が、死んだ皮膚細胞86の下に溜まる。エマルジョン20が皮膚70から取り去られるとき、死んだ皮膚細胞86はエマルジョン20と共に取り去られ、死んだ皮膚細胞が付着していた場所にはより新鮮な活気のある皮膚領域が現れる。
【0074】
糸状体88の網様構造82が皮膚70に強く付着していることに注目する。本発明の幾つかの実施形態では、網様構造82が形成された後、その場所に網様構造82のみを残しておき、余分なエマルジョンは皮膚70から取り去る。これは例えば水で皮膚をやさしく洗い流すことで成し遂げることができる。網様構造82は実際には目に見えず、或いは適切な化粧でカムフラージュでき、発明者は、その網様構造82が処置後数時間維持されることが可能であることを見出している。本発明の実施形態の一つによれば、皮膚領域中に位置する網様構造82の抗皺効果(anti-wrinkling action)は、単純に水を皮膚につけることによって「復活する」。網様構造82は、糸状体88の弛緩と伸張を生じさせるために加えられた水をある程度吸収し、皮膚の張りを弛緩させる。その後、網様構造82は皮膚中へ水を放ち、結果として糸状体88は再び収縮し皮膚中の皺を平滑にするようになる。
【0075】
本発明の幾つかの実施形態では、抗皺効果は、網様構造に吸収されてその後皮膚へと放たれるような成分を有する適切なクリームをつけることにより復活する。適切なクリームとは例えば加湿クリーム又は栄養クリームであり、栄養クリームとは例えばビタミンAやベータカロチンからなる。網様構造に吸収され皮膚へと放たれるクリームの成分は油及び/又は水が可能である。
【0076】
それ故、本発明の実施形態の一つによれば、エマルジョン20と同様な構成のエマルジョンで処置される皮膚の領域は、水を定期的にその皮膚につけることによってより長い時間、皺の発生を減少させて新鮮さと活気を保つことができる。
【0077】
本発明の実施形態の一つによれば、パウダー50と同様な構成のパウダーの作用は上述のエマルジョン20の作用と同等である。パウダーを皮膚につけたとき、水を包み込んでいるパウダー中のシェルが破裂し、その内包していた水を解き放つ。シェルの「残骸」である水、親水性粒子、疎水性粒子は図3Aから3Dに示される化粧層19と同様な皮膚上の化粧層を形成する。
【0078】
しかし、本発明の実施形態の一つによる化粧用物質のパウダー形状は、通常、皮膚上で化粧層が見え難い、エマルジョン形状よりも薄い層をつくる。その結果、公衆の面前で皮膚の外観を維持するための化粧として使用するには実際に都合が良い。例えば、男性或いは女性が、夜間出歩く際に、化粧室で「化粧休憩(powder break)」をとって、皮膚を新鮮にするために、その化粧品のパウダー形状を便利に持ち歩くことができる。
【0079】
本出願の明細書及び請求項中では、comprise, include, haveとその活用形のそれぞれの動詞は、その動詞の対象が必ずしもその動詞の対象の部材、組成、要素或いは部分の完全なリストではないことを示すために使用されている。
【0080】
本発明は、例として提供され且つなんら発明の範囲を限定するものではない実施形態の詳細な説明を使って記載されている。記載された実施形態は異なる特徴を含むものであり、発明の全ての実施形態にその特徴全てが要求されているわけではない。本発明の幾つかの実施形態は、それらの特徴またはそれらの特徴の可能な組み合わせの幾つかのみを利用するものである。記載されている本発明の実施形態の変形と、記載されている実施形態中で言及された特徴の組み合わせ含む本発明の実施形態とは、当業者が想到するものであろう。発明の範囲は以下の請求項によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
本発明の実施形態をなんら限定するものでない実施例を、本明細書に添付した図面を参考にして、以下に説明する。この図面では、一つの図またはそれ以上の図に記載されている同一の構造、要素または部品は、それらが記載されている全ての図に、同じ数字で番号が付されている。図面中の構成要素と機構の寸法は、表示上の便宜と明瞭化のために選択され、必ずしもその示すものではない。以下に図面の説明を列挙する。
【図1A】本発明の実施形態の一つによる化粧用エマルジョンとその構成物質の細部の概略図である。
【図1B】本発明の実施形態の一つによる化粧用エマルジョンとその構成物質の細部の概略図である。
【図2A】本発明の実施形態の一つによる化粧用パウダーとその構成物質の細部の概略図である。
【図2B】本発明の実施形態の一つによる化粧用パウダーとその構成物質の細部の概略図である。
【図3A】本発明の実施形態の一つによる図1に示した化粧用エマルジョンが塗布された皮膚の一領域の皺が改善するときのエマルジョンの作用を図解した概略図である。
【図3B】本発明の実施形態の一つによる図1に示した化粧用エマルジョンが塗布された皮膚の一領域の皺が改善するときのエマルジョンの作用を図解した概略図である。
【図3C】本発明の実施形態の一つによる図1に示した化粧用エマルジョンが塗布された皮膚の一領域の皺が改善するときのエマルジョンの作用を図解した概略図である。
【図3D】本発明の実施形態の一つによる図1に示した化粧用エマルジョンが塗布された皮膚の一領域の皺が改善するときのエマルジョンの作用を図解した概略図である。
【符号の説明】
【0082】
20 エマルジョン
22 親水性粒子
24 疎水性粒子
26 水
28 シェル
30 空気ポケット
32 内側層
34 外側層
50 パウダー
52 粉末粒子
54 液滴
56 シェル
58 内側層
60 外側層
70 皮膚
72 表面
74 皺溝部
76 汗腺管
77 巻きひげ
78 毛嚢
80 毛髪
83 皮脂腺
84 皮脂腺管
85 巻きひげ
86 死んだ皮膚細胞
87 隙間
88 糸状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、親水性粒子、及び疎水性粒子からなり、
親水性粒子と疎水性粒子が水中を浮遊する気体を包み込むシェルを形成し、前記シェルが親水性粒子の外側層と、その外側層に隣接する疎水性粒子の内側層からなる、
エマルジョン。
【請求項2】
親水性粒子が水中に分散されており、水分子が吸着した親水性粒子の線条体を有するゲル状の組織を水と共に形成する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記シェルの直径が約1μmから約20μmの範囲である、請求項1または2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
エマルジョン中の疎水性粒子の相対重量濃度は、そのエマルジョンがパウダーにならない程のものである、請求項1から3のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項5】
疎水性粒子の重量濃度が0.5%から1.8%の間である、請求項1から4のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項6】
疎水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい、請求項1から5のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項7】
Sphilが親水性粒子の比表面積であり、Kphilの値が約20m2/gから約50m2/gの間となる定数であるとき、親水性粒子の相対重量濃度がKphil/Sphilに等しい、請求項1から6のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項8】
Kphilの値が約30m2/gから約40m2/gの間である、請求項7に記載のエマルジョン。
【請求項9】
親水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい、請求項1から8のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項10】
親水性粒子の直径が約5nmから約150nmの間である、請求項1から9のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項11】
親水性粒子が、極性を有するラジカルで覆われている表面を有する酸化物粒子からなる、請求項1から10のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項12】
親水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる親水性粒子の混合物である、請求項11に記載のエマルジョン。
【請求項13】
酸化物粒子がSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、及びMnO粒子からなる一群から選ばれる、請求項11または12に記載のエマルジョン。
【請求項14】
極性を有するラジカルがOH、Ca2CO3、CuSO4、及びCaSO4からなる一群から選ばれる、請求項11から13のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項15】
疎水性粒子が、非極性のラジカルで覆われている表面を有する酸化物粒子からなる、請求項1から14のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項16】
疎水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる疎水性粒子の混合物である、請求項15に記載のエマルジョン。
【請求項17】
酸化物粒子がSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、及びMnO粒子からなる一群から選ばれる、請求項15または16に記載のエマルジョン。
【請求項18】
前記気体が空気である、請求項1から17のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項19】
前記気体がオゾンである、請求項1から17のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項20】
スキンケアのために有益な物質が水中に存在する、請求項1から19のいずれかに記載のエマルジョン。
【請求項21】
前記物質が油である、請求項20に記載のエマルジョン。
【請求項22】
前記物質がビタミンAである、請求項20に記載のエマルジョン。
【請求項23】
前記物質がベータカロチンである、請求項20に記載のエマルジョン。
【請求項24】
水、親水性粒子、及び疎水性粒子からなり、
前記水が疎水性粒子の外側層とその外側層に隣接する親水性粒子の内側層からなるシェルに包含されている、
パウダー。
【請求項25】
親水性粒子が、シェルに包含されている水中に分散されており、水分子が吸着した親水性粒子の線条体を有するゲル状の組織を水と共に形成する、請求項24に記載のパウダー。
【請求項26】
疎水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい、請求項24または25に記載のパウダー。
【請求項27】
Sphilが親水性粒子の比表面積であり、Kphilの値が約20m2/gから約50m2/gの間となる定数であるとき、パウダー中の親水性粒子の相対重量濃度Cphilが式Cphil=Kphil/Sphilを満たす、請求項24から26のいずれかに記載のパウダー。
【請求項28】
Kphilの値が約30m2/gから約40m2/gの間である、請求項27に記載のパウダー。
【請求項29】
親水性粒子の比表面積が約100m2/gよりも大きい、請求項24から28のいずれかに記載のパウダー。
【請求項30】
親水性粒子の直径が約5nmから約150nmの間である、請求項24から29のいずれかに記載のパウダー。
【請求項31】
前記シェルの平均直径が約1μmから約20μmである、請求項24または30に記載のパウダー。
【請求項32】
親水性粒子が、非極性のラジカルで覆われている表面を有する酸化物粒子からなる、請求項24から31のいずれかに記載のパウダー。
【請求項33】
親水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている親水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる親水性粒子の混合物である、請求項32に記載のパウダー。
【請求項34】
酸化物粒子がSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、及びMnO粒子からなる一群から選ばれる、請求項32または33に記載のパウダー。
【請求項35】
極性を有するラジカルがOH、Ca2CO3、CuSO4、及びCaSO4からなる一群から選ばれる、請求項32から34のいずれかに記載のパウダー。
【請求項36】
疎水性粒子が、非極性のラジカルで覆われている表面を有する酸化物粒子からなる、請求項24から35のいずれかに記載のパウダー。
【請求項37】
疎水性粒子が、第一の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の第一形状と、その第一の酸化物とは異なる第二の酸化物を基礎とする粒子で形成されている疎水性粒子の少なくとも一つの第二形状とからなる疎水性粒子の混合物である、請求項36に記載のパウダー。
【請求項38】
酸化物粒子がSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、及びMnO粒子からなる一群から選ばれる、請求項36または37に記載のパウダー。
【請求項39】
スキンケアのために有益な物質が水中に存在する、請求項24から38のいずれかに記載のパウダー。
【請求項40】
前記物質が油である、請求項39に記載のパウダー。
【請求項41】
前記物質がビタミンAである、請求項39に記載のパウダー。
【請求項42】
前記物質がベータカロチンである、請求項39に記載のパウダー。
【請求項43】
皮膚の一領域に請求項1から23のいずれかに記載のエマルジョンの層を形成すること、且つ、
エマルジョンの水分の一部が前記領域に吸収され及び前記層の体積が収縮するように、前記層が、親水性粒子と疎水性粒子が有する皮膚に対する親和力によって皮膚に固定され及びエマルジョンの水分が前記領域に吸収されるにつれて収縮する傾向がある、前記領域上の糸状体の網様構造に変化するために、十分な時間待つこと、
からなる、皮膚の一領域にできた皺を減らす方法。
【請求項44】
網様構造が、水を吸収し、膨張し、その後皮膚へ水を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ水を供給すること、
からなる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
網様構造が、網様構造と皮膚に吸収される成分を吸収し、膨張し、その後皮膚へ前記成分を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ前記成分を有する物質を供給すること、
からなる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記成分が油である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記成分がビタミンAである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記成分がベータカロチンである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
パウダー中のシェルが破裂してその水内容物を解放し、破裂セル中の解放された水と親水性粒子と疎水性粒子が皮膚の一領域上に層を形成するために、その領域に請求項24から48のいずれかに記載のパウダーを前記領域に塗布すること、且つ、
前記層中の水分の少なくとも一部が前記領域に吸収され且つ前記層の体積が収縮するために、前記層が、親水性粒子と疎水性粒子が有する皮膚に対する親和力によって皮膚に固定され及び網様構造中の水分が前記領域に吸収されるにつれて収縮する傾向がある、前記領域上の糸状体の網様構造に変化するために、十分な時間待つこと、
からなる、皮膚の一領域にできた皺を減らす方法。
【請求項50】
網様構造が、水を吸収し、膨張し、その後皮膚へ水を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ水を供給すること、
からなる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
網様構造が、網様構造と皮膚に吸収される成分を吸収し、膨張し、その後皮膚へ前記成分を放ち、再び収縮するために、網様構造形成後に前記領域へ前記成分を有する物質を供給すること、
からなる、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記成分が油である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記成分がビタミンAである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記成分がベータカロチンである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
水と親水性粒子の溶液を作成すること、
混合物を作るためにその溶液に若干の疎水性粒子を加えること、
混合物中に気泡が発生するように気体で空洞を作って混合物中に気体を存在させること、その混合物に加えられている疎水性粒子の量が、その混合物がパウダーを形成するには十分でないこと、
からなる、水中に浮遊する気泡を包み込むエマルジョンを作成する方法。
【請求項56】
水と親水性粒子の溶液を作成すること、
混合物を作るためにその溶液に若干の疎水性粒子を加えること、
水の液滴を親水性粒子と疎水性粒子のシェルで包み込むために気体で空洞を作らせること、
その混合物中の疎水性粒子と親水性粒子の量が、混合物中の全ての水を液滴として包み込むことができるほど十分な数のシェルを形成するために必要なだけ存在すること、
からなる、水を含むパウダーを作成する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公開番号】特開2009−7351(P2009−7351A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−148549(P2008−148549)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【分割の表示】特願2003−550757(P2003−550757)の分割
【原出願日】平成14年11月7日(2002.11.7)
【出願人】(504178155)オア−レ−オア リミテッド (1)
【Fターム(参考)】