説明

親水性重合体の製造方法

【課題】生産性向上を実現し、かつ優れた性能の親水性重合体(吸水性樹脂)を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る製造方法は、親水性単量体を含有する水溶液中に親水性高分子を分散させておき、この親水性高分子を、親水性重合体を製造する過程で発生する中和熱(水和熱)および/または重合熱を利用することによって溶解させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は親水性重合体の製造方法に関するものである。具体的には、製造過程で発生する中和熱および/または重合熱を利用して、常温で固体の粉末状化合物、例えば、澱粉やポリビニルアルコール(PVA)といった親水性高分子化合物を単量体水溶液中で溶解させて単量体を重合する、親水性重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、親水性重合体の一例である吸水性樹脂は、紙オムツや生理用ナプキン、成人用失禁製品等の衛生用品、土壌用保水剤、等の各種用途に幅広く利用され、大量に生産および消費されている。特に、紙オムツや生理用ナプキン、成人用失禁製品等の衛生用品用途では、製品の薄型化のために吸水性樹脂の使用量を増し、パルプ繊維の使用量を減らす傾向にある。そこで、吸水性樹脂に対しては、加圧下吸収倍率の大きいものが望まれている一方、衛生用品1枚当りの吸水性樹脂使用量が多いため、低コストで製造できることが望まれている。そのため、吸水性樹脂の製造ラインでのエネルギー消費量の低減、排出物の低減およびそれらによる合理的製法の確立が望まれている。
【0003】
吸水性樹脂に望まれている特性として、高吸水倍率、耐塩性、低水可溶分、高吸水速度、高ゲル強度などがあるが、これら諸特性の向上を目的として、不飽和単量体を重合させ吸水性樹脂を製造する際に、常温で固体の粉末状化合物、例えば、澱粉やポリビニルアルコールといった特定の親水性高分子を添加する方法が知られている(特許文献1〜3参照)。すなわち、モノマーの増粘剤、グラフト重合、架橋などを目的として重合時のモノマーに上記したような特定の親水性高分子を存在させることによる重合工程の改善方法もよく行われている。
【0004】
ところで、水溶性高分子であるポリビニルアルコール系重合体やポリアクリルアミド系重合体などの親水性高分子は、通常、粉末状態の物が多く、単量体水溶液に添加する前に予め水に溶解して水溶液として使用されることがほとんどである。また、このような粉末状の水溶性高分子を溶解するには、常温水に一気に投入した場合は「ままこ」が発生するため、冷水に分散させるか撹拌しながら徐々に投入し分散させた後、撹拌しながら昇温して溶かすという操作を行うのが一般的である。
【特許文献1】特公昭62−921号公報
【特許文献2】特開昭62−270607号公報
【特許文献3】特開昭54−37188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したように親水性高分子溶液を予め調製し、これを添加するという手法では、吸水性樹脂を製造する過程とは別に親水性高分子溶液を調製する工程を設けなくてはならず、冷却や加熱装置を備えた溶解タンクおよびできた粘性水溶液の移送のポンプなどが必要となり時間とコストがかかる。また、実際の調製で、例えば親水性高分子の中でも「ままこ」になり難い澱粉の場合であっても、α化して溶解させるためには約60℃以上に分散水溶液を昇温させるといったように調製操作が煩雑であるという問題がある。さらに、生産性向上とコスト削減のために、重合させる水溶液中の単量体濃度を高めようとした場合には、前記親水性高分子溶液の濃度が薄いときには重合溶液の単量体濃度を高めることが困難となる。そのため、親水性高分子溶液の濃度を高めようとすると溶解操作に手間がかかり、また、できた溶液も高粘度となるため、取り扱いが困難となるという問題もある。従って、近年における吸水性樹脂の大量製造において、親水性高分子を添加する場合に、このような親水性高分子溶液を調製することは、生産性の向上を著しく妨げる原因となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた性能の親水性重合体を、生産性よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、親水性重合体の製造過程で発生する中和熱(水和熱)および/または重合熱を利用することによって、単量体溶液内において、直接、常温で固体の粉末状化合物を溶解させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記の目的を達成するために、親水性単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記親水性単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記分散液中の上記親水性単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
上記した本発明に係る親水性重合体の製造方法によれば、上記したような従来の製造方法と比較して生産性を格段に向上させて優れた性能の親水性重合体を製造することが可能である。
【0010】
すなわち、本発明の方法によれば、調製工程において上記化合物を溶液中に分散させた状態で、重合熱を利用して該化合物を溶解させる。これにより、従来の手法と比較した場合、本発明の方法では、親水性重合体(例えば吸水性樹脂)を製造する過程とは別に常温で固体の粉末状化合物(例えば澱粉やPVA)の溶液を調製する工程を設ける必要がなく、製造工程の簡素化を図ることができ、コストを低減させることができる。
【0011】
また、従来の手法においては、例えば澱粉の場合では、α化して溶解させるためには約60℃以上に分散水溶液を昇温させるといったように調製操作が煩雑であったが、本発明では、上記化合物を単量体溶液中に分散させた状態で、重合熱を利用して該化合物を溶解するという簡易な操作によって、化合物を溶液中に均一に溶解させることができる。これにより、吸水性樹脂の大量製造を実現しようとする場合であっても、調整操作にも大きな労力を必要とすることなく、また、親水性高分子溶液の量も増加しない。そのため、大量の吸水性樹脂を製造する場合であっても、生産性良く製造することが可能である。
【0012】
なお、ここで、「分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる」とは、溶液と混合した時点での化合物の混合量(これを100%とする)の30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは100%が溶解している状態を示す。
【0013】
本発明に係る親水性重合体の製造方法では、上記親水性単量体が、酸基含有単量体であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記の目的を達成するために、酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって、常温の該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合する重合工程と含むことを特徴としている。
【0015】
上記した本発明に係る親水性重合体の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して生産性を向上させることができ、かつ優れた性能の親水性重合体を製造することが可能である。
【0016】
すなわち、本発明の方法によれば、調製工程において上記化合物を溶液中に分散させた状態で、中和工程で発生する中和熱および/または水和熱を利用して該化合物を溶解させている。これにより、親水性高分子溶液(本発明おける「化合物」)を予め調製し、これを添加するという従来の手法と比較した場合、本発明の方法では、親水性重合体(例えば吸水性樹脂)を製造する過程とは別に親水性高分子溶液を調製する工程を設ける必要がない。よって、製造工程の簡素化を図ることができ、コストを低減させることができる。
【0017】
また、従来の手法においては、例えば澱粉の場合では、α化して溶解させるためには約60℃以上に分散溶液を昇温させるといったように調製操作が煩雑であったが、本発明では、上記化合物を水溶液中に分散させた状態で、重合熱を利用して該化合物を溶解するという簡易な操作によって、化合物を溶液中に均一に溶解させることができる。これにより、吸水性樹脂の大量製造を実現しようとする場合であっても、調整操作にも大きな労力を必要とすることなく、また、親水性高分子溶液の量も増加しない。そのため、大量の吸水性樹脂を製造する場合であっても、生産性良く製造することが可能である。
【0018】
なお、ここで、「分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる」とは、溶液と混合した時点での化合物の混合量(これを100%とする)の30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは100%が溶解している状態を示す。
【0019】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記の目的を達成するために、酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記調製工程により調製された上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって、該中和工程後の分散液中に分散している該化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含むことを特徴としている。
【0020】
上記した本発明に係る親水性重合体の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して生産性を向上させることができ、かつ優れた性能の親水性重合体を製造することが可能である。
【0021】
すなわち、本発明の方法によれば、調製工程において上記化合物を溶液中に分散させた状態で、中和工程で発生する中和熱および/または水和熱と、重合工程で発生する重合熱とを利用して該化合物を溶解させている。これにより、親水性高分子(本発明おける「化合物」)溶液を予め調製し、これを添加するという従来の手法と比較した場合、本発明の方法では、親水性重合体(例えば吸水性樹脂)を製造する過程とは別に親水性高分子溶液を調製する工程を設ける必要がない。よって、製造工程の簡素化を図ることができ、コストを低減させることができる。
【0022】
また、従来の手法においては、例えば澱粉の場合では、α化して溶解させるためには約60℃以上に分散水溶液を昇温させる調製操作が煩雑であったが、本発明では、上記化合物を溶液中に分散させた状態で、重合熱を利用して該化合物を溶解するという簡易な操作によって、化合物を溶液中に均一に溶解させることができる。これにより、吸水性樹脂の大量製造を実現しようとする場合であっても、調整操作にも大きな労力を必要とすることなく、また、親水性高分子溶液の量も増加しない。そのため、大量の吸水性樹脂を製造する場合であっても、生産性良く製造することが可能である。
【0023】
なお、ここで、「分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる」とは、水溶液と混合した時点での化合物の混合量(これを100%とする)の30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、最も好ましくは100%が溶解している状態を示す。
【0024】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記中和工程において、中和率50〜85モル%となるまで中和することが好ましい。これにより、該化合物を十分に溶解できる中和熱が得られやすくなる。
【0025】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記重合熱の最高温度が、低くとも100℃であることが好ましい。
【0026】
これにより、水溶液中に分散された化合物をより一層良好に溶解させることが可能となる。
【0027】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記酸基含有単量体として含まれている構成成分のうちの50%以上が、アクリル酸および/またはそのアクリル酸塩であることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記親水性重合体が、水溶性重合体および/または吸水性樹脂であることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記化合物として、常温で固体の粉末状化合物を用いることができる。
【0030】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記常温で固体の粉末状化合物が、その90重量%以上が5mm以下の粒子径の範囲にあることが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記常温で固体の粉末状化合物が、60℃の水100gに対する溶解度が2g以上であることが好ましい。
【0032】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、上記常温で固体の粉末状化合物が、親水性高分子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る親水性重合体の製造方法は、以上のように、親水性単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記親水性単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記分散液中の上記親水性単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含むことを特徴としている。
【0034】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合する重合工程と含むことを特徴としている。
【0035】
また、本発明に係る親水性重合体の製造方法は、酸基含有単量体を水溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記調製工程により調製された上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって、該中和工程後の分散液中に分散している該化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含むことを特徴としている。
【0036】
上記した本発明に係る親水性重合体の製造方法によれば、それぞれ、従来の製造方法と比較して生産性を向上させることができ、かつ優れた性能の吸水性樹脂(親水性重合体)を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
なお、以下の説明において、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、「主成分」とは50質量%以上含有しているという意味として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上B以下であることを示す。
【0039】
本発明の一実施形態における製造方法は、親水性単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記親水性単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記分散液中の上記親水性単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含む方法である。
【0040】
また、本発明の別の実施形態における製造方法は、酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合する重合工程と含む方法である。
【0041】
さらに、別の実施形態における製造方法は、酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、上記調製工程により調製された上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって、該中和工程後の分散液中に分散している該化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含む方法である。なお、上記の中で好ましい実施形態は、中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる中和工程と、上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合する重合工程と含む方法である。
【0042】
なお、以下の説明では、吸水性樹脂を上記の親水性重合体の一例として挙げて説明する。
【0043】
本発明で用いられる、重合して吸水性樹脂となる単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の、アニオン性不飽和単量体およびその塩;メルカプト基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。これら単量体は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよいが、得られる吸水性樹脂の性能やコストの点から、アクリル酸および/またはその塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、アミン類等の塩、中でもコスト面からナトリウム塩が好ましい)を主成分として用いることが必要である。また、好ましくは、アクリル酸および/またはその塩が全単量体成分に対して50モル%以上、より好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。
【0044】
溶液中(好ましくは水溶液中)での単量体の濃度は、特に制限はないが、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは35〜60重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。30重量%未満では生産性が低く、70重量%を超えると吸収倍率が低くなる。
【0045】
重合熱および/または、中和熱/水和熱により溶解させる化合物としては、溶液の液温が0〜40℃、さらには10〜30℃、特に25℃(なお、圧力は常圧(1気圧)とする)である場合に、該水溶液中に分散可能な化合物である(本明細書中では、この温度範囲を常温と呼ぶ)。このような化合物としては、澱粉、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールおよびその部分鹸化物、カルボキシル基含有ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)およびその共重合体、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合体、またはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級塩などのカチオン性単量体とポリアクリルアミドの共重合体、ポリエチレン(ポリプロピレン)グリコールおよびその末端変性物等の、水溶液の調製に加熱や冷却および/または時間のかかる親水性高分子、昇温と共に溶解度が増加する、例えば、水に対する溶解度が20℃から60℃で2倍以上となるようなマンニトール、トレハロースのような結晶性の高い還元糖、非還元糖などを挙げることができる。これらの化合物は、通常、常温で固体の粉末状化合物(例えば米国特許4693713号記載の化合物、米国特許6599989号記載のキレート化合物の粉末などが例示できる)である。また、これらの化合物の中でも、その90重量%以上が5mm以下の粒子径の範囲にあるものが好ましく、さらには5μm〜3mmが好ましく、特に10μm〜1mmの粒子径の範囲にあるものが好ましい。粉末の粒子径が5mmを超えると吸水性樹脂中に溶け残りの大きな未溶解物が存在してしまう場合がある。粒度分布(粒子径分布)の測定は、38μm〜5mm程度の粒子については、公知のふるい網(JIS Z 8801-1:2000)を用いてタップ式等のふるい分け試験機を用いて測定することができ、38μm未満の粒子についてはレーザー回折式粒子径分布測定装置等を用いて測定することができる。なお、以下の説明ではこれらの化合物のことをまとめて「親水性化合物」と呼ぶ。
【0046】
具体的には、上記親水性化合物は、常圧で60℃の水100gに対する溶解度が好ましくは2g以上、さらに好ましくは5g以上、さらに好ましくは10g以上、さらに好ましくは30g、特に好ましくは50g以上のものである。
【0047】
また、重合用の親水性単量体溶液に対して分散状態になるが、その温度から昇温して高温となることで溶解することができるような、あるいは高温となることで溶融して溶解することができるような疎水性単量体や疎水性界面活性剤、例えばトリメチロールプロパンやラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、エルシン酸アミド、オレイン酸アミドなども挙げることができる。
【0048】
また、単量体に対する親水性化合物の濃度は、特に制限はなく、目的とする性能に応じて適宜設定すればよいが、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、さらに好ましくは30重量%以下である。0.1重量%未満では添加による効果がほとんど見られず、50重量%を超えると吸収倍率の低下などが見られる場合がある。単量体水溶液に対する親水性化合物の濃度としては、溶け残りが問題となる場合を除いて特に制限はないが、50重量%以下となるのが好ましい。なお、単量体水溶液に分散させる親水性化合物の量としては、溶け残りが問題となる場合を除いて特に制限はないが、単量体水溶液100%に対して50重量%以下となるのが好ましく、30重量%となるのがさらに好ましい。
【0049】
本発明の製造方法では、親水性化合物を、該親水性化合物が溶解しない液体、あるいは、そのほとんどが溶解しない液温の水溶液中に添加(混合)することで該親水性化合物をままこなどが生成することなく容易に分散させて分散液を調製することができる(調製工程)。分散方法としては、特に制限はないが、例えば、タンク中の液体の単量体または単量体水溶液中に投入して分散させたり、連続的に流れる前記液中に混合機を用いて連続的に分散させるといった方法を用いることができる。タンク中に分散させる場合は、分散粒子が沈殿しないように攪拌しておくのが好ましい。このように該親水性化合物を分散させることによって、重合熱および/または、中和熱および/または水和熱が生じた際、親水性化合物を単量体水溶液中で均一に溶解させることができる。
【0050】
なお、親水性単量体を含有する水溶液には、上記した親水性化合物の他に、後述する内部架橋剤などの不飽和単量体成分や、重合開始剤等のその他の添加剤も含まれる。
【0051】
親水性単量体が酸基含有単量体である場合には、酸基含有単量体の中和が必要となる。酸基含有単量体の中和を行う際(中和工程)、中和率として特に制限はないが、衛生用品等、人体に触れる可能性のある用途では、重合後の中和を必要としないこともあわせ、50モル%以上が好ましい。より好ましくは50モル%以上85モル%未満、より好ましくは55モル%以上80モル%以下、最も好ましくは60モル%以上75モル%以下である。中和には炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミンなどの公知の塩基性物質が用いられる。
【0052】
このような中和工程によって中和熱および/または水和熱が発生し、単量体水溶液の液温は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上となる。60℃未満であると、親水性化合物を十分に溶解させることができないため好ましくない。なお、液温は一般的な水銀温度計、アルコール温度計、白金測温抵抗体、熱電対またはサーミスタなどの接触式温度センサーや、放射温度計を用いて測定する。
【0053】
本発明に係る製造方法では、中和熱および/または水和熱によって単量体水溶液を十分に昇温させることができない場合は、後述する重合熱のみを用いて親水性化合物を溶解してもよい。しかしながら、中和熱および/または水和熱によって単量体水溶液が十分に、すなわち親水性化合物を溶解させるのに十分な温度まで昇温できる場合は、中和熱および/または水和熱によって親水性化合物を溶解させることができる。また、中和熱および/または水和熱を親水性化合物の溶解に用いる構成の場合、中和熱および/または水和熱によって、分散させた親水性化合物の全量を溶解させる構成であってもよいが、その一部のみを溶解させる構成であってもよい。一部のみを溶解させる構成の場合、中和工程において、水溶液と混合した時点での親水性化合物の混合量(これを100%とする)の30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上が溶解していることが好ましい。グラフト重合体を目的とした時には30重量%未満では有意なグラフト化物が得られない場合がある。
【0054】
なお、中和熱および/または水和熱の発生は、単量体水溶液の昇温に有効に利用し、親水性化合物を溶解させるために利用するだけでなく、中和熱および/または水和熱を溶存酸素の除去に利用することが好ましい。
【0055】
このように中和熱および/または水和熱を有効に利用するためには、断熱状態で中和を行うことが好ましく、連続的に中和を行い連続的に重合を行うことがより好ましい。そのため、例えば、放熱を極力抑えた容器を用いることが望ましく、材質としては、樹脂、ゴム、ステンレスの非接材部を保温材で蔽ったもの等が好ましく用いられる。
【0056】
本発明において、架橋構造を有する吸水性樹脂を得る方法としては、架橋剤を単量体に添加して重合を行う。また、その際に重合時のラジカル自己架橋や放射線架橋などの公知の吸水性樹脂を得るための架橋方法を併用してもよい。
【0057】
用いられる内部架橋剤としては、重合時に架橋構造を形成させられるものであれば制限なく用いることができ、例えば、複数の重合性不飽和基を有する架橋剤、グリシジルアクリレート様に重合性不飽和基と高反応性基を合わせ持つ架橋剤、(ポリ)エチレングリコールジグリジルエーテルなどの様に複数の高反応性基を持つ架橋剤、塩化アルミニウムなどの多価金属塩の様なイオン性の架橋剤が例示され併用も制限ないが、複数の重合性不飽和基を有する架橋剤が諸物性の面で最も好ましい。用いられる複数の重合性不飽和基を有する架橋剤として、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリエチレングリコールジ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、(メタ)アリロキシアルカン、グリセリンアクリレートメタクリレートなどの1種または2種以上が例示される。なお、架橋剤の使用量は、架橋剤の種類や目的とする吸水性樹脂に応じて適宜決定されるが、酸基含有重合性単量体に対して通常、0.005〜10モル%、好ましくは0.01〜1モル%、より好ましくは0.05〜0.5モル%である。
【0058】
単量体の重合方法としては、水溶液重合であれば、特に限定されるものではなく、単量体水溶液を静置状態で重合する静置重合法、攪拌装置内で重合する攪拌重合法、などで本発明を実施することができる(重合工程)。
【0059】
なお、重合に際しては、次亜燐酸(塩)等の連鎖移動剤、キレート剤を1重量%以下で添加してもよい。
【0060】
静置重合法では、エンドレスベルトを用いるのが好ましい。ベルトは重合熱を接材面から逃しにくい樹脂ないしゴム製のベルトが好ましい。
【0061】
攪拌重合法では、一軸攪拌機でも可能であるが、複数攪拌軸の攪拌機が好ましく用いられる。
【0062】
一般にラジカル水溶液重合では、重合開始剤投入前に、不活性ガスを吹き込んだり、減圧脱気したりして、重合を阻害する溶存酸素を除去することを行うが、そのための設備、運転経費を要しているのが実状である。本発明の好ましい実施態様では、溶存酸素の除去作業を、中和熱および/または水和熱を利用し、単量体水溶液を昇温して、溶存酸素を揮散させることにより行う。
【0063】
より好ましい実施態様では、単量体水溶液の原料であるアクリル酸、アルカリ水溶液、水などを、あらかじめ脱酸素することなく中和により昇温して、溶存酸素量を、単量体水溶液に対して、好ましくは4ppm以下、より好ましくは2ppm以下、最も好ましくは1ppm以下にし、そのまま脱酸素作業することなしに重合に供することができる。溶存酸素量の測定は、例えば、測定装置(セントラル科学(株)製DOメーターUD−1型)を用いることによって測定することができる。調製した単量体水溶液を窒素雰囲気中で、気泡をかみ込まないように穏やかに攪拌しながら、氷冷し、液温が50℃となった時点で溶存酸素量を測定する。
【0064】
また、単量体水溶液の原料であるアクリル酸、アルカリ水溶液、水などの一部または全部をあらかじめ部分的に脱酸素しておき、中和熱によって、さらに脱酸素するのも好ましい。また、アクリル酸とアルカリをラインミキシング中和し、さらに重合開始剤をラインミキシングして80℃以上の高温度で重合開始する場合には、ライン中での重合開始を防ぐために、原料のアクリル酸、アルカリ水溶液、水などは前もって脱酸素する量を減らすか脱酸素しないのが好ましい。
【0065】
重合は、通常、常圧下で行われるが、重合系の沸騰温度を下げるために減圧下に水を留去しながら行うのも好ましい態様である。操作の容易さ等のため、より好ましくは常圧下で行う。なお、沸騰する場合はアクリル酸が揮発することで得られる重合体の中和率が単量体水溶液で設定した中和率よりも上昇する場合がある。
【0066】
本発明で用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、熱分解型開始剤、(例えば、過硫酸塩:過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム;過酸化物:過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド);アゾ化合物:アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)や、光分解型開始剤(例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物)等を用いることができる。コスト、残存モノマー低減能から過硫酸塩が好ましい。また、光分解型開始剤と紫外線を用いるのも好ましい方法である。より好ましくは、光分解型開始剤と熱分解型開始剤を併用することである。
【0067】
単量体温度は、予め高くしておくことが好ましい。その理由は、先に述べたように、溶存酸素の除去が容易になるためである。また、本発明に係る製造方法では、上記したような中和熱および/または水和熱を利用して単量体水溶液中に分散した親水性化合物を溶解させてもよいため、重合前の単量体温度が高くなっていることによって、分散させた親水性化合物を溶解させることができるためである。また、次に述べる、好ましい重合開始温度が直ちに実現できるからでもある。そのため、重合開始温度は通常50℃以上で、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、より好ましくは80℃〜105℃、最も好ましくは90〜100℃である。重合開始温度が50℃未満であると、誘導期間、重合時間の延びのため生産性が低下するのみならず、吸水性樹脂の物性も低下する。重合開始温度は、単量体水溶液の白濁、粘度上昇、温度の上昇などにより観測することができる。
【0068】
本発明に係る製造方法では、中和熱および/または水和熱を利用して親水性化合物を溶解させてもよいが、その代わりに、重合によって発生する重合熱によって溶解させてもよい。なお、本発明に係る製造方法は、中和熱および/または水和熱と併せて、重合熱を用いて親水性化合物の少なくとも一部を溶解させてもよい。なお、ここで「少なくとも一部」とは、水溶液と混合した時点での化合物の混合量(これを100%とする)の70%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは20%未満が分散したままの状態で残っている、もしくは完全に溶解している状態を示している。
【0069】
本発明に係る製造方法において、重合熱を利用して親水性化合物を溶解させるためには、重合中の最高到達温度は、特に限定されないが、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは115℃以下とする。150℃を超えると、得られる重合体(含水重合体、ベースポリマー、吸水性樹脂)の物性が著しく低下する点で好ましくない。
【0070】
なお、重合系の温度測定方法としては、(株)キーエンス(Keyence)製PCカード型データ収集システムNR−1000を用いることによって測定することができる。具体的には、熱電対を重合系の中心部に置き、サンプリング周期0.1秒で測定する。得られた温度−時間チャートから重合開始温度、ピーク温度(最高到達温度)を読み取る。
【0071】
また、本発明においては、重合開始温度と重合中の最高到達温度との差ΔTが、好ましくは70℃以下であり、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、最も好ましくは25℃以下である。ΔTが70℃よりも大きいと、得られる重合体(含水重合体、ベースポリマー、および吸水性樹脂)の物性が低下する点で好ましくない。
【0072】
重合中の温度を上記のような温度とする重合熱を得るには、単量体濃度をより好ましくは30重量%以上とする。
【0073】
重合時間は、特に限定されないが、好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、より好ましくは3分未満、より好ましくは2分以下、より好ましくは1分以下である。5分を超えると、得られる重合体(含水重合体、ベースポリマー、および吸水性樹脂)の生産性が低下する点で好ましくない。
【0074】
ここで、重合時間の算出方法は、単量体水溶液が重合容器に入れられ、重合開始条件が整った時点(光分解型開始剤を用いる場合は、光照射開始時、光分解型開始剤を用いない場合は、単量体水溶液と重合開始剤が重合容器に入れられた時点)から、ピーク温度までの時間を測定することによって得られる。すなわち、(誘導期間)+(重合開始からピーク温度に達するまでの時間)を測定することによって重合時間を算出することができる。
【0075】
本発明の重合法の好ましい例によれば、重合開始後、系の温度は急速に上昇して低い重合率、例えば全単量体を100モル%としたときの重合率が10〜20モル%で沸点に達し、水蒸気を発し、固形分濃度を上昇させながら重合が進行する。重合熱を有効に利用して固形分濃度を高めるのである。そのため、重合容器の接材部からの放熱は極力抑えることが望ましく、材質としては、樹脂、ゴム、ステンレスの非接材部を保温材で蔽ったもの、あるいはジャケットにより加熱したもの等が好ましく用いられる。系から発せられた水蒸気には、単量体が含まれていることがあるため、その場合には回収して、使用することが望ましい。特に、重合中に蒸発するアクリル酸および/または水を捕集し、リサイクル使用することが好ましい。アクリル酸の回収率は、使用した全アクリル酸(中和前)重量に対して、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上である。
【0076】
含水重合体の固形分濃度の測定方法としては、重合器から取り出された含水重合体の一部を小量切り取って素早く冷やし、はさみで素早く細分化した含水重合体5gをシャーレにとり、180℃乾燥器中で24時間乾燥して算出した。粒子状含水重合体の固形分濃度は、サンプル5gをシャーレにとり、180℃乾燥器中で24時間乾燥して乾燥減量より算出することができる。
【0077】
また、本発明の方法は、高性能の吸水性樹脂を製造するために、常圧下での重合では、重合率が40モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が好ましい態様である。重合率が30モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が、より好ましい態様である。重合率が20モル%では既に100℃以上の温度になり、重合率が50モル%でもやはり100℃以上の温度であるような重合が最も好ましい態様である。減圧重合の場合には、やはり重合率が40モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が好ましい態様である。重合率が30モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が、より好ましい態様であり、重合率が20モル%では既に沸騰温度になり、重合率が50モル%でもやはり沸騰温度であるような重合が最も好ましい態様である。
【0078】
このように、低い重合率で高温になるので、重合所用時間も短く、10分以下で終わるのが通例である。ここで重合所用時間は、重合開始剤を添加した単量体水溶液を重合容器に入れた時から、含水重合体を重合容器から取り出すまでの時間を示す。
【0079】
本発明の製造方法は、例えば図1に示すような連続製造装置1を用いて実施することができる。水酸化ナトリウム水溶液が入った容器5と、アクリル酸水溶液が入った容器6と、架橋剤が入った容器7と、重合開始剤が入った容器8と、これらの容器5〜8からの溶液(剤)の流出を調整するポンプ2と、ベルトコンベア3とを備えている。ベルトコンベア3には、容器5〜8から流出し、混合された単量体水溶液が重合されて形成された含水重合体4が載せられる構成となっている。親水性化合物が澱粉の場合にはアクリル酸水溶液が入った容器6に沈殿しないように攪拌状態で分散させておくのが好ましい。このような形態をとることで、澱粉の分散が容易となり中和熱および/または溶解熱を有効に利用して溶解することができる。
【0080】
上記の含水重合体は、細分化後、乾燥および粉砕されて、ベースポリマー(表面処理を施す前の吸水性樹脂)を得ることができる。
【0081】
本発明の製造方法においては、さらにベースポリマーの表面架橋処理をしてもよく、これにより、1.9kPa(約0.3psi)や4.8kPa(約0.7psi)といった荷重下の吸収倍率の比較的大きい吸水性樹脂を得ることができる。
【0082】
好適に用いられる表面架橋剤としては、酸基と反応し得る架橋剤であり、例えば、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)グリセリン、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコール化合物、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテルなどの多価エポキシ化合物;(ポリ)エチレンイミンなどの多価アミン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オンなどの各種アルキレンカーボネート化合物;アルミニウム塩などの多価金属塩;その他、多価アルデヒド化合物;多価イソシアネート化合物;多価オキサゾリン化合物;オキサゾリジノン化合物;オキセタン化合物;ハロエポキシ化合物;多価アジリジン化合物;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の多価金属塩や、これらの官能基を合わせ持った化合物も例示することができる。
【0083】
これらの表面架橋剤は単独で使用してもよく、また、2種類以上併用してもよい。なお、吸水性樹脂に対する該使用量は、吸水性樹脂の重量に対して0.001〜10重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜5重量%の範囲内とすればよい。
【0084】
表面架橋剤の添加方法は特に制限はなく、該架橋剤を親水性溶媒あるいは疎水性溶媒に溶解させて混合する方法、無溶媒で混合する方法、などが挙げられる。上記の中でも、親水性溶媒として水、または水と水に可溶な有機溶媒との混合物が好適である。親水性溶媒またはその混合物の使用量は、吸水性樹脂や該架橋剤との組み合わせなどにもよるが、吸水性樹脂100%に対して0〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲内とすればよい。混合の際には上記表面架橋剤またはその溶液は、滴下あるいは噴霧して混合することができる。
【0085】
吸水性樹脂と該架橋剤を含む溶液とを混合する際に用いられる混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、高速撹拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型炉ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機などが好適である。
【0086】
吸水性樹脂の表面の架橋密度を上げるために、表面架橋剤を添加混合した後、加熱する。加熱温度は、所望する架橋密度等に応じて適宜選択すればよいが、通常、加熱温度は100〜250℃、より好ましくは150〜250℃の範囲で行われる。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜選択すればよいが、1分〜2時間程度の範囲内で行うのが好ましい。
【0087】
なお、本明細書で、含水重合体、ベースポリマー、表面架橋吸水性樹脂なる用語を用いているが、いずれも吸水性樹脂の一形態を表す用語である。
【0088】
重合して吸水性樹脂となる単量体成分を水溶液重合して生成する含水重合体は、厚板状、ブロック状、シート状等のそのままでは乾燥しにくい形状の場合、通常粉砕された後、乾燥、粉砕、分級、表面処理等の各工程を経て吸水性樹脂製品となる。アクリル酸(塩)系吸水性樹脂の場合、含水重合体の固形分濃度が55重量%未満では肉挽き機(ミートチョッパー)型の押出し機等で容易に粉砕できる。また、固形分濃度が82重量%を超えると乾燥された含水重合体と同様に、通常の衝撃型粉砕機等で容易に粉砕できる。しかしながら、固形分濃度が55重量%以上で82重量%以下の含水重合体は、化学工学便覧(改訂六版、化学工学会編、丸善(株)、1999年)の表16・4の粉砕機の分類のせん断式粗砕機または切断・せん断ミルに相当する装置で粉砕することが好ましい。さらに、固定刃と回転刃とのせん断により粉砕する装置であることが好ましい。
【0089】
また、粉砕に際しては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0090】
粉砕により得られる粒子状含水重合体の重量平均粒子径は、通常、約1mm〜10mmの範囲である。
【0091】
本発明の製造方法においては、解砕後の含水重合体を乾燥させてもよい。乾燥方法に特に制限はないが、攪拌乾燥法、流動層乾燥法、気流乾燥法等のように、材料を動かしながら熱風や伝熱面と良く接触する乾燥方法が好ましく用いられる。乾燥温度は、含水重合体の性状に応じて適宜設定すればよい。
【0092】
本発明の製造方法においては解砕された含水重合体(粒子状含水重合体)のその後の取り扱いは、下記の方法(a)〜(f)から選ぶことができる。すなわち、
(a)粒子状含水重合体のまま製品化;このまま衛生用品や農園芸用等の用途に供する。粒子の流動性のために、微粒子状無機物質(ベントナイト、ゼオライト、酸化珪素、等)を混合してもよい。
(b)粒子状含水重合体に表面架橋剤を混合および反応させ、含水状態のまま製品化;水を蒸発させるエネルギーが不要。粒子の流動性のために、微粒子状無機物質(ベントナイト、ゼオライト、酸化珪素、等)を混合してもよい。
(c)粒子状含水重合体に表面架橋剤を混合および反応させ、乾燥して製品化;乾燥のための加熱エネルギーを表面架橋反応のエネルギーと兼ねることができる。
(d)粒子状含水重合体を乾燥して、そのまま製品化
(e)粒子状含水重合体を乾燥して、粉砕および分級をして製品化
(f)粒子状含水重合体を乾燥して、粉砕、分級および表面架橋をして製品化
という方法から選ぶことができる。
【0093】
以上のように、本発明の製造方法は、親水性化合物を単量体水溶液中に分散させておき、(1)中和熱および/または水和熱、(2)重合熱、(3)中和熱および/または水和熱並びに重合熱、の(1)〜(3)の何れかの熱によって、この親水性化合物を溶解させる構成となっている。従来技術における製造方法では、親水性化合物の溶液を予め調製し、これを単量体水溶液に添加する構成であった。この場合、吸水性樹脂の大量製造を実現しようとすると、親水性樹脂溶液の量も増加してしまうという問題があり、また、親水性化合物として澱粉を用いる場合は、溶解させるためには約60℃以上に分散水溶液を昇温させるといったように調製が煩雑になってしまうという問題があった。そのため、調整操作にも大きな労力を要するため、生産性の向上を妨げる大きな原因となっていた。そこで、本発明の方法によれば、このような問題を全て解消することができ、製造工程を簡素化し、コストを低減させることができるとともに、大量の親水性重合体を製造する場合であっても、生産性良く製造することができる。また、本発明の方法によれば、単量体水溶液中に親水性化合物を分散させた後に溶解させることによって、親水性化合物を水溶液中に均一に溶解させることができ、良好な吸水性樹脂を製造することができる。
【0094】
なお、本発明に係る方法は、以上で説明した吸水性樹脂の製造方法に限定されるものではなく、水溶性樹脂であるポリアクリル酸(塩)系樹脂やポリアクリルアミド系樹脂といった親水性重合体(好ましくは重量平均分子量100〜100万、さらに好ましくは1000〜100万)であれば、本製造方法を適用することができる。
【0095】
本発明に係る親水性重合体の製造方法は、吸水性樹脂の製造において特に好ましく用いることができる。この場合の吸水性樹脂の形状については、特に制限は無く、例えば、不定形破砕状や球状等の粒子状若しくは粉末状、ゲル状、シート状、棒状、繊維状、またはフィルム状であってもよい。また、上記吸水性樹脂を繊維機材等と複合化させたり、担持させてもよいが、吸水性樹脂の用途である吸収物品や園芸緑化を考慮した場合、粒子状若しくは粉末状が好ましい。
【0096】
吸水性樹脂が粒子状若しくは粉末状である場合、表面架橋前若しくは表面架橋後における、吸水性樹脂の質量平均粒子径は通常10〜2000μmの範囲内であり、物性をより向上させるという観点から、好ましくは100〜1000μmの範囲内であり、より好ましくは200〜600μmの範囲内であり、特に好ましくは300〜500μmの範囲内である。また、同様の観点から、吸水性樹脂の粒子径150〜850μmの割合が90〜100重量%であり、より好ましくは95〜100重量%であり、特に好ましくは98〜100重量%である。
【0097】
更に、上記吸水性樹脂は、生理食塩水に対する加圧下吸収倍率(4.8kPa)が好ましくは15g/g以上であり、より好ましくは20g/g以上であり、特に好ましくは23g/g以上であり、最も好ましくは25g/g以上である。また、生理食塩水に対する加圧下吸収倍率(1.9kPa)も通常15g/g以上であり、好ましくは20g/g以上であり、より好ましくは25g/g以上であり、更に好ましくは28g/g以上であり、特に好ましくは32g/g以上である。また、無加重下での吸収倍率は、25g/g以上であり、更に好ましくは28g/g以上であり、特に好ましくは32g/g以上である。
【0098】
上記加圧下若しくは無加重下での吸収倍率が、上記範囲を満たさない場合には、例えば、紙オムツなどで使用した場合に漏れが発生し、また吸収物品自体の吸収特性が低下するため好ましくない。尚、上記加圧下若しくは無加重下での吸収倍率の上限は、特には限定されないが、他の物性とのバランス及びコスト面から、通常60g/g程度である。
【0099】
本発明に係る製造方法では、吸収倍率(無加重下吸収倍率)、加圧下の吸収倍率(AAP(Absorbency Against Pressure))、および可溶分のバランスに優れた、良好な吸収特性を備えた吸水性樹脂を簡便に製造することができる。上記吸水性樹脂は、農園芸保水剤、工業用保水剤、吸湿剤、除湿剤、建材等として広く用いることができ、特に、紙オムツ、失禁パット、母乳パット、生理用ナプキン等の衛生材料に好適に用いることができる。
【0100】
さらに、上記吸水性樹脂は、物性のバランスに優れるため、吸水性樹脂の濃度(吸水性樹脂及び繊維基材の合計に対する吸水性樹脂の重量比)が高濃度の衛生材料(例えば、紙オムツ)に好適に使用することができる。具体的には、上記吸水性樹脂の濃度は、好ましくは30〜100重量%の範囲内、より好ましくは40〜100重量%の範囲内、更に好ましくは50〜95重量%の範囲内で使用することができる。
【実施例】
【0101】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の記載において、特にことわりのない限り、「部」は「重量部」または「質量部」を表すものとし、さらに、吸水性樹脂は、25℃±2℃、相対湿度約50%±5%RHの条件下で使用した。また、生理食塩水として0.90重量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0102】
<吸収倍率>
吸水性樹脂0.2gを不織物製の袋(60mm×85mm)に入れ、25℃±2℃に調温した生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、形式H−122小型遠心機)を用いて250G(250×9.81m/s)で3分間水切りを行った後、袋の重量W2(g)を測定した。また、吸水性樹脂を用いないで同様の操作を行い、そのときの重量W1(g)を測定した。そして、これら重量W1、W2から、次の式(1)、
吸収倍率(g/g)=((W2(g)−W1(g))/吸水性樹脂の重量(g))−1 ・・・(1)
に従って、吸収倍率(g/g)を算出した。
【0103】
<可溶分(量)>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、生理食塩水184.3gを測り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加えて16時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙(No2)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り測定溶液とした。
【0104】
はじめに生理食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば、既知量のアクリル酸とその塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量(抽出された水溶性重合体が主成分)を、下記の式(2)、
可溶分(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0 ・・・(2)
により算出することができる。また、未知量の場合には、滴定により求めた中和率(次の式(3))
中和率(mol%)=(1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl]))×100 ・・・(3)
を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0105】
<加圧下吸収倍率(AAP):0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する4.8kPaの圧力下での吸収倍率>
内径60mmのプラスチック製支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目開き38μm)を融着させ、該網上に吸水性樹脂W(g)(0.900g)を均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して4.8kPaの荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置した。この際、荷重を載せる前に、荷重以外の測定装置一式の重量W3(g)(支持円筒と吸水性樹脂とピストンの重量)を測定した。
【0106】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mm、厚さ5mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所製、細孔直径100〜120μm)を置き、25±2℃に温度調製した、0.90重量%生理食塩水を上記ガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙(トーヨー濾紙社製、ADVANTEC;No.2)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0107】
上記測定装置一式を上記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。この際、液面がガラスフィルターの上面より低下した場合には液を追加して、液面レベルを一定に保った。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、荷重を取り除いた重量W4(g)(支持円筒と膨潤した吸水性樹脂とピストンの重量)を再測定した。そして、これら重量W3、W4から、次式に従って加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0108】
AAP(g/g)=(重量W4(g)−重量W3(g))/W(g)
〔実施例1〕
アクリル酸37.1部、1%ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)水溶液5.4部、および1%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.23部を250mlポリプロプレン樹脂製の容器中で混合して、アクリル酸水溶液を作製した。このアクリル酸水溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら、市販の片栗粉(馬鈴薯澱粉)0.9部を加えて分散させて分散液を作製した。その後、48.5%水酸化ナトリウム水溶液29.7部と水25.0部とを混合して約42℃まで昇温した水酸化ナトリウム水溶液と、上記の分散液とを混合した。これにより、混合液は中和熱で約103℃まで直ぐに昇温した。この昇温により、分散していた澱粉も直ぐに溶解し、重合用の単量体水溶液が得られた。
【0109】
この単量体水溶液の温度が95℃まで低下したところで、重合開始剤として2%過硫酸ナトリウム水溶液2.6部を加えた。過硫酸ナトリウム水溶液の添加により、約3秒後に重合が開始し、樹脂容器中から上部に風船状に膨張しながら重合が進行し、その後樹脂容器中に収まるまでに収縮した。5分後に含水重合体を取り出し、はさみで約1〜5mmサイズの小片に裁断したのち金網に載せ180℃で20分間熱風乾燥した。乾燥物をロールミルで粉砕し、篩を用いて分級することで目開き600μmの篩は通過するが目開き300μmの篩は通過しない部分の粒子状吸水性樹脂(1)を得た。
【0110】
粒子状吸水性樹脂(1)を光学顕微鏡で観察したところ、多数の小さな気泡が存在していた。
【0111】
粒子状吸水性樹脂(1)の吸収倍率および可溶分量は、下記の表1にまとめた。
【0112】
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1において使用した澱粉を、目開き212μmの篩を通過するポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製ゴーセノールGH−17(けん化度86.5〜89.0))に代えて用いた(0.9部使用)以外は、実施例1と同様の方法によって粒子状吸水性樹脂(2)を得た。本実施例においても、上記した実施例1と同じく、ポリビニルアルコールは、重合用の単量体水溶液中に直ぐに溶解した。
【0113】
粒子状吸水性樹脂(2)を光学顕微鏡で観察したところ、粒子状吸水性樹脂(1)ほど多くはないが多数の小さな気泡が存在していた。
【0114】
粒子状吸水性樹脂(2)の吸収倍率および可溶分量は、下記の表1にまとめた。
【0115】
〔実施例3〕
本実施例では、実施例1において使用した澱粉を、溶性澱粉(和光純薬(株)製)に代えて4.5部使用した以外は、実施例1と同様の方法によって同様にして重合を行って含水重合体を得た。
【0116】
次に、含水重合体を実施例1と同じく砕断したあと、70℃で3時間熱風乾燥し、さらに40℃で真空乾燥を行った。乾燥物を卓上粉砕機で粉砕し、篩を用いて分級することで目開き600μmの篩は通過するが目開き300μmの篩は通過しない部分の粒子状吸水性樹脂(3)を得た。
【0117】
粒子状吸水性樹脂(3)の吸収倍率および可溶分量は、下記の表1にまとめた。
【0118】
〔実施例4〕
本実施例では、実施例3において使用した溶性澱粉の使用量を13.5部に代えた以外は、実施例3と同じ方法を用いて粒子状吸水性樹脂(4)を得た。
【0119】
なお、重合用の単量体水溶液および重合後に得られた含水重合物はやや白色だったものの、重合物中に澱粉の塊や粉などは見られず、均質的なゲルであった。
【0120】
粒子状吸水性樹脂(4)の吸収倍率および可溶分量は、下記の表1にまとめた。
【0121】
【表1】

【0122】
〔実施例5〕
ロールミルで粉砕後の乾燥物の篩による分級を、目開き850μmの篩を通過させることに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、粒子状吸水性樹脂(5)を得た。
【0123】
粒子状吸水性樹脂(5)は、吸収倍率35.5(g/g)、可溶分量14.8(重量%)であり、目開き150μmの篩を通過する粒子が全粒子の5.1重量%であった。
【0124】
〔比較例1〕
1Lのポリプロピレン樹脂製の容器中で、アクリル酸20.6部および1重量%ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量522)3.0部、イオン交換水56.9部、および実施例3で使用した溶性澱粉(和光純薬(株)製)7.5部を混合し、分散液を調製した。次いで、分散液を約25℃に保ちながら、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液16.5部を該分散液に滴下混合して中和することにより、単量体水溶液を調製した。なお、単量体水溶液は白濁状態であった。
【0125】
続いて、該単量体水溶液に窒素ガスを吹き込んで窒素置換を行った。次に1重量%の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(商品名:V50、和光純薬(株)製)を2.9部混合し、石英製の蓋で容器を密閉し、紫外線を照射することにより重合を開始させた。尚、重合開始温度は25℃であった。
【0126】
重合は白濁した不均一な状態で進行し、最高温度55℃に達した後、約1時間そのまま密封状態で放置した。静置後、重合物を取り出し、鋏にて直径約1〜5mmサイズの小片に細断し、180℃で20分間熱風乾燥した。
【0127】
上記乾燥物をロールミルで粉砕し、目開き850μmの篩を通過させることにより分級することで、比較粒子状吸水性樹脂(1)を得た。
【0128】
比較粒子状吸水性樹脂(1)は、吸収倍率25(g/g)、可溶分量44.8(重量%)であり、目開き150μmの篩を通過する粒子が全粒子の5.5重量%であった。
【0129】
〔実施例6〕
実施例1で得られた粒子状吸水性樹脂(1)100部に、1,4−ブタンジオール0.4部、プロピレングリコール0.6部、イオン交換水3.0部、イソプロパノール0.5部からなる表面架橋剤を噴霧混合し、さらに、210℃で40分間加熱処理をすることで、表面架橋された粒子状吸水性樹脂(6)を得た。
【0130】
〔実施例7〜10〕
粒子状吸水性樹脂(1)の替わりに、実施例2〜5で得られた粒子状吸水性樹脂(2)〜(5)を用いて、実施例6と同様の操作を行い、表面架橋された粒子状吸水性樹脂(7)〜(10)を得た。
【0131】
〔比較例2〕
粒子状吸水性樹脂(1)の替わりに、比較例1で得られた比較粒子状吸水性樹脂(1)を用いて、実施例6と同様の操作を行い、表面架橋された比較粒子状吸水性樹脂(2)を得た。
【0132】
粒子状吸水性樹脂(6)〜(10)並びに比較粒子状吸水性樹脂(2)の吸収倍率および加圧下吸収倍率の測定結果を示す。
【0133】
【表2】

【0134】
尚、表2中、「AAP1.9」は、1.9kPaの加圧下での吸収倍率を表し、「AAP4.8」は、4.8kPaの加圧下での吸収倍率を表す。
【0135】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。つまり、発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本発明の製造方法では、親水性高分子を、単量体水溶液中に分散させて、中和熱および/または水和熱、および/または重合熱によって溶解させる。これにより、従来の方法と比較して、製造工程を簡素化することができて製造コストを抑えることができるとともに、親水性重合体を大量生産する場合であっても、生産性良く製造することが可能である。
【0137】
従って、本発明の製造方法は、アクリル酸および/またはそのナトリウム塩を主成分とする単量体を水溶液重合して得られる吸水性樹脂や、水溶性樹脂であるポリアクリル酸(塩)系樹脂やポリアクリルアミド系樹脂といった親水性重合体の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の一実施例における吸水性樹脂の製造を実施するための装置の構成を示した模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1 連続製造装置
2 ポンプ
3 ベルトコンベア
4 単量体水溶液が重合されて形成された含水重合体
5 容器
6 容器
7 容器
8 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、
上記親水性単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、
上記分散液中の上記親水性単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含むことを特徴とする親水性重合体の製造方法。
【請求項2】
酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、
上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、
上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって、該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の少なくとも一部を溶解させる中和工程と、
上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合する重合工程とを含むことを特徴とする親水性重合体の製造方法。
【請求項3】
酸基含有単量体を溶液中で重合することによって親水性重合体を製造する方法であって、
上記酸基含有単量体を含有する溶液と、該溶液に分散可能な化合物とを混合して、該化合物を分散させた分散液を調製する調製工程と、
上記調製工程により調製された上記分散液と、上記酸基含有単量体を中和する中和剤とを混合して該酸基含有単量体を中和するとともに、該中和により発生する中和熱および/または水和熱によって該分散液を昇温させて、分散している上記化合物の一部を溶解させる中和工程と、
上記中和工程により中和された、上記分散液中の酸基含有単量体を重合させるとともに、該重合により発生する重合熱によって、該中和工程後の分散液中に分散している該化合物の少なくとも一部を溶解させる重合工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
上記重合熱により上昇する重合体の最高温度が、低くとも100℃であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記親水性単量体が、酸基含有単量体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記中和工程では、中和率50〜85モル%となるまで中和することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
上記酸基含有単量体または上記親水性単量体として含まれている構成成分のうちの50%以上が、アクリル酸および/またはそのアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記親水性重合体が、水溶性重合体および/または吸水性樹脂であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記化合物が、常温で固体の粉末状化合物であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記常温で固体の粉末状化合物が、その90重量%以上が5mm以下の粒子径の範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記常温で固体の粉末状化合物が、60℃の水100gに対する溶解度が2g以上である請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
上記常温で固体の粉末状化合物が、親水性高分子であることを特徴とする請求項9から11の何れか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−191708(P2007−191708A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343568(P2006−343568)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】