説明

親水防汚コーティング組成物、それを用いた被膜の形成方法及び用途

【課題】 シリカゾルの親水性を最大限に発揮させ、かつ、引火性や吸引毒性を有する非水溶剤を用いない親水防汚コーティング組成物及びその耐久性を向上させる膜の形成方法及びその用途を提供する。
【解決手段】
アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物、これを用いた耐久性を向上させる膜の形成方法及びその用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水防汚コーティング組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、水の接触角が10°以下の親水防汚コーティング組成物に関し、ガラス、ミラー、タイル、衛生陶器、金属などの比較的親水性な基材表面に塗布することによって、被塗物の表面を水の接触角が10°以下の親水表面に変え、水滴跡の付着を防止したり、油性汚れをとれやすくする親水防汚コーティング組成物、それを用いた被膜の形成方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水、水道水などの水がかかる物品の表面には、水が乾いた跡に汚れが残ることが多く、車両や窓ガラスの表面など汚れが目立つ箇所においては、都度洗浄しなければ美観を維持することが出来なかった。
水がかかった後に汚れが残る原因としては、水の中に溶けていた不揮発性の成分(シリカ、炭酸カルシウム、その他無機塩類などの溶解性物質又は不溶性懸濁物質)が、水が蒸発した跡に残ることがあげられ、特に水滴が残る撥水性表面、例えば図1に示すように撥水処理した車両の塗装面では、雨などの水滴が乾燥すると水滴部分に汚れが残る現象が起きる。
近年、光触媒やその他親水性をもたらすコーティング材料が開発され、水滴を形成しないようにすることによって、このような汚れの付着を防止する技術が開発されている。
光触媒は、一般的には太陽光の紫外線による励起エネルギーを利用して親水化したり、有機質汚れを分解するため、防汚塗膜としての利用価値は高いと考えられているが、光があたらない箇所では効果が弱く、施工後すぐに親水性を発現できないなどの課題があった。
その他の親水性材料としては、シルカゾルが従来より使用されてきたが、単独では、基材との密着性が不十分であったり、厚膜になると透明性が低下したり、膜強度が脆くなったりして、結果的に実用的な皮膜は得られなかった。
【0003】
一方、他の造膜性や基材との密着性に優れた材料をシリカゾル(コロイダルシリカ分散液)と組み合わせたコーティング組成物が知られている。
コロイダルシリカに、4官能性アルコキシシランを加水分解重縮合させて得られるシリコーンレジンを組み合わせて、耐久性を付与した親水性無機塗料組成物が提案されている(特許文献1)。この組成物は、親水性、密着性に優れ、極めて利用価値が高いものであるが、溶剤がアルコールなどの非水溶剤に限定されるため、非水溶剤が使用できない用途にはそぐわないという問題があった。
これは、4官能性アルコキシシランが加水分解による重縮合反応を起こすため、希釈溶剤が水である場合、重縮合反応が進みすぎて、ゲル化や沈殿形成を起こし、液の保存安定性を維持することが困難になるためと考えられる。
【特許文献1】特許第3,367,953号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように前記従来のシリカゾルを利用した親水性組成物は、単独では基材との密着性が不十分であったり、厚膜になると透明性が低下したり、膜強度が脆くなったりして、結果的に実用的な皮膜は得られず、4官能性アルコキシシランを加水分解重縮合させて得られるシリコーンレジンと組み合わせると、基材との密着性は向上するものの溶剤が非水溶剤に限定されるなどの問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであって、シリカゾルの親水性を最大限に発揮させ、かつ、引火性や吸引毒性を有する非水溶剤を用いず、最も安全な水を主溶剤として用いることができ、さらに、必要に応じて膜の耐久性をさらに向上させることができる、親水防汚コーティング組成物及びその耐久性を向上させる膜の形成方法を提供することを目的とする。
これによって、様々な基材表面を、安全にかつ簡単に、超親水性のコーティング被膜で保護することができるため、基材表面に雨跡などの汚れ付着がなくなり、長期にわたって、洗浄作業が大幅に軽減される。

【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の水分散性シリカゾル、水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び特定の水溶性溶剤を組み合わせることにより目的が達成できることを見出した。
すなわち、
本発明は、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であり、20℃の粘性率が10mPa・s以下であり、かつ、25℃の表面張力が40mN/mより小さいことを特徴とする親水防汚コーティング組成物である。
また、本発明では、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルのシリカ平均粒子径が5〜50nmとすることができる。
さらにまた、本発明では、水溶性溶剤が、20℃の粘性率が10mPa・s以下であり、かつ、25℃の表面張力が40mN/mより小さいものを選ぶことが望ましい。

さらに本発明では、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルの固形分濃度が0.01〜2.0質量%の範囲とすることができる。
また、本発明では、界面活性剤の濃度が、0.01〜0.5質量%の範囲であり、かつ、水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤の0.1質量%水溶液の表面張力が35mN/mより小さくすることができる。
本発明においては、沸点が120℃以上の水溶性溶剤がグリコールエーテルから選ばれた1種又は2種以上を含むことができる。
さらに本発明は、これらの親水防汚コーティング組成物をコーティングした後、4官能性アルキルアルコキシシランを含む反応性希釈液を塗布し、親水防汚コーティング膜の耐久性を向上させる膜の形成方法である。
また、本発明においては、被塗布物を、車両の車体、車両又は建築物の窓ガラス、ミラー、タイル、衛生陶器、流し台のステンレス部位、メッキ部位とすることが出来る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の親水防汚コーティング組成物は、表2の結果から明らかなように、被膜の親水性に優れ、親水効果を一定期間持続させることができるとともに、被膜が残っている間は被塗物表面の雨跡汚れなどの付着を防止でき、かつ、水を主溶剤として選択できるために、作業者や地球環境に安全なコーティング組成物であり、様々な用途に利用できる利便性を兼ね備えているという極めて有用な効果をもたらした。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の親水防汚コーティング組成物において用いる、水分散性シリカゾルは、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルであれば何でも良いが、とくに、
シリカ平均粒子径5〜50nmのものが好ましく用いられる。とくに好ましくは、5〜20nmである。シリカゾルのシリカ平均粒子径が5nmより小さいと造膜した際の膜厚が小さくなりすぎて、親水性能が低下する。また、市販品がなく、製造コストがかかる。シリカゾルのシリカ平均粒子径が50nmより大きいと、膜の透明性及び強度が低下する。また、シリカゾルの固形分濃度としては、親水防汚コーティング組成物の0.01〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.5質量%である。シリカゾルの固形分濃度が0.01質量%より低いと親水性が低下する。シリカゾルの固形分濃度が1.0質量%より大きいと、膜厚が大きくなりすぎて干渉縞(虹色)が目立ち、外観が悪くなる。また、膜が割れやすく、強度が低下する。
またさらに、図2に示すように、ゾル中のシリカ微粒子はアルカリの存在下で電気二重層を形成して、安定化している。そして、被膜ではゲル化が起こる。このときアルカリとして、ナトリウムが存在しているとナトリウム塩となり、蒸発しない為、被膜に残留し、汚れの原因になる。
このため、本発明では、市販の水分散性シリカゾルは、ナトリウム中和型、アンモニア中和型、非中和酸型の3種類に大別されるが、このうちの、アンモニア中和型又は揮発性アミン中和型に限定する。
本発明では、不純物として存在するナトリウムの目安として、シリカゾル中の酸化ナトリウムに換算した含有量が0.2質量%以下のものを用いると良く、より好ましくは、0.1質量%以下である。
酸化ナトリウムの含有量が0.2質量%より大きいナトリウム中和型を用いると、造膜成分がシリカゾルのナトリウム塩となり、耐久性が低下することを確認した。また、pHが比較的高く、ガラス質と一体化しやすく、基材表面にシミを形成しやすい。非中和酸型を用いると本発明実施例とほぼ同等の塗膜性能が得られるが、酸性溶液となり、安全に使用できるとは言い難く、また、長期の保存安定性を得難い。
アンモニア中和型の水分散性シリカゾルは、成膜後にアンモニアが揮発してシラノール基に富むコロイダルシリカの凝集膜を形成する。超微粒子であるために表面エネルギーが大きく、水素結合により比較的強固な膜となり、強力な親水性を発現する。また、水溶液のpHは8〜10の弱アルカリ性領域で安定化させることができるため、比較的安全な水溶液とすることができる。アンモニアはトリエチルアミンなどの揮発性アミン類であってもほぼ同様な効果が得られる。このようなアンモニア中和型の水分散性シリカゾルは市販されており、スノーテックスN(日産化学工業株式会社製)、ルドックスAS(グレースジャパン株式会社製)、カタロイドS−20L(触媒化成工業株式会社製)、アデライトAT−20N(旭電化工業株式会社製)などが挙げられる。
水分散性シリカゾルのTEM写真を図3に示す。
【0008】
本発明で用いる界面活性剤は、水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤ものであればどのような物でも使える。
コーティング組成物の表面張力を低下させ、基材表面に均一に塗布するための必須成分である。界面活性剤の種類は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤の中から自由に選択できるが、表面張力低下能に優れ、使用又は保管する温度範囲においても安定した性能を発揮するものの中から選ばれる。
界面活性剤の表面張力低下能は、0.1%水溶液の表面張力が35mN/mより小さいことが好ましく、より好ましくは、30mN/mより小さいことである。界面活性剤の0.1%水溶液の表面張力が35mN/mより大きいと、基材に対する濡れ性が低下し、均一に塗布することが困難となる。界面活性剤の濃度は0.01%〜0.5%の範囲が好ましく、より好ましくは0.05%〜0.2%である。界面活性剤の濃度が0.01%より低いと表面張力低下能が低くなり、基材に対する濡れ性が悪くなる。界面活性剤の濃度が0.5%より高くなると界面活性剤自身の残渣が目立ち、外観が悪くなるとともに膜の強度が低下する。
【0009】
本発明で用いる沸点が120℃以上の水溶性溶剤としては、沸点が120℃以上である水溶性のグリコールエーテルから選ばれた1種又は2種以上を挙げることが出来る。
本発明において沸点が120℃以上の水溶性溶剤を用いることにより、親水防汚コーティング組成物の造膜性を向上させることができ、外観良く、均一に塗布することができる。沸点が120℃以下では、造膜性を向上させる効果が低下する。
本発明で用いる沸点が120℃以上の水溶性溶剤の具体例としては、2−メトキシ−エタノール、2−エトキシ−エタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
さらに、本発明で用いる水溶性溶剤は、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることに加えて、20℃の粘性率が10mPa・s以下であり、かつ、25℃の表面張力が40mN/mより小さいことが望ましい。
20℃の粘性率が10mPa・sを超え、かつ、25℃の表面張力が40mN/mを超えると、均一な被膜を形成することが困難になり、望ましい親水防汚コーティング組成物を得られない。
この条件を満たすために、上記に挙げた水溶性溶剤を組み合わせて、この条件を満足させることが出来る。
【0010】
本発明の親水防汚コーティング組成物は、成膜後に適当な反応性架橋剤を用いることによって、被膜強度を向上させることができる。
即ち、本発明組成物である水分散性シリカゾルの被膜形成直後の水分がわずかに残存している状態で、4官能性アルキルアルコキシシランを含む反応性希釈液を塗布することによって、コロイダルシリカ表面のシラノール基、ガラス表面に残存するシラノール基等と4官能性アルキルアルコキシシランが縮合反応し、コロイダルシリカの粒子同士の結合がより強固になり、膜強度を増大させることができる。このような4官能性アルキルアルコキシシランの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられ、これらは水分と反応するためにアルコール等の有機溶剤に適量希釈し、反応性希釈剤として用いることができる。
さらに、本発明の親水防汚コーティング組成物には、必要に応じて性能に影響を及ぼさない範囲内で、液の腐敗を防ぐための防腐剤、乾燥性を速めるための沸点が100℃以下のアルコール類、シリカゾルの保存安定性を向上させるためのpH調整用アンモニア又は揮発性アミン類、香料、着色料などを配合することができる。
本発明の組成物は、通常、スプレー、ハケ塗り、ディッピング等の方法によって塗布される。塗布後は自然乾燥により成膜し、特別な乾燥設備は必要としないが、必要に応じて強制的に加熱乾燥させても良い。
塗膜が汚れたり、損傷したり、必要がなくなった場合は、ウエス等で簡単に拭き取ることができる。
本発明の親水防汚コーティング組成物は、車両の車体、車両又は建築物の窓ガラス、ミラー、タイル、水洗トイレ、衛生陶器(洗面台、トイレ便器など)、ステンレス部位(台所の流し台など)、メッキ部位(台所の流し台、水道栓など)の表面に塗布し、親水防汚被膜を形成することが出来る。
【0011】
本発明の実施の形態をまとめると以下の通りである。
(1)アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物。
(2)アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルのシリカ平均粒子径が5〜50nmであることを特徴とする上記(1)に記載した親水防汚コーティング組成物。
(3)水溶性溶剤が、20℃の粘性率が10mPa・s以下であり、かつ、25℃の表面張力が40mN/mより小さいことを特徴とする上記(1)又は上記(2)に記載した親水防汚コーティング組成物。
(4)アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルの固形分濃度が0.01〜2.0質量%の範囲にあることを特徴とする上記(1)〜上記(3)のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物。
(5)界面活性剤の濃度が、0.01〜0.5質量%の範囲であり、かつ、水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤の0.1質量%水溶液の表面張力が35mN/mより小さいことを特徴とする上記(1)〜上記(4)のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物。
(6)沸点が120℃以上の水溶性溶剤がグリコールエーテルから選ばれた1種又は2種以上を含むことを特徴とする上記(1)〜上記(5)のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物。
(7)アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物を、被塗布物上に塗布した後、乾燥させる被膜の形成方法。
(8)親水防汚コーティング組成物が、上記(2)〜上記(6)のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物である上記7に記載した被膜の形成方法。
(9)アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物を、被塗布物上に塗布した後、4官能性アルキルアルコキシシランを含む反応性希釈液を塗布し反応させる親水防汚コーティング膜の耐久性を向上させる被膜の形成方法。
(10)親水防汚コーティング組成物が、上記(2)〜上記(6)のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物である上記(9)に記載した親水防汚コーティング膜の耐久性を向上させる被膜の形成方法。
(11)被塗布物が、車両の車体、車両又は建築物の窓ガラス、ミラー、タイル、水洗トイレ、衛生陶器、ステンレス部位、メッキ部位である上記(7)〜上記(10)のいずれかひとつに記載した被膜の形成方法。
次に実施例によって本発明をさらに具体的に詳細に亘って説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
イオン交換水97.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.1g、水溶性溶剤として、2−エトキシエタノール1gを配合し、均一に混合して実施例1の親水防汚コーティング組成物を得た。

【実施例2】
【0013】
イオン交換水97.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.1g、水溶性溶剤として、2−ブトキシエタノール1gを配合し、均一に混合して実施例2の親水防汚コーティング組成物を得た。

【実施例3】
【0014】
イオン交換水97.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム0.1g、水溶性溶剤として、ジエチレングリコールモノエチルエーテル1gを配合し、均一に混合して実施例3の親水防汚コーティング組成物を得た。


【実施例4】
【0015】
イオン交換水97.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル0.1g、水溶性溶剤として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル1gを配合し、均一に混合して実施例4の親水防汚コーティング組成物を得た。


【実施例5】
【0016】
イオン交換水98.4g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、ルドックスAS(シリカ含有量40質量%/グレースジャパン株式会社製)を0.5g、陰イオン界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1g、水溶性溶剤として、1−エトキシ−2−プロパノール1gを配合し、均一に混合して実施例5の親水防汚コーティング組成物を得た。

【実施例6】
【0017】
イオン交換水96.95g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、ルドックスAS(シリカ含有量40質量%/グレースジャパン株式会社製)を1.0g、非イオン界面活性剤として、ポリオキシプロピレンデシルエーテル0.05g、水溶性溶剤として、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル2gを配合し、均一に混合して実施例6の親水防汚コーティング組成物を得た。
【実施例7】
【0018】
イオン交換水99.25g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、ルドックスAS(シリカ含有量40質量%/グレースジャパン株式会社製)を0.2g、陰イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム0.05g、水溶性溶剤として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル0.5gを配合し、均一に混合して実施例7の親水防汚コーティング組成物を得た。
【実施例8】
【0019】
実施例5の組成物に、揮発性アミンであるトリエチルアミンを0.1g配合し、均一に混合して実施例8の親水防汚コーティング組成物を得た。

【0020】
(比較例1)
イオン交換水97.9g中に、ナトリウムで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックス20(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.1g、水溶性溶剤として、2−エトキシエタノール1gを配合し、均一に混合して比較例1の親水防汚コーティング組成物を得た。

【0021】
(比較例2)
イオン交換水98g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、水溶性溶剤として、2−エトキシエタノール1gを配合し、界面活性剤を用いることなく、均一に混合して比較例2の親水防汚コーティング組成物を得た。

【0022】
(比較例3)
イオン交換水98.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.1gを配合し、水溶性溶剤を用いることなく、均一に混合して比較例3の親水防汚コーティング組成物を得た。

【0023】
(比較例4)
イオン交換水97.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.1g、水溶性溶剤として、2−プロパノール1gを配合し、均一に混合して比較例4の親水防汚コーティング組成物を得た。

【0024】
(比較例5)
イオン交換水97.9g中に、アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルとして、スノーテックスN(シリカ含有量20〜21質量%/日産化学工業株式会社製)を1g、陰イオン界面活性剤として、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.1g、水溶性溶剤として、1,2−プロパンジオール1gを配合し、均一に混合して比較例5の親水防汚コーティング組成物を得た。


【0025】
実施例1〜8及び比較例1〜3に用いたコロイダルシリカ平均粒子径、シリカ中の酸化ナトリウム含有量、界面活性剤の種類、水溶性溶剤の沸点、20℃における粘性率(mPa・s)、25℃における表面張力(mN/m)について表1に示す。

【表1】

【実施例9】
【0026】
実施例7の組成物をソーダガラス試験板(7×15mm)上にスプレー塗装して、表面の水分が乾燥した後、テトラメトキシシラン1gをイソプロピルアルコール99gに混合した反応性希釈剤を、膜上に均一にスプレーし、自然乾燥させ、実施例9の試験板とした。
【0027】
実施例1〜8及び比較例1〜3の組成物をソーダガラス試験板(7×15mm)上にスプレー塗装して、自然乾燥させた後、膜の外観を目視で評価し、水滴の接触角を測定した。
また、試験板を1ヶ月間屋外に暴露して、汚れの付着状態を観察した。
さらに、1ヶ月間屋外に暴露した試験板の半面を、水を含ませた洗車用スポンジで表面を擦り、さらに1ヶ月間屋外に暴露して、汚れの付着状態を観察した。
実施例1の親水防汚コーティング組成物をソーダガラス試験板上にスプレー塗装して、自然乾燥させた後、1ヶ月間屋外に暴露した屋外暴露試験の写真を図4に示す。
なお、何も処理していないソーダガラス板を1ヶ月間屋外に暴露した屋外暴露試験の写真を比較のため図4に添付した。
【0028】
(比較例6)
何も塗装しないソーダガラス試験板を比較例比較例6とした。
【0029】
実施例1〜9及び比較例1〜4の試験板の評価結果を表2に示す。
【表2】

(評価方法)
外観・・・目視
水の接触角・・・自動接触角計(FAMAS/協和界面科学製)による測定
汚れの付着状況・・・目視

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の親水防汚コーティング組成物は、塗布した表面を親水化でき、親水効果を一定期間持続させることができるとともに、被塗物表面の雨跡汚れなどの付着を防止できるばかりか、水を主溶剤として選択できるために、作業者や地球環境にやさしい。また、車両や建築物の表面に広く適用できるので、産業上きわめて利用可能性が高いものである。

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】親水面と撥水面における汚れの写真
【図2】基板上における水分散性シリカゾル(アルカリ<例ナトリウム>)の模式図
【図3】水分散性シリカゾルのTEM写真
【図4】本発明による親水防汚処理被膜と無処理物の屋外暴露試験の写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物。

【請求項2】
アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルのシリカ平均粒子径が5〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載した親水防汚コーティング組成物。
【請求項3】
水溶性溶剤が、20℃の粘性率が10mPa・s以下であり、かつ、25℃の表面張力が40mN/mより小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した親水防汚コーティング組成物。
【請求項4】
アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾルの固形分濃度が0.01〜2.0質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物。
【請求項5】
界面活性剤の濃度が、0.01〜0.5質量%の範囲であり、かつ、水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤の0.1質量%水溶液の25℃における表面張力が35mN/mより小さいことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物。
【請求項6】
沸点が120℃以上の水溶性溶剤がグリコールエーテルから選ばれた1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物。
【請求項7】
アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物を、被塗布物上に塗布した後、乾燥させる被膜の形成方法。
【請求項8】
親水防汚コーティング組成物が、請求項2〜請求項6のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物である請求項7に記載した被膜の形成方法。
【請求項9】
アンモニア又は揮発性アミンで中和した水分散性シリカゾル及び水溶性の陰イオン及び又は非イオン界面活性剤及び水溶性溶剤を含み、シリカゾル中の酸化ナトリウム含有量が0.2質量%より小さく、水溶性溶剤の沸点が120℃以上であることを特徴とする親水防汚コーティング組成物を、被塗布物上に塗布した後、4官能性アルキルアルコキシシランを含む反応性希釈液を塗布し反応させる親水防汚コーティング膜の耐久性を向上させる被膜の形成方法。
【請求項10】
親水防汚コーティング組成物が、請求項2〜請求項6のいずれかひとつに記載した親水防汚コーティング組成物である請求項9に記載した親水防汚コーティング膜の耐久性を向上させる被膜の形成方法。
【請求項11】
被塗布物が、車両の車体、車両又は建築物の窓ガラス、ミラー、タイル、衛生陶器、流し台のステンレス部位、メッキ部位である請求項7〜請求項10のいずれかひとつに記載した被膜の形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265462(P2006−265462A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88716(P2005−88716)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】