説明

親油性ポリヌクレオチド接合体

ポリヌクレオチド−コレステロール接合体を含む親油性ポリヌクレオチド接合体、および該接合体を用いて治療が必要な哺乳動物細胞または患者に治療用ポリヌクレオチドを送達する方法を開示する。当該開示は、親油性ポリヌクレオチド接合体の合成方法をさらに提供する。接合体は、細胞miRNAを模倣するまたは標的にするように設計される。コレステロールまたはコレステロール誘導体などの親油性部分は、実質的に直鎖状の炭化水素基によってポリヌクレオチドから隔てられている。親油性部分の付近に非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが存在しないため、親油性部分と細胞膜との間の相互作用が促進され、細胞中への効率的な進入が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連発明の相互参照)
[001]本出願は、2009年5月5日に出願された米国仮出願第61/175,690号(その全体について参照により本明細書に援用する)の優先権の利益を請求する。
【0002】
(電子出願テキストファイルの詳細)
[002]本明細書とともに電子出願されたテキストファイルの内容物は、その全体について参照により本明細書に援用する:配列リストのコンピューター読み取り可能なフォーマットコピー(ファイル名:MIRG_014_00WO_SeqList_ST25.txt、2010年5月4日に記録したデータ、ファイルサイズ10キロ)。
【0003】
(発明の分野)
[003]本発明は、治療、研究および/または診断目的のためにポリヌクレオチドを細胞送達するための親油性核酸接合体(conjugates)に関する。本発明は、ある種の実施態様において、内在性microRNA機能を標的とするポリヌクレオチドの送達に関する。
【背景技術】
【0004】
[004]オリゴヌクレオチド治療戦略は、細胞膜を構成する疎水性リン脂質二重層を横断することにより、親水性、高電荷、かつ陰イオン性の核酸分子を細胞質に送達することに依る。オリゴヌクレオチドの疎水性接合体は、その細胞取り込みを促進する能力について調べられている。例えば、コレステロール接合体は、リポタンパク質、より具体的には、IDL粒子およびLDL粒子に結合することが可能であり得る。該粒子は、ApoEおよびApoB−100リポタンパク質を含み、これらは、LDL細胞表面受容体を標的にし、リポタンパク質仲介エンドサイトーシスにより内在化することができる。これらの受容体は、主に肝臓に見出されるが、脂肪組織、心臓、および骨格筋にも見出される。さらに、親油性ペンダント基は、リン脂質二重膜に介在して(intercalate)、それよってオリゴヌクレオチドの受動的な内在化を助けることにより、接合体を細胞膜に「固着すること(anchoring)」を助け得る。
【0005】
[005]そのような親油性分子または置換基は、所望の治療活性のためのポリヌクレオチド機能および構造を維持するようにポリヌクレオチドとともに製剤化するかまたはポリヌクレオチドに結合される必要がある。例えば、治療用のポリヌクレオチドは、大きいおよび/または複雑なリボ核タンパク質(RNP)複合体との相互作用によって機能させ、および/またはこれらの複合体のRNA成分を標的にしてもよい。したがって、親油性修飾により、細胞因子および分子標的と相互作用するためのポリヌクレオチドの近づきやすさは妨げられない。
【0006】
[006]microRNA(miR)は、特に、発生時期の調節、アポトーシス、脂肪代謝、および造血細胞の分化を含む多くの生物学的プロセスに関与し、比較的新しいクラスの治療標的を代表するものである。miRは、約18〜約25ヌクレオチド長の小さな、タンパク質をコードしない(non-ptotein coding)RNAであり、配列が完全に相補的である場合には分解を促進することにより、あるいは、配列がミスマッチを含む場合には翻訳を阻害することにより、標的mRNAのリプレッサーとして働く。成熟miRNA鎖はRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に導入され、塩基対の相補性によって標的RNAと会合する。
【0007】
[007]分子標的との相互作用を実質的にまたは有意に害することなく、miRおよびmiR阻害剤を含む治療用ポリヌクレオチドを細胞に効率的に送達するための組成物および方法が求められている。
【発明の概要】
【0008】
[008]本発明は、親油性ポリヌクレオチド接合体、および治療が必要な哺乳動物細胞または哺乳動物患者に治療用ポリヌクレオチドを送達する方法を提供する。本発明は、親油性ポリヌクレオチド接合体の合成方法をさらに提供する。本発明によれば、接合体には、細胞miRNAを模倣するまたは標的にするように設計されたコレステロールとポリヌクレオチドとの接合体が含まれる。コレステロールまたはコレステロール誘導体などの親油性部分は、炭化水素基によってポリヌクレオチドから隔てられている。親油性部分の近くに非常に極性な基(significantly polar groups)および/または交換可能なプロトンが存在しないため、本発明は、親油性部分と細胞膜との間の相互作用を促進して、効率的に細胞に進入する。接合体は、治療効果を送達するポリヌクレオチドの能力を実質的にまたは有意に害しない。
【0009】
[009]一態様において、本発明は、親油性ポリヌクレオチド接合体ならびにこれを含む医薬組成物および医薬製剤を提供する。この態様によれば、親油性部分は、コレステロールもしくは本明細書に記載される類似の親油性構造、または膜リン脂質に会合するその他の基であってもよい。ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAをベースとすることができ、および/または1つまたは複数の核酸修飾、例えば、修飾ポリヌクレオチド骨格または1つまたは複数の修飾ヌクレオシド単位を包含してもよい。例えば、修飾骨格は、全体または一部がホスホロチオエート修飾された骨格であってもよい。ポリヌクレオチド配列は、miRNAを模倣するか、あるいはアンチセンス阻害などによりmiRNAを標的にするように設計してもよい。ポリヌクレオチドおよび親油性部分は、実質的に直鎖状の炭化水素部分(例えばリンカー)によって隔てられ、これを介して接合している。炭化水素リンカーは、ポリヌクレオチドの5’および/または3’末端などに接合させることができる。
【0010】
[010]本発明の接合体は、親油性部分付近に、交換可能なプロトンを有する基などの非常に極性な基を有していない。例えば、炭化水素は、エーテル結合またはチオエーテル結合などの比較的非極性の基を介して親油性部分(例えばコレステロール)に接合させることができ、疎水性リンカーは、約3〜約15個の炭素原子を含んでもよい。例えば交換可能なプロトンを有する非常に極性な基が親油性部分の付近に存在しないことにより、当該部分は、細胞または患者に送達されたときに膜リン脂質とより良好に介在することが可能となる。
【0011】
[011]第2の態様において、本発明は、ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達する方法、および哺乳動物患者での病状の進行を治療または予防する方法を提供する。この態様において、本発明は、コレステロールまたは本明細書に記載の他の親油性部分との接合体として、ポリヌクレオチド投与することを含む。ポリヌクレオチドは、miRNAまたはmiRNA阻害剤(例えば、miRNAの発現または活性を阻害するように設計されたヌクレオチド配列を有する)であってもよい。そのような実施態様において、患者は、miRNA発現などのRNA発現に関連する病状を有する。そのような状態には、特に、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(例えば、鬱血性心不全)、血管傷害、再狭窄、および/または病的心臓線維症(pathologic cardiac fibrosis)などが含まれる。
【0012】
[012]第3の態様において、本発明は、ポリヌクレオチド接合体の合成方法を提供する。本発明は、炭化水素部分またはリンカーを介して5’および/または3’末端でまたはポリヌクレオチド骨格に沿って接合された親油性部分を有するポリヌクレオチドの合成方法を提供する。親油性部分がステロールなどのアルコールである、ある種の実施態様において、当該親油性部分は、好適な末端官能基を有する炭化水素でエーテル化される。このエーテル結合中間体は、固相核酸合成に適合する好適な試薬を調製するようにさらに反応させてもよい。例えば、エーテル結合中間体を、(例えばポリヌクレオチド合成に際してヌクレオチド5’ヒドロキシルに結合する)リン酸エステルに変換するための、(例えばエーテル結合を介する)末端ホスホロアミダイトを調製するようにさらに反応させてもよい。あるいは、またはさらに、エーテル結合中間体を、核酸合成用の好適な支持体に(例えばアミド化により)結合するための好適な末端基を調製するようにさらに反応させてもよい。
【0013】
[013]あるいは、本発明は、ポリヌクレオチド合成の完了後、カルボニル付加−脱離/還元アミノ化、アミド化、マレイミド−チオールカップリング、水性ディールス・アルダー、および「クリック(Click)」ケミストリーなどを用いて、ポリヌクレオチドとのコレステロール接合体を合成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[014]従来の接合体と比較した本発明の例示的な親油性(コレステロール)接合体を図示している。本発明によれば、交換可能なプロトンを有する極性基などの極性基はコレステン環構造付近から除かれる。
【図2】[015]ヌクレオチドと5’位で結合するためのホスホロアミダイト中間体(6)および固体支持体への結合のためのコハク酸エステル中間体(7)の調製を含む、本発明による例示的な接合体の合成を図示している。
【図3】[016]固体支持体に固着されるコレステロール結合中間体を有する例示的な3’−コレステロール接合体(1−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ))−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−オール官能化CPG)の合成を図示している。
【図4】[017]オリゴヌクレオチドが相補的な官能基で官能化される場合、コレスト−5−エン−3−オキシアルカノール(A)を修飾して、アミド化(B)、ディールス・アルダーバイオコンジュゲーション(C)、および「クリック」バイオコンジュゲーション(D)などの典型的なバイオコンジュゲーション技法を容易に行うための官能基を得ることができることを図示している。
【図5】[018]表2に示した化学物質の静脈注入に対するmiR−208のノーザン分析である。
【図6】[019]示した化学物質の静脈注入に対するmiR−208ノックダウンのリアルタイム定量化を、生理食塩水を注入した動物と比較して示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
[020]能動および/または受動細胞輸送メカニズムは、ペンダント親油性基(リン脂質二重層にネイティブであるもの、および該二重層に効率的に収容する(pack)必要があるものを含む)の恩恵を浴することができる。したがって、本発明は、リン脂質二重層に効率的に収容することによって細胞膜または送達運搬体として働き得るリポソームもしくはミセルに対するポリヌクレオチド接合体の親和性を高めるための十分に疎水性のリンカーを含む接合体を提供する。オリゴヌクレオチド−コレステロール型の接合体では、一般に、ステロイド環構造に非常に近接した交換可能なプロトンを含む極性基となるコレステリルカルバメート結合が用いられる。これらの接合体では親油性特性が最適化されてなく、極性結合点は効率的なリン脂質二重層の収容を妨げ得る。
【0016】
[021]本発明は、親油性ポリヌクレオチド接合体、および治療が必要な哺乳動物細胞または哺乳動物患者を治療するためのポリヌクレオチドの送達方法を提供する。本発明は、親油性ポリヌクレオチド接合体の合成方法をさらに提供する。本発明によれば、miRNAを含む細胞RNAを標的にするように接合体を設計してもよい。例えば、アンチセンス阻害によって細胞miRNAを標的にするかまたはmiRNAを模倣するように接合体を設計してもよい。親油性部分、例えば、コレステロールまたは他の親油性基は、炭化水素リンカーによってポリヌクレオチドから隔てられている。親油性部分の付近に非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが存在しないため、本発明は、親油性部分と膜リン脂質との相互作用を促進し、それによって細胞に効率的に進入することとなる。接合体は、治療効果をもたらすためのポリヌクレオチドの能力を実質的にまたは有意に害さない。
【0017】
親油性部分および炭化水素スペーサー
[022]親油性部分は、細胞膜などのリン脂質二重層または本明細書に記載されるリポソームもしくはミセルなどの送達運搬体に介在可能な脂肪可溶性部分である。親油性部分は、エーテル結合またはチオエーテル結合を介して炭化水素スペーサー(下記)に接合体することができる。例示的な親油性部分は、コレステロールおよびコレステロール誘導体(コレステン、コレスタン、およびコレスタジエンを含む)、胆汁酸(コール酸、デオキシコール酸、およびデヒドロコール酸など)、ステロール、ステロイド、または他の脂肪可溶性アルコールまたはチオールを含む。ある種の実施態様において、親油性部分は、本明細書に参照により援用する米国特許第7,202,227号に記載されるようなコレステロールもしくはコレステロール誘導体またはコール酸もしくはコール酸誘導体である。そのような誘導体は、C1〜C4アルキル(例えばメチル)で置換されたコレステロールまたはコール酸構造を含む。
【0018】
[023]例えば、ある種の実施態様において、コレステロールまたは誘導体は以下の構造を有することができる。
【化1】

【0019】
そのような構造において、R乃至Rの各々は、実質的に非極性基である。例えば、R乃至Rの各々は、水素、アルキル(例えば、C1〜C6アルキル)、置換アルキル、置換されていてもよいアルコキシ(例えば、C1〜C6アルコキシ)、および置換されていてもよいアルコキシアルキルから独立して選択してもよい。ある種の実施態様において、親油性部分は次式を有する(式中、Rはアルキル(例えばC1〜C10アルキル)である):
【化2】

【0020】

[024]炭化水素部分またはスペーサーは、親油性部分(上記)を極性基などの非親油性から引き離し、患者に送達したときまたは哺乳動物細胞と接触したときに、親油性部分が、特に膜リン脂質とより良好に作用することが可能となる。したがって、接合体は、一般に、親油性部分付近に交換可能なプロトンまたは他の極性基(例えばヒドロキシルまたはアミド)を有しない。一般に、親油性部分から約3〜約15原子以内に非常に極性な基および交換可能なプロトンは無い。ある種の実施態様において、第1の非常に極性な基または交換可能なプロトンは親油性部分から少なくとも6原子、7原子、8原子または9原子離れている。
【0021】
[025]炭化水素スペーサーは、エーテル結合またはチオエーテル結合などの比較的非極性の結合を介して親油性部分に接合してもよい。例えば、親油性部分がコレステロールまたは他のステロールである場合、炭化水素スペーサーはステロールヒドロキシル基とエーテル結合することができる。
【0022】
[026]ある種の実施態様において、炭化水素スペーサーは、C2〜C15飽和または不飽和炭化水素鎖(例えばアルキレンまたはアルケニレン)を含み、比較的非極性の置換基で置換されてもよい。一般に、そのような置換基は、上記のように親油性部分の付近に交換可能なプロトンまたは極性基を含まない。例えば、置換基は、アルキル(例えば、C1〜C6アルキル)、アルコキシ(例えばC1〜C6アルコキシ)、およびアルコキシアルキルから独立して選択することができる。極性置換基が存在する場合、それらは、親油性部分から少なくとも約6原子、7原子、8原子、または9原子隔てられている。不飽和の場合、炭化水素スペーサーは、1個、2個、または3個の二重結合を含んでもよい。ある種の実施態様において、炭化水素スペーサーは、C2〜C10またはC4〜C8飽和炭化水素鎖を含む。例えば、炭化水素スペーサーは、C4またはC6飽和炭化水素を含んでもよい。
【0023】
[027]ある種の実施態様において、炭化水素鎖は、1つまたは複数の複素原子(例えば1〜5個)、例えばO、S、および/またはNから独立して選択される複素原子を含む。所望するいくつかの実施態様またはポリヌクレオチドがエーテル結合またはチオエーテル結合によって末端に結合することに起因するいくつかの実施態様を除く、ある種の他の実施態様において、炭化水素鎖はいかなる複素原子も有しない。
【0024】
[028]炭化水素スペーサーは、例えばヌクレオチド5’位または3’位を介してあるいはポリヌクレオチド骨格に沿った他の位置において、親油性部分と反対の末端でポリヌクレオチドに接合している。炭化水素スペーサーは、ホスホジエステル、エーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、またはアミドを含む任意の好適な官能基を介して、ポリヌクレオチドに、例えばヌクレオチド5’ 位または3’位などに接合することができる
[029]本発明の例示的な接合体は、以下の構造(I)、(II)、および(III)からそれぞれ選択される構造を有する。
【化3】

【0025】
式中、nは、1または2であり、Rは、連結基を介して結合してもよい3’位または5’位を介して結合しているヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり得る。
【0026】
[030]さらなる例示的な接合体には、構造(IV)−(VI)(式中、RおよびR’は、それぞれ、Hまたはポリヌクレオチドリン酸エステル(phosphate polynucleotide)である)、および構造VII−IX(式中、RおよびR’は、それぞれ、H、OH、またはポリヌクレオチドリン酸エステルである)が含まれる。
【化4】

【0027】
[031]ある種の実施態様において、接合体は、下記構造の1つを有する5’接合体である(式中、Rは、ポリヌクレオチド鎖である)。
【化5】

【0028】
[032]ある種の実施態様において、接合体は、下記構造の1つを有する3’接合体である(式中、Rは、ポリヌクレオチド鎖である)。
【化6】

【0029】
ポリヌクレオチド
[033]本発明の化合物、組成物、および方法は、種々のポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチドを含む)およびその誘導体を用いることができる。ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAをベースとしてもよく、および/または1つまたは複数の核酸修飾、例えば修飾ポリヌクレオチド骨格または1つまたは複数の修飾ヌクレオシド単位を含んでもよい。ポリヌクレオチドまたは誘導体は、1つまたは複数の一本鎖領域および/または1つまたは複数の二本鎖領域を有してもよい。ポリヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、microRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、またはリボザイムであってもよい。
【0030】
[034]ある種の実施態様において、本化合物、本組成物、または本方法は、接合されたmiRNA阻害剤(例えばアンチセンス阻害剤)を用いる。そのような阻害剤は、例えば、国際公開第国際公開第2008/016924号、国際公開第2009/062169号、国際公開第2009/058818号、国際公開第2009/018492号、国際公開第2009/018493号、国際公開第2009/012468号、および国際公開第2007/070483号に記載されており、これらをその全体について参照により本明細書に援用する。
【0031】
[035]したがって、ポリヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。ある種の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1の化学修飾(例えば糖または骨格修飾)を含む。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾ヌクレオチド(例えば2’−O−メチル−糖修飾)を含んでもよい。ある種の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドのみを含む。ある種の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、1つまたは複数のホスホロチオエート結合を含み、一部または全体がホスホロチオエート骨格となる。miRNAを阻害するのに好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約5〜約50ヌクレオチド長、例えば約10〜約30ヌクレオチド長、または約20〜約25ヌクレオチド長であってもよい。ある種の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約8〜約18ヌクレオチド長であり、他の実施態様において、約12〜約16ヌクレオチド長である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相補的な配列を含んでもよい(以下の表1を参照)。他の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、成熟miRNA配列と100%相補的な配列を含む。本明細書で用いる「相補的な」または「塩基対」は、古典的なワトソン−クリックヌクレオチド塩基対を包含し、あるいはこの塩基対のみをいう。一実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンタゴmir(antagomir)である。「アンタゴmir」は、miRNA配列と少なくとも部分的に相補的な、化学修飾されていてもよい一本鎖リボヌクレオチドである。
【0032】
[036]ある種の実施態様において、ポリヌクレオチドは、miRNA、例えば表1に列記した細胞miRNAを模倣するように設計された配列を有する。これらの実施態様におけるポリヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾ヌクレオチド(例えば2’−O−メチル−糖修飾)および1つまたは複数のホスホロチオエート結合を含んでもよい。miRNAを模倣するのに好適なポリヌクレオチドは、約15〜約50ヌクレオチド長であってもよく、例えば約18〜約30ヌクレオチド長、または約20〜約25ヌクレオチド長であってもよい。合成miRNAは、成熟miRNA配列と少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同性である配列を含んでもよい(以下の表1を参照のこと)。他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、成熟miRNA配列と100%相同性である配列を含む。
【0033】
[037]ポリヌクレオチドは、主にリボヌクレオチド単位から構成されてもよく、または主にデオキシリボヌクレオチド単位から構成されてもよく、1つまたは複数の化学修飾を有してもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の「コンホメーションが束縛された(confomationally constrained)」または二環式糖ヌクレオシド修飾(BSN)からなってもよく、これは、BSNを含むオリゴヌクレオチドとその相補的なmicroRNA標的鎖との間に形成される複合体に高い熱的安定性を与える。ある種の実施態様において、ポリヌクレオチドは、例えば、約1〜10個のロックド核酸(locked nucleic acids)を含む。「ロックド核酸」(LNA)は、2’−O,4’−C−メチレンリボヌクレオシドを含み、リボース糖部分は、「ロックド(locked)」コンホメーションである。あるいは、またはさらに、ポリヌクレオチドは、糖−ホスフェート骨格ではなく、ペプチドをベースとした骨格を含むペプチド核酸(PNA)を含む。これらの実施態様または他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の糖修飾および/または1つまたは複数の骨格修飾を含む。例示的な糖修飾は、2’および4’修飾、例えば、2’−O−アルキル(2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチルなど)、2’−フルオロ、および4’チオ修飾を含む。例示的な骨格修飾は、ホスホロチオエート、モルホリノ、またはホスホノカルボキシレート結合を含む(例えば、米国特許第6,693,187号および第7,067,641号を参照のこと。これらを全体について参照により本明細書に援用する。)。
【0034】
[038]ある種の実施態様において、ポリヌクレオチドは、2’−O−メトキシエチルギャップマー(gapmer)である。「ギャップマー」は、5’末端および3’末端の両方において2’−O−メトキシエチル修飾されたリボヌクレオチドを含み、中心に少なくとも10個のデオキシリボヌクレオチドを有する。この「ギャップマー」は、RNA標的のRNase非依存性分解メカニズムを引き起こすことができる。
【0035】
[039]安定性を高めおよび/またはアンチセンス効率を良くするなどの他のポリヌクレオチド修飾は公知であり、本発明に関して用いることができる。例示的な修飾は、米国特許第6,838,283号に記載されている(これを全体として参照として本明細書に援用する)。
【0036】
[040]ポリヌクレオチドは、miRNA、例えば、以下の表1に列記したmiRNAを模倣するまたは標的にするように設計されたヌクレオチド配列を有してもよい。ある種の実施態様において、miRNAを阻害するように設計されたポリヌクレオチドは、完全に相補的なmiRNA配列に対して1〜5つ(例えば、2つ、3つ、または4つ)のミスマッチを含む配列を有してもよい(以下の表1を参照のこと)。他の実施態様において、miRNAを模倣するように設計されたポリヌクレオチドは、成熟miRNA配列に対して1〜5つ(例えば、2つ、3つ、または4つ)のヌクレオチド置換を含む配列を有してもよい(以下の表1を参照のこと)。そのようなアンチセンスおよびセンス配列は、shRNA、またはステムおよびループ部分などを含む他のRNA構造に導入されてもよい。そのような配列は、特に、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(例えば、鬱血性心不全)、血管傷害、および/または病的心臓線維症の治療または治癒用にmiRNA機能を模倣するまたは標的化するのに特に有用である。例示的なmiRNA治療の有用性は、以下の表1に列記した米国特許および国際公開公報の参照文献に開示され、その各々をその全体について参照により本明細書に援用する。
【表1−1】


【表1−2】

【表1−3】

【0037】
[041]ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のように接合体された親油性基を1〜5個有してもよい。親油性基は、ポリヌクレオチドの5’位または3’位を介して接合してもよいし、および/または、リン酸エステルなどの形成によりポリヌクレオチド骨格に接合してもよい。ある種の実施態様において、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のように接合体された1個または2個の親油性基を5’および/または3’末端において有してもよい。
【0038】
医薬組成物および送達
[042]本発明の接合体は、種々の医薬組成物として製剤化することができる。医薬組成物は、意図する用途に適切な形態で調製されるであろう。一般に、これは、発熱原およびヒトまたは動物に有害となり得る他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することを包含する。例示的な送達/製剤系は、コロイド分散系、高分子(macromolecule)複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビード、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質をベースとした系を含む。本発明の核酸を心臓および骨格筋組織に送達するのに好適な市販の脂肪エマルジョンには、Intra脂質(登録商標)、Liposyn(登録商標)、Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、Nutrilipid、および他の類似の脂質エマルジョンが含まれる。in vivoでの送達運搬体としての使用に好ましいコロイド状系は、リポソーム(すなわち人工膜小胞)である。そのような系の調製および使用は、当業界において周知である。例示的な製剤は、米国特許第5,981,505号;米国特許第6,217,900号;米国特許第6,383,512号;米国特許第5,783,565号;米国特許第7,202,227号;米国特許第6,379,965号;米国特許第6,127,170号;米国特許第5,837,53号3;米国特許第6,747,014号;および国際公開第03/093449号に開示され、これらを全体として参照により本明細書に援用する。
【0039】
[043]医薬組成物および製剤は、送達運搬体を安定にし、標的細胞による取り込みを可能とするための適切な塩および緩衝剤を用いてもよい。本発明の水性組成物は、薬学的に許容可能な担体または水性媒体に溶解または分散された、阻害剤としてのポリヌクレオチドまたはmiRNAポリヌクレオチド配列(例えばリポソームまたは他の複合体)を含む送達運搬体を有効量含む。「薬学的に許容可能な」または「薬理学的に許容可能な」とは、動物またはヒトに投与したときに副作用、アレルギー、または他の有害な反応を生じない分子部分および組成物をいう。本明細書に用いられる「薬学的に許容可能な担体」には、医薬、例えばヒトへの投与に好適な医薬の製剤化での使用に許容される1つまたは複数の溶剤、緩衝剤、液剤、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれてもよい。医薬活性物質のためのこのような媒体および剤の使用は、当業界において公知である。補充活性成分も組成物に含ませることができる。
【0040】
[044]本発明の医薬組成物の投与または送達は、その経路によって標的組織が利用可能である限り、任意の経路とすることができる。例えば、投与は、皮内、皮下、筋内、腹腔内または静脈内注入であってもよいし、または標的組織(例えば心臓組織)への直接注入によるものであってもよい。miRNA阻害剤またはmiRNA配列を含む発現構築物を含む医薬組成物は、カテーテル系または治療剤を心臓へ送達するための冠循環を同定する系によって投与することもできる。心臓および冠血管系に治療剤を送達するための種々のカテーテル系は、当業界で公知である。カテーテルをベースとした送達方法または本発明での使用に好適な冠状同定(coronary isolation)法のいくつのかの非限定的な例は、米国特許第6,416,510号、米国特許第6,716,196号、米国特許第6,953,466号、国際公開第2005/082440号、国際公開第2006/089340号、米国特許公開第2007/0203445号、米国特許公開第2006/0148742号、および米国特許公開第2007/0060907号に記載され、これらを全体について参照により本明細書に援用する。
【0041】
[045]本組成物または製剤は、非経口投与してもよいし、または腹腔内投与してもよい。例示のため、遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩としての接合体の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合される水で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製してもよい。通常の貯蔵および使用状態下では、これらの調製は、微生物の成長を妨げるための防腐剤を一般に含む。
【0042】
[046]注入可能な使用またはカテーテル送達に好適な医薬形態には、例えば、無菌の水溶液または分散液、および注入可能な無菌の溶液または分散液を即時調製するための無菌粉末が含まれる。一般に、これらの調製は、注入が容易になる程度まで無菌かつ流動的とする。製剤は、製造および貯蔵状態下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して予防される必要がある。適切な溶剤または分散媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含んでもよい。適切な流動性は、例えば、レクチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合には必要な粒子サイズの保持により、および界面活性剤の使用により、保持することができる。微生物の働きは、種々の抗菌剤、抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって予防される。多くの場合、糖または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。注入可能な組成物の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延剤を組成物中で使用することによって延ばすことができる。
【0043】
[047]注入可能な無菌溶液は、所望する場合には任意の他の成分(例えば、上記で列挙したもの)とともに接合体を適切な量で溶媒中に入れることによって調製することができる。一般に、分散液は、種々の無菌化活性成分を、塩基性分散媒体および所望の他の成分(例えば上記のもの)を含む無菌運搬体に入れることによって調製する。注入可能な無菌溶液を調製するための無菌粉末の場合、その好ましい調製方法には真空乾燥技術および凍結乾燥技術が含まれ、これは、予め無菌ろ過した溶液由来の活性成分および所望する任意の追加成分の粉末を生成する。
【0044】
[048]製剤化に際し、溶液は、投与製剤(dosage formulation)に適合するように、かつ、治療に有効な量で投与することが好ましい。製剤は、種々の剤形、例えば、注入可能な溶液、薬物放出カプセルなどで容易に投与することができる。例えば、水溶液での経口投与のため、溶剤は一般に好適に緩衝化し、液体希釈剤は十分な生理食塩水またはグルコースなどでまず等張化する。そのような水性溶剤は、静脈内、筋内、皮下、および腹腔内投与などに用いることができる。無菌水性媒体は、当業者に知られているようにして使用すること、特に本開示に照らして使用することが好ましい。例示として、単一用量をNaCI等張溶液1mlに溶解し、皮下注入液1000mlに添加するか、または予定の注入部位で注入してもよい(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第1035〜1038頁および第1570〜1580頁を参照のこと)。治療対象の状態に応じて用量を変えることは必然的に必要となるであろう。いずれにしても、投与責任者が個々の対象に適切な用量を決定するであろう。さらにヒト投与のためには、製剤は無菌性、発熱原性、FDA部局生物学基準によって要求される一般的な安全性基準および純度基準を満たす必要がある。
【0045】
治療方法
[049]本発明は、ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達する方法、および哺乳動物患者の病状の進行を治療、改善、または予防する方法を提供する。本方法は、一般に、本明細書に記載のとおり、ポリヌクレオチドをコレステロールまたは他の親油性部分との接合体として投与することを含む。ポリヌクレオチドは、miRNAまたはmiRNA阻害剤(例えば、miRNA発現または活性を阻害するように設計されたヌクレオチド配列を有するもの)であってもよい。したがって、患者は、miRNA発現などのRNA発現に関係する病状を有してもよい。そのような病状には、例えば、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(例えば鬱血性心不全)、血管傷害、再狭窄、または病的心臓線維症が含まれる。
【0046】
[050]心臓肥大、心筋梗塞、心不全(例えば鬱血性心不全)、血管傷害、再狭窄、および/または病的心臓線維症などの病状に関与するmiRNA、およびmiRNA機能を標的化する配列は、国際公開第2008/016924号、国際公開第2009/062169号、国際公開第2009/058818号、国際公開第2009/018492、国際公開第2009/018493号、国際公開第2009/012468号、および国際公開第2007/070483号に記載され、これらを全体について参照により本明細書に援用する。そのようなmiRNAおよび配列は、さらに表1に列記され、かつ本明細書に記載されている。
【0047】
[051]親油性ポリヌクレオチド接合体は、本明細書でも記載する医薬組成物または医薬製剤として患者に送達することができる。
【0048】
[052]ある種の実施態様において、患者は、長期に続く制御不能な高血圧、不修正(uncorrected)心臓弁膜症、慢性狭心症、亜急性心筋梗塞、心疾患の先天性素因、および病的肥大などを含む1つまたは複数のリスク要因を有する。あるいは、またはさらに、患者は、心臓肥大などの遺伝的素因を有すると診断されていてもよいし、または心臓肥大などの家族歴を有していてもよい。
【0049】
[053]この態様において、本発明は、心不全または心臓肥大を患う患者において、運動耐性の向上、少ない入院、より高い生活の質、羅患率の低下、および/または死亡率の低下をもたらすことができる。
【0050】
接合体の合成方法
[054]本発明は、さらに、炭化水素リンカーを介して5’および/または3’末端で接合体されたまたはポリヌクレオチド骨格に接合された親油性部分を有するポリヌクレオチドを合成する方法を提供する。この態様において、本発明は、親油性部分を末端官能基を有する直鎖状または環状炭化水素と結合し、第1の中間体を調製すること、および固相ポリヌクレオチド合成に際してポリヌクレオチド鎖に導入するのに好適な官能基を有する第2の中間体を調製することを伴う。あるいは、本方法は、ポリヌクレオチドの合成完了後に、カルボニル付加−脱離/還元アミノ化、アミド化、マレイミド−チオールカップリング、水性ディールス・アルダー、および「クリック」ケミストリーなどを用いて、ポリヌクレオチドとのコレステロール接合体を合成することを伴う。
【0051】
[055]親油性部分がステロールなどのアルコールである、ある種の実施態様において、本方法は、末端官能基を有する炭化水素に親油性部分(本明細書に記載)を接合することを含む。この工程では、第1の中間体、好ましくは、エーテル結合中間体を調製する。例えば、ある種の実施態様において、ステロールを(ステロールヒドロキシルを介して)C3〜C15炭化水素にエーテル化する。炭化水素は、ある種の実施態様において、置換されていてもよく、かつ、O、N、および/またはSから独立して選択される1個、2個、または3個の複素原子を骨格中に有してもよい、実質的に直鎖状のC4〜C8(例えば、C4またはC6)炭化水素である。あるいは、炭化水素は、シクロヘキサンなどのC5〜C8環状炭化水素、または1個または2個の複素原子を有する5〜8員の環状基を含む。
【0052】
[056]第1の中間体またはエーテル結合中間体は、固相核酸合成と適合する好適な第2の中間体を調製するためにさらに反応させる。例えば、エーテル結合中間体は、ポリヌクレオチド合成に際してリン酸エステルに変換するためのホスホロアミダイト中間体(例えばエーテル結合を介する)を調製するように1つまたは複数の工程を介してさらに反応させてもよい。あるいは、またはさらに、エーテル結合中間体は、好適な支持体に(アミド化などにより)結合させてポリヌクレオチド鎖の3’末端を形成するための好適な末端基を調製するように1つまたは複数の工程を介してさらに反応させてもよい。
【0053】
5’および3’接合体を調製するための例示的な反応を図2に示す。
【0054】
[057]ホスホロアミダイト中間体(図2の6として示される)の調製を伴うある種の実施態様において、エーテル結合中間体(2)の末端アルコールを、2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトなどのホスファイト化剤との反応によってホスホロアミダイトを調製するようにさらに反応させる。これらの実施態様は、特に、トリチルでのモニタリングまたは追加のアミダイト結合が必要ない場合に用いることができる。
【0055】
[058]あるいは、ホスホロアミダイトを調製するための好適なヒドロキシルを有する他の中間体は、(2)から合成することができる。例えば、化合物(2)を、少なくとも1個の炭素、好ましくは2個以上の炭素によって隔てられている2個の異なるヒドロキシル基を形成するように反応させてもよい。化合物(2)を異なるヒドロキシルを有する化合物(5)に変換するための例示的な一連の反応を図2に示す。コレステロールを塩化トシルと反応することによって形成されるコレステロールトシレート(1)が、還流1,4−ジオキサン中での1,6−ヘキサンジオールとのSn1反応を受ける。5位でのアルケンによる隣接基の関与によって、3β異性体のみが得られる。得られた(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキサン−6−オール(2)をメシレート(3)に変換し、続けて、これを用いて、ソルケタル(solketal)をアルキル化する。湿THF中でトリフルオロ酢酸処理することによって、粗製のソルケタル誘導体を脱保護して、3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−1,2−ジオール(4)が得られる。標準的な方法を用いて、ジオールの第1級アルコールを4,4’−ジメトキシトリチルエーテル(5)として選択的に保護する。残りの第2級アルコールを2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトなどのホスファイト化剤と反応させることによってホスホロアミダイト(6)に変換し、続いて、オリゴヌクレオチド合成サイクルにおいて標準のアミダイトモノマーとして使用することができる。あるいは、第2級アルコールは、TEA存在下で無水コハク酸処理することにより、コハク酸エステル(7)に変換することができる。次いで、得られたカルボキシレートを、HBTUにより、過剰のアミンで官能化された制御多孔質ガラス(CPG(controlled pore glass))に結合する。CPGの過剰のアミンおよび任意の遊離表面水酸化物は、酢酸無水物で「キャッピング(capping)」することによって非反応性となる。コレステロール官能化CPGは、3’−コレステロールで修飾されたオリゴヌクレオチド合成に好適である。CPGは、任意の標準ヌクレオシド充填CPGが自動オリゴヌクレオチド合成で用いられるようにして使用することができる。
【0056】
[059]したがって、これらの実施態様において、第2の中間体は、少なくとも1個の2級アルコールおよび少なくとも1個の第1級アルコールを有する化合物から調製される。これらの実施態様によれば、ポリヌクレオチド合成に際して、1個のヒドロキシル基が、鎖の5’末端でヌクレオチドとホスホジエステル結合を形成する。5’接合体の場合、2個のヒドロキシル基により、自動合成装置上での反応についておよび/または所望する場合にはさらにコレステロール接合体を通過する鎖伸長についてのトリチルによるモニタリングが可能となる。
【0057】
[060]固体支持体に結合するための第2の中間体(図2の7として示される)の調製を伴うある種の実施態様において、エーテル結合中間体(2)のアルコールをいくつかの工程で反応させて、コハク酸エステル中間体(または固体支持体から開裂可能な他の中間体)を調製する。3’接合体を調製するための中間体は、上記の通り、好ましくは異なる、2個のヒドロキシル基を有することが好ましい。例えば、固体支持体に結合するための中間体は、少なくとも1個の第2級ヒドロキシルおよび少なくとも1個の第1級ヒドロキシルを有する化合物から調製することができる。化合物2を異なるヒドロキシルを有する化合物(5)に変換するための例示的な一連の反応は、図2に示されている。これらの実施態様において、ポリヌクレオチド合成に際して、ヌクレオチド鎖は、DMTrで保護された第1級アルコールを伸長除去し、接合体部分は、第2級ヒドロキシル基(例えばコハク酸エステル)上のある種の開裂可能な結合を介して固体支持体に固着される。
【0058】
[061]本発明の代替の実施態様は、オリゴヌクレオチド合成の完了後、エーテル結合中間体(2)の誘導体を付加することを含む。図4を参照のこと。これは、カルボニル付加−脱離/還元アミノ化、アミド化、マレイミド−チオールカップリング、水性ディールス・アルダー、および「クリック」ケミストリーなどの反応により達成することができる。これらの方法により、コレステロールアミダイトを合成する必要なしに、同等のコレステロールエーテル構築物が提供される。例えば、化合物(2)などのコレスト−5−エン−3β−オキシアルカノールは、当業者によって容易に修飾され、末端アルデヒド、カルボキシレート、アミン、マレイミド、チオール、ジエン、アジド、アルキン、または他の反応性部分を得ることができる。これらの化合物は、末端官能化されたコレスト−5−エン−3β−オキシアルカンの反応性部分と共有結合を形成する相補的な官能基で好適に修飾されたオリゴヌクレオチドとさらに反応させることができる。生成物は、比較的非極性かつ実質的に直鎖状の、コレステロール部分とのアルキルオキシ結合を保持し、かつ、親油性部分および交換可能なプロトンまたは他の実質的に極性の官能基を含む任意の基の間で3原子以上の距離を維持する、コレステロール接合体である。これらのいわゆる「合成後バイオコンジュゲーション」は、保護された合成オリゴヌクレオチド鎖が固相にまだ結合している間に、または合成オリゴヌクレオチドが溶液中にある場合には脱保護後に実施することができる。
【0059】
[062]バイオコンジュゲーション技法は周知であり、Hermanson GT, Bioconjugate Techniques, Second Edition, Academic Press; 2nd edition(2008年4月1日)などに記載されている。
【実施例】
【0060】
[063]核酸(NA)−Chol接合体が、アミンと容易に入手可能なコレステロールクロロホルメートとを反応させてコレステン環構造の3β位でカルバメート結合を得ることにより得られている。この系では、交換可能な水素を有する極性基が親油性環構造に非常に近くに位置している。このことは、接合体の親油性、および任意の脂質二重層に十分に介在するまたは他の親油性部分と結合する接合体の能力を制限することになり得る。図1を参照のこと。本明細書に記載の接合体では、交換可能なプロトンを有する極性基がコレステン環構造に隣接して位置するリンカー基の使用が避けられている(図1)。
【0061】
実施例1:例示的な接合体の合成
[064]Chol−O−HEX−OH(図2の2に示される)などのエーテル結合コレステロールを用いて、NA接合体を作製することができる。図2は、リンカーアミダイト6、およびコハク酸エステル7(本明細書では「C6−Chol」と称する)の合成を示している。それらは、それぞれ、通常入手可能な合成試薬を用いて作られた一般的な化学合成オリゴヌクレオチドの5’修飾(化合物6)として、およびオリゴヌクレオチド合成に用いられる任意の市販のアミノ支持体にアミド化によって接合体される場合には3’修飾(化合物7)として用いることができる。あるいは、例えばトリチルによるモニタリングまたは追加のアミダイト結合の必要がない場合、5’末端で接合されるオリゴヌクレオチドのため、2などのアルコールからアミダイトを調製することができる。
【0062】
[065]一般に、炭化水素スペーサーは、リン酸エステルを形成するためにヒドロキシル基を末端にまたは末端近くに含む。少なくとも1個の炭素、好ましくは2個以上の炭素によって隔てられた2個のヒドロキシル基があることが好ましい。例えば、一方が第2級アルコールであり、他方が第1級アルコールである場合、ヒドロキシルは異なっていてもよい。少なくとも1個のヒドロキシル基が、鎖の5’末端でヌクレオチドとのホスホジエステル結合を形成する必要がある。5’−コレステロール接合体の場合、2個のヒドロキシル基があることにより、自動合成装置上での反応についておよび/またはコレステロール接合体を過ぎたさらなる鎖の伸長についてトリチルによるモニタリングが可能となる。4,4’−ジメトキシトリチル(DMTr)は、例えば、1個のヒドロキシルおよびホスホロアミダイト(すなわちホスホジエステル前駆体)上に位置するか、あるいはより効率的なホスホロアミダイト結合を提供するであろう残りのヒドロキシル上にある。
【0063】
[066]3’−コレステロール接合体は、異なることが好ましい(すなわち一方が第2級であり、一方が第1級である)2個のヒドロキシル基を必要とし、ここで、ヌクレオチド鎖は、DMTrで保護された第1級アルコールを伸長除去し(grow off)、接合体部分は、第2級ヒドロキシル基上のある種の開裂可能な結合を介して固体支持体に固着されるであろう。5’−接合体は、第2級の位置にホスフェートを有するであろう。
【0064】
[067]固相ポリヌクレオチド合成での接合のためのChol−O−Hex中間体の例示的な合成を以下に記載する。
【0065】
コレスト−5−エン−3β−トシレート
[068]コレステロール(25.Og,64.7mmol)を定量して500mL丸底フラスコに入れ、ピリジン(200mL)に溶解して、無色の溶液を得て、これを0℃に冷却する。塩化トシル(24.65g,129mmol)を定量して100mL丸底フラスコに入れ、ピリジン(40mL)に溶解し、淡黄色の溶液を得る。次いで、塩化トシル溶液を攪拌したコレステロール溶液に一度に添加し、得られた反応混合物を一晩攪拌し、その間に室温となる。反応混合物を回転エバポレーターで濃縮し、白色の固体を得て、これを最小量のクロロホルム(40ml)に溶解し、メタノール(500mL)を添加することによって沈殿させる。得られた白色の固体をろ過し、メタノール(500mL)およびアセトニトリル(200mL)で洗浄する。固体を1L丸底フラスコに移し、高真空下で一晩乾燥し、白色粉末34.2g(98%)を得る。H(400MHz,CDCI3):δ0.67(3H,s);0.80−1.75(33H,m);1.76−2.03(5H,m);2.20−2.30(1H,m);2.44(4H,m);4.25−4.35(1H,m);5.29(1H,d,J=5Hz);7.32(2H,d,J=8Hz);7.79(2H,d,J=8Hz)。
【0066】
コレスト−5−エン−3β−オキシヘキサン−6−オール
[069]コレスト−5−エン−3β−トシレート(15.Og,27.7mmol)および1,6−ヘキサンジオール(65.5g,555mmol)を定量して500mL丸底フラスコに入れ、1,4−ジオキサン(300mL)に溶解し、無色の懸濁液を得る。フラスコに効率的な還流コンデンサーを取り付け、反応混合物を110℃油浴中で17時間加熱還流する。反応混合物を真空で濃縮し、残渣を脱イオン水(500mL)に懸濁する。水相をEtOAc(2x150mL)で抽出し、合わせた有機相を水(2x300mL)および食塩水(1x150mL)で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、高真空下で一晩乾燥し、淡黄色のワックス12.85g(95%)を得る。H(400MHz,CDCI):δ0.67(3H,s);0.80−1.65(42H,m);1.75−2.05(5H,m);2.12−2.25(1H,m);2.30−2.40(1H,m);3.05−3.17(1Hm);3.45(2H,dt,J=6.5,1.6Hz);3.57(2H,t,J=6.6Hz);5.34(1H,d,J=5.3Hz)。
【0067】
コレスト−5−エン−3β−オキシヘキサン−6−メシレート
[070]コレスト−5−エン−3β−オキシヘキサン−6−オール(12.84g,26.4mmol)を定量して、500mL丸底フラスコに入れる。フラスコにジクロロメタン(100mL)およびトリエチルアミン(7.35mL,52.7mmol)を充填し、アルゴンでフラッシングし、0℃に冷却する。塩化メシル(2.55mL,32.96mmol)を攪拌溶液に5分間にわたって滴下して添加し、混合物をさらに1時間0℃で攪拌する。飽和重炭酸ナトリウム溶液(150mL)を混合物に添加し、次いで、これを分液漏斗に移す。水性相を捨て、有機相をフレッシュな飽和重炭酸ナトリウム溶液(1x150mL)および食塩水(1x50mL)で洗浄する。有機相をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮乾燥し、黄色のワックス14.8g(99%)を得る。H(400MHz,CDCI):δ0.67(3H,s);0.80−1.65(41H,m);1.70−2.05(5H,m);2.12−2.23(1H,m);2.30−2.37(1H,m);3.00(3H,s);3.05−3.17(1H,m);3.45(2H,dt,J=6.5,1.4Hz);4.22(2H,t,J=6.6Hz);5.34(1H,d,J=5.2Hz)。
【0068】
3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−1,2−ジオール
[071]ソルケタル(2.92g,27.5mmol)を定量し、200mL丸底フラスコに入れた。アルゴンでフラッシングし、トルエン(40mL)を充填した。水素化ナトリウム(油中60%分散液)(3.14g,131mmol)を攪拌溶液に一度に添加し、混合物を室温で30分間攪拌した。コレスト−5−エン−3β−オキシヘキサン−6−メシレート(14.8g,26.2mmol)をトルエン(40mL)に溶解し、溶液をアルコキシド溶液にゆっくりと添加した。フラスコを還流コンデンサーに取り付け、器具をアルゴンでフラッシングした。反応混合物を加熱還流し、17時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル中のエタノール溶液でクエンチし、15分間にわたって激しく攪拌した反応混合物に滴下して添加した。反応混合物をさらに酢酸エチルで希釈し、10%炭酸ナトリウム水溶液(2x150mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。
【0069】
[072]残渣を比率が4:4:1のテトラヒドロフラン:トリフルオロ酢酸:水(18mL)に再び溶解し、次いで、2時間室温で攪するように設定した。反応混合物のTLC(15%アセトン/ヘキサン)によって、粗製混合物中の所望の化合物の脱保護が完了したことが示された。反応混合物を蒸発乾燥し、100gのBiotage SNAP シリカカラムに適用し、酢酸エチル/ヘキサン勾配(0〜35%、2L、約50mL/分)で溶出し、無色のワックス4.90g(2工程で33%)を得た。
【0070】
H(400MHz,CDCI):δ0.67(3H,s);0.80−1.65(41H,m);1.75−2.05(5H,m);2.12−2.40(4H,m);3.07−3.17(1H,m);3.40−3.57(6H,m);3.63(1H,dd,J=11.4,5.2);3.71(1H,dd,J=11.4,3.9);3.81−3.89(1H,m);5.34(1H,d,J=5.2Hz)。
【0071】
1−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−2−オール
[073]3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−1,2−ジオール(4.75g,8.47mmol)を定量して、攪拌棒を備えた200mL丸底フラスコに入れた。フラスコをアルゴンでフラッシングし、ピリジン(30mL)を充填し、攪拌しながら0℃に冷却した。DMTr−CI(3.01g,8.89mmol)を定量して20mLシンチレーションバイアルに入れ、ピリジン(17mL)に溶解した。DMTr−CI溶液を20分間にわたって攪拌ジオール溶液に滴下して添加した。反応物を一晩攪拌し、その間に室温となる。反応物を無水メタノール(1mL)を添加することによってクエンチし、反応物を30分間攪拌した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(50mL)を反応混合物に添加し、COの発生が終わるまでこれを攪拌した。混合物を濃縮乾燥し、水(100mL)および酢酸エチル(100mL)で分配した。有機相をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。残渣を100g Biotage SNAPカラムに適用し、酢酸エチル/ヘキサン勾配で溶出して(10〜20%、1.5L、約50mL/分)、無色の粘性な油分50g(47.9%)を得た。H(400MHz,CDCI):δ0.67(3H,s);0.87(6H,dd,J=6.6,1.8Hz);0.91(3H,d,J=6.6Hz);0.93−1.60(32H,m);1.75−2.05(5H,m);2.15−2.25(1H,m);2.32−2.41(1H,m);2.42(1H,d,J=4.6Hz);3.07−3.22(2H,m);3.39−3.57(6H,m);3.79(6H,s);3.80(s,1H);3.90−3.98(1H,m);5.34(1H,d,J=5.3Hz);6.78−6.85(m,4H);7.14−7.25(m,1H);7.26−7.34(m,6H);7.40−7.44(m,2H)。
【0072】
4−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−2−イルオキシ)−4−オキソブタン酸,TEA塩
[074]1−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−2−オール(1.75g,2.02mmol)、無水コハク酸(0.812g,8.10mmol)、および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(25mg,0.20mmol)を攪拌棒を備えた100mL丸底フラスコ添加した。フラスコにピリジン(10mL)を充填した。反応混合物を80℃で8時間および50℃で16時間攪拌した。反応混合物を真空で濃縮し、EtOH(3x20mL)とともに共蒸発し、残留ピリジンを除去した。残渣を50g Biotage SNAPカラムに適用し、1Lの60/30/10 EtOAc/Hex/MeOH(3%TEAを含む)、続いて500mlの90/10 DCM/MeOH(3%TEAを含む)を用いて約40mL/分で溶出し、無色のワックス1.31g(61%)を得た。H(400MHz,CDCI):δ0.67(3Hs);0.86(6H,dd,J=6.6,1.8Hz);0.91(3H,d,J=6.6Hz);0.93−1.60(41H,m);1.75−2.05(5H,m);2.15−2.25(1H,m);2.32−2.41(1H,m);2.51−2.72(4H,m);2.97(6Hq,J=7.3Hz);3.07−3.25(2H,m);3.31−3.48(4Hm);3.52−3.61(2Hm);3.78(6Hs);5.19(1H,quintet,J=5.1Hz);5.35(1H,d,J=5.4Hz);6.78−6.85(m,4H);7.14−7.25(m,1H);7.26−7.34(m,6H);7.40−7.44(m,2H)。
【0073】
「Chol−O−Hex−LCAA−CPG」
[075]4−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−2−イルオキシ)−4−オキソブタン酸,TEA塩(1.00g,0.952mmol)を定量して、20mLシンチレーションバイアルに入れる。バイアルに2:1 ACN:DCM 6mlを充填する。HBTU(0.343g,0.904mmol)をコハク酸エステル、続いてトリエチルアミン(0.25mL)を添加する。200ml丸底フラスコにLCAA−CPG(12.56g)を定量して入れ、132μmol/gのアミンを充填する。CPGを2:1 ACN:DCM 75mLに懸濁する。コハク酸エステル/HBTU混合物をLCAA−CPG懸濁液に一度に添加し、フラスコを密封し、混合物を合わせ、インキュベートしたオービタルシェーカー上で25℃、250rpmで4時間攪拌する。CPGをろ過し、ACN、DCM、DMF、水、メタノール、ACN、およびDCMの200mLアリコートで洗浄する。CPGを一晩空気乾燥する。次いで、CPGを清浄な200mL丸底フラスコに移す。フラスコをCAP A溶液40mLおよびCAP B溶液40mLを充填し、隔壁密封し(septum sealed)、内容物を25℃、250rpmで3時間攪拌する。次いで、CPGをろ過し、ACN、DCM、MeOH、HO、MeOH、DMF、ACN、DCMの200mLアリコートで十分に洗浄する。CPGを一晩空気乾燥する。
【0074】
[076]CPGローディング(loading)をPon,RT.,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry.2000 3.2.1−3.2.23によって記述された方法の改良によって測定した。CPG(4.24mg)を定量して20mLシンチレーションバイアルに入れた。ジクロロエタン中の5%トリフルオロ酢酸を添加し、バイアルをキャップし、1分間振とうした。溶液の吸光度をThermo Spectronic Genesys10 UV/Vis分光光度計により503nmで測定したところ、2.114であった。ローディングは次式によって計算した。
【0075】
[077][(体積(mL)x吸光度)/76mLcm−1μmol]x[1000/質量(mg)]=ローディング(μmol/g):
[(10mLx2.114)/76mLcm−1μmol]x[1000/4.24mg]=66μmol/g
「Chol−O−Hex−DMTrアミダイト」
[078]1−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−3−(6−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ヘキシルオキシ)プロパン−2−オール(1.68g,1.95mmol)を定量して、攪拌棒を備えた200mL丸底フラスコに入れる。フラスコをアルゴンでフラッシングし、隔壁密封し、DCM(10mL)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.68mL,3.89mmol)を充填する。2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(0.48g,2.0mmol)を攪拌した反応物に滴下して添加し、反応物を17時間攪拌する。反応混合物をDCM50mLで希釈し、飽和重炭酸溶液(2x50mL)および食塩水(1x50mL)で洗浄する。有機相をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮する。残渣を25g Biotage SNAPカラムに適用し、酢酸エチル/ヘキサン勾配(5〜10%、750mL、25mL/分)で溶出し、白色のフォーム1.70g(82.1%)を得る。H(400MHz,DMSO−d6):δ0.62(3H,s);0.80−1.57(53H,m);1.70−1.95(5H,m);1.96−2.02(1H,m);2.21−2.26(1H,m);2.57−2.72(2H,d,J=4.6Hz);2.97−3.80(m,20H);3.97(1H,quintuplet,J=5.3Hz);5.26(1H,d,J=4.6Hz);6.78−6.86(m,4H);7.13−7.29(m,7H);7.34−7.39(m,2H)。
【0076】
実施例2:1−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ))−12−(コレスト−5−エン−3−オキシ)ドデカン−3−オール官能化CPGの合成
[079]図3は、ポリヌクレオチド3’修飾として使用することができる本明細書に記載されたリンカー構造(III)の合成を表す。合成の工程をより詳細に以下に記載する。
【0077】
10−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)デカン−1−オール
[080]500mL丸底フラスコ中で、コレステリルトシレート(10.0g,18.5mmol)および1,10−デカンジオール(48.3g,277mmol)をジオキサン(200ml)に懸濁し、白色の懸濁液を得た。フラスコに温度センサーおよび還流コンデンサーを取り付けた。混合物を加熱還流し、一晩攪拌還流した。反応混合物を室温に冷却し、固体をろ過して除いた。溶液を真空で濃縮した。混合物をメタノール(250mL)中で再び溶解し、水(約40mL)を添加し、粗製の生成物を沈殿させた。沈殿物をろ過し、真空で乾燥した。残渣を100g Biotage SNAPカラムでのカラムクロマトグラフィーを用いて0〜25%ヘキサン中EtOAc勾配(2L)で溶出してさらに精製した。純粋な分画を合わせ、濃縮し、白色の固体7.85g(82%)を得た。HNMR(300mHz,CDCI)δ0.69(3H,s);0.85−1.66(5OH,m);1.75−2.09(5H,m);2.14−2.29(1H,m);2.32−2.43(1H,m);3.14(1H,tt,J=11.2,4.4Hz);3.46(2H,dt,J=6.9,0.4Hz);3.65(2H,t,J=6.6Hz);5.36(1H,d,J=5.3Hz)。
【0078】
10−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)デカナール
[081]100mL丸底フラスコ中で、固体支持された2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ、フリーラジカル(0.5g,1.1mmol/g,0.553mmol)および10−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)デカン−1−オール(3.00g,5.53mmol)をジクロロメタン(20ml)に懸濁し、無色の懸濁液を得た。二酢酸ヨードベンゼン((1.958g,6.08mmol)を混合物に添加し、これを室温で一晩攪拌した。反応混合物をろ過し、固体支持体をDCMで洗浄した。ろ液を合わせ、飽和チオ硫酸ナトリウム(2x20mL)および食塩水(1x20mL)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られた油分を、移動相として100%DCMを用いて、カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、無色のワックス2.7Og(90%)を得た。HNMR(300MHz,CDCI)δ0.69(3H,s);0.84−1.74(47H,m);1.76−2.09(5H,m);2.12−2.26(1H,m);2.32−2.40(1H,m);2.44(2H,dt,J=7.4,1.9Hz);3.14(1H,tt,J=11.2,4.4Hz);3.46(2H,t,J=6.9Hz);5.35(1H,d,J=5.3Hz);9.78(1H,t,J=1.9Hz)。
【0079】
12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)−3−ヒドロキシドデカナール
[082]乾燥200mL丸底フラスコ中に、10−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)デカナール(2.65g,4.90mmol)をアルゴン下でTHF(10ml)に溶解し、無色の溶液を得た。((1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル)マグネシウムブロミド(9.80ml,4.90mmol)の0.5M THF溶液を滴下して添加し、得られた溶液を4時間室温で攪拌した。得られた溶液を、NaHCO溶液10OmLをゆっくりと添加することによってクエンチし、EtOAc(3x100mL)で抽出した。合わせた有機相を食塩水(1x10OmL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、500mL丸底フラスコ中で濃縮した。オルトぎ酸トリメチル(10.83ml,98mmol)、PPTS(0.246g,0.980mmol)、およびメタノール(10ml)をフラスコに添加し、内容物を2時間還流した。溶液を室温に冷却し、蒸発乾燥させた。次いで、残渣をアセトン(20ml)および1.0N 塩酸(4.90ml,4.90mmol)に溶解し、一晩攪拌した。反応混合物を水で200mLに希釈し、酢酸エチル(3x100mL)で抽出した。有機相を合わせ、食塩水(1x50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られたワックスを、40g Biotage SNAPカラムでのカラムクロマトグラフィーを用いて0〜50%勾配(1L)で溶出して精製した。純粋な分画を合わせ、蒸発乾燥し、12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)−3−ヒドロキシドデカナール(1.97g,3.37mmol,68.7%収率)を無色のワックスとして得た。HNMR(300MHz,CDCI)δ0.69(3H,s);0.85−1.74(49H,m);1.75−2.13(7H,m);2.14−2.28(1H,m);2.33−2.44(1H,m);3.14(1H,tt,J=11.2,4.4Hz);3.46(2H,t,J=6.8Hz);3.93−4.10(1H,m);5.36(1H,d,J=5.2Hz);5.42−5.55(1H,m);9.78(1H,s)。
【0080】
12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−1,3−ジオール
[083]100mL丸底フラスコ中で、12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)−3−ヒドロキシドデカナール(1.90g,3.25mmol)を1,4−ジオキサン(10ml)に溶解し、無色の溶液を得た。MeOH(5ml)をゆっくりと十分に添加し、十分なだけ添加し、溶液中でアルデヒドを保持した。ホウ化水素ナトリウム(0.184g,4.87mmol)を攪拌溶液に添加し、次いで、これを2時間室温で攪拌した。反応混合物を1N HCI(2mL)を添加することによってクエンチした。混合物を水で100mLに希釈し、酢酸エチル(3x50mL)で抽出した。有機相を合わせ、食塩水(1x50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−1,3−ジオール(1.85g,3.15mmol,収率97%)を無色のワックスとして得た。HNMR(300MHz,CDCI)δ0.69(3H,s);0.83−2.07(58H,m);2.13−2.28(1H,m);2.32−2.43(1H,m);3.14(1H,tt,J=11.2,4.4Hz);3.46(2H,t,J=6.8Hz);3.60−4.19(3H,m);5.36(1H,d,J=5.2Hz)。
【0081】
1−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ))−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−オール
[084]100mL丸底フラスコ中で、12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−1,3−ジオール(1.80g,3.07mmol)をピリジン(20ml)に溶解し、無色の溶液を得た。混合物を攪拌しながらアルゴン下で0℃に冷却した。DMTr−CI(1.091g,3.22mmol)を定量して隔壁密封したシンチレーションバイアルに入れ、ピリジン(10ml)に溶解し、黄色の溶液を得た。DMTr−CI溶液をジオールに滴下して添加した。反応混合物を一晩攪拌し、その間に室温になった。メタノール(2mL)を添加し、混合物をさらに15分間攪拌した。反応混合物を飽和NaHCO溶液で200mLに希釈し、酢酸エチル(3x50mL)で抽出した。有機相を合わせ、食塩水(1x50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。得られたオイルを、40g Biotage SNAPカラムを用いて0〜50%ヘキサン中EtOAc勾配(1L)で溶出して精製した。純粋な分画を合わせ、蒸発し、1−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ))−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−オール(2.60g,2.92mmol,95%収率)を無色のオイルとして得た。HNMR(300MHz,CDCI)δ0.69(3H,s);0.83−2.09(57H,m);2.14−2.29(1H,m);2.33−2.44(1H,m);3.07−3.22(3H,m);3.47(2H,t,J=6.9Hz);3.53−3.66(1H,m);3.81(6H,s);5.37(1H,d,J=5.2Hz);6.80−6.88(4H,m),7.20−7.35(7H,m);7.40−7.49(2H,m)。
【0082】
4−((1−(ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−イル)オキシ)−4−オキソブタン酸
[085]20mLシンチレーションバイアル中で、1−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ))−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−オール(0.5g,0.562mmol)および無水コハク酸(0.113g,1.124mmol)をDCM(10ml)に溶解し、無色の溶液を得た。TEA(0.313ml,2.249mmol)を添加し、混合物を17時間攪拌するように設定した。TLC(25%EtOAc/ヘキサン,PMA目視)によって、反応が完了したことを判断した。反応混合物を5% NaHPO溶液(3x15mL)および食塩水(1x15mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、乾燥濃縮し、さらに精製せずに使用した。HNMR(300MHz,CDCI)δ0.70(3H,s);0.83−1.74(49H,m);1.77−2.12(5Hm);2.14−2.29(1H,m);2.33−2.44(1H,m);2.53−2.72(4H,m);3.00−3.09(2H,m);3.16(1H,tt,J=11.2,4.4Hz);3.48(2H,t,J=6.8Hz);3.80(6H,s);4.85−5.00(1H,m);5.36(1H,d,J=5.1Hz);6.78−6.90(4H,m),7.15−7.38(7H,m);7.40−7.49(2H,m);9.29(1H,bs)。
【0083】
1−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ))−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−オール官能化CPG
[086]4−((1−(ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)−12−(コレスト−5−エン−3β−オキシ)ドデカン−3−イル)オキシ)−4−オキソブタン酸(0.35g,0.36mmol)を定量して、20mLシンチレーションバイアルに入れる。バイアルに2:1 ACN:DCM 6mLを充填する。HBTU(0.137g,0.35mmol)をコハク酸エステルに添加し、続いてトリエチルアミン(0.25mL)に添加する。100mL丸底フラスコに、定量したLCAA−CPG(5.00g)を132μmol/gアミンのローディングとももに入れる。CPGを2:1 ACN:DCM 30mLに懸濁する。コハク酸エステル/HBTU混合物をLCAA−CPG懸濁液に一度に添加し、フラスコを密封し、合わせた混合物をインキュベートしたオービタルシェーカー上で25℃、250rpmで4時間攪拌する。CPGをろ過し、ACN、DCM、DMF、水、メタノール、ACN、およびDCMの200mLアリコートで洗浄する。CPGを一晩空気乾燥する。次いで、CPGを清浄な200mL丸底フラスコ移す。フラスコを、CAP A溶液40mLおよびCAP B溶液40mLで充填し、隔壁密封し、内容物を25℃、250rpmで3時間攪拌する。次いで、CPGをろ過し、ACN、DCM、MeOH、HO、MeOH、DMF、ACN、DCMの200mLアリコートで十分に洗浄する。CPGを一晩空気乾燥する。
【0084】
[087]CPGローディングをPon,RT.,Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry.2000 3.2.1−3.2.23によって記述された方法の改良によって測定した。CPG(4.24mg)を定量して20mLシンチレーションバイアル中に入れた。ジクロロエタン中の5%トリフルオロ酢酸を添加し、バイアルをキャップし、1分間振とうした。溶液の吸光度をThermoSpectronic Genesys10 UV/Vis分光光度計により503nmで測定したところ、2.114であった。ローディングは次式によって計算した。
【0085】
[(体積(mL)x吸光度)/76mLcm−1μmol]x[1000/質量(mg)]=ローディング(μmol/g):
[(10mLx2.260)/76mLcm−1μmol]x[1000/5.12mg]=58μmol/g
実施例3:コレステロールの合成後付加
[088]カルボニル付加−脱離/還元アミノ化、アミド化、マレイミド−チオールカップリング、水性ディールス・アルダー、および「クリック」などの反応によるコレステロールの合成後付加によって、コレステロールアミダイトを合成する必要なく、同等のコレステロールエーテル構築物が提供される。例えば、コレステロールトシレートをアルキル化して、コレスト−5−エン−3β−オキシアルカノールを得て、これをさらに修飾することで、末端アルデヒド、カルボキシレート、アミン、マレイミド、チオール、ジエン、アジド、アルキン、または他の反応性部分を得て、これをさらに好適に修飾されたオリゴヌクレオチドと反応させることで、実質的に非極性で実質的に直鎖状の、コレステロール部分とのアルキルオキシ結合を保持し、かつ、親油性部分および交換可能なプロトンまたは他の実質的に極性の官能基を含む任意の基の間で3原子以上の距離を維持する、コレステロール接合体を得ることができる。図4を参照のこと。
【0086】
[089]オリゴヌクレオチドを相補的な官能基で官能化する場合、コレスト−5−エン−3−オキシアルカノール(A)を修飾して、典型的なバイオコンジュゲーション技法、例えば、アミド化(B)、ディールス・アルダーバイオコンジュゲーション(C)、および「クリック」バイオコンジュゲーション(D)を容易に行うことができる官能基を得ることができる。
【0087】
実施例4:miR−208のin vivo心臓ノックダウン
[090]表2に示されるすべての化学物質について、2x80mg/kgのantimiR配列またはミスマッチ(図5および図6の「mm」)配列のいずれかを、これらの化学物質を生理食塩水に溶解して用いて、および、コントロールとして生理食塩水のみ(図5および図6の「sal」)を用いて(表2)、4匹の成体雄C57BI6マウスに尾の静脈より注入した。表2中のリンカー1は、本明細書に記載するリンカー構造(Xl)および(XIII)に対応する。表2中のリンカー2は、本明細書に記載するリンカー構造(X)および(XII)に対応する。比較のため、構造(XIV)のリンカーをコントロールとして用いる。
【化7】

【0088】
[091]さらに、ホスホロチオエート(PS)とは、5’末端の最後の2つのヌクレオチド間結合がホスホロチオエート結合であり、3’末端の最初の5つのヌクレオチド間リン酸結合がホスホロチオエート結合(コレステロールリンカーとオリゴヌクレオチドとの間のリン酸結合を含む)である置換様式をいう。
【表2】

【0089】
[092]最後に注入してから3日後、動物を犠牲死させて、心臓、肝臓、肺、および腎を回収した。RNAを心臓組織から取り出し、ノーザンブロット分析によってmiR−208の心臓発現に対する効果を決定し(図5)、リアルタイムPCRを用いてmiR−208を定量した(図6)。これらのデータから、アンタゴmir設計を用いた効率的な心臓ノックダウンが再確認される。しかしながら、コレステロールまたはホスホロチオエートが存在しないため、化学物質によるin vivoでのmiR−208の有用な心臓ノックダウンの確立が妨げられる。オリゴの5’または3’末端とのコレステロール結合のためのC4またはC6リンカーの使用は、両方のリンカーがコレステロールの結合に好適であることを示している。C6をオリゴの3’末端において用いることにより、miR−208に対するオリジナルのアンタゴmirよりもさらに効率的なmiR−208のノックダウンが誘発される(図5および図6)。これらのデータは、in vitro系と異なり、コレステロールおよびホスホロチオエートなどの脂質部分が心筋細胞のノックダウンに望ましく、5’または3’の両方のリンカーがオリゴとのコレステロール結合に十分であり、オリジナルのアンタゴmir設計と比較して、同等の、さもなければ高い、miR−208のノックダウンを確立することができることを示している。図5を参照のこと。
【0090】
実験プロトコル
miRNAのノーザンブロッティング
異なる化学物質および接合体に応答するmiR−208のノックダウンを評価するために、miR−208に対して指向するプローブを用いたノーザンブロット分析を用いて、心臓でのmiR−208の存在を検出した。トリゾール剤を用いて全RNAを心臓から集め、その10μgをノーザンブブロッティングに用いる。この目的のために、RNA試料を20%アクリルアミド変性ゲル上で流し、電気泳動によってZeta−プローブ GTゲノムブロッティング膜(Bio−Rad)にトランスファーする。トランスファー後、ブロットを交差結合させ、80℃で1時間べークする。miRNA検出の感度を最大にするために、オリゴヌクレオチドプローブをStarfire Oligosキット(IDT、アイオワ州コーラルヴィル)およびα−32P dATP(Amersham)で標識する。プローブを、Rapid−hyb緩衝液(Amersham)中で39℃で一晩、膜にハイブリダイズし、その後、それを0.1%SDSを含む0.5xSSCを用いて、39℃で10分間、2回洗浄する。ブロットを暴露し、U6プローブをローディングコントロール(U6フォワード:5−GTGCTCGCTTCGGCAGC−3(配列番号64)、U6リバース:5−AAAATATGGAACGCTTCACGAATTTGCG−3(配列番号65))として用いる。ホスホイメージャー(phosphorimager)およびImageQuant(Bio−Rad)を用い、放射性信号強度を用いて発現の倍率変化を定量する。
【0091】
リアルタイムPCR分析
[093]ノーザンブロット分析に加えて、miRNA特異的リアルタイムPCR分析を行い、miR−208ノックダウンレベルを検証し、定量した。製造元の指示書に基づいてSuper Script Il逆転写酵素(Invitrogen Life Technologies Inc.,カナダオンタリオ州バーリントン)を使用し、各組織試料から得られた2μgRNAを用いてcDNAを生成した。リアルタイムPCRは、ABIから購入したTaqmanプローブを用いて95℃で3分間の最初の変性工程を行った後、95℃/30秒および60℃/30秒の間でサイクルさせる(40サイクル)。増幅産物を融解曲線ソフトウエア(Biorad)を用いて通常通りに検査し、比較Ct法を用いて転写量を比較し、該方法では、内在性SnoRNAの量に対して基準化され、かつ、コントロール試料に対する標的の量が、2−ΔΔCtによって与えられる。
【0092】
参照文献
Krieg, A. M., Tonkinson, J., Matson, S., Zhao, Q., Saxon, M., Zhang, L. M., Bhanja, U., Yakubov, L., and Stein, C. A. 1993. Modification of antisense phosphodiester oligodeoxynucleotides by a 5’−cholesteryl moiety increases cellular association and improves efficacy. Proc Natl Acad Sci USA 90:1048+−1052.
Bijsterbosch, M. K., Manoharan, M., Dorland, R., Waarlo, I. H. E., Biessen, E. A. L., and van Berkel, T. J. C. 2001. Delivery of cholesteryl−conjugated phosphorothioate oligodeoxynucleotides to Kupffer cells by lactosylated low−density lipoprotein. Biochem Pharmacol 62:627−633.
Manoharan, M., Tivel, K. L., Condon, T. P., Andrade, L. K., Barber−Peoch, I., Inamati, G., Shah, S., Mohan, V., Graham, M. J., Bennett, C. F., Crooke, S. T., and Cook, P. D. 1997. Conjugated antisense oligonucleotides. Nucleosides Nucleotides 16:1129−1138.
Ghosh, YK, Visweswariah, SS, and Bhattacharya, S. 2002. Advantage of the Ether Linkage between the Positive Charge and the Cholesteryl Skeleton in Cholesterol−Based Amphiphiles as Vectors for Gene Delivery− Bioconjugate Chem, 13:378−384.
Ghosh, YK, Visweswariah, SS, and Bhattacharya, S. 2000. Nature of linkage between the cationic headgroup and cholesteryl skeleton controls gene transfection efficiency. FEBS Letters, 473:341−344.
Song, YK, Liu, F, Chu, S, and Liu, D. 1997. Characterization of Cationic Liposome−Mediated Gene Transfer In Vivo by Intravenous Administration. Hum Gene Ther, 8:1585−1592.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドおよび親油性部分を含む親油性ポリヌクレオチド接合体であって、前記親油性部分に近接して非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが存在しないように、前記親油性部分は、前記ポリヌクレオチドから炭化水素リンカーによって隔てられている、親油性ポリヌクレオチド接合体。
【請求項2】
前記親油性部分は、リン脂質二重層に介在可能である、請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
前記親油性部分は、コレステリルエーテルまたはその誘導体である、請求項1または2に記載の接合体。
【請求項4】
前記親油性部分は、コレステン、コレスタン、またはコレスタジエンである、請求項1または2に記載の接合体。
【請求項5】
前記親油性部分は、胆汁酸である、請求項1または2に記載の接合体。
【請求項6】
前記胆汁酸は、コール酸、デオキシコール酸、およびデヒドロコール酸である、請求項5に記載の接合体。
【請求項7】
前記親油性部分は、ステロールまたはステロイドである、請求項1または2に記載の接合体。
【請求項8】
前記親油性部分は、脂肪可溶性アルコールまたはチオールある、請求項1または2に記載の接合体。
【請求項9】
前記炭化水素リンカーにより、非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが前記親油性部分から3原子〜約15原子離れている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項10】
前記炭化水素リンカーにより、非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが前記親油性部分から6原子、7原子、8原子または9原子離れている、請求項9に記載の接合体。
【請求項11】
前記炭化水素リンカーは、環状炭化水素を含む、請求項10に記載の接合体。
【請求項12】
前記炭化水素リンカーは、エーテル結合またはチオエーテル結合を介して前記親油性部分に接合している、請求項1〜11のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項13】
前記炭化水素リンカーは、置換されていてもよいC2〜C15アルキレンまたはアルケニレンを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項14】
前記炭化水素リンカーは、C4〜C10またはC4〜C8飽和炭化水素を含む、請求項13に記載の接合体。
【請求項15】
前記炭化水素リンカーは、該炭素鎖中に1つまたは複数の複素原子を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項16】
前記炭化水素リンカーは、前記親油性部分の反対側の末端で前記ポリヌクレオチドに接合している、請求項15に記載の接合体。
【請求項17】
前記炭化水素リンカーは、リン酸エステル結合またはエーテル結合を介して前記ポリヌクレオチドに接合している、請求項16に記載の接合体。
【請求項18】
前記炭化水素リンカーは、前記ポリヌクレオチドの5’位を介して接合している、請求項17に記載の接合体。
【請求項19】
前記炭化水素リンカーは、前記ポリヌクレオチドの3’位を介して接合している、請求項17に記載の接合体。
【請求項20】
構造(I)〜(XIII)から選択される構造を有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドは、DNAをベースとする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドは、RNAをベースとする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドは、修飾されたポリヌクレオチド骨格を有する、請求項1〜22のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のホスホロチオエート修飾を含む、請求項23に記載の接合体。
【請求項25】
前記ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の修飾されたヌクレオシド単位を有する、請求項1〜24のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の一本鎖領域および1つまたは複数の二本鎖領域を有する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、microRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、またはリボザイムである、請求項26に記載の接合体。
【請求項28】
前記ポリヌクレオチドは、アンタゴmirである、請求項27に記載の接合体。
【請求項29】
前記ポリヌクレオチドの長さが、約5〜約50ヌクレオチドである、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項30】
前記ポリヌクレオチドの長さが、約18〜約30ヌクレオチドである、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項31】
前記ポリヌクレオチドは、成熟miRNAに少なくとも約75%相補的な配列を含む、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドは、表1に列記した成熟miRNAに少なくとも約75%相補的な配列を含む、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項33】
前記ポリヌクレオチドは、成熟miRNAに100%相補的な配列を含む、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項34】
前記ポリヌクレオチドは、表1に列記した成熟miRNAに100%相補的な配列を含む、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項35】
前記ポリヌクレオチドは、細胞miRNAを模倣するように設計された配列を有する、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドは、表1に列記したmiRNAを模倣するように設計された配列を有する、請求項27または28に記載の接合体。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のロックド核酸、ペプチド核酸骨格、および/または糖修飾を2’位または4’位に含む、請求項1〜36のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項38】
前記接合体は、1〜5個の親油性部分を有する、請求項1〜37のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項39】
患者への送達用に製剤化された請求項1〜38のいずれか1項に記載の接合体を含む医薬組成物。
【請求項40】
前記接合体は、コロイド分散系、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビード、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、またはリポソームとして製剤化される、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記親油性部分により、前記ポリヌクレオチド接合体がリポソームに固着される、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
皮内送達、皮下送達、筋内送達、腹腔内送達、または静脈内送達用に製剤化される、請求項39〜41のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
心臓カテーテル系による投与用に製剤化される、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
ポリヌクレオチドを請求項1〜38のいずれか1項に記載の接合体として投与することを含む、ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達する方法。
【請求項45】
ポリヌクレオチドを請求項1〜38のいずれか1項に記載の接合体として投与することを含む、ポリヌクレオチドを哺乳動物患者に送達する方法。
【請求項46】
前記ポリヌクレオチドは、miRNAまたはmiRNA阻害剤である、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記患者は、miRNA発現に関係する病状を有している、請求項46に記載の方法。、
【請求項48】
前記病状は、心臓肥大、心筋梗塞、心不全、血管傷害、および病的心臓線維症の1つまたは複数である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
末端官能基を保有する実質的に直鎖状の炭化水素鎖を有する親油性部分を調製し、これにより第1の中間体を調製すること、ここで、前記親油性部分に近接して非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが存在しないように、前記親油性部分は、炭化水素リンカーによって前記末端官能基から隔てられている、
前記第1の中間体から、ポリヌクレオチド鎖への導入に好適な官能基を有する第2の中間体を調製すること、
固相合成に際して前記第2の中間体をポリヌクレオチド鎖に導入すること
を含む、親油性ポリヌクレオチド接合体の合成方法。
【請求項50】
前記親油性部分は、ステロールであり、前記第1の中間体は、エーテル結合中間体である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記実質的に直鎖状の炭化水素リンカーは、C3〜C15アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、前記炭化水素は、置換されてもよい、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
前記実質的に直鎖状の炭化水素リンカーは、C4〜C8アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、前記炭化水素は、置換されてもよい、請求項51に記載の方法。、
【請求項53】
前記第1の中間体を、前記第2の中間体としてホスホロアミダイトを調製するように反応させる、請求項49〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記ホスホロアミダイトを、固相ポリヌクレオチド合成に際してリン酸エステルに変換する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の中間体を、支持体と結合してポリヌクレオチド鎖の3’末端を形成するための好適な末端基を調製するように反応させる、請求項49〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の中間体は、少なくとも1個の炭素によって離れている2つの異なるヒドロキシル基を有する化合物から調製される、請求項49〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
末端官能基を保有する炭化水素鎖を有する親油性部分を調製して、中間体を調製すること、ここで、前記親油性部分に近接した非常に極性な基および/または交換可能なプロトンが存在しないように、前記親油性部分は、前記末端官能基から炭化水素リンカーによって隔てられている
前記中間体をポリヌクレオチドに結合すること
を含む、ポリヌクレオチド接合体の合成方法。
【請求項58】
前記中間体は、カルボニル付加−脱離/還元アミノ化、アミド化、マレイミド−チオール結合、または水性ディールス・アルダーから選択される反応または一連の反応によって前記ポリヌクレオチドと結合する、請求項57に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−526132(P2012−526132A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509948(P2012−509948)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033729
【国際公開番号】WO2010/129672
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511268694)
【Fターム(参考)】