説明

観察装置および観察セル

【課題】感度の高い観察を行なうこと。
【解決手段】観察対象である観察面14を保持する第1部品12と、観察面14から離間して設けられた金属粒子16を保持する第2部品18と、光24を前記第1部品12または前記第2部品18を介し前記観察面14に照射する照射部20と、前記観察面14を反射または透過した前記光から前記観察面14の状態を観察する観察部22と、を具備し、前記第1部品12および前記第2部品18は、前記観察面14および前記金属粒子16が前記光24の電磁場内となるように、前記観察面14および前記金属粒子16を保持することを特徴とする観察装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察装置および観察セルに関する。
【背景技術】
【0002】
全反射プリズムの反射面下に試料および金属を反射し、金属に誘起されるプラズモン共鳴により増強された光を用い光吸収を測定する技術が提案されている。例えば、全反射プリズムの反射面下に網状金属を設け、網状金属に接し試料を設けることにより、試料の赤外吸収を測定する技術が提案されている(例えば特許文献1)。例えば、金属上に試料を配置し、試料の上方に空気を介し光学プリズムを配置する測定装置が提案されている(例えば特許文献2)。光学プリズムの反射面に金属薄膜を形成し、金属薄膜下に試料を配置する測定装置が提案されている(例えば特許文献3〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−229829号公報
【特許文献2】特開平6−265336号公報
【特許文献3】特開2001−21565号公報
【特許文献4】特開2008−203172号公報
【特許文献5】特開2009−80109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの観察方法では、検出感度が十分ではない。例えば、1原子層以下の存在量の分子等の検出を行なうことが難しい。また、例えば、存在量の小さい分子等の試料を、金属に接し設けることは難しい。本観察装置および観察セルは、感度の高い観察を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば、観察対象である観察面を保持する第1部品と、観察面から離間して設けられた金属粒子を保持する第2部品と、光を前記第1部品または前記第2部品を介し前記観察面に照射する照射部と、前記観察面を反射または透過した前記光から前記観察面の状態を観察する観察部と、を具備し、前記第1部品および前記第2部品は、前記観察面および前記金属粒子が前記光の電磁場内となるように、前記観察面および前記金属粒子を保持することを特徴とする観察装置を用いる。
【0006】
例えば、観察面を保持する第1部品と、観察面から離間して設けられた金属粒子を保持する第2部品と、を具備し、前記第1部品および前記第2部品は、前記観察面および前記金属粒子が前記第1部品または前記第2部品を介し観察面に照射された光の電磁場内となるように、前記観察面および前記金属粒子を保持することを特徴とする観察セルを用いる。
【発明の効果】
【0007】
本観察装置および観察セルによれば、感度の高い観察を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例1に係る観察装置の模式図である。
【図2】図2は、実施例2に係る観察装置の模式図である。
【図3】図3は、波数に対する出力光の強度を示す図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、分子の構造を示す図である。
【図5】図5は、実施例3に係る観察装置のブロック図である。
【図6】図6は、実施例4に係る観察装置の模式図である。
【図7】図7は、実施例5に係る観察装置の模式図である。
【図8】図8は、実施例5に係る観察装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照に本発明に係る実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1に係る観察装置の模式図である。観察装置100は、観察セル10、照射部20および観察部22を備えている。観察セル10は、第1部品12、金属粒子16および第2部品18を備えている。第1部品12は光学プリズムであり、観察面14において光24が全反射する。第1部品12は観察面14を保持している。観察面14は、観察対象であり、例えば、観察面14の表面状態を観察する。または、例えば、観察面14の表面に観察する試料が設けられている。金属粒子16は、第2部品18上に設けられている。金属粒子16は、例えばAuであり、100nm以下の大きさであることが好ましい。第2部品18は観察面14から離間して設けられた金属粒子16を保持する。金属粒子16は、光24が観察面14において全反射する際に、エバネッセント波が金属粒子16の全体を含むように設けられることが好ましい。すなわち、第1部品12と第2部品18との距離Gは、光24の波長以下であることが好ましい。すなわち、金属粒子16の大きさは、光24の波長以下であることが好ましい。照射部20は、第1部品12を介し観察面14に光24を照射する。観察部22は、観察面14から反射された光24から観察面14の状態を観察する。
【0011】
実施例1によれば、第1部品12および第2部品18は、観察面14および金属粒子16が観察光の電磁場内となるように、観察面14および金属粒子16を保持している。図1では、金属粒子16がエバネッセント波の電磁場内となるように設けられている。光と金属粒子16との相互作用により、プラズモンポラリトンが励起される。これにより、金属粒子16周辺の振動電場強度が増大し、観察面の状態により、観察光の吸収が増大する。金属粒子16間の隙間を介しエバネッセント波の電場が金属粒子16全体を覆う、これにより、金属粒子16周辺の振動電場強度が増大するものと考えられる。よって、観察面14の状態を観察する検出感度を向上させることができる。
【0012】
実施例1のように、観察セル10を、光24が、第1部品12内を通過した後、観察面14で全反射し、全反射した光24が第1部品12内を通過した後、観察部22に至る構成とすることができる。実施例1においては、第1部品12は光24を透過する材料が用いられていることが好ましい。第2部品18は、エバネッセント波が金属粒子16全体を覆うように、金属粒子16より光24の吸収係数が小さい材料を用いることが好ましい。第1部品12および第2部品18としては、例えば、半導体または絶縁体を用いることができる。
【実施例2】
【0013】
実施例2は、観察面の状態を観察した例である。図2は、実施例2に係る観察装置の模式図である。第1部品12は、膜厚が500μmのシリコンプリズムであり、第2部品18aおよび18bはシリコン基板である。観察面14aおよび14bはシリコンの111面である。第2部品18aおよび18bの一面には、金属粒子16aおよび16bとしてAu微粒子が形成されている。Au微粒子は、成長速度を遅くした電子ビーム蒸着法を用い形成されている。Au微粒子の大きさは、数10nm以下である。第1部品12の一方の端面には、分光された赤外光24が入射し、観察面14aおよび14bで複数回全反射し、反対側の端面から出射する。第1部品12から出射した光24は検出器で検出される。第1部品12と第2部品18aおよび18bとの距離は、万力26のトルクを変えることにより変更した。第1部品12と第2部品18aおよび18bとの対面する面積は50mm×15mmと大きいため、観察面14aおよび14bと金属粒子16aおよび16bとの距離を制御することが難しい。そこで、万力26にトルクを加えることで、第1部品12と第2部品18aおよび18bとの一部において金属粒子16aまたは16bがエベネッセント場内となるようにした。
【0014】
図3は、波数に対する出力光の強度を示す図である。出力光強度Rは、万力にトルクを加えない出力光強度R0で規格化した。実線はP偏光の光、点線はS偏光の光を示している。図3において、赤外光24の進行方向に垂直で観察面14aおよび14bに対し交差する方向の偏光がP偏光である。赤外光24の進行方向に垂直で観察面14aおよび14bに対し平行な方向の偏光がS偏光である。S偏光では、信号は観察されない。一方、P偏光では、約2080cm−1付近において吸収信号Mおよび約2250cm−1付近において吸収信号MOが観察された。
【0015】
図4(a)および図4(b)は、分子の構造を示す図である。吸収信号Mは、J. Chem. Phys. Vol. 108 (1998). 5965およびJ. Chem. Phys. Vol. 113 (2000). 2423において、多重反射ATR(Attenuated Total Reflection)法を用い検出された信号と同じ波数である。これにより、図4(a)のように、吸収信号Mはシリコン結晶50の111面のテラスを構成するSi原子52に111面に垂直に結合した水素原子54の111面に垂直な熱振動に対応した信号と考えられる。図4(b)のように、吸収信号MOは、シリコン結晶50の111面より飛び出したSi原子52に111面に垂直に水素原子54が結合し、Si原子52とシリコン結晶50との間に3つの酸素原子56が結合した構造において、水素原子54の111面に垂直な熱振動に対応した信号と考えられる。吸収信号MOは、多重反射ATR法では観察されていない。
【0016】
実施例2によれば、観察面14aおよび14bを反射した光の吸収スペクトルから観察面14aおよび14bの状態を観察することができた。また、P偏光の光により、観察面14aおよび14bの状態を観察することができた。P偏光の光は、観察面14aおよび14bと金属粒子16aおよび16bとの配置方向に偏光した光を含んでいる。このため、観察面14aおよび14bに垂直な方向に分極したプラズモンポラリトンが励起され、観察面14aおよび14bに垂直な方向の電場が増強される。よって、観察面14aおよび14bに垂直な方向の分子の熱振動を効率的に観察することができる。
【実施例3】
【0017】
実施例3は、観察装置の具体例である。図5は、実施例3に係る観察装置のブロック図である。観察装置100は、観察セル10、赤外光分光装置40および距離変更装置42を備えている。観察セル10は、実施例1の観察セルと同じであり説明を省略する。
【0018】
赤外光分光装置40は、制御装置30、赤外光源32、分光器34、偏光装置36および検出器38を備えている。赤外光源32と分光器34とから照射部20が形成され、偏光装置36と検出器38とから観察部22が形成される。赤外光源32は赤外光を出射する。分光器34は、赤外光源32から出射された赤外光を分光し、所望の波長の赤外光を出射する。分光器34から出射された赤外光は観察面14で反射し、偏光装置36に至る。偏光装置36は、観察面14で反射された光のうち所望の偏光方向の光を通過させる。例えば、実施例2のように、偏光装置36は、P偏光の光を通過させ、S偏光の光を遮断する。検出器38は、所望の偏光方向の光を検出する。制御装置30は、分光器34、偏光装置36、検出器38および距離偏光装置42を制御する。距離変更装置42は、第1部品12と第2部品18との距離Gを変更する。
【0019】
実施例3のように、分光器34および偏光装置36を用い、例えばP偏光した赤外光の吸収スペクトルを取得することができる。また、観測面14と金属粒子16との距離が近づけば、観測面14での電場強度が大きくなる。よって、距離変更装置42が距離Gを変調させ、検出器38が変調された周波数でロックイン検出することにより、より検出感度を向上させることができる。
【実施例4】
【0020】
実施例4は、光が第2部品内を通過し、金属粒子が設けられた面で全反射する例である。図6は、実施例4に係る観察装置の模式図である。図6のように、金属粒子16を保持する第2部品18内を光24が通過し、金属粒子16が設けられた面で光24が全反射する。観察面14は金属粒子16と離間して設けられている。例えば、第1部品12および第2部品18は、観察面14および金属粒子16を光24のエバネッセント場内に保持する。その他の構成は、実施例1の図1と同じであり説明を省略する。
【0021】
実施例4のように、観察セル10を、光24が、第2部品18内を通過した後、金属粒子16が設けられた面で全反射し、全反射した光24が第2部品18内を通過した後、観察部22に至る構成とすることができる。実施例4によれば、実施例1と同様に、金属粒子16に励起されたプラズモンポラリトンが電場を増強する。これにより、観察面14の状態の検出感度を向上させることができる。実施例4においては、第2部品18は光24を透過する材料が用いられていることが好ましい。第1部品182、エバネッセント波が観察面14全体を覆うように、金属粒子16より光24の吸収係数が小さい材料を用いることが好ましい。
【実施例5】
【0022】
実施例5は、光が第1部品および第2部品を透過する例である。図7は、実施例5に係る観察装置の模式図である。図7のように、金属粒子16を保持する第2部品18内を光24が通過する。さらに、光24は、金属粒子16および観察面14を通過し、観察面14を保持する第1部品12内を通過する。観察面14は金属粒子16と離間して設けられている。その他の構成は、実施例1の図1と同じであり説明を省略する。
【0023】
実施例5のように、観察セル10を、光24が第1部品12および第2部品18の一方内を通過した後、観察面14および金属粒子16を通過し、第1部品12および第2部品18の他方内を通過した後、観察部22に至る構成とすることができる。実施例5によれば、金属粒子16を通過する光24により、金属粒子16にプラズモンポラリトンが励起される。プラズモンポラリトンにより、電場が増強される。よって、観察面14の状態の検出感度を向上させることができる。実施例5においては、第1部品12および第2部品18には光24を透過する材料が用いられていることが好ましい。
【0024】
図8は、実施例5に係る観察装置のブロック図である。実施例3の図5と同様に、照射部20は、赤外光源32と分光器34とを備えることができる。また、観察部22は、偏光装置36と検出器38を備えることができる。また、第1部品12を透過した光24をミラー44を用い観察部22に案内することもできる。さらに、P偏光した光が観察面14と金属粒子16との配置方向に偏光した成分を含むように、光24は、観察面14に対し斜めに入射することが好ましい。
【0025】
実施例1〜実施例5のように、第1部品12および第2部品18は、観察面14および金属粒子16が光24の電磁場内となるように、観察面14および金属粒子16を保持することが好ましい。また、第2部品18の金属粒子16を保持する面の大きさが光24の波長程度以下の場合、この金属粒子16を保持する面と観察面14とが平行でなくとも、第1部品12と第2部品18との距離Gをほぼ一定とみなすことができる。よって、第2部品18の金属粒子16を保持する面は、例えば10μm×10μm以下であることが好ましい。例えば1μm×1μm以下であることがより好ましい。
【0026】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 観察セル
12 第1部品
14 観察面
16 金属粒子
18 第2部品
20 照射部
22 観察部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象である観察面を保持する第1部品と、
観察面から離間して設けられた金属粒子を保持する第2部品と、
光を前記第1部品または前記第2部品を介し前記観察面に照射する照射部と、
前記観察面を反射または透過した前記光から前記観察面の状態を観察する観察部と、
を具備し、
前記第1部品および前記第2部品は、前記観察面および前記金属粒子が前記光の電磁場内となるように、前記観察面および前記金属粒子を保持することを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記観察部は、前記光うち前記観察面と前記金属粒子との配置方向に偏光した光から、前記観察面の状態を観察することを特徴とする請求項1記載の観察装置。
【請求項3】
前記光は、前記第1部品内を通過した後、前記観察面で全反射し、前記全反射した前記光は前記第1部品内を通過した後、前記観察部に至ることを特徴とする請求項1または2記載の観察装置。
【請求項4】
前記光は、前記第2部品内を通過した後、前記金属粒子が設けられた面で全反射し、前記全反射した前記光は前記第2部品内を通過した後、前記観察部に至ることを特徴とする請求項1または2記載の観察装置。
【請求項5】
前記第1部品および前記第2部品は、前記観察面および前記金属粒子を前記光のエバネッセント場内に保持することを特徴とする請求項3または4記載の観察装置。
【請求項6】
前記光は、前記第1部品および前記第2部品の一方内を通過した後、前記観察面および前記金属粒子を通過し、前記通過した前記光は前記第1部品および前記第2部品の他方内を通過した後、前記観察部に至ることを特徴とする請求項1または2記載の観察装置。
【請求項7】
前記観察部は、前記観察面を反射または透過した前記光の吸収スペクトルから前記観察面の状態を観察することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の観察装置。
【請求項8】
観察対象である観察面を保持する第1部品と、
観察面から離間して設けられた金属粒子を保持する第2部品と、
を具備し、
前記第1部品および前記第2部品は、前記観察面および前記金属粒子が前記第1部品または前記第2部品を介し観察面に照射された光の電磁場内となるように、前記観察面および前記金属粒子を保持することを特徴とする観察セル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−180043(P2011−180043A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45932(P2010−45932)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】