説明

観測用クレーン

【課題】観測用クレーンにおいて、フレームの起倒に応じた観測機器の吊り索の自由長の変動を抑制することで作業性の向上を図る。
【解決手段】左右一対の脚部21a,21bと梁部21cとを有する門型フレーム21を作業甲板12に水平軸32a,32bをもって回動自在に支持し、第2油圧シリンダ24a,24bにより回動可能とし、門型フレーム21における脚部21a及び梁部21cの長手方向に沿って第1ケーブル25aを付設して一端部を船舶上に設置される第1ウインチに巻き取って他端部を梁部21cから垂下して観測機器16を吊り下げ可能とすると共に、門型フレーム21における脚部21b及び梁部21cの長手方向に沿って第2ケーブル25bを付設して一端部を船舶上に設置される第2ウインチに巻き取って他端部を梁部21cから垂下して観測機器16を吊り下げ可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋調査船、海洋観測船、海洋研究船、測量船などにおいて、船上で各種の観測・採取機器を海洋に投入または引き揚げ可能な観測用クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋観測船などは、デッキに各種の観測機器を海洋に投入または引き揚げするための観測用クレーンが搭載されている。この観測用クレーンは、デッキ上の舷側に門型フレームが起倒自在に設けられると共に油圧シリンダにより起倒可能とされ、船舶側のウインチから引き出されたケーブルまたはロープがシーブを介して門型フレームの先端部に案内され、ここから下方に案内されて構成されている。従って、ケーブル等の先端に観測機器を吊り下げ、油圧シリンダを作動して門型フレームを起倒することで、海洋に対して観測機器の投入や引き揚げを実行することができる。
【0003】
このような観測用クレーンとしては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3615986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の観測用クレーンを用いて観測機器を海洋に投入する場合、作業者は、デッキ上で門型フレームの先端部から垂下するケーブル等の先端に観測機器を連結した後、油圧シリンダにより門型フレームを海洋側に振り出すことで、観測機器を海洋側に移動して投入している。ところが、門型フレームをデッキ側から海洋側に振り出すとき、門型フレームの先端部の位置(ケーブルを案内するシーブの位置)がデッキ側から海洋側に移動するため、門型フレームの先端部にあるシーブからケーブル等を介して吊り下げた観測機器の吊り索の自由長が変化してしまう。即ち、門型フレームをデッキ側から海洋側に振り出すと、船舶側のウインチから門型フレームの先端部にあるシーブまでのケーブル等の長さが長くなり、その長くなった分だけ観測機器の吊り索の自由長が短くなってしまう。
【0006】
このようにケーブル等により観測機器を吊り下げた状態で、門型フレームの起倒に伴って観測機器の吊り索の自由長が変動すると、この観測機器に揺れが発生し、周辺部材との接触により破損等が発生してしまうおそれがある。そのため、従来は、門型フレームの起倒動作に伴ってウインチを作動し、ケーブル等の繰り出し・巻き揚げ量を調整することで観測機器の吊り索の自由長が変動しないようにしている。しかし、観測機器の吊り索の自由長を一定に維持するようにウインチを作動制御することは面倒であり、作業性がよくないという問題があった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、フレームの起倒に応じた観測機器の吊り索の自由長の変動を抑制することで作業性の向上を図る観測用クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の観測用クレーンは、左右一対の脚部と該脚部の上端部を連結する梁部とを有して前記脚部が船舶側に水平軸をもって回動自在に支持される門型フレームと、該門型フレームを回動可能とする駆動装置と、前記門型フレームにおける一方の前記脚部及び前記梁部の長手方向に沿って付設されると共に一端部が船舶上に設置される第1ウインチに巻き取られて他端部が前記梁部から垂下して観測機器を吊り下げ可能な第1索と、前記門型フレームにおける他方の前記脚部及び前記梁部の長手方向に沿って付設されると共に一端部が船舶上に設置される第2ウインチに巻き取られて他端部が前記梁部から垂下して観測機器を吊り下げ可能な第2索と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、門型フレームを船舶側に回動自在に支持し、この門型フレームにおける各脚部及び梁部の長手方向に沿って第1索あるいは第2索を付設し、各索の一端部を船舶上に設置される第1ウインチあるいは第2ウインチに巻き取って他端部を梁部から垂下して観測機器を吊り下げ可能とすることで、門型フレームを回動しても、索はフレーム起倒量(長手方向の移動量)に応じてほとんど移動することはなく、フレームの起倒に応じた観測機器の吊り索の自由長の変動を抑制することができ、その結果、作業性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の観測用クレーンでは、前記船舶から前記一方の脚部を介して前記梁部へと配列される複数のシーブからなる第1シーブ群と、前記船舶から前記他方の脚部を介して前記梁部へと配列される複数のシーブからなる第2シーブ群と、前記梁部における船幅方向の中間部に配置される共用シーブとが設けられ、前記第1索は、前記第1シーブ群を介して前記共用シーブに導かれ、前記第2索は、前記第2シーブ群を介して前記共用シーブに導かれることを特徴としている。
【0011】
従って、門型フレームにおける各脚部及び梁部に複数のシーブからなるシーブ群をそれぞれ設けると共に共用シーブを設け、この各シーブ群と共用シーブにより第1、第2索を支持することで、この第1、第2索を門型フレームにおける各脚部及び梁部の長手方向に沿って容易に支持することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0012】
本発明の観測用クレーンでは、前記第1シーブ群及び前記第2シーブ群は、前記門型フレームの回動支持部に対して回動方向前後にそれぞれ配置される第1シーブ及び第2シーブと、前記各脚部と前記梁部との連結部に配置される第3シーブと、前記梁部における長手方向の中間部に配置される第4シーブとを有することを特徴としている。
【0013】
従って、門型フレームの回動支持部の前後に第1シーブ及び第2シーブを配置することで、この回動支持部と各シーブとの干渉を防止して設計の容易化を可能とすることができる。
【0014】
本発明の観測用クレーンでは、前記第1シーブと前記第2シーブと前記第3シーブは、前記第1索及び前記第2索を前記門型フレームにおける前記各脚部の外側で案内し、前記第2シーブと前記第3シーブは、前記第1索及び前記第2索を前記門型フレームにおける前記各脚部の下方から上方に案内することを特徴としている。
【0015】
従って、各索を門型フレームの外側に案内することで、門型フレームの内側で各種の作業を行う作業者と各索との接触を防止することで、作業の安全性を確保することができると共に、各索のコネクターを観測機器から切り離すことなく、各シーブから索を取り外すことを可能としている。
【0016】
本発明の観測用クレーンでは、前記船舶側に前記水平軸をもって左右一対のリンクが回動自在に支持され、前記駆動装置は、前記船舶側に対して前記リンクを回動可能な第1駆動装置と、前記リンクに対して前記門型フレームを回動可能な第2駆動装置とを有することを特徴としている。
【0017】
従って、構成を複雑化せずに、門型フレームの十分な回動範囲を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の観測用クレーンによれば、門型フレームを船舶側に回動自在に支持し、この門型フレームにおける各脚部及び梁部の長手方向に沿って第1索または第2索を付設し、各索の一端部を船舶上に設置される第1ウインチまたは第2ウインチに巻き取って他端部を梁部から垂下して観測機器を吊り下げ可能とするので、フレームの起倒に応じた観測機器の吊り索の自由長の変動を抑制することで作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る観測用クレーンを表す概略側面図である。
【図2】図2は、本実施例の観測用クレーンを表す概略平面図である。
【図3】図3は、本実施例の観測用クレーンを表す概略正面図である。
【図4】図4は、本実施例の観測用クレーンにおける作動を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る観測用クレーンの好適な実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る観測用クレーンを表す概略側面図、図2は、本実施例の観測用クレーンを表す概略平面図、図3は、本実施例の観測用クレーンを表す概略正面図、図4は、本実施例の観測用クレーンにおける作動を表す概略図である。
【0022】
本実施例の観測用クレーンにおいて、図1乃至図3に示すように、観測船(船舶)11は、船尾に作業甲板12が設けられ、幅方向中間部に切欠12aが形成されるように幅方向の左右端部に後方(図2にて、左方)に突出する延出部13a,13bが設けられている。観測用クレーン14は、門型形状をなし、作業甲板12における各延出部13a,13bに設置されている。
【0023】
この観測用クレーン14は、門型フレーム21と、リンク22a,22bと、駆動装置としての第1油圧シリンダ23a,23a及び第2油圧シリンダ24a,24bと、第1ケーブル(索)25aと、第2ケーブル(索)25bとから構成されている。
【0024】
門型フレーム21は、左右一対の脚部21a,21bと、この脚部21a,21bを連結する梁部21cとから構成されている。この門型フレーム21は、基端部、つまり、各脚部21a,21bの下端部が作業甲板12における左右の延出部13a,13bに設置されている。即ち、左右の固定ブラケット31a,31bは、断面に上向きコ字形状をなし、各延出部13a,13bに固定されており、この固定ブラケット31a,31bにリンク22a,22bの中間部が水平軸32a,32bをもって回動自在に支持されている。この場合、水平軸32a,32bは、観測船11の左右方向(幅方向)に沿うと共に作業甲板12と略水平な軸心を有している。
【0025】
門型フレーム21は、左右の脚部21a,21bの基端部(下端部)が各固定ブラケット31a,31bの内側に嵌合し、リンク22a,22bの中間部と共に水平軸32a,32bをもって回動自在に支持されている。
【0026】
この場合、門型フレーム21は、各脚部21a,21bと梁部21cとがほぼ直交することで、正面視が下向きコ字形状をなしているが、この形状に限定されるものではなく、例えば、脚部21a,21bの上端側が接近するように傾斜してから梁部21cと鈍角をもって連結することで正面視がA字形状をなすように構成してもよい。
【0027】
第1油圧シリンダ23a,23bは、観測船11に対してリンク22a,22bを回動可能な第1駆動装置として機能し、第2油圧シリンダ24a,24bは、リンク22a,22bに対して門型フレーム21を回動可能な第2駆動装置として機能する。
【0028】
第1油圧シリンダ23a,23bは、各固定ブラケット31a,31bに対応して設けられており、基端部が固定ブラケット31a,31bに連結軸33a,33bにより回動自在に支持されている。そして、各第1油圧シリンダ23a,23bは、図示しない油圧制御装置により油圧が給排されることで同期して伸縮可能なピストンロッド34a,34bを有し、このピストンロッド34a,34bは、船首側(図1にて、右側)を向き、先端部がリンク22a,22bの一端部に連結軸35a,35bにより回動自在に支持されている。
【0029】
第2油圧シリンダ24a,24bは、門型フレーム21の各脚部21a,21bに対応して設けられており、基端部がリンク22a,22bの他端部に連結軸36a,36bにより回動自在に支持されている。そして、各第2油圧シリンダ24a,24bは、図示しない油圧制御装置により油圧が給排されることで同期して伸縮可能なピストンロッド37a,37bを有し、このピストンロッド37a,37bは、門型フレーム21の先端側を向き、先端部が門型フレーム21における各脚部21a,21bに固定された連結ブラケット38a,38bに連結軸39a,39bにより回動自在に支持されている。
【0030】
従って、リンク22a,22bは、第1油圧シリンダ23a,23bの作動により長手方向の中間位置を基点として回動することができ、門型フレーム21は、第2油圧シリンダ24a,24bの作動により作業甲板12側を基点として回動することができる。即ち、第1油圧シリンダ23a,23bを作動することで、リンク22a,22bは、作業甲板12上に沿って倒れた状態と、作業甲板12上に起立した状態との間で回動することができる。第2油圧シリンダ24a,24bを作動することで、門型フレーム21は、作業甲板12側に倒れた状態と、海洋側に倒れた状態との間で回動することができる。
【0031】
この場合、門型フレーム21は、作業甲板12における船首側に倒れた状態と、船尾側(海洋側)に倒れた状態との間で回動する必要がある。しかし、一つの油圧シリンダ(第2油圧シリンダ24a,24b)だけでは、その回動量(回動角度)を確保することが困難となる。そのため、門型フレーム21と第2油圧シリンダ24a,24bとリンク22a,22bとにより三角形を形成し、第1油圧シリンダ23a,23bによりリンク22a,22bを回動可能とすることで、門型フレーム21の回動量(回動角度)を増加させている。
【0032】
第1ケーブル25aは、門型フレーム21における一方(船舶の進行方向左方)の脚部21a及び梁部21cの長手方向に沿って付設されると共に、一端部が船舶の作業甲板12上に設置される図示しない第1ウインチに巻き取られ、他端部が梁部21cから垂下して観測機器16を吊り下げ可能となっている。また、第2ケーブル25bは、門型フレーム21における他方(船舶の進行方向右方)の脚部21b及び梁部21cの長手方向に沿って付設されると共に、一端部が船舶の作業甲板12上に設置される図示しない第2ウインチに巻き取られ、他端部が梁部21cから垂下して観測機器16を吊り下げ可能となっている。本実施例にて、ケーブル25a,25bは、門型フレーム21における各脚部21a,21b及び梁部21cに沿って配索されることから、門型フレーム21における幅方向の中間部、つまり、各脚部21a,21bの間には、各種の作業スペースが確保されることとなる。
【0033】
この場合、作業甲板12上の第1ウインチから門型フレーム21における脚部21aを介して梁部21cへと配列される複数のシーブ41a,42a,43a,44aからなる第1シーブ群45と、作業甲板12上の第2ウインチから門型フレーム21における脚部21bを介して梁部21cへと配列される複数のシーブ41b,42b,43b,44bからなる第2シーブ群46と、門型フレーム21の梁部21cにおける長手方向の中間部に配置される共用シーブ47とが設けられている。そして、第1ケーブル25aは、第1シーブ群45から共用シーブ47に案内され、第2ケーブル25bは、第2シーブ群46から共用シーブ47に案内されている。
【0034】
そして、第1シーブ群45及び第2シーブ群46は、門型フレーム21の回動支持部(水平軸32a,32b)に対して回動方向(船舶の前後方向)前後にそれぞれ配置される第1シーブ41a,41b及び第2シーブ42a,42bと、各脚部21a,21bと梁部21cとの連結部に配置される第3シーブ43a,43bと、梁部21cにおける長手方向の中間部に配置される第4シーブ44a,44bとから構成されている。
【0035】
この場合、第1シーブ41a,41bと第2シーブ42a,42bと第3シーブ43a,43bは、第1ケーブル25a及び第2ケーブル25bを門型フレーム21における各脚部21a,21bの外側で案内し、第2シーブ42a,42bと第3シーブ43a,43bは、第1ケーブル25a及び第2ケーブル25bを門型フレーム21における各脚部21a,21bの下方から上方に案内している。
【0036】
即ち、第1シーブ41a,41bは、門型フレーム21の回動支持部(水平軸32a,32b)より船首側(図1及び図2にて、右側)に配置され、作業甲板12に固定された支持台51a,51bに水平な回転軸52a,52bにより回転自在に支持されている。第2シーブ42a,42bは、門型フレーム21の回動支持部(水平軸32a,32b)より船尾側(図1及び図2にて、左側)に配置され、門型フレーム21の基端部側、つまり、脚部21a,21bの基端部に固定された支持台ブラケット53a,53bに水平な回転軸54a,54bにより回転自在に支持されている。
【0037】
第3シーブ43a,43bは、門型フレーム21における先端部、つまり、各脚部21a,21bにおける梁部21c側に固定された支持台55a,55bに門型フレーム21の回動方向に沿う回転軸56a,56bにより回転自在に支持されている。第4シーブ44a,44bは、門型フレーム21の梁部21cにおける長手方向の中間部に固定された支持台57a,57bに脚部21a,21bの長手方向に沿う回転軸58a,58bにより回転自在に支持されている。
【0038】
ここで、第3シーブ43a,43b及び第4シーブ44a,44bは、案内する第1、第2ケーブル25a,25bの張設方向をほぼ90度変更することから、転向シーブとなっている。また、第1シーブ群45を構成する各シーブ41a,42a,43a,44aは、第2シーブ群46を構成する各シーブ41b,42b,43b,44bに対して、この径が小さいものに設定されている。
【0039】
また、共用シーブ47は、門型フレーム21の梁部21cにおける長手方向の中間部であって、第4シーブ44a,44bの間に配置され、この梁部21cに固定された支持台59に梁部21cの長手方向に沿う回転軸60により回転自在に支持されている。
【0040】
船体側から繰り出される2本のケーブル25a,25bは、作業甲板12の左右側部を通り、第1シーブ41a,41bに下方から所定角度巻き付けられた後、第2シーブ42a,42bに下方から所定角度巻き付けられ、門型フレーム21における各脚部21a,21bの長手方向に沿って上方に配索される。その後、各ケーブル25a,25bは、第3シーブ43a,43bに外側から所定角度巻き付けられた後、梁部21cに沿うように転向し、この梁部21cの長手方向に沿って配索され、第4シーブ44a,44bの上方から所定角度巻き付けられる。そして、各ケーブル25a,25bは、第4シーブ44a,44bから共用シーブ47に上方から所定角度巻き付けられた後に垂下し、先端部に観測機器16を連結可能となっている。
【0041】
なお、作業甲板12の後部に形成された切欠部12aには、格納シーブ(固定シーブ)61が配置されている。この場合、船尾端の格納シーブ61に代えて、船尾端の形状を湾曲形状(半円形状)としてもよい。
【0042】
また、この観測機器16とは、各種のサンプリング機器などであり、大型のサンプリング機器は、第1ケーブル25a及び第1シーブ群45が使用され、小型のサンプリング機器は、第2ケーブル25b及び第2シーブ群46が使用される。
【0043】
ここで、上述した本実施例の観測用クレーン14の作動について説明する。
【0044】
観測船11が航行しており、観測用クレーン14を使用していないときは、図4に実線で示すように、門型フレーム21が船首側に回動し、作業甲板12と略水平となる位置に格納している。
【0045】
観測船11が停止し、観測用クレーン14を使用して観測機器16を海洋に投入するときには、まず、図4に二点鎖線で示すように、第2油圧シリンダ24a,24bを伸張作動し、門型フレーム21の先端部が作業甲板12から所定距離だけ上昇するように上方に回動する。このとき、第1油圧シリンダ23a,23bは作動せずに、リンク22a,22bはその位置に停止させておく。ここで、作業者は、ウインチを操作し、例えば、ケーブル25aを繰り出し、先端部を作業甲板12上に載置されている観測機器16に連結する。
【0046】
次に、作業者は、第1油圧シリンダ23a,23bを伸張作動し、リンク22a,22bの先端部が作業甲板12から所定距離だけ上昇するように上方に回動する。また、第2油圧シリンダ24a,24bを伸張作動し、門型フレーム21の先端部が作業甲板12に対して直立するように上方に回動する。そして、更に、第2油圧シリンダ24a,24bを伸張作動し、図1に示すように、門型フレーム21が海洋側に倒れるように回動する。
【0047】
このとき、門型フレーム21が回動しても、ケーブル25aが各シーブ41a,42a,43a,44a,47により門型フレーム21に沿って配索されていることから、このケーブル25aは、その長手方向に沿ってほとんど移動しない。そのため、門型フレーム21の回動に伴ってウインチを操作する必要はなく、観測機器16の吊り索の自由長の変動が抑制される。つまり、観測機器16は、作業甲板12上に載置されているときと、海洋上に吊り下げられているときで、その吊り索の自由長がほとんど変動せず、移動による揺れを極力少なくすることができる。
【0048】
なお、門型フレーム21を回動することで、ケーブル25aに吊り下げられている観測機器16を海洋上に移動したら、作業者は、ウインチを操作してケーブル25aを繰り出すことで、観測機器16を海中に投入することができる。
【0049】
このように本実施例の観測用クレーンにあっては、左右一対の脚部21a,21bと梁部21cとを有する門型フレーム21を作業甲板12に水平軸32a,32bをもって回動自在に支持し、第2油圧シリンダ24a,24bにより回動可能とし、門型フレーム21における脚部21a及び梁部21cの長手方向に沿って第1ケーブル25aを付設して一端部を船舶上に設置される第1ウインチに巻き取って他端部を梁部21cから垂下して観測機器16を吊り下げ可能とすると共に、門型フレーム21における脚部21b及び梁部21cの長手方向に沿って第2ケーブル25bを付設して一端部を船舶上に設置される第2ウインチに巻き取って他端部を梁部21cから垂下して観測機器16を吊り下げ可能としている。
【0050】
従って、ケーブル25a,25bが門型フレーム21の長手方向に沿って付設されていることで、門型フレーム21を回動しても、このケーブル25a,25bがその長手方向にほとんど移動することはなく、門型フレーム21の起倒に応じた観測機器16の吊り索の自由長の変動を抑制することができ、その結果、作業性の向上を図ることができる。また、ケーブル25a,25bが門型フレーム21の脚部21a,21bと梁部21cに沿って付設されていることで、門型フレーム21の幅方向の中間部にケーブルが配索されることはなく、作業空間として大きなスペースを確保することができ、作業環境を良好とすることができる。
【0051】
また、本実施例の観測用クレーンでは、第1ウインチから脚部21aを介して梁部21cへと配列される複数のシーブ41a〜44aからなる第1シーブ群45と、第2ウインチから脚部21bを介して梁部21cへと配列される複数のシーブ41b〜44bからなる第2シーブ群46と、梁部21cにおける長手方向の中間部に配置される共用シーブ47とを設け、第1ケーブル25aを第1シーブ群45から共用シーブ47により案内し、第2ケーブル25bを第2シーブ群46から共用シーブ47により案内している。従って、門型フレーム21における第1、第2ケーブル25a,25bを門型フレーム21における各脚部21a,21b及び梁部21cの長手方向に沿って容易に支持することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0052】
また、本実施例の観測用クレーンでは、第1シーブ群45及び第2シーブ群46として、門型フレーム21の回動支持部(水平軸32a,32b)に対して回動方向前後にそれぞれ配置される第1シーブ41a,41b及び第2シーブ42a,42bと、各脚部21a,21bと梁部21cとの連結部に配置される第3シーブ43a,43bと、梁部21cにおける長手方向の中間部に配置される第4シーブ44a,44bとを設けている。従って、門型フレーム21の回動支持部の前後に第1シーブ41a,41b及び第2シーブ42a,42bを配置することで、この回動支持部と各シーブ41a,41b,42a,42bとの干渉を防止することができると共に、この回動支持部や各シーブ41a,41b,42a,42bの取付部における設計の容易化を可能とすることができる。
【0053】
また、本実施例の観測用クレーンでは、第1シーブ41a,41bと第2シーブ42a,42bと第3シーブ43a,43bを、第1ケーブル25a及び第2ケーブル25bを門型フレーム21における各脚部21a,21bの外側で案内し、第2シーブ42a,42bと第3シーブ43a,43bは、第1ケーブル25a及び第2ケーブル25bを門型フレーム21における脚部21a,21bの下方から上方に案内している。従って、各ケーブル25a,25bを門型フレーム21の外側に案内することで、門型フレーム21の内側の作業甲板12上で各種の作業を行う作業者と各ケーブル25a,25bとの接触を防止することで、作業の安全性を確保することができる。また、各ケーブル25a,25bを脚部21a,21bの下方から上方に案内することで、このケーブル25a,25bを脚部21a,21bに対して適正に付設でき、この場合に、シーブ42a,42b,43a,43bを容易に脚部21a,21bに装着することができ、その装着性を向上することができると共に、ケーブル25a,25bの配索性を向上することができる。
【0054】
また、本実施例の観測用クレーンでは、作業甲板12に水平軸32a,32bをもって左右一対のリンク22a,22bを回動自在に支持し、第1油圧シリンダ23a,23bにより作業甲板12に対してリンク22a,22bを回動可能とし、第2油圧シリンダ24a,24bによりリンク22a,22bに対して門型フレーム21を回動可能としている。従って、門型フレーム21の構成を複雑化することなく、この門型フレーム21の十分な回動範囲を確保することができる。
【0055】
なお、上述した実施例では、1つのケーブル25a,25bに対してシーブ群45,46を4つのシーブ41a,41b・・・44a,44bから構成したが、その数や装着位置はこの実施例に限定されるものではない。
【0056】
また、上述した実施例では、観測用クレーン14を観測船11の船尾に設けたが、この設置場所は船尾に限定されるものではなく、左舷や右舷であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る観測用クレーンは、ケーブルを回動自在な門型フレームにおける脚部及び梁部の長手方向に沿って付設することで、フレームの起倒に応じた観測機器の吊り索の自由長の変動を抑制することで作業性の向上を図るものであり、いずれの観測用クレーンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
11 観測船(船舶)
12 作業甲板
14 観測用クレーン
21 門型フレーム
22a,22b リンク
23a,23b 第1油圧シリンダ(第1駆動装置、駆動装置)
24a,24b 第2油圧シリンダ(第2駆動装置、駆動装置)
25a,25b ケーブル(索)
32a,32b 水平軸
41a,41b 第1シーブ
42a,42b 第2シーブ
43a,43b 第3シーブ
44a,44b 第4シーブ
45 第1シーブ群
46 第2シーブ群
47 共用シーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の脚部と該脚部の上端部を連結する梁部とを有して前記脚部が船舶側に水平軸をもって回動自在に支持される門型フレームと、
該門型フレームを回動可能とする駆動装置と、
前記門型フレームにおける一方の前記脚部及び前記梁部の長手方向に沿って付設されると共に一端部が船舶上に設置される第1ウインチに巻き取られて他端部が前記梁部から垂下して観測機器を吊り下げ可能な第1索と、
前記門型フレームにおける他方の前記脚部及び前記梁部の長手方向に沿って付設されると共に一端部が船舶上に設置される第2ウインチに巻き取られて他端部が前記梁部から垂下して観測機器を吊り下げ可能な第2索と、
を備えることを特徴とする観測用クレーン。
【請求項2】
前記船舶から前記一方の脚部を介して前記梁部へと配列される複数のシーブからなる第1シーブ群と、前記船舶から前記他方の脚部を介して前記梁部へと配列される複数のシーブからなる第2シーブ群と、前記梁部における船幅方向の中間部に配置される共用シーブとが設けられ、前記第1索は、前記第1シーブ群を介して前記共用シーブに導かれ、前記第2索は、前記第2シーブ群を介して前記共用シーブに導かれることを特徴とする請求項1に記載の観測用クレーン。
【請求項3】
前記第1シーブ群及び前記第2シーブ群は、前記門型フレームの回動支持部に対して回動方向前後にそれぞれ配置される第1シーブ及び第2シーブと、前記各脚部と前記梁部との連結部に配置される第3シーブと、前記梁部における長手方向の中間部に配置される第4シーブとを有することを特徴とする請求項2に記載の観測用クレーン。
【請求項4】
前記第1シーブと前記第2シーブと前記第3シーブは、前記第1索及び前記第2索を前記門型フレームにおける前記各脚部の外側で案内し、前記第2シーブと前記第3シーブは、前記第1索及び前記第2索を前記門型フレームにおける前記各脚部の下方から上方に案内することを特徴とする請求項3に記載の観測用クレーン。
【請求項5】
前記船舶側に前記水平軸をもって左右一対のリンクが回動自在に支持され、前記駆動装置は、前記船舶側に対して前記リンクを回動可能な第1駆動装置と、前記リンクに対して前記門型フレームを回動可能な第2駆動装置とを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の観測用クレーン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71634(P2012−71634A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216154(P2010−216154)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】