説明

角層細胞の染色液及びそれを用いた角層細胞の染色方法

【課題】どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色でき、カウンセリングや化粧品選択に有用な情報を提供できることを目的とした皮膚角層細胞評価方法のための染色液及び染色方法を提供することを課題とする。
【解決手段】どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色できる、皮膚角層細胞評価方法のための染色液及び染色方法であって、染料、アルコール及び有機酸を含有することを特徴とする染色液、リザーバーと芯部と蓋部より構成されることを特徴とする角層細胞染色用具、角層細胞又は角層細胞の標本に染色液と10秒以下接触させ、皮膚角層細胞面積、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況等の測定又は判別の為であることを特徴とする角層細胞の染色方法、及び該判別結果を用いた化粧料の選択のためであることを特徴とする皮膚状態の鑑別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角層細胞の染色液、角層細胞の染色方法及びそれを用いる皮膚状態の鑑別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、顕微鏡観察を容易に行うために、生体材料を染色した後、顕微鏡観察の試料として提供することが行われている。このための染色方法のうち、皮膚角層細胞の染色を目的とする場合には、古くはヘマトキシリン・エオジン染色が行われ、その他、メチレンブルー、ローダミンB、ゲンチアナバイオレット、ブリリアントグリーンなどもよく用いられている。これらの方法では、染色原理が未解明なものも多く、肉眼観察、顕微鏡観察及び観察した角層細胞の画像解析を行う上に重要なコントラストのある良好な染色が難しく、更に、染色に伴い注意すべきこととして、染色液による衣服や身体への汚染、数10分〜数日間の所用時間、染色を行う基材や場所の確保等があり、良好で且つ簡易な染色技術の開発が望まれていた。
【0003】
このため、特許文献1では、塩基性硝酸銀溶液とゲンチアナバイオレットで染色することによって細胞のメラニン色素を染色する技術を、また特許文献2では、媒染剤としてタンニン酸等を使用することで皮膚角層細胞の面積や形態を精度良く判定可能な染色方法を、特許文献3では、水と混和可能な有機溶剤を含有する染色液を使用することで、短時間で明瞭に染色する方法を開示している。しかし、いずれも染色時間そのものは短縮されたとはいえ、30分以上を要し、又、その為の装置、設備も要していた。即ち、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を染色するような方法は求められているにもかかわらず、未だ得られていないのが現状といえる。他方、1)リザーバーと2)リザーバーに貯留された液性成分を浸出させるべき芯部と3)芯部より揮発成分が揮散するのを防ぐべき蓋部とを備えた容器については、筆記具用のものが既に存在し、知られている(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6を参照)。
【0004】
一方、角層細胞の染色液であって、1)染料、2)炭素数1〜4のアルコール及び3)有機酸を含有するものも、角層細胞の染色用の用具であって、1)リザーバーと2)リザーバーに貯留された液性成分を浸出させるべき芯部と3)芯部より揮発成分が揮散するのを防ぐべき蓋部とを備えた容器のリザーバーに角層細胞の染色液を充填してなる、角層細胞染色用具も全く知られておらず、従って、これらを用いてどこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を染色することができることも全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−111550号公報
【特許文献2】特開2000−125854号公報
【特許文献3】特開2003−202336号公報
【特許文献4】特開平11−321185号公報
【特許文献5】特開平10−287840号公報
【特許文献6】特開平10−086585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況下為されたものであり、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色でき、カウンセリングや化粧品選択に有用な情報を提供できることを目的とした皮膚角層細胞評価方法のための染色液及び/又は染色方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況を鑑みて、本発明者は、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色できる技術を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、染料、アルコール及び有機酸を含有することを特徴とする角層細胞用の染色液によって、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色でき、皮膚角層細胞評価方法のための染色液及び/又は染色方法を提供できることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
(1)1)染料、2)炭素数1〜4のアルコール及び3)有機酸を含有することを特徴とする、角層細胞用の染色液。
(2)前記染料として、青色1号、紫色401号、緑色201号、黄色4号、黄色5号、黄色407号、赤色102号、橙色205号、ブリリアントグリーン、ヘマトキシリンの群から選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、(1)に記載の角層細胞の染色液。
(3)前記炭素数1〜4のアルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノールの群から選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の角層細胞の染色液。
(4)前記有機酸として、クエン酸、無水クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、グリコール酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、タンニン酸の群より選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載の角層細胞の染色液。
(5)前記アルコールを70〜95質量%含有することを特徴とする、(1)〜(4)の何れか1項に記載の角層細胞の染色液。
(6)前記有機酸を0.01〜1質量%含有することを特徴とする、(1)〜(5)の何れか1項に記載の皮膚角層細胞の染色液。
(7)(1)〜(6)の何れかに記載の染色液を、1)リザーバーと2)リザーバーに貯留された液性成分を浸出させるべき芯部と3)芯部より揮発成分が揮散するのを防ぐべき蓋部とを備えた容器のリザーバーに充填してなる、角層細胞染色用具。
(8)角層細胞又は角層細胞の標本に、(1)〜(6)何れか1項に記載の染色液と10秒以下接触させることを特徴とする、角層細胞の染色方法。
(9)前記染色液との接触が、(7)に記載の角層細胞染色用具によって為されることを特徴とする、(8)に記載の角層細胞の染色方法。
(10)皮膚角層細胞面積、有核細胞の存在の有無、トラベキュラーの有無、有核細胞の出現頻度、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況から選択される1種乃至は2種以上の測定又は判別の為であることを特徴とする、(8)又は(9)の何れかに記載の角層細胞の染色方法。
(11)(1)〜(6)何れか1項の記載の染色液を用いて角層細胞を染色し、皮膚角層細胞面積、有核細胞の存在の有無、有核細胞の出現頻度、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況から選択される1種乃至は2種以上の測定又は判別し、該判別結果を用いて、皮膚状態を鑑別することを特徴とする、皮膚状態の鑑別方法。
(12)化粧料の選択のためのものであることを特徴とする、(11)に記載の皮膚状態の鑑別方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色でき、カウンセリングや化粧品選択に有用な情報を提供できることを目的とした皮膚角層細胞評価方法のための染色液及び/又は染色方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色できる、皮膚角層細胞評価方法のための染色液及び/又は染色方法であって、染料、アルコール及び有機酸を含有することを特徴とする染色液、リザーバーと芯部と蓋部より構成されることを特徴とする角層細胞染色用具、角層細胞又は角層細胞の標本に染色液と10秒以下接触させ、皮膚角層細胞面積、有核細胞の存在の有無、有核細胞の出現頻度、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況等の測定又は判別の為であることを特徴とする角層細胞の染色方法、及び該判別結果を用いた化粧料の選択のためであることを特徴とする皮膚状態の鑑別方法に関する。以下に、更に詳細に説明を加える。
【0010】
本発明の染色液は、染料を炭素数1〜4のアルコールに有機酸とともに溶解させてあることを特徴とする。前記染料としては、酸性染料を用いることが、酸により強く固着できるので好ましく、かかる酸性染料としては、例えば、青色1号、紫色401号、緑色201号、黄色4号、黄色5号、黄色407号、赤色102号、橙色205号、ブリリアントグリーン、ヘマトキシリンの群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく例示できる。かかる染料は、ゲンチアナバイオレットなどの従来用いられていた角層細胞染色用の染色剤に比して、染色速度が著しく速い。かかる染料は唯一種含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。特に好ましい形態は、少なくとも青色1号と、ブリリアントグリーン又はヘマトキシリンを含有する形態である。これは、青色1号と、ブリリアントグリーン又はヘマトキシリンとを併用することで、核も染色できるためである。本発明の染色液に於ける、かかる染料の好ましい含有量は、染色液全量に対して、総量で0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.05〜3質量%である。これは少なすぎると角層細胞を染色することができない場合が存し、多すぎると角層細胞の微細構造を観察できなくなる場合が存するからである。
【0011】
前記炭素数1〜4のアルコールとしては、溶剤特性を有するものであれば特段の限定無く使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノール等を好ましく例示できる。これらの内特に好ましいものは、エタノール及び/又はイソプロパノールである。これは、毒性、臭気の問題がなく、且つ、揮散特性、染料を溶かす溶剤特性、角層細胞への浸透性に優れるためである。即ち、本発明の染色液に於いて、かかるアルコール類は、前記染料を溶解させ、角層細胞などへ速やかに浸透し、染色させた後、速やかに溶剤成分を揮散させて染色を定着せしめる働きを有する。かかるアルコールは唯一種を含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の染色液に於ける、かかるアルコールの好ましい含有量は、染色液全量に対して、総量で70〜95質量%であり、より好ましくは75〜90質量%である。これは前記アルコールが少なすぎると、この様な効果を奏さない場合が存し、多すぎると他の処方成分の配合を阻害する場合が存するからである。
【0012】
前記有機酸としては、通常染色剤或いは緩衝剤として使用されているものであれば、特段の限定無く適用することができ、例えば、無水であっても良いクエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、グリコール酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、タンニン酸等が好ましく例示できる。より好ましいものは、クエン酸、シュウ酸、グリコール酸である。これらの有機酸は、PHコントロール剤として染色液の系の安定性、即ち、色の安定性、角層細胞への浸透性を増加させ、塗布後は染料の組織への固定化に貢献する。本発明の染色液に於いてかかる有機酸は唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の染色液に於ける、かかる有機酸の好ましい含有量は、染色液全量に対して、総量で0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.02〜0.8質量%である。これは多すぎると、結晶が析出したりして系が不安定になる場合が存し、少なすぎると前記の効果を奏さない場合が存するからである。
【0013】
本発明の染色液は、通常の染色液のように、染色液浴に充填し、これに標本を浸漬し染色に用いることもできるが、本発明の染色液の速浸透性、速染色性を生かして、所謂「フェルトペン」タイプの容器のリザーバー部に充填して、そこより芯を介して浸漬させ、これを皮膚や角層細胞に塗布、付着させて染色させることもでき、この様な形態での使用が、本発明の染色液の特性を生かせるので好ましい。この様な容器は既に知られている構造のものを利用すれば良く、リザーバー部としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックタンクに、繊維などを充填したものや、前記タンクより芯部まで微細管で連結し、前記微細管の管の径で滲出量を調整する直液式のものなどが好ましく例示できる。又、芯部とフェルト製のもの等が好ましく例示できる。
【0014】
本発明の染色液による染色形態としては前記リザーバー、リザーバーに貯留された液性成分を浸出させるべき芯部及び揮発成分が揮散するのを防ぐべき蓋部とを備えた容器より構成される角層細胞染色用具を使用すれば、角層細胞標本に芯部を直接1〜10秒程度押し当てることで染色を行うことができる。該角層細胞染色用具の方法では、従来より実施されている染色液の入った容器に角層細胞を浸漬することによって行う染色方法に比較して、瞬時に染色を行え、染色場所がどこでも可能な上に、染色容器が不要で、周辺汚染の心配がなく、操作性の容易性等の非常に多くの優位性がある。
【0015】
該皮膚角層細胞面積、有核細胞の存在の有無、トラベキュラーの有無、有核細胞の出現頻度、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況の測定又は判別は、該角層細胞染色用具によって染色された角層細胞標本を用いて行うことができる。さらに、該判別結果を用いて、皮膚状態を鑑別を行い、カウンセリングや化粧品選択に有用な情報を提供できることも可能である。特に、該角層細胞染色用具を用いた染色方法では、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色できるという特徴を存するため、顧客と直接接する場所、例えば、デパートや店頭、さらに顧客の家でも実施できるという優位性が期待される。
【0016】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、これら実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0017】
以下に示す処方に従って、本発明の染色液を作成した。即ち、室温にて、染料はエタノール中に添加し、クエン酸は水に添加し、それぞれ撹拌溶解後、エタノール溶液と水溶液を混合し、本発明の染色液を得た。
【0018】
(染色液の処方1)
青色1号 1.0質量%
エタノール 85.0質量%
クエン酸 0.5質量%
水 13.5質量%
【実施例2】
【0019】
実施例1と同様に、以下に示す処方に従って、本発明の染色液を作成した。即ち、室温にて、染料はエタノール中に添加し、コハク酸は水に添加し、それぞれ撹拌溶解後、エタノール溶液、水溶液及びイソプロパノールとを混合し、本発明の染色液を得た。
【0020】
(染色液の処方2)
青色1号 1.0質量%
エタノール 70.0質量%
イソプロパノール 20.0質量%
コハク酸 0.3質量%
水 8.7質量%
【実施例3】
【0021】
実施例1と同様に、以下に示す処方に従って、本発明の染色液を作成した。即ち、室温にて、染料はメタノールとエタノールの混合溶液中に添加し、リンゴ酸とクエン酸は水に添加し、それぞれ撹拌溶解後、エタノール溶液、水溶液及びメタノールとを混合し、本発明の染色液を得た。
【0022】
(染色液の処方3)
青色1号 0.5質量%
緑201号 1.0質量%
エタノール 60.0質量%
メタノール 20.0質量%
クエン酸 0.3質量%
リンゴ酸 0.3質量%
水 17.9質量%
【実施例4】
【0023】
本発明の角層細胞染色用具の構成図を図1に示す。図1には、染色液を入れるリザーバー(符号1)、リザーバーに貯留した染色液を浸出させる芯部(符号2)、及び芯部より揮発成分が揮散するのを防ぐ蓋部(符号3)が記載してある。本発明の角層細胞染色用具
の芯部を角層細胞の付着した粘着テープに、数秒程度押し当てることで、角層細胞を染色することができる。即ち、場所を取らず、容易に且つ瞬時に、染色できる構造であることが分かる。
【実施例5】
【0024】
粘着テープを使用してテープストリップにより、洗顔後の女性被験者の頬部から角層細胞を採取した。角層細胞の付着した粘着テープに、本発明の染色処方1の角層細胞染色用具の芯部を直接1秒間程度押し当て、30秒程度放置してから、水の入った紙コップの中で2〜3秒動かすことで水洗し、風乾後バルサムに封入することで角層細胞標本を作成した。
【0025】
上記方法で得られた角層細胞標本の顕微鏡観察画像を図2に示す。図2より、一般的に行われているゲンチアナバイオレット染色による角層細胞標本と同じように、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況、角層細胞面積、角層細胞の配列の規則性等の測定又は判別が可能であることが分かる。
【実施例6】
【0026】
実施例5において、染色処方2に変え、別の女性を対象に同様の検討を行った。その結果を図3に示すが、実施例5と同様に角層細胞評価が可能であることが分かる。
【実施例7】
【0027】
実施例1と同様に、以下に示す処方に従って、本発明の染色液を作成した。即ち、室温にて、染料はエタノール中に添加し、クエン酸は水に添加し、それぞれ撹拌溶解後、エタノール溶液と水溶液を混合し、本発明の染色液を得た。
【0028】
(染色液の処方4)
ブリリアントグリーン 1.0質量%
エタノール 85.0質量%
クエン酸 0.5質量%
水 13.5質量%
【実施例8】
【0029】
実施例1と同様に、以下に示す処方に従って、本発明の染色液を作成した。即ち、室温にて、染料はエタノール中に添加し、コハク酸は水に添加し、それぞれ撹拌溶解後、エタノール溶液、水溶液及びイソプロパノールとを混合し、本発明の染色液を得た。
【0030】
(染色液の処方2)
ブリリアントグリーン 1.0質量%
エタノール 70.0質量%
イソプロパノール 20.0質量%
コハク酸 0.3質量%
水 8.7質量%
【実施例9】
【0031】
実施例1と同様に、以下に示す処方に従って、本発明の染色液を作成した。即ち、室温にて、染料はメタノールとエタノールの混合溶液中に添加し、リンゴ酸とクエン酸は水に添加し、それぞれ撹拌溶解後、エタノール溶液、水溶液及びメタノールとを混合し、本発明の染色液を得た。
【0032】
(染色液の処方3)
ブリリアントグリーン 1.5質量%
エタノール 60.0質量%
メタノール 20.0質量%
クエン酸 0.3質量%
リンゴ酸 0.3質量%
水 17.9質量%
【実施例10】
【0033】
本発明と既存の方法であるゲンチアナバイオレット染色法との特徴をまとめ、表1に示す。表1より、本発明は、非常に狭い場所で、簡単な染色と洗浄によって周辺への汚染の心配もなく、角層細胞標本の観察までの所要時間である染色及び洗浄時間が少なく、本発明の特徴である、どこでも、容易に、且つ瞬時にという大きな利点を有していることが分かる。
【0034】
【表1】

【比較例】
【0035】
<比較例1>
実施例11において、角層細胞の付着した粘着テープを既存の方法であるゲンチアナバイオレット染色液が入った1リットルの容器中に30分間浸漬後、余分の染色液を流水で除き、十分に乾燥させた後に、バルサムに封入し角層細胞標本を作成した。得られた角層細胞標本の顕微鏡観察画像を図4に示す。図4より、皮膚角層細胞評価ができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によって、どこでも、容易に、且つ瞬時に角層細胞を明瞭に染色し、皮膚角層細胞の評価が可能となる。その結果、顧客と直接接する場所、例えば、デパートや店頭、更には顧客の家においても、肌状態のカウンセリングや化粧品選択に有用な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例4の本発明の角層細胞染色用具の構成を示す図である。
【図2】実施例5の本発明による角層細胞標本の顕微鏡観察画像を示す図である(図面代用写真)。
【図3】実施例6の本発明による角層細胞標本の顕微鏡観察画像を示す図である(図面代用写真)。
【図4】比較例1の既存の方法による角層細胞標本の顕微鏡観察画像を示す図である(図面代用写真)。
【符号の説明】
【0038】
1 リザーバー
2 芯部
3 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)染料、2)炭素数1〜4のアルコール及び3)有機酸を含有することを特徴とする、角層細胞用の染色液。
【請求項2】
前記染料として、青色1号、紫色401号、緑色201号、黄色4号、黄色5号、黄色407号、赤色102号、橙色205号、ブリリアントグリーン、ヘマトキシリンの群から選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、請求項1に記載の角層細胞の染色液。
【請求項3】
前記炭素数1〜4のアルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール及びブタノールの群から選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の角層細胞の染色液。
【請求項4】
前記有機酸として、クエン酸、無水クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、グリコール酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、タンニン酸の群より選ばれる1種又は2種以上を使用することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の角層細胞の染色液。
【請求項5】
前記アルコールを70〜95質量%含有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の角層細胞の染色液。
【請求項6】
前記有機酸を0.01〜1質量%含有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の皮膚角層細胞の染色液。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の染色液を、1)リザーバーと2)リザーバーに貯留された液性成分を浸出させるべき芯部と3)芯部より揮発成分が揮散するのを防ぐべき蓋部とを備えた容器のリザーバーに充填してなる、角層細胞染色用具。
【請求項8】
角層細胞又は角層細胞の標本に、請求項1〜6何れか1項に記載の染色液と10秒以下接触させることを特徴とする、角層細胞の染色方法。
【請求項9】
前記染色液との接触が、請求項7に記載の角層細胞染色用具によって為されることを特徴とする、請求項8に記載の角層細胞の染色方法。
【請求項10】
皮膚角層細胞面積、有核細胞の存在の有無、トラベキュラーの有無、有核細胞の出現頻度、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況から選択される1種乃至は2種以上の測定又は判別の為であることを特徴とする、請求項8又は9の何れかに記載の角層細胞の染色方法。
【請求項11】
請求項1〜6何れか1項の記載の染色液を用いて角層細胞を染色し、皮膚角層細胞面積、有核細胞の存在の有無、有核細胞の出現頻度、角層細胞の配列の規則性、角層細胞の形、角層細胞の剥離状況から選択される1種乃至は2種以上の測定又は判別し、該判別結果を用いて、皮膚状態を鑑別することを特徴とする、皮膚状態の鑑別方法。
【請求項12】
化粧料の選択のためのものであることを特徴とする、請求項11に記載の皮膚状態の鑑別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−53117(P2006−53117A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266335(P2004−266335)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】