説明

角形状缶

【課題】 製造手法等を考慮して先端部がより好ましい位置となるように縦方向の補強ビードが形成された角形状缶を提供することである。
【解決手段】 複数の側壁面のそれぞれに縦方向に伸びる補強ビード12が形成された角形状筒体10と、角形状筒体10の両端縁部のそれぞれに縁部が巻締め固定された端板20a(20b)とを有し、補強ビード12の両先端部のそれぞれは、角形状筒体10の端縁部と前記端板の縁部とが巻締められて形成された巻締め部30の縁の近傍と角形状筒体10の端縁との間に位置する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18リットル缶等の角形状缶の構造に係り、詳しくは、角形状缶の各側壁面に縦方向に延びる補強ビードの形成された角形状缶の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
18リットル缶等の角形状缶において、縦方向荷重の耐久性を向上させるために、筒状の胴部に縦方向補強ビード(縦方向うね延長部)を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造の角形状缶では、その縦方向補強ビードは、構造的強度の観点から実質的に筒状胴部の高さ全体を占めるように寸法決めされることが好ましいものとされている。
【特許文献1】特表2003−535699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかながら、前述した従来の角形状缶では、その縦方向補強ビードが実質的に筒状胴部の高さ全体を占めるように寸法決めされるものであっても、縦方向補強ビードの先端部の位置を具体的にどこにするかは明確なものでない。
【0004】
本発明は、従来の角形状缶における前述したような事情に鑑みてなされたもので、製造手法等を考慮して先端部がより好ましい位置となるように縦方向の補強ビードが形成された角形状缶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る角形状缶は、複数の側壁面のそれぞれに縦方向に伸びる補強ビードが形成された角形状筒体と、前記角形状筒体の両端縁部のそれぞれに縁部が巻締め固定された端板とを有し、前記補強ビードの両先端部のそれぞれは、前記角形状筒体の端縁部と前記端板の縁部とが巻締められて形成された巻締め部の縁の近傍と前記角形状筒体の端縁との間に位置する構成となる。
【0006】
このような構成により、角形状筒体の端縁部と端板の縁部との巻締め難さに影響を与える角形状筒体の板厚に応じて、補強ビードの先端部の位置を巻締め部の縁の近傍と前記角形状筒体の端縁との間で適宜決め得る。このため、角形状筒体の端縁部と端板の縁部との巻締め加工を考慮しつつ、角形状筒体の上端と下端との間でより長い範囲にわたって縦方向に補強ビードを形成することができるようになる。
【0007】
また、本発明に係る角形状缶は、前記補強ビードの両先端部のそれぞれは、前記巻締め部内に位置する構成とすることができる。
【0008】
このような構成により、角形状筒体の上端部における端板(天板)との接合部位に形成された巻締め部と角形状筒体の下端部における端板(底板)との接合部位に形成された巻締め部との間の全体にわたって縦方向に補強ビードが形成されることとなる。
【0009】
更に、本発明に係る角形状缶は、前記補強ビードの両先端部のそれぞれは、前記角形状筒体の端縁と一致する構成とすることができる。
【0010】
このような構成により、補強ビードをプレス加工するための金型における当該補強ビードに対応した部位の端部の精度をラフに設定することができ、その製造が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る角形状缶によれば、角形状筒体の端縁部と端板の縁部との巻締め加工を考慮しつつ、角形状筒体の上端と下端との間でより長い範囲にわたって縦方向に補強ビードを形成することができるようになるので、製造手法等を考慮して先端部がより好ましい位置となるように縦方向の補強ビードが形成された角形状缶を実現することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
本発明の第一の実施の形態に係る角形状缶は、図1に示す手順に従って製造される。
【0014】
所定の寸法に裁断された金属薄板の縁部を溶接等により接合して円筒体が形成され、その円筒体に対して角出し成型を施すことによってコーナー部が湾曲した四角筒体が形成される。そして、図1(a)に示すように、四角筒体10の各側壁面に、縦補強ビード12、横補強ビード14、矩形補強部16(通称、額縁)がプレス加工により形成される。矩形補強部16は四角筒体10の各側壁面の略中央部に位置し、横補強ビード14は矩形補強部16の上側及び下側のそれぞれに位置する。縦補強ビード14は、横補強ビード12及び矩形補強部16を挟むように四角筒体10の各コーナー部近傍に形成される。
【0015】
縦補強ビード12は四角筒体10の各側壁面の外面から内面に凹む溝形状、横補強ビード14は内面から外面に凸になる形状となり、矩形補強部16は縁部の内側が一様に凹んだ形状となっている。更に、縦補強ビード12は、四角筒体10の上下端縁のそれぞれを突き通すように形成される。即ち、縦補強ビード12の両先端部のそれぞれは、四角筒体10の端縁に一致している。なお、縦補強ビード12の深さは、例えば、0.5〜2.5ミリメートルの範囲内で適宜設定することができる。
【0016】
前述したように縦補強ビード12、横補強ビード14及び矩形補強部16が各側壁面に形成された四角筒体10に対して、図1(b)に示すように、その上端に天板20a(上側の端板)が接合され、その下端に底板20b(下側の端板)が接合される。四角筒体10と各端板(天板20a、底板20b)との接合は、巻締め機により例えば、図2に示すようになされる。なお、図2は、縦補強ビード12に沿った断面を示している。また、図2は、四角筒体10の上端と天板20aとの接合について示しているが、四角筒体10の下端と底板20bとの接合についても同様である。
【0017】
図2(a)に示すように、四角筒体10の上端縁部にフランジ11が形成され、また、天板20aの縁部にカール部21が形成される。なお、フランジ11が形成される際に、先端部が四角筒体10の端縁に達する縦補強ビード12は、フランジ11の先端部分において凹形状が平坦面へと戻されるような加工を受ける。そして、四角筒体10のフランジ11に天板20aのカール部21が被せられた状態で四角筒体10の上端に天板20aがセットされる。この状態で、図2(b)に示すように、天板20aのカール部21と四角筒体10のフランジ11とが一体的に巻締められ、四角筒体10と天板20aとの接合部分に巻締め部30が形成される。縦補強ビード12の巻締め部30内に位置する部分は前記巻締めによって押しつぶされた状態となり、巻締め部30の外側において縦補強ビード12の形状が本来の状態となる。
【0018】
なお、巻締め部30にはシーリングコンパウンドが充填され、缶の気密性が確保される。
【0019】
このようにして製造された角形状缶(例えば、18リットル缶)は、図3に示すように、各側壁面に2本の縦補強ビード12、2本の横補強ビード14及び矩形補強部16が形成された四角筒体10と、四角筒体10の上端縁部に縁部が巻締め固定された天板20aと、四角筒体10の下端縁部に縁部が巻締め固定された底板20bとを備えた構造となる。そして、縦補強ビード12は、図4(図3のA−A断面)に示すように、四角筒体10の各コーナー部18を挟むように形成され、また、図5に示すように、四角筒体10の上端縁から延びる縦補強ビード12が、四角筒体10と天板20aとの接合部位に形成された巻締め部30の下縁から現れるようになる。また、縦補強ビード12の他端側でも同様に、四角筒体10と底板20bとの接合部位に形成された巻締め部30の上縁から補強ビード12が現れるようになる。
【0020】
前述したような構造の角形状缶(18リットル缶)では、縦補強ビード12が四角筒体10の各側壁面の上下端縁のそれぞれを突き通すように形成される(前記上下端縁のそれぞれに一致する)ので、ビード形成のためのプレス加工に用いられる金型における縦補強ビード12に対応した部位の両端部の精度はラフであってもよく、その製造が容易となる。また、縦補強ビード12が四角筒体10と天板20aとの接合部位(巻締め部30)から四角筒体10と底板20bとの接合部位(巻締め部30)にわたって形成されるので、縦方向荷重に対する耐性もより改善されたものとなる。
【0021】
具体的には、前述した構造であって、
板厚:0.27(ミリメートル)
縦補強ビードの深さ:1.5(ミリメートル)
縦×横×高さ=234.43×234.43×350(ミリメートル)
の18リットル缶で、実用的な縦方向荷重に対する耐性を得ることができた。
【0022】
なお、縦補強ビード12の先端部は、四角筒体10の端縁に達することなく巻締め部30内に位置するように形成されるものであってもよい。この場合、前述した例と同様に、縦補強ビード12が四角筒体10と天板20aとの接合部位(巻締め部30)から四角筒体10と底板20bとの接合部位(巻締め部30)にわたって形成されることとなるので、前述した例と同等の縦方向荷重に対する耐性を得ることができる。
【0023】
前述した構造の角形状缶では、四角筒体10と天板20a及び底板20bとの接合を行なう際に四角筒体10の両端縁部のそれぞれと天板20aまたは底版20bの縁部とを巻締めている(図2参照)。このため、四角筒体10の板厚が大きくなるほど、縦補強ビード12にて補強された四角筒体10の両端縁部と天板20a、底板20bの端縁部との巻締め加工がし難くなる。そこで、本発明の第二の実施の形態に係る角形状缶は、このような製造上の点を考慮した構造となっている。
【0024】
本発明の第二の実施の形態に係る角形状缶は、図1に示す手順と同様に、各側壁面に縦補強ビード12、横補強ビード14及び矩形補強部16が形成された四角筒体10を形成し、四角筒体10の上下端部に天板20a及び底板20bを接合することによって製造される。縦補強ビード12は、その先端部が、図6(a)に示すように、四角筒体10の端縁から内側に入った巻締めにかからない位置となるように形成される。そして、四角筒体10の上端縁部に形成されたフランジ11に天板20aの縁部に形成されたカール部21が被せられた状態で四角筒体10の上端に天板20aがセットされ、その状態で、図6(b)に示すように、天板20aのカール部21と四角筒体10のフランジ11とが一体的に巻締められる。その結果、四角筒体10と天板20aとの接合部位に巻締め部30が形成される。なお、四角筒体10と底板20bとの接合も同様になされる。
【0025】
この場合、縦補強ビード12の先端部の位置は、図6(b)に示すように、巻締め部30の縁の近傍にあり、本実施形態においては、巻締め部30の縁から四角筒体10の中央部に向かって距離Δ(例えば、1ミリメートル)だけ離れた位置に設定される。縦補強ビード12の先端部の位置がこのように設定されることにより、縦補強ビード12により補強された部分が巻締められることがなく、かつ、縦補強ビード12の先端部を四角筒体10の端縁部により近づけることができる。従って、四角筒体10の板厚が比較的大きくなっても、縦補強ビード12によってその端縁部での巻締め加工がし難くなることはない。また、図7に示すように、四角筒体10の上端に形成された巻締め部30の下縁から僅かな距離Δだけ下がった位置と、四角筒体10の下端に形成された巻締め部30の上縁から僅かな距離Δだけ上がった位置との間にわたって縦補強ビード12が形成されることとなるので、縦方向荷重に対する耐性も改善されたものとなる。
【0026】
具体的には、前述した構造であって、
板厚:0.3(ミリメートル)
縦補強ビードの深さ:1.0(ミリメートル)
縦補強ビードの先端部位置Δ:1(ミリメートル)
縦×横×高さ=234.43×234.43×350(ミリメートル)
の18リットル缶において、板厚0.32ミリメートルで縦補強ビード12の無い18リットル缶より良好となる縦方向荷重の耐性特性が得られた。なお、上記具体例において、縦補強ビード12の先端部位置Δを2ミリメートルに設定した場合には、良好な縦方向荷重の耐性特性は得られなかった。
【0027】
なお、前述したように四角筒体10の各側壁面の略中央部に設けられる矩形補強部16は、図8及び図9に示すような形状にすることもできる。即ち、矩形補強部16´は、凸状ビード16´aによって囲まれた矩形形状となっている。従って、図8のA−A断面を示す図9を参照するに、各側壁面の断面形状は、縦補強ビード12の凹みから立ち上がって一旦平坦部分を経て凸状ビード16´aに至り、その凸状ビード16´aが立ち下がって再び平坦部分となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上、説明したように、本発明に係る角形状缶は、製造手法等を考慮して先端部がより好ましい位置となるように縦方向の補強ビードが形成されることとなり、角形状缶の各側壁に縦方向に延びる補強ビードが形成された角形状缶として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る角形状缶の製造工程を部分的に示す図である。
【図2】四角筒体と天板との接合手順を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係る角形状缶の上面及び側面を示す図である。
【図4】図3におけるA−A断面を示す断面図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態に係る角形状缶の上端部分の構造を示す図である。
【図6】本発明の第二の実施の形態に係る角形状缶における四角筒体と天板との接合手順を示す図である。
【図7】本発明の第二の実施の形態に係る角形状缶の上端部分の構造を示す図である。
【図8】他の形状となる矩形補強部の形成された角形状缶の上面及び側面を示す図である。
【図9】図8におけるA−A断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 四角筒体
11 フランジ
12 縦補強ビード
14 横補強ビード
16、16´ 矩形補強部
16´a 凸状ビード
18 コーナー部
20a 天板(上側の端板)
20b 底板(下側の端板)
21 カール部
30 巻締め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の側壁面のそれぞれに縦方向に伸びる補強ビードが形成された角形状筒体と、
前記角形状筒体の両端縁部のそれぞれに縁部が巻締め固定された端板とを有し、
前記補強ビードの両先端部のそれぞれは、前記角形状筒体の端縁部と前記端板の縁部とが巻締められて形成された巻締め部の縁の近傍と前記角形状筒体の端縁との間に位置することを特徴とする角形状缶。
【請求項2】
前記補強ビードの両先端部のそれぞれは、前記巻締め部内に位置することを特徴とする請求項1記載の角形状缶。
【請求項3】
前記補強ビードの両先端部のそれぞれは、前記角形状筒体の端縁と一致することを特徴とする請求項2記載の角形状缶。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−26638(P2006−26638A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204210(P2004−204210)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(390031369)本州製罐株式会社 (5)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】