角速度センサ
【課題】漏れ振動を抑制することができる角速度センサを提供する。
【解決手段】変位部B1、B2は、第1の方向に振動することができるように支持され、振動質量体1、2と、検出質量体3、4とを有し、平面視において第1の方向に沿った対称軸AXを有する。検出質量体3、4は、第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動することができるように振動質量体1、2に支持されている。振動質量体1、2および検出質量体3、4は、第1の領域R1と、第2の領域R2a、R2bとを有する。第1の領域R1は、平面視において対称軸AXに貫かれている。第2の領域R2a、R2bは、平面視において第1の領域R1によって第2の方向に互いに分離されている。第2の領域R2a、R2bは、第1の領域R1の平均密度に比して小さい平均密度を有する。
【解決手段】変位部B1、B2は、第1の方向に振動することができるように支持され、振動質量体1、2と、検出質量体3、4とを有し、平面視において第1の方向に沿った対称軸AXを有する。検出質量体3、4は、第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動することができるように振動質量体1、2に支持されている。振動質量体1、2および検出質量体3、4は、第1の領域R1と、第2の領域R2a、R2bとを有する。第1の領域R1は、平面視において対称軸AXに貫かれている。第2の領域R2a、R2bは、平面視において第1の領域R1によって第2の方向に互いに分離されている。第2の領域R2a、R2bは、第1の領域R1の平均密度に比して小さい平均密度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
角速度を検出する方法のひとつとして、振動する物体に加わるコリオリ力を検出する方法がある。この検出原理による角速度センサとしては、たとえば、主な構成部分としてフレームと、振動質量体と、質量体(以下、検出質量体と称する)とを有する角速度センサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1においては、振動質量体は4つのウェブを介してフレームに一定の方向(第1の方向:素子が形成された面内の一方向)で変位可能に結合されている。検出質量体は、振動質量体に不動に結合されたブロックに可撓ビームを介して結合されており、これによりブロックに対して第2の方向(素子が形成された面内において、第1の方向に直交する方向)に変位可能に配置されている。そして、検出質量体の変位により生じる櫛歯電極間の静電容量の変化を測定することにより、作用するコリオリ力の検出が行われる。
【0004】
また、特許文献1には、1つのフレーム内に、上記の振動質量体と検出質量体とが2個配置された構成も開示されている。これら2個の振動質量体に互いに逆相の振動が与えられ、双方の測定信号の差形成が行なわれることにより、外乱がフィルタリング除去される。
【0005】
振動質量体を振動駆動させる方式としては、たとえば電磁駆動方式(たとえば、特許文献2参照)や静電駆動方式(たとえば、特許文献3参照)がある。電磁駆動方式は、磁界の下での電流に作用するローレンツ力を振動の駆動力に用いる方式である。静電駆動方式は、電極間に電圧が印加された場合に電極間に作用する静電力を振動の駆動力に用いる方式である。その具体的な機構としては、たとえば2個の櫛歯電極を有し電極同士が噛み合うように対向して配置された櫛歯型静電駆動機構などがある。2個の櫛歯電極の間に電圧が印加され、それにより電極間に作用する静電力が駆動力として用いられる。
【0006】
近年、これら角速度センサの小型化のために、その製造に半導体プロセス技術が用いられてきている(たとえば、特許文献3参照)。精度のよい角速度センサを製造するためには、角速度センサの各構成部分が精度よく加工される必要がある。しかしながら、半導体プロセス技術による加工、すなわち写真製版技術やエッチング技術などを用いた加工は、一般的には寸法精度として±10%程度の製造ばらつきを有する。この製造ばらつきにより、たとえば振動質量体が設計通りに加工されないと、設計上想定されていた振動質量体の質量分布にアンバランスが生じ、設計上の駆動振動方向と実際のそれとが一致しなくなる。すなわち、駆動振動軸からずれた振動成分である漏れ振動が生じてしまう。
【0007】
また、振動質量体とこれに連結される検出振動体とが同時に第1の方向に駆動される構成が用いられる場合、検出振動体の質量分布のアンバランスによっても、設計上の駆動振動方向と実際のそれとが一致しなくなる。すなわち、駆動振動軸からずれた振動成分である漏れ振動が生じてしまう。
【0008】
上記の漏れ振動は、角速度センサの誤差の原因となる。検出されるべきコリオリ力の方向と同一方向の成分を有する漏れ振動が特に問題である。たとえば、角速度がゼロの時、すなわちコリオリ力が存在しない時は、理想的には検出質量体は単純に第1の方向に振動するべきものである。しかし、漏れ振動がある場合、その影響によりコリオリ力が存在しなくても検出質量体が第2の方向に沿って変位することになる。この変位は角速度センサの検出誤差の原因となる。よって角速度センサの精度を向上させるためには、この漏れ振動を抑制することが必要である。
【0009】
この抑制手段として、特許文献3には、(1)固定電極と可動電極とが追加された構成、(2)吸振ビームと吸振マスとからなる吸振器が追加された構成、(3)空気抵抗により漏れ振動を抑制するための複数枚の羽根が追加された構成、(4)気体の粘性抵抗により漏れ振動を抑制するための制振子が追加された構成が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、半導体プロセスにおける加工ばらつきが生じても、デバイス特性、特に、リング型振動子の固有振動数への影響を軽減することが、後加工により可能であることが提示されている。
【0011】
また、非特許文献1には、櫛歯電極の隣り合う櫛歯の間に電圧を印加することで生じる静電力により漏れ振動を抑制することが提案されている。
【特許文献1】特開平8−220125号公報(第4頁、図2、図3)
【特許文献2】特開平11−264730号公報(第7頁、図5)
【特許文献3】特開平11−132770号公報
【特許文献4】特開2004−279384号公報
【非特許文献1】W. A. Clark et al., "Surface Micromachined Z-Axis Vibratory Rate Gyroscope", Sensor and Actuator Workshop, 1996, pp.283−287
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記の特許文献3に記載の漏れ振動抑制手段が用いられると、以下に示すように、構造が複雑になるという問題があった。
【0013】
まず、漏れ振動抑制のための固定電極と可動電極とが追加される場合、漏れ振動が抑制されるように電位が制御される電極が角速度センサに付加される。このため角速度センサの構造が複雑になる。また、吸振ビームや吸振マスが設けられる構成、複数枚の羽根が設けられる構成、および気体の粘性抵抗を利用する制振子が設けられる構成のいずれの場合も、複雑な構造物が必要となるので、角速度センサの構造が複雑となる。
【0014】
さらに、上記の特許文献3に記載の漏れ振動抑制手段は、角速度センサの厚み方向の漏れ振動を抑制する手段であって、面内方向の漏れ振動を直接抑制することはできないという問題があった。
【0015】
また、上記の特許文献4に記載の方法では、固有振動数のずれを小さくすることはできても、漏れ振動を抑制することはできないという問題があった。
【0016】
また、上述した非特許文献1記載の漏れ振動抑制手段は、隣り合う櫛歯電極の櫛歯を電気的に独立して制御できるように形成する必要がある。このため、角速度センサの構造が複雑となるという問題があった。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、構造が簡易で、かつ製造ばらつきに起因して生じる漏れ振動を抑制することができる角速度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の角速度センサは、基板と、少なくとも1つの変位部と、駆動部とを有する。少なくとも1つの変位部は、第1の方向に沿って基板に対して振動することができるように基板に支持され、平面視において第1の方向に沿った対称軸を有する。駆動部は、少なくとも1つの変位部の各々を第1の方向に沿って駆動するためのものである。少なくとも1つの変位部の各々は、振動質量体と、検出質量体とを有する。振動質量体は、駆動部によって駆動される。検出質量体は、第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動することができるように振動質量体に支持されている。振動質量体および検出質量体の少なくともいずれかは、第1の領域と、一対の第2の領域とを有する。第1の領域は、平面視において対称軸に貫かれている。一対の第2の領域は、平面視において第1の領域によって第2の方向に互いに分離されている。一対の第2の領域の各々は、第1の領域の平均密度に比して小さい平均密度を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の角速度センサによれば、第1の領域に比して第2の方向に広い範囲に分布するために形状ばらつきが生じやすい一対の第2の領域が、第1の領域の平均密度に比して小さい平均密度を有する。すなわち形状ばらつきが生じ易い領域の密度が、形状ばらつきが生じ難い領域の密度よりも小さくされている。これにより、製造ばらつきに起因して角速度センサの質量分布が対称軸に対して対称な分布からずれる程度を小さくすることができる。よって変位部が駆動部によって対称軸に沿って駆動される際に、この質量分布のずれに起因して生じる変位部の回転を抑制することができる。これにより、変位部の回転により誘起される漏れ振動が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
はじめに本実施の形態の角速度センサの構成について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態における角速度センサの構成を概略的に示す平面図である。なお図1において、図を見易くするために、一部の領域にハッチングが付されている。
【0022】
図2は、本発明の一実施の形態における角速度センサの概略的な平面レイアウトを示す図である。なお図2は図1で示される領域を示している。また図2においては、概略的な構成を見易くするために、図1に示された部材の一部が図示されていない。また図を見易くするためにハッチングが付されている。
【0023】
図3〜図9のそれぞれは、図1の線III−III〜線IX−IXに沿う概略的な断面図である。
【0024】
図1〜図9を参照して、本実施の形態の角速度センサは、第1の変位部B1と、第2の変位部B2と、支持ばね5と、連結ばね6と、検出ばね7と、検出固定電極9と、駆動配線10(駆動部)と、駆動モニタ配線11と、シリコン基板12(基板)と、埋込質量体13a、13bと、ガラス基板14と、絶縁膜15と、駆動配線電極パッド17と、駆動モニタ配線パッド18と、検出可動電極パッド19と、検出固定電極取出パッド20と、検出固定電極パッド21と、貫通孔22と、熱酸化膜24とを有する。
【0025】
シリコン基板12は、熱酸化膜24を介して、ガラス基板14に支持されている。ガラス基板14は、第1および第2の変位部B1およびB2、支持ばね5、連結ばね6、および検出ばね7がガラス基板14の上方の中空に保持されるようにするために、溝部23を有している。熱酸化膜24の厚さは、たとえば200〜300nmである。溝部23の深さは、たとえば10〜40μmである。
【0026】
第1の変位部B1と、第2の変位部B2との各々は、支持ばね5を介してシリコン基板12に支持されている。支持ばね5は第1の方向に沿って伸縮することができるばねである。この構成により、第1の変位部B1と、第2の変位部B2との各々は、第1の方向に沿ってシリコン基板12に対して振動することができる。
【0027】
また第1の変位部B1と、第2の変位部B2との各々は、平面視において第1の方向に沿った対称軸AXを有する。この対称軸AXを、駆動振動軸AXと称する。また第1の変位部B1と、第2の変位部B2とは、平面視において、点Oに関して点対象な形状を有している。
【0028】
第1の変位部B1は、振動質量体1と、検出質量体3とを有する。また第2の変位部B2は、振動質量体2と、検出質量体4とを有する。振動質量体1および2は、連結ばね6によって互いに連結されている。連結ばね6は第1の方向に沿って伸縮することができるばねである。この構成により、振動質量体1および2は、第1の方向に沿って相対的に振動することができる。
【0029】
駆動配線10は、振動質量体1および2の各々の上に設けられ、第1の方向に直交する第2の方向に沿って延びている。また駆動配線電極パッド17に電流が入力されることにより、振動質量体1上の駆動配線10と、振動質量体2上の駆動配線10との各々には、逆向きの電流が流れるように駆動配線10が配線されている。またたとえば永久磁石を用いることで、第1および第2の方向の各々に垂直な方向に磁場が印加されている。この構成により、駆動配線電極パッド17に電流を入力することで、振動質量体1および2の各々が、互いに逆向きで、かつ第1の方向に沿ったローレンツ力により駆動される。よって振動質量体1を含む第1の変位部B1と、振動質量体2を含む第2の変位部B2とを、第1の方向に沿った音叉振動が生じるように駆動することができる。
【0030】
検出質量体3および4のそれぞれは、検出ばね7を介して、振動質量体1および2に支持されている。検出ばね7は第2の方向に沿って伸縮することができるばねである。この構成により、検出質量体3および4のそれぞれは、第2の方向に沿って、振動質量体1および2に対して振動することができる。
【0031】
振動質量体1、2、および検出質量体3、4の各々は、第1の領域R1(図中の破線部R1に含まれる領域)と、一対の第2の領域R2a、R2b(図中の破線部R2a、R2bに含まれる一対の領域)とを有する。第1の領域R1は、平面視において駆動振動軸AXに貫かれている。一対の第2の領域R2a、R2bは、平面視において第1の領域R1によって第2の方向に互いに分離されている。
【0032】
振動質量体1および2の各々は、第1の領域R1において、母材部と、埋込質量体13bとを有する。母材部は、シリコン基板12と一体となっており、シリコン(母材)からなる。埋込質量体13bは、母材部に埋め込まれている。埋込質量体13bは、たとえばタングステンのようにシリコンの密度よりも大きな密度を有する材質からなる。この構成により、振動質量体1および2の各々は、第1の領域R1において、シリコンの密度に比して大きい平均密度を有する。
【0033】
好ましくは平面視において母材部は埋込質量体13bの周囲を完全に取り囲んでいる。
検出質量体3および4の各々は、第1の領域R1において、母材部と、埋込質量体13aとを有する。母材部は、シリコン基板12と一体となっており、シリコン(母材)からなる。埋込質量体13aは母材部に埋め込まれている。埋込質量体13aの材質は、たとえばタングステンのようにシリコンの密度よりも大きな密度を有する材質からなる。この構成により、検出質量体3および4の各々は、第1の領域R1において、シリコンの密度に比して大きい平均密度を有する。
【0034】
好ましくは平面視において母材部は埋込質量体13aの周囲を完全に取り囲んでいる。
振動質量体1および2の各々は、一対の第2の領域R2a、R2bの各々において、母材部と、貫通孔22とを有する。母材部は、シリコン基板12と一体となっており、シリコン(母材)からなる。貫通孔22は、母材部に形成されており、気体で満たされているか、または真空とされている。この気体の密度または真空の密度は、シリコンの密度よりも小さい。よって振動質量体1および2の各々は、一対の第2の領域R2a、R2bにおいて、シリコンの密度に比して小さい平均密度を有する。
【0035】
なお本明細書における「平均密度」とは、貫通孔22が形成された領域を含む領域について、総質量が総体積によって除されることにより算出される値である。
【0036】
好ましくは平面視において複数の貫通孔22が第1の方向に沿って形成されている。このためには、第2の領域R2a、R2bに多数の貫通孔22が形成された構造(いわゆるハニカム構造)が用いられればよい。
【0037】
上記の埋込質量体13aによって、一対の第2の領域R2a、R2bの各々における検出質量体3の平均密度は、第1の領域R1における検出質量体3の平均密度に比して小さく、また一対の第2の領域R2a、R2bの各々における検出質量体4の平均密度は、第1の領域R1における検出質量体4の平均密度に比して小さくされている。
【0038】
また上記の埋込質量体13bによって、一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体1の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体1の平均密度に比して小さく、また一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体2の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体2の平均密度に比して小さくされている。
【0039】
また上記の貫通孔22によって、一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体1の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体1の平均密度に比して小さく、また一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体2の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体2の平均密度に比して小さくされている。
【0040】
検出質量体3および4のそれぞれは、検出可動電極8を有する。また検出固定電極9は、熱酸化膜24を介してガラス基板14に固定されている。また検出固定電極9は櫛歯を有する。よって、この櫛歯はガラス基板14に固定されている。この固定された櫛歯と、検出可動電極8とは、第2の方向に沿って対向している。この構成により、検出可動電極8と検出固定電極9との間の静電容量が測定されることで、第2の方向に沿った検出質量体3および4の振動を検出することができる。
【0041】
この静電容量の測定は、具体的には、検出可動電極パッド19と、検出固定電極パッド21との間の静電容量の測定により行なうことができる。この目的のために、検出可動電極パッド19は、シリコン基板12上に直接形成されることで、検出質量体3および4と電気的に接続されている。また検出固定電極パッド21は、絶縁膜15によりシリコン基板12から絶縁され、かつ、アルミニウムまたは金からなるワイヤボンディングにより検出固定電極取出パッド20と接続されている。検出固定電極取出パッド20は検出固定電極9の上に直接形成されている。よって検出固定電極パッド21は検出固定電極9と電気的に接続されている。この構成により、検出可動電極パッド19と検出固定電極パッド21との間の静電容量を測定することで、検出可動電極8と検出固定電極9との間の静電容量が測定される。
【0042】
検出可動電極8は、第1の領域R1に設けられた第1の櫛歯81と、一対の第2の領域R2aおよびR2bの各々に設けられた第2の櫛歯82とを有する。第2の櫛歯82の歯の長さは、第1の櫛歯81の歯の長さよりも大きい。
【0043】
なお、後述するダンピング効果が必要な場合は、検出可動電極8と検出固定電極9との間に気体が満たされている。
【0044】
駆動モニタ配線11は、振動質量体1および2の各々の上に設けられ、第2の方向に沿って延びている。駆動モニタ配線パッド18は駆動モニタ配線11の両端に設けられている。またたとえば永久磁石を用いることで、駆動モニタ配線11には第1および第2の方向の各々に垂直な方向に磁場が印加されている。この構成により、振動質量体1および2の各々が第1の方向に沿って振動すると、誘導起電力によって駆動モニタ配線パッド18に振動電圧が発生する。よってこの振動電圧をモニタすることで、振動質量体1および2の各々の振動をモニタすることができる。
【0045】
次に本実施の形態の角速度センサの使用方法について説明する。
図1を参照して、駆動配線電極パッド17を介して、駆動配線10に交流電流が印加される。すると、第1および第2の方向に直交する方向に磁界が印加されているため、駆動配線10には第1の方向のローレンツ力が作用する。ローレンツ力は、交流電流に応じて時間的に振動する。よって、駆動配線10が付された振動質量体1および2の各々には、第1の方向に振動する力が加わる。ここで、振動質量体1および2の各々は支持ばね5によって第1の方向に変位可能に懸架されているため、振動質量体1および2の各々は、第1の方向に振動的に変位する。この変位に応じて、振動質量体1および2の各々の上に設けられた駆動モニタ配線11には誘導起電力が生じる。
【0046】
この誘導起電力が駆動モニタ配線パッド18を介してモニタされることで、振動質量体1および2の各々の振動の振幅が検知される。この検知結果を参照して駆動配線10の電流値が調整されることにより、振動質量体1および2の各々を所望の振幅で振動させることができる。
【0047】
振動質量体1および2の各々に設けられた駆動配線10は、互いに逆向きの電流が流されるように配線されている。よって、振動質量体1および2の各々に作用するローレンツ力は、互いに方向が逆になる。この結果、振動質量体1および2の各々には、第1の方向に沿って逆向きの力が作用する。振動質量体1および2の各々は支持ばね5により第1の方向に沿って振動変位が可能なように支持されているため、振動質量体1および2の各々は第1の方向に沿って逆位相で振動する。
【0048】
さらに振動質量体1および2は連結ばね6により第1の方向に相対的に変位可能なように連結されているため、上記の振動が安定化される。また点Oに関する点対称性により、振動質量体1および2の各々の振動は、互いにほぼ同じ周波数で、かつ逆位相で安定化される。
【0049】
検出質量体3および4のそれぞれは、ガラス基板14からは独立していて、検出ばね7を介して振動質量体1および2により懸架されている。検出ばね7は第1の方向には高い剛性を有するため、振動質量体1および2の第1の方向の振動にともない、検出質量体3および4も第1の方向に振動する。
【0050】
第1および第2の方向の各々に直交する方向周りの角速度が角速度センサに加わると、第1の方向に振動する検出質量体3および4には、この角速度に応じて第2の方向のコリオリ力が加わる。検出ばね7は、第2の方向には全体として容易に弾性的に変形するため、検出質量体3、4は第2の方向のコリオリ力に応じて振動的に変位する。これにともない検出可動電極8も第2の方向に振動する。
【0051】
一方、検出固定電極9はガラス基板14に固定されている。よって検出可動電極8と検出固定電極9との間の静電容量が変動する。したがって、この静電容量を検出可動電極パッド19および検出固定電極パッド21の各々を介して測定することにより、検出質量体3および4の各々の振動的な変位を知ることができる。
【0052】
この変位は、上記の角速度に起因した第2の方向のコリオリ力に対応している。よって、この振動的な変位に基づいて、第1および第2の方向の各々に直交する方向周りの角速度を知ることができる。
【0053】
上述した角速度センサの説明は、理想的な状態についてのものである。実際の角速度センサにおいては、製造ばらつきの存在により、振動質量体1、2、および検出質量体3、4の駆動振動軸AXに関する線対称性を完全に確保することは困難である。この線対称性の不完全さは、角速度センサの精度に悪影響を及ぼす漏れ振動の発生原因のひとつとなる。
【0054】
以下、この線対称性の不完全さによる漏れ振動の発生について説明する。図31は、角速度センサの質量分布の質点系モデルを示す図である。
【0055】
主に図31を参照して、第1の変位部B1(図31の左側)は、振動質量体1および検出質量体3の質量分布に対応している。第2の変位部B2(図31の右側)は、振動質量体2および検出質量体4の質量分布に対応している。軸P1は、第1および第2の方向の各々に直交し、かつ変位部B1の重心を通る軸である。軸P2は、第1および第2の方向の各々に直交し、かつ変位部B2の重心を通る軸である。複数の質点M1の質量の合計は、第1の領域R1(図1)内の質量に対応する。また複数の質点M2の質量の合計は、一対の第2の領域R2aおよびR2b内の質量に対応する。
【0056】
距離L1は、本モデルにおける質点M1の駆動振動軸AXからの距離である。距離L1は、第1の領域R1における第1および第2の変位部B1、B2のそれぞれの軸P1およびP2周りの慣性モーメントが、モデルの対象となる角速度センサ(図1)と一致するように定められる。
【0057】
距離L2は、本モデルにおける質点M2の駆動振動軸AXからの距離である。距離L2は、一対の第2の領域R2a、R2bにおける第1および第2の変位部B1、B2のそれぞれの軸P1およびP2周りの慣性モーメントが、モデルの対象となる角速度センサ(図1)と一致するように定められる。
【0058】
角速度センサが設計通りに製造されれば、対応する質点系モデルは駆動振動軸AXに関して完全な線対称性を有する。この場合、駆動配線10により第1の変位部B1が加速度aで駆動されると、第1の変位部B1の駆動振動軸AXにより隔てられた一方側と他方側との各々に対して、互いに相殺されるような軸P1周りのトルクが作用する。この結果、第1の変位部B1の軸P1周りの回転は生じない。
【0059】
しかし実際の角速度センサは製造誤差を有する。よって実際の角速度センサに対応する質点系モデルは、駆動振動軸AXに関して完全な線対称性を有しない。このため、上述したトルクの相殺が不完全になるので、第1の変位部B1は、設計上意図された運動である第1の方向に沿った振動運動に加えて、軸P1周りの回転運動を行なう。このように意図されていない運動が発生する結果、角速度センサの漏れ振動が発生する。第2の変位部B2についても同様であり、製造誤差により軸P2周りの回転運動が生じる結果、角速度センサの漏れ振動が発生する。
【0060】
次に、本実施の形態の角速度センサによって上記の漏れ振動が低減される原理について、トルクの大きさの観点、および製造ばらつきの大きさの観点の2つの観点から説明する。
【0061】
第1に、トルクの大きさの観点から、漏れ振動が低減される原理について説明する。
第1の変位部B1について検討すると、複数の質点M1のいずれかの質量が製造誤差によりdMだけ変動した場合、トルクの相殺が不完全となり、加速度aのもとでは軸P1周りの回転に寄与する実効的なトルクT1=dM×L1×aが生じる。同様に、複数の質点M2のいずれかの質量が製造誤差によりdMだけ変動した場合、実効的なトルクT2=dM×L2×aが生じる。ここで距離L2>L1であるため、トルクT2>T1である。すなわち、第2の領域R2a、R2bにおける質量の変動dMの方が、第1の領域R1における質量の変動dMに比して、より大きなトルクを発生させてしまう。
【0062】
本実施の形態によれば、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度が、第1の領域R1における平均密度に比して小さくされている。このように平均密度が小さいので、第2の領域R2a、R2bにおける製造ばらつきにより形状が変動しても、質量の変動が抑制される。すなわち質量の変動にともない大きなトルクを発生させてしまう第2の領域R2a、R2bにおいて、質量の変動が抑制される。よってトルクの発生が抑制されるので、回転運動にともなう漏れ振動の発生を抑制することができる。
【0063】
第2に、製造ばらつきの大きさの観点から、漏れ振動が低減される原理について説明する。
【0064】
質点M1は、第1の領域R1を含む範囲A1内の質量を代表している。また質点M2は、第2の領域R2a、R2bを含む範囲A2の質量を代表している。一対の第2の領域R2aおよびR2bは互いに第1の領域R1により分離されているので、範囲A2は範囲A1よりも広い。一般に、より広い範囲に渡って製造ばらつきを抑制することは困難である。すなわち範囲A2における製造ばらつきは、範囲A1における製造ばらつきよりも大きくなる。
【0065】
言い換えると、第2の領域R2aとR2bとが離れていることから、第2の領域R2aとR2bとの間での製造ばらつきが大きい。このため、第2の領域R2aにおける質点M2と、第2の領域R2bにおける質点M2との間で、質量の差異が生じやすい。この結果、上述したトルクの相殺の不完全性が生じやすい。
【0066】
本実施の形態によれば、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度が、第1の領域R1における平均密度に比して小さくされている。このように特に製造ばらつきが生じやすい第2の領域R2a、R2bにおいて平均密度が小さくされているので、質量の変動が抑制される。よって質量の変動にともなうトルクの発生が抑制されるので、回転運動にともなう漏れ振動の発生を抑制することができる。
【0067】
以上、2つの観点から説明したように、本実施の形態によれば、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度が第1の領域R1における平均密度に比して小さくされているので、漏れ振動を抑制することができる。これにより角速度センサの精度を高めることができる。よって角速度センサの精度について所定の公差が定められている場合、製造工程の歩留まりを向上させることができる。
【0068】
また本実施の形態によれば、平均密度を調整するために設けられている貫通孔22は、振動質量体1、2を貫通して設けられている。これにより、振動質量体1、2の密度を厚さ方向全体に渡って調整することができる。
【0069】
なお貫通孔22の代わりに貫通していない孔が用いられる場合、この孔の形成によって振動質量体1、2の各々の厚み方向(第1および第2の方向に直交する方向)における重心位置が変動することで、漏れ振動が生じることがある。
【0070】
また本実施の形態によれば、平均密度を調整するために設けられている埋込質量体13a、13bは、振動質量体1、2を貫通して設けられている。これにより、振動質量体1、2の密度を厚さ方向全体に渡って調整することができる。
【0071】
なお埋込質量体13a、13bの代わりに貫通していない質量体が用いられる場合、この質量体によって振動質量体1、2の各々の厚み方向における重心位置が変動することで漏れ振動が生じることがある。
【0072】
また本実施の形態によれば、検出可動電極8は、第1の領域R1に設けられた第1の櫛歯81と、第2の領域R2a、R2bに設けられ、第1の櫛歯81の歯の長さよりも大きい歯の長さを有する第2の櫛歯82とを有する。すなわち、検出固定電極9の櫛歯(固定櫛歯)と対向する櫛歯の対向長さが第2の領域R2a、R2bにおいて長くされている。この構成により、検出質量体3、4のそれぞれが軸P1およびP2の周りを回転した際に、第2の領域R2a、R2bにおいて第2の櫛歯82と固定櫛歯との間の隙間に、大きなダンピング効果が生じる。これにより、検出質量体3、4の回転を抑制することで、角速度センサの漏れ振動を抑制することができる。
【0073】
また本実施の形態によれば、好ましくは、平面視において母材部は埋込質量体13aおよび13bの各々周囲を完全に取り囲んでいる。これにより、振動質量体1、2、および検出質量体3、4の端面において、埋込質量体13a、埋込質量体13bが露出しない。よって振動質量体1、2、および検出質量体3、4の端面において母材が分断されないので、熱膨張収縮による変形が駆動振動におよぼす悪影響を抑制することができる。
【0074】
なお仮に振動質量体1、2、および検出質量体3、4の端面において、埋込質量体13a、埋込質量体13bが露出する部分があるとする。すると、その部分において母材と異なる熱膨張係数を有する物質によって母材が分断されていることになる。この場合、温度変化に対する構造体の変形が、駆動振動に悪影響をおよぼし、漏れ振動を増大させる懸念がある。
【0075】
また本実施の形態によれば、好ましくは、平面視において第1の方向に沿って複数の貫通孔22が形成されている。これにより、第1の方向に沿って多数の貫通孔22を形成することができるので、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度をより小さくすることで、本発明の効果を高めることができる。
【0076】
なお第1の方向に沿って複数の貫通孔22が形成されていなくても、一の貫通孔22の第1の方向に沿った幅が十分に広くされれば、上記と同様に第2の領域R2a、R2bにおける平均密度を小さくすることはできる。しかしながら、この場合、振動質量体1、2の第2の方向に沿った剛性が低下するので、振動質量体1、2が外乱やコリオリ力によって第2の方向に容易に変形してしまう。この結果、漏れ振動を十分に抑制することができないことがある。
【0077】
次に、本実施の形態の角速度センサの製造方法について、図10〜図30を用いて説明する。
【0078】
図10は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第1工程を示す概略的な平面図である。図11は、図10のガラス基板のみが図示された概略的な平面図である。図12〜図15のそれぞれは、図10の線XII−XII〜線XV〜XVに沿う概略的な断面図である。
【0079】
主に図10〜図15を参照して、初期段階では、ガラス基板14とシリコン基板12とが別個に扱われる。
【0080】
ガラス基板14には、振動質量体1、2、および検出質量体3、4を中空支持できるようにするための空隙となる溝部23が形成される。
【0081】
シリコン基板12には、両主面に熱酸化膜24が形成される。次に、第1の領域R1(図1)における一方の主面側に、埋込質量体13a、13bが形成される。より具体的には、たとえば以下の工程が行なわれる。
【0082】
まず異方性深堀加工技術によりシリコン基板12に所定の深さの孔が形成される。この孔の深さは、CMPの研磨代を確保するために、振動質量体1、2の厚さよりも大きくされる。この孔が埋め込まれるように、シリコン基板12上にタングステンの成膜が行なわれる。次にCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって平坦化研磨が行なわれる。これによりシリコン基板12に設けられた孔内にのみタングステンが残される。次にシリコン基板12の全面の熱酸化により熱酸化膜24が形成される。
【0083】
次に、埋込質量体13a、13bがガラス基板14に面するように、シリコン基板12とガラス基板14とが貼り合わされる。貼り合わせは、たとえば陽極接合により行うことができる。その後、振動質量体1、2、検出質量体3、4などの厚さにまで、シリコン基板12が研削、研磨加工される。
【0084】
なお陽極接合の代わりに、表面活性化による低温接合が用いられてもよい。またガラス基板14の代わりにシリコン基板を用い、このシリコン基板と、シリコン基板12とが表面活性化による低温接合により接合されてもよい。
【0085】
図16は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第2工程を示す概略的な平面図である。図17〜図20のそれぞれは、図16の線XVII−XVII〜線XX〜XXに沿う概略的な断面図である。
【0086】
図16〜図20を参照して、上記の加工により、埋込質量体13a、13bが外部側に露出される。
【0087】
図21は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第3工程を示す概略的な平面図である。図22〜図25のそれぞれは、図21の線XXII−XXII〜線XXV〜XXVに沿う概略的な断面図である。
【0088】
図21〜図25を参照して、シリコン基板12上に、絶縁膜15が形成される。具体的には、まず低温で成膜することができるシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜が成膜され、この膜のパターニングがレジストマスクを用いたドライエッチングにより行なわれる。なお絶縁膜15は、駆動配線10、駆動モニタ配線11、駆動配線電極パッド17、駆動モニタ配線パッド18、および検出固定電極パッド21の各々と、シリコン基板12との間の絶縁のために設けられる。
【0089】
図26は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第4工程を示す概略的な平面図である。図27〜図30のそれぞれは、図26の線XXVII−XXVII〜線XXX〜XXXに沿う概略的な断面図である。
【0090】
図26〜図30を参照して、シリコン基板12上に、駆動配線10、駆動モニタ配線11、駆動配線電極パッド17、駆動モニタ配線パッド18、検出可動電極パッド19、検出固定電極取出パッド20、および検出固定電極パッド21が形成される。具体的には、まずAl−Siなどの配線材料がスパッタ法により成膜される。この膜のパターニングがレジストマスクを用いたドライエッチングにより行なわれる。
【0091】
続いて、振動質量体1、2、検出質量体3、4、支持ばね5、連結ばね6、検出ばね7、検出固定電極9のパターンに対応するレジストパターンが形成される。このレジストパターンは、貫通孔22に対応する位置に開口部を有する。次に、たとえばICP−RIE (Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching) によるシリコンの深堀加工技術により、シリコン基板12が高い異方性でエッチングされる。このエッチングにおいて、熱酸化膜24がエッチングストップ層として用いられる。次に、レジストパターンと、エッチングの際に形成された側壁保護膜とが除去される。次に、たとえば50%濃度のHFによって、熱酸化膜24のエッチングストップ層として機能した部分が除去される。次にワイヤボンディングが行なわれる。
【0092】
以上により、図1に示す本実施の形態の角速度センサが完成される。
なお本実施の形態においては、ローレンツ力による駆動方式、すなわち電磁駆動方式の角速度センサについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば静電駆動方式の角速度センサにも適用されることができる。
【0093】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、角速度センサに特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施の形態における角速度センサの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における角速度センサの概略的な平面レイアウトを示す図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿う概略的な断面図である。
【図4】図1の線IV−IVに沿う概略的な断面図である。
【図5】図1の線V−Vに沿う概略的な断面図である。
【図6】図1の線VI−VIに沿う概略的な断面図である。
【図7】図1の線VII−VIIに沿う概略的な断面図である。
【図8】図1の線VIII−VIIIに沿う概略的な断面図である。
【図9】図1の線IX−IXに沿う概略的な断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第1工程を示す概略的な平面図である。
【図11】図10のガラス基板のみが図示された概略的な平面図である。
【図12】図10の線XII−XIIに沿う概略的な断面図である。
【図13】図10の線XIII−XIIIに沿う概略的な断面図である。
【図14】図10の線XIV−XIVに沿う概略的な断面図である。
【図15】図10の線XV−XVに沿う概略的な断面図である。
【図16】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第2工程を示す概略的な平面図である。
【図17】図16の線XVII−XVIIに沿う概略的な断面図である。
【図18】図16の線XVIII−XVIIIに沿う概略的な断面図である。
【図19】図16の線XIX−XIXに沿う概略的な断面図である。
【図20】図16の線XX−XXに沿う概略的な断面図である。
【図21】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第3工程を示す概略的な平面図である。
【図22】図21の線XXII−XXIIに沿う概略的な断面図である。
【図23】図21の線XXIII−XXIIIに沿う概略的な断面図である。
【図24】図21の線XXIV−XXIVに沿う概略的な断面図である。
【図25】図21の線XXV−XXVに沿う概略的な断面図である。
【図26】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第4工程を示す概略的な平面図である。
【図27】図26の線XXVII−XXVIIに沿う概略的な断面図である。
【図28】図26の線XXVIII−XXVIIIに沿う概略的な断面図である。
【図29】図26の線XXIX−XXIXに沿う概略的な断面図である。
【図30】図26の線XXX−XXXに沿う概略的な断面図である。
【図31】角速度センサの質量分布の質点系モデルを示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1,2 振動質量体、3,4 検出質量体、5 支持ばね、6 連結ばね、7 検出ばね、8 検出可動電極、9 検出固定電極、10 駆動配線、11 駆動モニタ配線、12 シリコン基板、13a,13b 埋込質量体、14 ガラス基板、15 絶縁膜、17 駆動配線電極パッド、18 駆動モニタ配線パッド、19 検出可動電極パッド、20 検出固定電極取出パッド、21 検出固定電極パッド、22 貫通孔、23 溝部、24 熱酸化膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
角速度を検出する方法のひとつとして、振動する物体に加わるコリオリ力を検出する方法がある。この検出原理による角速度センサとしては、たとえば、主な構成部分としてフレームと、振動質量体と、質量体(以下、検出質量体と称する)とを有する角速度センサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1においては、振動質量体は4つのウェブを介してフレームに一定の方向(第1の方向:素子が形成された面内の一方向)で変位可能に結合されている。検出質量体は、振動質量体に不動に結合されたブロックに可撓ビームを介して結合されており、これによりブロックに対して第2の方向(素子が形成された面内において、第1の方向に直交する方向)に変位可能に配置されている。そして、検出質量体の変位により生じる櫛歯電極間の静電容量の変化を測定することにより、作用するコリオリ力の検出が行われる。
【0004】
また、特許文献1には、1つのフレーム内に、上記の振動質量体と検出質量体とが2個配置された構成も開示されている。これら2個の振動質量体に互いに逆相の振動が与えられ、双方の測定信号の差形成が行なわれることにより、外乱がフィルタリング除去される。
【0005】
振動質量体を振動駆動させる方式としては、たとえば電磁駆動方式(たとえば、特許文献2参照)や静電駆動方式(たとえば、特許文献3参照)がある。電磁駆動方式は、磁界の下での電流に作用するローレンツ力を振動の駆動力に用いる方式である。静電駆動方式は、電極間に電圧が印加された場合に電極間に作用する静電力を振動の駆動力に用いる方式である。その具体的な機構としては、たとえば2個の櫛歯電極を有し電極同士が噛み合うように対向して配置された櫛歯型静電駆動機構などがある。2個の櫛歯電極の間に電圧が印加され、それにより電極間に作用する静電力が駆動力として用いられる。
【0006】
近年、これら角速度センサの小型化のために、その製造に半導体プロセス技術が用いられてきている(たとえば、特許文献3参照)。精度のよい角速度センサを製造するためには、角速度センサの各構成部分が精度よく加工される必要がある。しかしながら、半導体プロセス技術による加工、すなわち写真製版技術やエッチング技術などを用いた加工は、一般的には寸法精度として±10%程度の製造ばらつきを有する。この製造ばらつきにより、たとえば振動質量体が設計通りに加工されないと、設計上想定されていた振動質量体の質量分布にアンバランスが生じ、設計上の駆動振動方向と実際のそれとが一致しなくなる。すなわち、駆動振動軸からずれた振動成分である漏れ振動が生じてしまう。
【0007】
また、振動質量体とこれに連結される検出振動体とが同時に第1の方向に駆動される構成が用いられる場合、検出振動体の質量分布のアンバランスによっても、設計上の駆動振動方向と実際のそれとが一致しなくなる。すなわち、駆動振動軸からずれた振動成分である漏れ振動が生じてしまう。
【0008】
上記の漏れ振動は、角速度センサの誤差の原因となる。検出されるべきコリオリ力の方向と同一方向の成分を有する漏れ振動が特に問題である。たとえば、角速度がゼロの時、すなわちコリオリ力が存在しない時は、理想的には検出質量体は単純に第1の方向に振動するべきものである。しかし、漏れ振動がある場合、その影響によりコリオリ力が存在しなくても検出質量体が第2の方向に沿って変位することになる。この変位は角速度センサの検出誤差の原因となる。よって角速度センサの精度を向上させるためには、この漏れ振動を抑制することが必要である。
【0009】
この抑制手段として、特許文献3には、(1)固定電極と可動電極とが追加された構成、(2)吸振ビームと吸振マスとからなる吸振器が追加された構成、(3)空気抵抗により漏れ振動を抑制するための複数枚の羽根が追加された構成、(4)気体の粘性抵抗により漏れ振動を抑制するための制振子が追加された構成が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、半導体プロセスにおける加工ばらつきが生じても、デバイス特性、特に、リング型振動子の固有振動数への影響を軽減することが、後加工により可能であることが提示されている。
【0011】
また、非特許文献1には、櫛歯電極の隣り合う櫛歯の間に電圧を印加することで生じる静電力により漏れ振動を抑制することが提案されている。
【特許文献1】特開平8−220125号公報(第4頁、図2、図3)
【特許文献2】特開平11−264730号公報(第7頁、図5)
【特許文献3】特開平11−132770号公報
【特許文献4】特開2004−279384号公報
【非特許文献1】W. A. Clark et al., "Surface Micromachined Z-Axis Vibratory Rate Gyroscope", Sensor and Actuator Workshop, 1996, pp.283−287
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記の特許文献3に記載の漏れ振動抑制手段が用いられると、以下に示すように、構造が複雑になるという問題があった。
【0013】
まず、漏れ振動抑制のための固定電極と可動電極とが追加される場合、漏れ振動が抑制されるように電位が制御される電極が角速度センサに付加される。このため角速度センサの構造が複雑になる。また、吸振ビームや吸振マスが設けられる構成、複数枚の羽根が設けられる構成、および気体の粘性抵抗を利用する制振子が設けられる構成のいずれの場合も、複雑な構造物が必要となるので、角速度センサの構造が複雑となる。
【0014】
さらに、上記の特許文献3に記載の漏れ振動抑制手段は、角速度センサの厚み方向の漏れ振動を抑制する手段であって、面内方向の漏れ振動を直接抑制することはできないという問題があった。
【0015】
また、上記の特許文献4に記載の方法では、固有振動数のずれを小さくすることはできても、漏れ振動を抑制することはできないという問題があった。
【0016】
また、上述した非特許文献1記載の漏れ振動抑制手段は、隣り合う櫛歯電極の櫛歯を電気的に独立して制御できるように形成する必要がある。このため、角速度センサの構造が複雑となるという問題があった。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、構造が簡易で、かつ製造ばらつきに起因して生じる漏れ振動を抑制することができる角速度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の角速度センサは、基板と、少なくとも1つの変位部と、駆動部とを有する。少なくとも1つの変位部は、第1の方向に沿って基板に対して振動することができるように基板に支持され、平面視において第1の方向に沿った対称軸を有する。駆動部は、少なくとも1つの変位部の各々を第1の方向に沿って駆動するためのものである。少なくとも1つの変位部の各々は、振動質量体と、検出質量体とを有する。振動質量体は、駆動部によって駆動される。検出質量体は、第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動することができるように振動質量体に支持されている。振動質量体および検出質量体の少なくともいずれかは、第1の領域と、一対の第2の領域とを有する。第1の領域は、平面視において対称軸に貫かれている。一対の第2の領域は、平面視において第1の領域によって第2の方向に互いに分離されている。一対の第2の領域の各々は、第1の領域の平均密度に比して小さい平均密度を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の角速度センサによれば、第1の領域に比して第2の方向に広い範囲に分布するために形状ばらつきが生じやすい一対の第2の領域が、第1の領域の平均密度に比して小さい平均密度を有する。すなわち形状ばらつきが生じ易い領域の密度が、形状ばらつきが生じ難い領域の密度よりも小さくされている。これにより、製造ばらつきに起因して角速度センサの質量分布が対称軸に対して対称な分布からずれる程度を小さくすることができる。よって変位部が駆動部によって対称軸に沿って駆動される際に、この質量分布のずれに起因して生じる変位部の回転を抑制することができる。これにより、変位部の回転により誘起される漏れ振動が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
はじめに本実施の形態の角速度センサの構成について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態における角速度センサの構成を概略的に示す平面図である。なお図1において、図を見易くするために、一部の領域にハッチングが付されている。
【0022】
図2は、本発明の一実施の形態における角速度センサの概略的な平面レイアウトを示す図である。なお図2は図1で示される領域を示している。また図2においては、概略的な構成を見易くするために、図1に示された部材の一部が図示されていない。また図を見易くするためにハッチングが付されている。
【0023】
図3〜図9のそれぞれは、図1の線III−III〜線IX−IXに沿う概略的な断面図である。
【0024】
図1〜図9を参照して、本実施の形態の角速度センサは、第1の変位部B1と、第2の変位部B2と、支持ばね5と、連結ばね6と、検出ばね7と、検出固定電極9と、駆動配線10(駆動部)と、駆動モニタ配線11と、シリコン基板12(基板)と、埋込質量体13a、13bと、ガラス基板14と、絶縁膜15と、駆動配線電極パッド17と、駆動モニタ配線パッド18と、検出可動電極パッド19と、検出固定電極取出パッド20と、検出固定電極パッド21と、貫通孔22と、熱酸化膜24とを有する。
【0025】
シリコン基板12は、熱酸化膜24を介して、ガラス基板14に支持されている。ガラス基板14は、第1および第2の変位部B1およびB2、支持ばね5、連結ばね6、および検出ばね7がガラス基板14の上方の中空に保持されるようにするために、溝部23を有している。熱酸化膜24の厚さは、たとえば200〜300nmである。溝部23の深さは、たとえば10〜40μmである。
【0026】
第1の変位部B1と、第2の変位部B2との各々は、支持ばね5を介してシリコン基板12に支持されている。支持ばね5は第1の方向に沿って伸縮することができるばねである。この構成により、第1の変位部B1と、第2の変位部B2との各々は、第1の方向に沿ってシリコン基板12に対して振動することができる。
【0027】
また第1の変位部B1と、第2の変位部B2との各々は、平面視において第1の方向に沿った対称軸AXを有する。この対称軸AXを、駆動振動軸AXと称する。また第1の変位部B1と、第2の変位部B2とは、平面視において、点Oに関して点対象な形状を有している。
【0028】
第1の変位部B1は、振動質量体1と、検出質量体3とを有する。また第2の変位部B2は、振動質量体2と、検出質量体4とを有する。振動質量体1および2は、連結ばね6によって互いに連結されている。連結ばね6は第1の方向に沿って伸縮することができるばねである。この構成により、振動質量体1および2は、第1の方向に沿って相対的に振動することができる。
【0029】
駆動配線10は、振動質量体1および2の各々の上に設けられ、第1の方向に直交する第2の方向に沿って延びている。また駆動配線電極パッド17に電流が入力されることにより、振動質量体1上の駆動配線10と、振動質量体2上の駆動配線10との各々には、逆向きの電流が流れるように駆動配線10が配線されている。またたとえば永久磁石を用いることで、第1および第2の方向の各々に垂直な方向に磁場が印加されている。この構成により、駆動配線電極パッド17に電流を入力することで、振動質量体1および2の各々が、互いに逆向きで、かつ第1の方向に沿ったローレンツ力により駆動される。よって振動質量体1を含む第1の変位部B1と、振動質量体2を含む第2の変位部B2とを、第1の方向に沿った音叉振動が生じるように駆動することができる。
【0030】
検出質量体3および4のそれぞれは、検出ばね7を介して、振動質量体1および2に支持されている。検出ばね7は第2の方向に沿って伸縮することができるばねである。この構成により、検出質量体3および4のそれぞれは、第2の方向に沿って、振動質量体1および2に対して振動することができる。
【0031】
振動質量体1、2、および検出質量体3、4の各々は、第1の領域R1(図中の破線部R1に含まれる領域)と、一対の第2の領域R2a、R2b(図中の破線部R2a、R2bに含まれる一対の領域)とを有する。第1の領域R1は、平面視において駆動振動軸AXに貫かれている。一対の第2の領域R2a、R2bは、平面視において第1の領域R1によって第2の方向に互いに分離されている。
【0032】
振動質量体1および2の各々は、第1の領域R1において、母材部と、埋込質量体13bとを有する。母材部は、シリコン基板12と一体となっており、シリコン(母材)からなる。埋込質量体13bは、母材部に埋め込まれている。埋込質量体13bは、たとえばタングステンのようにシリコンの密度よりも大きな密度を有する材質からなる。この構成により、振動質量体1および2の各々は、第1の領域R1において、シリコンの密度に比して大きい平均密度を有する。
【0033】
好ましくは平面視において母材部は埋込質量体13bの周囲を完全に取り囲んでいる。
検出質量体3および4の各々は、第1の領域R1において、母材部と、埋込質量体13aとを有する。母材部は、シリコン基板12と一体となっており、シリコン(母材)からなる。埋込質量体13aは母材部に埋め込まれている。埋込質量体13aの材質は、たとえばタングステンのようにシリコンの密度よりも大きな密度を有する材質からなる。この構成により、検出質量体3および4の各々は、第1の領域R1において、シリコンの密度に比して大きい平均密度を有する。
【0034】
好ましくは平面視において母材部は埋込質量体13aの周囲を完全に取り囲んでいる。
振動質量体1および2の各々は、一対の第2の領域R2a、R2bの各々において、母材部と、貫通孔22とを有する。母材部は、シリコン基板12と一体となっており、シリコン(母材)からなる。貫通孔22は、母材部に形成されており、気体で満たされているか、または真空とされている。この気体の密度または真空の密度は、シリコンの密度よりも小さい。よって振動質量体1および2の各々は、一対の第2の領域R2a、R2bにおいて、シリコンの密度に比して小さい平均密度を有する。
【0035】
なお本明細書における「平均密度」とは、貫通孔22が形成された領域を含む領域について、総質量が総体積によって除されることにより算出される値である。
【0036】
好ましくは平面視において複数の貫通孔22が第1の方向に沿って形成されている。このためには、第2の領域R2a、R2bに多数の貫通孔22が形成された構造(いわゆるハニカム構造)が用いられればよい。
【0037】
上記の埋込質量体13aによって、一対の第2の領域R2a、R2bの各々における検出質量体3の平均密度は、第1の領域R1における検出質量体3の平均密度に比して小さく、また一対の第2の領域R2a、R2bの各々における検出質量体4の平均密度は、第1の領域R1における検出質量体4の平均密度に比して小さくされている。
【0038】
また上記の埋込質量体13bによって、一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体1の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体1の平均密度に比して小さく、また一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体2の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体2の平均密度に比して小さくされている。
【0039】
また上記の貫通孔22によって、一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体1の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体1の平均密度に比して小さく、また一対の第2の領域R2a、R2bの各々における振動質量体2の平均密度は、第1の領域R1における振動質量体2の平均密度に比して小さくされている。
【0040】
検出質量体3および4のそれぞれは、検出可動電極8を有する。また検出固定電極9は、熱酸化膜24を介してガラス基板14に固定されている。また検出固定電極9は櫛歯を有する。よって、この櫛歯はガラス基板14に固定されている。この固定された櫛歯と、検出可動電極8とは、第2の方向に沿って対向している。この構成により、検出可動電極8と検出固定電極9との間の静電容量が測定されることで、第2の方向に沿った検出質量体3および4の振動を検出することができる。
【0041】
この静電容量の測定は、具体的には、検出可動電極パッド19と、検出固定電極パッド21との間の静電容量の測定により行なうことができる。この目的のために、検出可動電極パッド19は、シリコン基板12上に直接形成されることで、検出質量体3および4と電気的に接続されている。また検出固定電極パッド21は、絶縁膜15によりシリコン基板12から絶縁され、かつ、アルミニウムまたは金からなるワイヤボンディングにより検出固定電極取出パッド20と接続されている。検出固定電極取出パッド20は検出固定電極9の上に直接形成されている。よって検出固定電極パッド21は検出固定電極9と電気的に接続されている。この構成により、検出可動電極パッド19と検出固定電極パッド21との間の静電容量を測定することで、検出可動電極8と検出固定電極9との間の静電容量が測定される。
【0042】
検出可動電極8は、第1の領域R1に設けられた第1の櫛歯81と、一対の第2の領域R2aおよびR2bの各々に設けられた第2の櫛歯82とを有する。第2の櫛歯82の歯の長さは、第1の櫛歯81の歯の長さよりも大きい。
【0043】
なお、後述するダンピング効果が必要な場合は、検出可動電極8と検出固定電極9との間に気体が満たされている。
【0044】
駆動モニタ配線11は、振動質量体1および2の各々の上に設けられ、第2の方向に沿って延びている。駆動モニタ配線パッド18は駆動モニタ配線11の両端に設けられている。またたとえば永久磁石を用いることで、駆動モニタ配線11には第1および第2の方向の各々に垂直な方向に磁場が印加されている。この構成により、振動質量体1および2の各々が第1の方向に沿って振動すると、誘導起電力によって駆動モニタ配線パッド18に振動電圧が発生する。よってこの振動電圧をモニタすることで、振動質量体1および2の各々の振動をモニタすることができる。
【0045】
次に本実施の形態の角速度センサの使用方法について説明する。
図1を参照して、駆動配線電極パッド17を介して、駆動配線10に交流電流が印加される。すると、第1および第2の方向に直交する方向に磁界が印加されているため、駆動配線10には第1の方向のローレンツ力が作用する。ローレンツ力は、交流電流に応じて時間的に振動する。よって、駆動配線10が付された振動質量体1および2の各々には、第1の方向に振動する力が加わる。ここで、振動質量体1および2の各々は支持ばね5によって第1の方向に変位可能に懸架されているため、振動質量体1および2の各々は、第1の方向に振動的に変位する。この変位に応じて、振動質量体1および2の各々の上に設けられた駆動モニタ配線11には誘導起電力が生じる。
【0046】
この誘導起電力が駆動モニタ配線パッド18を介してモニタされることで、振動質量体1および2の各々の振動の振幅が検知される。この検知結果を参照して駆動配線10の電流値が調整されることにより、振動質量体1および2の各々を所望の振幅で振動させることができる。
【0047】
振動質量体1および2の各々に設けられた駆動配線10は、互いに逆向きの電流が流されるように配線されている。よって、振動質量体1および2の各々に作用するローレンツ力は、互いに方向が逆になる。この結果、振動質量体1および2の各々には、第1の方向に沿って逆向きの力が作用する。振動質量体1および2の各々は支持ばね5により第1の方向に沿って振動変位が可能なように支持されているため、振動質量体1および2の各々は第1の方向に沿って逆位相で振動する。
【0048】
さらに振動質量体1および2は連結ばね6により第1の方向に相対的に変位可能なように連結されているため、上記の振動が安定化される。また点Oに関する点対称性により、振動質量体1および2の各々の振動は、互いにほぼ同じ周波数で、かつ逆位相で安定化される。
【0049】
検出質量体3および4のそれぞれは、ガラス基板14からは独立していて、検出ばね7を介して振動質量体1および2により懸架されている。検出ばね7は第1の方向には高い剛性を有するため、振動質量体1および2の第1の方向の振動にともない、検出質量体3および4も第1の方向に振動する。
【0050】
第1および第2の方向の各々に直交する方向周りの角速度が角速度センサに加わると、第1の方向に振動する検出質量体3および4には、この角速度に応じて第2の方向のコリオリ力が加わる。検出ばね7は、第2の方向には全体として容易に弾性的に変形するため、検出質量体3、4は第2の方向のコリオリ力に応じて振動的に変位する。これにともない検出可動電極8も第2の方向に振動する。
【0051】
一方、検出固定電極9はガラス基板14に固定されている。よって検出可動電極8と検出固定電極9との間の静電容量が変動する。したがって、この静電容量を検出可動電極パッド19および検出固定電極パッド21の各々を介して測定することにより、検出質量体3および4の各々の振動的な変位を知ることができる。
【0052】
この変位は、上記の角速度に起因した第2の方向のコリオリ力に対応している。よって、この振動的な変位に基づいて、第1および第2の方向の各々に直交する方向周りの角速度を知ることができる。
【0053】
上述した角速度センサの説明は、理想的な状態についてのものである。実際の角速度センサにおいては、製造ばらつきの存在により、振動質量体1、2、および検出質量体3、4の駆動振動軸AXに関する線対称性を完全に確保することは困難である。この線対称性の不完全さは、角速度センサの精度に悪影響を及ぼす漏れ振動の発生原因のひとつとなる。
【0054】
以下、この線対称性の不完全さによる漏れ振動の発生について説明する。図31は、角速度センサの質量分布の質点系モデルを示す図である。
【0055】
主に図31を参照して、第1の変位部B1(図31の左側)は、振動質量体1および検出質量体3の質量分布に対応している。第2の変位部B2(図31の右側)は、振動質量体2および検出質量体4の質量分布に対応している。軸P1は、第1および第2の方向の各々に直交し、かつ変位部B1の重心を通る軸である。軸P2は、第1および第2の方向の各々に直交し、かつ変位部B2の重心を通る軸である。複数の質点M1の質量の合計は、第1の領域R1(図1)内の質量に対応する。また複数の質点M2の質量の合計は、一対の第2の領域R2aおよびR2b内の質量に対応する。
【0056】
距離L1は、本モデルにおける質点M1の駆動振動軸AXからの距離である。距離L1は、第1の領域R1における第1および第2の変位部B1、B2のそれぞれの軸P1およびP2周りの慣性モーメントが、モデルの対象となる角速度センサ(図1)と一致するように定められる。
【0057】
距離L2は、本モデルにおける質点M2の駆動振動軸AXからの距離である。距離L2は、一対の第2の領域R2a、R2bにおける第1および第2の変位部B1、B2のそれぞれの軸P1およびP2周りの慣性モーメントが、モデルの対象となる角速度センサ(図1)と一致するように定められる。
【0058】
角速度センサが設計通りに製造されれば、対応する質点系モデルは駆動振動軸AXに関して完全な線対称性を有する。この場合、駆動配線10により第1の変位部B1が加速度aで駆動されると、第1の変位部B1の駆動振動軸AXにより隔てられた一方側と他方側との各々に対して、互いに相殺されるような軸P1周りのトルクが作用する。この結果、第1の変位部B1の軸P1周りの回転は生じない。
【0059】
しかし実際の角速度センサは製造誤差を有する。よって実際の角速度センサに対応する質点系モデルは、駆動振動軸AXに関して完全な線対称性を有しない。このため、上述したトルクの相殺が不完全になるので、第1の変位部B1は、設計上意図された運動である第1の方向に沿った振動運動に加えて、軸P1周りの回転運動を行なう。このように意図されていない運動が発生する結果、角速度センサの漏れ振動が発生する。第2の変位部B2についても同様であり、製造誤差により軸P2周りの回転運動が生じる結果、角速度センサの漏れ振動が発生する。
【0060】
次に、本実施の形態の角速度センサによって上記の漏れ振動が低減される原理について、トルクの大きさの観点、および製造ばらつきの大きさの観点の2つの観点から説明する。
【0061】
第1に、トルクの大きさの観点から、漏れ振動が低減される原理について説明する。
第1の変位部B1について検討すると、複数の質点M1のいずれかの質量が製造誤差によりdMだけ変動した場合、トルクの相殺が不完全となり、加速度aのもとでは軸P1周りの回転に寄与する実効的なトルクT1=dM×L1×aが生じる。同様に、複数の質点M2のいずれかの質量が製造誤差によりdMだけ変動した場合、実効的なトルクT2=dM×L2×aが生じる。ここで距離L2>L1であるため、トルクT2>T1である。すなわち、第2の領域R2a、R2bにおける質量の変動dMの方が、第1の領域R1における質量の変動dMに比して、より大きなトルクを発生させてしまう。
【0062】
本実施の形態によれば、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度が、第1の領域R1における平均密度に比して小さくされている。このように平均密度が小さいので、第2の領域R2a、R2bにおける製造ばらつきにより形状が変動しても、質量の変動が抑制される。すなわち質量の変動にともない大きなトルクを発生させてしまう第2の領域R2a、R2bにおいて、質量の変動が抑制される。よってトルクの発生が抑制されるので、回転運動にともなう漏れ振動の発生を抑制することができる。
【0063】
第2に、製造ばらつきの大きさの観点から、漏れ振動が低減される原理について説明する。
【0064】
質点M1は、第1の領域R1を含む範囲A1内の質量を代表している。また質点M2は、第2の領域R2a、R2bを含む範囲A2の質量を代表している。一対の第2の領域R2aおよびR2bは互いに第1の領域R1により分離されているので、範囲A2は範囲A1よりも広い。一般に、より広い範囲に渡って製造ばらつきを抑制することは困難である。すなわち範囲A2における製造ばらつきは、範囲A1における製造ばらつきよりも大きくなる。
【0065】
言い換えると、第2の領域R2aとR2bとが離れていることから、第2の領域R2aとR2bとの間での製造ばらつきが大きい。このため、第2の領域R2aにおける質点M2と、第2の領域R2bにおける質点M2との間で、質量の差異が生じやすい。この結果、上述したトルクの相殺の不完全性が生じやすい。
【0066】
本実施の形態によれば、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度が、第1の領域R1における平均密度に比して小さくされている。このように特に製造ばらつきが生じやすい第2の領域R2a、R2bにおいて平均密度が小さくされているので、質量の変動が抑制される。よって質量の変動にともなうトルクの発生が抑制されるので、回転運動にともなう漏れ振動の発生を抑制することができる。
【0067】
以上、2つの観点から説明したように、本実施の形態によれば、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度が第1の領域R1における平均密度に比して小さくされているので、漏れ振動を抑制することができる。これにより角速度センサの精度を高めることができる。よって角速度センサの精度について所定の公差が定められている場合、製造工程の歩留まりを向上させることができる。
【0068】
また本実施の形態によれば、平均密度を調整するために設けられている貫通孔22は、振動質量体1、2を貫通して設けられている。これにより、振動質量体1、2の密度を厚さ方向全体に渡って調整することができる。
【0069】
なお貫通孔22の代わりに貫通していない孔が用いられる場合、この孔の形成によって振動質量体1、2の各々の厚み方向(第1および第2の方向に直交する方向)における重心位置が変動することで、漏れ振動が生じることがある。
【0070】
また本実施の形態によれば、平均密度を調整するために設けられている埋込質量体13a、13bは、振動質量体1、2を貫通して設けられている。これにより、振動質量体1、2の密度を厚さ方向全体に渡って調整することができる。
【0071】
なお埋込質量体13a、13bの代わりに貫通していない質量体が用いられる場合、この質量体によって振動質量体1、2の各々の厚み方向における重心位置が変動することで漏れ振動が生じることがある。
【0072】
また本実施の形態によれば、検出可動電極8は、第1の領域R1に設けられた第1の櫛歯81と、第2の領域R2a、R2bに設けられ、第1の櫛歯81の歯の長さよりも大きい歯の長さを有する第2の櫛歯82とを有する。すなわち、検出固定電極9の櫛歯(固定櫛歯)と対向する櫛歯の対向長さが第2の領域R2a、R2bにおいて長くされている。この構成により、検出質量体3、4のそれぞれが軸P1およびP2の周りを回転した際に、第2の領域R2a、R2bにおいて第2の櫛歯82と固定櫛歯との間の隙間に、大きなダンピング効果が生じる。これにより、検出質量体3、4の回転を抑制することで、角速度センサの漏れ振動を抑制することができる。
【0073】
また本実施の形態によれば、好ましくは、平面視において母材部は埋込質量体13aおよび13bの各々周囲を完全に取り囲んでいる。これにより、振動質量体1、2、および検出質量体3、4の端面において、埋込質量体13a、埋込質量体13bが露出しない。よって振動質量体1、2、および検出質量体3、4の端面において母材が分断されないので、熱膨張収縮による変形が駆動振動におよぼす悪影響を抑制することができる。
【0074】
なお仮に振動質量体1、2、および検出質量体3、4の端面において、埋込質量体13a、埋込質量体13bが露出する部分があるとする。すると、その部分において母材と異なる熱膨張係数を有する物質によって母材が分断されていることになる。この場合、温度変化に対する構造体の変形が、駆動振動に悪影響をおよぼし、漏れ振動を増大させる懸念がある。
【0075】
また本実施の形態によれば、好ましくは、平面視において第1の方向に沿って複数の貫通孔22が形成されている。これにより、第1の方向に沿って多数の貫通孔22を形成することができるので、第2の領域R2a、R2bにおける平均密度をより小さくすることで、本発明の効果を高めることができる。
【0076】
なお第1の方向に沿って複数の貫通孔22が形成されていなくても、一の貫通孔22の第1の方向に沿った幅が十分に広くされれば、上記と同様に第2の領域R2a、R2bにおける平均密度を小さくすることはできる。しかしながら、この場合、振動質量体1、2の第2の方向に沿った剛性が低下するので、振動質量体1、2が外乱やコリオリ力によって第2の方向に容易に変形してしまう。この結果、漏れ振動を十分に抑制することができないことがある。
【0077】
次に、本実施の形態の角速度センサの製造方法について、図10〜図30を用いて説明する。
【0078】
図10は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第1工程を示す概略的な平面図である。図11は、図10のガラス基板のみが図示された概略的な平面図である。図12〜図15のそれぞれは、図10の線XII−XII〜線XV〜XVに沿う概略的な断面図である。
【0079】
主に図10〜図15を参照して、初期段階では、ガラス基板14とシリコン基板12とが別個に扱われる。
【0080】
ガラス基板14には、振動質量体1、2、および検出質量体3、4を中空支持できるようにするための空隙となる溝部23が形成される。
【0081】
シリコン基板12には、両主面に熱酸化膜24が形成される。次に、第1の領域R1(図1)における一方の主面側に、埋込質量体13a、13bが形成される。より具体的には、たとえば以下の工程が行なわれる。
【0082】
まず異方性深堀加工技術によりシリコン基板12に所定の深さの孔が形成される。この孔の深さは、CMPの研磨代を確保するために、振動質量体1、2の厚さよりも大きくされる。この孔が埋め込まれるように、シリコン基板12上にタングステンの成膜が行なわれる。次にCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって平坦化研磨が行なわれる。これによりシリコン基板12に設けられた孔内にのみタングステンが残される。次にシリコン基板12の全面の熱酸化により熱酸化膜24が形成される。
【0083】
次に、埋込質量体13a、13bがガラス基板14に面するように、シリコン基板12とガラス基板14とが貼り合わされる。貼り合わせは、たとえば陽極接合により行うことができる。その後、振動質量体1、2、検出質量体3、4などの厚さにまで、シリコン基板12が研削、研磨加工される。
【0084】
なお陽極接合の代わりに、表面活性化による低温接合が用いられてもよい。またガラス基板14の代わりにシリコン基板を用い、このシリコン基板と、シリコン基板12とが表面活性化による低温接合により接合されてもよい。
【0085】
図16は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第2工程を示す概略的な平面図である。図17〜図20のそれぞれは、図16の線XVII−XVII〜線XX〜XXに沿う概略的な断面図である。
【0086】
図16〜図20を参照して、上記の加工により、埋込質量体13a、13bが外部側に露出される。
【0087】
図21は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第3工程を示す概略的な平面図である。図22〜図25のそれぞれは、図21の線XXII−XXII〜線XXV〜XXVに沿う概略的な断面図である。
【0088】
図21〜図25を参照して、シリコン基板12上に、絶縁膜15が形成される。具体的には、まず低温で成膜することができるシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜が成膜され、この膜のパターニングがレジストマスクを用いたドライエッチングにより行なわれる。なお絶縁膜15は、駆動配線10、駆動モニタ配線11、駆動配線電極パッド17、駆動モニタ配線パッド18、および検出固定電極パッド21の各々と、シリコン基板12との間の絶縁のために設けられる。
【0089】
図26は、本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第4工程を示す概略的な平面図である。図27〜図30のそれぞれは、図26の線XXVII−XXVII〜線XXX〜XXXに沿う概略的な断面図である。
【0090】
図26〜図30を参照して、シリコン基板12上に、駆動配線10、駆動モニタ配線11、駆動配線電極パッド17、駆動モニタ配線パッド18、検出可動電極パッド19、検出固定電極取出パッド20、および検出固定電極パッド21が形成される。具体的には、まずAl−Siなどの配線材料がスパッタ法により成膜される。この膜のパターニングがレジストマスクを用いたドライエッチングにより行なわれる。
【0091】
続いて、振動質量体1、2、検出質量体3、4、支持ばね5、連結ばね6、検出ばね7、検出固定電極9のパターンに対応するレジストパターンが形成される。このレジストパターンは、貫通孔22に対応する位置に開口部を有する。次に、たとえばICP−RIE (Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching) によるシリコンの深堀加工技術により、シリコン基板12が高い異方性でエッチングされる。このエッチングにおいて、熱酸化膜24がエッチングストップ層として用いられる。次に、レジストパターンと、エッチングの際に形成された側壁保護膜とが除去される。次に、たとえば50%濃度のHFによって、熱酸化膜24のエッチングストップ層として機能した部分が除去される。次にワイヤボンディングが行なわれる。
【0092】
以上により、図1に示す本実施の形態の角速度センサが完成される。
なお本実施の形態においては、ローレンツ力による駆動方式、すなわち電磁駆動方式の角速度センサについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば静電駆動方式の角速度センサにも適用されることができる。
【0093】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、角速度センサに特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施の形態における角速度センサの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における角速度センサの概略的な平面レイアウトを示す図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿う概略的な断面図である。
【図4】図1の線IV−IVに沿う概略的な断面図である。
【図5】図1の線V−Vに沿う概略的な断面図である。
【図6】図1の線VI−VIに沿う概略的な断面図である。
【図7】図1の線VII−VIIに沿う概略的な断面図である。
【図8】図1の線VIII−VIIIに沿う概略的な断面図である。
【図9】図1の線IX−IXに沿う概略的な断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第1工程を示す概略的な平面図である。
【図11】図10のガラス基板のみが図示された概略的な平面図である。
【図12】図10の線XII−XIIに沿う概略的な断面図である。
【図13】図10の線XIII−XIIIに沿う概略的な断面図である。
【図14】図10の線XIV−XIVに沿う概略的な断面図である。
【図15】図10の線XV−XVに沿う概略的な断面図である。
【図16】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第2工程を示す概略的な平面図である。
【図17】図16の線XVII−XVIIに沿う概略的な断面図である。
【図18】図16の線XVIII−XVIIIに沿う概略的な断面図である。
【図19】図16の線XIX−XIXに沿う概略的な断面図である。
【図20】図16の線XX−XXに沿う概略的な断面図である。
【図21】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第3工程を示す概略的な平面図である。
【図22】図21の線XXII−XXIIに沿う概略的な断面図である。
【図23】図21の線XXIII−XXIIIに沿う概略的な断面図である。
【図24】図21の線XXIV−XXIVに沿う概略的な断面図である。
【図25】図21の線XXV−XXVに沿う概略的な断面図である。
【図26】本発明の一実施の形態における角速度センサの製造方法の第4工程を示す概略的な平面図である。
【図27】図26の線XXVII−XXVIIに沿う概略的な断面図である。
【図28】図26の線XXVIII−XXVIIIに沿う概略的な断面図である。
【図29】図26の線XXIX−XXIXに沿う概略的な断面図である。
【図30】図26の線XXX−XXXに沿う概略的な断面図である。
【図31】角速度センサの質量分布の質点系モデルを示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1,2 振動質量体、3,4 検出質量体、5 支持ばね、6 連結ばね、7 検出ばね、8 検出可動電極、9 検出固定電極、10 駆動配線、11 駆動モニタ配線、12 シリコン基板、13a,13b 埋込質量体、14 ガラス基板、15 絶縁膜、17 駆動配線電極パッド、18 駆動モニタ配線パッド、19 検出可動電極パッド、20 検出固定電極取出パッド、21 検出固定電極パッド、22 貫通孔、23 溝部、24 熱酸化膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1の方向に沿って前記基板に対して振動することができるように前記基板に支持され、平面視において前記第1の方向に沿った対称軸を有する少なくとも1つの変位部と、
前記少なくとも1つの変位部の各々を前記第1の方向に沿って駆動するための駆動部とを備え、
前記少なくとも1つの変位部の各々は、
前記駆動部によって駆動される振動質量体と、
前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動することができるように前記振動質量体に支持された検出質量体とを有し、
前記振動質量体および前記検出質量体の少なくともいずれかは、
平面視において前記対称軸に貫かれた第1の領域と、
平面視において前記第1の領域によって前記第2の方向に互いに分離された一対の第2の領域とを有し、
前記一対の第2の領域の各々は、前記第1の領域の平均密度に比して小さい平均密度を有する、角速度センサ。
【請求項2】
前記第2の領域は貫通孔を有する、請求項1に記載の角速度センサ。
【請求項3】
前記第1の領域は、
母材からなる母材部と、
前記母材部に埋め込まれ、かつ前記母材の密度に比して大きな密度を有する埋込質量体とを有する、請求項1または2に記載の角速度センサ。
【請求項4】
前記基板に対して固定された相対位置を有する検出固定電極をさらに備え、
前記検出固定電極は固定櫛歯を有し、
前記検出質量体は気体を介して前記固定櫛歯に対向する電極を有し、
前記電極は、
第1の領域に設けられた第1の櫛歯と、
前記第2の領域に設けられ、前記第1の櫛歯の歯の長さよりも大きい歯の長さを有する第2の櫛歯とを有する、請求項1〜3のいずれかに記載の角速度センサ。
【請求項1】
基板と、
第1の方向に沿って前記基板に対して振動することができるように前記基板に支持され、平面視において前記第1の方向に沿った対称軸を有する少なくとも1つの変位部と、
前記少なくとも1つの変位部の各々を前記第1の方向に沿って駆動するための駆動部とを備え、
前記少なくとも1つの変位部の各々は、
前記駆動部によって駆動される振動質量体と、
前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って振動することができるように前記振動質量体に支持された検出質量体とを有し、
前記振動質量体および前記検出質量体の少なくともいずれかは、
平面視において前記対称軸に貫かれた第1の領域と、
平面視において前記第1の領域によって前記第2の方向に互いに分離された一対の第2の領域とを有し、
前記一対の第2の領域の各々は、前記第1の領域の平均密度に比して小さい平均密度を有する、角速度センサ。
【請求項2】
前記第2の領域は貫通孔を有する、請求項1に記載の角速度センサ。
【請求項3】
前記第1の領域は、
母材からなる母材部と、
前記母材部に埋め込まれ、かつ前記母材の密度に比して大きな密度を有する埋込質量体とを有する、請求項1または2に記載の角速度センサ。
【請求項4】
前記基板に対して固定された相対位置を有する検出固定電極をさらに備え、
前記検出固定電極は固定櫛歯を有し、
前記検出質量体は気体を介して前記固定櫛歯に対向する電極を有し、
前記電極は、
第1の領域に設けられた第1の櫛歯と、
前記第2の領域に設けられ、前記第1の櫛歯の歯の長さよりも大きい歯の長さを有する第2の櫛歯とを有する、請求項1〜3のいずれかに記載の角速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−14442(P2010−14442A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172652(P2008−172652)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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