説明

解体構造および解体構造を有する非電気機器

【課題】締結し合わされる被着体同士の当該締結部分を容易に解体可能にする。
【解決手段】前カバー2Aと後カバーの2Bの締結により構成される筐体2の当該締結部分に基材21の両面に熱発泡剤含有粘着剤層22、23の形成された両面粘着テープ17と、当該両面粘着テープ17と当接する面状発熱体16を積層状態で介在させておき、当該面状発熱体16に電力を供給して発熱させて熱発泡剤含有粘着剤層22、23に含有される熱発泡剤を加熱膨張および発泡させる。当該発泡処理により、熱発泡剤含有粘着剤層22、23が膨張変形させられ、当該粘着剤層と両カバー2A、2Bとの接着界面に凹凸が形成され、両粘着剤層22、23の粘着力が喪失させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、各種テレビジョン受像機、冷蔵庫などの電気機器やプリンタのトナーのような封止パッケージなどを含む非電気機器の締結部分を容易に解体する解体構造および解体構造を有する非電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生資源の再利用の要求が高まる傾向にあり、電気機器および非電気機器を含む種々の分野において製造された物品を分解して構成材料ごとに分別回収している。
【0003】
例えば、陰極線管テレビジョン受像機、液晶表示装置、液晶テレビジョン受像機、およびプラズマテレビジョン受像機などは、外装を構成する前カバーと後カバーとを締結して成る筐体、および、表示部分である陰極線管や表示パネル、電源や制御回路などを適所に複数本のネジで締結している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−304079号公報の図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の締結構造では、廃棄回収される機器に対して作業者がドライバを利用して1本ずつネジを緩めて締結を解除しなければならず、分解作業が煩雑であるとった不都合が生じている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、締結された被着体同士を容易に解体することのできる解体構造および解体構造を有する非電気機器を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、熱発泡剤含有粘着剤層が少なくとも基材の一方面に形成された両面粘着テープまたは両面粘着シートと、
前記熱発泡剤含有粘着剤層を加熱して発泡させる発熱体と、
前記粘着テープまたはシート、および、発熱体を介して締結される一対の被着体を備え、
前記発熱体は、基材の表裏面に形成される粘着剤層の少なくとも一方に含有させた金属粉によって構成したことを特徴とする。
【0008】
(作用・効果) この構造によれば、両面粘着テープまたは両面粘着シートによって締結されている被着体同士の間において、当該両面粘着テープなどを発熱体などで加熱することにより、粘着剤層に含有されている熱発泡剤が熱膨張および発泡させられる。当該熱発泡剤の発泡などにより粘着剤層が膨張変形して被着体との接触界面に凹凸が生じて粘着力が喪失し、締結されていた被着体同士を容易に分解することができる。
【0009】
特に、上記構造において、発熱体は、両面粘着テープなどの粘着剤層に含有させた金属粉によって構成されている。
【0010】
したがって、電磁コイルを備えた磁気ヘッドを発熱体に近接させて電磁誘導により熱発泡剤含有粘着剤層を誘導加熱すればよい。
【0011】
第2の発明は、被着体同士の締結部分に解体構造を有する非電気機器であって、
熱発泡剤含有粘着剤層が少なくとも基材の一方面に形成される両面粘着テープまたは両面粘着シートと、
前記基材の表裏面に形成される粘着剤層の少なくとも一方に含有させた金属粉によって構成した発熱体を締結し合う被着体同士の間に備えたことを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この構造を有する非電気機器によれば、電磁コイルを備えた磁気ヘッドを被着体の締結部に近接させることにより、粘着剤層に含有されている金属粉が誘導加熱される。当該誘導加熱に伴って、粘着剤層に含有される熱発泡剤が加熱されて膨張および発砲し、粘着剤層の粘着力が喪失する。したがって、両面粘着テープまたは両面粘着シートにより締結されていた被着体同士を容易に解体することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明の解体構造および解体構造を有する非電気機器によると、熱発泡剤含有粘着剤層を有する両面粘着テープまたは両面粘着シートおよび発熱体を介在させて被着体同士を締結しておくことにより、当該粘着剤層を発熱体で加熱すれば熱発泡剤が膨張および発泡されて粘着剤層の粘着力が喪失させられるので、締結されている被着体同士を容易に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】液晶テレビジョン受像機の正面分解斜視図である。
【図2】液晶テレビジョン受像機の裏面斜視図である。
【図3】図2に示す前カバー部分のA−A矢視断面図である。
【図4】分解構造を示すブロック図である。
【図5】液晶テレビジョン受像機の分解工程を示すフローチャートである。
【図6】別実施例の両面粘着テープの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は、電気機器である液晶テレビジョン装置の構造を示す分解斜視図である。
【0017】
液晶テレビジョン受像機1は、前カバー2Aと後カバー2Bからなる筐体2、当該筐体2内に収納される液晶表示装置3、スピーカユニット4、液晶表示装置3やスピーカユニット4を駆動制御する制御回路および電源回路を含む基板5、筐体2の下部に設けられて載置面に載置されるスタンド6から構成されている。
【0018】
前カバー2Aは、矩形状をしており、その内側に液晶パネル7を露呈するパネル開口8が形成されている。パネル開口8の周りには、当該液晶パネル7を囲う前面パネル9を有する。また、前カバー2Aの下部内側にスピーカユニット4の取付部が設けられており、スピーカの対向面に主力用のスリット10が形成されている。さらに、前カバー2Aの裏面角部には、後カバー2Bの位置決めをするガイド11が立設されている。
【0019】
後カバー2Bは矩形状の箱体であり、前カバー2Aと締結して液晶表示装置3、スピーカユニット4、基板5、およびスタンド6の頂部を収納しつつ、前カバー2Aと締結するよう構成されている。また、後カバー2Bの角部には、前カバー2Aのガイド11が嵌合するガイド穴12が形成されている。
【0020】
液晶表示装置3は、図2に示すように、液晶パネル7と当該液晶パネル7を囲うバックライトユニットを備えたシャーシ13とから構成されている。なお、液晶表示装置3の裏面には、金属性のバックシャーシ14が締結され、当該バックシャーシ14にスタンド6がネジ固定される。また、バックシャーシ14の裏面に基板5が締結される。
【0021】
次に、前カバー2Aと後カバー2Bの締結構造について説明する。図3は、両カバー2A、2Bが締結した状態を示す断面図である。
【0022】
前カバー2Aの締結面に沿って矩形状の段部15が形成されている。当該段部15の底面から面状発熱体16、両面粘着テープ17の順に貼り付けられた積層構造になっている。
【0023】
段部15の底面から段部外側の凸部18までの高さは、面状発熱体16と両面粘着テープ17を積層構造にしたときの表面高さより僅かに低くなるように設定されている。つまり、両カバー2A、2Bを押圧して両面粘着テープ17に締結したとき、当該両面粘着テープ17が弾性変形して段部15の高さと同じ高さになるように設定されている。したがって、両カバー2A、2Bの接合面に隙間が生じないように構成されている。
【0024】
面状発熱体16は、PETなどのベースフィルムに塗布した接着剤層にアルミニウムななどの蛇行形状の金属箔19を貼り合わせ、さらにその表面にカバーフィルムを貼り合わせたものである。また、ベースフィルムの裏面に熱硬化型の粘着剤層20が形成されており、前カバー2Aに締結されるように構成されている。
【0025】
また、面状発熱体16は、図4に示すように、コントローラ24を介して電源回路26を備えた基板5と通電可能に接続されている。
【0026】
両面粘着テープ17は、例えば、加熱発泡型再剥離性アクリル系粘着テープであり、基材21の表裏面に異なる温度で熱発泡する熱発泡剤含有粘着剤層22、23が形成されている。本実施例の場合、面状発熱体16と密着している熱発泡剤含有粘着剤層22に含有される熱発泡剤の発泡温度を熱発泡剤含有粘着剤層23の熱発泡剤の発泡温度よりも高くしてある。
【0027】
熱発泡剤含有粘着剤層22、23は、熱発泡剤を含有するアクリル系粘着剤による層であれば特に限定されない。例えば、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有している。
【0028】
次に、上記液晶テレビジョン受像機1の解体を図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0029】
図4に示すように、液晶テレビジョン受像機1に解体専用の操作装置25を接続するとともに電力を供給する。作業者は、解体対象物を操作装置25から選択して設定することにより、前後カバー2A、2Bの締結に使用される両面粘着テープ17の熱発泡剤の発泡温度と発泡が完了するまでの時間が予め記憶された当該操作装置25のデータベースから抽出される(ステップS1)。
【0030】
当該抽出データを操作装置25から液晶テレビジョン受像機1内のコントローラ24に送信すると、コントローラ24が基板5の電源回路を作動制御して面状発熱体16に電力供給を開始する(ステップS2)。
【0031】
面状発熱体16への電力供給開始に伴って、面状発熱体16の温度検出用のセンサが作動し、リアルタイムに温度を検出してコントローラ24に送信する。コントローラ24は、受信した温度情報に基づいて電源回路を操作して所定の温度を維持するようにフィードバック制御を行う。このとき、低温発泡側の熱発泡剤含有粘着剤層23の加熱を開始する。
【0032】
同時に、コントローラ24は、低温発泡側の当該粘着層23に対して予め設定された加熱時間の終了時点までをタイマカウントする(ステップS3)。当該加熱過程で、熱発泡剤含有粘着剤層23中の熱発泡剤が膨張および発泡して当該熱発泡剤含有粘着剤層23が膨張変形することにより、後カバー2Bとの両締結界面が凹凸変形してゆく。加熱終了時点に達すると、当該締結面での熱発泡剤含有粘着剤層23の粘着力が喪失しているので、後カバー2Bは、当該熱発泡剤含有粘着剤層23から分離解体可能な状態になる。
【0033】
続いて当該コントローラ24は、高温発泡側の熱発泡剤含有粘着剤層22に応じた加熱温度となるように電源回路を操作し、予め設定された加熱時間の終了時点までをタイマカウントする(ステップS4)。当該加熱過程で、熱発泡剤含有粘着剤層22と同様に熱発泡剤の膨張および発泡が生じて熱発泡剤含有粘着剤層22が膨張変形する。したがって、前カバー2Aから当該両面粘着テープ17を分離可能にする。
【0034】
熱発泡剤含有粘着剤層22の加熱時間が経過すると、コントローラ24は、面状発熱体16への電力供給を終了させる。この状態で作業者は、液晶テレビジョン受像機1の電力供給を停止するとともに、操作装置25の接続を解除し、前後カバー2A、2Bを分離する(ステップS5)。
【0035】
以上で、液晶テレビジョン受像機1の前カバー2Aと後カバー2Bの分離解体が完了する。
【0036】
上述のように、被着体である前カバー2Aと後カバー2Bの締結間に熱発泡剤含有粘着剤層22、23を有する両面粘着テープ17と、当該両面粘着テープ17と直接に接触する面状発熱体16を介在させて締結した構造にしておくことにより、当該面状発熱体16を加熱するだけで、両面粘着テープ17の粘着力を喪失させることができるので、被着体である前後カバー2A、2Bを容易に解体することができる。
【0037】
本発明は上述した実施例のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0038】
(1)上記実施例では、被着体である筐体内に電源を備えた装置を例にとって説明したが、電源を内部に備えていない電気機器および非電気機器などの場合、次のように構成すればよい。例えば、機器本体に電力供給用の外部接続端子を装備し、当該外部接続端子に接続された電源を利用してガバー部材や構成部材同士の締結間に介在させた面状発熱体に電力を供給し、熱発泡剤含有粘着剤層を加熱するように構成すればよい。なお、この構成において、操作装置を介して機器本体に電力を供給させ、当該操作装置で加熱温度や加熱時間を制御するように構成すればよい。
【0039】
別実施形態として、面状発熱体16の構成を両面粘着テープ17の基材21または粘着剤層22、23に持たせた構成にしてもよい。この構成の場合、面状発熱体として機能する基材27は、通電により発熱する特性を有すれば特に限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、金属箔28(各種金属フィルム)、電熱線[例えばニクロム線(ニッケルクロム系合金の金属線)]、鉄クロム系合金の金属線などの電気抵抗の大きい金属線などを樹脂フィルム29中に蛇行配線したもの、金属箔を樹脂フィルム中に配線したもの、あるいは導電性カーボンのような導電性粒子を樹脂に練りこんだ導電性樹脂などがあげられる。
【0040】
当該構成の場合、電力を発熱体に直接に供給するのではなく、電磁コイルを有する磁気ヘッドを被着体同士の締結部分に近接させて電磁誘導により発熱体を非接触で電磁加熱させて熱発泡剤含有粘着剤層22、23の熱発泡剤を膨張または発泡させて粘着剤層の粘着力を喪失させる。したがって、当該構成においても、上記実施例同様に、被着体同士を容易に解体することができる。
【0041】
(2)上記実施例では、液晶テレビジョン受像機を例にとって説明したが、当該装置に限定されるものではなく、電源を内蔵した電気機器あるいは電源を内蔵しない電気機器、および締結の必要な構造物である非電気機器のいずれにも上記分解構造および分解方法を好適に適用することができる。
【0042】
(3)上記各実施例では、両面粘着テープ17を例にとって説明したが、両面粘着シートであってもよい。両面粘着シートを利用することにより、前後カバー2A、2Bのように締結面積の狭いところに限らず、液晶パネル7とバックシャーシのように接触面積の広い箇所に適用することができる。したがって、両面粘着テープと両面粘着シートを締結箇所の条件において適宜に使い分けることにより、締結構造を有するあらゆる箇所に本発明の解体構造を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 … 液晶テレビジョン受像機
2 … 筐体
2A … 前カバー
2B … 後カバー
15 … 段部
16 … 面状発熱体
17 … 両面粘着テープ
22、23 … 熱発泡剤含有粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱発泡剤含有粘着剤層が少なくとも基材の一方面に形成された両面粘着テープまたは両面粘着シートと、
前記熱発泡剤含有粘着剤層を加熱して発泡させる発熱体と、
前記粘着テープまたはシート、および、発熱体を介して締結される一対の被着体を備え、
前記発熱体は、基材の表裏面に形成される粘着剤層の少なくとも一方に含有させた金属粉によって構成した
ことを特徴とする解体構造。
【請求項2】
被着体同士の締結部分に解体構造を有する非電気機器であって、
熱発泡剤含有粘着剤層が少なくとも基材の一方面に形成される両面粘着テープまたは両面粘着シートと、
前記基材の表裏面に形成される粘着剤層の少なくとも一方に含有させた金属粉によって構成した発熱体を締結し合う被着体同士の間に備えた
ことを特徴とする非電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38791(P2013−38791A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193434(P2012−193434)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2008−289038(P2008−289038)の分割
【原出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】