説明

解体機

【課題】破砕片がキャブに落下することを防止するガードを、多関節フロントに取付けたままで姿勢変更を行なう必要なく輸送することができ、もって輸送および組立における手間を削減できる構成のものを提供する。
【解決手段】下部走行体1上に設置された上部旋回体3と、上部旋回体3上に設置されたキャブ5と、上部旋回体1に取付けられる多関節フロント6とを備える。多関節フロント6は、高所作業を可能とする長いブーム8およびアーム14と、ブーム8およびアーム14より短く、ブーム8とアーム14との間に相対回動可能に取付けられる中継ブーム11と、アーム14の先端に取付けられる破砕具15とを備える。中継ブーム11の背面に、破砕具15により破砕された破砕片のキャブ5への落下を防止するガード21を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所解体作業のため、多関節フロントとして長いブームおよびアームとこれらの間の中継ブームとを備えた解体機に係り、特にアームの先端に取付けられた破砕具による破砕作業で生じた破砕片がキャブに落下することを防止するガードの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の高所解体作業を行なう場合、長い多関節フロントを有する解体機が用いられる。このような解体機として、長いブームとアームとの間に比較的短い中継ブームを設けた多関節フロントを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。このような中継ブームを持つ多関節フロントを備えた解体機は、これを備えていないものに比較して、アームの姿勢をより広範囲に変更できることと、多関節フロントの先端の破砕具をより高所に到達可能にする点において有利である。
【0003】
この解体機においては、従来より、特許文献1にも開示されているように、ブームの背面に、破砕具による破砕作業で生じた破砕ブロック等の破砕片がキャブに落下することを防止するためのガードを取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−272648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は前記従来の中継ブームを有する多関節フロントを輸送姿勢状態を示す側面図である。図6において、40は輸送用トレーラトラック、6はこのトレーラトラック40の荷台40a上に搭載された多関節フロントである。多関節フロント6は、ブーム8と、このブーム8にピン10により回動可能に連結された中継ブーム11と、この中継ブーム11にピン13により回動可能に連結されたアーム14と、ブーム8と中継ブーム11との間に設けられた中継ブーム回動用の油圧シリンダ9と、中継ブーム11とアーム14との間に設けられたアーム回動用の油圧シリンダ12と、アーム14の先端に取付けられる破砕具(図示せず)を回動させるためにアーム14に取付けられた油圧シリンダ17とを備える。41はブーム8の背面(ブーム8の作業時における起立状態において背面となる面を意味する。)に取付けたガードであり、キャブ(図示せず)への破砕片の落下を防止するものである。
【0006】
図6に示すように、多関節フロント6の輸送の際には、ブーム8、中継ブーム11、アーム14をコ字形に折り曲げ、アーム14を下にし、ブーム8は荷台40a上に置いた支持台42により支持して搭載する。このようにブーム8にガード41を取付けた状態で輸送する場合、ガード41は搭載状態におけるブーム8から上方に突出するので、その際の輸送高さH2は、ガード41を取外した状態の高さH1より高くなる。その結果、このガード41を取付けたまま多関節フロント6を荷台40aに搭載した状態では輸送制限高さを超えてしまう恐れがある。このため、ガード41を取外して輸送するか、あるいは特許文献1にも記載のように、ガード41の取付け姿勢を41Aで示す低い姿勢に変え、これにより、ガード41を使用姿勢で取付けた状態の輸送高さH2よりも低い輸送高さH3にして輸送することが行なわれている。
【0007】
このように、従来のガード41付きの多関節フロント6を有する解体機においては、輸送にあたり、ガード41を取外すかあるいは低姿勢にし、現地において再度取付けるか、あるいは低姿勢から使用姿勢に変更する必要があり、輸送および組立に手間がかかるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、破砕片回避用のガードを多関節フロントに設けた解体機において、ガードを多関節フロントに取付けたままでしかも姿勢変更を行なう必要なく輸送することができ、もって輸送および組立における手間を削減できる構成のものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解体機は、下部走行体上に設置された上部旋回体と、前記上部旋回体上に設置されたキャブと、前記上部旋回体に取付けられる多関節フロントとを備え、
前記多関節フロントは、高所作業を可能とするための長いブームおよびアームと、前記ブームおよび前記アームより短く、前記ブームと前記アームとの間に相対回動可能に取付けられる中継ブームと、前記アームの先端に取付けられる破砕具とを備えた解体機において、
前記中継ブームの背面に、前記破砕具により破砕された破砕片の前記キャブへの落下を防止するガードを取付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中継ブームの背面にガードを取付けたので、ブーム、アームを横向きにしかつ中継ブームをほぼ縦向きにして輸送する場合、ガードが多関節フロントの上面に突出しない。このため、輸送時の姿勢では、ガードを多関節フロントに取付けた状態であっても多関節フロントの輸送状態では高さが変わらない。その結果、多関節フロントの輸送時の高さを輸送制限高さ未満とするためにガードを着脱したり、ガードの取付け姿勢を変更する必要が無くなり、輸送および組立における手間が削減できる。
【0011】
また、ガードを中継ブームに取付けたので、従来のようにブームに取付けた場合に比較してガードの位置が高くなり、その結果、破砕片の落下をカバーしうる範囲が広くなり、ガードを従来よりも小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による解体機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】本実施の形態の解体機の中継ブームの側面図である。
【図3】本実施の形態の解体機の中継ブームの背面図である。
【図4】本実施の形態の解体機の多関節フロントを輸送状態にて示す側面図である。
【図5】本実施の形態の解体機のガードの作用を説明する解体機の背面図である。
【図6】従来の解体機の多関節フロントを輸送状態にて示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明による解体機の一実施の形態を示す側面図である。この解体機は、下部走行体1上に旋回装置2を介して上部旋回体3を設置し、上部旋回体3に油圧源装置としての油圧パワーユニット4やキャブ5等を設置すると共に、上部旋回体3に多関節フロント6を取付けてなる。この多関節フロント6は、上部旋回体3に油圧シリンダ7により俯仰可能に取付けられるブーム8と、このブーム8の先端に油圧シリンダ9によりピン10を中心に回動可能に取付けられる中継ブーム11と、この中継ブーム11の先端に油圧シリンダ12によりピン13を中心に回動可能に取付けられるアーム14とを備える。図示のように、ブーム8やアーム14は高所解体作業が可能となるように、油圧ショベル等に用いられる一般的なブームやアームよりも長く形成され、中継ブーム11はブーム8やアーム14より短く形成される。
【0014】
アーム14の先端には油圧シリンダ(図示せず)により開閉される鋏状の破砕爪15aを有する破砕具15が、ピン16を中心に回動可能に取付けられる。17は破砕具15を回動させるためにアーム14の背面に一端を取付けた油圧シリンダである。この油圧シリンダ17の他端は、アーム14に枢着したリンク18と、破砕具15に枢着したリンク19に共通にピン連結される。
【0015】
ブーム8は1本の長いもので構成する場合もあるが、本実施の形態においては、上部旋回体3に油圧シリンダ7により俯仰可能に取付けられる基端ブーム8aと、作業箇所の高さに応じて継ぎ足し本数を調整してピン20により継ぎ足す1本以上の継ぎ足しブーム8bと、この継ぎ足しブーム8bの最先端にピン20により着脱可能に取付けられる先端ブーム8cとからなる例について示している。中継ブーム11を回動させる油圧シリンダ9の一端は、この先端ブーム8cに連結される。
【0016】
21は中継ブーム11の背面(作業中に中継ブーム11が起立した状態において背面となる面という意味である。)に取付けたガードである。このガード21は、破砕具15により破砕されてアーム14上を転動するコンクリートブロック等の破砕片を中継ブーム11の側方に逸らせ、これにより破砕片がキャブ5上に落下することを防止するために設けられる。
【0017】
図2はガード21の取付け構造を示す側面図、図3はその背面図である。図2、図3において、22はブーム8に中継ブーム11を取付けるピン10を挿着するボス、23は中継ブーム11にアーム14を取付けるピン13を挿着するボスである。24は中継ブーム11の前面に固着したブラケットであり、このブラケット24は、中継ブーム11を回動させる油圧シリンダ9の先端をピン付けするピン孔24aと、アーム14を回動させる油圧シリンダ12の基端をピン付けするピン孔24bとを有する。
【0018】
25は中継ブーム11の背面に固着した板状のガード取付け用ブラケットである。26はガード21の下面(下面とは中継ブーム11が垂直姿勢をとる際に下になる面を意味する。)に固着した平行板状のブラケットである。ガード21の中継ブーム11への取付けは、この平行板状のブラケット26で中継ブーム11に固着したブラケット25で挟んで嵌合し、これらのブラケット25,26に設けたボルト挿通孔(図示せず)にボルト27を挿通し、このボルト27にナット28を螺合して締結することにより行なわれる。図3、図4に示すように、ガード21は、中継ブーム11の起立状態において、左右方向の片側(本例では右側)が他側(本例では左側)よりも高くなる姿勢で取付けられる。このように傾斜させる理由は、ガード21上に落下した破砕片を中継ブーム11の側方に滑落させるためである。
【0019】
図4はこの解体機の多関節フロント6の輸送状態を示す側面図である。この例ではブーム8は基端ブーム8aを継ぎ足しブーム8bから分離し、継ぎ足しブーム8bに先端ブーム8cを連結したままで輸送している状態を示す。輸送の際には、前記従来例と同様に、アーム14を下にし、ブーム8を上にし、中継ブーム11を縦にし、ブーム8を支持台42により支持し、コの字形にした姿勢でトレーラトラック40の荷台40a上に多関節フロント6を搭載する。また、破砕具15はアーム14から取外した状態で輸送する。
【0020】
このように、トレーラトラック40に多関節フロント6を搭載した状態においては、作業時には背面となる中継ブーム11の面が前向きとなるので、この面に取付けられたガード21は輸送姿勢における高さに影響を与えない。すなわち、この輸送姿勢における多関節フロント6の高さH1は、ガード21による影響を受けず、輸送制限高さを考慮してガード21を取外す必要がない。このため、輸送に当たってガード21を中継ブーム11から取外したり、現地においてガード21を中継ブーム11に取付ける必要がなく、また、輸送、組立に当たり、ガード21の姿勢変更作業を行なう必要がなくなり、輸送および組立における手間が削減できる。
【0021】
図5はこの実施の形態のガード21による破砕片の落下回避範囲と従来のガード51の破砕片の落下回避範囲とを対比して示す背面図である。線31,32間で挟まれる領域が本実施の形態のガード21による破砕片の落下回避範囲であり、線33,34間で挟まれる領域が従来のガード41による破砕片の落下回避範囲である。図5から分かるように、本実施の形態のガード21による場合、ガード21の位置が従来のガード41より高くなるので、ガード21による線31,32間の破砕片の落下回避範囲が従来のガード41による場合よりも広くなる。換言すれば、本実施の形態のガード21の左右の幅を従来のガード41の左右の幅よりも小さくしても、ガード41と同等の落下回避範囲が得られるので、ガード21の小型化が可能となる。
【0022】
以上本発明を一実施の形態により説明したが、本発明を実施する場合、多関節フロント6の構成やガード21の構成あるいは取付け構造は、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々に変更可能である。
【符号の説明】
【0023】
1:下部走行体、2:旋回装置、3:上部旋回体、4:油圧パワーユニット、5:キャブ、6:多関節フロント、7:油圧シリンダ、8:ブーム、8a:基端ブーム、8b:継ぎ足しブーム、8c:先端ブーム、9:油圧シリンダ、10:ピン、11:中継ブーム、12:油圧シリンダ、13:ピン、14:アーム、15:破砕具、16:ピン、17:油圧シリンダ、18,19:リンク、20:ピン、21:ガード、22,23:ボス、24〜26:ブラケット、27:ボルト、28:ナット、40:トレーラトラック、40a:荷台、42:支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に設置された上部旋回体と、前記上部旋回体上に設置されたキャブと、前記上部旋回体に取付けられる多関節フロントとを備え、
前記多関節フロントは、高所作業を可能とするための長いブームおよびアームと、前記ブームおよび前記アームより短く、前記ブームと前記アームとの間に相対回動可能に取付けられる中継ブームと、前記アームの先端に取付けられる破砕具とを備えた解体機において、
前記中継ブームの背面に、前記破砕具により破砕された破砕片の前記キャブへの落下を防止するガードを取付けたことを特徴とする解体機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−196020(P2011−196020A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60813(P2010−60813)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】