説明

触媒、その生産方法およびN2Oを分解するためのその使用

本発明は、気相においてNOを窒素と酸素に分解するための触媒であって、多結晶質またはガラス様の無機材料から作成される多孔質担体、これに施用される酸化セリウム機能層、およびこれに施用されコバルトを含有する酸化物材料の層を含む、前記触媒について記載するものである。該触媒は、とりわけ硝酸系において第2または第3の触媒として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜酸化窒素を分解するための担持触媒に関する。これらは、とりわけ亜酸化窒素が形成する工業プロセス、例えば、カプロラクタム、アジピン酸または硝酸の調製に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
例えば硝酸の生産過程におけるアンモニアの工業的酸化では、望ましい一酸化窒素NOの形成に付随して望ましくない亜酸化窒素NOの形成が起こる。これは、少なからぬ程度で成層圏オゾンの崩壊および温室効果を引き起こす。亜酸化窒素の他の発生源は、例えばアジピン酸の調製で実施されるような、硝酸を酸化体として用いる工業的酸化である。
【0003】
地球大気圏における気候関連の微量ガス中のNOの体積に基づく相対的割合は0.1体積%未満(CO:98.7体積%、CH:1.2体積%)であるが、その温室効果の潜在能力はCOの310倍であり、したがって、ヒトにより引き起こされる追加的温室効果に対する亜酸化窒素の相対的割合はCOの寄与の約30%に相当する。
【0004】
とりわけ硝酸の生産において亜酸化窒素の放出を削減するための技術的解決法は、このプロセスが最大の工業的亜酸化窒素放出源であるため、環境保護の理由で必要なだけでなく、今日では立法者によっても要求されている。
【0005】
工業界において大規模で実施されていて、NOの問題と関係がある気相反応の例は、硝酸の調製である。これは一般に、Pt/Rh触媒上方におけるアンモニアの触媒的酸化によるOstwald法により工業的規模で実施される。これに関し、NHは非常に選択的にNOに酸化された後、これがさらなるプロセスの過程でNOに酸化され、このNOが最後に吸収塔で水と反応して硝酸を生じる。Pt/Rh触媒は微細な細目網として形作られ、バーナーで広範囲にわたり延伸される。空気中の典型的には約8〜12体積%のアンモニアのガス混合物を細目網に通し、細目網の温度は発熱反応を受けて約850〜950℃に達する。
【0006】
硝酸の生産の経過およびそのさまざまなプロセスの変形の概要は、Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,Vol.A17,VCH Weinheim(1991)に掲載されている。
【0007】
硝酸の生産プラントのような工業プラントからの排ガス中のNO放出の削減に関し、原理上は3つの異なるプロセス上またはプラントエンジニアリング上の可能性がある:
1.第1の処置
酸化触媒の化学組成の変更により、アンモニアを一酸化窒素に選択的に酸化し、望ましくない亜酸化窒素の形成を回避する。
2.第2の処置
亜酸化窒素をその構成成分NおよびOに選択的に分解する触媒を、アンモニアの酸化に通常用いられていて酸化をもたらす貴金属細目網と吸収塔の間、しかもアンモニア酸化後の第1の熱交換器ユニットの上流に設置することにより、プロセスガスのNO含量を低減する。ここにおいて、プロセスの温度とそれに関連する触媒の必要な運転温度は比較的高く、例えば800〜1000℃の範囲である。
3.第3の処置
吸収塔から出てくる排ガス中に存在するNOを触媒分解する。これは、実際の生産プロセスの下流に配置される排ガス精製である。ここにおいて、排ガスの温度、したがって同様に触媒の運転温度は比較的低く、プラントのタイプに応じて例えば200〜700℃の範囲である。この排ガス精製では、触媒を、吸収塔と排気筒の間、好ましくは吸収塔と排ガスタービンの間、とりわけ排ガスタービンの直前に配置する。
【0008】
変形1は酸化触媒の変化形および/またはプロセスにおける圧力および温度条件の変更により達成することができるが、変形2および3では、NOを選択的に分解するための特定の触媒を使用することが必要であり、これらの触媒は、プロセスで予め決定されている要件をすべて満たさなければならない。
【0009】
硝酸を酸化体として用いる工業的酸化プロセス、例えばアジピン酸の調製では、各排ガスの最大50体積%になりうる高い割合の亜酸化窒素がプロセスにおいて形成する。排ガスの温度は、亜酸化窒素の発熱分解の結果、最高約900℃まで上昇する可能性がある。したがって、適したNO分解触媒はこの温度範囲で活性でなければならず、この温度範囲での長期使用に適していなければならない。
【0010】
Oを問題のない成分であるNとOに分解することを可能にする触媒について、徹底的な調査が長年にわたり行われている。考えうる触媒材料の範囲は、非金属無機担体材料に施用されていることが好ましい貴金属含有触媒、カチオンが交換されているか金属酸化物を含有する微孔質フレーム構造シリケート(ゼオライト)から、ペロブスカイトもしくはペロブスカイト様構造またはスピネル構造を有する遷移金属酸化物および混合酸化物に及ぶ。
【0011】
上記触媒材料の多くは原理上適切であることが技術文献および特許文献で示されているが、圧力が高く、運転温度が非常に高く、腐食性条件であるため、触媒に対する要求は、触媒活性および選択性に関してのみならず、とりわけ長期間にわたる熱的および化学的安定性の点でも、とりわけ厳しいものである。
【0012】
まず第一に、硝酸プラントにおいて第2の処置に従って用いるための触媒(以下“第2触媒”という)は、必須である典型的には800〜1000℃の高温で長期間にわたり運転することが可能であるように、高い熱安定性を有さなければならない。これらの温度で失活または気化する単純な貴金属触媒も、これらの温度でフレーム構造が破壊されるゼオライトまたはハイドロタルサイト構造物も、この熱安定性を有さない。したがって、高温耐久性セラミック触媒が考えうる選択肢である。
【0013】
第2触媒は、それ自体が触媒特性を有するがそのような特性を必ずしも有する必要はない高温耐久性セラミック担体材料と、1種または複数の活性成分を含むことが多い。触媒活性成分は、セラミックマトリックス中に均質に分散しているか、表面に施用される層として存在することができる。これにより、第2触媒が満たさなければならないさらなる要件、すなわち、セラミック担体と活性成分との必然的に失活を引き起こすであろう化学反応が、高い使用温度において起こってはならないという要件が生じる。
【0014】
特に遷移金属酸化物、とりわけ酸化コバルトCoは、NOを分解するための非常に良好な触媒、すなわち活性成分であるということが、文献から知られている。遷移金属を含有し、ペロブスカイト構造、ペロブスカイト様構造またはスピネル構造を有する混合酸化物も、何度も記載され詳細に調査されている(N.Gunasekaran et al.,Catal.Lett.(1995),34(3,4),373−382頁)。
【0015】
これらの触媒が比較的高価であるという不利な点は、従来技術では、高価な活性成分を安価なセラミックマトリックス中に分散させるか、そのようなセラミック担体材料の表面に施用することにより、対処されている。しかしながら、大多数の場合、これらの触媒に関する研究は300〜600℃の範囲の運転温度に限定されている。例えば硝酸を調製するためのプラントにおいて第2触媒として使用中に生じるような高温では、新たな問題、特に、不十分な焼結安定性および担体材料と活性成分の間で化学反応が起こる傾向が生じ、該化学反応の結果、触媒は活性を失う可能性がある(失活)。
【0016】
第2触媒の特定の場合(プロセスの標的生成物であるNO存在下でのNOの分解)では、NOの分解に対するNO分解の選択性という、触媒が満たさなければならないさらなる重要な要件がある。
【0017】
第2触媒の床が満たさなければならないさらなる要件は、比較的低重量の床である。これは、プラントでは限られた空間しか利用することができず、プラントの部材は触媒の重量による応力を限定的な程度にしか受けることができないためである。低い触媒重量は、原理上、高い活性および/または低い嵩密度を有する触媒の使用により達成することができる。
【0018】
したがって、第2触媒の開発における目的は、上記課題に対処することができる材料系および生産プロセスを見いだすことである。これに関し、NOを分解するための触媒活性の点で優れるCoおよび/またはCo含有混合酸化物(例えば、一般組成La1−xCo1−y[式中、A=Sr、Ca、Ba、Cu、Ag;B=Fe、Mn、Cr、Cu;x=0〜1およびy=0〜0.95]のペロブスカイト)の使用は、約900℃を超える温度で起こるCoと多くの担体材料、例えばAlとの不可逆的化学反応が触媒活性の損失をもたらすので、とりわけ問題がある。
【0019】
国際公開00/13789号には、アルカリ土類金属化合物(好ましくはMgO)を担体材料として含む第2触媒が記載されている。これは、MgO自体がNOを分解するための触媒活性をいくらか有するので、高価な活性成分の割合を低下させることができるという利点を有する。不利な点は、選択率が100%でなく、NOが分解されることもあるという点である。さらに、現実的な条件下でのこの材料系の長期試験は、この場合も、Coイオンが活性相CoからMgO格子中に移行してMg1−xCoO固体化合物を形成し、これに伴い触媒が失活することを示している。
【0020】
活性成分としての酸化コバルトおよび担体材料としての酸化マグネシウムを含む同様の材料系が、米国特許公報US−A−5705136号に記載されている。この場合も高い温度範囲における焼結安定性が不十分であるという問題が認められているので、この文書に記載されている触媒は、400〜800℃の温度範囲での使用には適するが、硝酸プラントにおける高温での使用には適さない。
【0021】
遷移金属酸化物とZrOとの不可逆的固相反応も公知であるので、酸化ジルコニウム(特開昭48−089185号JP−A−48/089185号に担体材料として記載されている)も高い温度範囲において除外される。
【0022】
国際公開02/02230号では、CeO担体上に活性成分としてCo3−x(M=Fe、Alおよびx=0〜2)を含む触媒が特許請求されている。実際、この場合は、使用温度の900℃において活性成分と担体材料との反応は起こらず、触媒反応の選択性もCeOにより改善される。しかしながら、価格、入手可能性および非常に大きな重量は、CeOで構成される固体担体を含む触媒の実際の使用に関し問題になる。
【0023】
硝酸プラントの排ガスからNOを除去するために、さまざまな考えうる触媒材料を利用することができる。これは、排ガスの温度、したがって運転温度がより低いためである。さらに、他の窒素酸化物に対する選択性の要件は、もはや当てはまらない。しかしながら、その代わりに、NOの分解に対するNOの失活作用という新たな問題がある。
【0024】
Greenhouse Gas Control Technologies,Elsevier Science Ltd.1999,343−348頁において、F.Kapteijn et al.は、低い運転温度において活性なNO触媒としてコバルトのドープおよびロジウムのドープを行ったハイドロタルサイト構造物について記載している。F.Kapteijnのグループによる他の非常に詳細な刊行物は、Applied Catalysis B:Environmental 23(1999),59−72頁に見いだすことができる。ハイドロタルサイトの不利な点は、例えば欧州出願公開EP−A−1262224号に明記されている:酸素、水またはNOなどのガス構成成分が、触媒上方でのNOの転化に悪影響を及ぼす。したがって、現実の工業的排ガスでの使用は実質的に除外される。
【0025】
これまでに、特段の注目がゼオライトにも払われてきた。Fe、CuまたはCoのような活性種を、カチオン交換または機械的混合により微孔質フレーム構造シリケート中に組み込むことができ、これらは、活性成分/多孔質構造物の組合せで、NOを分解するための非常に活性な触媒をもたらす。したがって、例えば米国特許出願公開US−A−2003/0143142号には、第3触媒として用いられるFe含有ゼオライトが記載されており、これはNOによる失活を示さず、むしろ触媒上方でのNOの分解は少量のNOの存在によりさらに促進される。ゼオライトの不利な点は、排ガス中に存在する水蒸気に敏感である点と、熱安定性が限定的であり、これにより、NOの分解に要する最低温度を考慮に入れると、これらのゼオライト触媒を用いることができる温度ウィンドウが限定的になる点である。
【0026】
担持貴金属触媒はさらに第3触媒として適しているが、貴金属を含まないセラミック触媒の何倍も高価である。
【0027】
ドイツ特許出願公開DE−A−10006103号には、MgOと酸化コバルト(好ましくはCo)またはこれらの酸化物の前駆体を乾式プレスとこれに続く熱処理を用いて機械的に混合することにより生産される、第3触媒について記載されている。350〜550℃の範囲の使用温度では、2つの酸化物間の固相反応の問題は起こらない。しかしながら、これらの触媒は、排ガス中のNOの影響を受けやすいことが見いだされている。この場合に起こるNOの分解に関する失活は可逆的であるが、この逆転は、工業的使用条件では実施することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】国際公開00/13789号
【特許文献2】米国特許公報US−A−5705136号
【特許文献3】特開昭48−089185号JP−A−48/089185号
【特許文献4】国際公開02/02230号
【特許文献5】欧州出願公開EP−A−1262224号
【特許文献6】米国特許出願公開US−A−2003/0143142号
【特許文献7】ドイツ特許出願公開DE−A−10006103号
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry,Vol.A17,VCH Weinheim(1991)
【非特許文献2】N.Gunasekaran et al.,Catal.Lett.(1995),34(3,4),373−382頁
【非特許文献3】Greenhouse Gas Control Technologies,Elsevier Science Ltd.1999,343−348頁
【非特許文献4】Applied Catalysis B:Environmental 23(1999),59−72頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、上記の不利な点および問題点の大部分を克服する触媒を提供することである。本発明に従った触媒は、非常に柔軟な生産プロセスにより生産することができるべきでもあり、これにより、NOの問題が生じる工業プラントで該触媒を広く(高い温度範囲と低い温度範囲の両方において)用いることが可能になる。安価な担体材料の使用は、経済的観点からも触媒を魅力的にするはずである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、気相においてNOを窒素と酸素に分解するための触媒であって、多結晶質またはガラス質の無機材料から構成される多孔質担体、これに施用される酸化セリウム機能層、およびこれに施用される酸化物コバルト含有材料の層を含む触媒を提供する。
【0032】
したがって、本発明の触媒は、担体およびこれに施用される複数の特定の機能層を含む。
【発明を実施するための形態】
【0033】
担体はおもに、無機酸化物、無機混合酸化物、または無機酸化物の混合物で構成されている担体である。これらの担体は焼結プロセスにより生産することができ、したがって多孔質で多結晶質である(以下“セラミック”または“セラミックス”ともよぶ)。担体は、多孔質ガラス(“ガラスフリット”)で構成されていることもできる。
【0034】
担体は、原理上、触媒の各運転温度において不活性である任意の多孔質無機材料か、不活性多孔質無機材料の混合物で構成されていることができる。価格の理由および触媒重量の理由から、酸化セリウムは担体中に存在しないか、ほんの少量、例えば担体の重量に基づき最大10重量%の量で存在すべきである。
【0035】
セラミック担体が好ましい。
【0036】
適した無機担体材料の例は、元素の周期表の第2主族または第4遷移族の酸化物のほか、AlまたはSiO、およびこれらの酸化物の2種以上の組合せである。
【0037】
好ましい担体材料は酸化マグネシウムMgOである。これは、純粋な酸化マグネシウムであるか、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも80質量%の酸化マグネシウムを含む混合酸化物であることができる。好ましく用いられるセラミック混合酸化物は、自然汚染として、または機械的特性を改善するための意図的な添加として、MgOだけでなく、最大50質量%、好ましくは最大20質量%の他の無機酸化物、とりわけSiO、Al、CaOおよび/またはFeを含むことができる。
【0038】
酸化マグネシウムは安価で容易に入手可能な担体材料であるので、とりわけ好ましい;これはまた、少なくとも高い温度範囲において、亜酸化窒素を分解するための固有の触媒活性をいくらか有する。
【0039】
担体材料またはそれから生産される触媒は、任意のサイズおよび形状寸法の付形体の形にあり、形状寸法は、大きな表面積対体積比を有し、ガスが吹き抜けるときの圧力低下ができるだけ小さいものであることが好ましい。
【0040】
担体材料および触媒の付形体であって、表面積対体積比が0.5〜10mm−1、とりわけ1〜5mm−1である付形体が好ましい。
【0041】
典型的な形状寸法は、触媒反応において公知のあらゆる形状寸法、例えば、円筒、中空円筒、多孔円筒、リング、破砕材料、トライローブ(trilobe)またはハニカム構造物である。
【0042】
担体材料の付形体は、セラミックス加工で公知の付形法、例えば、乾式プレス、造粒または押出により生産することができる。
【0043】
十分に熱処理した担体材料、とりわけ酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムと他の金属酸化物のブレンドか、好ましくはこの酸化物またはこれらの酸化物の前駆体のいずれかを使用する。マグネシウム塩の場合、例えば炭酸マグネシウムを用いることが可能であり、これは、後で行う熱処理中に初めて酸化物の形に転化する。MgCOはMgOとは対照的に水和を受ける傾向がないので、MgCOの使用は、押出用の塑性物質の調製においてとりわけ有利である。
【0044】
セラミック生産プロセスのほか、ガラス微粉を用い、それらを加工して多孔質付形体を形成することも可能である。ガラスフリットの生産プロセスは当分野で公知である。
【0045】
付形を実施するために、水のほかに有機および/または無機添加物、および乾式加工の場合は場合によっては少量のグラファイトも、固体に加えることができる。
【0046】
付形および場合によってはこれに続く乾燥の後、熱処理を行う。
【0047】
多孔質担体、例えばMg含有担体を形成するための未処理体の熱処理は、未処理体の無機構成成分が焼結して多孔質担体を形成する温度で行われる。典型的な焼結温度は900℃を超える;しかし、より低い焼結温度も可能である。炭酸マグネシウムのようなマグネシウム塩を用いる場合、酸化マグネシウムへの完全な転化は900℃より高温で確実になる。
【0048】
1000〜1300℃の範囲の焼結温度が好ましい。焼結温度が高いほど、無機担体材料、とりわけMgOの水和を受ける傾向は低下し、付形体の機械的強度は向上する。他方、開孔率と、したがって多孔質担体の内部表面積は低下する。
【0049】
担体の多孔性は触媒の有効性に重要である。多孔性は、妨害されない物質移動、すなわち、出発材料および生成物の活性表面への輸送または活性表面からの輸送に重要であり、これは、高い運転温度におけるNOの分解に重要な基準、すなわち律速段階である。したがって、担体材料の選択は、完成触媒の活性および選択性に重大な影響を有することができる。担体と酸化セリウム機能層を別個に生産すると、多孔性、形態学およびテクスチャーなどの所望の性質を最適に設定することが可能になる。これは、担体材料と酸化セリウム機能層を分離しなければ不可能である。
【0050】
多孔質担体の開孔率は、セラミック担体の全体積に基づき、典型的には20〜60%の範囲、好ましくは40〜50%の範囲にある。当業者なら、開孔率が、付形体の少なくとも1つの表面に接続している細孔の付形体中での割合であることがわかるであろう。
【0051】
多孔質担体の開孔の全体積は、好ましくは100〜600mm/gの範囲、とりわけ好ましくは200〜350mm/gの範囲にある。
【0052】
多孔質担体の平均細孔サイズは、典型的には30〜300nmである(水銀圧入法により決定)。細孔径分布は二峰性であることが好ましく、小さい方の細孔径は好ましくは20〜50nmの範囲にあり、大きい方の細孔径は好ましくは200〜400nmの範囲にある。
【0053】
多孔質担体の比表面積は、好ましくは1〜200m/gの範囲、とりわけ好ましくは10〜50m/gの範囲にある(BET法により測定)。
【0054】
多孔質担体の生産における個々の場合での焼結温度の選択は、予定使用温度および触媒が個別の場合に満たさなければならない他の要件に従って行う。
【0055】
さらに、本発明の触媒のセラミック担体は、表面が、最初に少なくとも1つの酸化セリウム機能層で、つぎに酸化物コバルトを含む少なくとも1つのさらなる機能層で、コーティングされている。
【0056】
多孔質担体−酸化セリウム機能層−酸化物コバルトを含む機能層という少なくとも3段階の構造は、触媒の望ましい性質を確実にするために必要な前提条件である。本発明の触媒の多層構造は、例えば電子顕微鏡により立証することができる。
【0057】
酸化セリウムの中間層はいくつかの機能を同時に果たす。それは、まず第一に、高い温度範囲で用いられる場合、多孔質担体、とりわけMgO担体とCo含有活性成分との、触媒の失活を引き起こすであろう固相反応を妨げるための“拡散バリヤー”として働く。これに加えて、酸化セリウムはそれ自体がNOの分解に関し少しではあるが固有の触媒活性を有し、高い温度範囲においてNOの分解に対するNO分解の選択性を改善することもできる。低い温度範囲では(第3触媒として用いる場合)、酸化セリウム層は、排ガス中のNOに対する触媒の感受性を低減する。
【0058】
酸化セリウム機能層は、純粋な酸化セリウム、とりわけCeOであることができ、または酸化セリウムを主成分として含有する混合酸化物であることができる。典型的な混合酸化物では、セリウムイオンの最大50mol%、好ましくは最大20mol%が、他の金属イオン、例えば、周期表の第2主族および/またはランタニドのイオン、とりわけSr、Ca、Y、Sc、Sm、Laおよび/またはGdのイオンにより置き換えられている。
【0059】
酸化セリウム機能層は、好ましくは含浸により施用することができる。
【0060】
このために、焼結した多孔質担体を、セリウム塩またはセリウム塩と他の金属塩との混合物の水溶液、とりわけ好ましくは硝酸Ce溶液に浸漬することができる。
【0061】
担体による溶液の取り込みの改善は、担体の多孔性を活かして、減圧の施用により達成することができる。
【0062】
含浸溶液の濃度および体積は、酸化セリウム機能層を得るために施用する材料の量に応じて随意選択することができる。
【0063】
含浸時間は、好ましくは15〜30分間であることができる。より長いまたはより短い含浸時間も可能である。
【0064】
含浸後、ここまでに酸化セリウム機能層を形成するための材料でコーティングされているか該材料が浸透しているセラミック担体を、単に乾燥するか、さもなければ焼結する。
【0065】
酸化セリウム機能層を形成するための材料でのこの含浸は、必要な場合、何回か繰り返すことができる。酸化セリウム機能層を形成するための材料で既にコーティングされている担体を、同じ手順に何回か、例えばさらに1〜3回付すことができる。これにより、酸化セリウム機能層の生じるであろう層厚が増大する。
【0066】
触媒反応に対する酸化セリウムの好ましい作用は増大するが、生産費用および触媒の価格は上昇する。それでもなお、これは、圧縮された酸化セリウム担体を用いる場合に比べ、軽くてはるかに安価な焼結安定性のNO触媒をもたらす機会を提供する。
【0067】
酸化セリウム機能層の生産後、コーティングしたセラミック担体を、酸化コバルトを含む触媒活性相でコーティングする。
【0068】
酸化コバルトを含む相は、酸化物コバルトを含む任意の活性材料であることができる。
【0069】
酸化物コバルト化合物、または複数の酸化物コバルト化合物が存在する場合これらの少なくとも1種は、ペロブスカイトまたはスピネル構造を有することが好ましい。本発明に従って用いることができるコバルト化合物の例は、Coまたはコバルト含有混合酸化物、例えばLaCoOである。CuCo3−xまたはLa1−xSrCoO[式中、xは0.01〜0.5の範囲にある実数である]のように適切にドープされた化合物の使用も、本発明に従って可能である。
【0070】
他の好ましい態様において、コバルトの少なくとも一部は、化学的に三価の状態で存在する。この態様において、本発明の触媒は、少なくとも30重量%、好ましくは50重量%を超えるCo原子が化学的に三価の状態で存在する酸化物コバルト化合物を含有する。コバルトの酸化状態は光電子分光法(XPS)により決定することができる。
【0071】
実質的な触媒成分、すなわち、多孔質担体材料、酸化セリウム化合物、および酸化物コバルトを含む化合物は、できるだけ高い触媒活性を達成するために、できるだけ大きな比表面積を有するべきである。完成触媒の比表面積は多孔質担体の比表面積の範囲にある。完成触媒の比表面積は、5〜150m/gの範囲にあることが好ましい。
【0072】
酸化物コバルトを含む層でのコーティングも、含浸により行うことが好ましい。
【0073】
このために、セリウム塩を含浸させ、少なくとも乾燥し、好ましくは焼成した多孔質担体を、Co塩、好ましくは硝酸Coまたは酢酸Coの水溶液中か、望ましい混合酸化物のカチオンを化学量論的比率で含有する混合溶液中に、浸漬することができる。
【0074】
担体による溶液の取り込みの改善は、この場合も減圧の施用により達成することができる。
【0075】
活性成分のための含浸溶液の濃度および体積は、施用する活性成分の量に応じて自由に選択することができる。
【0076】
含浸時間は、好ましくは15〜30分間であることができる。より長いまたはより短い含浸時間も可能である。
【0077】
活性成分を得るための含浸溶液でのこの含浸は、必要な場合、何回か繰り返すことができる。
【0078】
コバルトで既にコーティングされている担体を、同じ手順に何回か、例えばさらに1〜3回付すことができる。これにより、酸化コバルトを含む活性層の生じるであろう層厚が増大する。
【0079】
Ce塩またはCe塩混合物およびCo塩またはCo塩混合物の施用層を、各含浸の後に焼成することができる。
【0080】
しかしながら、比較的低温、例えば約200℃の温度での乾燥も、施用層を固定化するのに十分である。
【0081】
最後の含浸を終えた後、施用層の最終的焼成を実施することができる。
【0082】
ここにおいて、温度は、おもに触媒の望ましい使用分野により決定する。
【0083】
第2触媒の場合、焼成温度は、後の運転温度より高温、すなわち一般に900℃より高温でなければならない。
【0084】
他方、第3触媒の層は、はるかに低い温度、例えば600℃で焼成することができる。
【0085】
本発明の触媒は、比較的小さな嵩密度を有する。これは典型的には最大2g/cm、好ましくは0.5〜2g/cm、とりわけ好ましくは0.75〜1.5g/cmである。嵩密度は、既知の容積を有するシリンダーに触媒を導入し、導入した触媒の質量を測定することにより決定する。
【0086】
触媒の全質量に基づく多孔質担体の割合は、好ましくは少なくとも85重量%、とりわけ好ましくは90〜95重量%である。
【0087】
触媒の全質量に基づく酸化セリウム機能層の割合は、好ましくは2〜14重量%、とりわけ好ましくは5〜10重量%である。
【0088】
触媒の全質量に基づく、酸化物コバルトを含む機能層の割合は、好ましくは0.1〜5重量%、とりわけ好ましくは1〜5重量%である。
【0089】
本発明はさらに、上記触媒の生産方法であって、処置:
i)多結晶質またはガラス質の無機材料から構成される多孔質担体を、それ自体が公知の方法で未処理体を焼結することにより生産し、
ii)段階i)で得られた多孔質担体に、溶解したセリウム塩を含有する溶液を1回または複数回含浸させ、
iii)段階ii)で得られた含浸担体を乾燥および/または焼成して、酸化セリウム機能層または酸化セリウム機能層の前駆体を生産し、
iv)段階iii)で得られたコーティングされた担体に、溶解したコバルト塩を含有する溶液を1回または複数回含浸させ、そして
v)段階iv)で得られた含浸担体を乾燥および/または焼成して、酸化物コバルトを含む機能層または酸化物コバルトを含む機能層の前駆体を生産する、
を含む方法を提供する。
【0090】
本発明の触媒の組成および本発明の生産プロセスの変動の幅により、この材料系を、NOが形成するプラントまたはプロセスにおいてNOを分解するための触媒として柔軟に使用することが可能になる。これらは、工業生産用プラント、廃棄物焼却プラント、水処理場、ガスタービンまたは自動車であることができる。工業生産用プラントの場合、これらは、とりわけ、本発明の触媒を高い温度範囲では第2触媒として、低い温度範囲では第3触媒として、両方の形で用いることができる、硝酸またはカプロラクタムを調製するためのプラントであることができ;あるいは、該プラントは、多塩基性カルボン酸、とりわけ多塩基性脂肪族カルボン酸、特にとりわけ好ましくはアジピン酸を調製するためのプラントであることができ、ここにおいて、これらの酸の前駆体は硝酸により酸化される。
【0091】
Oの分解に関する触媒活性、したがって触媒の必要な運転温度または該プロセスで予め決定される運転温度は、特定の多孔性(=内部表面積)をもたらす担体材料の熱的前処理により、その形状寸法(=外部表面積)により、そして、酸化セリウム機能層および/または酸化コバルト機能層の厚さの変動およびこれらの層の焼成温度の変動により、調整することができる。
【0092】
本発明の触媒の長期安定性を得るためのもっとも重要な前提条件の一つは、酸化セリウムと酸化コバルトの2つの機能層を、同時に(例えば混合Ce−Co溶液での含浸により)ではなく、連続して施用するということである。
【0093】
そのような同時含浸の場合、ZrOに基づく触媒に関し特開昭48−089185号JP−A−48/089185号に記載されているように、酸化セリウムは拡散バリヤーとして働くことができず、コバルトイオンは、比較的高い温度においてセラミック担体材料中、例えばMgO格子中に組み込まれ、触媒の失活を引き起こすであろう。酸化セリウム機能層は、酸化コバルトを含む層を施用する前に、例えば約200℃での乾燥により、および/または例えば500〜1000℃での焼成により、セラミック担体上に固定化しなければならない。
【0094】
本発明の触媒は、亜酸化窒素の分解を必要とするすべてのプロセスに用いることができる。
【0095】
本発明の触媒は、亜酸化窒素が形成する工業プラント、廃棄物焼却プラント、水処理場、ガスタービンまたは自動車、とりわけ好ましくは、カプロラクタムの調製のためのプラントおよびとりわけ硝酸の調製のためのプラントにおいて、用いることが好ましい。本発明の触媒は、硝酸のプラントまたはカプロラクタムの調製のためのプラントにおいて第2触媒または第3触媒として用いることが、特にとりわけ好ましい。
【0096】
硝酸のプラントまたはカプロラクタムのプラントにおいて第3触媒として用いる場合、本発明の触媒は、典型的には300〜700℃、好ましくは400〜700℃、とりわけ450〜650℃の温度範囲で用いられる。第3触媒は、好ましくは吸収塔と排ガスタービンの間、とりわけ好ましくは排ガスタービンのすぐ上流に位置決めされる。第3触媒として使用する他の好ましい態様では、本発明の触媒を、先行する工程の後に用いてNOの含量を低減する;ここにおいて、下流工程に入るNOの濃度は、200ppm未満、好ましくは100ppm未満、特にとりわけ好ましくは50ppm未満である。本発明の触媒を第3触媒として用いる場合、好ましくは3〜15barの圧力(絶対)、とりわけ好ましくは4〜12barの圧力(絶対)で用いる。第3触媒として用いる場合、本発明の触媒は、好ましくは2000〜200000h−1の空間速度、とりわけ好ましくは5000〜100000h−1の空間速度、特にとりわけ好ましくは10000〜50000h−1の空間速度で用いる。第3触媒として用いる場合、本発明の触媒は、ハニカムの形で用いるか、ガスが横方向に流れることができるように例えばラジアルバスケットの形で用いることが好ましい。
【0097】
硝酸のプラントまたはカプロラクタムのプラントにおいて第2触媒として用いる場合、本発明の触媒は、典型的には800〜1000℃、好ましくは850〜950℃の温度範囲で用いられる。この場合、第2触媒は、アンモニアの燃焼のための触媒の下流で吸収塔の上流、とりわけ好ましくはアンモニアの燃焼のための触媒と第1の熱交換器の間に位置決めされる。本発明の触媒を第2触媒として用いる場合、好ましくは10000〜300000h−1の空間速度、とりわけ好ましくは20000〜200000h−1の空間速度、特にとりわけ好ましくは30000〜100000h−1の空間速度で用いる。第2触媒として用いる場合、本発明の触媒はまた、圧力低下ができるだけ小さくなるように、例えば中空円筒の床の形かハニカムの形で用いることが好ましい。
【0098】
上記使用も本発明の対象である。
【0099】
以下の実施例は、本発明を制限することなく例示するものである。
【実施例】
【0100】
触媒の生産
実施例1:触媒I
マグネサイト(MgCO)と擬ベーマイト(AlO(OH))の混合物を可塑化し、固体押出物として押し出した。得られた押出物を、長さ6mmおよび直径4mmを有する固体円筒状に切断し、これらの未処理体を1200℃で2時間焼結した。これにより、0.95molのMgOと0.05molのAlの組成を有するセラミック担体が得られた。水銀圧入法により決定した細孔容積は350mm/gであった。水銀圧入法により決定した開孔の含有率は58%であった。
【0101】
これらのセラミック担体400gを0.5モルの硝酸セリウム水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を施用して30分間処理した。その後、該担体を120℃で2時間乾燥し、900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムを含浸させたセラミック担体が得られた。
【0102】
これら酸化セリウムを含浸させたセラミック担体400gを0.5モルの酢酸コバルト水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を30分間施用して処理した。その後、残留溶液を分離し、含浸付形体を120℃で2時間乾燥し、900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られ、その多孔性は水銀圧入法により以下のように特徴付けられた:
細孔容積:340mm/g
開孔の含有率:52%。
実施例2:触媒II
マグネサイト(MgCO)と擬ベーマイト(AlO(OH))の混合物を可塑化し、固体押出物として押し出した。得られた押出物を、長さ6mmおよび直径4mmを有する固体円筒状に切断し、これらの未処理体を1200℃で2時間焼結した。これにより、0.80molのMgOと0.20molのAlの組成を有するセラミック担体が得られた。水銀圧入法により決定した細孔容積は290mm/gであった。水銀圧入法により決定した開孔の含有率は49%であった。これに加えて、19.5m/gのBET表面積が決定された。
【0103】
これらのセラミック担体400gを0.5モルの硝酸セリウム水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を施用して30分間処理した。その後、該担体を120℃で2時間乾燥し、900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムを含浸させたセラミック担体が得られた。
【0104】
これら酸化セリウムを含浸させたセラミック担体400gを0.5モルの酢酸コバルト水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を30分間施用して処理した。その後、残留溶液を分離し、含浸付形体を120℃で2時間乾燥し、900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られ、その多孔性は水銀圧入法により以下のように特徴付けられた:
細孔容積:289mm/g
開孔の含有率:42%。
【0105】
これに加えて、19.6m/gのBET表面積が決定された。
実施例3:触媒III
酸化セリウムを含浸させたセラミック担体に酢酸コバルト水溶液を2回含浸させるという点を変更して、触媒IIの生産手順を繰り返した。このために、最初に酢酸コバルトを含浸させた後に得られた乾燥付形体を、0.5モルの酢酸コバルト溶液400mLと再び混ぜ合わせ、減圧を施用して30分間処理した。その後、該担体を120℃で2時間乾燥し、900℃で2時間にわたり強熱した。
【0106】
これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られ、その多孔性は水銀圧入法により以下のように特徴付けられた:
細孔容積:289mm/g
開孔の含有率:48%。
【0107】
これに加えて、19.6m/gのBET表面積が決定された。
実施例4:触媒IV
酸化セリウムを含浸させたセラミック担体400gを0.25モルの酢酸コバルト水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を施用して300分間処理するという点を変更して、触媒IIの生産手順を繰り返した。その後、残留溶液を分離し、含浸付形体を120℃で2時間乾燥し、900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られた。
実施例5:触媒V
マグネサイト(MgCO)と擬ベーマイト(AlO(OH))の混合物を可塑化し、固体押出物として押し出した。得られた押出物を、長さ6mmおよび直径4mmを有する固体円筒状に切断し、これらの未処理体を1200℃で2時間焼結した。これにより、0.8molのMgOと0.2molのAlの組成を有するセラミック担体が得られた。
【0108】
これらのセラミック担体400gを0.5モルの硝酸セリウム水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を施用して30分間処理した。その後、該担体を120℃で30分間乾燥した。
【0109】
この処理、すなわち硝酸セリウムでの含浸および120℃での乾燥を、さらに3回繰り返した。しかしながら、最後の含浸段階ではセラミック担体を120℃で1時間乾燥した。その後、含浸担体を900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムを含浸させたセラミック担体が得られた。
【0110】
これら酸化セリウムを含浸させたセラミック担体400gを0.5モルの酢酸コバルト水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を30分間施用して処理した。その後、残留溶液を分離し、含浸付形体を120℃で30分間乾燥した。
【0111】
この処理、すなわち酢酸コバルトでの含浸および120℃での乾燥を、さらに3回繰り返した。しかしながら、最後の含浸段階では担体を120℃で1時間乾燥した。その後、含浸担体を900℃で2時間にわたり強熱した。これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られ、その多孔性は水銀圧入法により以下のように特徴付けられた:
細孔容積:204mm/g
開孔の含有率:43%。
【0112】
これに加えて、14.2m/gのBET表面積が決定された。
実施例6:触媒VI
担体材料を触媒Vの場合のように生産した。その後、焼結ペレットを粉砕して、250μm以下の粒径を有する粉末を得た。
【0113】
このセラミック担体粉末400gを0.5モルの硝酸セリウム水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を施用して30分間処理した。その後、該粉末を120℃で2時間乾燥した。これにより、酸化セリウムを含浸させたセラミック担体粉末が得られた。
【0114】
この酸化セリウムを含浸させたセラミック担体粉末400gを0.5モルの酢酸コバルト水溶液400mLと混ぜ合わせ、減圧を施用して30分間処理した。その後、残留溶液を分離し、含浸粉末を120℃で2時間乾燥した。
【0115】
該粉末を加圧してペレットにし、600℃で2時間焼結した。得られた焼結体を微粉砕して、2.0〜2.5mmの範囲の直径を有する顆粒を得た。これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られ、その多孔性は水銀圧入法により以下のように特徴付けられた:
細孔容積:454mm/g
開孔の含有率:57%。
【0116】
これに加えて、40.3m/gのBET表面積が決定された。
実施例7:触媒VII
酸化セリウムを含浸させたセラミック担体粉末に1.0モルの酢酸コバルト水溶液400mLを含浸させるという点を変更して、触媒VIの生産手順を繰り返した。
【0117】
これにより、酸化セリウムおよび酸化コバルトを含浸させたセラミック担体が得られ、その多孔性は水銀圧入法により以下のように特徴付けられた:
細孔容積:321mm/g
開孔の含有率:42.5%。
【0118】
これに加えて、31.1m/gのBET表面積が決定された。
使用例
実施例A1〜A7
触媒の活性を、温度のプログラム制御が可能でオンライン分析を備えるフロースルー石英ガラス反応器で決定した。このために、各場合13.9gの試験触媒の床を細かいメッシュのコージエライトハニカム上に配置し、以下の組成を有する供給ガスを各場合10000h−1の空間速度で反応器に通した。温度を、初期値の50℃から最終温度の900℃まで5K/分の加熱速度で上昇させた。温度測定は触媒床で実施した。反応器の出口において、選択したガス構成成分の含有率をIR分光法により決定した。
【0119】
Oの90%または100%転化(IR分析器の感度に対応)が達成した温度を、以下の表に報告する。
【0120】
【表1】

【0121】
1)供給物の組成: N 84.66%
6.00%
O 0.20%
NO 9.0%
O 0.14%
2)供給物の組成: N 96.8%
2.50%
O 0.20%
O 0.50%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相においてNOを窒素と酸素に分解するための触媒であって、多結晶質またはガラス質の無機材料から構成される多孔質担体、これに施用される酸化セリウム機能層、およびこれに施用される酸化物コバルト含有材料の層を含む、前記触媒。
【請求項2】
多孔質担体がセラミック材料を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
セラミック担体が、酸化マグネシウムまたは少なくとも50質量%の酸化マグネシウムを含むセラミック混合酸化物を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
多孔質担体の開孔率が、多孔質担体の全体積に基づき20〜60%、好ましくは40〜50%の範囲にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
触媒が0.5〜10mm−1、とりわけ1〜5mm−1の表面積対体積比を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
酸化セリウム機能層が、酸化セリウムまたはセリウムイオンの最大50mol%が他の金属イオンで置き換えられている混合酸化物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
酸化物コバルトを含む材料の層が、酸化コバルトまたはコバルト含有混合酸化物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
酸化物コバルトを含有する少なくとも1つの化合物がペロブスカイトまたはスピネル構造を有する、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
酸化物コバルトを含む材料の層が、少なくとも30%、好ましくは50%を超えるCo原子が化学的に三価の状態で存在するコバルト化合物を含む、請求項7に記載の触媒。
【請求項10】
嵩密度が0.5〜2g/cm、好ましくは0.75〜1.5g/cmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
多孔質担体の割合が少なくとも85重量%であり、酸化セリウム機能層の割合が2〜14重量%であり、酸化物コバルトを含む材料の層の割合が0.1〜5重量%であり、これらの数値が触媒の全重量に基づいている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項12】
処置:
i)多結晶質またはガラス質の無機材料から構成される多孔質担体を、それ自体が公知の方法で未処理体を焼結することにより生産し、
ii)段階i)で得られた多孔質担体に、溶解したセリウム塩を含有する溶液を1回または複数回含浸させ、
iii)段階ii)で得られた含浸担体を乾燥および/または焼成して、酸化セリウム機能層または酸化セリウム機能層の前駆体を生産し、
iv)段階iii)で得られたコーティングされた担体に、溶解したコバルト塩を含有する溶液を1回または複数回含浸させ、そして
v)段階iv)で得られた含浸担体を乾燥および/または焼成して、酸化物コバルトを含む機能層または酸化物コバルトを含む機能層の前駆体を生産する、
を含む、請求項1に記載の触媒の生産方法。
【請求項13】
酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムと他の金属酸化物のブレンド、または好ましくはこの酸化物もしくはこれらの酸化物の前駆体を段階i)に用いる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炭酸マグネシウムを酸化マグネシウムの前駆体として用いる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
段階i)における未処理体の焼結を1000〜1300℃の範囲の温度で実施する、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
段階ii)におけるセリウム塩として硝酸Ceを用いる、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
段階iv)におけるコバルト塩として硝酸Coまたは酢酸Coを用いる、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ガス中、とりわけ排ガスまたはプロセスガス中の亜酸化窒素を分解するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の触媒の使用。
【請求項19】
請求項18に記載の使用であって、これを工業生産用プラント、水処理場、廃棄物焼却プラント、ガスタービンまたは自動車において実施する、前記使用。
【請求項20】
工業生産用プラントが、カプロラクタムを調製するためのプラント、硝酸を調製するためのプラント、または硝酸を用いる酸化により多塩基性カルボン酸を調製するためのプラントである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
触媒を、硝酸のプラントまたはカプロラクタムのプラントにおいて第2触媒として800〜1000℃、好ましくは850〜950℃の温度で用いる、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
触媒を、硝酸のプラントまたはカプロラクタムのプラントにおいて第3触媒として300〜700℃、好ましくは400〜700℃、とりわけ450〜650℃の温度で用いる、請求項18に記載の使用。

【公表番号】特表2010−535622(P2010−535622A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520435(P2010−520435)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005685
【国際公開番号】WO2009/021586
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(504378582)ウーデ・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】