説明

触媒の連続的な製造方法

本発明は、白金族の金属ならびに合金化金属として白金族または遷移金属の金属から選択される少なくとも1の第二の金属からなる合金を含有する触媒を連続的に製造する方法に関するものであり、この方法では、白金族の金属を含有する触媒を、それぞれ合金化金属を含有する少なくとも1の錯化合物と混合して合金前駆物質が得られ、かつ合金前駆物質を連続的に運転される炉中で加熱して合金を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族の金属ならびに白金族または遷移金属の金属から選択される第二の金属を含有する触媒を連続的に製造する方法に関する。
【0002】
白金族の金属ならびに第二の金属からなる合金を含有する触媒は、たとえば燃料電池において使用される。該触媒はこの場合、一般に、触媒活性層の形でイオン導電性の膜の上に施与される。通常、このような触媒層は、膜の両側に施与される。触媒層を備えた膜は、2つの多孔質気体拡散層の間に配置される。気体拡散層により、それぞれの反応ガスは、膜の近くまで案内される。同時にこの気体拡散層は、反応体によって吸収された、もしくは放出された電子の供給および誘導に役立つ。膜と気体拡散層との間に存在する触媒層中で、本来の還元反応または酸化反応が行われる。該膜は再び燃料電池中でのイオンによる電荷移動を保証する。この膜のもう1つの課題は、両方の電極間での気密なバリアを形成することである。
【0003】
該触媒はたとえば燃料電池中での陰極触媒として使用するために適している。その際、いわゆる低温燃料電池、たとえばプロトン交換膜形燃料電池(PEMFC)中での適用も、高温燃料電池、たとえばリン酸形燃料電池(PAFC)中での適用も可能である。ダイレクトメタノール燃料電池(MDFC)中での使用の場合、陰極触媒は、酸素の還元のための高い電流密度と並んで、メタノールに対する高い抵抗性を有していなくてはならない。
【0004】
温度処理されるポルフィリン遷移金属錯体、たとえばJ.Applied Electrochemistry(1998年)、第673〜682頁から公知のようなもの、または遷移金属硫化物、たとえばReRuSまたはMoRuS系、たとえばJ.Electrochem.Soc.、145(10)、1998年、第3463〜3471頁から公知のものは、たとえば酸素の還元のための高い電流密度を有しており、かつメタノールに対する良好な抵抗性を有している。しかしこれらの触媒は、Ptベースの触媒の活性には至らず、酸性の環境で長期間にわたって燃料電池に十分な電流密度を保証するために十分な安定性を有していない。
【0005】
US−A2004/0161641から、遷移金属が合金化されているPt触媒は、良好なメタノール抵抗性を有し、かつ酸素の還元のために十分に高い電流密度を保証することが知られている。従ってUS−A2004/0161641からはたとえば活性なメタノール抵抗性の陰極触媒は、低い水素結合エネルギーと同時に、できる限り高い酸素結合エネルギーを有してるべきであることが知られている。高い酸素結合エネルギーは、酸素を還元するための高い電流密度を保証し、その一方で、低い水素結合エネルギーは、メタノールから一酸化炭素への電極酸化脱水素を緩和し、ひいてはメタノール抵抗性を高める。これらの特性は、US−A2004/0161641によれば、元素のFe、Co、Ni、Rh、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、ZnおよびCdからなる合金が有している。しかし、メタノール抵抗性の陰極触媒として適切な合金組成の具体例は記載されていない。
【0006】
メタノール抵抗性の触媒を使用する代わりに、たとえばPlatinum Metals Rev.2002年、46(4)には、適切な膜の選択によってメタノール透過を低減する可能性が挙げられている。このためにたとえば比較的厚みのあるナフィオン膜を使用することができる。しかし低いメタノール透過は、同時に膜の抵抗率を高めることにつながり、結果として燃料電池の性能損失につながる。
【0007】
白金およびルテニウムを含有する触媒の製造は、たとえばA.J.Dickinson等の"Preparation of a Pt−Ru/C Catalyst from carbonyl complexes for fuel cell applications"、Elektrochemica Acta 47(2002年)、第3733〜3739頁から公知である。このためには、[Ru3(CO)12]および[Pt(CO)2xおよび活性炭をo−キシレンと混合する。この混合物を143℃で24時間、一定した機械的な撹拌下で還流下に加熱する。引き続き該混合物を冷却し、o−キシレンを蒸留によって除去する。還流までの加熱は、空気雰囲気下で実施する。記載の方法は、ルテニウム含有率の高い触媒につながる。
【0008】
ダイレクトメタノール燃料電池中で使用するためのPt−Ru触媒を製造するための製造技術についての概要は、H.Liu等の"A review of anode catalysis in the direct methanol fuel cell"、Journal of Power Sources、155(2006年)、第95〜110頁に記載されている。適切な製造方法として、一方では、金属含有前駆物質による炭素担体の含浸、担体上へのコロイド状金属合金粒子の施与、およびマイクロエマルション中での高分散性金属粒子の合成が記載されている。担体上へのコロイド状金属合金粒子の施与およびマイクロエマルション中での高分散性金属粒子の合成は、極めてコストの高い出発材料、たとえば界面活性剤の使用を必要とする。この理由から、触媒を製造するためには炭素担体の含浸が最も頻繁に使用される。しかし含浸の欠点は一般に、ナノ粒子の大きさおよびその分布を制御することが困難なことである。さらに、含浸法では高沸点溶剤がしばしば使用されるが、これは特に工業的な関連性のある触媒量を製造する際には問題である。
【0009】
別の公知法では、まず第一工程で白金触媒を製造する。該触媒を濾過、洗浄および乾燥後に改めて液状の反応媒体、一般には水中に分散させる。該分散液に合金化すべき元素を適切な可溶性の塩の形で添加し、かつ適切な沈殿剤、有利には炭酸ナトリウムを用いて沈殿させる。得られた分散液を濾過し、分離した固体を洗浄し、乾燥させ、かつ引き続き還元雰囲気下で高温処理に供する。しかしこの方法の欠点は、すでに一度濾過し、洗浄し、かつ乾燥させた生成物を、もう1回、この一連の処理工程に供さなくてはならないことである。
【0010】
従って本発明の課題は、従来技術から公知の方法の欠点を有していない触媒の製造方法を提供することである。特に本発明の課題は、ナノ粒子の大きさおよび分布が再現可能であって、連続的に触媒を製造することができる方法を提供することである。
【0011】
前記課題は、白金族の金属ならびに合金化金属としての白金族または遷移金属の金属から選択される少なくとも1の第二の金属からなる合金を含有する触媒を連続的に製造する方法であって、以下の工程:
(a)白金族の金属を含有する触媒を、それぞれ合金化金属を含有する少なくとも1の熱分解可能な化合物と混合して合金前駆物質を得る工程、
(b)合金前駆物質を連続的に運転される炉中で加熱して合金を製造する工程
を有する、触媒を連続的に製造する方法によって解決される。
【0012】
本発明により製造される触媒は、酸に対して安定しており、燃料電池中での陰極触媒で所望されるような、酸素の還元のための高い電流密度を有している。
【0013】
白金族の金属を含有している触媒を、工程(a)で合金化金属を含有する少なくとも1の錯化合物と混合して、有利には乾燥した、もしくは湿った粉末が得られる。これにより、すでに洗浄され、かつ乾燥された、白金族の金属を含有する触媒を、改めて濾過し、洗浄し、かつ乾燥させる必要が生じることが回避される。合金を得るためには、単に引き続き工程(b)で加熱を行うのみである。
【0014】
合金を形成するために使用される、連続的に運転される炉として、有利には回転管式炉またはベルト式か焼炉が使用される。特に回転管式炉を使用する場合には、合金を製造する際に錯化合物の分解によって生じる気体状の化合物の量を除去することができ、これにより比較的大量の触媒を製造することも可能になる。
【0015】
白金族の金属を含有する触媒は、たとえば金属粉末として存在する。
【0016】
十分に良好な触媒活性を達成するためには、触媒が大きな比表面積を有している必要がある。これは有利には、触媒が担体を有しており、その際、白金族の金属と第二の金属とからなる合金が、担体上に施与されている。担体が多孔質である場合には、大きな比表面積を達成するために有利である。
【0017】
触媒が担体上に施与されている場合には、一般に触媒材料からの個々の粒子が担体表面上に含有されている。通常触媒は担体表面上で連続した層としては存在しない。
【0018】
担体を有する触媒を製造するためには、すでに白金族の金属を含有している触媒が担体も有している場合に有利である。
【0019】
担体としてここでは一般に、触媒不活性材料が利用され、この上に触媒活性材料が施与されているか、または触媒不活性材料が触媒活性材料を含有している。担体として使用することができる適切な触媒不活性材料は、たとえば炭素またはセラミックである。別の適切な担体材料は、たとえば酸化スズ、有利には半導体の酸化スズ、場合により炭素で被覆されているγ−酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたは二酸化ケイ素であり、その際、最後に挙げたものは有利には高分散性で存在しており、その際、一次粒子は50〜200nmの直径を有している。ブロンズとして、つまり化学量論的に不足の酸化物として存在しうる酸化タングステンおよび酸化モリブデンも適切である。さらに、元素の周期律表の第IV〜VII副族の金属、有利にはタングステンおよびモリブデンの炭化物および窒化物が適切である。
【0020】
しかし炭素は担体材料として特に有利である。担体材料としての炭素の1つの利点は、炭素が導電性であることである。触媒が燃料電池中の電極触媒として、たとえば燃料電池の陰極として使用される場合には、燃料電池の機能を保証するために触媒は導電性である必要がある。担体として使用される炭素はたとえば活性炭、カーボンブラック、グラファイトとして、またはナノ構造化された炭素として存在していてもよい。カーボンブラックとしてたとえばVulcan XC72またはKetjen black EC300が適切である。炭素がナノ構造化された炭素として存在している場合には、有利にはカーボンナノチューブを使用する。触媒を製造するために白金族の金属を担体材料と結合させる。
【0021】
白金族の金属を含有する触媒が、さらに担体を有している場合には、通常、まず白金族の金属を担体上に析出させる。これは一般に溶液中で行われる。このためにたとえば金属化合物が溶剤中に溶解していてもよい。この場合、該金属は共有結合していても、イオン結合していても、または錯化されて結合していてもよい。さらに、金属は、還元により、前駆物質として、または相応する水酸化物をアルカリ沈殿させることにより析出されることも可能である。白金族の金属を析出させるための別の可能性は、金属を含有する溶液による含浸(Incipient Wetness)、化学蒸着法(CVD)または物理蒸着法(PVD)、ならびに当業者に公知のその他の全ての金属析出法である。有利にはまず白金族の金属の塩を沈殿させる。濾過後に、乾燥および白金族の金属を含有する触媒を製造するための温度処理を行う。
【0022】
このような白金族の金属を含有する担持触媒または非担持触媒の製造は公知であり、かつ相応する触媒は市販のものを引き合いに出すことができる。
【0023】
白金族の金属として、本発明によれば、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀および金が挙げられる。しかし、本発明の有利な実施態様では、白金族の金属は、白金またはパラジウム、特に有利には白金である。
【0024】
工程(a)で使用される、白金族の金属を有する触媒が担持触媒でない場合には、白金族の金属は、有利には1〜200μmの範囲の粒径を有する粉末として存在する。この場合、白金族の金属は、2〜20nmの範囲の一次粒径を有している。しかし白金族の金属の粉末は、さらに別の触媒活性成分を含有していてもよい。これらはたとえば離型剤として役立つものである。このためにたとえば触媒担体として使用することができる全ての材料が適切である。
【0025】
熱分解可能な化合物、有利には錯化合物、特に有機金属錯化合物中に含有されており、白金族の金属もしくは遷移金属から選択される少なくとも1の合金化金属は、有利にはルテニウム、コバルト、ニッケルおよびパラジウムからなる群から選択される。
【0026】
有利には少なくとも1の合金化金属は、有機金属錯化合物として存在している。有機金属錯化合物を形成するために有利なリガンドは、オレフィン、たとえばジメチルオクタジエン、芳香族化合物、有利にはピリジン、2,4−ペンタジオンである。さらに、少なくとも1の合金化金属が混合されたシクロペンタジエニル−カルボニル錯体の形で、あるいは純粋な、もしくは混合されたカルボニル錯体、ホスファン錯体、シアノ錯体、またはイソシアノ錯体として存在していることも有利である。
【0027】
少なくとも1の合金化金属が、リガンドとしてのアセチルアセトネートまたは2,4−ペンタジオンとの有機金属錯化合物として存在している場合が特に有利である。この場合、少なくとも1の合金化金属は、有利にはイオン性で存在する。
【0028】
白金族の金属または遷移金属から選択されている少なくとも1の合金化金属を、白金族の金属を含有する触媒と混合するためには、少なくとも1の合金化金属を含有する熱分解可能な化合物が乾燥した状態で存在している場合に有利である。しかしあるいは熱分解可能な化合物が、溶剤中に溶解されていることも可能である。この場合、溶剤はエタノール、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンおよびエーテル化合物からなる群から選択されている。有利なエーテル化合物は、開鎖状のエーテル、たとえばジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、または2−メトキシプロパン、ならびに環式エーテル、たとえばテトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンである。
【0029】
少なくとも1の合金化金属を含有する熱分解可能な化合物が溶剤中に溶解している場合には、白金族の金属を含有している触媒と、少なくとも1の有機金属化合物もしくは少なくとも1の金属錯体からなる混合物を、工程(b)での熱処理前に乾燥させる。この場合、乾燥は、周囲温度で、または高めた温度で行うことができる。乾燥を高めた温度で行う場合には、温度は有利には溶剤の沸点よりも高い。乾燥時間は、白金族の金属を含有する触媒および少なくとも1の錯化合物からなる混合物中の溶剤の割合が乾燥後に5質量%未満、有利には2質量%未満となるように選択する。
【0030】
白金族の金属を含有する触媒と、合金化金属を含有する少なくとも1の錯化合物との混合は、当業者に公知の任意の固体混合法で行う。適切な固体混合機は、通常、混合すべき材料がその中で移動する容器を有している。適切な固体混合機はたとえばパドル型ミキサー、スクリューミキサー、ジーロミキサーまたは空気式ミキサーである。
【0031】
熱分解可能な化合物が溶剤中に溶解している場合には、有利には白金族の金属を含有する触媒と少なくとも1の溶解した錯化合物との混合物を、当業者に公知の、慣用の分散法で製造する。このためにたとえば迅速に回転するナイフもしくはブレードがその中に備えられた容器を使用する。このような装置は、たとえばUltra−Turrax(登録商標)である。
【0032】
しかし、白金族の金属を含有する触媒が、なお流動性である場合には特に有利である。これは一般に、触媒が水50質量%までの残留湿分を有する場合である。触媒を完全に乾燥させるべきではない場合には、白金族の金属を含有する触媒の残留湿分は、有利には水20〜30質量%の範囲である。低い水含有率によって、白金族の金属を含有する触媒と、合金化金属を含有する少なくとも1の錯化合物との混合物は、流動性を維持する。これは特に回転管式炉を連続的に運転される炉として使用する場合に、この運転のための本質的な前提条件である。白金族の金属を含有する触媒の残留湿分は、たとえば製造の際の空気乾燥によって得られる。しかし当然のことながら、完全に乾燥させた触媒を使用することもできる。
【0033】
白金族の金属と、白金族の金属または遷移金属から選択される少なくとも1の合金化金属とからなる合金を製造するためには、白金族の金属を含有する触媒を、合金化金属を含有する少なくとも1の熱分解可能な化合物と混合することにより工程(a)で製造された粉末を加熱する。このために、工程(a)において得られた混合物を、連続的に運転される炉中、90〜900℃の範囲、有利には350〜900℃の範囲、さらに有利には400〜850℃の範囲、および特に400〜650℃の範囲の温度に加熱する。この加熱により少なくとも1の錯化合物は分解され、その中に結合されていた金属が放出される。該金属は、白金族の金属と結合する。それぞれの金属結晶が、不規則に隣り合って存在する合金が生じる。この場合、個々の金属結晶は一般に2〜7nmの範囲の大きさである。
【0034】
有利な実施態様では、この加熱は、2つの温度段階で行われ、その際、第一の温度段階の温度は、第二の温度段階の温度よりも低い。2よりも多い温度段階で加熱を行うことも可能である。この場合、有利には後続する温度段階の温度はそのつど、先行する温度段階の温度よりも高い。しかし有利には2つの温度段階で加熱を行う。
【0035】
工程(b)で合金前駆物質の加熱を2つの温度段階で行う場合、第一の温度段階の温度が300〜500℃の範囲、有利には350〜480℃の範囲、および特に370〜460℃の範囲の温度であり、かつ第二の温度段階の温度が、500〜700℃の範囲、さらに有利には550〜680℃の範囲、および特に570〜660℃の範囲であると有利である。この場合、第二の温度段階の温度は、第一の温度段階の温度よりも有利には少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃高い。
【0036】
工程(b)の連続的に運転される炉中での滞留時間は、有利には30分〜10時間の範囲、さらに有利には45分〜5時間の範囲、および特に1〜2時間の範囲である。
【0037】
工程(b)での合金前駆物質の加熱は、有利には還元雰囲気下で行う。この還元雰囲気は有利には水素を含有している。この場合、水素の割合は、製造すべき触媒の組成に依存する。この場合、還元雰囲気下での水素の割合は100体積%までであってよい。有利にはホーミングガス雰囲気を使用し、その際、水素の濃度は通常、30体積%より小さく、一般に20体積%より小さい。特に有利には還元雰囲気中の水素の割合は10体積%未満、および特に約5体積%である。特にPt−Ni触媒またはPt−Co触媒を製造する際には、還元雰囲気中の水素の割合は、有利には4〜10体積%の範囲であり、特に約5体積%である。
【0038】
水素以外に、還元雰囲気は有利には少なくとも1の不活性ガスを含有している。有利には還元雰囲気は窒素を含有している。しかしまた、窒素の代わりにたとえばアルゴンを使用することも可能である。窒素とアルゴンとからなる混合物を使用することも可能である。しかし窒素が有利である。
【0039】
還元雰囲気が、水素と不活性ガス以外には、別の成分を含有していない場合は特に有利である。しかしこの場合、たとえば気体の製造に基づいて、別のガスの痕跡が含まれていることを排除すべきではない。
【0040】
工程(b)で合金を形成するために加熱した後、有利には不動態化を実施する。このために、製造された合金をたとえば周囲温度で不活性雰囲気下に冷却する。この場合、不活性雰囲気は有利には窒素雰囲気またはアルゴン雰囲気である。窒素とアルゴンとからなる混合物を使用することも可能である。工程(b)で製造された合金を、連続的に運転される炉から出した後に、不動態化のためにたとえば水容器中に導入することもできる。
【0041】
本発明による方法により製造された触媒は、たとえば燃料電池における電極材料として使用するために適切である。その中で触媒を使用することができる典型的な燃料電池は、たとえばプロトン交換器膜形燃料電池(PEMFC)、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)、ダイレクトエタノール燃料電池(DEFC)およびリン酸形燃料電池(PAFC)である。特に本発明による方法により製造された触媒は、陰極触媒として、つまり酸素を還元するための触媒として適切である。別の適切な応用分野は、燃料電池以外でのメタノールまたは水素の電極酸化、酸素の電極還元、クロロアルカリ電解および水電解である。本発明による方法により製造された触媒は、たとえば自動車排ガス触媒中で、たとえば三方触媒またはディーゼル酸化触媒として、または化学工業における接触水素化もしくは脱水素化のために使用することができる。これにはたとえば不飽和脂肪族、芳香族およびヘテロ環式化合物の水素化が含まれる。カルボニル基、ニトリル基、ニトロ基の脱水素、およびカルボン酸およびそのエステルの脱水素、アミン化水素化、鉱油および一酸化炭素の水素化。脱水素化の例として、パラフィン、ナフテン、アルキル芳香族化合物およびアルコールの脱水素化が挙げられる。この場合、水素化もしくは脱水素化は、気相中でも液相中でも実施することができる。
【0042】
実施例
比較例1
炭素担持白金触媒を製造するために、まず市販のカーボンブラック担体(CABOT XC72)100gを、Ultra−Turrax(登録商標)分散装置を用いて水4l中に分散させる。この懸濁液に、H2O250ml中に溶解したPt(NO32 57.14gを添加した。その後、エタノール4250mlを混合物に添加し、該混合物を沸騰するまで加熱する。該懸濁液を還流で5時間煮沸し、60℃に冷却し、ペーパーフィルターを備えたブフナー漏斗により濾過分離し、かつ冷H2O 10lでNO3不含になるまで洗浄する。
【0043】
こうして製造した炭素担持白金触媒を、洗浄して湿ったフィルターケーキとして引き続き、H2O 3l中に懸濁させる。約20滴の65%濃度のHNO3により懸濁液のpH値を2.1に調整する。懸濁液に、H2O400ml中に溶解したNi(NO3)・6H2O 48.86gを添加する。引き続き、10分間良好に攪拌し、かつ約290mlの10%濃度のNa2CO3溶液によりpH値を8.5に高める。該懸濁液を75℃および8.5のpH値で1時間、後攪拌する。引き続き、35%濃度のホルムアルデヒド水溶液18mlを100mlまで希釈することによって製造した6.3%濃度のホルムアルデヒド溶液を添加し、改めて75℃で1時間、後攪拌する。
【0044】
反応終了後に、該懸濁液を約60℃に冷却し、かつ触媒をペーパーフィルターを備えたブフナー漏斗により濾過分離し、かつ15lの冷H2OでNO3不含になるまで洗浄する。回転管式炉中で、該触媒を引き続き、炉の温度80℃で約48時間、窒素雰囲気下に乾燥させる。
【0045】
PtNi合金を形成するために、得られた生成物を、水素15体積%を含有する水素/アルゴン雰囲気中、5℃/分の速度で500℃になるまで加熱し、この温度で30分間維持し、かつ引き続き同様に、5℃/分の速度で、850℃まで加熱し、改めてこの温度で30分間維持し、引き続き室温に冷却し、かつ窒素中で、段階的に空気を添加して空気雰囲気になるまで不動態化する。
【0046】
こうして製造された触媒の白金含有率は23.2質量%であり、ニッケル含有率は6.8質量%であり、かつ水含有率は0.5質量%未満である。PtNi結晶の大きさは、9.0nmであり、かつ格子定数は3.810Åである。
【0047】
比較例2
担持白金触媒を製造するために、市販のカーボンブラック担体(CABOT XC72)75.8gを、Ultra−Turrax(登録商標)分散装置を用いて水3l中に分散させる。この溶液に、4%濃度の硝酸白金溶液1lを添加する。引き続きエタノール4.25lを添加し、かつ該混合物を還流下に5時間沸騰加熱する。得られた触媒分散液をヌッチェにより濾別し、かつ得られたフィルターケーキを残留湿分が22質量%になるまで空気中で乾燥させる。最後に、乾燥させたフィルターケーキを0.4mmの篩により粉砕する。
【0048】
こうして製造した炭素担持白金触媒11.5gを、アセチルアセトン酸ニッケル4.47gと混合し、不連続的に運転可能な回転管式炉中に充填する。まず、該混合物を、窒素の導通下に100℃で2時間乾燥させる。引き続き、水素0.8l/hおよび窒素15l/hからなる流れに切り替え、段階的に600℃になるまで加熱する。引き続き、こうして製造した触媒を冷却し、かつ室温で空気/窒素により不動態化する。
【0049】
こうして製造された触媒の白金含有率は21.6質量%であり、ニッケル含有率は8.7質量%であり、かつ水含有率は0.5質量%である。PtNi結晶の大きさは、2.4nmであり、かつPtNi合金の格子定数は3.742Åである。
【0050】
実施例
炭素担持白金触媒を、比較例2に記載されているように製造する。
【0051】
こうして製造された炭素担持白金触媒28.8gを、アセチルアセトン酸ニッケル11.2gと混合し、連続的に運転可能な回転管式炉の受け器に充填する。この回転管式炉は、3つの加熱帯域を有しており、その際、第一の加熱帯域は400℃に、かつ第二および第三の加熱帯域はそれぞれ600℃に調整される。回転管式炉中の気体雰囲気は、窒素95体積%中の水素5体積%からなる混合物からなる。回転管式炉の搬送性能は、毎時50gの触媒が回転管式炉を通過して搬送されるように調整する。回転管式炉の加熱帯域における生成物の滞留時間は1時間である。
【0052】
得られた生成物を、回転管式炉から出た後に、受け器に回収し、最後に回転管式炉の外で、空気/窒素流中で不動態化する。
【0053】
こうして製造された触媒は、17.8質量%の白金含有率、7.9質量%のニッケル含有率、および0.6質量%の水含有率を有している。PtNi結晶の結晶の大きさは、2.4nmであり、かつPtNi合金の格子定数は3.762Åである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金族の金属ならびに合金化金属として白金族または遷移金属の金属から選択される少なくとも1の第二の金属からなる合金を含有する触媒を連続的に製造する方法であって、以下の工程:
(a)白金族の金属を含有する触媒を、それぞれ合金化金属を含有する少なくとも1の熱分解可能な化合物と混合して合金前駆物質を得る工程、
(b)合金前駆物質を連続的に運転される炉中で加熱して合金を製造する工程
を有する、触媒を連続的に製造する方法。
【請求項2】
連続的に運転される炉が、回転管式炉またはベルト式か焼炉であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)における加熱を、還元雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
還元雰囲気が、水素を含有することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
還元雰囲気中の水素の割合が、30体積%より小さいことを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で合金前駆物質を加熱する温度が、90〜900℃の範囲であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
加熱を2つの温度段階で行い、その際、第一の温度段階の温度は、第二の温度段階の温度よりも低いことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第一の温度段階の温度が、300〜500℃の範囲であり、かつ第二の温度段階の温度が、500〜700℃の範囲であり、その際、第二の温度段階の温度は、第一の温度段階の温度よりも少なくとも100℃高いことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
連続的に運転される炉中での滞留時間が、30分〜10時間の範囲であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
白金族の金属を含有する触媒が、金属粉末として存在しているか、またはさらに担体を有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
担体が、炭素担体であることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
白金族の金属を含有する触媒が、水50質量%までの残留湿分を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
白金族の金属が、白金であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
合金化金属が、ルテニウム、コバルト、ニッケルおよびパラジウムからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1の熱分解可能な化合物が、有機金属化合物または金属錯体であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1の合金化金属が、リガンドとしてのオレフィン、有利にはジメチルオクタジエンとの、芳香族化合物、有利にはピリジン、2,4−ペンタジオンとの金属錯体として、混合されたシクロペンタジエニル−カルボニル錯体として、または純粋な、もしくは混合されたカルボニル錯体、ホスファン錯体、シアノ錯体またはイソシアノ錯体として存在することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1の合金化金属が、リガンドとしてのアセチルアセトネートまたは2,4−ペンタジオンとの金属錯体として存在していることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1の有機金属化合物、または少なくとも1の合金化金属を含有している少なくとも1の金属錯体が、粉末として、または溶剤中に溶解されて存在していることを特徴とする、請求項15から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
工程(b)で合金を形成するために加熱した後に、不動態化を実施することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2012−500720(P2012−500720A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524325(P2011−524325)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060710
【国際公開番号】WO2010/026046
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】