説明

触媒不斉エポキシ化

本発明は、オレフィンの触媒不斉酸化によるキラルなエポキシドの合成に関する。それに加えてこの手法はスルフィド及びホスフィンを不斉酸化する方法を提供する。この不斉酸化には、金属及びキラルなヒドロキサム酸リガンドにより構成される触媒系が使用され、この触媒系は、化学量論量の酸化剤の存在下において、種々の基質の不斉酸化に役立つ。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
触媒不斉エポキシ化は、キラル化合物の合成に極めて有用な方法であって、それ故にこれらのタイプの反応は、製薬工業において広い応用性を有する。1980年代の初期に、Sharplessは、化学量論量のアキラルな酸化剤の存在下に、酒石酸チタン錯体を使用して、キラルなエポキシアルコールを得る効果的な方法を発表した。この方法は、常に高いエナンチオ選択性を提供するが、多くの不利な点があり、その中にはモレキュラーシーブスの使用が必要なこと、触媒系が空気及び水の影響を受け易いこと、及び後処理に手間がかかり複雑なことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明で開示する触媒不斉酸化は、従前に用いられた方法に対して1つ又は2つ以上の次の利点を有する。この触媒系は水に影響され易くないので、モレキュラーシーブスは必要なく、而もアキラルな酸化剤として有機ヒドロペルオキシドの水溶液を使用できる。触媒系は空気の影響も受け難く、反応を好気的条件下で実施できる。反応の後処理は容易に行うことができ、そのためこの系の方が大規模な反応にはるかに適している。この方法は、ホスフィン及びスルフィドの触媒不斉酸化にも応用できる。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、オレフィンの触媒不斉酸化によるキラルなエポキシドの合成に関する。それに加えてこの手法はスルフィド及びホスフィンを不斉酸化する方法を提供する。この不斉酸化には、金属及びキラルなヒドロキサム酸リガンドにより構成される触媒系が使用され、この触媒系は、化学量論量の酸化試薬の存在下において、種々の基質の不斉酸化に役立つ。
【0004】
上述の具体的な説明は限定的というよりも例示的と看做し、且つ本発明の趣旨及び範囲を規定することを意図するものは、特許請求の範囲及びそれに対応する記述であることを理解すべきことに言及しておく。
【0005】
一般事項
本発明の目的は、基質の触媒不斉酸化である。本発明のための基質は、アルケン、スルフィド及びホスフィンからなる群から選択される。この方法は、一般に、アルケン、ホスフィン、若しくはスルフィド、有機ヒドロペルオキシド、及び触媒量の金属及びキラルなヒドロキサム酸リガンドを反応させる形をとり、キラルな酸化生成物を供給する。
【0006】
用語及びその定義
本発明の化合物、組成、方法及び工程を述べる際に、次の用語は特に断らない限り次の意味である。
【0007】
「酸塩化物」は次の式の化合物を指す。

式中、R'はアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0008】
「アルケン」又は「オレフィン」は不飽和炭化水素基を指し、直鎖状、環状若しくは分岐又はそれらの混合体でよい。これらの基は少なくとも1個の二重結合を有するが、2個以上の二重結合を含むこともできる。置換基として可能な基は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ハロゲン、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、O−シリル、及びハロゲンからなる群から選択できる。炭素原子が2から20個のアルケン基が好ましい。炭素原子が2から16個のアルケン基はさらに好ましい。アルケン基の例には、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−2−ブテニル、n−3−ヘキセニル等が挙げられる。
【0009】
「アルコキシ」は、1から10個の炭素原子をもち、酸素原子を通して分子の残部に結合するこれらのアルキル基を指す。炭素原子1から8個のアルコキシ基が好ましい。アルコキシのアルキル部分は、直鎖状、環状若しくは分岐又はそれらの混合体でよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、シクロペンチルオキシ等が挙げられる。アルコキシ基は次式−OR’で表され、式中R’はアルコキシ基の「アルキル部分」である。
【0010】
「アルキル」はそれ自体又は他の置換基の一部として、炭素原子1から10個の(好ましくは炭素原子1から8個の)直鎖状、環状若しくは分岐又はそれらの混合体でよい炭化水素基を指す。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル等が挙げられる。
【0011】
「アルキルアミノ」は、1から10個の炭素原子をもち、窒素原子を通して分子の残部に結合するこれらのアルキル基を指す。炭素原子1から8個のアルキルアミノ基が好ましい。アルキルアミノのアルキル部分は、直鎖状、環状若しくは分岐又はそれらの混合体でよい。アルキルアミノ基の例には、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、メチル、イソプロピルアミン等が挙げられる。アルキルアミノ基は、次式−NR’−若しくは−NR’R”、又は−NHR’によって表すこともできる。式中R’及びR”はアルキルである。
【0012】
「アリール」は、5から14個の炭素原子(好ましくは5から10個の炭素原子)で共有結合により縮合又は連結した、単一又は複数の環を有する芳香族炭化水素基を指す。アリール基の例には、フェニル、ナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、ビフェニル、アントラセン等が挙げられる。
【0013】
「アリールアルキル」は、アルキル基を通して分子の残部に結合したアリール基を指す。そのような基はアリール環又はアルキル側鎖のいずれに単一又は複数の置換基があってもよい。例には、ベンジル、フェニルエチル、スチリル、2−(4−メチルフェニル)エチル、トリフェニルメタン、及び2−フェニルプロピルが挙げられる。
【0014】
「不斉」は、対称性の全ての要素を欠く分子を指す。例えば、次の炭素中心は不斉である。

【0015】
「触媒作用」又は「触媒された」は、比較的少量の外来物質が化学反応の速度を増大させ、それ自体は反応で消費されないプロセスを指す。
【0016】
「触媒量」は、反応物質に比較して、化学量論量に満たない触媒の量を指す。
【0017】
「触媒不斉酸化」は、触媒量のキラルなヒドロキサム酸リガンド及び金属を使用して、有機ヒドロペルオキシドから酸素を電子対に移動させ、不斉な生成物を生成することを指す。
【0018】
「キラル」は、自身の鏡像体と重なり合わない分子又は配置を指す。「アキラル」という用語は、自身の鏡像体と重なり合う分子又は配置を指す。
【0019】
「キラルな触媒」は、自身の鏡像体と重なり合わず、且つそれ自体は反応で消費されずに化学反応速度を増大させる分子又は配置を指す。不斉触媒反応において、キラルな触媒は、反応を触媒することに役立ち、同時にエナンチオ選択性も供給することになる。
【0020】
「キラルなリガンド」は、ルイス塩基として金属イオン錯体中の金属を取り囲む分子又はイオンで、その分子が自身の鏡像体と重なり合わない分子又はイオンを指す。
【0021】
「キラルな酸化生成物」は、本発明において開示した酸化反応によって、非キラルなものからキラルなものに変換された分子又は化合物を指す。
【0022】
「CHP」はクメンヒドロペルオキシドを指す。
【0023】
「錯体」は、独立して存在し得る電子に富む分子又は原子の1つ又は複数と、やはり独立して存在し得る電子に乏しい分子又は原子の1つ又は複数との結合によって形成された配位化合物を指す。
【0024】
「環状アルケン」は、不飽和炭化水素基がシクロアルキル又はヘテロシクリル骨格の一部分を形成しているアルケン又はオレフィンを指す。
【0025】
「シクロアルキル」は、3から12個の炭素原子を有し、完全に飽和して、即ち環頂点間に二重結合を1つも有しない炭化水素環を指す(炭素原子5から6が好ましい)。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。「シクロアルキル」にはまた、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン等などのビシクロ及びポリシクロ炭化水素環を指す意味もある。
【0026】
「ジヒドロキシルアミン塩酸塩」は、ヒドロキシルアミン塩酸塩部分を有する化合物を指す。ヒドロキシルアミン塩酸塩は次式の化合物を指す。


式中、R’は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0027】
「エナンチオマー」は、互いに鏡像であり、且つ重ね合わせできない一対の分子種の一方を指す。
【0028】
「エナンチオマー濃縮した」は、エナンチオマーの一方を他方のエナンチオマーに優先して選択的に創出した、エナンチオマー混合物を指す。かくして、「エナンチオマー濃縮」生成物はエナンチオマー過剰率(即ち%ee)を有することになり、前記生成物中において一方のエナンチオマーが他方よりも多量に存在する。言い換えると、「エナンチオマー濃縮した」は、0より大きいが100%未満のエナンチオマー過剰率を有することを指す。「エナンチオマー過剰率」は、多量に存在する方のエナンチオマーのモル分率から少量存在する方のエナンチオマーのモル分率を引いた値の100倍に等しい。純粋なエナンチオマー(R又はS)とラセミ化物との混合物においては、eeは、ラセミ化物には含まれないエナンチオマーのパーセント過剰率である。
【0029】
「エナンチオ選択的」は、反応生成物の可能性のある2つのエナンチオマーの一方の生成を有利にするプロセスを指す。例えば、化学反応がキラルな生成物の2つのエナンチオマーを等しくない量で生成させれば、その反応はエナンチオ選択的であろう。そのような反応は、エナンチオ選択性を示すと言われる。
【0030】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、それ自身か、又は置換基の一部として、塩素、臭素、ヨウ素、又はフッ素原子を指す。それに加えて、「ハロアルキル」などの用語は、最も典型的には1から3個のハロゲン原子で置換したモノハロアルキル又はポリハロアルキル基を指す。例には、1−クロロエチル、3−ブロモプロピル、トリフルオロメチル等が挙げられる。
【0031】
「ヘテロ原子」は、炭素以外の原子を指す。例には、窒素、酸素、イオウ、リン等が挙げられる。
【0032】
「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つのヘテロ原子を含み、且つ構成要素が3から10個(好ましくは3から7個の炭素原子)の、飽和又は不飽和非芳香族基を指す。「ヘテロアリール基」は、少なくとも1つのヘテロ原子を含み、且つ構成要素が3から10個(好ましくは3から7個の炭素原子)の芳香族基を指す。各へテロシクリル及びヘテロアリールは、環の利用可能な、どの炭素又はヘテロ原子ででも結合できる。各へテロシクリルは1つ又は複数の環を有することができる。ヘテロシクリル中に複数の環が存在する場合、それらの環は互いに縮合しているか又は共有結合で連結していることが可能である。各へテロアリールは1つ又は複数の環を有することができる。ヘテロアリール中に複数の環が存在する場合、それらの環は縮合していることが可能である。各へテロシクリル及びヘテロアリールは、シクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、又はアリール基と縮合できる。各へテロシクリル及びヘテロアリールは、窒素、酸素又はイオウから選択された少なくとも1個のヘテロ原子(典型的には1から5個のヘテロ原子)を含まなければならない。これらの基は、0から3個の窒素原子及び0から1個の酸素原子を含むことが好ましい。飽和及び不飽和へテロシクリル基の例には、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルフォリン、ピペラジン、3−ピロリン等が挙げられる。へテロアリールル基の例には、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、フラン、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンゾピラゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン等が挙げられる。ヘテロシクリル及びヘテロアリールは、非置換でも置換でもあり得る。置換された基について、置換は炭素又はヘテロ原子上であってよい。例えば、置換が=Oである場合、結果として生成する基は、カルボニル(−C(O)−)又はN−オキシド(−N(O)−)のいずれかを有することができる。
【0033】
「不活性雰囲気」は、混合物が窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの層で覆われる反応条件を指す。
【0034】
「リガンド」は、錯体中で金属を取り囲み、ルイス塩基(即ち電子対供与体)として作用する分子又はイオンを指す。
【0035】
「金属」は、原子番号23から74の5及び6族に位置する元素を指す。
【0036】
「光学活性酒石酸1,2−ジアンモニウム」は、次式の化合物を指す。


式中、R’、R”、R’’’、及びR’’’’は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。R”及びR’’’基は、同じ環の要素を構成することができ、その場合その環はシクロアルキル又はヘテロシクリル基である。
【0037】
「有機ヒドロペルオキシド」は、式R’−O−O−Hの酸化剤を指し、式中R’はアルキル、シクロアルキル、及びアリールアルキルからなる群から選択される。有機ヒドロペルオキシドの例には、tert−ブチルヒドロペルオキシド、α,α−ジメチルヘプチルヒドロペルオキシド、ビス−ジイソブチル−2,5−ジヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、及びトリチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0038】
「ホスフィン」は、3個の置換基を有するリン原子を指す。置換基は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される
【0039】
「シリル保護ジヒドロキシルアミン」は、2つのシリル保護ヒドロキシルアミンをもつ化合物を指す。シリル保護ヒドロキシルアミンは次式の化合物を指す。


式中、R’及びR”は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0040】
「置換された」は、少なくとも1個、好ましくは1から3個の置換基を含む部分の意味である。適当な置換基には、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ハロゲン、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、又はO−シリルが挙げられる。これらの置換基は、場合により、さらに1から3個の置換基で置換することができる。置換された置換基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアリール、アラルキル等が挙げられる。
【0041】
「スルフィド」は、イオウ原子が2つの置換基を有する官能基を指す。スルフィド基は−S−として表すことができ、その際可能な置換基は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、又はアリールアルキルからなる群から選択することができる。
【0042】
「スルフォニル」は、イオウ原子が4個の置換基を有し、置換基中の2個は二重結合した酸素原子である官能基を指す。スルフォニル部分は−S(O)−と表すことができる。
【0043】
「TBHP」はtert−ブチルヒドロペルオキシドを指す。
【0044】
」はキラルな中心、分子又は原子を指す。
【0045】
或る実施形態においては、上記用語(例えば、「アルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」その他)は全て、指示した基の置換された形及び置換されていない形の両者を含む。これらの基は、化学的に許される様式で、1から10回置換されてもよい。適当な置換基には、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ハロゲン、アルコキシ、酸素、及び窒素が挙げられる。
【0046】
それ故、意図するところは、上述の具体的な説明は限定的なものでなく例示的なものと看做されること、及び本発明の趣旨及び範囲を規定するものは特許請求の範囲とそれに等価の記述であることが理解されるべきであることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
触媒不斉酸化
本発明の不斉酸化は、次のように表すことができる。


この反応は、酸化試薬の存在下に触媒量の金属及びキラルなビスヒドロキサム酸リガンド(I)を使用する、基質(Y)の触媒不斉酸化方法を提供する。基質になり得る多数のものを示す(Y、X、及びXa)。この例において結果として生じるキラル酸化生成物は、化合物III、Xb、及びXcにより表される。キラルなビスヒドロキサム酸リガンド(I)、酸化試薬、金属、基質、及びキラル酸化生成物は全て下で個々に論ずる。
キラルなビスヒドロキサム酸リガンド


【0048】
一実施形態において、キラルリガンドは、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドIによって表される。
【0049】
連結基−Z−は、−C(O)−及び−S(O)−からなる群から各々独立に選択することができる。
【0050】
置換基R、R、R、R、R、及びRは、連結基−Z−によってビスヒドロキサム骨格に結合している。置換基R、R、R、R、R、及びRは、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から各々独立に選択される。
【0051】
ヒドロキサム酸の窒素は両方ともエチレン基に結合しており、そのエチレン基はさらにR、R、R、及びR10で置換されている。置換基R、R、R、及びR10は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0052】
一実施形態においては、置換基R、R、R、R、R、及びRが、各々独立に選択され、その結果各々が相違するか又は同じものになる。
【0053】
他の実施形態においては、置換基R、R、R、R、R、及びRは、RとRが同じになり、RとRが同じになり、且つ/又はRとRが同じになるように選択される。
【0054】
さらに他の実施形態においては、置換基R、R、R、及びRは全て同じであってよく、一方RとRは互いに同じであるが、R、R、R、及びRとは異なる。
【0055】
さらに他の実施形態において、置換基R、R、及びRは、これらの基の任意の2つが、それらが結合している原子と共に環を形成するように選択することができる。
【0056】
さらに他の実施形態において、置換基R、R、及びRは、これらの基の任意の2つが、それらが結合している原子と共に環を形成するように選択することができる。
【0057】
例えば、RとRは、それらが結合している原子と共に環を形成でき、その環はシクロアルキル、ヘテロシクリル、又はアリールからなる群から選択される。同様に、RとRは、それらが結合している原子と共に環を形成でき、その環はシクロアルキル、ヘテロシクリル、又はアリールからなる群から選択される。
【0058】
一実施形態においては、RとRから形成される環、及びRとRから形成される環が同一で、その環はシクロアルキル、ヘテロシクリル、及びアリールからなる群から選択される。
【0059】
置換基R、R、R、及びR10は、各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択し、各基が異なるか又はこれらの基全てが同じになるようにする。
【0060】
さらに好ましい実施形態において、置換基R及びRは、これら2個の基が同一であるように選択することができ、且つ置換基R及びR10はこれら2個の基が同一であるように選択することができる
【0061】
一実施形態において、置換基R及びRは、それらが結合している原子と共に環を形成し、その環はシクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択される。結果として生ずるキラルなビスヒドロキサム酸リガンドは化合物Ia’である。


【0062】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンドIa’において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びZの定義は先に述べた通りである。
【0063】
nは0、1、2、3、又は4の値をとることができる。
【0064】
とRとが、それらが結合している原子と共に環を形成する場合、RとR10とは同一であるか又は異なることができる。
【0065】
好ましい実施形態において、R、R、R、及びRはアリール基であり、一方R及びRは水素である。
【0066】
さらに好ましい実施形態において、R及びRは同一のアリール基であり、且つR及びRは同一のアリール基であり、一方R及びRは水素である。
【0067】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは同じ即ち同一のアリール基であり、一方R及びRは水素である。
【0068】
他の好ましい実施形態において、キラルなビスヒドロキサム酸リガンド(1)は、次の化合物からなる群から選択される。


【0069】
一実施形態において、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドは、光学活性な酒石酸1,2−ジアンモニウム(IV)をp−アニスアルデヒドと縮合させてジイミンVを供給することにより調製する。次に、ジイミン(V)を酸化してジオキサジリジンVIを生成し、続いてVIを加水分解してジヒドロキシルアミン塩酸塩VIIを生成させる。それからジヒドロキシルアミン塩酸塩(VII)をシリル化してシリル保護ジヒドロキシルアミンVIIIを供給する。最後にシリル保護ジヒドロキシルアミン(VIII)を酸塩化物と縮合させてビスヒドロキサム酸IXを生成する。


【0070】
他の実施形態においては、光学活性な酒石酸1,2−ジアンモニウムをp−アニスアルデヒドと縮合させてジイミンを供給し、次にジイミンを酸化してジオキサジリジンを生成することにより、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドを調製できる。それからジオキサジリジンを加水分解してジヒドロキシルアミン塩酸塩を生成させる。それに続くジヒドロキシルアミン塩酸塩のシリル化によりシリル保護ジヒドロキシルアミンが供給され、続いてシリル保護ジヒドロキシルアミンを酸塩化物と縮合させてキラルなビスヒドロキサム酸リガンドが生成される。RSiXのR基は、典型的にはアルキルであり、一方X基はハロ及びトリフレートからなる群から選択することができる。


【0071】
この合成経路はキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを供給するであろうし、その際−Z−は−C(O)−であり、エチレン骨格はシクロヘキサン環の一部である。
【0072】
置換基RとRとは、それらが結合している原子と共にシクロヘキサン環を形成し、一方R及びR10は水素である。
【0073】
、R、R、R、R、及びRがどのようなものになるかは、どのような酸塩化物がジヒドロキシルアミンと縮合するかに依存する。
【0074】
それ以外の類のキラルなビスヒドロキサム酸リガンドの例には、次の化合物が挙げられる。


【0075】
化合物Ib’及びIc’に関して、R13、R14、R15、R16、R17、及びR18は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0076】
置換基R19及びR20は各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0077】
置換基R21、R22、R23、及びR24は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0078】
置換基R25及びR26は各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0079】
2つのヒドロキサム酸を3以上の原子によって連結できることは、当業者には明らかであろう。化合物Ib’はそのようなリガンドの一例になるであろう。化合物Ib’において、ヒドロキサム酸は、ビフェニル骨格の構成要素である4個の炭素原子によって隔てられている。もう1つの例は、ビナフチル骨格に接続しているビスヒドロキサム酸であろう。さらに、リガンド全体が触媒活性種にキラリティをもたせることができる限り、2つのヒドロキサム酸に接続している原子は炭素以外の原子にすることができる。
【0080】
より好ましい実施形態においては、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドが次の構造(Id’)を有する。


【0081】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンドId’において、R29、R30、R31、及びR32は各々独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。キラルなビスヒドロキサム酸リガンドがこの一般式の構造を有するときに、高いエナンチオマー過剰率が得られていることに注目することは重要である。
金属
【0082】
本発明においては、金属はバナジウム(IV)又はバナジウム(V)にすることができる。さらに、金属はモリブデン(IV)又はモリブデン(V)にすることができる。好ましい実施形態において、金属は VO(OPr、VO(acac)、VO(OEt)、及びMoO(acac)からなる群から選択される。
酸化試薬
【0083】
本発明において、酸化は酸化試薬によって行われる。一実施形態において、酸化試薬は有機ヒドロペルオキシドである。該化合物は次式(II)により表すことができる。


【0084】
置換基R11は、アルキル、シクロアルキル及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0085】
有機ヒドロペルオキシドの例には、tert−ブチルヒドロペルオキシド、α,α−ジメチルヘプチルヒドロペルオキシド、ビスージイソブチル−2,5−ジヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、及びトリチルヒドロペルオキシドが挙げられるが、これらに限定はされることはない。
【0086】
好ましい実施形態においては、有機ヒドロペルオキシドは、tert−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドからなる群から選択される。
【0087】
他の実施形態において、酸化試薬は過酸化水素である。
基質
【0088】
本発明は種々の基質に関して使用できる。例えば、基質は、アルケン、環状アルケン、スルフィド、又はホスフィンからなる群から選択できる。
【0089】
それに加えて、これらの基質の各々は、置換されていても又は置換されていなくてもよく、また環の構成要素であってもよい。
【0090】
本発明はアルケンの基質で実施できる。そのようなアルケンは次式(X)によって表すことができる。


【0091】
基質Xは基質となる可能性のあるアルケンを例示したもので、式中置換基R23、R24、R25、及びR26は各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される。
【0092】
アルケン基質のこのより具体的な表示は、本発明のアルケン(X)基質への適用の例示であって、その際酸化は有機ヒドロペルオキシドの存在下に触媒量のキラルなビスヒドロキサム酸(1)及び金属を使用して実施する。アルケンの不斉酸化により、キラルな酸化生成物がキラルなエポキシド(XII)の形態で供給される。


【0093】
本発明は、Xaなどの環状アルケンと組み合わせて使うこともできる。


【0094】
置換基R27及びR28は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、及びアルケンからなる群から選択される。
【0095】
環のサイズはnの値に基づき、nは1、2、3、4、5、6、又は6が可能である。例えばnが1の場合、環状オレフィンはX基が1つの3員環である。nが2ならば、そのとき環状オレフィンはX基が2個の4員環であり、以下同様である。
【0096】
ここに存在するXは各々独立に−CR2930−、−NR31−、及び−O−からなる群から選択され、ここでR29、R30、及びR31は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロゲン、及びアルケンからなる群から選択される。
【0097】
他の実施形態において、基質はスルフィド及びホスフィンからなる群から選択される。
【0098】
重要なことに言及すると、大部分の有機反応と同様に、この反応は種々の基質で実施できることを、当業者ならば理解するであろう。さらに、基質を少し変更すると、しばしば収率及びエナンチオ選択性の最適化ができるであろう。
キラルな酸化生成物
【0099】
一実施形態において、キラルな酸化生成物は、次のように表すことができる。


式中、Yは基質のホスフィン又は基質のスルフィドである。
【0100】
他の実施形態において、アルケン基質Xから誘導された、キラルな酸化生成物を下に示す。


【0101】
その他の実施形態において、アルケン基質Xaから誘導された、キラルな酸化生成物を下に示す。


【0102】
キラルな酸化生成物は、使用される基質に依存して変化するであろうということを当業者は理解するであろう。例えば、基質がホスフィン又はスルフィドであるとき、キラルな酸化生成物はそれぞれホスフィンオキシド又はスルホキシドであろう。他の例で、基質がアルケンである場合、キラルな酸化生成物はエポキシドであろう。
反応条件
【0103】
通常本発明は溶媒中で実施する。有機溶媒が好ましい。より好ましくは、反応を塩化メチレン、トルエン、クロロホルム、及び酢酸エチルからなる群から選択された溶媒中で実施する。
【0104】
本発明は種々の温度で実施できる。好ましい実施形態では、反応ステップは約−20℃から25℃の温度で実施する。
【0105】
さらに、本発明において開示した反応は、種々の量のキラルなビスヒドロキサム酸リガンド及び金属を用いて実施される。1つの好ましい実施形態において、反応は、約0.001から約0.1当量のキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて実施される。もう1つの好ましい実施形態において、反応は、約0.005から約0.05当量の金属を用いて実施される。
【0106】
重要なことに言及すると、収率及びエナンチオ選択性の最適化は反応条件を変更することによって達成できることを、当業者ならば理解するであろう。例えば、そのような最適化として、溶媒、反応の種々の段階の温度、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドの当量、及び金属の当量の変更を挙げることができる。
実施例−本発明の範囲
【0107】
本発明の範囲をさらに次の表で示す。
【0108】
以下の諸表においてIaからIoまでの記号をつけたリガンドを下に示す。これらの化合物は、合成の実施例の部で示す操作を用いて作製できる。重要なことに言及すると、これらのリガンドは可能なキラルなビスヒドロキサム酸リガンドの例示であるが、このリストは決して限定的なものではない。


【0109】
表1は、本願明細書において開示した触媒不斉酸化を、種々のキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて実施できることを示す。事実、上の結果は、この反応が広範囲のキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて、エナンチオマー過剰率を提供するであろうということを明らかにしている。表1はトランス−2,3−ジフェニル−2−プロペノールをエポキシ化するのにこの反応を使用できることも示している。重要なことに言及すると、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドの本体及び特性を変更することがこの反応のエナンチオマー過剰率及び収率の両者を最適化する手段になるであろうことを、当業者ならば理解するであろう。さらに表1は、この反応が塩化メチレン及びトルエンの両者中で成功裏に実施できることも示している。

表1 トランス−2,3−ジフェニル−2−プロペノールのエポキシ化

【0110】
表2は、この反応が複数のアルケンを含む基質のエポキシ化に適用できることを示す。実際、この反応はアリル系アルケンに対して選択性を示す。表2は、広範囲のキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて、良好な収率及びエナンチオマー過剰率が得られることも示している。

表2 ゲラニオールのエポキシ化


【0111】
表3は、この触媒不斉酸化が、広範囲の温度を含めて、種々の反応条件下に進行し得ることを示している。バナジウム源、温度、酸化剤、及びリガンド対金属比などの条件を変化させることにより、収率及びエナンチオマー過剰率の両方を最適化するができるであろうということを、当業者は理解するであろう。さらに、上で示した結果は、CHP及びTBHP両者ともヒドロペルオキシド酸化剤として使用できることを示している。

表3 反応条件変更の効果


【0112】
表4は、種々の反応条件下でこの反応を実施できることを示す。ヒドロペルオキシド水溶液で収率及びエナンチオマー過剰率の両者とも良好なので、これらの結果はこの反応が水性条件下で実施可能なことも明らかにしている。

表4 ゲラニオールのエポキシ化:酸化剤、溶媒、及びバナジウム源変更の効果


【0113】
表5は、酸化剤、溶媒及びバナジウム源が異なると、この不斉酸化の収率及びエナンチオマー過剰率に如何に影響するかの検討である。表5の結果から、反応はVO(OPr及びVO(acac)だけでなくVO(OEt)でも首尾よく実施できることがわかる。このデータはまた、トルエン、塩化メチレン、及び酢酸エチルがこの反応に適していることも示している。

表5 ゲラニオールのエポキシ化:酸化剤、溶媒、及びバナジウム源変更の効果


【0114】
表6は、数種類の異なるキラルなビスヒドロキサム酸リガンドが桂皮アルコールをエポキシ化するために利用できることを示す。各場合において、所望のエポキシ化生成物に関して高いエナンチオ選択率が達成されている。

表6 トランス二置換アリル系アルコールのエポキシ化

【0115】
表7は、ネロール及び(E)−3−フェニル−2−ブテン−1−オールをエポキシ化するこの不斉酸化能力の検討を示す。この場合、該アリル系アルケンのエポキシ化に関して、高収率と共にエナンチオマー過剰率が得られる。さらに、この上首尾の結果は、多くの異なるキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて得られた。
表7 ネロール及び(E)−3−フェニル−2−ブテン−1−オールのエポキシ化

【0116】
表8は、α−メチル桂皮アルコールのエポキシ化の結果を示す。この場合、多くの異なるキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて、高収率及びエナチォマー過剰率の両方が得られた。

表8 α−メチル桂皮アルコールのエポキシ化


【0117】
表9は、この反応が環状アルケン基質、この場合シクロヘキセン−1−イルメタノールに首尾よく適用できることを示している。実際、3種の異なるキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを用いて、高収率で高いエナンチオマー過剰率が得られた。

表9 シクロヘキス−1−エニル−メタノールのエポキシ化


【0118】
表10は、本発明で開示した反応で、5員環アルケンも首尾よくエポキシ化できることを示す。

表10 シクロペント−1−エニル−メタノールのエポキシ化


【0119】
表11は、シス−アルケンがエポキシ化の基質として利用できることを示す。このデータは、ビスヒドロキサム酸リガンドの性質が変化すると、収率が変化し得ることを示す。しかしながら、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドの性質が大きく変化しても、エナンチオマー過剰率に関しては少し影響することがあるだけのようである。

表11 (Z)−ヘキス−2−エン−オールのエポキシ化


【0120】
表12は、トランス−2,3−ジフェニル−2−プロペノール及びゲラニオールのエポキシ化が、金属としてモリブデン、この場合にはMoO(acac)を使用して、首尾よく実施できることを示す。

表12 モリブデン触媒によるエポキシ化


【0121】
表13は、この反応がホモアリル系アルコールも首尾よくエポキシ化できることを示す。

表13 ホモアリル系アルコールのエポキシ化


【実施例1】
【0122】
合成及びスペクトルの実施例
(R,R)−N,N’−ビス−(4−メトキシベンジリデン)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン(IVa)調製を下に示す。


【0123】
この調製においては、ジアンモニウム塩(IVa)(21.2g、80.1mmol)、KCO(22.1g、160mmol)、及び脱イオン水(107mL)の混合物を、全部溶解するまで撹拌し、次いでエタノール(429mL)を加えた。その結果濁った混合物を80℃に加熱し、p−アニスアルデヒド(21.8g、160mmol)をエタノール(36mL)に溶かした溶液を、30分かけて一定流量で加えた。黄色のスラリーを同じ温度で5時間撹拌した後、加熱を中止した。反応混合物を室温に冷却し、水相は分離して廃棄した。有機相を濃縮して残渣にトルエンを加えた。次にそれを濃縮して痕跡量の水分も完全に除去した。その結果残った残渣をクロロホルムに溶解し、NaSOで乾燥して濾過した。濾液を蒸発させると粗Vaが淡黄色の固体として得られ、それをクロロホルムとヘキサンから再結晶して精製した。R 0.6(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 2929、2855、1643、1606、1579、1512、1463、1303、1250、1165、1032、831cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ8.13(s,2H)、7.52(d,J=8.5Hz,4H)、6.83(d,J=8.5Hz,4H)、3.79(s,6H)、3.37〜3.32(m,2H)、1.87〜1.77(m,6H)、1.49〜1.46(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ161.5(C)、160.5(CH)、129.7(CH)、114.0(CH)、74.0(CH)、55.5(CH)、33.3(CH)、24.8(CH)。HRMS−ESI C2227[M+H]の計算値351.2073、実測値351.2076。
【実施例2】
【0124】
ジオキサジリジンVIaの調製を下に示す。


【0125】
MeCN(180mL)及びTHF(360mL)中のジイミンVa(10.5g、30.0mmol)溶液に、撹拌しつつ室温で、KHCO(50.5g、504mmol)の水溶液(300mL)を、次いでオキソン(44g、72mmol)の水溶液(300mL)を加えた。2時間15分撹拌した後、反応混合物をCHCl(600mL)で希釈した。2相になった混合物を分離して、水相をCHCl(2×300mL)で抽出し、有機抽出液をまとめてNaSOで乾燥して濾過した。濾液を減圧で濃縮すると粗ジオキサジリジンVIa(11.1g)が得られ、それを精製せずに次のステップで使用した。主ジアステレオマーFTIR(フィルム)υmax 2935、1615、1517、1309、1456、1437、1310、1252、1171、1031、821、cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ7.02〜6.79(m,4H)、6.59〜7.6.56(m,4H)、4.39(s,2H)、3.81(s,6H)、2.39〜2.37(m,2H,CHH’)、2.22〜2.20(m,2H)、1.83〜1.81(m,2H)、1.58〜1.51(m,2H)、1.31〜1.27(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ160.7(C)、129.0(CH)、126.5(C)、113.8(CH)、81.6(CH)、72.4(CH/CH)、55.4(CH/CH)、30.3(CH)、24.1(CH)。HRMS−ESI C2226Na[M+Na]の計算値405.1788、実測値405.1790。
【実施例3】
【0126】
ビス−ヒドロキシルアミン二塩酸塩VIIaの調製を下に示す。


【0127】
前記酸化反応から得られた未精製生成物VIa(11.1g)及びベンジルオキシヒドロキシルアミン塩酸塩(BnONH・HCl)(8.8g、55.1mmol)の混合物を、無水メタノールで、(すぐに)続けてMeOHに溶解した1MHCL(94mL、94mmol)で処理した。その結果の混合物を20分間撹拌した。次いで反応混合物を減圧で濃縮乾固し、EtO(200mL)及び脱イオン水(100mL)を加えた。2層を分離して、有機部分を脱イオン水(20mL)で抽出した。水層部を合わせてEtO(2×100mL)で洗浄した。水層部を60から75mLに濃縮し、その結果生じた白色固体(BnONH・HCl)を濾別し、濾液を減圧で濃縮すると、ビス−ヒドロキシルアミン二塩酸塩VIIa(6.95g)が5から10%のBnONH・HClを含む油質の固体として得られた。この物質を何らの精製もせずに次のステップで使用した。H NMR(400MHz,DO)δ3.66〜3.62(m,2H)、2.02〜1.98(m,2H)、1.69〜1.66(m,2H)、1.41〜1.37(m,4H)、1.20〜1.15(m,2H;13C NMR(100MHz,DO)δ58.6(CH)、25.1(CH)、22.1(CH)。
【実施例4】
【0128】
(R,R)−O,O’−ビストリメチルシリルシクロヘキシル−1,2−ジヒドロキシルアミン(VIIIa)の2通りの調製法を、方法A及び方法Bとして下に示す。


【0129】
方法A:室温でジヒドロキシルアミン二塩酸塩VIIa(5.52g、25.2mmol)をペンタン(30mL)に懸濁した液に、窒素雰囲気下でトリエチルアミン(8.5mL、60.6mmol)を加えた。室温で12時間撹拌後,混合物に1−(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIm)(7.7mL、50.5mmol)を滴下して処理し、さらに9時間撹拌した。このように得られた懸濁液を、敷き詰めたセライトを通して濾過し、濾液を減圧下に濃縮するとO,O’−ビストリメチルシリルシクロヘキシル−1,2−ジヒドロキシルアミン(VIIIa)が黄色の油(5.85g、収率80%)として得られた。それをそれ以上精製せずに次の反応に使用した。H NMR(400MHz,CDCl)δ5.60(br s,2H)、2.68〜2.65(m,2H)、2.19〜2.15(m,2H)、1.23〜1.13(m,4H)、0.14(s,18H)。
【0130】
方法B:CHCl(4mL)中にVIIa(382mg、1.74mmol)及びピリジン(1mL)を加えた懸濁液を室温で撹拌しつつ、EtN(384μL、2.75mmol)を加えた。15分後にトリメチルシリルイミダゾール(620μL、4.2mmol)を加え、16時間撹拌を続けた。次に反応混合物をペンタン(15mL)で希釈し、敷き詰めたセライトを通して濾過した。濾液を減圧下に濃縮して、VIIIa(432mg、86%)を得、それをさらに精製することなくカップリング反応に使用した。H NMR(400MHz,CDCl)δ5.60(br s,2H)、2.68〜2.65(m,2H)、2.19〜2.15(m,2H)、1.23〜1.13(m,4H)、0.14(s,18H)。
【実施例5】
【0131】
(R,R)−O,O’−ビストリエチルシリルシクロヘキシル−1,2−ジヒドロキシルアミン(XIIIb)を調製する3通りの方法を下に示し、方法A、方法B,及び方法Cと名づける。トリエチルシリルクロリドを指すとき、TESClと略記することができる。


【0132】
方法A:CHCl(70mL)中にVIIIa(6.95g)を懸濁した液に、室温でEtN(12.6mL、90mmol)を加えた。30分撹拌後、反応混合物を−30℃に冷却して、2,6−ルチジン(17.4mL、150mmol)を次にトリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(TESOTf)(34mL、150mmol)を加えた。2分後、CO/アセトン冷却浴を取り外して、反応混合物を室温で6時間撹拌し、次いで食塩水(10mL)に注いでCHCl(2×200mL)で抽出した。有機抽出物をまとめて乾燥し(NaSO)、濾過して、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルでフラッシュクロマトグラフ法(EtOAc/ヘキサン、1:99)により精製して、VIIIb(5.60g、50%)を無色の油として得た。R 0.6(EtOAc/ヘキサン,1:9);FTIR(フィルム)υmax 2954、2876、1557、1540、1458、1417、1238、1072、1008、883、841、738cm−1H NMR(400MHz,CDCl)δ5.46(br s,2H)、2.66〜2.63(m,2H)、2.19〜2.18(m,2H)、1.71〜170(m,2H)、0.98(t,J=8.0Hz,18H)、0.67(q,J=8.0Hz,12H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ63.1(CH)、30.6(CH)、24.8(CH)、7.11(CH)、4.3(CH)。HRMS−ESI C1842SiNa[M+Na]の計算値397.2683、実測値397.2690。
【0133】
方法B:CHCl(1mL)中にVIIa(170mg、0.77mmol)及びピリジン(2mL)を加えた懸濁液を室温で撹拌しつつ、EtN(215μL、0.15mmol)を加えた。30分後、トリエチルシリルクロリド(TMSCl)(775μL、4.62mmol)を加え、48時間撹拌を続けてから、食塩水に注ぎ、CHCl(2×20mL)で抽出した。有機抽出物をまとめて乾燥し(NaSO)、濾過して、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法(EtOAc/ヘキサン、0.5:99.5)により精製して、VIIIb(156mg、54%)を無色の油として得た。R 0.6(EtOAc/ヘキサン,1:9);FTIR(フィルム)υmax 2954、2876、1557、1540、1458、1417、1238、1072、1008、883、841、738cm−1H NMR(400MHz,CDCl)δ5.46(br s,2H)、2.66〜2.63(m,2H)、2.19〜2.18(m,2H)、1.71〜170(m,2H)、0.98(t,J=8.0Hz,18H)、0.67(q,J=8.0Hz,12H)。13C NMR(125MHz,CDCl)δ63.1(CH)、30.6(CH)、24.8(CH)、7.11(CH)、4.3(CH)。
【0134】
方法C:CHCl(40mL)中にVIIa(2.24g、10.2mmol)を懸濁した液を室温で撹拌しつつ、EtN(3.70mL、25.6mmol)を加えた。1時間後、(白濁した懸濁液に)ジメチルアミノピリジン(DMAP)(374mg、3.06mmol)、イミダゾール(4.17g、61.4mmol)、それに続けてトリエチルシリルクロリド(6.90mL、40.9mmol)を加え、16時間撹拌を続け、次にNaHCO(5.16g、61.4mmol)の水溶液に注ぎ、EtOAc(2×100mL)で抽出した。有機抽出物をまとめて乾燥し(NaSO)、濾過して、減圧下に濃縮した。残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法(EtOAc/ヘキサン、0.5:99.5)により精製して、ジエチルシリルエーテルを1:1の混合物として含むVIIIb(4.23g)を得た。この化合物を減圧下に保って、ジエチルシリルエーテルを除去した。R 0.6(EtOAc/ヘキサン,1:9);FTIR(フィルム)υmax 2954、2876、1557、1540、1458、1417、1238、1072、1008、883、841、738cm−1H NMR(400MHz,CDCl)δ5.46(br s,2H)、2.66〜2.63(m,2H)、2.19〜2.18(m,2H)、1.71〜170(m,2H)、0.98(t,J=8.0Hz,18H)、0.67(q,J=8.0Hz,12H)。13C NMR(125MHz,CDCl)δ63.1(CH)、30.6(CH)、24.8(CH)、7.11(CH)、4.3(CH)。
【実施例6】
【0135】
シリル保護ジヒドロキシルアミンと酸塩化物との縮合の一般的操作3通りを下に示し、方法A、方法B、及び方法Cと名づける。生ずる生成物はキラルなビスヒドロキサム酸リガンドである。これらの方法で合成したリガンドの或る物に対応するスペクトルデータは、下記の各方法によって提供される。
【0136】
方法A:CHCl(30mL)中で酸塩化物(40.4mmol)及びヨウ化リチウム(16.2g、121.2mmol)を混合して、室温で6時間撹拌し、次に−10℃に冷却して、CHCl(25mL)中にVIII(5.85g、20.2mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(8.9mL、52.2mmol)の溶解した液を滴下して処理した。室温で12時間撹拌した後、3MのHCl水溶液を加えて、30分撹拌を続けた。次に混合物を塩化メチレン(2×50mL)で抽出し、乾燥(NaSO)、及び濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法により精製して、キラルなビスヒドロキサム酸リガンド(I)を得た。
【実施例7】
【0137】
この実施例は、(R,R)−N−{2−[(2,2−ジナフタレン−1−イルアセチル)−ヒドロキシアミノ]−シクロヘキシル}−N−ヒドロキシ−2,2−ジナフタレン−1−イルアセトアミド(Ie)(収率3%)のスペクトルデータを示す。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.96(s,2H)、7.98〜7.14(m,28H)、6.40(s,2H)、4.40(m 2H)、2.96〜1.82(m,6H)、1.30(m,2H)。


【実施例8】
【0138】
この実施例は、(R,R)−N−(2−{[2,2−ビス−(3−メトキシナフタレン−2−イル)アセチル]−ヒドロキシアミノ}−シクロヘキシル)−N−ヒドロキシ−2,2−ビス−(3−メトキシナフタレン−2−イル)−アセトアミド(Ig)(収率15%)のスペクトルデータを示す。R 0.5(EtOAc/ヘキサン,1:1);H NMR(400MHz,DMSO−d)δ9.48(s,2H)、7.81(d,J=8.2Hz,2H)、7.65(d,J=8.1Hz,2H)、7.66(d,J=6.6Hz,2H)、7.46〜7.07(m,16H)、6.92〜6.89(m,2H)、6.35(s,2H)、4.36〜4.33(m 2H)、3.78(s,6H)、3.62(s,6H)、1.86〜1.83(m,2H)、1.66〜1.64(s,2H)、1.52〜1.50(s,2H)、1.20〜1.18(m,2H);13C NMR(125MHz,DMSO−d)δ174.4、156.6、156.4、134.5、134.4、130.9、130.0、129.8、129.0、128.7、128.5、128.3、127.3、127.1、127.0、126.8、124.6、124.1、106.3、106.3、57.4、56.7、56.4、28.3、25.0。


【実施例9】
【0139】
この実施例はIpのスペクトルデータを示す。収率55%、白色固体である。R 0.42(EtOAc/ヘキサン,1:1);FTIR(KBr)υmax 3150、2940、2863、1609、1572、1501、1449、1451、1406、1316、1254、1175、795、714cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ8.05(s,2H)、7.65(d,J=7.8Hz,2H)、7.50(t,J=7.2Hz,2H)、7.37(d,J=7.8Hz,1H)、4.52〜4.49(m,2H)、2.09〜1.98(m,6H)、1.52〜1.42(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ173.8(C=O)、132.2(C)、132.0(C)、130.4(CH)、127.8(CH)、55.9(CH)、28.2(CH)、24.8(CH)。


【0140】
方法B:キラルなビスヒドロキサム酸リガンド調製の一般的操作を、ここで示す。CHCl中にVIII(1当量)及びDIEA(6当量)を溶解、撹拌して、酸塩化物(3当量)を加えた。24から72時間の後、反応混合物を減圧下に濃縮した。残渣にメタノール、続いて0.5MのHCl水溶液を加えた。15から20分撹拌した後、反応混合物をCHCl(又はEtOAc)で抽出し、食塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)、及び濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法により精製して、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドを得た。
【実施例10】
【0141】
この実施例は、(R,R)−N−[2−(ジフェニルアセチルヒドロキシアミノ)−シクロヘキシル]−N−ヒドロキシ−2,2−ジフェニル−アセトアミド(Ia)のスペクトルデータを示す(収率55%)。白色固体である。R 0.5(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3195、3062、3029、2961、2940、2862、1750、1687、1658、1620、1600、1495、1451、1401、1309、1251、1166、1079、1032、909、733、699cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ8.79(s,2H,OH)、7.31〜7.26(m,5H)、7.21〜7.18(m,5H)、7.16〜7.05(m,10H)、5.49(s,2H)、4.49〜4.48(m 2H)、1.78〜1.68(m,6H)、1.24〜1.21(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ175.2(C=O)、139.4(C)、139.2(C)、129.5(CH)、128.9(CH)、128.8(CH)、128.7(CH)、127.3(CH)、127.1(CH)、56.7(CH)、53.4(CH)、27.9(CH)、24.6(CH);HRMS−ESI C3434Na[M+Na]の計算値557.2416、実測値557.2438。


【実施例11】
【0142】
この実施例は、(R,R)−N−{2−[(2,2−ジ−ナフタレン−2−イルアセチル)−ヒドロキシアミノ]−シクロヘキシル}−N−ヒドロキシ−2,2−ジナフタレン−2−イルアセトアミド(If)(収率31%)のスペクトルデータを示す。R 0.6(EtOAc/ヘキサン,1:2);FTIR(フィルム)υmax 2937、2862、1605、1507、1406、1264、1235、1168、1017、923、854、811、741、712cm−1;H NMR(400MHz,CDCl)δ9.06(s,2H)、7.89〜7.32(m,28H)、5.91(s,2H)、4.53〜4.51(m 2H)、1.86〜1.76(m,6H)、1.31〜1.21(m,2H)。13C NMR(100MHz,CDCl)δ175.1(C=O)、136.5(C)、133.4(C)、133.3(C)、132.5(C)、132.4(C)、128.3(CH)、128.1(CH)、127.97(CH)、127.94(CH)、127.61(CH)、127.57(CH)、127.19(CH)、127.15(CH)、127.0(CH)、126.12(CH)、126.09(CH)、125.9(CH)、56.6(CH)、53.5(CH)、27.8(CH)、24.3(CH)。


【実施例12】
【0143】
この実施例は、(R,R)−N−(2−{[2,2−ビス−(4−tert−ブチルフェニル)−アセチル]−ヒドロキシアミノ}−シクロヘキシル)−2,2−ビス−(4−tert−ブチルフェニル)−N−ヒドロキシアセトアミド(Id)(収率71%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.7(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3419、2961、2904、2870、1652、1622、1511、1456、1410、1363、1269、1169、819、737、668cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ8.99(s,2H,OH)、7.32〜7.28(m,6H)、7.21〜7.15(m,12H)、5.53(s,2H)、4.32〜4.30(m 2H)、1.77〜1.71(m,6H)、1.27〜1.25(m,2H)、1.22(s,18H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ181.1(C=O)、150.1(C)、150.0(C)、138.4(C)、136.93(C)、136.88(C)、129.5(CH)、128.9(CH)、128.7(CH)、126.1(CH)、126.0(CH)、126.0(CH)、56.9(CH)、53.5(CH)、34.98(C)、34.97(C)、31.95(CH)、31.92(CH)、28.2(CH)、24.9(CH)。


【実施例13】
【0144】
この実施例は、(R,R)−N−(2−{[2,2−ビス−(3,5−ジメチルフェニル)−アセチル]−ヒドロキシアミノ}−シクロヘキシル)−2,2−ビス−(3,5−ジメチルフェニル)−N−ヒドロキシアセトアミド(Im)(収率45%)のスペクトルデータを示す。R 0.5(EtOAc/ヘキサン,1:4);FTIR(フィルム)υmax 3172、3007、2919、2861、1621、1602、1452、1404、1309、1264、1233、1166、1132、1037、958、897、851、823、790、770、736、710、688、660cm−1;H NMR(400MHz,CDCl)δ8.42(s,2H)、6.87〜6.72(m,12H)、5.35(s,2H)、4.52〜4.50(m 2H)、2.27(s,12H)、2.14(s,12H)、1.89〜1.77(m,6H)、1.26(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ175.0(C=O)、139.2(C)、139.0(C)、137.9(C)、137.5(C)、128.6(CH)、128.5(CH)、126.8(CH)、126.4(CH)、56.5(CH)、53.0(CH)、27.7(CH)、24.5,(CH)、21.4(CH3)、21.3(CH3);HRMS−ESI C4250Na[M+Na]の計算値669.3668、実測値669.3668。


【実施例14】
【0145】
この実施例は、(R,R)−N−(2−{[2,2−ビス−(3−メチルフェニル)−アセチル]−ヒドロキシアミノ}−シクロヘキシル)−2,2−ビス−(3−メチルフェニル)−N−ヒドロキシアセトアミド(In)(収率50%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.80(s,2H)、7.21〜7.18(m,2H)、7.06〜6.84(m,14H)、5.43(s,2H)、4.42〜4.50(m 2H)、2.30(s,6H)、2.21(s,6H)、1.83〜1.71(m,6H)、1.30〜1.25(m,2H);HRMS−ESI C3842Na[M+Na]の計算値613.3042、実測値613.3029。


【実施例15】
【0146】
この実施例は、(R,R)−2,2−ビス−ビフェニル−3−イル−N−{2−[(2,2−ビス−ビフェニル−3−イル−アセチル)−ヒドロキシアミノ]−シクロヘキシル}−N−ヒドロキシアセトアミド(Ib)(収率55%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.4(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3383、3057、3030、2938、2862、1634、1617、1559、1540、1520、1486、1419、1167、1008、911、826、764、735、696cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ9.07(s,2H)、7.55〜7.50(m,4H)、7.40〜7.37(m,4H)、7.33〜7.28(m,14H)、7.22〜7.17(m,10H)、5.69(s,2H)、4.54〜4.50(m 2H)、1.85〜1.76(m,6H)、1.27〜1.25(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ175.1(C=O)、140.9(C)、140.4(C)、141.2(C)、140.0(C)、138.4(C)、138.3(C)、129.9(CH)、129.3(CH)、129.0(CH)、128.9(CH)、127.6(CH)、127.5(CH)、127.4(CH)、127.3(CH)、127.1(CH)、56.9(CH)、52.9(CH)、28.0(CH)、24.6(CH)。


【実施例16】
【0147】
この実施例は、(R,R)−2,2−ビス−ビフェニル−3−イル−N−{2−[(2,2−ビス−ビフェニル−3−イル−アセチル)−ヒドロキシアミノ]−シクロヘキシル}−N−ヒドロキシ−アセトアミド(Ic)(収率46%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.4(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3420、1623、1599、1478、1455、1419、1170、908、755、733、699cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ8.81(s,2H)、7.52〜7.50(m,4H)、7.46〜7.42(m,10H)、7.39〜7.36(m,4H)、7.34〜7.24(m,12H)、7.19(d,J=7.5Hz,2H)、7.10(d,J=8.0Hz,2H)、6.94〜6.91(m,2H)、5.65(s,2H)、4.50〜4.49(m 2H)、1.80〜1.74(m,6H)、1.26〜1.24(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ175.0(C=O)、141.7(C)、141.6(C)、141.2(C)、141.0(C)、138.9(C)、139.6(C)、129.2(CH)、129.1(CH)、129.0(CH)、127.9(CH)、127.73(CH)、127.66(CH)、127.6(CH)、127.5(CH)、127.44(CH)、127.38(CH)、126.2(CH)、126.1(CH)、56.7(CH)、53.8(CH)、28.1(CH)、24.5(CH)。


【実施例17】
【0148】
この実施例はIk(収率41%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.4(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3141、2930、2860、1603 1470、1169、714、668cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ9.43(s,2H)、4.53〜4.51(m 2H)、3.21〜3.16(m,2H)、1.90〜1.82(m,6H)、1.61〜1.52(m,6H)、1.43〜1.25 9m 40H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ179.3(C=O)、56.2(CH)、36.3(CH)、28.3(CH)、26.8(CH)、26.6(CH)、24.9(CH)、24.0(CH)、23.93(CH)、23.90(CH)、23.87(CH)、23.7(CH)、23.61(CH)、23.56(CH)、22.8(CH)、22.6(CH)。


【実施例18】
【0149】
この実施例は、(R,R)−2−アダマンタン−1−イル−N−{2−[(2−アダマンタン−1−イルアセチル)−ヒドロキシアミノ]−シクロヘキシル}−N−ヒドロキシアセトアミド(Ij)(収率94%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.68(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3151、2902、2848、1602、1450、1172、909、733cm−1H NMR(400MHz,CDCl)δ8.38(s,2H,OH)、4.44〜4.39(m 2H)、2.59(d,J=12.7Hz,2H)、1.90(d,J=12.7Hz,2H)、1.86〜1.80(m,6H)、1.70〜1.57(m,28H)、1.40〜1.30(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ175.0(C=O)、55.3(CH)、46.0(CH)、42.8(CH)、37.0(CH)、33.8(C)、28.9(CH)、28.4(CH)、24.8(CH)。


【実施例19】
【0150】
この実施例は、(R,R)−N−ヒドロキシ−N−{2−[ヒドロキシ−(3,3,3−トリフェニルプロピオニル)−アミノ]−シクロヘキシル}−3,3,3−トリフェニルプロピオンアミド(Io)(収率72%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.63(EtOAc/ヘキサン,1:3);FTIR(フィルム)υmax 3150、2938、2859、1616、1493、1446、1419、1170、769、700cm−1H NMR(400MHz,CDCl)δ8.26(s,2H)、7.28〜7.17(m,30H)、4.19(d,J=16.1Hz,2H)、3.94〜3.92(m,2H)、3.55(d,J=16.1Hz,2H)、1.68〜1.65(m,2H)、1.50〜1.38(m,4H)、1.12〜1.07(m,2H);13C NMR(100MHz,CDCl)δ173.6(C=O)、147.2(C)、129.6(CH)、127.8(CH)、126.3(CH)、56.2(C)、55.2(CH)、42.5(CH)、27.5(CH)、24.6(CH);HRMS−ESI C4846Na[M+Na]の計算値737.3355、実測値737.3379。


【0151】
方法C:CHCl中にVIII(1当量)及びDIEA(6当量)を溶解し、撹拌しつつ、酸塩化物を加えた。48時間後、反応混合物を減圧下に濃縮して、残渣にメタノール、それに続いて0.5MのHCl水溶液を加えた。15から20分撹拌した後、反応混合物をCHClで抽出し、食塩水で洗浄して、乾燥(NaSO)、濾過した。濾液は減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法により精製して、モノヒドロキサム酸を得た。CHCl中にモノヒドロキサム酸を溶解し、撹拌しつつ、調製直後の酸塩化物及びDIEAを加えた。48時間後に、反応混合物を飽和NHCl水溶液に注ぎ、EtOAcで抽出し、食塩水で洗浄、乾燥(NaSO)及び濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法により精製して、キラルなビスヒドロキサム酸リガンドを得た。
【実施例20】
【0152】
この実施例は、(R,R)−2,2−ジシクロヘキシル−N−{2−[(2,2−ジシクロヘキシル−アセチル)−ヒドロキシ−アミノ]−シクロヘキシル}−N−ヒドロキシ−アセトアミド(IL)(収率28%)のスペクトルデータを示す。白色固体である。R 0.61(EtOAc/ヘキサン,3:7);FTIR(フィルム)υmax 3149、2930、2849、1616、1577、1445、1374、1177cm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ9.00(s,2H,OH)、4.57〜4.50(m,2H)、2.96(dd,J=9.0,5.0Hz,2H)、1.89〜0.89(一連のm,52H);13C NMR(125MHz,CDCl)δ178.9(C=O)、57.8(CH)、51.2(CH)、38.9(CH)、36.9(CH)、32.3(CH)、32.1(CH)、31.2(CH)、29.5(CH)、29.3(CH)、27.6(CH)、27.5(CH)、27.2,27.14(CH)、27.10(CH)、25.3(CH);;HRMS−ESI C3458Na[M+Na]の計算値581.4294、実測値581.4294。


【実施例21】
【0153】
アルコール(酸塩化物の調製に使用される酸塩化物の前駆体)を調製するための一般的操作を下に示す。置換基R’は、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択することができる。


【0154】
アルゴン雰囲気下室温で、THF(10mL)中にマグネシウム(1.1当量)を懸濁撹拌して、少量のヨウ素の結晶を加え、それらの混合物を還流下に加熱した。この還流している溶液に、臭化アリ−ル(XIII)のごく一部(全量1当量の約5%)を加えて、加熱を続けた。5分後に、臭化アリールの残りを加えて、油浴で還流し、基質の種類に従って1から2時間加熱した。油浴を取り外して、高温の反応混合物にギ酸エチルを5分かけて滴下し、それから1から2時間室温で撹拌した。反応混合物を飽和NHCl水溶液に注いだ。30分間撹拌した後、2相になっている混合物をEtOAcで抽出し(3回)、有機抽出物をまとめて食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)、濾過して、減圧下に濃縮し、粗アルコールXIVを得て、基質に合わせてシリカゲルのクロマトグラフ又は再結晶により精製した。
【実施例22】
【0155】
この実施例は、ビス−(3−メトキシナフタレン−2−イル)−メタノール(収率74%)のスペクトルデータを示す。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.74(d,J=8.0Hz,2H)、7.69(d,J=8.0Hz,2H)、7.66(s,2H)、7.46〜7.41(m,2H)、7.32〜7.29(m,2H)、7.17(s,2H)、6.60(s,1H)、3.93(s,6H)、3.50(br s,1H)。


【実施例23】
【0156】
この実施例は、ビス−(4−tert−ブチルフェニル)−メタノールのスペクトルデータを示す(収率90%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.37(d,J=8.6Hz,4H)、7.34(d,J=8.6Hz,4H)、5.83(s,1H)、2.16(br s,1H)、1.34(s,18H)。


【実施例24】
【0157】
この実施例は、ビス−ビフェニル−4−イル−メタノール(収率84%)のスペクトルデータを示す。H NMR(500MHz,CDCl)7.62〜7.59(m,8H)、7.52(d,J=8.2Hz,4H)、7.47〜7.44(m,4H)、7.32〜7.29(m,4H)、5.97(s,1H)、2.31(br s,1H)。


【実施例25】
【0158】
この実施例は、ビス−ビフェニル−4−イル−メタノールのスペクトルデータを示す。収率81%。H NMR(500MHz,CDCl)7.70(s,2H)、7.62〜7.60(m,4H)、7.48〜7.47(m,2H)、7.46〜7.43(m,8H)、7.38〜7.37(m,2H)、5.32(s,2H);


【実施例26】
【0159】
この実施例はビス−(ナフタレン−2−イル)−メタノールのスペクトルデータを示す。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.95(s,2H)、7.86〜7.79(m,6H)、7.50〜7.46(m,6H)、6.16(s,1H)、2.53(s,1H)。


【実施例27】
【0160】
この実施例はビス−(ナフタレン−1−イル)−メタノールのスペクトルデータを示す。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.89(d,J=8.4Hz,2H)、7.91(d,J=8.0Hz,2H)、7.82(d,J=7.8Hz,2H)、7.53〜7.37(m,8H)、7.20(s,1H)、2.73(s,1H)。


【実施例28】
【0161】
この実施例はビス−(3,5−ジメチル−フェニル)−メタノールのスペクトルデータを示す。(収率81%)H NMR(400MHz,CDCl)δ7.00(s,4H)、6.90(s,2H)、5.70(d,J=3.2Hz,1H)、2.30(s,12H)、2.12(d,J=3.4Hz,1H)。


【実施例29】
【0162】
アルコールを還元する一般的方法を下に示す。


【0163】
MeCN中にNaI(6当量)を懸濁して、室温、窒素雰囲気下で撹拌しつつ、トリメチルシリルクロリド(6当量)を加えた。20分撹拌した後、反応混合物を0℃に冷却し、CHCl及びMeCN(1:1混合物)の中に溶解したアルコールXIV(1当量)を1時間かけて加えた。さらに同じ温度で30分撹拌した後、反応混合物を5分放置して室温に温め、その後直ちに0℃に冷却してNaOH(4当量)水溶液に注ぎ、NaOH溶液をさらに追加して水層のpHを7に調節した。2相混合物をEtOAcで抽出し(2回)、有機相を飽和Na水溶液で洗浄して色が少しもなくなるまでヨウ素を完全に除去した。水相部分は少量のEtOAcで抽出し、次に有機抽出物はまとめて乾燥し(NaSO)、濾過して減圧下に濃縮した。残渣を、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフ又は再結晶により精製して、所望の化合物(XV)を得た。
【実施例30】
【0164】
この実施例は、ビス−(3−メトキシナフタレン−2−イル)−メタンのスペクトルデータを示す。収率89%。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.69(d,J=8.2Hz,2H)、7.58(d,J=8.2Hz,2H)、7.39(s,2H)、7.36〜7.33(m,2H)、7.26〜7.23(m,2H)、7.10(s,2H)、4.21(s,2H)、3.87(s,6H)。


【実施例31】
【0165】
この実施例は、ビス−(4−tert−ブチル−フェニル)−メタノールのスペクトルデータを示す。収率90%。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.27(d,J=8.0Hz,4H)、7.10(d,J=8.0Hz,4H)、3.89(s,2H)、1.26(s,18H)。


【実施例32】
【0166】
この実施例は、ビス−ビフェニル−4−イル−メタンのスペクトルデータを示す。収率92%。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.56〜7.54(m,4H)、7.41〜7.40(m,4H)、7.47〜7.44(m,4H)、7.38〜7.27(m,6H)、4.04(s,2H)。


【実施例33】
【0167】
この実施例は、ビス−ビフェニル−4−イル−メタンのスペクトルデータを示す。収率64%。FTIR(フィルム)υmaxcm−1H NMR(500MHz,CDCl)δ7.56〜7.54(m,4H)、7.44〜7.38(m,8H)、7.34〜7.29(m,4H)、7.20〜7.19(m,2H)、4.09(s,2H)。


【実施例34】
【0168】
この実施例は、ビス−(ナフタレン−2−イル)−メタンのスペクトルデータを示す。収率66%。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.87〜7.81(m,6H)、7.73(s,2H)、7.53〜7.46(m,4H)、7.39(dd,J=8.4Hz,1.6Hz,2H)、4.35(s,2H)。


【実施例35】
【0169】
この実施例は、ビス−(ナフタレン−1−イル)−メタンのスペクトルデータを示す。収率67%。H NMR(400MHz,CDCl)δ8.07(d,J=8.0Hz,2H)、7.94(d,J=7.6Hz,2H)、7.80(d,J=8.4Hz,2H)、7.57〜7.50(m,4H)、7.36(t,J=8.0Hz,2H)、7.11(d,J=6.8Hz,2H)、4.92(s,2H)。


【実施例36】
【0170】
この実施例は、ビス−(3,5−ジメチルフェニル)−メタンのスペクトルデータを示す。収率82%。H NMR(400MHz,CDCl)δ6.83(s,2H)、6.81(s,4H)、3.82(s,2H)、2.27(s,12H)。


【実施例37】
【0171】
カルボン酸を調製する一般的方法を下に示す。


【0172】
THF中にジアリールメタン(XVI)(1当量)を懸濁し撹拌して、アルゴン雰囲気下室温でn−ブチルリチウム(1.3当量)を加えた。1時間後に、反応混合物に無水COを気泡にして通じ、さらに1時間撹拌した。アルキルリチウム種が全て消費されたところで、反応混合物を減圧下に濃縮して、NaOH(10〜15当量)水溶液を加えた。水溶液をエーテルで洗浄して分離し、1MのHClでpH2から3の酸性にして、EtOAcで抽出した(3回)。次に有機抽出物をまとめて乾燥(NaSO)、濾過し、減圧下に濃縮した。残渣を再結晶により精製して、カルボン酸XVIIを得た。
【実施例38】
【0173】
この実施例は、ビス−(3−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−酢酸のスペクトルデータを示す。収率83%。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ7.86(d,J=8.1Hz,2H)、7.73(d,J=8.2Hz,2H)、7.48〜7.42(m,6H)、7.32〜7.30(m,2H)、5.68(s,1H)、3.90(s,6H)。


【実施例39】
【0174】
この実施例は、ビス−(4−tertブチルフェニル)−酢酸のスペクトルデータを示す。収率63%。H NMR(500MHz,DMSO−d+1M HCl)δ7.19〜7.17(m,4H)、7.10〜7.07(m,4H)、4.78(s,1H)、1.11(s,9H)、1.09(s,9H)。


【実施例40】
【0175】
この実施例は、ビス−ビフェニル−4−イル−酢酸のスペクトルデータを示す。収率87%。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ7.54〜7.52(m,8H)、7.34〜7.33(m,8H)、7.26〜7.25(m,2H)、5.07(s,1H)。


【実施例41】
【0176】
この実施例は、ビス−ビフェニル−3−イル−酢酸のスペクトルデータを示す。収率83%。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ7.56〜7.54(m,2H)、7.51〜7.33〜7.49(m,4H)、7.37〜7.35(m,2H)、7.31〜7.24(m,10H)、5.15(s,1H)。


【実施例42】
【0177】
この実施例は、ビス−(ナフタレン−2−イル)−酢酸のスペクトルデータを示す。収率72%。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ12.91(bs,1H)、7.90〜7.88(m,8H)、7.54〜7.48(m,6H)、5.45(s,1H)。


【実施例43】
【0178】
この実施例は、ビス−(ナフタレン−1−イル)−酢酸のスペクトルデータを示す(収率57%)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ13.05(bs,1H)、8.06〜8.02(m,4H)、7.93(d,J=8.2Hz,2H)7.61〜7.47(m,6H)、7.22(d,J=7.1Hz,2H)、6.54(s,1H)。


【実施例44】
【0179】
この実施例は、ビス−(3,5−ジメチル−フェニル)−酢酸のスペクトルデータを示す(収率58%)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ12.57(bs,1H)、6.90(s,4H)、6.86(s,2H)、4.85(s,1H)、2.23(s,12H)。


【実施例45】
【0180】
VO(OPr及びヒドロキサム酸リガンドの存在下にアリル系アルコールを不斉エポキシ化する一般的方法を下に示す。


【0181】
ヒドロキサム酸(0.02当量)のトルエン溶液に、VO(OPr(0.01当量)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。その得られた溶液を0℃に冷却し、70%tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)(1.5当量)水溶液及びアリルアルコールXb(1当量)を加えて、撹拌を同じ温度で数時間継続し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCによりエポキシ化が完結したとされたとき、飽和NaSO水溶液を加えて、混合物を15分の時間をかけて室温に温め、EtOで抽出し、乾燥して(NaSO)減圧下に濃縮した。残った残渣をシリカゲルでフラッシュカラムクロマトグラフ法により精製して、エポキシアルコールを得た。エポキシアルコールXIIaのエナンチオマー過剰率を、キラルOD−Hカラム(ヘキサン/2−プロパノール95:5;0.5mL/分)を用いて測定した結果、主成分エナンチオマーt=13.9分、少量成分エナンチオマーt=12.0分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化試薬の存在下に、基質を触媒量のキラルなビスヒドロキサム酸リガンド及び金属と反応させて、キラルな酸化生成物を生成することを含む触媒不斉酸化を実施する方法。
【請求項2】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンドが構造Iを有する請求項1に記載の方法、



(式中、
、R、R、R、R、及びRは各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択され、
又は、RとRとは、それらが結合している原子と共に、シクロアルキル、ヘテロシクリル、若しくはアリールからなる群から選択された置換若しくは非置換の環を形成し、
又は、RとRとは、それらが結合している原子と共に、シクロアルキル、ヘテロシクリル、若しくはアリールからなる群から選択された置換若しくは非置換の環を形成し、
、R、R、及びR10は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択され、
又は、RとRとは、それらが結合している原子と共に、シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択された置換若しくは非置換の環を形成し、
−Z−は−C(O)−及び−S(O)−からなる群から選択される)。
【請求項3】
金属が、バナジウム(IV)、バナジウム(V)、モリブデン(IV)、モリブデン(V)、及びモリブデン(VI)からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属が、バナジウム(IV)及びバナジウム(V)からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属が、モリブデン(IV)、モリブデン(V)、及びモリブデン(VI)からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
基質が、スルフィド、ホスフィン、アルケン、及び環状アルケンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基質が、スルフィド及びホスフィンからなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基質が、アルケン、及び環状アルケンからなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
酸化試薬が次の構造(II)を有する有機ヒドロペルオキシドである請求項1に記載の方法

(式中、R11はアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからなる群から選択される)。
【請求項10】
キラルな酸化生成物が構造IIIを有する請求項1に記載の方法


(式中、
Yはスルフィド及びホスフィンからなる群から選択される)。
【請求項11】
基質が、アルケン又は環状アルケンである請求項2に記載の方法。
【請求項12】
、R、R、R、R、及びRが各々独立に、水素、アルキル、アルコキシ、及びアルキルアミノからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項13】
、R、R、R、R、及びRが各々独立に、シクロアルキル、ヘテロシクリルからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項14】
、R、R、R、R、及びRが各々独立に、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項15】
とRとが、それらが結合している原子と共に置換若しくは非置換の環を形成し、
とRとが、それらが結合している原子と共に置換若しくは非置換の環を形成し、且つ
とRとにより形成される環が、RとRとにより形成される環と同一である請求項2に記載の方法。
【請求項16】
、R、R、及びR10が各々独立に、水素、アルキル、アルコキシ、及びアルキルアミノからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項17】
、R、R、及びR10が各々独立に、シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項18】
、R、R、及びR10が各々独立に、アリール、アリールアルキル、及びヘテロアリールからなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項19】
とRとが、それらが結合している原子と共に環を形成する請求項2に記載の方法。
【請求項20】
とR10とが同一である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
とRとが、それらが結合している原子と共に環を形成する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
とR10とが同一である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
及びRがアリール基であり、
が水素であり、
及びRがアリール基であり、及び
が水素である請求項2に記載の方法。
【請求項24】
とRとが同一であり、且つ
とRとが同一である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
、R、R、及びRが同一である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンド(I)が、下記の化合物からなる群から選択される請求項2に記載の方法。

【請求項27】
金属が、バナジウム(IV)及びバナジウム(V)からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項28】
金属が、モリブデン(IV)、モリブデン(V)及びモリブデン(VI)からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項29】
金属が、VO(OPr、VO(acac)、VO(OEt)、及びMoO(acac)からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項30】
金属が、VO(OPr、VO(acac)、VO(OEt)、及びMoO(acac)からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項31】
有機ヒドロペルオキシドが、tert−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項32】
有機ヒドロペルオキシドが、tert−ブチルヒドロペルオキシドである請求項9に記載の方法。
【請求項33】
有機ヒドロペルオキシドが、クメンヒドロペルオキシドである請求項9に記載の方法。
【請求項34】
酸化試薬が、tert−ブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドからなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項35】
酸化試薬が、tert−ブチルヒドロペルオキシドである請求項8に記載の方法。
【請求項36】
酸化試薬が、クメンヒドロペルオキシドである請求項8に記載の方法。
【請求項37】
酸化試薬が過酸化水素である請求項1に記載の方法。
【請求項38】
酸化試薬が過酸化水素である請求項8に記載の方法。
【請求項39】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンドを調製する方法であって、
光学活性な酒石酸1,2−ジアンモニウムをp−アニスアルデヒドと縮合させてジイミンを供給するステップ、
ジイミンを酸化してジオキサジリジンを生成するステップ、
ジオキサジリジンを加水分解してジヒドロキシルアミン塩酸塩を生成するステップ、
ジヒドロキシルアミン塩酸塩をシリル化してシリル保護ジヒドロキシルアミンを供給するステップ、
シリル保護ジヒドロキシルアミンを酸塩化物と縮合させてキラルなビスヒドロキサム酸リガンドを生成するステップ
を含む方法。
【請求項40】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンドを調製する方法であって、
光学活性な酒石酸1,2−ジアンモニウム(IV)をp−アニスアルデヒドと縮合させてジイミン(V)を供給するステップ、
ジイミン(V)を酸化してジオキサジリジン(VI)を生成するステップ、
ジオキサジリジン(VI)を加水分解してジヒドロキシルアミン塩酸塩(VII)を生成するステップ、
ジヒドロキシルアミン塩酸塩(VII)をシリル化してシリル保護ジヒドロキシルアミン(VIII)を供給するステップ、
シリル保護ジヒドロキシルアミンを酸塩化物と縮合させてビスヒドロキサム酸(IX)を生成するステップ、
を含む請求項39に記載の方法。


【請求項41】
キラルなビスヒドロキサム酸リガンド(I)が次の式から選択される請求項1に記載の方法



(式中、
13、R14、R15、R16、R17、及びR18は、各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択され、
19及びR20は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択され、
21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択され、
25及びR26は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される)。
【請求項42】
アルケンが式(X)のものである請求項8に記載の方法



(式中、
23、R24、R25、及びR26は、各々独立に、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、及びアリールアルキルからなる群から選択される)。
【請求項43】
アルケンが、式(Xa)の環状アルケンである請求項8に記載の方法



(式中、R27及びR28は、各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロゲン及びアルケンからなる群から選択され、
nは、1、2、3、4、5、6、又は6であり、
各Xは、−CR’R”、−NR’−、及び−O−からなる群から独立に選択され、
R’及びR”は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、及びハロゲンからなる群から選択される)。
【請求項44】
キラルな酸化生成物が式(Xb)のものである請求項42に記載の方法。


【請求項45】
キラルな酸化生成物が式(Xc)のものである請求項43に記載の方法。


【請求項46】
反応ステップを溶媒中で実施する請求項1に記載の方法。
【請求項47】
反応ステップを、塩化メチレン、トルエン、クロロホルム、及び酢酸エチルからなる群から選択した溶媒中で実施する請求項46に記載の方法。
【請求項48】
反応ステップを、約−20℃から約25℃の温度で実施する請求項1に記載の方法。
【請求項49】
約0.001当量から約0.1当量のキラルなビスヒドロキサム酸リガンド(I)を用いて、反応を実施する請求項1に記載の方法。
【請求項50】
約0.005当量から約0.05当量の金属を用いて、反応を実施する請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2007−522115(P2007−522115A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549384(P2006−549384)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/000306
【国際公開番号】WO2005/072868
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504284711)ユニバーシティ オブ シカゴ (3)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】