説明

触媒担持繊維構造体の製造方法

【課題】極めて簡便な方法で高い有害物質分解能を有する繊維構造体を製造する方法を提供すること。
【解決手段】繊維形成性化合物を溶媒に溶解して得た溶液に、更に触媒粒子を分散させた分散溶液を製造する段階と、前記分散溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される触媒担持繊維構造体を得る段階を含む、触媒担持繊維構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造体を構成する繊維に触媒を担持した触媒担持繊維構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球環境の悪化に伴い、環境問題は社会問題として取り上げられ、その関心はますます高まるばかりである。環境問題の深刻化とともに、有害な汚染化学物質の高度な除去技術の開発が求められている。中でも、ベンゼン、トリクロロエチレン等のVOC(揮発性有機化合物)やフタル酸エステル等の内分泌撹乱物質は人体に及ぼす深刻な影響が危惧されており、特にこれらの物質を含む排水については、大規規模処理施設の設置は勿論のこと、個々の発生源で実質的に完全除去することが求められ始めている。
【0003】
これら汚染化学物質の除去方法として、微生物を排水中の有害物質を分解する触媒として用いる方法が検討されており、例えば、合成繊維の編織物に微生物を担持して有害物質を分解する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では微生物の担持量に限界があるため、処理効率が悪いという問題があった。
【0004】
また、排水中の有害物質を除去・分解するための吸着剤や触媒等の研究開発もなされており、なかでも有害物質を分解できる触媒として、光触媒作用を有する酸化チタンが着目されている。すなわち酸化チタンからなる光触媒にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射すると光励起により、伝導帯に電子を、価電子帯に正孔を生じるが、この光励起して生成する電子と正孔の高い還元力および酸化力を、有害物質の分解のために利用するというものである。
【0005】
例えば、特定の比表面積を有する多孔質ウィスカーに光触媒酸化チタンを担持した光触媒性ウィスカーが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法で得られるウィスカーを実際の排水処理に用いるためには、更にこのウィスカーを塗料やゴム等に含有させねばならず、操作が煩雑であり、かつ最終的に用いる形態中の触媒担持量は小さくなるという問題点があった。
【0006】
また、特定の比表面積以下のチタニア繊維表面に酸化チタンを担持した光触媒用チタニア繊維が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法のチタニア繊維も、触媒担持量が少ないという問題点があった。また、チタニア繊維は柔軟性が乏しいため、用いる形態が制限されるといった問題もあった。
【0007】
更に柔軟性のある素材を用いた例として織布あるいは不織布に光触媒を担持させること、より具体的にはアラミド繊維クロス、フッ素樹脂クロス等に光触媒を担持させる可能性も示唆されているが(例えば、特許文献4参照。)、やはり触媒担持量が少ないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−288569号公報
【特許文献2】特開2000−271488号公報
【特許文献3】特開2000−218170号公報
【特許文献4】特開平9−267043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、極めて簡便な方法で高い有害物質分解能を有する繊維構造体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の目的は、
繊維形成性化合物を溶媒に溶解して得た溶液に、更に触媒粒子を分散させた分散溶液を製造する段階と、前記分散溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される触媒担持繊維構造体を得る段階を含む、繊維構造体を構成する有機高分子よりなる繊維に触媒を担持した触媒担持繊維構造体の製造方法であって、該繊維の平均繊維径が1μm以下であり、かつ20μm以下の繊維長を有する繊維を実質的に含まない、触媒担持繊維構造体の製造方法によって達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、極めて簡便な方法で高い有害物質分解能を有する繊維構造体を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明において「繊維構造体」とは、繊維が、織り、編み、積層などの操作を受けることによって、形成された三次元の構造体をいい、好ましい例として不織布を挙げることができる。
【0013】
本発明の繊維構造体を形成する繊維の平均繊維径は1μm以下であることが必要である。平均繊維径が1μmを超えると、繊維の比表面積が小さくなるので担持できる触媒の量が少なくなる。また、繊維の平均径は0.01μm以上あれば、得られる繊維構造体の強度は十分なものとなる。該繊維構造体を構成する繊維の平均径は好ましくは、0.01〜0.7μmの範囲にあることである。
【0014】
本発明の繊維構造体は、20μm以下の繊維長を有する繊維を実質的に含まない。ここでいう、実質的に含まないとは、走査型電子顕微鏡によって任意の場所を観察しても20μm以下の繊維長を有する繊維が観察されないことを意味する。20μm以下の繊維長を有すると、得られる繊維構造体の力学強度が不十分となり好ましくない。本発明においては、40μm以下の繊維長を有する繊維を含まないことが好ましく、1mm以下の繊維長を有する繊維を含まないことがより好ましい。
【0015】
また、繊維構造体を構成する繊維に担持する触媒としては、有害物質を分解することが可能なものであれば特に限定を受けないが、例えば酸化チタン等の光触媒、アロフェン、フライアッシュ等の無機化合物、白色腐朽菌、トリクロロエチレン分解菌などの微生物触媒、各種酵素などを挙げることが出来る。これらのうち、取り扱い性や活性などの観点から無機化合物を用いることが好ましく、特に光触媒が好ましく、とりわけ酸化チタンを用いることが好ましい。なお、酸化チタンを用いる場合には微粒子であるほうが、繊維に担持しやすいので好ましい。
【0016】
なお、触媒として光触媒を用いるとき、その光触媒の表面の一部が他の無機化合物で被覆されていると、触媒担持繊維構造体としたとき高い触媒活性を示し、より好ましい。光触媒の表面を被覆する他の無機化合物としては、例えばシリカやアパタイトなどのセラミックスが挙げられる。
【0017】
本発明において、前記触媒は繊維構造体を構成する繊維に担持されている限り、どのような担持状態であってもよく、例えば、(a)繊維構造体を構成する繊維表面に付着した状態、(b)繊維内部に含有され、一部の触媒は繊維表面に露出するように含有された状態、(c)触媒が粒子径1〜100μmの範囲にある粒子であって、該粒子を繊維構造体中に内包しかつ内包した触媒粒子を、該触媒粒子と繊維構造体を構成する繊維との非接触部分が存在する中に内包され、かつ内包された触媒粒子表面には該触媒粒子と繊維との非接触部分を含む状態とすることができる。ここで、本発明において内包とは、繊維構造体から触媒が滑落しないように保持されている状態をいい、特に、触媒粒子が、その表面に一本又は複数の繊維が少なくとも接触していることによって行われ、触媒粒子が繊維構造体中に埋もれているような状態であることが好ましい。
【0018】
前記(a)の担持状態の繊維構造体は、繊維構造体から触媒が脱落する可能性が高いが、触媒表面を有効に利用することができるので、機械的応力や変形など、触媒脱落の要因が発生しにくい用途に用いることができる。
【0019】
また、前記(b)の担持状態の繊維構造体は、前記(a)の担持状態よりは触媒表面の露出面積が少ないが、触媒繊維構造体から触媒が脱落しにくいので、前記(a)の担持状態の繊維構造体には適さないような、触媒脱落の要因が発生しやすい用途に用いることができる。
【0020】
更に、前記(c)の担持状態の繊維構造体は、前記(a)の担持状態と前記(b)の担持状態との中間的なものである。
ここで、前記(c)の担持状態においては、前記触媒粒子径は、その粒子径が1〜100μmの範囲になければならない。粒子径が1μmより小さいと、反応に寄与できる触媒の比表面積は大きくなるが、絶対的な表面積が小さくなりすぎるので好ましくない。また、100μmを超えると、反応に寄与できる触媒の絶対的な面積は大きくなるが、触媒の比表面積が小さくなりすぎる。
【0021】
なお、ここでいう粒子径とは、繊維構造体中に担持された粒子の径のうち最も大きな部分の値の平均値のことであり、一次粒子径の値でも良いし、触媒粒子が繊維構造体中で凝集して形成した凝集体(いわゆる二次凝集粒子)の粒子径の値でも良いが、一次粒子径が1〜100μmの範囲にある方が、より高い活性を示し、好ましい。より好ましい粒子径は1.5μm〜30μmである。
【0022】
本発明において、前記(a)〜(c)の担持状態とする場合には、目的とする用途によって適宜選択すればよく、また複数の繊維構造体を重ね合わせ、貼り合わせ等することによって複合形態とし、例えば、前記(b)の担持状態の繊維構造体を最外側に配し、前記(a)の担持状態の繊維構造体を最内側に配して繊維構造体全体としての触媒脱落を低減させたり、その逆に配することで、繊維構造体全体としては触媒を保持しつつ、繊維構造体の一部の触媒を意図的に脱落させたりすることもできる。
【0023】
本発明の繊維構造体を形成する繊維は、力学物性や取り扱い性から有機高分子よりなるものとする。
【0024】
上記有機高分子としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスチレン、アラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド−3,4’−オキシジフェニレンテレフタラミド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリパラフェニレンピロメリトイミド、ポリ−4,4’−オキシジフェニレンピロメリトイミド、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、メチルセルロース、プロピルセルロース、ベンジルセルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリエチレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリグルタミン酸、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリビニルイソシアネート、ポリブチルイソシアネート、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルノルマルプロピルエーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル、ポリビニルノルマルブチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルターシャリーブチルエーテル、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(N−ビニルカルバゾル)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルメチルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリシクロペンテンオキシド、ポリスチレンサルホン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ポリフッ化ビニリデン、ポリ臭化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリクロロプレン、ノルボルネン系モノマーの開環重合体およびその水添物、フィブロイン、天然ゴム、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼインなどを挙げられるが、これらは共重合したものであっても、混合物であってもよく、種々の観点から選択することができる。
【0025】
上記選択の例としては、例えば、取り扱い性や物性などから、ポリアクリロニトリルおよびこれらの共重合体または、これを熱処理した化合物を用いることもできるし、繊維に担持したどのような触媒からの影響によっても繊維構造体自身が分解されないようにするため、ハロゲン元素を含有する有機高分子(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ臭化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリクロロプレン等)、特にポリ塩化ビニルを用いてもよく、繊維構造体に生分解性を持たせ、長期間使用後に土中で自然に分解するように、ポリ乳酸を用いてもよい。
【0026】
また、繊維を形成した後、これらを熱処理や化学処理を施した繊維を用いても良く、更に、前記高分子に必要に応じてエマルジョン、あるいは有機、無機物の粉末を混合して用いることも出来る。
【0027】
本発明の触媒担持繊維構造体は、単独で用いても良いが、取り扱い性やその他の要求事項に合わせて、他の部材と組み合わせて使用しても良い。例えば、捕集基板として支持基材となりうる不織布や織布、フィルム等を用い、その上に繊維積層体を形成することで、支持基材と該繊維積層体を組み合わせた部材を作成することも出来る。
【0028】
本発明の触媒担持繊維構造体は、上記のような平均繊維径、繊維長を有する触媒担持繊維構造体を得ることが可能な限り、どのような製造方法を採用してもよい。
なお、以下に、本発明の触媒担持構造体を製造する態様のうち、前述の(a)〜(c)の担持状態を製造する方法について以下説明する。
【0029】
前述の(a)の担持状態を有する繊維構造体は、例えば、繊維形成性の有機高分子を溶解させて溶液を製造する段階と、前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階と、前記繊維構造体に触媒を担持させる段階とを含む、触媒担持繊維構造体の製造方法により得ることができる。
【0030】
ここで、静電紡糸法とは繊維形成性の化合物を溶解させた溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板上に累積することによって繊維構造体を得る方法であって、繊維状物質とは、繊維形成性化合物を溶解させた溶媒が留去して繊維積層体となっている状態のみならず、該溶媒が繊維状物質に含まれている状態も示している。
【0031】
次いで、静電紡糸法で用いる装置について説明する。
前述の電極は、金属、無機物、または有機物のいかなるものでも導電性を示しさえすれば用いることができ、また、絶縁物上に導電性を示す金属、無機物、または有機物の薄膜を持つものであっても良い。
【0032】
また、静電場は一対又は複数の電極間で形成されており、いずれの電極に高電圧を印加しても良い。これは、例えば電圧値が異なる高電圧の電極が2つ(例えば15kVと10kV)と、アースにつながった電極の合計3つの電極を用いる場合も含み、または3つを越える数の電極を使う場合も含むものとする。
【0033】
次に静電紡糸法による本発明の繊維構造体を構成する繊維の製造手法について順を追って説明する。
まず繊維形成性の有機高分子を溶解させて溶液を製造するが、ここで、溶液中の繊維形成性の有機高分子の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。該濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維構造体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと、得られる繊維の平均径が大きくなり好ましくない。より好ましい濃度は2〜20重量%である。
【0034】
また、前記の、有機高分子を溶解させるための溶媒としては、繊維形成性の有機高分子を溶解し、かつ静電紡糸法にて紡糸する段階で蒸発し、繊維を形成可能なものであれば特に限定されないが、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、塩化メチレン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、蟻酸、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、1,3−ジオキソラン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、上記溶媒の混合溶媒等が挙げられる。
【0035】
これらのうち、取り扱い性や物性などから、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミドとテトラヒドロフランとの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0036】
次に前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階について説明する。該溶液を静電場中に吐出するには、任意の方法を用いることが出来、例えば、溶液をノズルに供給することによって、溶液を静電場中の適切な位置に置き、そのノズルから溶液を電界によって曳糸して繊維化させればよい。
【0037】
以下、第1図を用いて更に具体的に説明する。
注射器の筒状の溶液保持槽(第1図3)の先端部に適宜の手段、例えば高電圧発生器(第1図6)にて電圧をかけた注射針状の溶液噴出ノズル(第1図1)を設置して、溶液(第1図2)を溶液噴出ノズル先端部まで導く。接地した繊維状物質捕集電極(第1図5)から適切な距離で該溶液噴出ノズル(第1図1)の先端を配置し、溶液(第1図2)を該溶液噴出ノズル(第1図1)の先端部から噴出させ、このノズル先端部分と繊維状物質捕集電極(第1図5)との間で繊維状物質を形成させることができる。
【0038】
また他の態様として、第2図を以って説明すると、該溶液の微細滴(図示せず。)を静電場中に導入することもでき、その際の唯一の要件は溶液(第2図2)を静電場中に置いて、繊維化が起こりうるような距離に繊維状物質捕集電極(第2図5)から離して保持することである。例えば、溶液噴出ノズル(第2図1)を有する溶液保持槽(第2図3)中の溶液(第2図2)に直接、繊維状物質捕集電極に対抗する電極(第2図4)を挿入することもできる。
【0039】
該溶液をノズルから静電場中に供給する場合、数個のノズルを並列的に用いて繊維状物質の生産速度を上げることもできる。また、電極間の距離は、帯電量、ノズル寸法、溶液のノズルからの噴出量、溶液濃度等に依存するが、10kV程度のときには5〜20cmの距離が適当であった。また、印加される静電気電位は、一般に3〜100kV、好ましくは5〜50kV、一層好ましくは5〜30kVである。所望の電位は従来公知の任意の適切な方法で作れば良い。
【0040】
上記二つの態様は、電極が捕集基板を兼ねる場合であるが、電極間に捕集基板となりうる物を設置することで、電極と別に捕集基板を設け、そこに繊維積層体を捕集することも出来る。この場合、例えばベルト状物質を電極間に設置して、これを捕集基板とすることで、連続的な生産も可能となる。
【0041】
次に捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階について説明する。本発明においては、該溶液を捕集基板に向けて曳糸する間に、条件に応じて溶媒が蒸発して繊維状物質が形成される。通常の室温であれば捕集基板上に捕集されるまでの間に溶媒は完全に蒸発するが、もし溶媒蒸発が不十分な場合は減圧条件下で曳糸しても良い。この捕集基板上に捕集された時点では少なくとも前記繊維平均径と繊維長とを満足する繊維構造体が形成されている。また、曳糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度に依存するが、通常は、0〜50℃の範囲である。
【0042】
次いで、上記静電紡糸法によって得られた繊維構造体に触媒を担持させればよく、触媒を担持させる方法は特に限定されないが、触媒を含有する液に、上記繊維構造体を浸漬することにより繊維表面に触媒を接触させる方法や、触媒を含有する液を上記繊維構造体にスプレーコーティング等の操作により塗布することが、操作の容易性や均質な担持が可能であることから好ましい。触媒を含有する液には、繊維構造体と触媒とのバインダーとなりうる成分を含有させておくことが好ましい。
【0043】
次に、前述の(b)の担持状態を有する繊維構造体は、例えば、繊維形成性の有機高分子と触媒前駆体とを溶媒に溶解させて溶液を製造する段階と、前記溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階と、前記繊維構造体に含まれる触媒前駆体を処理して触媒を形成する段階を含む、触媒担持繊維構造体の製造方法によって得ることができる。
【0044】
この製造方法では、まず、繊維形成性の有機高分子と触媒前駆体とを溶解させて溶液を製造するが、ここで、触媒前駆体としては、例えば、ゾル−ゲル反応によって触媒となり得る無機化合物を用いることができ、該無機化合物としては、金属アルコキシドや金属塩化物を挙げることが出来、具体的には、チタンアルコキシド、スズアルコキシド、シリコンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等を好ましい例として挙げることができ、これらのうち、チタンアルコキシドを用いることが特に好ましい。更に上記チタンアルコキシドとしては、入手のしやすさなどからチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等を好ましく用いることができる。
【0045】
また、溶液中の溶媒に対する繊維形成性有機高分子の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。繊維形成性有機高分子の濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維構造体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる繊維構造体の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい溶液中の溶媒に対する繊維形成性有機高分子の濃度は2〜20重量%である。
【0046】
また、溶液中の溶媒に対する触媒前駆体の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。触媒前駆体の濃度が1重量%より小さいと、生成する触媒量が少なくなり好ましくない。また、30重量%より大きいと繊維構造体の形成が困難となり好ましくない。より好ましい溶液中の溶媒に対する触媒前駆体の濃度は2〜20重量%である。
【0047】
また、溶媒は一種を単独で用いても良く、複数の溶媒を組み合わせても良い。該溶媒としては、繊維形成性有機高分子と触媒前駆体とを溶解可能で、かつ静電紡糸法にて紡糸する段階で蒸発し、繊維を形成可能なものであれば特に限定されず、前述の(a)の担持状態を製造する際に用いた溶媒を用いることができる。
【0048】
更に、配位性の化合物を更に溶媒に組み合わせても良い。該配位性の化合物としては、触媒前駆体反応を制御し、繊維構造体を形成させうるものであれば限定はされないが、例えば、カルボン酸類、アミド類、エステル類、ケトン類、ホスフィン類、エーテル類、アルコール類、チオール類などが挙げられる。
【0049】
また、この製造方法においては、静電紡糸法によって得られた繊維構造体に含まれる触媒前駆体を処理して触媒を形成する。
触媒前駆体として金属アルコキシドや金属塩化物を用いた場合は必要に応じて、上記静電紡糸法によって得られた繊維構造体をオートクレーブなどの密栓容器に入れ、溶液中またはその蒸気中で加熱処理を行う水熱処理を施しても良い。水熱処理方法としては、上記繊維構造体に含まれる残存金属アルコキシドの加水分解を促進させ、金属水酸化物の重縮合反応を促進させ、金属酸化物の結晶化を促進させることができれば特に限定されないが、処理温度が50℃〜250℃が好ましく、より好ましくは70℃〜200℃である。処理温度が50℃より低いと金属酸化物の結晶化が促進されず好ましくなく、250℃より高いと基材として用いる有機高分子の強度が低下してしまうために好ましくない。液体としては通常、純水が用いられるが、好ましくはpH2〜10であり、より好ましくはpH3〜9である。
【0050】
更に、必要に応じて、上記繊維構造体を熱風下で乾燥させてもよい。熱風下で乾燥させることで金属酸化物の結晶化を促進させることができる。上記温度は、50℃〜150℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。
なお、この製造方法において記載していない事項については、(a)の担持状態の繊維構造体を製造する方法の記載をそのまま援用することができる。
【0051】
更に、前述の(c)の担持状態を有する繊維構造体は、例えば、繊維形成性化合物を溶媒に溶解して得た溶液に、更に触媒粒子を分散させた分散溶液を製造する段階と、前記分散溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される触媒担持繊維構造体を得る段階を含む、触媒担持繊維構造体の製造方法によって得ることができる。
【0052】
まず繊維形成性化合物を溶媒に溶解した溶液に触媒粒子を分散させた分散溶液を製造する段階がある。本発明の製造方法における分散溶液中の繊維形成性化合物の濃度は1〜30重量%であることが好ましい。繊維形成性化合物の濃度が1重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維構造体を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる繊維構造体の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい繊維形成性化合物の濃度は2〜20重量%である。
【0053】
本発明の製造方法における分散溶液中の触媒粒子の分散濃度は0.1〜30重量%であることが好ましい。触媒粒子の分散濃度が0.1%より小さいと得られる繊維構造体の触媒活性が低くなりすぎて好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる繊維構造体の強度が小さくなり好ましくない。より好ましい触媒粒子の分散濃度は0.5〜25重量%である。
【0054】
本発明の製造方法においては、始めに繊維形成性化合物を溶媒に溶解して溶液を作成した後、触媒粒子を分散させても良く、溶媒に繊維形成性化合物と触媒粒子を同時に加えても良く、触媒粒子をあらかじめ加えた溶媒に繊維形成性化合物を溶解させても良い。触媒粒子を分散させる方法は特に限定されず、撹拌や超音波処理などが挙げられる。
なお、この製造方法において記載していない事項については、(a)の担持状態の繊維構造体を製造する方法の記載をそのまま援用することができる。
【実施例】
【0055】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また以下の各実施例、比較例における評価項目は以下のとおりの手法にて実施した。
【0056】
繊維の平均径:
得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率8000倍)して得た写真から無作為に20箇所を選んで繊維の径を測定し、すべての繊維径(n=20)の平均値を求めて、繊維の平均径とした。
【0057】
繊維長20μm以下の繊維の存在確認:
得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率2000倍)して得た写真を観察し、繊維長20μm以下の繊維が存在するかどうか確認した。
【0058】
触媒粒子径:
得られた繊維構造体の表面の走査型電子顕微鏡写真(株式会社日立製作所製「S−2400」倍率8000倍)を撮影して得た写真から無作為に5箇所を選んで触媒粒子部分の直径を測定し、すべての直径(n=5)の平均値を求めて、触媒粒子径とした。
なお、直径は、写真で確認できる範囲で触媒粒子の最も長い部分とした。
【0059】
触媒活性評価:
試料となる繊維構造体を縦2cm、横2cmとなるように切り出し、これを10ppmのメチレンブルー水溶液5mlに浸漬した。
岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスター「SUV−F11」を用いて、295〜450nmの領域の光を60mW/cmの強度で所定時間照射した。また、対照試料として触媒を担持していない繊維構造体を浸漬したメチレンブルー水溶液についても照射した。
得られたメチレンブルー水溶液について、株式会社島津製作所製「UV−2400PC」を用いて、665nmの吸光度を測定した。触媒を担持した繊維構造体を浸漬したメチレンブルー水溶液と触媒を担持していない繊維構造体を浸漬したメチレンブルー水溶液とでは、触媒を担持した繊維構造体を浸漬したメチレンブルー水溶液の方が、吸光度が小さく、触媒活性の高さをメチレンブルーの分解により評価できることを確認した。
【0060】
[参考例1]
ポリアクリロニトリル(和光純薬工業株式会社製)1重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)9重量部よりなる溶液を作成した。第2図にしめす装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極(第2図5)に30分間吐出した。噴出ノズル(第2図1)の内径は0.8mm、電圧は12kV、噴出ノズル(第2図1)から繊維状物質捕集電極(第2図5)までの距離は10cmであった。得られた繊維構造体の目付は3g/mであった。得られた繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)で観察したところ、平均繊維径は0.2μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。得られた繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第3図、第4図に示す。
【0061】
次いで、得られた繊維構造体を光触媒コーティング剤(日本パーカライジング株式会社製「パルチタン5607」)に10分間浸漬させた後、乾燥し、触媒担持繊維構造体を得た。最終的に得られた触媒活性評価結果を表1に示す。また、得られた触媒担持繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第5図に示す。
【0062】
[参考例2]
参考例1において、繊維構造体を形成した後、300℃で3時間熱処理をしたこと以外は同様の操作を行った。
熱処理後に得られた繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)で観察したところ、平均繊維径は0.2μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。得られた繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第6図、第7図に示す。
得られた繊維構造体に対し参考例1と同様の操作を施して、触媒担持繊維構造体を得た。最終的に得られた触媒活性評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
ポリアクリロニトリル(和光純薬工業株式会社製)をN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)に溶解し、ポリマー濃度7.5%のドープを作成した。
これを、凝固液を水とする凝固浴中に押し出して湿式紡糸し、次いで凝固浴中で3倍に延伸して繊維径15μmの繊維を得た。この繊維より、目付6g/mの不織布を作成した。
得られた繊維集合体に対し参考例1と同様の操作を施して、触媒担持繊維構造体を得た。最終的に得られた触媒活性評価結果を表1に示す。なお、得られた繊維構造体は柔軟性に欠けるものであった。
【0064】
[参考例3]
重合度1300のポリ塩化ビニル1重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部、テトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部よりなる溶液を作成した。次いで、第1図に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極(第1図5)に60分間吐出した。噴出ノズル(第1図1)の内径は0.8mm、溶液供給速度は20μl/分、電圧は12kV、噴出ノズル(第1図1)から繊維状物質捕集電極(第1図5)までの距離は20cmであった。得られた繊維構造体の目付は36g/mであり、厚みは、0.2mmの不織布状であった。得られた繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)で観察したところ、平均繊維径は0.4μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。得られた繊維構造体表面の走査型電子顕微鏡写真図を第8図に示す。
【0065】
次いで、光触媒コーティング剤(日本パーカライジング株式会社製「パルチタン5607」)をメタノール/イソプロパノール(1/1;重量比)混合溶媒で触媒濃度が1重量%となるように希釈して、コーティング溶液を作成した。これを、エアーブラシ(株式会社キソパワーツール製「E1306」:ノズル径0.4mm)を用いて0.1ml/cmの塗布量で繊維構造体に塗布し、触媒担持繊維構造体を得た。触媒活性評価結果を表1に示す。
【0066】
[参考例4]
参考例3において、溶液の吐出した時間を60分間から15分間に変更したこと以外は同様の操作を行って、目付7.8g/m、厚み0.05mmの不織布状の繊維構造体を形成した。
得られた繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)で観察したところ、平均繊維径は0.3μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。得られた繊維構造体表面の走査型電子顕微鏡写真図を第9図に示す。
次いで、上記繊維構造体を、参考例3で作成したコーティング溶液に10分間浸漬した後、乾燥して触媒担持繊維構造体を得た。触媒活性評価結果を表1に示す。
【0067】
[比較例2]
84dtex/25フィラメントのポリ塩化ビニルのマルチフィラメント(単繊維径は約17.54μm)よりなる布帛(目付83g/m)を実施例2と同様にコーティング溶液に浸漬して触媒担持繊維構造体を得た。触媒活性評価結果を表1に示す。得られた不織布は柔軟性に欠けるものであった。
【0068】
[参考例5]
重合度1300のポリ塩化ビニル1重量部、テトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部、チタンテトラブトキシド1.1重量部(和光純薬工業株式会社製、特級)よりなる溶液を作成した。第2図に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極に60分間吐出した。噴出ノズルの内径は0.8mm、電圧は12kV、噴出ノズルから繊維状物質捕集電極までの距離は15cmであった。
【0069】
得られた繊維構造体をオートクレーブに入れ、pH3の水溶液中で80℃、17時間保持し、サンプルをイオン交換水で洗浄、乾燥させ、目付32g/cmの触媒担持繊維構造体を得た。得られた触媒担持繊維構造体を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−2400」)で観察したところ、平均繊維径は0.5μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。得られた触媒担持繊維構造体のX線回折結果では、2θ=25.3°にピークが認められ、酸化チタンのアナターゼ型結晶が生成している事が確認され、触媒前駆体から光触媒としての酸化チタンが形成されていることを確認した。得られた触媒担持繊維構造体の表面の走査型電子顕微鏡写真を第10図及び第11図に、X線回折図形を第12図に、触媒活性評価結果を表1に示す。
【0070】
[比較例3]
参考例5において、重合度1300のポリ塩化ビニル1重量部、テトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部よりなる溶液を用いたこと以外は、同様の操作を行い、目付11g/mの繊維構造体を得た。得られた繊維構造体のX線回折結果では、2θ=25.3°にピークが認められなかった。得られた繊維構造体のX線回折図形を第13図に、触媒活性評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例1]
ポリアクリロニトリル(和光純薬工業株式会社製)1重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、特級)9重量部、および、触媒としての、多孔質シリカ被覆酸化チタン(太平化学産業株式会社製「マスクメロン型光触媒」、粒子径2μm)1重量部よりなる溶液を作成した。次いで、第1図に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極(第1図5)に30分間吐出した。噴出ノズル(第1図1)の内径は0.8mm、溶液供給速度は20μl/分、電圧は12kV、噴出ノズル(第1図1)から繊維状物質捕集電極(第1図5)までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体の目付は5g/mであった。得られた繊維構造体表面の走査型電子顕微鏡写真図を図14に示すが、平均繊維径は0.15μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されず、また、触媒粒子径は3μmであった。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
実施例2において、触媒として多孔質シリカ被覆酸化チタン(太平化学産業株式会社製「マスクメロン型光触媒」、粒子径5μm)を用いたこと以外は同様の操作を行った。
得られた繊維構造体の目付は5g/m、平均繊維径は0.15μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されず、また、触媒粒子径は5μmであった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第15図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
実施例2において、触媒として多孔質シリカ被覆酸化チタン(太平化学産業株式会社製「マスクメロン型光触媒」、粒子径15μm)を用いたこと以外は同様の操作を行った。
得られた繊維構造体の目付は5g/m、平均繊維径は0.15μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されず、また、触媒粒子径は13μmであった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第16図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
実施例2において、触媒として多孔質シリカ被覆酸化チタンから代えて、アパタイト被覆酸化チタン(太平化学産業株式会社製「光触媒アパタイト」、粒子径5μm)を用いたこと以外は同様の操作を行った。得られた繊維構造体の目付は5g/m、平均繊維径は0.15μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。触媒粒子径は9μmであった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真を第17図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
実施例2において、触媒として多孔質シリカ被覆酸化チタンから代えて、酸化チタン(チタン工業株式会社製「PC−101A」、粒子径40nm)を用いたこと以外は同様の操作を行った。
得られた繊維構造体の目付は5g/m、平均繊維径は0.15μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。触媒粒子径は4μmであった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真を第18図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0076】
[実施例6]
ポリ塩化ビニル(和光純薬工業株式会社製)1重量部、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部、テトラヒドロフラン(和光純薬工業株式会社製、特級)4.5重量部、多孔質シリカ被覆酸化チタン(太平化学産業株式会社製「マスクメロン型光触媒」、粒子径2μm)0.5重量部よりなる溶液を作成した。次いで、第1図に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極(第1図5)に30分間吐出した。噴出ノズル(第1図1)の内径は0.8mm、溶液供給速度は20μl/分、電圧は12kV、噴出ノズル(第1図1)から繊維状物質捕集電極(第1図5)までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体の目付は7g/m2であった。得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均繊維径は0.2μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。触媒粒子径は11μmであった。
繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第19図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例7]
実施例6において、触媒として多孔質シリカ被覆酸化チタンから代えて、アパタイト被覆酸化チタン(太平化学産業株式会社製「光触媒アパタイト」、粒子径5μm)を用いたこと以外は同様の操作を行った。得られた繊維構造体の目付は7g/m、平均繊維径は0.2μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。触媒粒子径は10μmであった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第20図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例8]
実施例6において、触媒として多孔質シリカ被覆酸化チタンから代えて、酸化チタン(チタン工業株式会社製「PC−101A」、粒子径40nm)を用いたこと以外は同様の操作を行った。得られた繊維構造体の目付は7g/m、平均繊維径は0.2μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。触媒粒子径は9μmであった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第21図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0079】
[比較例4]
実施例1において、多孔質シリカ被覆酸化チタンを用いなかったこと以外は同様の操作を行った。得られた繊維構造体の目付は5g/m、平均繊維径は0.15μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真図を第22図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0080】
[比較例5]
実施例6において、多孔質シリカ被覆酸化チタンを用いなかったこと以外は同様の操作を行った。得られた繊維構造体の目付は7g/m、平均繊維径は0.2μmであり、繊維長20μm以下の繊維は観察されなかった。繊維構造体の走査型電子顕微鏡写真を第23図に示す。得られた触媒担持繊維構造体の触媒活性評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の製造方法の一態様を説明するための製造装置模式図である。
【図2】本発明の製造方法の一態様を説明するための製造装置模式図である。
【図3】参考例1の操作で得られた繊維構造体の表面を撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率2000倍)である。
【図4】参考例1の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図5】参考例1の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率50000倍)である。
【図6】参考例2の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率2000倍)である。
【図7】参考例2の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図8】参考例3の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率20000倍)である。
【図9】参考例4の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率20000倍)である。
【図10】参考例5の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図11】参考例5の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率20000倍)である。
【図12】参考例5の操作で得られた触媒担持繊維構造体のX線回折図形であって、図12のグラフにおいて、縦軸はX線回折強度(cps)を、横軸は回折角2θ(deg.)である。
【図13】比較例3の操作で得られた繊維構造体のX線回折図形であって、図13のグラフにおいて、縦軸はX線回折強度(cps)を、横軸は回折角2θ(deg.)である。
【図14】実施例1の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図15】実施例2の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図16】実施例3の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率2000倍)である。
【図17】実施例4の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図18】実施例5の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図19】実施例6の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率2000倍)である。
【図20】実施例7の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率2000倍)である。
【図21】実施例8の操作で得られた触媒担持繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率2000倍)である。
【図22】比較例4の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【図23】比較例5の操作で得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真図(撮影倍率8000倍)である。
【符号の説明】
【0083】
1 溶液噴出ノズル
2 溶液
3 溶液保持槽
4 電極
5 繊維状物質捕集電極
6 高電圧発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維形成性化合物を溶媒に溶解して得た溶液に、更に触媒粒子を分散させた分散溶液を製造する段階と、前記分散溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される触媒担持繊維構造体を得る段階を含む、繊維構造体を構成する有機高分子よりなる繊維に触媒を担持した触媒担持繊維構造体の製造方法であって、該繊維の平均繊維径が1μm以下であり、かつ20μm以下の繊維長を有する繊維を実質的に含まない、触媒担持繊維構造体の製造方法。
【請求項2】
前記触媒粒子が粒子径1〜100μmの範囲にある粒子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記触媒の一次粒子径が1〜100μmである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶解に用いる溶媒が揮発性有機溶媒である、請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−34677(P2009−34677A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224930(P2008−224930)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【分割の表示】特願2005−505370(P2005−505370)の分割
【原出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】