説明

触媒空気酸化ヘアカラー

空気酸化ヘアカラー組成物は、a)水、b)触媒としての水溶性金属塩、c)キレート剤および着色強化剤としてのエチドロン酸(1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸)、d)酸化一次染料中間体、e)1,2,4−ベンゼントリオールなどの芳香族トリオール、f)補助酸化染料カップラー、g)染料酸化防止剤および染料安定剤、h)任意に水溶性界面活性剤、i)任意に水溶性アニオンポリマー、j)水溶性溶媒系、およびk)アルカリ化剤に基づく。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
パーマネントヘアカラー製品または酸化ヘアカラー製品は、現代において数多く用いられる配合物である。これらの製品は、毛髪の色合いを永続的に変えることから、白髪または色素性毛髪の色を変える能力を有する。毛髪の新たな成長が目立つようになると、再施用が行われる。酸化染髪料は、通常は、2剤型キットの形態で販売されている。一方の容器には、酸化染料および適切な媒体を含有するアルカリ性組成物が入れてある。他方の容器には、酸化剤(通常は過酸化水素)を利用する顕色剤組成物が入れてある。使用直前に2つの組成物を混合し、毛髪に施用する。混合物のアルカリ性pHにより毛幹が膨潤して、染料前駆体が毛髪の皮質に浸透することが可能になる。その後、これらの染料前駆体は酸化され、結合してより大きな分子を形成する。このより大きな分子は相当なレベルの共鳴を含有し、これにより、毛髪の外側から見える着色生成物を生じる。適切な顕色時間後、混合物を毛髪からリンスする。次いで、毛髪の色は永続的に変えられる。これらのシステムは、混合物のpHおよび顕色剤の濃度に応じて、毛髪の天然色素を淡色化する、または殆ど淡色化作用をせずに着色だけを起こす能力を有することが可能である。いわゆる「着色専用パーマネントカラー」は過去30年において販売された女性用の小売製品において主たる役割を果たさなかったが、業務用市場で相当なシェアを有する。それらは、最終生成物がもたらす、白髪がブレンドした自然な外観のゆえに、今日販売されている男性用ヘアカラー剤の大部分をも占める。
【0002】
最低限淡色化製品または「着色専用パーマネントカラー」が過酸化水素または類似酸化剤タイプの添加により生じる天然色素淡色化効果を必要としないので、酸化染料製品の顕色剤部分を置き換えるか、または排除しようとする試みがなされてきた。過酸化水素を置き換えることに関して、幾つかの発明では、酵素または亜塩素酸塩溶液の使用を論じている。これらのシステムは、施用の直前に混合される2成分組成物を依然として必要とする。この代替顕色剤配合物はより穏和であり、毛髪に対して生ずる損傷は小さくなるが、利便性の改善、煩雑さ、使い易さ、または色発現に関して、何ら大きな利点はもたらさない。そのような効能を唱える唯一の製品は、混合工程すべてを排除したいわゆる空気酸化ヘアカラーまたは自動酸化ヘアカラーである。名称が示唆するように、これらの組成物は発色を大気酸素に依拠する。混合は不要である。配合物を15〜30分にわたり毛髪に施用し、リンスする。残念ながら、このプロセスを用いると毛髪構造の内側で発色することは殆どない。この技術の最初の実用的な利用は、米国特許第3,920,384号および米国特許第4,054,413号で最初に論じられた。伝統的な一次中間体を、芳香族環上に高度の電子供与基を有するカップラーと組み合わせる。これらのカップラーは殆どの染料中間体よりも反応性であり、限られた暴露により毛髪構造中に少量の色を生成させることができた。発色の量が僅かだったので、こうした配合の唯一の商業的用途は段階ヘアカラーまたは漸進ヘアカラーの分野であった。その結果、段階的に毛髪を着色するより安全な手段を見出そうとする試みの中で、最終的に数製品が男性向けに販売された。これらの製品の以前には、酢酸鉛組成物がこれを実行する唯一の手段であった。上記の両タイプの製品は、あらゆる度合の白髪染めを発現し維持するために、週に数回ずつ配合物を再施用することを必要とする。今まで、これらの空気酸化漸進ヘアカラーは、男性用ヘアカラー分野においてさえも些細な役割しか果たしていない。
【0003】
触媒染色システムが、過去に2成分酸化ヘアカラーシステムについて、処理時間を加速する、または非常に抵抗性のある毛髪上により黒っぽいシェードを生じさせようとする取組みの中で探求されてきた。これは、触媒(通常は水溶性遷移金属塩)を含有するある種の前処理剤に依拠している。この余分な前処理工程のために、これらの製品は通常、商業用途について実用的でなくなる。更に、蛋白質マトリックス内に鉄または銅が蓄積することにより、毛髪がざらざらしたように感じさせ、毛髪を傷付いたままにする。空気酸化発色に金属触媒技術を応用しようとする試みが行われてきたが、成功は限定的であった。米国特許第4,004,877号では、空気酸化系において酒石酸により錯化された金属塩が用いられている。毛髪上に得られた色は、一回のみの施用ではまだ非常に淡い。更に、組成物は溶媒としてホルムアミドの使用を必要とする。安全上の理由から、この材料は化粧用製品中で用いるためにもはや許容できない。米国特許第6,648,925号は、空気酸化組成物中の包接化合物またはゼオライト化合物内に金属触媒を補足することにより、この技術を一歩更に進めている。これらは、金属イオンが他の化合物の結晶構造内に完全に囲まれている包接錯体である。これらは調製するのが難しい配合物であり、商業用途のために実際的ではない。また、これらの配合物は、代表的な集団のために完全な色合いをもたらすほど十分には白髪上で発色しない。米国特許第7,060,108号には、損傷を最低限に抑えつつ染料の取り込みを強化するためにEDTA化合物でキレート化された鉄塩を使用することが教示されている。この特許で挙げられたより極端な染色条件(30℃で30分の滞留)下でさえ、毛髪見本上で試験された配合物も2剤型「着色専用酸化ヘアカラー」に匹敵するシェードを生じさせてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,920,384号
【特許文献2】米国特許第4,054,413号
【特許文献3】米国特許第4,004,877号
【特許文献4】米国特許第6,648,925号
【特許文献5】米国特許第7,060,108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、単一成分の空気酸化製品から、2剤型「着色専用酸化ヘア着色剤」と同等な着色レベルおよび耐磨耗性を実現する配合物および製造方法を提供することである。これらの配合物では、意外な度合の白髪染めをもたらすユニークな組合せにおいて既知の染料中間体および他の化粧用材料を用いる。更に、大気酸素以外の酸化剤が存在しないゆえに、組成物は伝統的な2剤型システムより毛髪に対して穏和で、損傷が少なく、良好な保色性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、安全、良好な耐磨耗性および使い易さを維持しつつ既存の技術に比べて白髪染めの大幅な向上をもたらす特定の触媒空気酸化ヘアカラー組成物を含む。エーロゾル容器から分配するのに適するジェルまたは僅かに粘性のローションを製造するために、配合物の粘性を変更してもよい。本発明によって提供される組成物は早期空気酸化を受けやすく、したがって、無酸素条件下で調製するとともに貯蔵しなければならない。組成物は、以下の材料を含有するべきである。
1.70〜95%の水、
2.0.1〜1.0%の水溶性金属塩、
3.0.03〜0.3%のエチドロン酸、
4.0.1〜5%の、一次中間体と考えられる酸化染料、
5.0.1〜3%の芳香族トリオール、
6.0〜3%、または好ましくは0.1〜3%の補助酸化染料、
7.0.1〜0.3%の酸化防止剤および安定剤、
8.アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤またはこうした界面活性剤の組合せである、1〜5%の水溶性界面活性剤、
9.0.5〜2.0%の、カルボマーなどの水溶性アニオンポリマー、
10.0.5〜10%の、イソプロパノールと酢酸イソプロピルの組合せ、またはエタノールと酢酸エチルの組合せからなる有機溶媒などの有機溶媒系、
11.十分な量の、9.0〜10.0の最終pHを達成するための化粧用に許容できるアルカリ化剤。
【発明を実施するための形態】
【0007】
染料中間体を保持するために用いられる媒体は、最終配合物中で非常に高濃度の水を受け入れる。本発明において、水は組成物の70〜95%の範囲であることが可能である。より少ない染料を用いるより淡いシェードはこの範囲の高い側の端にある一方で、黒っぽい褐色および黒色のシェードは70%濃度により近い。この高濃度の水は、本発明が包含する配合物のために存在する濃度に至るまで白髪上で通常は着色しない染料系のために、非常に効率的なキャリアをもたらす。
【0008】
本発明において包含される空気酸化ヘアカラー組成物の最大の白髪染め能力を達成するために、配合物は毛髪構造内で酸化プロセスに触媒作用を及ぼす必要がある。好ましい触媒は、好ましくは、硫酸イオン、塩素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、燐酸イオン、またはフマル酸イオン、クエン酸イオンおよび酒石酸イオン等の有機酸塩などの非毒性アニオンを伴う、銅塩、コバルト塩、亜鉛塩、銀塩、ニッケル塩および鉄塩を含む水溶性金属塩である。水溶性マンガン塩は、0.1〜1.0%の濃度で配合に添加されたときに最高の着色をもたらすので、好ましい。より好ましくは、無水塩の濃度は、組成物中の塩の全重量を基準にして0.3〜0.7%であるべきである。白髪に対する染料の取り込みは、上述した範囲のいずれかの側でも低下する。マンガンと共に用いられるべき最も好ましいアニオンは硫酸イオンまたは塩素イオンであるが、硝酸イオン、炭酸イオン、燐酸イオン、弗素イオンまたは臭素イオンは許容できる。
【0009】
白髪におけるさらなる色強化は、エチドロン酸と呼ばれ、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸としても知られている特定のキレート剤を添加することによって達成することが可能である。その構造を以下に示す。
【0010】
【化1】


エチドロン酸の使用によるさらなる色の取り込みに加えて、マンガンイオンによるキレート化効果は、組成物がリンスおよびシャンプー行為によって除去された後に毛髪構造内に残るマンガンの量を制限するのを助ける。銅または鉄などの幾つかの金属イオンは、毛髪がざらざらしたように感じさせ、毛髪を傷付いたままにする。毛髪に及ぼすマンガンの効果は、より一般的な遷移金属ほどに劇的ではないが、色処理後に毛髪に残る量を制限することはやはり確実である。必要とされるエチドロン酸の量は、規定濃度のマンガン塩と共に用いられるとき、0.03〜0.3%で良好に機能する。この範囲より下で、色飽和度は低下し、0.3%の濃度より上で、長期安定性は損なわれ、色発現も悪影響を受ける。
【0011】
本発明において論じられた空気酸化着色剤は従来の酸化染料一次中間体を用いる。これらの最も有用なものには、p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミンスルフェート、p−アミノフェノールおよびp−トルエンジアミンが挙げられる。他には、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、p−メチルアミノフェノール、1−アミノ−4−(2−メトキシエチル)−アミノベンゼン、2,4,5,6−テトラアミノピリミジン、2−(ヒドロキシメチル)−p−フェニレンジアミン、3−メチル−p−アミノフェノール、2−(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、1,3−ジメチル−2,5−ジアミノベンゼン、2−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−(ベータ−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、2−メチル−p−アミノフェノール、2−プロピル−p−フェニレンジアミン、2−(2’−ヒドロキシエチルアミノメチル)−p−アミノフェノール、2−(メトキシメチル)−p−アミノフェノール、2−メチル−4−ジメチルアミノアニリン、5−アミノサリチル酸および他の関連化合物を挙げることが可能である。得られた組成物に関するシェードの濃さに応じて、使用での濃度は、最も明るいブロンドシェードにおける0.1%から最も黒っぽいシェードにおける5%まで異なるべきである。
【0012】
本発明は、すべての組成物中で有用な染料カップラーとして1,2,4−ベンゼントリオール、1,3,5−トリエチルヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの芳香族トリオールを使用することを含む。好ましいカップラーは1,2,4−ベンゼントリオールである。この材料を前のパラグラフにおける一次中間体と組み合わせて、毛髪構造内に閉じ込められる酸化縮合物を生成させる。これらの化合物は、この技術から得られる配合について褐色の大部分を生じさせる。染料濃度は、望まれる色の最終濃さに応じて0.1から3%まで異なるべきである。この材料は乾燥形態において非常に酸素に敏感であり、したがって、この技術によって略述された組成物中で用いられるすべての1,2,4−ベンゼントリオールは、この化合物のトリアセトキシ変種の酸加水分解によって溶液中に生成する。加水分解は、少量の硫酸と共に50℃に6時間以下にわたり加熱することによりエタノールまたはイソプロパノール中で行われる。得られた溶液は、出発材料の厳密な配合に応じて、10〜20%の1,2,4−ベンゼントリオールまたは他の芳香族トリオールをもたらす。
【0013】
配合は他の染料カップラーの添加によって改変してもよい。これらの最も有用なものには、レゾルシノール、4−クロロレゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、m−アミノフェノール、1−ナフトール、1,5−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、2,4−ジアミノフェノール、ヒドロキシベンゾモルホリン、1−ヒドロキシ−3−ジメチルアミノベンゼン、4−アミノ−2−ヒドロキシトルエン、2−メチル−5−ヒドロキシエチルアミノフェノール、1−メトキシ−2,5−ジアミノベンゼン、フェニルメチルピラゾロン、2,4−ジアミノフェノキシエタノールHCl、4−エトキシ−m−フェニレンジアミン、1−ヒドロキシ−3−アミノ−4,6−ジクロロベンゼン、1−ヒドロキシ−2,5−ジアミノ−4−メトキシベンゼン、4−アミノ−m−クレゾール、6−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、5−アミノ−6−クロロ−o−クレゾール、6−アミノ−o−クレゾール、4,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−m−フェニレンジアミンHCl、5−アミノ−4−クロロ−o−クレゾールおよび他の関連化合物が挙げられる。得られた組成物に関するシェードの濃さに応じて、使用での濃度は0.1%から3%まで異なるべきである。
【0014】
最終製品の保存寿命を最大にするために少量の酸化防止剤または還元剤を用いるべきである。典型的な2剤型酸化ヘアカラーシステムは1%以下の酸化防止剤を用いて、製造中および最終包装における安定性を確保する。この濃度は、毛髪上の着色の最高レベルを達成するためには高すぎる。酸化防止剤をこの組成物中で単独でまたは組合せで用いるとき、本発明において用いられるべき範囲は全配合の0.1〜0.3%であるべきである。この濃度より下では長期安定性の劣化をもたらし、指定された範囲より上では着色の劣化をもたらす。最も適切な還元剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素塩、チオグリコレート塩、エリソルビン酸、アスコルビン酸、チオスルフェート塩および他の関連材料を含んでもよい。
【0015】
低濃度の界面活性剤は、毛髪を迅速に湿らせ、泡を作り、リンスの容易さを与えるために、配合物において必要とされる。濃度は全配合の1〜5%に制限されるべきである。この範囲に維持することにより、製品は高い含水率、および毛髪に色を発現させる際の効率を維持する。これらの界面活性剤は、十分な泡を生成させる化粧用に許容できる任意のアニオン材料、両性材料または非イオン材料であることが可能である。これらはアルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェートまたは脂肪酸石鹸と同程度に単純にすることが可能である。配合物の有効pHが9〜10の間であるので、より好ましくは、界面活性剤は皮膚に対しては穏和な作用をもたらすべきである。これらには、アンホアセテート、アルキルポリグリコシド、アンホジアセテート、アンホヒドロキシプロピルスルホネート、アンホプロピオネート、アミドプロピルベタイン、スルテイン、アルキルアミドプロピルアミンオキシド、アルキルアミンオキシド、アルカノールアミド、スルホスクシネートおよび関連化合物を挙げることが可能である。
【0016】
適切な粘度および理想的なレオロジー的特性を達成して製品の施用の容易さおよび毛髪への密着性をもたらすために、配合物は、カルボマーと呼ばれる水溶性アニオンポリマーにより増粘されるべきである。これらは、上述した必要なパラメータを提供し、配合物の高い含水率および染料中間体とマンガン塩による安定性を可能にする。これらの最も一般的なものはカルボマーと呼ばれ、それらはCarbopolという名称でNoveon Corporationによって製造されている。これらは、水中、0.5〜1.0%w/vにて約3,000〜60,000mPasと測定された粘度を有する、ポリアルケニルポリエーテルにより架橋されたアクリル酸の高分子量ホモポリマーおよびコポリマーとして表現することが可能である。これらの例には、Carbopol Ultrez10、Carbopol940、Carbopol941、Carbopol980、Carbopol EDT2050、Carbopol981、Carbopol934、Carbopol2984およびCarbopol5984が挙げられる。類似材料は他の製造業者によって製造され、カルボマーのCTFA呼称で通用することが可能である。これらの材料は、ジェル形態に対し中程度に粘性の液体を生じさせるために0.5〜2.0%で配合物中で用いられるべきである。
【0017】
水溶性溶媒系は、染料の溶解を助けるとともに毛髪の皮質に染料中間体を運ぶのを助けるために用いられる。これらの溶媒は、芳香族トリオール内に、または特にベンゼントリオールプレミックス内に含まれ、ベンゼントリアセテートからトリオール形態への反応の生成物である。イソプロパノールまたはエーテルのいずれかを媒体として用いて、この反応を行うことが可能である。得られた溶液は、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどの芳香族トリオールと、この特定の芳香族トリオールに応じて、アルコールと、対応するアセテート化合物(酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルのいずれか)とを含有する。最終配合物は、特定のシェードのために必要とされるベンゼントリオールなどの芳香族トリオールの濃度に応じて、0.5〜10%のこれらの溶媒系を含有する。
【0018】
本発明内に含まれる配合物に関する最良の着色はpH9〜10で起きる。このpHを達成するための化粧用に許容できる十分な量のアルカリ化剤が必要とされる。アルカリ化剤は、事実上有機または無機のいずれかであってもよい。これらには、エタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、水酸化アンモニウム、炭酸塩、炭酸水素塩および類似の他の材料を挙げることが可能である。
【0019】
実験手順および結果
以下は、本発明において論じられた技術を用いることにより生成できる種々のシェードのリストである。シェード等級は、実験室で染色された際は90%ブレンドの白髪に一致させ、ならびに表IIに記載された顧客上に一致させている。すべての場合において、発色時間は10分であり、その後、リンスし、シャンプーし、吹き付け乾燥した。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例1〜5による染色、および当明細書中での染色は、Hunter L,a,bスケールを用いるMinolta508d分光光度計を用いて測定した。色を測定するためにこのスケールを用いることは産業において典型的である。一般に、測定は再現性があり、あらゆるパラメータに関して±「0.5」で視覚的に識別できる。
【0022】
【表2】

【0023】
実施例1〜5に示した同じ配合物をサロンの顧客に6カ月にわたり試験した。再施用を5週毎に行った。再来訪時に、異常な流失は認められなかった。すべてのシェードは適切な色調であり、当初施用した元の色の1レベル以内にあった。すべての配合のために生成した色は、同一のシェード等級を有する典型的な着色専用ヘアカラーを表していた。
【0024】
【表3】

【0025】
実施例3の中程度褐色のシェードを、残りの実験のための対照として用い、一方で、本発明に関する特許請求の範囲において提示される最適範囲を確認するために他のパラメータを変えた。
【0026】
【表4】

【0027】
これらの空気酸化着色剤に関する配合物の含水率は、毛髪および他のケラチン繊維内の着色量に大きな影響を及ぼす。70%の最小含水率が、色取り込みを最大にするために必要とされる。実施例6のように、含有する水か僅かに少なくなった配合物でさえも、白髪上の色の濃さは低下し始める。実施例6は、90%白髪に対して10分にわたり染色を行い、実施例3で用いられた対照中程度褐色シェードと比較された。実施例6に関する材料見本外観は、黒っぽいブロンドと淡い褐色との間のシェードにより似ていた。L.a.b示度によりこの観察結果を確認した。
【0028】
【表5】

【0029】
組成物のpHはpH9〜pH10の制限を必要とする。この範囲のいずれの側の配合物も実施例3の対照中程度褐色シェードより淡い色の着色を示す。この配合は9.3のpHを有する。実施例7、8および9をそれぞれpH6.9、8.8および10.3で調製した。所望の範囲に近い製品でさえも対照より淡い色の着色の何らかの指示を示している。すべての配合物は、90%白髪に対して10分にわたり染色を行い、実施例3で用いられた対照中程度褐色シェードと比較された。L.a.b示度を以下のチャートで示す。
【0030】
【表6】

【0031】
【表7】

【0032】
マンガン塩濃度は、0.1〜1.0%の濃度で用いられたとき、毛髪に対する色発現に関して最も良好に作用している。実施例3で示された中程度褐色シェードの対照配合物は、0.5%の硫酸マンガンを含有している。実施例10、11および12は、それぞれ0.05%、0%および2%の硫酸マンガンを用いている。本発明の範囲から僅かに外れたこれらの組成物は、以下のチャートにおいて取られた染色および色測定によって例示されるように、より低い着色を示している。すべての配合物は、90%白髪に対して10分にわたり染色を行い、実施例3で用いられた対照中程度褐色シェードと比較された。L.a.b示度を各材料見本のために得た。
【0033】
【表8】

【0034】
本発明の条件内で用いられたエチドロン酸は、0.03〜0.300の濃度で最善に作用する。上限で、毛髪上の着色は減少し始めているが、なお有用である。対照中程度褐色シェードは0.03%のエチドロン酸を用いている。実施例13および14は、それぞれ0.3%および0%のエチドロン酸を用いている。すべての配合物は、90%白髪に対して10分にわたり染色を行い、実施例3で用いられた対照中程度褐色シェードと比較された。L.a.b示度を以下のチャートで示す。
【0035】
【表9】

【0036】
空気酸化配合物中でベンゼントリオールまたは類似の染料カップラーを用いていない刊行物および特許の例が多い。しかし、毛髪上での色取り込みおよび白髪染めの度合は、これらの材料が存在しないことによって強く影響を受ける。実施例3の対照中程度褐色シェードは、1,2,4−ベンゼントリオールを用いずに作成されている。トリオール染料の調製に際して用いられる対応する溶媒パッケージは必要ではなく、配合からも除去した。実施例15はこの変更を例示している。対照として実施例3を用いて、配合物は、90%白髪に対して10分にわたり染色を行った。L.a.b示度を以下のチャートで示している。
【0037】
【表10】

【0038】
ベンゼントリアセテートをベンゼントリオールに転化するための典型的な配合物を実施例16に示す。しかし、分量は大幅に変えることが可能であり、トリオールの溶解度によって限定されるのみである。実施例16は約10%のベンゼントリオールの溶液を与える。
実施例16
【0039】
【表11】

【0040】
ベンゼントリオール溶液の調製のための手順
1)攪拌付きのステンレススチール混合容器に水、イソプロパノール、1,2,4−トリアセトキシベンゼンおよび硫酸の順序で材料を添加する。
2)容器の頂上に取り付けられた還流装置により50℃に4〜6時間にわたって加熱する。
3)すべての染料粒子が溶解することを以て反応の完了とみなす。
4)バッチを室温に冷却し、密封容器内に貯蔵する。
【0041】
染料組成物の調製のための手順
1)逆回転クリームミキサまたはプロペラミキサを備えたジャケット付きステンレススチールバッチ容器に90%の水を添加し、Ultrez10を攪拌しつつ分散させる。バッチを60〜65℃に加熱する。
2)酸化防止剤、エチドロン酸および染料を混合しつつ溶解させる。
3)10%の水および硫酸マンガンを用いてプレミックスを調製する。バッチを50℃に加熱する。
4)界面活性剤をバッチに添加する。
5)バッチを40〜45℃に冷却し、ベンゼントリオールプレミックスを添加する。
6)アルカリ化剤および芳香剤を混合しつつバッチに添加する。
7)硫酸マンガンプレミックスをバッチに添加する。均一になるまで混合する。チューブ内に充填し、直ちに密封する。
注:製品のすべてのバッチ処理および充填は、低酸素レベルで行うべきである。
【0042】
組成物を酸化剤と混合せずに毛髪に施用し、毛髪上に5〜15分にわたり放置し、リンスし、シャンプーする。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲において、すべての百分率は組成物のすべての成分の全重量を基準にした重量による。本明細書で用いられる「中程度に粘性」は、23℃の温度で6rpmでスピンドルT〜Cを用いるBrookfield粘度計、モデル番号DV−Eによって決定したときの500〜5000cpsの粘度を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水、
b)触媒としての水溶性金属塩
c)キレート剤および着色強化剤としてのエチドロン酸(1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸)、
d)酸化一次染料中間体、
e)1,2,4−ベンゼントリオールなどの芳香族トリオール、
f)補助酸化染料カップラー、
g)染料酸化防止剤および染料安定剤、
h)任意に水溶性界面活性剤、
i)任意に水溶性アニオンポリマー、
j)水溶性溶媒系、および
k)アルカリ化剤
を含む単一成分空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項2】
含水率が70〜95式量%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項3】
前記水溶性塩が0.1〜1.0%の含有率のマンガン塩を含む、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項4】
前記水溶性マンガン塩が硫酸マンガンまたは塩化マンガンである、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項5】
前記エチドロン酸の含有率が0.03〜0.30%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項6】
前記酸化一次染料中間体の含有率が0.1〜5%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項7】
前記芳香族トリオールの含有率が0.1〜3.0%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項8】
前記補助酸化染料カップラーの含有率が0.1〜3.0%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項9】
前記染料酸化防止剤および前記染料安定剤の含有率が0.1〜0.3%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項10】
前記水溶性界面活性剤が、化粧用に許容できるアニオン界面活性剤、両性界面活性剤または非イオン界面活性剤からなり、前記水溶性界面活性剤の含有率が1〜5%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項11】
前記水溶性アニオンポリマーの含有率が0.5%〜2%全固体の濃度でジェルに中程度に粘性の液体を生じさせるのに十分である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項12】
前記溶媒系が、イソプロパノールおよび酢酸イソプロピル、またはエタノールおよび酢酸エチルからなる群から選択され、全溶媒系含有率が全組成物の0.5〜10%である、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。
【請求項13】
前記アルカリ化剤が、アミノメチルプロパノール、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、アンモニア、炭酸塩、炭酸水素塩、または化粧用に許容できる他の材料からなる群から選択され、前記組成物のpH範囲を9.0〜10.0にするのに十分な濃度で用いられる、請求項1に記載の空気酸化ヘアカラー組成物。

【公表番号】特表2010−500349(P2010−500349A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523771(P2009−523771)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/016980
【国際公開番号】WO2008/020983
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(599068865)クーム インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】