説明

触媒組成物とその製造方法、およびこの触媒を用いた炭化水素の転換方法

(a)MCM−22型モレキュラーシーブと、(b)バインダーとから成り、MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下であることを特徴とする触媒組成物である。この触媒組成物はさらに、コンストレインインデックスが12未満、例えば2未満の第2のモレキュラーシーブを含むことができる。この発明で用いられるモレキュラーシーブの例は、MCM−22型モレキュラーシーブ、ゼオライトY、及びゼオライトベータである。この触媒組成物は、アルキル化可能な芳香族化合物を、アルキル化剤でアルキル化またはトランスアルキル化するプロセスに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は新規な触媒組成物とその製造方法、およびこの触媒を用いた炭化水素の転換反応に関する。特に、この発明の新規な触媒組成物は、モレキュラーシーブとバインダーとから成り、MCM−22型モレキュラーシーブは、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下であることを特徴とする。
炭化水素の転換反応は、アルキル化可能な芳香族化合物のアルキル化および/またはトランスアルキル化反応からなる。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト触媒を用いた芳香族炭化水素のアルキル化反応は公知である。米国特許第5,334,795号には、MCM−22の存在下でベンゼンとエチレンを液相でアルキル化してエチルベンゼンを製造することが開示されている。米国特許第4,891,458号には、ゼオライトベータを用いた、液相でのアルキル化およびトランスアルキル化が開示されている。
【0003】
ゼオライトベースの触媒は、ベンゼンとプロピレンからクメンを製造するアルキル化反応に用いられる。米国特許第4,992,606号には、液相中でMCM−22を用いてクメンを製造する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベンゼンと、エチレン及びプロピレンから、各々エチルベンゼン(EB)とクメンを製造するベンゼンのアルキル化では、アルキル化可能な芳香族とアルキル化剤とを触媒の存在下で接触させる。この結果、所望のモノアルキル化化合物とともに、望ましくないポリアルキル化された不純物が生成する。
このため、同等の触媒活性を有し、所望のモノアルキル化された芳香族化合物に対する選択性が増大された新規な触媒組成物と、この触媒を用いたアルキル化および/またはトランスアルキル化方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ひとつの実施形態では、この発明は
(a)結晶性MCM−22型モレキュラーシーブと、
(b)バインダーとから成る触媒組成物であって、
MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下、好ましくは15ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、さらに好ましくは5ミクロン以下、最も好ましくは2ミクロン以下であることを特徴とする。
【0006】
別の実施形態では、この発明はアルキル化可能な芳香族化合物をアルキル化剤でアルキル化またはトランスアルキル化してモノアルキル化芳香族化合物を製造する方法に関し、
(a)適切なアルキル化条件下またはトランスアルキル化条件下で、少なくとも1のアルキル化可能な芳香族化合物と、少なくとも1のアルキル化剤とを、触媒組成物に接触させて、モノアルキル化芳香族化合物を含有する少なくとも1の生成物を製造する工程を含み;触媒組成物はモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性を有し、触媒組成物は:
(i)結晶性MCM−22型モレキュラーシーブと、
(ii)バインダーとから成り、
MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下、好ましくは15ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、さらに好ましくは5ミクロン以下、最も好ましくは2ミクロン以下であり、同一反応条件下で比較したとき、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロンを超える結晶性モレキュラーシーブのモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性よりも、この発明の触媒組成物のモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性の方が高いことを特徴とする。
【0007】
いくつかの実施形態では、この発明の触媒組成物のモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性は、同一反応条件下で比較したとき、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロンを超える結晶性モレキュラーシーブのモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性よりも10%高く、好ましくは20%、より好ましくは30%、さらに好ましくは40%、さらに好ましくは50%、最も好ましくは60%高い。
【0008】
一側面では、結晶性MCM−22型モレキュラーシーブは、MCM−22、MCM−36、MCM−49、MCM−56、ITQ−1、ITQ−30、及びこれらの組合せの内、少なくともいずれか1種類を有する。
別の側面では、バインダーはチタン化合物、アルミナ化合物、シリコン化合物、及びこれらの混合物のいずれかから成る。
好ましい実施形態では、バインダーはシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、トリア、ベリリア、マグネシア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニアや、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニア、及びこれらの組合せ、からなる群から選択される。
【0009】
別の好ましい実施形態では、この発明の触媒組成物は、触媒組成物の重量を基準として少なくとも1wt%、好ましくは10wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、さらに好ましくは少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも75wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%の、MCM−22型モレキュラーシーブを含む。
ひとつの実施形態では、触媒組成物はさらにコンストレインインデックス(Constraint Index)が12未満の第2のモレキュラーシーブを含む。別の実施形態では、触媒組成物はさらにコンストレインインデックスが2未満の第2のモレキュラーシーブを含む。
【0010】
好ましい実施形態では、MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズは、例えば粉砕、ミリング、グラインディング、ジェットミリング、スラリー/スプレードライング、圧縮、混合、またはこれらの組合せ等の種々の物理的または化学的手段によって、所望の平均結晶凝集塊サイズまで減少させることができる。ここで、所望の平均結晶凝集塊サイズは、16ミクロン以下、好ましくは15ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、さらに好ましくは5ミクロン以下、最も好ましくは2ミクロン以下である。
【0011】
ひとつの実施形態では、アルキル化可能な芳香族化合物をアルキル化剤でアルキル化またはトランスアルキル化してモノアルキル化芳香族化合物を製造する方法にはさらに、反応ゾーンの下流に位置する最終反応器が含まれる。
【0012】
一側面では、適切なアルキル化条件下またはトランスアルキル化条件には、温度が約100℃から約400℃、圧力が約20.3から4500kPa−a、WHSVが約0.1から約10hr−1、アルキル化可能な化合物とアルキル化剤とのモル比が約0.1:1から50:1であることが含まれる。
【0013】
好ましい実施形態では、モノアルキル化された芳香族化合物にはエチルベンゼンが含まれ、アルキル化可能な化合物にはベンゼンが含まれ、アルキル化剤にはエチレンが含まれる。
別の好ましい実施形態では、モノアルキル化された芳香族化合物にはクメンが含まれ、アルキル化可能な化合物にはベンゼンが含まれ、アルキル化剤にはプロピレンが含まれる。
【0014】
また別の実施形態では、この発明はこの発明で用いる触媒組成物の製造方法に関し:
(a)平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブとバインダーとの混合物を調製する工程と、
(b)この混合物から触媒組成物を製造する工程とを含む製造方法に関する。
【0015】
ひとつの実施形態では、触媒組成物を製造する工程には押出加工が含まれる。別の側面では、触媒組成物は四葉(quadrulobe)形状である。
好ましい実施形態では、触媒組成物は、触媒組成物の重量を基準として少なくとも1wt%、好ましくは10wt%、より好ましくは50wt%、より好ましくは60wt%、好ましくは65wt%、好ましくは70wt%、好ましくは75wt%、最も好ましくは80wt%の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブを含有する。
また別の好ましい実施形態では、触媒組成物はさらに、触媒組成物の重量を基準として少なくとも5wt%のBEA型骨格のモレキュラーシーブを含む。
【0016】
好ましい実施形態では、触媒組成物を製造する方法にはさらに、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブを製造するために、MCM−22型モレキュラーシーブを例えばジェットミリング等でミリング処理する工程が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は合成後未精製(as-synthesized)のMCM−49型モレキュラーシーブのSEM像である。
【図2】図2はジェットミリング処理されたMCM−49型モレキュラーシーブのSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<導入>
ここに引用した特許、特許出願、試験方法、先行技術文献、文献は、刊行物、マニュアル、その他の文献は、この発明の開示内容と抵触しない範囲内で、それが許される法域において本願に参照として組み込まれる。
【0019】
数値範囲について複数の下限値と複数の上限値が記載されている場合、いずれかの下限値からいずれかの上限値までの範囲が考慮される。
【0020】
この明細書で「骨格型」というときは、例えば「Atlas of Zeolite Framework Types(2001年)」に記載されている意味で用いる。
【0021】
本願の周期律表の元素番号は、Chemical and Engineering News, 63(5), 27(1985年)の用例に従う。
【0022】
ここで用いる「MCM−22型物質」(あるいは「MCM−22の物質」、あるいは「MCM−22型のモレキュラーシーブ」)という用語には、下記のモレキュラーシーブが含まれる。
(i)共通の一次結晶構成単位胞「MWW骨格トポロジーのモレキュラーシーブ」で構成されるモレキュラーシーブ。単位胞は原子の立体的配列であり、三次元空間に置かれたとき結晶構造を形成する。このような結晶構造は「Atlas of Zeolite Framework Types(15版、2001年)」に開示されており、本願に参照として組み込まれる。)
(ii)共通の二次構成単位で構成されるモレキュラーシーブであって、MWW骨格トポロジーの単位胞を二次元に置いたとき「単位胞1つ分の厚みの単層」となり、好ましくは厚みがc−単位胞1つ分であるモレキュラーシーブ。
(iii)共通の二次構成単位「1以上の単位胞厚みの層」で構成されるモレキュラーシーブであって、1を超える単位胞厚みの層が、MWW骨格トポロジーの単層が少なくとも2層積み重なるか、充填されるか、結合されて構成されているモレキュラーシーブ。このような二次構成単位の積み重なりは、規則的であっても、不規則であっても、ランダムであっても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。あるいは、
(iv)MWW骨格トポロジーを有する単位胞が、規則的またはランダムに、二次元的または三次元的に組み合わされて構成されたモレキュラーシーブ。
【0023】
MCM−22型物質は、格子面間隔d(d−spacing)のピークが12.4±0.25、 3.57±0.07、および3.42±0.07Å(焼成された状態、あるいは合成後未精製の状態で測定)にあるX線回折パターンを有することで特徴付けられる。MCM−22型物質はまた、格子面間隔dのピークが12.4±0.25、 6.9±0.015、3.57±0.07Å、および3.42±0.07Å(焼成された状態、あるいは未精製の状態で測定)にあるX線回折パターンを有することで特徴付けられる。
モレキュラーシーブの分析に用いられるX線回折のデータは、銅のK−α二重線を入射放射線として用いる標準的方法により、シンチレーションカウンターとコンピュータを備えるX線回折装置を用いて得ることができる。
MCM−22型物質に属する物質には、MCM−22(米国特許第4954325号に開示されている)、PSH−3(米国特許第4439409号に開示されている)、SSZ−25(米国特許第4826667号に開示されている)、ERB−1(欧州特許第0293032号に開示されている)、ITQ−1(米国特許第6077498号に開示されている)、ITQ−2(国際公開公報WO97/17290に開示されている)、ITQ−30(国際公開公報WO2005/118476に開示されている)、MCM−36(米国特許第5250277号に開示されている)、MCM−49(米国特許第5236575号に開示されている)、MCM−56(米国特許第5362697号に開示されている)が含まれる。これらの特許文献は本願に参照として組み込まれる。
【0024】
従来のモルデナイトなどの大孔径ゼオライトのアルキル化触媒と比較すると、上記のMCM−22型のモレキュラーシーブは、12員環の表面ポケットを有し、この表面ポケットがモレキュラーシーブの内部にある10員環の内部孔と連通しない点で区別される。
【0025】
IZA−SCによりMWWトポロジーに分類されるゼオライト物質は、10員環と12員環の2つの細孔システムを有する多層の物質である。前記のAtlas of Zeolite Framework Typesは、この同一のトポロジーを有する物質を5つの異なる名称に分類している。これらは、MCM−22、ERB−1、ITQ−1、PSH−3、およびSSZ−25である。
【0026】
MCM−22型のモレキュラーシーブは、種々の炭化水素の転換反応に用いることができる。MCM−22型のモレキュラーシーブの例は、MCM−22、MCM−49、MCM−56、ITQ−1、PSH−3、SSZ−25、およびERB−1である。これらのモレキュラーシーブは、芳香族のアルキル化に用いることができる。
例えば、米国特許第6936744号には、モノアルキル化芳香族化合物、特にクメンを製造するための方法であって、ポリアルキル化芳香族化合物と、アルキル化可能な芳香族化合物とを、少なくとも一部が液相の状態でアルキル転移触媒と接触させて、モノアルキル化芳香族化合物を生成させるステップを備え、アルキル転移触媒が少なくとも2つの異なる結晶性モレキュラーシーブから成り、このモレキュラーシーブはゼオライトベータ、ゼオライトY、モルデナイト、およびX線回折パターンの格子面間隔dのピークが12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07、および3.42±0.07Åに表れる物質から選択される方法が開示されている。
【0027】
この発明で「アルキル化可能な芳香族化合物」と言うときは、アルキル基を受容する化合物を意味し、「アルキル化剤」と言うときは、アルキル化可能な芳香族化合物にアルキル基を供与可能な化合物を意味する。
アルキル化可能な芳香族化合物の一例はベンゼンである。アルキル化剤の例は、エチレン、プロピレンの他、例えばジ−エチルベンゼン、トリ−エチルベンゼン、ジ−イソプロピルベンゼン、トリ−イソプロピルベンゼン等のポリアルキル化された芳香族化合物である。
【0028】
「wppm」は重量ppmを意味する。
【0029】
この発明で「平均結晶凝集塊サイズ」と言うときは、重量を基準とした、粒子の粒径分布の算術平均を意味する。平均結晶凝集塊サイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することができる。
【0030】
「同一アルキル化またはトランスアルキル化条件」または「同一反応条件」と言うときは、供給原料の組成、触媒使用量(重量)、反応温度、反応圧力、空間速度等の反応条件が等しいことを意味する。
【0031】
この発明で「芳香族」と言うときは、技術常識に基づき、アルキル置換または非置換の単環または多環化合物を意味すると理解される。
ヘテロ原子を有する芳香族化合物も、選択された反応条件下で触媒毒として作用する場合でも、十分な活性が得られる限り使用することができる。
【0032】
<触媒>
この発明の触媒組成物はモレキュラーシーブとバインダーから成り、MCM−22型モレキュラーシーブは、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下、好ましくは15ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、さらに好ましくは5ミクロン以下、最も好ましくは2ミクロン以下であることを特徴とする。
好ましい実施形態では、MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズは、例えば粉砕、ミリング、グラインディング、ジェットミリング、スラリー/スプレードライング、圧縮、混合、またはこれらの組合せ等の種々の物理的または化学的手段によって、所望の平均結晶凝集塊サイズまで減少させることができる。ここで、所望の平均結晶凝集塊サイズは、16ミクロン以下、好ましくは15ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以下、さらに好ましくは5ミクロン以下、最も好ましくは2ミクロン以下である。
いくつかの実施形態では、触媒組成物のモレキュラーシーブはさらに、コンストレインインデックスが2〜12の中孔径モレキュラーシーブ、および/または、コンストレインインデックスが2未満の大孔径モレキュラーシーブを含有することができる。
ひとつの実施形態では、モレキュラーシーブは少なくともFAU型、BEA型、MFI型、MTW型、及びこれらの組合せの、少なくともいずれか1種類の骨格を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、この発明のモレキュラーシーブは、結晶性MCM−22型モレキュラーシーブから成る。
別の実施形態では、この発明のモレキュラーシーブは、MCM−22,MCM−49,MCM−56,ITQ−1,ITQ−30,これらの合生相、あるいはこれらの混合相の、少なくともいずれか1から成る。
この発明の好ましい実施形態では、触媒組成物は、結晶性MCM−22型モレキュラーシーブを、触媒組成物の全重量を基準として少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも10wt%、より好ましくは50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、少なくとも65wt%、少なくとも70wt%、少なくとも75wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%含有する。
またこの発明の別の好ましい実施形態では、触媒組成物は、触媒組成物の全重量を基準として、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、少なくとも65wt%、少なくとも70wt%、少なくとも75wt%、最も好ましくは少なくとも80wt%の、MCM−22型、MCM−49型、MCM−56型、および/またはこれらを組合せたモレキュラーシーブを含有する。
【0034】
この発明の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブは、非MCM−22型物質を、結晶性モレキュラーシーブ組成物の全重量を基準として10重量パーセント(wt%)未満、より好ましくは5wt%未満、最も好ましくは1wt%未満だけ含んでいる。
この発明のMCM−22型モレキュラーシーブ中に共存する非MCM−22型モレキュラーシーブの典型的な例は、ケニヤイト、EU−1、ZSM−50、ZSM−12、ZSM−48、ZSM−5、フェリエライト、モルデナイト、ソーダライト(Sodalite)および/またはアナルシン(Analcine)等である。この他にこの発明のMCM−22型モレキュラーシーブ中に共存する非MCM−22型モレキュラーシーブの例は、EUO,MTW,FER,MOR,SOD,ANAおよび/またはMFI型骨格を有するモレキュラーシーブである。
合成反応の生成物は、生成物の重量を基準として、10wt%未満、好ましくは5wt%未満、より好ましくは1wt%未満の、例えば石英等の非結晶性物質を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、触媒組成物はさらに、コンストレインインデックスが2〜12、または、コンストレインインデックスが2未満のモレキュラーシーブを、少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも5wt%含んでいる。
好ましい実施形態では、触媒組成物はさらに、BEA型骨格を有するモレキュラーシーブを、触媒組成物の重量を基準として少なくとも1wt%、好ましくは少なくとも5wt%含んでいる。
【0036】
好ましいコンストレインインデックスが2〜12(米国特許第4,016,218号に規定されている)の中孔径のモレキュラーシーブには、ZSM−5,ZSM−11,ZSM−12,ZSM−22,ZSM−23,ZSM−35,およびZSM−48が含まれる。ZSM−5は、米国特許第3,702,886号と米国再発行特許29,948号に開示されている。ZSM−11は米国特許第3,709,979号に開示されている。ZSM−12は米国特許第3,832,449号に開示されている。ZSM−22は米国特許第4,556,477号に開示されている。ZSM−23は米国特許第4,076,842号に開示されている。ZSM−35は米国特許第4,016,245号に開示されている。SM−48は米国特許第4,234,231号に詳しく開示されている。これらは参照として本願に組み込まれる。
【0037】
好ましい大孔径のモレキュラーシーブには、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(USY)、脱アルミY、モルデナイト、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−18、およびZSM−20が含まれる。
ゼオライトZSM−14は米国特許第3,923,636号に開示されている。ゼオライトZSM−20は米国特許第3,972,983号に開示されている。ゼオライトベータは米国特許第3,308,069号と米国再発行特許28,341号に開示されている。低ナトリウム超安定Y(USY)は米国特許第3,293,192と3,449,070号に開示されている。脱アルミY(Deal Y)は米国特許第3,442,795号に開示された方法で製造される。ゼオライトUHP−Yは米国特許第4,401,556号に開示されている。希土類交換Y(REY)は米国特許第3,524,820号に開示されている。モルデナイトは、天然物質であるが、TEA−モルデナイト等の合成品としても入手できる(すなわち、テトラエチルアンモニウム配向剤を含む反応混合物から製造された合成モルデナイト)。TEA−モルデナイトは米国特許第3,766,093と3,894,104号に開示されている。これらは参照として本願に組み込まれる。
【0038】
コンストレインインデックスは、アルミノシリケートまたはモレキュラーシーブの内部構造への、様々なサイズの分子の制御された進入の可能性の度合いを示す、有用な指標である。
例えば、その内部構造への進入と退出が厳しく制限されているアルミノシリケートの場合は、コンストレインインデックスの値が大きい。また、この種のアルミノシリケートは通常孔径が小さく、例えば5Å未満である。
これに対し、その内部構造への進入が比較的自由なアルミノシリケートの場合は、コンストレインインデックスの値が小さく、通常は孔径が大きい。
コンストレインインデックスを測定する方法は、本願に参照として組み込まれる米国特許第4,016,218号に開示されている。
【0039】
当業者であれば、結晶性MCM−22型モレキュラーシーブは、アモルファスな物質から成る不純物、非MWW型トポロジーを有する単位胞(例えばMFI、MTW)から成る不純物、および/またはその他の不純物(例えば重金属および/または有機炭化水素)を含むことが理解できるであろう。
この発明の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブは、好ましくは、非MCM−22型物質を実質的に含んでいない。「非MCM−22型物質を実質的に含んでいない」とは、この発明の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブが、非MCM−22型物質(不純物)を好ましくは50wt%未満、好ましくは20wt%未満、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt%未満、最も好ましくは1wt%未満の微少量だけ含んでいることを意味する。ここで、重量%(wt%)の値は、不純物と純粋な結晶性MCM−22型モレキュラーシーブの総重量を基準とする。
【0040】
結晶性MCM−22型モレキュラーシーブは、モル比が下式で表わされる組成を有する。
:(n)YO
ここでXは、アルミニウム、ホウ素、鉄、および/またはガリウム等の三価の元素であり、アルミニウムであることが好ましい。Yは、ケイ素、および/またはゲルマニウム等の四価の元素であり、ケイ素であることが好ましい。nは少なくとも10、通常は約10から約150、より好ましくは約10から約60、より好ましくは約20から約40である。
合成されたままで無水の状態の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブの、nモルのYOに対する酸化物のモル比は、下式で表わされる。
(0.005〜l)MO:(l〜4)R:X:(n)YO
ここで、Mはアルカリまたはアルカリ土類金属であり、Rは有機部位である。
M及びR成分は、合成反応中に存在する物質に由来しており、一般に、公知の合成反応後の処理方法、および/または以下説明する方法で除去される。
【0041】
所望により、合成されたままの状態の物質中の金属カチオンは、公知の方法により、少なくともその一部が他のカチオンにイオン交換される。
好ましい他のカチオンには、金属イオン、水素イオン、アンモニウム等の水素前駆体イオン、およびこれらの組合せ等が含まれる。
特に好ましいカチオンは、特定の炭化水素転換反応の触媒活性を制御できるカチオンである。このようなカチオンには、水素、希土類金属、周期律表の第1から第17族、好ましくは第2から第12族の金属が含まれる。
【0042】
この発明の方法で用いる触媒の安定性はスチーミングによって向上する。
米国特許第4,663,492号、4,594,146号、4,522,929号、および4,429,176号には、触媒のスチーム安定化に用いられる、ゼオライト触媒のスチーム安定化の条件が開示されている。これらの公報は、この発明の触媒のスチーム安定化方法の詳細な説明として参照される。
スチーム安定化の条件には、触媒を例えば5〜100%のスチームに、少なくとも約300℃(例えば300℃〜600℃)の温度で、少なくとも1時間(例えば1〜200時間)、圧力101〜2500kPa−aで接触させることが含まれる。
より好ましい実施形態では、触媒は315℃〜500℃で75〜100%の大気圧のスチームで、2〜25時間スチーミングされる。触媒のスチーミングは、触媒のアルファ値を増加させることができる条件下で行なわれ、改善されたアルファ値を有するスチーム処理された触媒が製造される。アルファ値の意義は後述する。
所望により、さらにスチーミングを継続して、アルファ値を相対的に高い値から、スチーム処理されていない触媒のアルファ値と実質的に同じ値まで減少させることもできる。
【0043】
この発明のいくつかの側面では、この発明の触媒組成物のバインダーはアルミニウム化合物、チタン化合物、シリコン化合物、及びこれらの混合物のうちの、少なくとも1から成る。
いくつかの実施形態では、アルミニウム化合物は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びこれらの混合物のうちの、少なくとも1から成る。
好ましくは、触媒組成物は、触媒組成物の重量を基準として少なくとも1wt%のバインダーを含む。
【0044】
また別の実施形態では、この発明は、(a)モレキュラーシーブとバインダーとの混合物を調製する工程と、(b)この混合物から触媒組成物を製造する工程とを含む、触媒組成物の製造方法に関する。
この発明により製造された触媒は、種々の粒子形状に成形される。一般に、触媒粒子の形状は粉末、顆粒、あるいは押出物のような成形品である。押出加工等によって触媒を成型する場合、触媒は乾燥前、あるいは一部乾燥させてから押出加工する。
好ましい実施形態では、成形工程には押出加工が含まれる。別の好ましい実施形態では、触媒組成物は四葉形状を有する。ひとつの実施形態では、触媒組成物は、その全重量を基準として、MCM-22、MCM−49、MCM−56、MCM−36のうちの少なくともいずれか1を、少なくとも65wt%を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、触媒組成物はさらに、炭化水素転換プロセスで用いられる温度その他の条件に耐える材料を含んでいる。このような材料には、クレイ、シリカ、および/またはアルミナ等の金属酸化物が含まれる。後者は天然物であるか、シリカと金属酸化物の混合物を含むゼリー状の沈降物またはゲルである。
これらの材料は、商業運転条件下での触媒の破砕強度を向上させるため、例えばベントナイトやカオリン等の天然のクレイと組み合わせて用いられる。またこれらの材料、すなわちクレイや酸化物は、触媒のバインダーとして機能する。
商業運転条件下では、触媒が壊れて粉末状になることを防ぐことが望ましいため、破砕強度の優れた触媒が提供されることが望ましい。
【0046】
結晶性モレキュラーシーブと複合化され得る天然のクレイには、モンモリロナイト系およびカオリン系のクレイが含まれ、モンモリロナイト系およびカオリン系にはスベントナイトが含まれ、カオリン系には一般にデキシ、マクナミン、ジョージア、及びフロリダクレイとして知られており、あるいはその他、主要な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、デクタイト、ナルサイト(narcite)、アノーサイト(anauxite)であるものが含まれる。
このようなクレイは、採掘されたままの未加工の状態で用いることもでき、あるいは焼成、酸処理、または化学修飾して用いることもできる。
この発明の触媒との複合化に有用なバインダーには無機酸化物も含まれ、特にアルミナが好ましい。
【0047】
前記の材料に加え、結晶性モレキュラーシーブの複合化は、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニアや、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニア等の3成分系等の、多孔質の分散媒体を用いて行なうこともできる。
【0048】
結晶性モレキュラーシーブの微粉末と無機酸化物分散媒体の比率は、広い範囲で変更することができ、複合物中の結晶性モレキュラーシーブ含有量は約1から約99wt%、好ましくは、特にこの複合物がビーズ状の形状の場合、複合物中の結晶性モレキュラーシーブ含有量は約20から約80wt%である。
【0049】
モレキュラーシーブおよび/またはゼオライトの製造、改質、および特性測定に関しては、「Molecular Sieves - Principles of Synthesis and Identification」(R. Szostak著、Blackie Academic & Professional社、London、1998年、第二版)に記載されている。
モレキュラーシーブに加え、主にシリカ、アルミニウムシリケート、酸化アルミニウム等のアモルファスな物質が吸着剤や触媒の担体に用いられている。
触媒反応、吸着およびイオン交換に用いられ、例えば球状粒子、押出物、ペレット、錠剤等の外観形状を有するミクロポーラス及びその他の多孔性物質を製造するために、スプレードライング、顆粒化、ペレット化、押出等の種々の周知の技術が用いられている。
このような技術は、「Catalyst Manufacture」(A. B. Stiles、T. A. Koch著、Marcel Dekker社、New York、1995年)に記載されている。
【0050】
<アルキル化反応>
別の実施形態では、この発明は芳香族炭化水素をアルキル化剤によってアルキル化してアルキル化された芳香族化合物を製造する方法に関し、この方法は、アルキル化剤によって芳香族炭化水素をアルキル化して、アルキル化された芳香族化合物を含む生成物を生成させることができるアルキル化条件下で、芳香族炭化水素とアルキル化剤とを触媒組成物に接触させる工程を含む。
いくつかの好ましい実施形態では、芳香族炭化水素にはベンゼンが含まれ、アルキル化剤にはエチレンが含まれ、アルキル化された芳香族化合物にはエチルベンゼンが含まれる。
別の好ましい実施形態では、芳香族炭化水素にはベンゼンが含まれ、アルキル化剤にはプロピレンが含まれ、アルキル化された芳香族化合物にはクメンが含まれる。
【0051】
この発明の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブは、例えばポリアルキルベンゼンのトランスアルキル化等の、トランスアルキル化の触媒に用いることもできる。
【0052】
この発明に用いることができる芳香族化合物は、芳香族環に直接結合した水素原子を少なくとも1つ有する。芳香族環は、1以上のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン、および/またはその他のアルキル化反応を妨害しない基で置換されていてもよい。
【0053】
この発明で好ましく用いることができる芳香族化合物には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペリレン、コロネン、およびフェナントレンが含まれ、ベンゼンであることが好ましい。
【0054】
この発明で好ましく用いることができるアルキル置換された芳香族化合物には、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン、ノルマルプロピルベンゼン、アルファ−メチルナフタレン、エチルベンゼン、メシチレン、ジュレン、シメン、ブチルベンゼン、プソイドクメン、o−ジメチルベンゼン、m−ジメチルベンゼン、p−ジメチルベンゼン、イソアミルベンゼン、イソへキシルベンゼン、ペンタエチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラエチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,2,3−トチメチルベンゼン、m−ブチルトルエン、p−ブチルトルエン、3,5−ジエチルトルエン、o−エチルトルエン、p−エチルトルエン、m−プロピルトルエン、4−エチル−m−キシレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、2,3−ジメチルアントラセン、9−エチルアントラセン、2−メチルアントラセン、o−メチルアントラセン、9,10−ジメチルフェナントレン、および3−メチル−フェナントレンが含まれる。
この発明には、より分子量の高い芳香族炭化水素を出発物質に用いることもできる。このような芳香族炭化水素には、芳香族炭化水素をオレフィンオリゴマーでアルキル化して製造されたものが含まれる。このような化合物は、この技術分野でアルキレートと呼ばれるものであり、ヘキシルベンゼン、ノニルベンゼン、ドデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキシルトルエン、ノニルトルエン、ドデシルトルエン、ペンタデシルトルエン等が含まれる。
アルキレートは、約Cから約C12のサイズのアルキル基が芳香族環に結合した成分を含む高沸点留分として得られることが多い。
【0055】
適切な量のベンゼン、トルエンおよび/またはキシレンを含む改質留分は、特にこの発明に適した原料油である。
この発明の方法は、特に希釈された重合用のエチレンからのエチルベンゼンの製造に向けられているが、クメン等のC〜C20の他のアルキル芳香族化合物の製造や、C〜C16の直鎖あるいはほぼ直鎖のアルキルベンゼン等のC6+のアルキル芳香族化合物に適用することもできる。
【0056】
この発明に適したアルキル化剤には、アルケン化合物、アルコール化合物、および/またはアルキルベンゼン、及びこれらの組合せが含まれる。
この発明に適した他のアルキル化剤には、アルキル化可能な芳香族化合物と反応することが可能なアルキル化脂肪族基を1以上有する、脂肪族または芳香族化合物が含まれる。
この発明に適したアルキル化剤の例として、C〜Cのオレフィン、すなわちエチレン、プロピレン、ブテンの各異性体、ペンテンの各異性体等のC〜C16のオレフィン;C〜C12の脂肪族アルコール(モノアルコール、ジアルコール、トリアルコールを含む)、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノールの各異性体、ペンタノールの各異性体などのC〜Cの脂肪族アルコール;例えばジメチルエーテルやジエチルエーテルを含む、C〜CのエーテルなどのC〜C20のエーテル、ホルムアルデヒド、アセチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等のアルデヒド、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピルの各異性体、塩化ブチルの各異性体、塩化ペンチルの各異性体等の塩化アルキル、ジアルキル化ベンゼン(例えば、ジエチル化ベンゼン、ジイソプロピル化ベンゼン)、トリアルキル化ベンゼン(例えば、トリエチル化ベンゼン、トリイソプロピル化ベンゼン)等のポリアルキル化芳香族化合物が挙げられる。
すなわち、アルキル化剤は、好ましくはC〜Cのオレフィン、C〜Cの脂肪族アルコール、ジエチル化ベンゼン、ジイソプロピル化ベンゼン、トリエチル化ベンゼン、および/またはトリイソプロピル化ベンゼンからなる群から選択される。
アルキル化剤には、濃縮されたアルケンの原料油(例えば重合用のオレフィン)や、希釈されたアルケンの原料油(例えば触媒によるクラッキングのオフガス)が含まれる。
【0057】
この発明のアルキル化方法で製造されるアルキル化芳香族化合物には、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン(クメン)、ノルマルプロピルベンゼン、アルファメチルナフテン、エチルベンゼン、メシチレン、ジュレン、シメン、ブチルベンゼン、プソイドクメン、o−ジメチルベンゼン、m−ジメチルベンゼン、p−ジメチルベンゼン、イソアミルベンゼン、イソヘキシルベンゼン、ペンタエチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラエチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,2,3−トチメチルベンゼン、m−ブチルトルエン、p−ブチルトルエン、3,5−ジエチルトルエン、o−エチルトルエン、p−エチルトルエン、m−プロピルトルエン、4−エチル−m−キシレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、2,3−ジメチルアントラセン、9−エチルアントラセン、2−メチルアントラセン、o−メチルアントラセン、9,10−ジメチルフェナントレン、および3−メチル−フェナントレンが含まれる。
好ましくは、アルキル化された芳香族生成物はモノアルキルベンゼンである。
この発明には、より分子量の高い芳香族炭化水素を出発物質に用いることもできる。このような芳香族炭化水素には、芳香族炭化水素をオレフィンオリゴマーでアルキル化して製造されたものが含まれる。このような化合物は、この技術分野でアルキレートと呼ばれるものであり、ヘキシルベンゼン、ノニルベンゼン、ドデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキシルトルエン、ノニルトルエン、ドデシルトルエン、ペンタデシルトルエン等が含まれる。
アルキレートは、約Cから約C16のサイズのアルキル基が芳香族環に結合した成分を含む高沸点留分として得られることが多い。
【0058】
アルキル化反応は、反応ゾーンにおいて、アルキル化またはトランスアルキル化条件下にある、アルキル化可能な芳香族化合物とアルキル化剤を用いて行なわれる。
一側面では、適切なアルキル化条件下またはトランスアルキル化条件には、温度が100℃から285℃、圧力が689から4601kPa−a、好ましくは圧力が1500から3000kPa−a、アルキル化剤(例えばアルケン)を基準とした反応器全体のWHSVが0.1から10hr−1、好ましくは0.2から2hr−1、より好ましくは0.5から1hr−1、あるいは、アルキル化剤とアルキル化可能な芳香族を基準とした反応器全体のWHSVが10から100hr−1、好ましくは20から50hr−1であることが含まれる。
アルキル化可能な芳香族化合物は、単独または複数の反応ゾーンにあるアルキル化またはトランスアルキル化触媒の存在下で、アルキル化剤(例えばアルケン)によってアルキル化される。
単独または複数の反応ゾーンは、好ましくは単独の反応器中にある。バイパス可能な別の反応器中の別の反応ゾーンであって、アルキル化またはトランスアルキル化触媒を備え、反応性のガード触媒床として用いられる別の反応ゾーンを設けることもできる。
反応性のガード触媒床に用いられる触媒組成物は、反応で用いられる触媒組成物と異なっていてもよい。反応性のガード触媒床に用いられる触媒組成物には、複数の触媒組成物を用いることができる。
少なくとも1つの反応ゾーン(通常は各反応ゾーン)は、アルキル化またはトランスアルキル化触媒の存在下で、アルキル化剤によってアルキル化可能な芳香族をアルキル化できる条件に保たれる。
【0059】
反応ゾーンで生じる生成物は、目的とする芳香族化合物と、未反応のアルキル化可能な芳香族と、未反応のアルキル化剤(例えばアルケン、アルケンの転化率は少なくとも90モル%、好ましくは98〜99.9999モル%と見積もられる)と、アルカン化合物と、その他の不純物とを含む。
ひとつの実施形態では、生成物の少なくとも一部が別の反応ゾーンへ送られ、未反応のアルキル化可能な芳香族化合物をアルキル化またはトランスアルキル化触媒により反応させるため、アルキル化剤が添加される。
さらに、複数の反応ゾーンの生成物の少なくとも一部が、直接または間接的にトランスアルキル化装置へ送られる。
【0060】
さらに、反応ゾーンの上流には、バイパス可能で、反応性または非反応性のガード触媒床が、通常はアルキル化反応器とは別の反応器内に設けられる。このようなガード触媒床は、反応ゾーンの触媒と同一または異なる、アルキル化またはトランスアルキル化触媒を備える。
ガード触媒床は大気条件下、あるいは適切なアルキル化またはトランスアルキル化条件下に保たれる。アルキル化可能な芳香族化合物の少なくとも一部と、任意にアルキル化剤の少なくとも一部を、反応ゾーンへ供給する前に、反応性または非反応性のガード触媒床に通過させる。
ガード触媒床は、所望のアルキル化反応を生じさせるだけでなく、原料油中に存在し、反応ゾーンのアルキル化またはトランスアルキル化触媒の触媒毒となり得る、窒素化合物等の反応性の不純物の除去も行なう。
従って、反応性または非反応性のガード触媒床中の触媒は、反応ゾーン中のアルキル化またはトランスアルキル化触媒よりも頻繁に、再生および/または交換される。このため、ガード触媒床を使用できないときでもアルキル化用原料油を反応器内に直列に配置された複数の反応ゾーンに直接供給できるよう、一般にガード触媒床にはバイパス用流路が設けられる。
反応性または非反応性のガード触媒床は、上昇並流または下降並流で操業される。
【0061】
この発明の方法において、反応ゾーンは、アルケンが実質的に完全に転換される条件で操業される。しかし、アルケンの転化率が100%未満となる条件で操業することが好ましい場合もある。
反応ゾーンの下流に、最終反応器を別に設けることが好ましい場合もある。最終反応器も、アルキル化またはトランスアルキル化反応器の触媒と同一または異なる、アルキル化またはトランスアルキル化触媒を備え、少なくとも一部が液相、または気相となるアルキル化またはトランスアルキル化条件下に保たれる。
生成物中に含まれるポリアルキル化された芳香族化合物は、アルキル化可能な芳香族化合物を用いてトランスアルキル化を行なうために分離される。
ポリアルキル化された芳香族化合物とアルキル化可能な芳香族化合物とのトランスアルキル化により、アルキル化された芳香族化合物が製造される。
【0062】
この発明で用いられるアルキル化またはトランスアルキル化反応器は、エチルベンゼン等の目的とするモノアルキル化された製品に対する選択性が非常に高い。しかし、ポリアルキル化された生成物も、幾分か生じる。
ひとつの実施形態では、最終アルキル化反応ゾーンで生成した組成物は、ポリアルキル化された芳香族化合物を回収するために、分離工程へ送られる。
別の実施形態では、ポリアルキル化された芳香族化合物の少なくとも一部がアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器へ送られる。トランスアルキル化反応器では、ポリアルキル化された芳香族化合物、及びアルキル化可能な芳香族化合物から、さらにモノアルキル化芳香族化合物が生成する。
これらの生成物の少なくとも一部が分離され、アルキル化された芳香族化合物(モノアルキル化芳香族化合物および/またはポリアルキル化芳香族化合物)が回収される。
【0063】
少なくとも一部が液相の状態で、ベンゼンをエチレンでアルキル化する際の条件には、温度が約120℃から285℃、好ましくは150℃から260℃、圧力が689から4601kPa−a、好ましくは圧力が1500から4137kPa−a、エチレン及び触媒の全量を基準とした反応器全体のWHSVが0.1から10hr−1、好ましくは0.2から2hr−1、より好ましくは0.5から1hr−1、あるいは、エチレン及びベンゼンの全量と、触媒の全量との両者を基準とした反応器全体のWHSVが、10から100hr−1、好ましくは20から50hr−1であり、ベンゼンとエチレンのモル比が約1から約10であることが含まれる。
【0064】
少なくとも一部が液相の状態で、ベンゼンをプロピレンでアルキル化する際の条件には、温度が約80℃から160℃、圧力が約680から4800kPa−a、好ましくは温度が約100℃から140℃、圧力が約2000から3000kPa−a、プロピレンを基準としたWHSVが約0.1から約10hr−1、ベンゼンとエチレンのモル比が約1から約10であることが含まれる。
【0065】
アルキル化の製造工程にガード触媒床が含まれているとき、少なくとも一部が液相となる状態に保たれる。ガード触媒床は、温度が約120℃から285℃、好ましくは150℃から260℃、圧力が689から4601kPa−a、エチレンの全量と、触媒の全量との両者を基準とした反応器全体のWHSVが、0.1から10hr−1、好ましくは0.2から2hr−1、より好ましくは0.5から1hr−1、あるいは、エチレン及びベンゼンの全量と、触媒の全量との両者を基準とした反応器全体のWHSVが、10から100hr−1、好ましくは25から50hr−1、ベンゼンとエチレンのモル比が約1から約10の条件で操業される。
【0066】
トランスアルキル化反応は、少なくとも一部が液相の状態で行なう。少なくとも一部が液相の状態で、例えばポリエチルベンゼンやポリイソプロピルベンゼン等のポリアルキル化芳香族化合物を、ベンゼンによりトランスアルキル化する際の条件には、温度が約100℃から300℃、圧力が696から4137kPa−a、アルキル化反応ゾーンへ供給されるポリアルキル化芳香族化合物原料油の重量を基準としたWHSVが約0.5から約100hr−1、ベンゼンとポリアルキル化芳香族化合物とのモル比が1:1から30:1、好ましくは1:1から10:1、より好ましくは1:1から5:1であることが含まれる。
【0067】
別の実施形態では、トランスアルキル化反応は気相の状態で行なわれる。
気相の状態で、例えばポリエチルベンゼンやポリイソプロピルベンゼン等のポリアルキル化芳香族化合物を、ベンゼンによりトランスアルキル化する際の条件には、温度が約350℃から450℃、圧力が696から1601kPa−a、アルキル化反応ゾーンへ供給されるポリアルキル化芳香族化合物原料油の重量を基準としたWHSVが約0.5から約20hr−1、好ましくは約1から約10hr−1、ベンゼンとポリアルキル化芳香族化合物とのモル比が1:1から5:1、好ましくは2:1から3:1であることが含まれる。
【0068】
この発明のいくつかの実施形態は、下記に関する。
第1項. 触媒組成物であって、(a)MCM−22型モレキュラーシーブと、(b)バインダーとから成り、MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下であることを特徴とする触媒組成物。

第2項. 平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下である、第1項の触媒組成物。

第3項. 平均結晶凝集塊サイズが10ミクロン以下である、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第4項. 平均結晶凝集塊サイズが5ミクロン以下である、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第5項. 平均結晶凝集塊サイズが2ミクロン以下である、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第6項. MCM−22型のモレキュラーシーブが、MCM−22、MCM−36、MCM−49、MCM−56、ITQ−1、ITQ−30及びこれらの組合せの内、少なくともいずれか1種類である、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第7項. バインダーが、チタン化合物、アルミナ化合物、シリコン化合物、及びこれらの混合物の内、少なくともいずれか1から成る、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第8項. バインダーが、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、トリア、ベリリア、マグネシア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニアや、シリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−マグネシア−ジルコニア、及びこれらの組合せ、からなる群から選択される、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第9項. 触媒組成物の重量を基準として少なくとも50wt%のMCM−22型モレキュラーシーブを含む、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第10項. さらに、コンストレインインデックスが12未満の第2のモレキュラーシーブを含む、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第11項. さらに、コンストレインインデックスが2未満の第2のモレキュラーシーブを含む、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第12項. MCM−22型モレキュラーシーブがジェットミリングによって所定の平均結晶凝集塊サイズに形成されている、前項の内いずれか1項の触媒組成物。

第13項. アルキル化可能な芳香族化合物を、アルキル化剤でアルキル化またはトランスアルキル化してモノアルキル化芳香族化合物を製造する方法であって、
適切なアルキル化またはトランスアルキル化条件下で、少なくとも1のアルキル化可能な芳香族化合物と、少なくとも1のアルキル化剤とを、触媒に接触させて、モノアルキル化芳香族化合物に対する選択性をもってモノアルキル化芳香族化合物を含有する少なくとも1の生成物を製造する工程を含み、
触媒組成物が、
(i)MCM−22型モレキュラーシーブと
(ii)バインダーとを含み、
MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下であり、
同一反応条件下で比較したとき、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロンを超える結晶性モレキュラーシーブのモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性よりも、前記触媒組成物のモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性の方が高いことを特徴とする方法。

第14項. 平均結晶凝集塊サイズが15ミクロン以下である、第13項の方法。

第15項. 平均結晶凝集塊サイズが10ミクロン以下である、第13項または14項の方法。

第16項. さらに、コンストレインインデックスが12未満の第2のモレキュラーシーブを含む、第13〜15項の内いずれか1項の方法。

第17項. さらに、コンストレインインデックスが2未満の第2のモレキュラーシーブを含む、第13〜16項の内いずれか1項の方法。

第18項. 触媒組成物が本質的にMCM−22型モレキュラーシーブから成る、第13〜17項の内いずれか1項の方法。

第19項. MCM−22型のモレキュラーシーブが、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、ITQ−30、PSH−3、SSZ−25、MCM−22、MCM−36、MCM−49、MCM−56、及びこれらの組合せのいずれか1種類である、第18項の方法。

第20項. 第2のモレキュラーシーブが、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y、希土類交換Y、モルデナイト、TEA−モルデナイト、ERB−1、ITQ−1、ITQ−2、ITQ−30、PSH−3、SSZ−25、MCM−22、MCM−36、MCM−49、MCM−56、シリカライト、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−14、ZSM−18、ZSM−20、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、及びZSM−48から成る群から選択される、第16項の方法。

第21項. さらに、反応ゾーンの下流に最終反応器を備える、第13〜20項のいずれか1項の方法。

第22項. 適切なアルキル化またはトランスアルキル化条件に、温度が約100℃から400℃、圧力が20.3から4500kPa−a、WHSVが0.1から10hr−1、アルキル化可能な化合物のアルキル化剤に対するモル比が0.1:1から50:1の範囲であることが含まれる、第13〜21項のいずれか1項の方法。

第23項. モノアルキル化された芳香族化合物にエチルベンゼンが含まれ、アルキル化可能な芳香族化合物にベンゼンが含まれ、アルキル化剤にエチレンが含まれる、第13〜22項のいずれか1項の方法。

第24項. モノアルキル化された芳香族化合物にクメンが含まれ、アルキル化可能な芳香族化合物にベンゼンが含まれ、アルキル化剤にプロピレンが含まれる、第13〜22項のいずれか1項の方法。

第25項. 同一反応条件下で比較したとき、触媒組成物のモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性が、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロンを超える結晶性モレキュラーシーブのモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性よりも10%高い、第13〜24項のいずれか1項の方法。

第26項. 第1〜12項のいずれかの触媒組成物の製造方法であって、
(a)平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下のMCM−22型モレキュラーシーブとバインダーとの混合物を形成する工程と、
(b)混合物から触媒組成物を形成する工程とを含む方法。

第27項. 触媒組成物を形成する工程に押出加工が含まれる、第26項の方法。

第28項. 触媒組成物が四葉形状である、第26〜27項の方法。

第29項. 触媒組成物が、触媒組成物の全重量を基準として、少なくとも65wt%の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブを含む、第26〜28項のいずれか1項の方法。

第30項. 触媒組成物が、触媒組成物の全重量を基準として、少なくとも5wt%のBEA骨格のモレキュラーシーブをさらに含む、第26〜29項のいずれか1項の方法。

第31項. さらに、MCM−22型モレキュラーシーブをジェットミリングして、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下のMCM−22型モレキュラーシーブを形成する工程を含む、第26〜30項のいずれか1項の方法。
【0069】
この発明の種々の側面について、以下の実施例により説明する。
【0070】
<試験方法>
<原料油の前処理>
ベンゼン(99.96wt%)は、ExxonMobil BaytownChemicalから入手した。このベンゼンを、入口から出口まで吸着剤が充填された前処理槽(2リットルのHoke vessel)を通過させて処理した。すべての原料油前処理用吸着剤は、使用前に260℃のオーブンで12時間乾燥しておいた。
【0071】
重合用プロピレンを、Scott Specialty Gases社(Pasadena, TX, USA) から入手した。このプロピレンを、予め260℃のオーブンで12時間乾燥させておいた吸着剤が充填された300mlの容器を通過させて処理した。
【0072】
超高純度窒素ガスは、Scott Specialty Gases社から入手した。この窒素を、予め260℃のオーブンで12時間乾燥させておいた吸着剤が充填された300mlの容器を通過させて処理した。
【0073】
アルミナは、UOP LLC社(UOP LLC, 25 East Algonquin Road, Des Plaines, IL 60017-5017,米国)のVersal-300アルミナを用いた。
【0074】
<触媒調製と充填>
MCM−22触媒は、本願に参照として組み込む米国特許第4,954,325号に従って調製した。MCM−49触媒は、本願に参照として組み込む米国特許第5,236,575号に従って調製した。
【0075】
触媒活性は、反応条件下(温度130℃、圧力2170kPa−a)における二次反応速度定数で評価した。二次反応速度定数は公知の方法で算出した。本願に参照として組み込まれる「Principles and Practice of Heterogeneous Catalyst」(J.M. Thomas, W.J. Thomas著, VCH, 第1版、1997年)を参照することができる。
触媒の選択性は、反応条件下(温度130℃、圧力2170kPa−a)で、生成したクメンの重量を、生成したジイソプロピルベンゼンの重量で除して求めた重量比により評価した。
【0076】
1グラムの触媒を260℃で2時間乾燥した。乾燥完了後、直ちに触媒を取り出した。
触媒バスケットの底部に石英チップを詰め、この触媒バスケット中の石英チップの上に、触媒0.5グラムを充填した。次に、この触媒を、追加の石英チップで覆った。触媒と石英チップが詰められた触媒バスケットを、大気中260℃で約16時間乾燥した。
【0077】
各実験の前に、反応器と全ての配管をトルエン等の適切な溶剤で洗浄し、次いで空気流で溶剤を蒸発させて除去した。乾燥終了直後に、触媒と石英チップが詰められた触媒バスケットを、反応器内に装着した。
【0078】
触媒の活性と選択性の評価には、撹拌棒と固定式の触媒バスケットを備える、300mlのParrTMバッチ式反応器(固定式触媒バスケットを備えるSeries 4563 mini Bench、Parr Instrument Company社製, Moline, IL米国)を用いた。この反応器に、2基の取り外し可能な容器を取り付け、各々からベンゼンとプロピレンを供給した。
【0079】
反応器を、流速100ml/分、温度170℃の超高純度窒素Nで2時間パージした。次に、窒素を流通させながら、反応器の温度を130℃まで下げた。その後、反応器の全ての入口と出口を閉止した。
前処理したベンゼン(156.1グラム)を、791kPa−aの超高純度窒素により、反応器へ圧送した。反応器内を、500rpmで1時間撹拌した。前処理したプロピレン(28.1グラム)を791kPa−aの超高純度窒素により反応器へ圧送した。
反応器内の圧力を、2170kPa−aの超高純度窒素により、2170kPa−aに保った。液体のサンプルを、プロピレンを添加してから15分後、及び30、60、120、180、240分後に採取した。
【0080】
ジェットミリングは、Micron Master Jet Mill(Jet Pulverizer社, Moorestown, NJ, 米国)を用いて行なった。
【実施例1】
【0081】
5.08cm(2インチ)押出機を用いて、次に示す配合処方のMCM−49を押出加工した。
結晶性MCM−49とVersal-300アルミナ(重量比80:20)の混合物を、0.05wt%のPVAとともに押出加工し、直径0.127(1/20インチ)の押出物を得た。(PVAの重量%は、結晶性MCM−49、Versal-300アルミナ、及びPVAの全重量を基準とする。)
次に押出物を窒素中510℃で予備焼成し、硝酸アンモニウムでアンモニウム交換し、次いで空気/N混合気中538℃で焼成した。図1にジェットミリング処理する前のMCM−49モレキュラーシーブのSEM像を示す。平均結晶凝集塊サイズは16.8ミクロンである。
実施例1の触媒を、バッチ式オートクレーブ中、液相でベンゼンのアルキル化を行うことにより評価した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0082】
高混合速度でMCM−49をジェット粉砕(ジェットミリングとも呼ばれる)し、MCM−49の平均結晶凝集塊サイズを約16ミクロンから1.2ミクロンに減少させた。次に、5.08cm(2インチ)押出機を用いて、ジェットミリングされたMCM−49を、次に示す配合処方で押出加工した。
結晶性MCM−49とVersal-300アルミナ(重量比80:20)の混合物を、0.05wt%のPVAとともに押出加工し、直径0.127(1/20インチ)の押出物を得た。(PVAの重量%は、結晶性MCM−49、Versal-300アルミナ、及びPVAの全重量を基準とする。)
次に押出物を窒素中510℃で予備焼成し、硝酸アンモニウムでアンモニウム交換し、次いで空気/N混合気中538℃で焼成した。図2に、ジェット粉砕した結晶性MCM−49モレキュラーシーブのSEM像を示す。
実施例2の触媒を、バッチ式オートクレーブ中、液相でベンゼンのアルキル化を行うことにより評価した。結果を表1に示す。
【0083】
表1に、実施例1,2の触媒の活性及び選択性を示す。実施例2の触媒の活性を、実施例1の触媒の活性に対し正規化して示している。
【表1】

【0084】
SEM像の比較から、未精製の結晶は大きな結晶凝集塊であるのに対し、ジェットミリングされた物質は、はるかに小さく、均一な分布の結晶凝集塊サイズを有することが分かる(図1、図2参照)。
【0085】
MCM−22型ゼオライトの結晶凝集塊サイズを減少させることにより、軽質オレフィンを用いて液相でベンゼンをアルキル化する際の選択性が著しく改善されている。MCM−22型ゼオライトの結晶凝集塊サイズを減少させることにより、ジ−アルキルベンゼンの生成量が減少する。
実施例から、結晶凝集塊サイズを減少させる際に、物理的手段が大きく影響することが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒組成物であって、
(a)MCM−22型モレキュラーシーブと、
(b)バインダーとから成り、MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下であることを特徴とする触媒組成物。
【請求項2】
MCM−22型のモレキュラーシーブが、MCM−22、MCM−36、MCM−49、MCM−56、ITQ−1、ITQ−30及びこれらの組合せの内、少なくともいずれか1種類である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
バインダーが、チタン化合物、アルミナ化合物、シリコン化合物、及びこれらの混合物の内少なくともいずれか1から成る、請求項1または請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
触媒組成物の重量を基準として少なくとも50wt%のMCM−22型モレキュラーシーブを含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
さらに、コンストレインインデックスが12未満の第2のモレキュラーシーブを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
さらに、コンストレインインデックスが12未満の第2のモレキュラーシーブを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
MCM−22型モレキュラーシーブがジェットミリングによって所定の平均結晶凝集塊サイズに形成されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
アルキル化可能な芳香族化合物を、アルキル化剤でアルキル化またはトランスアルキル化してモノアルキル化芳香族化合物を製造する方法であって、
適切なアルキル化またはトランスアルキル化条件下で、少なくとも1のアルキル化可能な芳香族化合物と、少なくとも1のアルキル化剤とを、触媒に接触させて、モノアルキル化芳香族化合物に対する選択性をもってモノアルキル化芳香族化合物を含有する少なくとも1の生成物を製造する工程を含み、
触媒組成物が、
(i)MCM−22型モレキュラーシーブと
(ii)バインダーとを含み、
MCM−22型モレキュラーシーブの平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下であり、
同一反応条件下で比較したとき、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロンを超える結晶性モレキュラーシーブのモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性よりも、前記触媒組成物のモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性の方が高いことを特徴とする方法。
【請求項9】
さらに、反応ゾーンの下流に最終反応器を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
適切なアルキル化またはトランスアルキル化条件に、温度が約100℃から400℃、圧力が20.3から4500kPa−a、WHSVが0.1から10hr−1、アルキル化可能な化合物のアルキル化剤に対するモル比が0.1:1から50:1の範囲であることが含まれる、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノアルキル化された芳香族化合物にエチルベンゼンが含まれ、アルキル化可能な芳香族化合物にベンゼンが含まれ、アルキル化剤にエチレンが含まれる、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
モノアルキル化された芳香族化合物にクメンが含まれ、アルキル化可能な芳香族化合物にベンゼンが含まれ、アルキル化剤にプロピレンが含まれる、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
同一反応条件下で比較したとき、触媒組成物のモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性が、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロンを超える結晶性モレキュラーシーブのモノアルキル化芳香族化合物に対する選択性よりも10%高い、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項7のいずれか1項の触媒組成物の製造方法であって、
(a)平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下のMCM−22型モレキュラーシーブとバインダーとの混合物を形成する工程と、
(b)混合物から触媒組成物を形成する工程とを含む方法。
【請求項15】
触媒組成物を形成する工程に押出加工が含まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
触媒組成物が四葉形状である、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
触媒組成物が、触媒組成物の全重量を基準として、少なくとも65wt%の結晶性MCM−22型モレキュラーシーブを含む、請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
触媒組成物が、触媒組成物の全重量を基準として、少なくとも5wt%のBEA骨格のモレキュラーシーブをさらに含む、請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
さらに、MCM−22型モレキュラーシーブをジェットミリングして、平均結晶凝集塊サイズが16ミクロン以下のMCM−22型モレキュラーシーブを形成する工程を含む、請求項14から請求項18のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513020(P2010−513020A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543001(P2009−543001)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/084987
【国際公開番号】WO2008/079552
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】