説明

触覚呈示装置

【課題】検出の遅延や検出精度の低下を防止した触覚呈示装置を提供する。
【解決手段】触覚呈示装置1は、例えば、図1(a)及び図2(a)に示すように、静電容量を検出する検出部としてのタッチセンサ12と、駆動力を発生する駆動部14と、操作がなされる操作部160、及び駆動部14により操作部160と共に駆動され、その駆動の前後でタッチセンサ12により検出される静電容量の変化を抑制するように形成されたダミー操作部162を有する表示ピン16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚呈示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、コンピュータのウィンドウの構造及び機能を凹凸で表現する複数の触覚ピンと、触覚ピンになされた操作を検出する触覚センサと、を備える触覚ディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この触覚ディスプレイ装置は、凸状態とされた触覚ピンになされた操作を触覚センサで検出し、その触覚ピンに対応する機能等を外部のスピーカから音声出力させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−69218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の触覚ディスプレイ装置の触覚センサが、例えば、静電容量式のセンサであった場合、誘電体でもある触覚ピンの変位により検出される静電容量が変化し、触覚ディスプレイ装置が、操作が行われたと過った判断を行う可能性がある。また、この過った判断が行われないように防止する方法として、触覚ピンを駆動して凹凸を形成した後に補正(初期化)を行うことが考えられる。しかし、初期化に伴う検出の遅延、静電容量の変化を許容することによる検出精度の低下、及び、初期化を行うため、操作者が、一旦検出領域外に出なければならないという不便さ、が問題となる。
【0006】
従って、本発明の目的は、検出の遅延や検出精度の低下を防止した触覚呈示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、静電容量を検出する検出部と、駆動力を発生する駆動部と、操作がなされる操作部、及び駆動部により操作部と共に駆動され、その駆動の前後で検出部により検出される静電容量の変化を抑制するように形成されたダミー操作部、を有する表示ピンと、を備えた触覚呈示装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出の遅延や検出精度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、実施の形態に係る触覚呈示装置の斜視図であり、(b)は、タッチセンサの斜視図である。
【図2】図2(a)は、実施の形態に係る触覚呈示装置の要部断面図であり、(b)は、凸状態の表示ピン(凸状態表示ピン)と凹状態の表示ピン(凹状態表示ピン)について説明するための模式図である。
【図3】図3は、実施の形態に係る触覚呈示装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る触覚呈示装置は、静電容量を検出する検出部と、駆動力を発生する駆動部と、操作がなされる操作部、及び駆動部により操作部と共に駆動され、その駆動の前後で検出部により検出される静電容量の変化を抑制するように形成されたダミー操作部、を有する表示ピンと、を備える。
【0011】
[実施の形態]
(触覚呈示装置1の構成)
図1(a)は、実施の形態に係る触覚呈示装置の斜視図であり、(b)は、タッチセンサの斜視図である。図2(a)は、実施の形態に係る触覚呈示装置の要部断面図であり、(b)は、凸状態の表示ピン(凸状態表示ピン)と凹状態の表示ピン(凹状態表示ピン)について説明するための模式図である。図3は、実施の形態に係る触覚呈示装置のブロック図である。ここで、本実施の形態に係る触覚呈示装置1は、凸状態とする表示ピン16以外を駆動するものとする。従って、凸状態にするためには、表示ピン16を駆動する必要はなく、凹状態にするためには、表示ピン16を駆動する必要がある。なお、実施の形態に係る各図において、部品と部品との比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
この触覚呈示装置1は、一例として、図1(a)に示すように、液晶ディスプレイ等に表示された表示画像に含まれるアイコンに基づいて表示ピン16を駆動し、駆動されない表示ピン16(凸状態表示ピン16a)と駆動された表示ピン16(凹状態表示ピン16b)とにより形成される凹凸により、当該アイコンを表現するものである。従って操作者は、例えば、触覚呈示装置1に触れることで、当該アイコンに対応する凹凸を認識することができる。
【0013】
触覚呈示装置1は、例えば、図1(a)及び図2(a)に示すように、静電容量を検出する検出部としてのタッチセンサ12と、駆動力を発生する駆動部14と、操作がなされる操作部160、及び駆動部14により操作部160と共に駆動され、その駆動の前後でタッチセンサ12により検出される静電容量の変化を抑制するように形成されたダミー操作部162を有する表示ピン16と、を備える。
【0014】
・本体10の構成
本体10は、例えば、図1(a)に示すように、上部が開放された箱型形状を有し、その上部にタッチセンサ12が取り付けられている。この本体10は、例えば、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)等の合成樹脂材料を用いて形成される。
【0015】
・タッチセンサ12の構成
タッチセンサ12は、例えば、図1(b)に示すように、基板120と、第1の電極122と、第2の電極123と、第2の電極123と電気的に接続する配線124と、を備えて概略構成されている。
【0016】
基板120は、例えば、板形状を有するプリント配線基板である。基板120の表面12aには、第1の電極122、第2の電極123及び配線124が形成されている。また、基板120は、表示ピン16の配置に基づいて、表面12aから裏面12bに貫通する複数の貫通孔121が形成されている。この貫通孔121は、例えば、図1(a)に示す直交座標系であるxyz座標系のx方向、及びこのx方向に直交するy方向、に沿って形成されている。
【0017】
第1の電極122及び第2の電極123は、例えば、操作部160とダミー操作部162の間に配置される。具体的には、第1の電極122は、例えば、貫通孔121を中心とし、第2の電極123の内側に位置する円形状を有する。また、第2の電極123は、例えば、第1の電極122を中心とする円形状を有する。第1の電極122は、例えば、図2(a)に示すように、貫通孔121を介して表面12a側の電極パターンと、裏面12b側の電極パターンと、が電気的に接続され、さらに、裏面12b側の図示しない配線と電気的に接続されている。なお、後述する表示ピン16の軸部161と貫通孔121との間には、例えば、摩擦を軽減するグリス等が介在しても良い。
【0018】
このタッチセンサ12は、例えば、操作者の指が表示ピン16の接触面160aに接近、又は接触すること(以下では共に接触と記載する。)による静電容量の変化に基づいてタッチ操作及びプッシュ操作等を検出する静電容量方式のセンサである。ここで、タッチ操作とは、表示ピン16の操作部160の接触面160aに、操作者が接触する、又は変化が検出できるほど指等を接近させる操作を示す。また、プッシュ操作とは、表示ピン16を本体10に押し込む方向の操作である。
【0019】
触覚呈示装置1は、一例として、図2(a)に示すように、第1の電極122及び第2の電極123に電流が流されることより、凸状態表示ピン16aの操作部160側に電場3aと、ダミー操作部162側に電場3bと、が発生し、凹状態表示ピン16bの操作部160側に電場3cと、ダミー操作部162側に電場3dと、が発生する。操作者の指が、凸状態表示ピン16aの接触面160aに接触することにより、特に、操作部160側の電場3aが変化し、この変化に基づいて静電容量が変化する。タッチセンサ12は、この静電容量の変化を検出するように構成されている。なお、図2(a)に示す電場3a〜電場3dは、一例であり、第1の電極122及び第2の電極123に基づく電場は、電極の形状に応じて複数形成される。
【0020】
また、タッチセンサ12は、静電容量の変化に基づいた操作信号を後述する制御部20に出力するように構成されている。
【0021】
・表示ピン16の構成
表示ピン16は、例えば、図2(a)に示すように、操作部160と、軸部161と、ダミー操作部162と、駆動ピン163と、を備えて概略構成されている。この表示ピン16の数は、基板120の貫通孔121の数と同数である。
【0022】
表示ピン16の操作部160、軸部161及びダミー操作部162は、例えば、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)等の合成樹脂材料を用いて形成される。また、駆動ピン163は、例えば、タッチセンサ12に検出される静電容量に影響を与えない形状を有し、上記の合成樹脂材料を用いて形成される。
【0023】
表示ピン16は、操作部160の駆動方向(z軸方向)の厚みが、ダミー操作部162の駆動方向(z軸方向)の厚みと略等しくなるように構成されている。具体的には、操作部160は、例えば、図1(a)及び図2(a)に示すように、上面(接触面160a)と下面が正方形となる四角柱形状を有する。その厚みは、例えば、図2(b)に示すように、dである。また、ダミー操作部162は、一例として、操作部160と同形状となるように形成される。その厚みは、例えば、d(=d)である。
【0024】
軸部161は、例えば、円柱形状を有し、一方端が操作部160と接続し、他方端がダミー操作部162と接続している。この軸部161は、例えば、タッチセンサ12の貫通孔121に挿入されている。従って表示ピン16は、例えば、操作部160、軸部161及びダミー操作部162の少なくとも一つが、接着剤やねじ止めにより取り付けられている。
【0025】
また、表示ピン16は、例えば、図2(b)に示すように、駆動前におけるタッチセンサ12から操作部160までの距離が、駆動後におけるタッチセンサ12からダミー操作部162までの距離と略等しくなるように構成されている。さらに、表示ピン16は、例えば、図2(b)に示すように、駆動前におけるタッチセンサ12からダミー操作部162までの距離が、駆動後におけるタッチセンサ12から操作部160までの距離と略等しくなるように構成されている。
【0026】
つまり、ダミー操作部162は、例えば、表示ピン16の駆動前後で静電容量の変化が少ない、言い換えるなら、静電容量の変化が許容範囲内となる形状となるように形成されている。具体的には、ダミー操作部162は、凸状態表示ピン16aに対応して検出される静電容量と、凹状態表示ピン16bに対応して検出される静電容量と、が略等しくなる、言い換えるなら、予め定められた許容範囲内となるように構成される。また、表示ピン16は、例えば、基板120を中心として凸状態表示ピン16aを折り返すと、基板120に対して凹状態表示ピン16bと同じ位置関係となるように構成されている。この略等しくとは、一例として、駆動されて第1の電極122に近づいた凹状態表示ピン16bの静電容量によって、操作がなされたと誤判定されない範囲を示している。以下では、凸状態表示ピン16a及び凹状態表示ピン16bの静電容量について説明する。
【0027】
・凸状態表示ピン16aと凹状態表示ピン16bの静電容量について
タッチセンサ12によって検出される静電容量は、例えば、表示ピン16がダミー操作部162を持たない場合、タッチセンサ12から操作部160までの距離が異なると変化する。これは、駆動前と駆動後の誘電率が、z座標方向で異なるからである。なお、一つの表示ピン16に対応して検出される静電容量は、近傍の複数の表示ピン16の凹凸状態の影響を少なからず受けるが、以下ではその影響は無視できるほど小さいものとする。
【0028】
ここで、凸状態表示ピン16aの操作部160側の第1の電極122の表面の座標をZとすると、操作部160の下面160bの座標は、例えば、図2(b)に示すように、Zとなる。また、ダミー操作部162側の第1の電極122の表面の座標Zとすると、ダミー操作部162側の上面162aの座標は、例えば、図2(b)に示すように、Zとなる。
【0029】
また、凹状態表示ピン16bの操作部160側の第1の電極122の表面の座標をZとすると、操作部160の下面160bの座標は、例えば、図2(b)に示すように、Zとなる。また、ダミー操作部162側の第1の電極122の表面の座標をZとすると、ダミー操作部162側の上面162aの座標は、例えば、図2(b)に示すように、Zとなる。表示ピン16は、上記の条件を満たすように構成されている。
【0030】
上記に示したように、表示ピン16がダミー操作部162を持たない場合、静電容量は、駆動することにより変化することが理解される。つまり、表示ピン16がダミー操作部162を持たない場合、操作者が、例えば、操作を行わない状態であっても、凹凸が形成されることによって検出される静電容量に変化が生じる。この変化が大きい場合、凹状態表示ピン16bに操作が行われたと誤った判定がなされる可能性があり、検出される静電容量の補正が必要であった。また、表示ピン16に操作者が接触した状態で、凹凸が形成された場合、操作者が接触した状態で補正が行われてしまう問題がある。
【0031】
しかし、本実施の形態では、ダミー操作部162を設けているため、z軸方向の誘電率が基板120を介して、凸状態表示ピン16aと凹状態表示ピン16bとで同じになるので、補正を行うことなく、凸状態表示ピン16aに対応して検出される静電容量と、凹状態表示ピン16bに対応して検出される静電容量は、略等しくなる。
【0032】
・駆動部14の構成
駆動部14は、例えば、表示ピン16をz軸方向に駆動するアクチュエータを含んで構成されている。アクチュエータとしては、例えば、直線的な変位を可能とするリニアモータ等が用いられる。駆動部14は、例えば、制御部20が生成する駆動信号に従って制御される。
【0033】
・通信部18の構成
通信部18は、例えば、外部装置と接続され、外部装置の表示部に表示される画像の情報である画像情報を取得する。また、通信部18は、例えば、触覚呈示装置1になされた操作の情報である操作情報を出力するように構成されている。
【0034】
・制御部20の構成
制御部20は、例えば、プログラムに従って、取得したデータに演算、加工等を行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成されるマイクロコンピュータである。
【0035】
以下に、本実施の形態に係る触覚呈示装置1の動作について、各図を参照しながら説明する。
【0036】
(動作)
触覚呈示装置1の制御部20は、電源が投入されると、通信部18を介して画像情報を取得する。
【0037】
次に、制御部20は、取得した画像情報に基づいて駆動する表示ピン16を選択し、選択された表示ピン16を駆動するための駆動信号を生成して駆動部14に出力する。
【0038】
次に、駆動部14は、取得した駆動信号に基づいて駆動対象となる表示ピン16を駆動し、呈示のための動作を終了する。
【0039】
(効果)
本実施の形態に係る触覚呈示装置1は、ダミー操作部162を備えることで、凸状態表示ピン16aに対応する静電容量と、凹状態表示ピン16bに対応する静電容量と、が略等しくなるので、補正が必要なくなり、補正に伴う検出の遅延や検出精度の低下を防止することができる。また、触覚呈示装置1は、静電容量の補正を必要としないので、補正を行うための補正部が必要なく、製造コストを抑えることができる。さらに、触覚呈示装置1は、補正を必要としないので、操作者がタッチセンサ12の検出領域内に居ても検出精度の低下や誤検出が発生せず、利便性が向上する。
【0040】
なお、上記の実施の形態の変形例として、ダミー操作部162は、例えば、近傍の複数の表示ピン16の影響等により、操作部160と同形状では凸状態と凹状態での静電容量が異なる場合は、静電容量が許容範囲内となるように、形状や材料が調整されても良い。従って、表示ピン16は、例えば、操作部160、軸部161及びダミー操作部162のうち少なくとも1つが、他の部材と異なる材料から形成されても良い。
【0041】
なお、第1の電極122は、貫通孔121を介して基板120の表面12a及び裏面12bに形成されたがこれに限定されず、例えば、第2の電極123と同じ面側、又は、タッチセンサ12の内部に設けられても良い。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…触覚呈示装置
3a〜3d…電場
10…本体
12…タッチセンサ
12a…表面
12b…裏面
14…駆動部
16…表示ピン
16a…凸状態表示ピン
16b…凹状態表示ピン
18…通信部
20…制御部
120…基板
121…貫通孔
122…第1の電極
123…第2の電極
124…配線
160…操作部
160a…接触面
160b…下面
161…軸部
162…ダミー操作部
162a…上面
163…駆動ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量を検出する検出部と、
駆動力を発生する駆動部と、
操作がなされる操作部、及び前記駆動部により前記操作部と共に駆動され、その駆動の前後で前記検出部により検出される静電容量の変化を抑制するように形成されたダミー操作部、を有する表示ピンと、
を備えた触覚呈示装置。
【請求項2】
前記表示ピンは、駆動前における前記検出部から前記操作部までの距離が、駆動後における前記検出部から前記ダミー操作部までの距離と略等しい請求項1に記載の触覚呈示装置。
【請求項3】
前記表示ピンは、前記操作部の駆動方向の厚みが、前記ダミー操作部の駆動方向の厚みと略等しい請求項1又は2に記載の触覚呈示装置。
【請求項4】
前記表示ピンは、前記操作部及び前記ダミー操作部と接続する軸部を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の触覚呈示装置。
【請求項5】
前記検出部は、第1の電極及び第2の電極を有し、
前記第1の電極及び前記第2の電極は、前記操作部と前記ダミー操作部の間に配置される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の触覚呈示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−54621(P2013−54621A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193553(P2011−193553)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】